(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、プログラム、学習装置、学習方法、および学習済みデータセット
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20240313BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01N21/88 J
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2020041487
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】仲村 武瑠
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120300(JP,A)
【文献】特開2018-005773(JP,A)
【文献】特開2020-028679(JP,A)
【文献】特開2019-039727(JP,A)
【文献】特開2020-085774(JP,A)
【文献】特開2018-195199(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087803(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/005457(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06T 1/00 - G06T 1/60
G06N 20/00 - G06N 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を検査する検査装置であって、
対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出部と、
前記欠陥検出部が検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断部と、
を有し、
前記欠陥検出部は、
画像を入力および出力とする欠陥検出用学習モデルと、
学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データと、
を含み、
前記欠陥検出部は、
前記欠陥検出用学習済データを適用した前記欠陥検出用学習モデルを用いて、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する処理と、
前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する処理と、
前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する処理と、
を実行し、
前記欠陥判断部は、
前記差分画像を入力とする欠陥判断用学習モデルと、
学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を入力として、前記欠陥判断用学習モデルに良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データと、
を含み、
前記欠陥判断部は、
前記欠陥検出部が欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、前記欠陥判断用学習済データを適用した前記欠陥判断用学習モデルに入力し、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断する欠陥判断処理
を実行する、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記欠陥判断用学習済データは、良品の前記標本画像の前記差分画像のみを前記欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである、検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の検査装置であって、
前記欠陥検出用学習済データは、良品の前記対象物画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記対象物画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済データである、検査装置。
【請求項4】
対象物を検査する検査方法であって、
a)対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出工程と、
b)前記工程a)において検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断工程と、
を有し、
前記工程a)は、
前記対象物画像を、欠陥検出用学習済データを適用した
欠陥検出用学習モデルに入力して、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する工程と、
前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する工程と、
前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する工程と、
を含み、
前記欠陥検出用学習モデルは、画像を入力および出力とする学習モデルであり、
前記欠陥検出用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済みデータであり、
前記工程b)において、前記工程a)において欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、欠陥判断用学習済データを適用した欠陥判断用学習モデルに入力して、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断し、
前記欠陥判断用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである、検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査方法であって、
前記欠陥判断用学習済データは、良品の前記標本画像の前記差分画像のみを欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させたモデルである、検査方法。
【請求項6】
コンピュータに、対象物を検査させるための検査プログラムであって、
前記コンピュータに、
a)対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出工程と、
b)前記工程a)において検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断工程と、
を実行させ、
前記工程a)は、
前記対象物画像を、欠陥検出用学習済データを適用した
欠陥検出用学習モデルに入力して、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する工程と、
前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する工程と、
前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する工程と、
を含み、
前記欠陥検出用学習モデルは、画像を入力および出力とする学習モデルであり、
前記欠陥検出用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済みデータであり、
前記コンピュータは、前記工程b)において、前記工程a)において欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、欠陥判断用学習済データを適用した欠陥判断用学習モデルに入力して、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断し、
前記欠陥判断用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである、検査プログラム。
【請求項7】
対象物を検査する検査装置を構築するための学習装置であって、
学習用の対象物の画像である標本画像を欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現した前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データを生成する欠陥検出学習部と、
学習用の対象物の画像である標本画像と、前記標本画像から前記欠陥検出用学習モデルを用いて生成した前記再構成画像との差分である差分画像を、欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データを生成する欠陥判断学習部と、
を備える学習装置。
【請求項8】
対象物を検査する検査装置を構築するための学習方法であって、
x)学習用の対象物の画像である標本画像を欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現した再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データを生成する欠陥検出学習工程と、
y)学習用の対象物の画像である標本画像と、前記標本画像から前記欠陥検出用学習モデルを用いて生成した前記再構成画像との差分である差分画像を、欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データを生成する欠陥判断学習工程と、
を備える学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査装置、検査方法、プログラム、学習装置、学習方法、および学習済みデータセットに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品または工業製品等の製造工程においては、製造ラインに検査工程を設けて、不良品の検出等の検査が行われる場合がある。製品の検査は、人間が目視で行っており(目視検査)、人的コストが高いという問題があった。このため、検査工程の一部または全部を自動化するべく、機械によって自動的に製品を検査するシステムの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、機械学習を利用して欠陥検査する技術が開示されている。具体的には、第1の学習部は、正常データの集合を用いて、正常データを判別するための第1のモデルを学習する。第2の学習部は、予め用意された複数の撮影画像の各々から第1のモデルに基づいて検出された複数の異常候補領域のうち、ユーザにより選択された異常候補領域を正解データ、ユーザにより選択されなかった異常候補領域を非正解データとして、正解データと非正解データを識別するための第2のモデルを学習する。検出部は、第1のモデルを用いて、撮影画像から異常候補領域を検出する。判断部は、第2のモデルを用いて、検出部により検出された異常候補領域が正解データに属するのか非正解データに属するのかを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、第1の学習部は、良品画像のみで機械学習を行う。一方、第2の学習部について、学習に使用されるサンプル画像として、正常なサンプル画像だけでなく、欠陥を含むサンプル画像も準備する必要がある。しかしながら、検査対象の対象物が、欠陥の発生率が低い製品である場合、欠陥を含むサンプル画像を取得することが、困難な場合があった。このため、検査対象の対象物が、異常の発生率が低いものである場合、従来技術の採用は困難であった。
【0006】
本発明の目的は、異常の発生率が低い対象物であっても、異常を良好に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、対象物を検査する検査装置であって、対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出部と、前記欠陥検出部が検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断部と、を有し、前記欠陥検出部は、画像を入力および出力とする欠陥検出用学習モデルと、学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データと、を含み、前記欠陥検出部は、前記欠陥検出用学習済データを適用した前記欠陥検出用学習モデルを用いて、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する処理と、前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する処理と、前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する処理と、を実行し、前記欠陥判断部は、前記差分画像を入力とする欠陥判断用学習モデルと、学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を入力として、前記欠陥判断用学習モデルに良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データと、を含み、前記欠陥判断部は、前記欠陥検出部が欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、前記欠陥判断用学習済データを適用した前記欠陥判断用学習モデルに入力し、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断する欠陥判断処理を実行する。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の検査装置であって、前記欠陥判断用学習済データは、良品の前記標本画像の前記差分画像のみを前記欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の検査装置であって、前記欠陥検出用学習済データは、良品の前記対象物画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記対象物画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済データである。
【0011】
本願の第4発明は、対象物を検査する検査方法であって、a)対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出工程と、b)前記工程a)において検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断工程と、を有し、前記工程a)は、前記対象物画像を、欠陥検出用学習済データを適用した欠陥検出用学習モデルに入力して、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する工程と、前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する工程と、前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する工程と、を含み、前記欠陥検出用学習モデルは、画像を入力および出力とする学習モデルであり、前記欠陥検出用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済みデータであり、前記工程b)において、前記工程a)において欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、欠陥判断用学習済データを適用した欠陥判断用学習モデルに入力して、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断し、前記欠陥判断用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである。
【0012】
本願の第5発明は、第4発明の検査方法であって、前記欠陥判断用学習済データは、良品の前記標本画像の前記差分画像のみを欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させたモデルである。
【0013】
本願の第6発明は、コンピュータに、対象物を検査させるための検査プログラムであって、前記コンピュータに、a)対象物を撮像して得られた対象物画像に基づいて前記対象物の欠陥を検出する欠陥検出工程と、b)前記工程a)において検出した欠陥の真偽を判断する欠陥判断工程と、を実行させ、前記工程a)は、前記対象物画像を、欠陥検出用学習済データを適用した欠陥検出用学習モデルに入力して、前記対象物画像を次元圧縮および再現して前記対象物画像の再構成画像を生成する工程と、前記対象物画像と前記再構成画像との差分である差分画像を生成する工程と、前記差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する工程と、を含み、前記欠陥検出用学習モデルは、画像を入力および出力とする学習モデルであり、前記欠陥検出用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像を前記欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現して前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済みデータであり、前記コンピュータは、前記工程b)において、前記工程a)において欠陥を検出した対象物の対象物画像の前記差分画像を、欠陥判断用学習済データを適用した欠陥判断用学習モデルに入力して、前記対象物が良品の範囲に属するか否かを判断し、前記欠陥判断用学習済データは、学習用の対象物の画像である標本画像の前記差分画像を欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた学習済データである。
【0014】
本願の第7発明は、対象物を検査する検査装置を構築するための学習装置であって、学習用の対象物の画像である標本画像を欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現した前記標本画像の再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データを生成する欠陥検出学習部と、学習用の対象物の画像である標本画像と、前記標本画像から前記欠陥検出用学習モデルを用いて生成した前記再構成画像との差分である差分画像を、欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データを生成する欠陥判断学習部と、を備える。
【0015】
本願の第8発明は、対象物を検査する検査装置を構築するための学習方法であって、x)学習用の対象物の画像である標本画像を欠陥検出用学習モデルに入力し、入力された前記標本画像を次元圧縮および再現した再構成画像を出力するように学習させた欠陥検出用学習済データを生成する欠陥検出学習工程と、y)学習用の対象物の画像である標本画像と、前記標本画像から前記欠陥検出用学習モデルを用いて生成した前記再構成画像との差分である差分画像を、欠陥判断用学習モデルに入力して、良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データを生成する欠陥判断学習工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本願の第1発明~第8発明によれば、欠陥判断用学習モデルと、良品の範囲を学習させた欠陥判断用学習済データとを用いて欠陥検出部の検出結果をチェックすることにより、過検出となった良品画像を判別することができる。これにより、良品を不良品と判断してしまう過検出を低減できる。
【0018】
特に、本願の第2発明および第5発明によれば、不良品を入手し難い対象物についても、過検出を効率よく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】第1実施形態の情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態の情報処理装置が備える機能的な構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態の欠陥検出用学習工程の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の欠陥検出用学習モデルを概念的に示す図である。
【
図6】学習済みの欠陥検出用学習モデルに対して不良画像を入力した様子を概念的に示す図である。
【
図7】第1実施形態の欠陥検出部における欠陥検出工程の流れを示すフローチャートである。
【
図8】第1実施形態の欠陥検出工程の各段階で得られる画像の例を示した図である。
【
図9】第1実施形態の欠陥検出工程の各段階で得られる画像の例を示した図である。
【
図10】良品の対象物についての差分画像および欠陥検出部分画像を示した図の例である。
【
図11】不良品の対象物についての差分画像および欠陥検出部分画像を示した図の例である。
【
図12】第1実施形態の欠陥判断用学習工程の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第1実施形態の欠陥判断用学習工程の各段階で得られる画像の例を示した図である。
【
図14】第1実施形態の検査装置を用いた検査工程の流れを示すフローチャートである。
【
図15】第1実施形態の検査装置を用いた欠陥判断工程の流れを示すフローチャートである。
【
図16】第1実施形態の検査工程の各段階で得られる画像および検査結果の例を示した図である。
【
図17】第2実施形態の検査装置の情報処理装置が備える機能的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0021】
<1.第1実施形態>
<1-1.検査装置の構成>
図1は、第1実施形態の検査装置10を示す図である。検査装置10は、対象物90の画像を解析することによって、対象物90の欠陥を検出する。対象物90は、具体的には錠剤であるが、錠剤に限定されない。検査装置10は、カメラ110と、情報処理装置120とを備える。カメラ110は、情報処理装置120と電気的に接続されている。カメラ110は、イメージセンサを備えている。カメラ110は、イメージセンサを用いて対象物90を撮像することにより得られる画像信号を、情報処理装置120へ出力する。カメラ110に撮像される対象物90は、所定の位置に停止していてもよいし、ベルトコンベアなどの搬送機構により、所定の方向へ移動していてもよい。
【0022】
図2は、第1実施形態の情報処理装置120のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置120は、コンピュータとしての構成を備える。具体的には、情報処理装置120は、プロセッサ121と、RAM123と、記憶部125と、入力部127と、表示部129と、機器I/F131と、通信I/F133とを備える。プロセッサ121、RAM123、記憶部125、入力部127、表示部129、機器I/F131および通信I/F133は、バス135を介して互いに電気的に接続されている。
【0023】
プロセッサ121は、具体的には、CPUまたはGPUを含む。RAM123は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記憶媒体であって、具体的には、SDRAMである。記憶部125は、情報の読み出しおよび書き込みが可能な記録媒体であって、具体的には、HDD(ハードディスクドライブ)またはSSD(ソリッドステートドライブ)を含む。なお、記憶部125は、可搬性を有する光ディスク、磁気ディスクまたは半導体メモリ等を含んでもよい。記憶部125は、プログラムPを記憶している。プロセッサ121は、RAM123を作業領域として、プログラムPを実行することにより、各種の機能を実現する。なお、プログラムPは、ネットワークを介して、情報処理装置120に提供または配布されるようにしてもよい。
【0024】
入力部127は、ユーザの操作入力を受け付ける入力デバイスであり、具体的には、マウスまたはキーボードなどである。表示部129は、各種情報を表す画像を表示する表示デバイスであり、具体的には、液晶ディスプレイである。
【0025】
機器I/F131は、カメラ110を情報処理装置120に電気的に接続するためのインターフェースである。通信I/F133は、情報処理装置120をインターネットなどのネットワークと接続するためのインターフェースである。カメラ110は、通信I/F133を介して情報処理装置120と接続されてもよい。すなわち、検査装置10は、カメラ110を備えていることは必須ではなく、情報処理装置120のみを備えていてもよい。
【0026】
図3は、第1実施形態の情報処理装置120が備える機能的な構成を示す図である。情報処理装置120は、欠陥検出部20と、欠陥判断部30と、欠陥検出学習部210と、欠陥判断学習部310とを有する。
【0027】
欠陥検出部20は、対象物90をカメラ110で撮像することによって得られた対象物画像に基づいて、対象物90の欠陥を検出する。欠陥検出部20は、欠陥検出用学習モデル200と、欠陥検出用学習済データ21と、再構成画像生成部22と、差分画像生成部23と、欠陥検出処理部24とを有する。
【0028】
欠陥判断部30は、欠陥検出部20が検出した欠陥の真偽を判断する。欠陥判断部30は、欠陥判断用学習モデル300と、欠陥判断用学習済データ31と、欠陥判断処理部32とを有する。
【0029】
再構成画像生成部22、差分画像生成部23、欠陥検出処理部24、および欠陥判断処理部32は、プロセッサ121がプログラムPに従って動作することにより実現される機能である。欠陥検出学習部210および欠陥判断学習部310は、情報処理装置120に備えられていることは必須ではなく、別のコンピュータに備えられていてもよい。
【0030】
欠陥検出用学習モデル200は、記憶部125に保存されている。欠陥検出用学習モデル200は、画像を入力とし、画像を出力とする学習モデルである。
【0031】
欠陥検出用学習済データ21は、欠陥検出学習部210が欠陥検出用学習モデル200を用いた学習を行うことにより得られた学習済データである。具体的には、欠陥学習用学習済データ21は、学習用の対象物の画像である標本画像を欠陥検出用学習モデル200に入力し、入力された標本画像の再構成画像を出力するように学習させた学習済データである。すなわち、欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200は、良品の標本画像を入力とし、入力された標本画像の再構成画像を出力するように動作する。
【0032】
欠陥検出用学習モデル200は、例えば、ニューラルネットワークを用いたオートエンコーダ、または、変分オートエンコーダ(Variational Autoencoder)である。
【0033】
良品の標本画像は、欠陥が無い対象物90をカメラ110で撮像することによって得られる画像である。以下、良品の標本画像を、「良品画像」とも称する。欠陥検出学習部210は、複数の良品画像を用いた機械学習によって、欠陥検出用学習済データ21を生成し、記憶部125に記憶させる。
【0034】
対象物の検査時には、検査対象となる対象物90をカメラ110で撮像した対象物画像が入力画像として欠陥検出部20へと入力される。再構成画像生成部22は、当該入力画像を、欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200に入力し、入力画像から再構成画像を生成する処理を実行する。差分画像生成部23は、入力画像と再構成画像との差分である差分画像を生成する処理を実行する。欠陥検出処理部24は、差分画像に基づいて欠陥の有無を検出する処理を実行する。
【0035】
欠陥判断用学習モデル300は、記憶部125に保存されている。欠陥判断用学習モデル300は、欠陥検出部20で処理した処理データを入力として、入力された処理データが良品の処理データであるか否かの判断を出力する学習モデルである。
【0036】
欠陥判断用学習済データ31は、欠陥判断学習部310が欠陥判断用学習モデル300を用いた学習を行うことにより得られた学習済データである。具体的には、欠陥判断用学習済データ31は、学習用の標本画像を欠陥検出部20で処理した処理データを欠陥判断用学習モデル300に入力して、欠陥判断学習部310が良品の範囲を学習させた学習済データである。すなわち、欠陥判断用学習済データ31を適用した欠陥判断用学習モデル300は、良品の標本画像から欠陥検出部20が生成した差分画像を入力として、当該差分画像が良品の範囲に含まれるか否かを出力するように動作する。
【0037】
欠陥判断用学習モデル300は、例えば、One Class SVM(One Class Support Vector Machine)である。One Class SVMは、教師あり学習により、分類(Classification)を行うことにより、外れ値検知を行うことができる。なお、欠陥判断用学習モデル300は、その他の教師あり学習を行う機械学習モデルであってもよい。また、欠陥判断用学習モデル300は、One Classニューラルネットワークをはじめとする、教師なし学習によってクラスタリング(Clustering)を行うことのできる機械学習モデルが用いられてもよい。
【0038】
欠陥判断処理部32は、欠陥検出部20が欠陥を検出した対象物90の差分画像を、欠陥判断用学習済データ31を適用した欠陥判断用学習モデル300に入力し、当該対象物90が良品の範囲に属するか否かを判断する欠陥判断処理を実行する。これにより、最終的な欠陥の有無を判断する。すなわち、欠陥判断処理部32が良品の範囲に属すると判断した対象物90については、欠陥検出部20の検出した欠陥を偽の欠陥と判断し、欠陥品としての検出を最終的に行わない。一方、欠陥判断処理部32が良品の範囲に属していないと判断した対象物90については、欠陥検出部20の検出した欠陥を真の欠陥と判断し、最終的な欠陥品として検出する。
【0039】
プロセッサ121は、欠陥判断処理部32によって出力される、最終的な判定結果を表す情報を、表示部129に表示してもよい。判定結果を表す情報は、欠陥を有すると判定された対象画像とともに、異常として検出された対象画像中の位置を示す情報等を含んでいてもよい。
【0040】
欠陥検出用学習済データ21の学習時に入力される複数の標本画像と、欠陥判断用学習済データ31の学習時に入力される複数の標本画像とは、同じ標本画像を含まないことが好ましい。
【0041】
<1-2.欠陥検出学習工程>
欠陥検出学習工程について、
図4を参照しつつ説明する。
図4は、本実施形態の欠陥検出学習工程S10の流れを示すフローチャートである。欠陥検出学習工程S10では、欠陥検出用学習モデル200を用いて欠陥を検出するためのパラメータ等である欠陥検出用学習済データ21を生成する。
【0042】
図4に示すように、情報処理装置120は、まず、複数の良品画像を準備する準備工程を行う(ステップS11)。具体的には、プロセッサ121は、複数の良品の対象物90をカメラ110で撮像することによって、複数の良品の標本画像(良品画像)D11を取得する。そして、プロセッサ121は、取得した複数の良品画像D11を取得する。そして、プロセッサ121は、取得した複数の良品画像を記憶部125に記憶させる。
【0043】
準備工程S11が完了すると、欠陥検出学習部210は、準備工程S11で取得した複数の良品画像をデータセットとして欠陥検出用学習モデル200に入力して、欠陥検出用学習済データ21を生成する第1学習済データ生成工程を実行する(ステップS12)。なお、「学習済データを生成する」の用語は、既に生成された学習済データを更新することを含む。
【0044】
具体的には、第1学習済データ生成工程S12では、欠陥検出学習部210は、複数の良品画像のデータセットを欠陥検出用学習モデル200に入力し、再構成画像を生成させる。そして、入力した画像と再構成画像とがどの程度近似しているかの評価指標を算出する。評価指標には、例えば、入力された良品画像と出力された再構成画像との差分(誤差)の2乗和が用いられる。その後、算出した評価指標に基づいて、バックプロパゲーションにより、欠陥検出用学習モデル200を構成するニューラルネットの重み付けのパラメータ等を含む欠陥検出用学習済データ21を更新する。
【0045】
続いて、欠陥検出学習部210は、欠陥検出用学習モデル200の学習が終了したか否かを判断する(ステップS13)。具体的には、直前の第1学習済データ生成工程S12で算出された評価指標が、所定の範囲内に収束したか否かを判断する。すなわち、直前の第1学習済データ生成工程S12で生成された欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200が、良品画像に近似した再構成画像を所望の精度で生成しているか否かを判断する。具体的には、例えば、第1学習済データ生成工程S12で算出された評価指標が所定の閾値よりも小さい場合、欠陥検出用学習モデル200が学習が終了したと判断する。なお、ステップS13において、第1学習済データ生成工程S12の繰り返し実行回数が予め設定された回数に達した場合にも、学習が終了したと判断してもよい。
【0046】
ステップS13において、欠陥検出用学習モデル200の学習が終了していないと判断すると(ステップS13:No)、プロセッサ121は、第1学習済データ生成工程S12に戻る。
【0047】
ステップS13において欠陥検出用学習モデル200の学習が終了したと判断すると(ステップS13:Yes)、プロセッサ121は、欠陥検出学習部210が生成した欠陥検出用学習済データ21を記憶部125に保存する保存工程を実行する(ステップS14)。
【0048】
図5は、本実施形態の欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200を概念的に示す図である。
図5に示すように、欠陥検出用学習モデル200は、具体的には、エンコーダとデコーダとを有するニューラルネットワークである。エンコーダは、入力画像を次元圧縮することにより潜在変数を求める。デコーダは、潜在変数から元の入力画像を再現する。なお、
図5において示される欠陥検出用学習モデル200の入力層および出力層の要素数や、隠れ層の数は、一例に過ぎず、これに限られない。
【0049】
欠陥検出学習部210は、欠陥検出用学習モデル200が、入力される良品画像D11から、元の良品画像D11と同じ再構成画像D21を出力するように学習を行い、欠陥検出用学習モデル200のパラメータ等である欠陥検出用学習済データ21を生成する。本実施形態の欠陥検出学習工程S10では、欠陥検出学習部210は、例えば、1000枚の良品画像D11を用いて、欠陥検出用学習モデル200の学習を行い、欠陥検出用学習済データ21を生成する。以下では、欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200を、単に「学習済の欠陥検出用学習モデル200」と称する場合がある。
【0050】
図6は、欠陥検出用学習済データ21を適用した(学習済みの)欠陥検出用学習モデル200に対して、不良品の画像(以下「不良画像」と称する)D12を入力した様子を概念的に示す図である。
図6において入力される不良画像D12は、欠陥部分91を含む対象物90を、カメラ110を用いて撮像することにより得られた画像である。欠陥部分91は、例えば、対象物90に付着した汚れまたは異物、欠け等である。学習済みの欠陥検出用学習モデル21が不良画像D12から再現する再構成画像D22は、欠陥部分91を含まない良品画像となる。
【0051】
<1-3.欠陥検出部による欠陥検出工程>
次に、欠陥検出部20における学習済みの欠陥検出用学習モデル200を用いた欠陥検出工程S20について、
図7~
図9を参照しつつ説明する。この欠陥検出工程S20では、対象物90を撮像して得られた対象物画像に基づいて、対象物90の欠陥を検出する。
図7は、本実施形態の欠陥検出部20における欠陥検出工程の流れを示すフローチャートである。
図8および
図9は、欠陥検出工程S20の各段階で得られる画像D1~D3の例を示した図である。なお、
図8は、対象物90が良品である場合の例であり、
図9は、対象物90が不良品である場合の例である。
【0052】
図7に示すように、情報処理装置120は、まず、検査対象となる対象物90を撮影して、対象物90の画像D1(以下「対象物画像D1」と称する)を取得する撮像工程を行う(ステップS21)。具体的には、プロセッサ121は、カメラ110を用いて、検査対象である対象物を撮像することによって、対象物画像D1を取得する。そして、プロセッサ121は、取得した対象物画像D1を記憶部125に記憶させる。
【0053】
次に、再構成画像生成部22は、撮像工程S21によって得られた対象物画像D1から学習済みの欠陥検出用学習モデル200を用いて再構成画像D2を生成する、再構成画像生成工程を実行する(ステップS22)。具体的には、再構成画像生成部22は、対象物画像D1を、欠陥検出用学習済データ21を適用した欠陥検出用学習モデル200に入力し、その出力である再構成画像D2を取得する。そして、プロセッサ121は、取得した再構成画像D2を記憶部125に記憶させる。
【0054】
続いて、差分画像生成部23は、記憶部125に記憶された対象物画像D1および再構成画像D2から差分画像D3を生成する、差分画像生成工程を実行する(ステップS23)。具体的には、差分画像生成部23は、対象物画像D1の各画素の輝度と、再構成画像D2の各画素の輝度との差分を取ることにより、差分画像D3を生成する。そして、プロセッサ121は、取得した差分画像D3を記憶部125に記憶させる。
【0055】
ここで、対象物90が良品である場合、
図8に示すように、再構成画像D2は、対象物画像D1に近似した画像となる。すなわち、この場合、再構成画像D2の各画素の輝度は、対象物画像D1の各画素の輝度と近似する。このため、
図8に示すように、差分画像D3は、近似した画像の輝度が相殺され、各画素の輝度が小さい画像となる。
【0056】
一方、対象物90が不良品である場合、
図9に示すように、対象物画像D1には、欠陥部分91が現れている。このような場合、前述の通り、欠陥部分91を含む対象物画像D1から生成された再構成画像D2は、対象物画像D1から欠陥部分91が除かれたような画像となる。
【0057】
したがって、差分画像D3のうち、対象物90の正常な部分については、近似した画像の輝度が相殺され、各画素の輝度が小さい。一方、差分画像D3のうち、欠陥部分91については、対象物画像D1と再構成画像D2の輝度の差が大きいため、当該部分の輝度は、正常な部分に比べて大きくなる。したがって、
図9に示すように、欠陥部分91は差分画像D3において白っぽく表示されている。このように、差分画像D3を得ることにより、欠陥部分91を特異的に抽出することができる。
【0058】
最後に、欠陥検出処理部24は、差分画像D3に基づいて、対象物90に欠陥が有るか否かを判断する、欠陥検出工程を実行する(ステップS24)。具体的には、欠陥検出処理部24は、差分画像D3の中で、輝度が所定の閾値よりも大きい部分があるか否かを判断する。この閾値は、差分画像D3全体で共通の閾値を用いてもよいし、対象物90の種類によって、差分画像D3の部位によって閾値を設定したものであってもよい。
【0059】
ここで、
図10および
図11を参照しつつ、差分画像D3全体で共通の閾値を用いて欠陥を検出する場合について、説明する。
図10は、良品の対象物90についての差分画像D3と、差分画像D3中の欠陥検出部分画像D4を示した図の例である。
図11は、欠陥部分91を有する不良品の対象物90についての差分画像D3と、差分画像D3中の欠陥検出部分画像D4を示した図の例である。
【0060】
図10および
図11において、上段には差分画像D3が示されており、下段には、差分画像D3のうち、欠陥検出部分画像D4に該当する部分が実線および破線の白線四角で表されたものが示されている。なお、理解容易のため、
図10の差分画像D3と
図11の差分画像D3とは、欠陥部分91以外は同じ輝度を有する画像としている。
【0061】
また、
図10および
図11では、差分画像D3を縦横8×8の64ブロックに分割し、閾値よりも輝度が大きい部分を有しているブロックを欠陥検出部分画像D4としている。なお、差分画像D3の分割方法はこれに限られない。また、必ずしも複数ブロックに分割しなくてもよい。
【0062】
図11に示すように、差分画像D3において、欠陥部分91の輝度は、その他の部位に比べて大きいことは明らかである。しかしながら、この対象物90では、
図10および
図11に示すように、差分画像D3において、欠陥部分91以外にも、比較的輝度が大きい部分がある場合がある。例えば、本実施形態の対象物90は割線を有する錠剤であり、良品であっても、対象物90ごとに割線部分および縁部の光の反射具合が異なる。このため、欠陥検出用学習モデル21が当該光の反射を十分に再構成できず、差分画像D3において輝度が大きくなる虞がある。
【0063】
そのため、
図10および
図11において、真の欠陥部分である実線で囲われた部分の他に、偽の欠陥部分である破線で囲われた部分が欠陥検出部分画像D4として選択される虞がある。すなわち、欠陥検出部分画像D4は、真の欠陥を含む真の欠陥検出部分画像D41と、偽の欠陥を含む偽の欠陥検出部分画像D42とを含む。
【0064】
そこで、この検査装置10は、欠陥検出部20において欠陥が検出された場合に、欠陥検出部20において検出された欠陥(本実施形態では欠陥検出部分画像D4)が真の欠陥であるか否かを判断する欠陥判断部30を有する。
【0065】
<1-4.欠陥判断用学習工程>
欠陥判断用学習工程について、
図12および
図13を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態の欠陥判断用学習工程S30の流れを示すフローチャートである。
図13は、欠陥判断用学習工程S30の各段階で得られる画像D13,D4(D42)の例を示した図である。欠陥判断用学習工程S30では、欠陥判断用学習モデル300を用いて、欠陥検出部20の出力した処理データが良品の範囲に含まれるか否かを判断するためのパラメータ等である欠陥判断用学習済データ31を生成する。
【0066】
図12に示すように、情報処理装置120は、まず、複数の良品画像を準備する準備工程を行う(ステップS31)。具体的には、プロセッサ121は、複数の良品の対象物90をカメラ110で撮像することによって、複数の良品の標本画像(良品画像)D13(図示せず)を取得する。そして、プロセッサ121は、取得した複数の良品画像D13を記憶部125に記憶させる。
【0067】
準備工程S31が完了すると、欠陥判断学習部310は、準備工程S31で取得した複数の良品画像D13を欠陥検出部20に入力し、欠陥検出部20が生成した欠陥検出部分画像D4を取得する、欠陥検出結果生成工程を実行する(ステップS32)。この欠陥検出結果生成工程S32では、1つの良品画像D13に対して、欠陥検出部分画像D4が1つも生成されない場合もあれば、1つまたは複数の欠陥検出部分画像D4が生成される場合もある。ここで、欠陥検出結果生成工程S32において欠陥検出部20に入力される入力画像は全て良品画像D13であるから、このとき欠陥検出部20から出力される欠陥検出部分画像D4は、全て偽の欠陥検出部分画像D42である。このとき、プロセッサは、カウント数nを1としておく。
【0068】
続いて、欠陥判断学習部310は、欠陥検出結果生成工程S32で得られた複数の偽の欠陥検出部分画像D42のn番目の画像を欠陥判断用学習モデル300に入力して、欠陥判断用学習済データ31を生成する第2学習済データ生成工程を実行する(ステップS33)。なお、「学習済データを生成する」の用語は、既に生成された学習済データを更新することを含む。
【0069】
具体的には、欠陥判断学習部310は、One Class SVM等の機械学習モデルである欠陥判断用学習モデル300に、欠陥検出結果生成工程S32で得られた複数の偽の欠陥検出部分画像D42を、「偽の欠陥」であるというラベルとともに欠陥判断用学習モデル31に入力して、偽の欠陥(すなわち良品)の範囲を学習させる。これにより、欠陥判断用学習済データ31が生成される。
【0070】
その後、プロセッサ121は、直前の第2学習済データ生成工程S33で入力された偽の欠陥検出部分画像D42が、準備工程S31で準備された最終の画像であるか否かを判断する(ステップS34)。すなわち、プロセッサ121は、カウント数nが、準備工程S31で準備された偽の欠陥検出部分画像D42の数と一致するか否かを判断する。
【0071】
ステップS34において、最終画像ではないと判断すると(ステップS34:No)、プロセッサ121は、nをインクリメントし(ステップS35)、第2学習済データ生成工程S33に戻る。
【0072】
ステップS34において、最終画像であると判断すると(ステップS34:Yes)、プロセッサ121は、欠陥判断学習部310が生成した欠陥判断用学習済データ31を記憶部125に保存する保存工程を実行する(ステップS36)。
【0073】
なお、欠陥検出用学習済データ21の学習に使用される複数の良品画像と、欠陥判断用学習済データ31の学習に使用される複数の良品画像とは、全て異なっていることが好ましい。すなわち、欠陥検出用学習工程S10の準備工程S11で取得する良品画像と、欠陥判断用学習工程S30の準備工程S31で取得する良品画像とは、異なる。欠陥判断用学習済データ31の学習に、欠陥検出用学習済データ21の学習に用いられるものと同じ良品画像を用いた場合、欠陥判断用学習済データ31を適用した欠陥判断用学習モデル300の誤検出検知割合(偽の欠陥を見抜く割合)が減少する虞がある。
【0074】
<1-5.検査工程(欠陥の検知)>
最後に、検査装置10を用いて製品対象物の欠陥を検出する検査工程について、
図14~
図16を参照しつつ説明する。
図14は、本実施形態の検査装置10を用いた検査工程S30の流れを示すフローチャートである。
図15は、本実施形態の検査装置10を用いた欠陥判断工程S50の流れを示すフローチャートである。
図16は、検査工程S30の各段階で得られる画像D1,D4および分類結果D5の例を示した図である。
【0075】
図14に示すように、情報処理装置120は、まず、上述した欠陥検出部20による欠陥検出工程S20を実行する(ステップS20)。この欠陥検出工程S20は、上記で説明した欠陥検出工程S20と同じである。すなわち、プロセッサ121が、検査対象となる対象物をカメラ110で撮像した対象物画像D1について、欠陥検出部20が欠陥検出用学習モデル21を用いて再構成画像D2を生成し、その後差分画像D3を生成することにより、欠陥の検出処理を行う。
【0076】
欠陥検出工程S20に続いて、情報処理装置120は、欠陥検出部20が欠陥を検出したが否かを判断する(ステップS41)。欠陥検出工程S20において、欠陥検出部20が欠陥を検出しない場合(ステップS41:No)、欠陥検出部20は欠陥検出部分画像D4を出力しない。この場合、情報処理装置120は、欠陥を発見しなかったものとして、当該対象物画像D1についての検査を終了する。
【0077】
一方、欠陥検出工程S20において、欠陥検出部20が欠陥を検出した場合(ステップS41:Yes)、欠陥検出部20は欠陥であると認識した1つまたは複数の部分の欠陥検出部分画像D4を出力する。この場合、情報処理装置120は、欠陥検出部分画像D4を欠陥判断部30へと引き渡し、欠陥判断工程S50へと進む。
【0078】
ここで、
図15および
図16を参照しつつ欠陥判断工程S50について説明する。
図16の例では、対象物画像D1が欠陥部分91を有する。また、
図16の例では、欠陥検出工程S41において欠陥検出部20が複数の欠陥検出部分画像D4を出力している。以下では、
図16の例を参照しつつ、欠陥判断工程S50について説明を行う。
【0079】
欠陥判断工程S50において、欠陥判断処理部32は、欠陥検出工程S20において欠陥検出部20が出力した欠陥検出部分画像D4を欠陥判断用学習済データ31を適用した(学習済みの)欠陥判断用学習モデル300に入力し、欠陥検出部分画像D4がそれぞれ真の欠陥であるか、偽の欠陥であるかに分類させる(ステップS51)。
【0080】
ステップS51では、具体的には、学習済みの欠陥判断用学習モデル300は、入力された欠陥検出部分画像D4が良品の範囲であると判断すると、当該欠陥検出部分画像D4を偽の欠陥検出部分画像D42に分類する。一方、学習済みの欠陥判断用学習モデル300は、入力された欠陥検出部分画像D4が良品の範囲で無いと判断すると、当該欠陥検出部分画像D4を真の欠陥検出部分画像D41に分類する。そして、欠陥検出対象の対象物画像D1についての分類結果D5を出力する。
図16の例では、欠陥判断用学習モデル31は、入力された4つの欠陥検出部分画像D4のうちの1つを真の欠陥検出部分画像位D41に分類し、残りの3つを偽の欠陥検出部分画像D42に分類している。
【0081】
続いて、欠陥判断部30は、学習済みの欠陥判断用学習モデル300の出力した分類結果D5に真の欠陥検出部分画像D41が含まれるか否かを判断する(ステップS52)。欠陥判断部30は、分類結果D5に真の欠陥検出部分画像D41が含まれると判断すると(ステップS52:Yes)、真の欠陥検出部分画像D41を出力して、当該対象物画像D1についての検査を終了する(ステップS53)。一方、欠陥判断部30が分類結果D5に真の欠陥検出部分画像D41が含まれないと判断すると、欠陥を発見しなかったものとして、当該対象物画像D1についての検査を終了する(ステップS54)。
【0082】
このように、欠陥検出部20によって検出された対象物90の欠陥が過検出となっていないかを、欠陥判断部30によって判断する。
【0083】
一般的に、対象物画像に基づいて欠陥を検出する欠陥検出装置では、過検出が生じる可能性がある。この欠陥判断部30は、欠陥判断用学習モデル300と、良品画像を欠陥検出部20で処理した処理データを用いて学習した欠陥判断用学習済データ31とを有している。すなわち、この欠陥判断部30は、良品画像を欠陥検出部20で処理した処理データを用いて学習した学習済みの欠陥判断用学習モデル300を有している。このため、この検査装置10では、対象物画像に基づいて欠陥を検出する欠陥検出部20の検出結果を、このような欠陥判断部30でチェックすることにより、過検出となった良品対象物の画像を判別することができる。したがって、良品を欠陥品として判断してしまう過検出を低減できる。
【0084】
欠陥判断部30の有する学習済みの欠陥判断用学習モデル300は、良品画像のみを用いて良品の範囲を学習している。このため、欠陥品を入手し難い対象物についても、過検出を効率よく低減することができる。
【0085】
特に、本実施形態の欠陥検出部20は、画像の再構成を行う欠陥検出用学習モデル200と、良品画像のみを用いて学習を行った欠陥検出用学習済データ21とを用いている。すなわち、この欠陥検出部20は、良品画像のみを用いて学習した学習済の欠陥検出用学習モデル200を有している。このような欠陥検出用学習モデル200の学習では、学習用の良品画像を増やしたからといって必ずしも検出精度が上がるものではない。このため、欠陥検出部20の後段にこのような欠陥判断部30を設けることにより、欠陥検出用学習モデル200の再学習を行うよりも、効率よく過検出を低減させることができる。
【0086】
上記のように、第1実施形態に係る検査装置10を構成する欠陥検出部20および欠陥判断部30は、欠陥検出学習部210および欠陥判断学習部310によって構築される。すなわち、対象物90を検査する検査装置10を学習する学習装置は、欠陥検出学習部210および欠陥判断学習部310を備える。そして、対象物90を検査する検査装置10を学習する学習方法は、欠陥検出学習部210の行う欠陥検出用学習工程S10と、欠陥判断学習部310の行う欠陥判断用学習工程S30とを含む。これにより、対象物90を検査する検査装置10を構築するための学習済みデータセットを構成する欠陥検出用学習モデル200に適用される欠陥検出用学習済データ21と、欠陥判断用学習モデル300に適用される欠陥判断用学習済データ31とが生成される。
【0087】
<2.第2実施形態>
図17は、第2実施形態の検査装置の情報処理装置120Aが備える機能的な構成を示す図である。情報処理装置120Aは、欠陥検出部20Aと、欠陥判断部30Aと、欠陥判断学習部310Aとを有する。
【0088】
欠陥検出部20Aは、対象物をカメラで撮像することによって得られた対象物画像D1に基づいて、対象物の欠陥を検出する。欠陥検出部20Aは、テンプレート画像記憶部25Aと、比較処理部26Aとを有する。テンプレート画像記憶部25Aには、良品画像の見本となるテンプレート画像が複数記憶されている。比較処理部26Aは、入力された対象物画像D1とテンプレート画像記憶部25Aに記憶されたテンプレート画像とを比較し、不良品であると判断した場合、不良品であると判断した対象物画像D1を不良画像D6として欠陥判断部30Aへと出力する。
【0089】
欠陥判断部30Aは、欠陥検出部20Aが検出した欠陥の真偽を判断する。欠陥判断部30Aは、欠陥判断用学習モデル300Aと、欠陥判断用学習済データ31Aと、欠陥判断処理部32Aとを有する。欠陥判断用学習済データ31Aは、学習用の標本画像を入力として、欠陥判断学習部310Aが良品の範囲を学習させたパラメータ等の学習済データである。具体的には、欠陥判断用学習済データ31Aを適用させた(学習済みの)欠陥判断用学習モデル300Aは、良品の標本画像を入力として、良品の範囲を学習させたモデルである。
【0090】
欠陥判断処理部32Aは、欠陥検出部20Aが欠陥を検出した対象物の対象物画像D1である不良画像D6を学習済みの欠陥判断用学習モデル31Aに入力し、当該不良画像D6が良品の範囲に属するか否かを判断する欠陥判断処理を実行する。これにより、最終的な欠陥の有無を判断した判断結果D7を出力する。
【0091】
第1実施形態では、欠陥検出部20が学習済みの学習モデルを利用したものであったが、本発明の検査装置は、これに限られない。本実施形態のように、欠陥検出部20Aが従来型の検査装置であってもよい。また、第1実施形態では、欠陥判断部30の有する学習済みの欠陥判断用学習モデル31へ入力する画像が欠陥検出部20において処理した処理データであったが、本発明はこれに限られない。第2実施形態のように、欠陥判断部30Aの有する学習済みの欠陥判断用学習モデル31Aへ入力する画像は、欠陥検出部20Aが欠陥を検出した資料の対象物画像そのものであってもよい。
【0092】
<3.変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形および組み合わせが可能である。
【0093】
上記の第1実施形態の欠陥検出用学習済データ21の生成に用いる画像群はすべて良品画像であったが、当該画像群に、不良画像が僅かに含まれていてもよい。欠陥検出用学習済データ21の生成に用いる画像群において、不良画像の数が良品画像の数に比べて十分に小さい場合、不良画像の影響は小さくなる。このため、欠陥検出学習部210は、欠陥検出用学習モデル200が良品画像をほぼ再現するための欠陥検出用学習済データ21を生成することができる。ただし、第1実施形態のように、良品画像のみを用いて欠陥検出用学習済データ21を生成した場合、不良画像が有する異常な特徴の影響が有効に排除される。したがって、良品画像のみから生成された欠陥検出用学習済データ21を用いることにより、良品画像の再構成を高精度に行うことができる。
【0094】
また、上記の第1実施形態の欠陥判断用学習済データ31の生成に用いる画像群はすべて良品画像であったが、当該画像群には、不良画像が含まれていてもよい。欠陥判断用学習済データ31の生成に用いる画像群は、良品ラベルの付された良品画像群と、不良品ラベルの付された不良画像群とを含んでいてもよい。
【0095】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0096】
10 検査装置
20,20A 欠陥検出部
21 欠陥検出用学習済データ
30,30A 欠陥判断部
31,31A 欠陥判断用学習済データ
90 対象物
200 欠陥検出用学習モデル
300,300A 欠陥判断用学習モデル
D1 対象物画像
D2 再構成画像
D3 差分画像
D4 欠陥検出部分画像