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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】遠隔操縦システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/46 20240101AFI20240313BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240313BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20240313BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20240313BHJP
【FI】
G05D1/46
B64C39/02
B64C13/20 Z
G05D1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047622
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021149406
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 修
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友秀
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159232(WO,A1)
【文献】特開平10-108984(JP,A)
【文献】特開2004-359071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
B64C 39/02
B64C 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機と、操縦者が前記無人航空機を操縦するためにマニュアル操縦用の第1電波を出力する第1通信機と、前記無人航空機を自動操縦するために前記第1電波とは周波数が異なる自動操縦用の第2電波を出力する第2通信機とを備え、前記無人航空機の離陸から着陸までの間に少なくとも1回の電波切替時点を有する前記無人航空機の操縦に用いられる遠隔操縦システムであって、
前記無人航空機は、
前記第1通信機からの前記第1電波を受信する第1受信部と、
前記第2通信機からの前記第2電波を受信する第2受信部と、
前記電波切替時点において、前記第1受信部が前記第1電波を受信するとともに前記第2受信部が前記第2電波を受信している状態で、前記第2通信機から送信されてきた電波切替方法を示す情報に従って前記第1通信機からの指示または前記第2通信機からの指示に基づいて、前記第1電波と前記第2電波との間で電波を切り替える切替部と、
前記切替部によって切り替えられた電波に基づいて前記無人航空機をマニュアル操縦または自動操縦する制御部とを備える、遠隔操縦システム。
【請求項2】
前記電波切替時点は、前記無人航空機が離陸モードから移動モードに切り替わるときの第1切替時点と前記無人航空機が移動モードから着陸モードに切り替わるときの第2切替時点とを含み、
前記切替部は、前記第1切替時点および前記第2切替時点のそれぞれにおいて、前記第1受信部が前記第1電波を受信するとともに前記第2受信部が前記第2電波を受信している状態で、前記第1電波と前記第2電波との間で電波を切り替えるように構成される、請求項1に記載の遠隔操縦システム。
【請求項3】
前記切替部は、前記離陸モードおよび前記着陸モードでは前記第1電波を選択し、前記移動モードでは前記第2電波を選択するように構成される、請求項2に記載の遠隔操縦システム。
【請求項4】
前記無人航空機の離陸から着陸までの間に、前記第1通信機から出力される前記第1電波は同一周波数であり、前記第2通信機から出力される前記第2電波は同一周波数である、請求項1から3のいずれかに記載の遠隔操縦システム。
【請求項5】
前記切替部は、前記無人航空機の離陸から着陸までの間に前記第1受信部によって受信される前記第1電波が混信すれば、電波を前記第2電波に切り替えるように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の遠隔操縦システム。
【請求項6】
前記無人航空機は、前記第1電波の受信状況を送信する送信部をさらに含み、
前記第2通信機は、前記送信部から送信される前記受信状況を受信する受信部を含む、請求項1から5のいずれかに記載の遠隔操縦システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は遠隔操縦システムに関し、より特定的には無人航空機の操縦するための遠隔操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例が特許文献1において開示されている。特許文献1には、第1の操縦用送信機からの操縦電波により無人ヘリコプターを操縦した後、第2の操縦用送信機からの操縦電波により無人ヘリコプターを操縦する場合の、第1の操縦用送信機から第2の操縦用送信機への操縦の切換を行う方法が開示されている。この操縦切換方法では、無人ヘリコプターにストロボフラッシャーを設ける一方、ストロボフラッシャーを点滅させる切換用光源スイッチおよび送信機自体をオン/オフさせるスイッチを各操縦用送信機に設ける。そして、操縦の切換位置付近で、第1の操縦用送信機の切換用光源スイッチをオンさせることにより、ストロボフラッシャーを点滅させる。他方の操縦者はその点滅状態を視覚により確認することができる。一方の操縦者は、予め、決められた点滅回数を確認した後、第1の操縦用送信機のスイッチをオフさせ、操縦電波の発信を停止する一方、他方の操縦者は、反対に、予め、決められた点滅回数を確認した後、第2の操縦用送信機のスイッチをオンさせ、操縦電波の発信を開始する。このようにして、操縦が切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-108984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような操縦切換方法では、一方の操縦者によって第1の操縦用送信機のスイッチをオフするタイミングと、他方の操縦者によって第2の操縦用送信機のスイッチをオンするタイミングとを正確に合わせる必要があり、このタイミングがずれると問題が生じるおそれがある。たとえば、第2の操縦用送信機のスイッチをオンするタイミングが早ければ、第1の操縦用送信機からの操縦電波と第2の操縦用送信機からの操縦電波とが混信し、一方、第2の操縦用送信機のスイッチをオンするタイミングが遅れると、操縦電波の空白期間を生じる。その結果、操縦の切換を良好に行えず、無人ヘリコプターの飛行に支障をきたす場合がある。
【0005】
それゆえにこの発明の主たる目的は、操縦を円滑に切り替えることができ、無人航空機を良好に飛行させることができる、遠隔操縦システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、無人航空機と、操縦者が無人航空機を操縦するためにマニュアル操縦用の第1電波を出力する第1通信機と、無人航空機を自動操縦するために第1電波とは周波数が異なる自動操縦用の第2電波を出力する第2通信機とを備え、無人航空機の離陸から着陸までの間に少なくとも1回の電波切替時点を有する無人航空機の操縦に用いられる遠隔操縦システムであって、無人航空機は、第1通信機からの第1電波を受信する第1受信部と、第2通信機からの第2電波を受信する第2受信部と、電波切替時点において、第1受信部が第1電波を受信するとともに第2受信部が第2電波を受信している状態で、第1電波と第2電波との間で電波を切り替える切替部と、切替部によって切り替えられた電波に基づいて無人航空機をマニュアル操縦または自動操縦する制御部とを備える、遠隔操縦システムが提供される。
【0007】
この発明では、第1通信機からのマニュアル操縦用の第1電波と第2通信機からの自動操縦用の第2電波とは相互に周波数が異なり、電波切替時点において、第1通信機から第1電波が出力されるとともに、第2通信機から第2電波が出力されている。このように第1電波および第2電波の周波数は異なるので、両電波が同時に出力されても混信しない。また、電波切替時点において第1電波および第2電波はともに出力されており、その状態で電波が切り替えられるので、操縦用電波の空白期間は生じず、無人航空機は一時的にも無制御とはならない。したがって、操縦を円滑に切り替えることができ、無人航空機を良好に飛行させることができる。
【0008】
好ましくは、電波切替時点は、無人航空機が離陸モードから移動モードに切り替わるときの第1切替時点と無人航空機が移動モードから着陸モードに切り替わるときの第2切替時点とを含み、切替部は、第1切替時点および第2切替時点のそれぞれにおいて、第1受信部が第1電波を受信するとともに第2受信部が第2電波を受信している状態で、第1電波と第2電波との間で電波を切り替えるように構成される。この場合、無人航空機の離陸から着陸までの間の第1切替時点および第2切替時点のいずれにおいても、たとえば、第1電波によるマニュアル操縦から第2電波による自動操縦への切り替え、および第2電波による自動操縦から第1電波によるマニュアル操縦への切り替えが円滑になり、無人航空機を良好に飛行させることができる。
【0009】
また好ましくは、切替部は、離陸モードおよび着陸モードでは第1電波を選択し、移動モードでは第2電波を選択するように構成される。このように、無人航空機の離陸時および着陸時に、第1電波によるマニュアル操縦を用いる場合において、第1電波によるマニュアル操縦と第2電波による自動操縦との間で操縦を円滑に切り替えることができ、無人航空機を良好に飛行させることができる。
【0010】
さらに好ましくは、無人航空機の離陸から着陸までの間に、第1通信機から出力される第1電波は同一周波数であり、第2通信機から出力される第2電波は同一周波数である。このように、同種の操縦モードの電波を同一周波数にすることによって、無人航空機に搭載する通信機の種類を削減することができ、機体コストおよび重量を削減できる。
【0011】
好ましくは、切替部は、無人航空機の離陸から着陸までの間に第1受信部によって受信される第1電波が混信すれば、電波を第2電波に切り替えるように構成される。この場合、無人航空機の操縦中、無人航空機が第1電波の混信を認識すると、もう一方の第2電波に自動的に切り替えられる。これにより、たとえば無人航空機の離陸用および着陸用の同一周波数の第1電波が誤って同時に発信されても、混信により無人航空機の操縦が影響されることはなく、良好な航行を継続できる。
【0012】
また好ましくは、無人航空機は、第1電波の受信状況を送信する送信部をさらに含み、第2通信機は、送信部から送信される受信状況を受信する受信部を含む。この場合、自動操縦からマニュアル操縦に移行するとき、事前にマニュアル操縦用の第1電波が全てオフされている状態を、第2通信機側で確認することができ、マニュアル操縦への切り替え後の混信を予防できる。
【0013】
さらに好ましくは、切替部は、電波切替時点において、第1受信部が第1電波を受信するとともに第2受信部が第2電波を受信している状態で、第1通信機からの指示に基づいて第1電波と第2電波との間で電波を切り替えるように構成される。この場合、第1通信機から切替指示を行うことによって、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、第2通信機の操縦者の負担を軽減できる。
【0014】
好ましくは、切替部は、電波切替時点において、第1受信部が第1電波を受信するとともに第2受信部が第2電波を受信している状態で、第2通信機からの指示に基づいて第1電波と第2電波との間で電波を切り替えるように構成される。この場合、第2通信機から切替指示を行うことによって、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、第1通信機の操縦者の負担を軽減できる。
【0015】
また好ましくは、切替部は、電波切替時点において、第1受信部が第1電波を受信するとともに第2受信部が第2電波を受信している状態で、自動的に第1電波と第2電波との間で電波を切り替えるように構成される。この場合、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、第1通信機および第2通信機の操縦者の負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、操縦を円滑に切り替えることができ、無人航空機を良好に飛行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態に係る遠隔操縦システムを示す図解図である。
図2】遠隔操縦システムの一例を示す電気的ブロック図である。
図3】遠隔操縦システムの動作を説明するための模式図である。
図4】遠隔操縦システムの動作の一例を示すフロー図である。
図5図4の動作の続きを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係る遠隔操縦システム10は、無人ヘリコプタ12と、送信機14と、基地局16と含み、無人ヘリコプタ12の操縦に用いられる。
【0020】
無人ヘリコプタ12は、ボディ18、マスト20、メインロータ22、テールロータ24および機器26を含む。マスト20は、ボディ18から上方に突出するようにかつ回転可能に設けられる。マスト20の上端部にメインロータ22が固定される。テールロータ24は、ボディ18の後端部に回転可能に設けられる。機器26は、ボディ1に設けられる。機器26については後述する。
【0021】
送信機14は、無人ヘリコプタ12に向けて信号を送信し、操縦者2A,2B(図3参照)が無人ヘリコプタ12を操縦するためにマニュアル操縦用の第1電波を出力する。送信機14は、第1スティック状部材28a、第2スティック状部材28b、信号生成部30、CPU32、高周波部34、送信アンテナ36、電源スイッチ38、バッテリ40および切替スイッチ42を含む。
【0022】
図1を参照して、第1スティック状部材28aおよび第2スティック状部材28bは、中立位置から前後左右に移動(傾斜)可能に設けられる。第1スティック状部材28aをab方向(前後方向)に操作することにより、無人ヘリコプタ12のモータ84(後述)が制御され、飛行中の機首の上下方向の角度が変更され、無人ヘリコプタ12が加速又は減速(前進または後進)する。第1スティック状部材28aをcd方向(左右方向)に操作することにより、機首が左右方向に振られる。第2スティック状部材28bをef方向(前後方向)に操作することにより、機体が上昇または下降する。第2スティック状部材28bをgh方向(左右方向)に操作することにより、機体が左右方向に傾けられる。
【0023】
信号生成部30によって、第1スティック状部材28aおよび/または第2スティック状部材28bの中立位置からの操作量に応じたアナログの操作情報が生成され、CPU32によって、与えられたアナログの操作情報がデジタルの操作情報に変換され、高周波部34に送られる。
【0024】
電源スイッチ38をオンすることによって、バッテリ40からの電力が電源スイッチ38を介してCPU32に与えられて、送信機14が起動され、マニュアル操縦用の第1電波を出力可能な状態となる。
【0025】
切替スイッチ42によって、マニュアル操縦用の第1電波および自動操縦用の第2電波の切り替えが指示される。切替スイッチ42からの信号がCPU32に与えられ、CPU32によって、与えられた信号がデジタルの操作情報に変換され、高周波部34に送られる。
【0026】
高周波部34では、デジタルの操作情報によって変調され、得られた無線信号が第1電波として送信アンテナ36から送信される。
【0027】
基地局16は、無人ヘリコプタ12との間で信号を送受信し、無人ヘリコプタ12を自動操縦するために第1電波とは周波数が異なる自動操縦用の第2電波を出力する。
【0028】
基地局16は、自動操縦用の操縦装置44を含む。操縦装置44は、たとえばパーソナルコンピュータからなり、制御部46、入力部48および表示部50を含む。制御部46は、CPU46aおよびメモリ46bを含む。メモリ46bには、操縦装置44の動作を制御するためのプログラムや、入力部48から入力された情報等が記憶される。CPU46a(制御部46)は、メモリ46bに記憶されたプログラムを実行して、自動操縦用のデジタルの操作情報を生成し、高周波部58(後述)に出力する。表示部50には、無人ヘリコプタ12の飛行状態や、第1電波や第2電波の受信状況等が表示される。
【0029】
基地局16は、さらに、操縦スティック52、信号生成部54、CPU56、高周波部58、送受信アンテナ60、電源スイッチ62および切替スイッチ64を含む。
【0030】
操縦スティック52は、無人ヘリコプタ12を操舵するものである。操縦スティック52を操作することによって、たとえば、無人ヘリコプタ12の図示しない駆動源からの駆動力が制御され、それによってメインロータ22およびテールロータ24の回転が制御される。
【0031】
信号生成部54によって、操縦スティック52の操作に応じたアナログの操作情報が生成され、CPU56によって、与えられたアナログの操作情報がデジタルの操作情報に変換され、高周波部58に送られる。
【0032】
電源スイッチ62をオンすることによって、基地局16が起動され、自動操縦用の第2電波を出力可能な状態となる。
【0033】
切替スイッチ64によって、マニュアル操縦用の第1電波および自動操縦用の第2電波の切り替えが指示される。切替スイッチ64からの信号がCPU56に与えられ、CPU56によって、与えられた信号がデジタルの操作情報に変換され、高周波部58に送られる。
【0034】
高周波部58では、デジタルの操作情報によって変調され、得られた無線信号が第2電波として送受信アンテナ60から送信される。
【0035】
無人ヘリコプタ12の機器26は、制御部66、受信アンテナ68、送受信アンテナ70、高周波部72,74、GPSアンテナ76、GPS受信部78、方位センサ80、モータ駆動部82およびモータ84を含む。
【0036】
送信機14の送信アンテナ36から送信された無線信号は、受信アンテナ68で受信されて、高周波部72によって操作に応じたデジタルの操作情報に復調され、制御部66に与えられる。また、基地局16の送受信アンテナ60から送信された無線信号は、送受信アンテナ70で受信されて、高周波部74によって基地局16での操作に応じたデジタルの操作情報に復調され、制御部66に与えられる。
【0037】
GPS衛星8からの無人ヘリコプタ12に関するGPS信号がGPSアンテナ76によって受信され、GPS受信部78へ与えられる。GPS受信部78では、与えられたGPS信号から無人ヘリコプタ12の位置に関する情報および現在の速度を示す速度情報が抽出され、位置に関する情報および速度情報は制御部66へ与えられる。また、方位センサ80によって、無人ヘリコプタ12の飛行方位が検出され、方位検出信号は制御部66へ与えられる。
【0038】
制御部66は、CPU66aおよびメモリ66bを含む。CPU66a(制御部66)は、メモリ66bに記憶されたプログラムを実行し、各構成要素に指示を与え、無人ヘリコプタ12を制御する。たとえば、CPU66a(制御部66)は、与えられた操作情報および速度情報に基づいて制御情報を生成し、モータ駆動部82を制御し、モータ駆動部82によってモータ84が駆動される。モータ84の駆動によって、メインロータ22の角度が変更され、飛行中の無人ヘリコプタ12の機首の上下方向の角度等が調節され、飛行状態が制御される。また、CPU66a(制御部66)は、与えられた位置に関する情報から無人ヘリコプタ12の飛行距離を検出する。
【0039】
この実施形態では、無人ヘリコプタ12が無人航空機に相当し、送信機14が第1通信機に相当し、基地局16が第2通信機に相当する。制御部66は、切替部および制御部として機能する。受信アンテナ68および高周波部70が第1受信部に相当し、送受信アンテナ70および高周波部74が第2受信部に相当する。送受信アンテナ70および高周波部74は、無人航空機の送信部としても機能する。送受信アンテナ60および高周波部58は、第2通信部の受信部として機能する。
【0040】
ついで、遠隔操縦システム10の動作の一例について説明する。
【0041】
図3を参照して、ここでは、無人ヘリコプタ12を、地点Aから地点B,Cを介して地点Dまで移動させる。無人ヘリコプタ12は、地点A,B間の離陸モードおよび地点C,D間の着陸モードでは、第1電波が選択されてマニュアル操縦され、地点B,C間の移動モードでは、第2電波が選択されて自動操縦される。無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間に、地点A側の送信機14および地点D側の送信機14から出力されるマニュアル操縦用の第1電波は同一周波数である。この例では、第1電波は73MHzに設定され、第2電波は2.4GHzに設定される。第2電波は、地点Aから地点B,Cを介して地点Dに至る全区間において発信される。
【0042】
図4および図5を参照して、まず、基地局16の操縦者1が自動操縦用の電源スイッチ62をオンすると、基地局16の送受信アンテナ60から自動操縦用の第2電波が出力され、無人ヘリコプタ12の送受信アンテナ70が受信する(ステップS1)。ついで、送信機14の操縦者2Aがマニュアル操縦用の電源スイッチ38をオンすると、送信機14の送受信アンテナ36からマニュアル操縦用の第1電波が出力され、無人ヘリコプタ12の受信アンテナ68が受信する(ステップS3)。ここで、電源スイッチ38,62をオンすることによる遠隔操縦システム10の起動時には、無人ヘリコプタ12の制御部66は、デフォルトで第1電波を優先的に選択し、無人ヘリコプタ12を第1電波に基づいてマニュアル操縦する。
【0043】
無人ヘリコプタ12は、第1電波に基づいてマニュアル操縦されて地点Aから離陸し(ステップS5)、操縦切替地点である地点Bまで移動される(ステップS7)。制御部66は、GPS衛星86からのGPS信号に含まれる無人ヘリコプタ12の位置に関する情報に基づいて無人ヘリコプタ12の位置を認識できる。無人ヘリコプタ12が地点Bに到着すると、制御部66は、自動操縦用の電源スイッチ62がオンされているか否かを判断し(ステップS9)、電源スイッチ62がオンされるまで待機する。すなわち、制御部66は、無人ヘリコプタ12が地点Bに到着した時点で、無人ヘリコプタ12が自動操縦用の第2電波および操縦者2Aからのマニュアル操縦用の第1電波の両方を受信しているか否かを確認する。
【0044】
ステップS9において所定時間経過しても電源スイッチ62がオンされたことを確認できなければ、自動操縦に移行することができないので、送信機14の操縦者2Aは、無人ヘリコプタ12の飛行を中断し、無人ヘリコプタ12をマニュアル操縦で着陸させる。一方、ステップS9において、制御部66が、電源スイッチ62がオンされていることを確認できれば、ステップS11に進む。
【0045】
ステップS11では、制御部66は、自動操縦への切り替えは手動によるか否かを判断する。ステップS11において自動操縦への切り替えは手動切替であれば、制御部66は、基地局16の操縦者1からの指示による手動切替か否かを判断する(ステップS13)。
【0046】
ステップS13がYESであれば、制御部66は、基地局16の操縦者1からの切替指示があったか否かを判断する(ステップS15)。この切替指示は、基地局16の切替スイッチ64を操作して行われる。ステップS15では、基地局16からの指示があるまで待機し、基地局16からの指示があれば、制御部66は、当該指示に基づいて、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第1電波から第2電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦を自動操縦に切り替える(ステップS17)。
【0047】
一方、ステップS13がNOであれば、送信機14の操縦者2Aからの指示による手動切替に設定されているとして、制御部66は、送信機14の操縦者からの切替指示があったか否かを判断する(ステップS19)。この切替指示は、送信機14の切替スイッチ42を操作して行われる。ステップS19では、送信機14からの指示があるまで待機し、送信機14からの指示があれば、制御部66は、当該指示に基づいて、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第1電波から第2電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦を自動操縦に切り替える(ステップS17)。
【0048】
また、ステップS11において自動操縦への切り替えは自動切替であれば、制御部66は、自動的に、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第1電波から第2電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦を自動操縦に切り替える(ステップS17)。
【0049】
このように電波切替方法としては、送信機14からの指示による手動切替、基地局16からの指示による手動切替、および自動切替の3パターンがあり、基地局16内の操縦装置44の入力部48によって、電波切替方法を設定できる。電波切替方法を示す情報は、基地局16から無人ヘリコプタ12に送信される。無人ヘリコプタ12の制御部66は、ステップS11,S13において、送信されてきた当該情報に基づいて電波切替方法を判断できる。そして、制御部66は、無人ヘリコプタ12が離陸モードから移動モードに切り替わるときの第1切替時点において、受信アンテナ68が第1電波を受信するとともに送受信アンテナ70が第2電波を受信している状態で、送信機14からの指示あるいは基地局16からの指示に基づいてまたは自動的に、電波を第1電波から第2電波に切り替えることができる。
【0050】
ステップS17において電波が切り替えられた後、送信機14の操縦者2Aがマニュアル操縦用の電源スイッチ38をオフする(ステップS21)。すると、送信機14の送信アンテナ36からはマニュアル操縦用の第1電波が出力されなくなり、地点D側の送信機14からの第1電波との混信を防止できる。そして、制御部66は、第2電波に基づいて無人ヘリコプタ12を自動操縦して、操縦切替地点である地点Cまで移動させる(ステップS23)。無人ヘリコプタ12が地点Cに到着すると、制御部66は、送信機14の操縦者2Bによってマニュアル操縦用の電源スイッチ38がオンされているか否かを判断し(ステップS25)、電源スイッチ38がオンされるまで待機する。すなわち、制御部66は、無人ヘリコプタ12が地点Cに到着した時点で、無人ヘリコプタ12が自動操縦用の第2電波および操縦者2Bからのマニュアル操縦用の第1電波の両方を受信しているか否かを確認する。
【0051】
ステップS25において、制御部66が、電源スイッチ38がオンされたことを確認できれば、ステップS27に進む。
【0052】
ステップS27では、制御部66は、マニュアル操縦への切り替えは手動によるか否かを判断する。ステップS27においてマニュアル操縦への切り替えは手動切替であれば、制御部66は、基地局16の操縦者1の指示による手動切替か否かを判断する(ステップS29)。
【0053】
ステップS29がYESであれば、制御部66は、基地局16の操縦者1からの切替指示があったか否かを判断する(ステップS31)。ステップS31では、基地局16からの指示があるまで待機し、基地局16からの指示があれば、制御部66は、当該指示に基づいて、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第2電波から第1電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦をマニュアル操縦に切り替える(ステップS33)。
【0054】
一方、ステップS29がNOであれば、送信機14の操縦者2Bからの指示による手動切替に設定されているとして、制御部66は、送信機14の操縦者からの切替指示があったか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35では、送信機14からの指示があるまで待機し、送信機14からの指示があれば、制御部66は、当該指示に基づいて、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第2電波から第1電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦をマニュアル操縦に切り替える(ステップS33)。
【0055】
また、ステップS27においてマニュアル操縦への切り替えは自動切替であれば、制御部66は、自動的に、無人ヘリコプタ12の制御に用いる電波を第2電波から第1電波に切り替え、無人ヘリコプタ12の操縦をマニュアル操縦に切り替える(ステップS33)。
【0056】
ここで、無人ヘリコプタ12の制御部66は、ステップS27,S29において、基地局16から送信されてきた電波切替方法を示す情報に基づいて電波切替方法を判断できる。そして、制御部66は、無人ヘリコプタ12が移動モードから着陸モードに切り替わるときの第2切替時点において、受信アンテナ68が第1電波を受信するとともに送受信アンテナ70が第2電波を受信している状態で、送信機14からの指示あるいは基地局16からの指示に基づいてまたは自動的に、電波を第2電波から第1電波に切り替えることができる。
【0057】
ステップS33において電波が切り替えられた後、制御部66は、第1電波に基づいて無人ヘリコプタ12をマニュアル操縦して、地点Dに着陸させ(ステップS37)、終了する。
【0058】
なお、無人ヘリコプタ12の制御部66は、無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間に、受信アンテナ68から受信する第1電波が混信すれば、電波を第2電波に切り替える。たとえば、ステップS21において離陸側の送信機14の操縦者2Aが電源スイッチ38をオフし忘れ、その後、ステップ25において着陸側の送信機14の操縦者2Bがマニュアル操縦用の電源スイッチ38をオンすると、混信する可能性があるが、このような場合に効果的である。この場合、電波を第2電波に切り替えた後、操縦者2Aに電源スイッチ38をオフするよう連絡することが望ましい。
【0059】
また、無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間に、無人ヘリコプタ12は、第1電波の受信状況を送受信アンテナ70から送信する。すると、基地局16は、無人ヘリコプタ12での第1電波の受信状況を、送受信アンテナ60から受信し、表示部50に表示させる。これによって、基地局16では、送信機14からの第1電波の発信の有無、すなわち無人ヘリコプタ12が第1電波を受信しているか否かを、常に確認できる。
【0060】
このような遠隔操縦システム10によれば、送信機14からのマニュアル操縦用の第1電波と基地局16からの自動操縦用の第2電波とは相互に周波数が異なり、電波切替時点において、送信機14から第1電波が出力されるとともに、基地局16から第2電波が出力されている。このように第1電波および第2電波の周波数は異なるので、両電波が同時に出力されても混信しない。また、電波切替時点において第1電波および第2電波はともに出力されており、その状態で電波が切り替えられるので、操縦用電波の空白期間は生じず、無人ヘリコプタ12は一時的にも無制御とはならない。したがって、操縦を円滑に切り替えることができ、無人ヘリコプタ12を良好に飛行させることができる。
【0061】
無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間の第1切替時点および第2切替時点のいずれにおいても、第1電波によるマニュアル操縦から第2電波による自動操縦への切り替え、および第2電波による自動操縦から第1電波によるマニュアル操縦への切り替えが円滑になり、無人ヘリコプタ12を良好に飛行させることができる。
【0062】
このように、無人ヘリコプタ12の離陸時および着陸時に、第1電波によるマニュアル操縦を用いる場合において、第1電波によるマニュアル操縦と第2電波による自動操縦との間で操縦を円滑に切り替えることができ、無人ヘリコプタ12を良好に飛行させることができる。
【0063】
同種の操縦モードの電波を同一周波数にすることによって、無人ヘリコプタ12に搭載する通信機の種類を削減することができ、機体コストおよび重量を削減できる。
【0064】
無人ヘリコプタ12の操縦中、無人ヘリコプタ12が第1電波の混信を認識すると、もう一方の第2電波に自動的に切り替えられる。これにより、たとえば無人ヘリコプタ12の離陸用および着陸用の同一周波数の第1電波が誤って同時に発信されても、混信により無人ヘリコプタ12の操縦が影響されることはなく、良好な航行を継続できる。
【0065】
無人ヘリコプタ12から第1電波の受信状況を送信し、基地局16が、無人ヘリコプタ12から送信される受信状況を受信することによって、自動操縦からマニュアル操縦に移行するとき、事前にマニュアル操縦用の第1電波が全てオフされている状態を、基地局16側で確認することができ、マニュアル操縦への切り替え後の混信を予防できる。
【0066】
送信機14の切替スイッチ42から切替指示を行うことによって、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、基地局16の操縦者1の負担を軽減できる。
【0067】
基地局16の切替スイッチ64から切替指示を行うことによって、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、送信機14の操縦者2A,2Bの負担を軽減できる。
【0068】
自動的に第1電波と第2電波との間で電波を切り替えることによって、マニュアル操縦と自動操縦との間の操縦切替を確実に行うことができ、切替スイッチ42,64を用いる必要はなく、送信機14の操縦者2A,2Bおよび基地局16の操縦者1の負担を軽減できる。
【0069】
なお、上述の実施形態では、制御部66は、地点A,B間の離陸モードおよび地点C,D間の着陸モードでは第1電波を選択して無人ヘリコプタ1をマニュアル操縦し、地点B,C間の移動モードでは第2電波を選択して無人ヘリコプタ12を自動操縦する場合について説明したが、これに限定されない。制御部66が、地点A,B間の離陸モードおよび地点C,D間の着陸モードでは第2電波を選択して無人ヘリコプタ12を自動操縦し、地点B,C間の移動モードでは第1電波を選択して無人ヘリコプタ12をマニュアル操縦する場合にも、この発明を適用できる。この場合においても、第2電波による自動操縦と第1電波によるマニュアル操縦との間で操縦を円滑に切り替えることができ、無人ヘリコプタ12を良好に飛行させることができる。また、地点A,B間の離陸モードで用いられる第2電波と地点C,D間の着陸モードで用いられる第2電波とを同一周波数にすることによって、無人ヘリコプタ12に搭載する通信機の種類を削減することができ、機体コストおよび重量を削減できる。
【0070】
上述の実施形態では、無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間に、第1切替時点および第2切替時点の2回の電波切替時点を有する場合について説明したが、これに限定されない。この発明は、無人ヘリコプタ12の離陸から着陸までの間に、少なくとも1回の電波切替時点を有する無人航空機の操縦に用いることができる。
【0071】
地点A,B,C,Dは、特定の位置に限定されず、特定の位置を含む一定のエリアであればよい。
【0072】
上述の実施形態では、基地局16は、無人ヘリコプタ12の送受信アンテナ70から送信される受信状況を、送受信アンテナ60から受信し、表示部50に表示させる場合について説明したが、これに限定されない。当該受信状況は、基地局16から他の機器に出力され、その機器の表示部に表示されてもよい。また、当該受信状況は、基地局16や他の機器において音声出力によって報知されてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、第1通信機として送信機14が用いられ、第2通信機として基地局16が用いられたが、これに限定されない。第1通信機としては、操縦者が無人ヘリコプタ12を操縦するためにマニュアル操縦用の第1電波を出力できる任意の通信機を用いることができ、たとえば通信機本体を傾けて操作する形態の通信機を用いることができる。第2通信機としては、無人ヘリコプタ12を自動操縦するために第1電波とは周波数が異なる自動操縦用の第2電波を出力できる任意の通信機を用いることができ、たとえば第1通信機と同じ形態の通信機を用いることができる。
【0074】
この発明における電波による通信は、Wi-FiやBluetooth(登録商標)などを用いた無線通信であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、無人航空機として無人ヘリコプタ12が用いられる場合について説明したが、これに限定されない。無人航空機として、マルチコプタやそれ以外の任意の飛行体を用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
10 遠隔操縦システム
12 無人ヘリコプタ
14 送信機
16 基地局
26 機器
34,58,72,74 高周波部
36 送信アンテナ
38,62 電源スイッチ
42,64 切替スイッチ
44 操縦装置
46,66 制御部
48 入力部
50 表示部
60,70 送受信アンテナ
68 受信アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5