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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】粘性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/08 20060101AFI20240313BHJP
   E21D 9/13 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01N11/08
E21D9/13 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055311
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156657
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591022232
【氏名又は名称】株式会社三央
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕二
(72)【発明者】
【氏名】東條 光洋
(72)【発明者】
【氏名】堀内 民夫
(72)【発明者】
【氏名】三戸 憲二
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】中路 貴元
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0336310(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094119(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065044(US,A1)
【文献】特開平06-347393(JP,A)
【文献】特開平10-325790(JP,A)
【文献】特開平8-270382(JP,A)
【文献】特開平8-270380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00-13/04
E21D 9/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水式のシールド掘削機と地上に設けられた泥水処理プラントとの間を循環する泥水の粘性を測定する粘性測定装置であって、
地上において円弧状に形成された曲管部と、
地上において前記泥水の循環路から分岐して前記曲管部の一端に接続され、直線状に形成された第一直管部と、
地上において前記泥水の循環路から分岐して前記曲管部の他端に接続され、直線状に形成された第二直管部と、
少なくとも一定期間、循環する前記泥水の一部を一定の流量で前記循環路から順に第一直管部、前記曲管部及び前記第二直管部に流す給液ポンプと、
前記第一直管部に設けられ、前記第一直管部を流れる前記泥水の圧力を測定する第一圧力測定器と、
前記第二直管部に設けられ、前記第二直管部を流れる前記泥水の圧力を測定する第二圧力測定器と、
前記第一圧力測定器が測定した圧力と前記第二圧力測定器が測定した圧力の差分を求め、その差分に基づいて前記泥水の粘性を算出する算出手段と、
所定時間ごとに、前記第一直管部、前記曲管部及び前記第二直管部に水を流す洗浄手段と、を備えることを特徴とする粘性測定装置。
【請求項2】
前記曲管部が透明であることを特徴とする請求項1に記載の粘性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水式のシールド掘削機を用いたトンネル掘削においては、泥水を流す管が詰まったり、切羽が崩壊したりしてしまうことを防止するため、泥水の粘性を所定範囲内に保つことが重要である。
このため、従来、シールド掘削機と地上に設けられた泥水処理プラントとの間を循環する泥水の粘性を測定するための各種技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、泥水の差圧を、管路内の少なくとも2カ所での圧力差として測定する差圧測定手段を備え、差圧測定手段が測定した差圧及び流速の比Δh/Vと、記憶手段が記憶する管路内を流れる泥水の差圧Δh、流速Vの比Δh/Vと粘性との関係データと、に基づき泥水の粘性を求める演算手段を備える泥水の特性測定装置について記載されている。
また、特許文献2には、排泥管の流路に設けられ、粗粒分を含まない泥水を分流する分流装置と、分流装置で分流された泥水を流す分岐管と、分岐管を流れる泥水の粘性を測定する振動式粘度計を含む泥水粘性測定装置と、を有する泥水粘性測定システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3126626号公報
【文献】特許第3792349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された装置は、泥水のメイン流路である送泥管を流れる泥水の圧力を測定するものとなっている。送泥管を流れる泥水の流速は変化し易いため、差圧の測定値も変化し易くなり、粘性を正確に測定することが困難となってしまう。
また、特許文献2に記載されたシステムは、分岐管を流れる泥水を用いて粘性を測定するものではあるが、本流管に設けられた開口を通じて分岐管へ泥水を導入するようになっている。このため、本流管を流れる泥水の流速に変化が生じると、分岐管を流れる泥水の流速も変化する。このため、振動棒の振れ方にも変化が生じ、やはり粘性を正確に測定することが困難となってしまう。
【0006】
また、泥水が流れる管は泥によって目詰まりし易い。管が目詰まりすると、必要なタイミングで測定することが困難になってしまう。このため、泥水を流す管を定期的に洗浄する必要がある。
しかしながら、特許文献1,2に記載された装置、システムはいずれも、地中において泥水の粘性を測定するものとなっている。このため、洗浄を行う度に作業者が地下に出向かなければならず、手間がかかっていた。
【0007】
また、特許文献1に記載された装置のように2か所に測定器を配置して差圧を測定する場合、差圧を大きく出すため、直線状の管に、二つの測定器をある程度(特許文献1の場合は10m)離して配置する必要があった。このため、粘性を測定する装置(管及び測定・演算を行うのに必要な各種装置)大型化し、場所を取ってしまっていた。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、泥水式のシールド掘削機を用いたトンネル掘削を行う際に、泥水の粘性を、場所を取らずに、手間をかけずに、かつ正確に測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、泥水式のシールド掘削機と地上に設けられた泥水処理プラントとの間を循環する泥水の粘性を測定する粘性測定装置であって、
地上において円弧状に形成された曲管部と、
地上において前記泥水の循環路から分岐して前記曲管部の一端に接続され、直線状に形成された第一直管部と、
地上において前記泥水の循環路から分岐して前記曲管部の他端に接続され、直線状に形成された第二直管部と、
少なくとも一定期間、循環する前記泥水の一部を一定の流量で前記循環路から順に第一直管部、前記曲管部及び前記第二直管部に流す給液ポンプと、
前記第一直管部に設けられ、前記第一直管部を流れる前記泥水の圧力を測定する第一圧力測定器と、
前記第二直管部に設けられ、前記第二直管部を流れる前記泥水の圧力を測定する第二圧力測定器と、
前記第一圧力測定器が測定した圧力と前記第二圧力測定器が測定した圧力の差分を求め、その差分に基づいて前記泥水の粘性を算出する算出手段と、
所定時間ごとに、前記第一直管部、前記曲管部及び前記第二直管部に水を流す洗浄手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の粘性測定装置であって、
前記曲管部が透明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、泥水式のシールド掘削機を用いたトンネル掘削を行う際に、泥水の粘性を、場所を取らずに、手間をかけずに、かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る掘削システムを示すブロック図である。
図2図1の掘削システムが備える泥水処理プラントの一部を示すブロック図である。
図3図2の泥水処理プラントが備える粘性測定装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4】(a),(b)は図3の粘性測定装置の一部を示す平面図、(c)は(a))のC-C断面図、(d)は(a)のD-D断面図である。
図5】粘性測定装置が格納するデータの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0014】
〔1.掘削システム〕
初めに、本実施形態に係る掘削システム100の概略構成について説明する。
図1は掘削システム100を示すブロック図である。
【0015】
本実施形態に係る掘削システム100は、泥水式シールド工法に用いられるもので、図1に示すように、シールド掘削機1と、泥水処理プラント2と、送泥部3と、排泥部4と、中央制御室5と、を備えている。
【0016】
(シールド掘削機)
シールド掘削機1は、地盤Gの中に配置されている。
シールド掘削機1は、本体11と、カッターヘッド12と、を備えている。
【0017】
本体11は、泥水が充填される図示しないチャンバーと、カッターヘッド12を回転させるための図示しないカッター回転機構と、シールド掘削機1を前進させるための図示しない推進機構と、を備えている。
カッターヘッド12は、本体11の前方に備えられ、本体11のカッター回転機構が駆動することによって回転するようになっている。
【0018】
(泥水処理プラント)
泥水処理プラント2は、地上に配置されている。
泥水処理プラント2は、一次処理部21と、調整槽22と、粘性測定装置200と、を備えている。
【0019】
一次処理部21は、シールド掘削機1から送られてきた土砂成分を多く含む掘削後の泥水から、例えばふるいにかけることにより、粒度の大きい礫や砂を分離するよう構成されている。
また、一次処理部21は、礫や砂を分離した後の泥水を調整槽22へ送るよう構成されている。
【0020】
調整槽22は、一次処理部21から送られてきた礫や砂が分離された分離後の泥水を一時的に貯留しておくものである。
この調整槽22に貯蔵されている泥水に作業者が水道水や増粘剤を添加することで、泥水の粘性が調整される。
また、調整槽22は、貯留している泥水の一部を粘性測定装置200へ送るよう構成されている。
【0021】
粘性測定装置200は、シールド掘削機1と泥水処理プラント2との間を循環する(ここでは、調整槽22に貯留されている)泥水の粘性を測定するよう構成されている。
この粘性測定装置200の詳細については後述する。
【0022】
(送泥部)
送泥部3は、送泥管31と、送泥ポンプ32と、を備えている。
送泥管31は、泥水処理プラント2の調整槽22から、シールド掘削機1のチャンバーへと続いている。
送泥ポンプ32は、調整槽22から調整後の泥水を汲み上げ、その泥水を、送泥管31を介してシールド掘削機1のチャンバーへ送り込むよう構成されている。
【0023】
(排泥部)
排泥部4は、排泥管41と、排泥ポンプ42と、を備えている。
排泥管41は、シールド掘削機1のチャンバーから、泥水処理プラント2の一次処理部21へと続いている。
排泥ポンプ42は、チャンバー内に溜まっている泥水を、排泥管41を介して一次処理部21へ送り込むよう構成されている。
【0024】
(中央制御装置)
中央制御室5は、図示しない制御装置、表示部、操作部等を備えている。
そして、制御装置が、カッターヘッド12の回転速度、シールド掘削機1の推進速度、チャンバー内の泥水圧(送泥ポンプ32の送泥量、排泥ポンプ42の排泥量)等を制御するようになっている。
また、中央制御室5の表示部は、制御対象の状況(各種数値等)を表示するようになっている。
なお、図1には、地上に配置された中央制御室5を例示したが、中央制御室5は地盤Gの中(シールド掘削機1の後方等)に配置されていてもよい。
【0025】
(掘削システムの動作)
以上のように構成された本実施形態に係る掘削システム100は、中央制御室5の制御に基づいて送泥ポンプ32及び排泥ポンプ42が駆動することにより、シールド掘削機1のチャンバーに泥水が充填されるとともに、チャンバー内の泥水圧が切羽から受ける土圧よりも高くなるよう調節される。
そして、中央制御室5の制御に基づいてカッターヘッドが前進しながら回転することにより、切羽が掘削され、発生した土砂がチャンバー内に取り込まれ、掘削後の泥水として排泥管41を通って地上に排出される。
地上に排出された掘削後の泥水は、一次処理部21において礫や砂が分離され、分離後の泥水として調整槽22へ送られる。
分離後の泥水は、調整槽22において粘性の調整が行われ、調整後の泥水として排泥管41を通ってシールド掘削機1のチャンバーへ送られる。
これらの動作が繰り返されることにより、地盤Gの中にトンネルTが形成されていく。
【0026】
〔2.粘性測定装置〕
次に、上記掘削システム100の泥水処理プラント2が備える粘性測定装置200の詳細について説明する。
図2は泥水処理プラント2の一部を示すブロック図、図3は粘性測定装置の電気的構成を示すブロック図、図4(a),(b)は粘性測定装置の一部を示す平面図、(c)は(a)のC-C断面図、(d)は(a)のD-D断面図、図5は粘性測定装置が格納するデータ及び算出された関係式の一例を示すグラフである。
【0027】
(粘性測定装置の構成)
粘性測定装置200は、図2,3に示すように、測定部6と、制御部7と、を備えている。
【0028】
測定部6は、図2に示すように、砂分離槽61と、給液管部62と、給液ポンプ63と、測定管部64と、第一圧力測定器65と、第二圧力測定器66と、流量測定器67と、排液管部68と、を備えている。
【0029】
砂分離槽61は、調整槽22からサンプリング管221を経由して送られてきた泥水から、例えばサイクロン方式を用いて、粒度の小さい砂を分離するよう構成されている。
【0030】
給液管部62は、砂分離槽61から、測定管部64へと続いている。
給液管部62は、バルブ62aを備えている。
バルブ62aは、給液管部62の入口近傍に設けられ、砂分離槽61から給液管部62内へ泥水が流入するのを止めることが可能となっている。
【0031】
給液ポンプ63は、分流手段をなすもので、少なくとも一定期間、砂分離槽61から砂を分離した分離後の泥水(循環する泥水)の一部を汲み上げ、その分離後の泥水を、給液管部62を介して測定管部64へ送り込むよう構成されている。
本実施形態に係る給液ポンプ63は、定量無脈動ポンプとなっている。このため、常に一定量の泥水を、一定の吐出圧力で測定管部64へ供給することができる。
また、本実施形態に係る給液ポンプ63は、後述する流量制御部71bによる制御に基づいて、給液管部62及びその後に続く測定管部64を流れる泥水の流量を調節することが可能となっている。
なお、無脈動ポンプを用いる代わりに、通常の脈動する定量ポンプを用い、泥水の脈動をエアチャンバー等で相殺するようにしてもよい。
【0032】
測定管部64は、地上において泥水の循環路から分岐するとともに、U字状に形成されている
また、測定管部64は、図4に示すように、第一直管部641と、曲管部642と、第二直管部643と、を有している。
また、本実施形態に係る測定管部64は、給水管部644と、戻し管部645と、洗浄排水管部646と、サンプリング管部647と、を更に有している。
【0033】
第一直管部641は、給液ポンプ63の吐出口から曲管部642の入口へと直線的に続いている。
本実施形態に係る第一直管部641は、透明材料で形成されている。
第一直管部641の曲管部642側の端部はボルト孔の形成されたフランジ641aになっている。
【0034】
第二直管部643は、曲管部642の出口から排液管部68へと直線的に続いている。
本実施形態に係る第二直管部643は、透明材料で形成されている。
第二直管部643の曲管部642側の端部はボルト孔の形成されたフランジ643aになっている。
【0035】
曲管部642は、第一直管部641と第二直管部643とを接続している。
本実施形態に係る曲管部642は、透明材料で1/2の円弧状に形成されている。具体的には、透明な塩化ビニル製の直線管を曲げ加工したものとなっている。塩化ビニル製の管は、他の材料で生成された管に比べて内面が均等に滑らかで、泥水の粘性による圧力損失のみを捉え易くなっている。
なお、透明材料はアクリル等であってもよい。
また、曲管部642は、1/4の円弧状(測定管部64は平面視L字状)、又は1/3程度の円弧状(測定管部64はV字状)であってもよい。
【0036】
曲管部642の両端部は、ボルト孔の形成されたフランジ642a,642bになっている。
そして、曲管部642の一端側のフランジ642aは、ボルト及びナットを用いて第一直管部641のフランジに結合されている。
また、曲管部642の他端側のフランジ642bは、ボルト及びナットを用いて第二直管部643のフランジ643aに結合されている。
すなわち、曲管部642は、ボルト及びナットの締結を解除することにより、取り外すことが可能となっている。
【0037】
給水管部644は、図示しない希釈水の給水設備(例えば、フィルタープレス等)から伸び、第一直管部641の中間部に合流している。
給水管部644は、バルブ644aと、逆流防止弁644bと、を備えている。
バルブ644aは、給水管部644の中間部に設けられ、第一直管部641内へ希釈水が流入するのを止めることが可能となっている。
逆流防止弁644bは、給水管部644におけるバルブ644aと第一直管部641との間に設けられ、第一直管部641から給水設備の方へ泥水が逆流するのを防ぐようになっている。
【0038】
戻し管部645は、第二直管部643の中間部から枝分かれし、砂分離槽61まで続いている。
戻し管部645は、バルブ645aを備えている。
バルブ645aは、戻し管部645の入口近傍に設けられ、戻し管部645内へ泥水が流入するのを止めることが可能となっている。
【0039】
洗浄排水管部646は、第二直管部643の中間部から枝分かれし、調整槽22まで続いている。
洗浄排水管部646は、バルブ646aを備えている。
バルブ646aは、洗浄排水管部646の入口近傍に設けられ、洗浄排水管部646内へ泥水や希釈水が流入するのを止めることが可能となっている。
【0040】
サンプリング管部647は、 第二直管部643の中間部から枝分かれし、先端が吐出口になっている。
サンプリング管部647は、バルブ647aを備えている。
バルブ647aは、サンプリング管部647の入口近傍に設けられ、サンプリング管部647内へ泥水が流入するのを止めることが可能となっている。
【0041】
測定管部64を構成する各管部641~647のうち、少なくとも第一直管部641、曲管部642及び第二直管部643は、管内径を13Aとしている。
管内径を13Aとしている理由は、以下の通りである。
管内摩擦圧力損失ΔP(第一圧力測定器65の測定値と第二圧力測定器66の測定値との差分に相当)は、下記式(1)を用いて算出することができる。
ΔP=λ×(l/d)×{(ρ×u2)/2}・・式(1)
ただし、λ:管内摩擦係数、l:管長(m)、d:管内径(m)、ρ:流体密度(kg/m3)、u:平均流速(m/sec)
この式(1)は、管内摩擦圧力損失ΔPが管内径dに反比例することを示している。すなわち、管内径dを大きくしすぎると、式(1)によって算出される管内摩擦圧力損失ΔPが小さくなりすぎてしまう(泥水のファンネル粘性を求めることが困難になってしまう)ため、そうならないように測定管部64の長さlを長くするか、給液ポンプ63を大型化して平均流速uを上げなければならない。しかし、このようにすると粘性測定装置200が大型化してしまう。
このような理由に鑑み、管内径dを、市販の塩化ビニル管の最小管内径である13Aとしている。
【0042】
また、本実施形態に係る曲管部642は、曲げ半径を200mmとしている。
曲げ半径を200mmとしている理由は、以下のとおりである。
直線管を曲げ加工する際、曲げ半径が小さすぎると、管の壁に作用するひずみによって管の内面に凹凸が生じてしまう。この凹凸は、泥水が通った時に泥が付着し易くなる要因となってしまう。
そこで、塩化ビニルの直線管を様々な曲げ半径で曲げ加工し、内面に凹凸が生じない最小の曲げ半径であった200mmを、曲管部642の曲げ半径としている。
また、曲管における圧力損失の影響を小さくするためには、曲げ半径rを管内径dよりも大きくする(一般的に2倍以上とする)必要がある。本実施形態に係る曲管部642は、管内径13A(d≒13mm)に対し、曲げ半径rが10倍以上大きくなっているため、曲管部642での圧力損失は無視できるほど小さくなっている。すなわち、本実施形態に係る平面視U字状の測定管部64は、全体が直線状の測定管部を用いた場合と同様の粘性の測定結果を得ることができる。
一方で、測定管部64がU字状をしていることにより、外観の大きさが同程度の他の(測定管部64がU字状をしていない)粘性測定装置に比べて、第一圧力測定器65から第二圧力測定器66までの管の長さを長くとることができるため、測定される泥水の圧力差が増加する可能性が考えらえる。圧力差が増加すれば、測定精度の向上につながる。
【0043】
以上説明してきた測定管部64は、曲管部642で折り返す形となるため、測定管部64全体を直線状に構成した場合に比べ、粘性測定装置200を小型化することができる。
また、本実施形態に係る測定管部64は、曲管部642が透明になっているため、泥が付着し始めてもそれをすぐに発見することができる。
【0044】
第一圧力測定器65は、第一直管部641の中間部に設けられている。
そして、第一圧力測定器65は、第一直管部641を流れる泥水の圧力を測定するよう構成されている。
【0045】
第二圧力測定器66は、第二直管部643の中間部に設けられている。
そして、第二圧力測定器66は、第二直管部643を流れる泥水の圧力を測定するよう構成されている。
すなわち、第二圧力測定器66は、測定管部64を流れる泥水の圧力を、第一圧力測定器65よりも下流において測定するようになっている。
【0046】
流量測定器67は、第一直管部641の中間部に設けられている。
そして、流量測定器67は、第一直管部を流れる泥水の単位時間当たりの流量を測定するよう構成されている。
なお、流量測定器67は、第二直管部643や曲管部642に設けられていてもよい。
【0047】
排液管部68は、測定管部64の出口(第二直管部643)から調整槽22へと続いている。
排液管部68は、バルブ68aを備えている。
バルブ68aは、排液管部68の入口近傍に設けられ、排液管部68内へ泥水が流入するのを止めることが可能となっている。
【0048】
制御部7は、図3に示したように、CPU(Central Processing Unit)71と、図示しないRAM(Random Access Memory)と、記憶部72と、を備えている。
また、本実施形態に係る制御部7は、操作部73を更に備えている。
【0049】
CPU71は、記憶部72に記憶されている各種プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、粘性測定装置200各部の動作を集中制御するようになっている。
記憶部72は、不揮発性の半動態メモリーやハードディスク等により構成されている。
記憶部72は、CPU71が実行する各種プログラム等を記憶している。
【0050】
また、記憶部72は、例えば図5に示すような、過去に測定した、第一圧力測定器65による測定値と第二圧力測定値66による測定値との差分ΔPと、泥水のファンネル粘性の測定値との関係を示すデータを複数格納している。
データは、図5(a)、(b)に示したように、掘削する地盤Gの土質毎に複数用意されている。
【0051】
CPU71は、機能毎に、差圧演算部71aと、流量制御部71bと、粘性演算部71cと、洗浄制御部71dと、に分かれている。
【0052】
差圧演算部71aは、第一圧力測定器65が測定した上流側圧力値及び第二圧力測定器66が測定した下流側圧力値をそれぞれ取得し、上流側圧力値と下流側圧力値の差分を算出する。
【0053】
流量制御部71bは、流量測定器67が測定した泥水の流量を取得する。
また、流量制御部71bは、泥水の単位時間当たりの流量が所定範囲内に収まるよう、給液ポンプ63の動作を制御する。
流量の範囲は、管内の平均流速が限界沈殿流速0.68(m/sec)より大きくなるような値とすることが好ましい。そこで、本実施形態に係る流量制御部71bは、流量の範囲を6(L/min:平均流速の設定値が0.75(m/sec)となる値)としている。
【0054】
粘性演算部71cは、記憶部72に記憶された、圧力値の差分とファンネル粘性の関係を示す複数のデータに基づいて、図5に示したような、複数のデータの集合を直線に近似した場合の、当該直線を表す一次関数を、圧力値の差分とファンネル粘性の関係を示す関係式として算出する。
そして、粘性演算部71cは、算出した関係式に、差圧演算部71aが算出した圧力値の差分ΔPを代入してファンネル粘性を算出する。すなわち、制御部7は、第一圧力測定器65が測定した圧力及び第二圧力測定器66が測定した圧力に基づいて泥水の粘性を算出する算出手段をなす。
【0055】
また、粘性演算部71cは、算出したファンネル粘性を中央制御室5へ送信する。送信されたファンネル粘性は、中央制御室5の表示部に表示される。
また、粘性演算部71cは、作業者が操作部73を操作してファンネル粘性(器具を使って実際に測定した値)を入力してきた場合に、記憶部72に記憶されているデータに追加する。これにより、次回算出する関係式が追加されたデータを反映させたものとなり、より正確なファンネル粘性を算出できるようになる。
なお、ここでは、粘性演算部71cが圧力の差分とファンネル粘性の関係式を算出することとしたが、別のところで算出された相関式を入力可能とし、入力された関係式を用いてファンネル粘性を算出するようになっていてもよい。
【0056】
洗浄制御部71dは、各管部のバルブ62a,644a,646a,68aの開閉を制御することにより、測定管部64への泥水の流入を定期的に(所定時間ごとに)停止させるとともに測定管部64へ希釈水を流し込むようになっている。
すなわち、洗浄制御部71dは、洗浄手段をなす。
【0057】
(粘性測定装置の動作)
以上のように構成された本実施形態に係る粘性測定装置200は、給液管部62のバルブ62a及び排液管部68のバルブ68aが開かれるとともに他のバルブ644a,5a,646a,647aが閉じられた状態で給液ポンプ63が駆動すると、砂分離槽61から分離後の泥水が汲み上げられ、給液管部62、測定管部64、排液管部68を通って、調整槽22へ戻される。
分離後の泥水が測定管部64内を流れている間、第一,第二圧力測定器65,66が泥水の圧力を測定し、流量測定器67が泥水の単位時間当たりの流量を測定する。
そして、制御部7のCPU71が、泥水の流量が変化しないよう給液ポンプ63の動作を制御しつつ、測定した泥水の圧力の差分ΔPに基づいてファンネル粘性を算出する。
【0058】
また、分離後の泥水が測定管部64内を流れている間、戻し管部645のバルブ645aを開き、排液管部68のバルブ68aを閉じると、測定管部64を流れてきた泥水は、調整槽22ではなく、砂分離槽61へ戻される。
また、分離後の泥水が測定管部64内を流れている間、サンプリング管部647のバルブ647aを開くと、測定管部64を流れてきた泥水の一部がサンプルとして取り出される。
【0059】
(粘性測定装置の維持管理)
粘性測定装置200は、使用し続けるうちに、測定管部64の内面に泥が付着してくる。上述したように、第一直管部641、曲管部642及び第二直管部643は透明になっているため、作業者は泥が付着し始めたことを容易に確認することができる。
泥の付着が視認された場合には、給液ポンプ63の駆動を止め、給液管部62のバルブ62a及び排液管部68のバルブ68aを閉じ、洗浄排水管部646のバルブ646aを開いて、給水管部644のバルブ644aを開く。すると、希釈水が測定管部64内を洗浄しながら流れ、洗浄排水管部646を通って調整槽22へ排出される。
曲管部642内に付着した泥が見えなくなったら、給水管部644のバルブ644aを閉じて洗浄を終了する。
【0060】
なお、泥の付着量が多くなりすぎ、希釈水を流すだけでは洗浄が困難な状態になってしまった場合には、給液ポンプ63の駆動を止め、給液管部62のバルブ62aを閉じ、曲管部642を第一,第二直管部641,643から取り外す。そして、曲管部642内や、第一,第二直管部641,643内に付着した泥を、ブラシ等を用いて除去する。上述したように、本実施形態に係る曲管部642は、ボルト及びナットによって第一,第二直管部641,643と結合されているため、作業者は曲管部642の取り外し・取り付けを容易に行うことができる。
【0061】
〔3.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係る粘性測定装置200によれば、泥水式のシールド掘削機1を用いたトンネル掘削を行う際に、泥水の粘性を、場所を取らずに、手間をかけずに、かつ正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 掘削システム
1 シールド掘削機
11 本体
12 カッターヘッド
2 泥水処理プラント
21 一次処理部
22 調整槽
221 サンプリング管
200 粘性測定装置
6 測定部
61 砂分離槽
62 給液管部
62a バルブ
63 給液ポンプ
64 測定管部
641 第一直管部
641a フランジ
642 曲管部
642a,642b フランジ
643 第二直管部
643a フランジ
644 給水管部
644a バルブ
644b 逆流防止弁
645 戻し管部
645a バルブ
646 洗浄排水管部
646a バルブ
647 サンプリング管部
647a バルブ
65 第一圧力測定器
66 第二圧力測定器
67 流量測定器
68 排液管部
68a バルブ
7 制御部
71 CPU
71a 差圧演算部
71b 流量制御部
71c 粘性演算部
71d 洗浄制御部
72 記憶部
73 操作部
3 送泥部
31 送泥管
32 送泥ポンプ
4 排泥部
41 排泥管
42 排泥ポンプ
5 中央制御室
G 地盤
T トンネル
図1
図2
図3
図4
図5