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特許7453838鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20240313BHJP
   E04C 3/36 20060101ALI20240313BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04C3/36
E04B1/58 508S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073574
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169736
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 靖夫
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-072840(JP,A)
【文献】特開2007-224509(JP,A)
【文献】特開平09-291599(JP,A)
【文献】特開平06-306941(JP,A)
【文献】特開2001-262704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00ー1/61
E04C 3/00ー3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、この鋼管の内部に充填されたコンクリートとを有する鋼管コンクリート柱における前記鋼管の内周面に固定される内ダイヤフラムであって、
略水平板状のダイヤフラム本体と、前記ダイヤフラム本体の下側の空気を上側に排出するために前記ダイヤフラム本体を上下方向に貫通して設けられる空気抜き孔と、前記ダイヤフラム本体の下面に形成され、前記空気抜き孔に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した傾斜部と、コンクリートを打設するために前記ダイヤフラム本体の中心側を上下方向に貫通して設けられる打設孔とを備え、前記空気抜き孔は、前記ダイヤフラム本体の周縁側に設けられることを特徴とする鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム。
【請求項2】
前記ダイヤフラム本体の上面における前記空気抜き孔が、前記打設孔よりも高い位置にあることを特徴とする請求項に記載の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム。
【請求項3】
前記ダイヤフラム本体の下面の形状が、前記ダイヤフラム本体の中心を凹頂部とする凹錘状、凹状または凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一つに記載の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムを備えることを特徴とする鋼管コンクリート柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管コンクリート(CFT)構造の柱では、鉄骨梁からの荷重を伝達するために、柱梁接合部にダイヤフラムが設けられる。ダイヤフラムには、鋼管の外側に設けられる外ダイヤフラムと、内側に設けられる内ダイヤフラムと、通しダイヤフラムがある。内ダイヤフラムの例を図7(1)、(2)に示し、通しダイヤフラムの例を図7(3)、(4)に示す。ただし図中の符号1は鋼管、符号2は内ダイヤフラム、符号3は通しダイヤフラム、符号4は鉄骨梁、符号5はコンクリート、符号6は打設孔である。
【0003】
外ダイヤフラム形式では、鋼管柱の外側にダイヤフラムがあるため、外形に影響して納まりが悪い。一方、内ダイヤフラム形式では、ダイヤフラムが鋼管柱の内側に設けられるため外観はすっきりとするが、鋼管柱内にコンクリートを打設する際に、ダイヤフラムがコンクリート充填の妨げになるという問題がある。特にダイヤフラムの下面ではコンクリートに巻き込まれた空気が抜けにくく、気泡が残ってコンクリートの充填性が悪くなり、ダイヤフラムとコンクリートの間で十分な荷重伝達が困難になる問題がある。これは、コンクリートを下から圧入する場合でも、トレミー管等を使い上から流し込む場合でも発生する問題である。
【0004】
この問題を解決するための従来技術として、例えばダイヤフラムの端に空気抜きの孔をあけ、コンクリートにバイブレータをかけて空気を抜く方法が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。しかし、水平なダイヤフラムの下面に溜まった空気を十分に取り除くのは非常に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-212733号公報
【文献】特開平6-288002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、下側に溜まった空気を容易に排出することができる鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムは、鋼管と、この鋼管の内部に充填されたコンクリートとを有する鋼管コンクリート柱における鋼管の内周面に固定される内ダイヤフラムであって、略水平板状のダイヤフラム本体と、ダイヤフラム本体の下側の空気を上側に排出するためにダイヤフラム本体を上下方向に貫通して設けられる空気抜き孔と、ダイヤフラム本体の下面に形成され、空気抜き孔に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した傾斜部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムは、上述した発明において、コンクリートを打設するためにダイヤフラム本体の中心側を上下方向に貫通して設けられる打設孔をさらに備え、空気抜き孔は、ダイヤフラム本体の周縁側に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムは、上述した発明において、ダイヤフラム本体の上面における空気抜き孔が、打設孔よりも高い位置にあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムは、上述した発明において、ダイヤフラム本体の下面の形状が、ダイヤフラム本体の中心を凹頂部とする凹錘状、凹状または凹凸状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る鋼管コンクリート柱は、上述した鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、鋼管と、この鋼管の内部に充填されたコンクリートとを有する鋼管コンクリート柱における鋼管の内周面に固定される内ダイヤフラムであって、略水平板状のダイヤフラム本体と、ダイヤフラム本体の下側の空気を上側に排出するためにダイヤフラム本体を上下方向に貫通して設けられる空気抜き孔と、ダイヤフラム本体の下面に形成され、空気抜き孔に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した傾斜部とを備えるので、コンクリート充填の際にダイヤフラム本体の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体の上側に容易に排出することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、コンクリートを打設するためにダイヤフラム本体の中心側を上下方向に貫通して設けられる打設孔をさらに備え、空気抜き孔は、ダイヤフラム本体の周縁側に設けられるので、中心側の打設孔からコンクリートを充填し、周縁側の空気抜き孔から空気を排出することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、ダイヤフラム本体の上面における空気抜き孔が、打設孔よりも高い位置にあるので、ダイヤフラム本体の下側から空気が抜ける前に、打設孔から上側に溢れたコンクリートによって空気抜き孔が塞がれる事態を未然に防ぐことができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、ダイヤフラム本体の下面の形状が、ダイヤフラム本体の中心を凹頂部とする凹錘状、凹状または凹凸状に形成されているので、ダイヤフラム本体の下側の空気を、空気抜き孔に容易に導くことができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る鋼管コンクリート柱によれば、上述した鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムを備えるので、ダイヤフラム本体の下側のコンクリートの充填性を向上した鋼管コンクリート柱を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態1を示す図であり、(1)は平断面図、(2)は側断面図である。
図2図2は、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態2を示す側断面図である。
図3図3は、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態3を示す側断面図である。
図4図4は、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態4を示す側断面図である。
図5図5は、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態5を示す側断面図である。
図6図6は、ダイヤフラムの下面形状の一例を示す概略斜視図である。
図7図7は、従来のCFT柱梁接合部の一例を示す図であり、(1)は内ダイアフラム形式の平断面図、(2)は(1)の側断面図、(3)は通しダイアフラム形式の平断面図、(4)は(3)の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム100は、鋼管コンクリート柱10における角型の鋼管12の内周面に固定される鋼製の内ダイヤフラムである。鋼管コンクリート柱10は、鋼管12の内部に充填されたコンクリート14を備える。ダイヤフラム100の部分には、鋼管12の外側からH形鋼からなる鉄骨梁4が接続している。なお、本実施の形態では、鋼管12が角形鋼管である場合を例にとり説明するが、本発明は鋼管の形状に限定されるものではなく、例えば円形鋼管などでもよい。
【0020】
ダイヤフラム100は、平面視で略矩形の鋼板からなるダイヤフラム本体16と、コンクリート打設孔18と、空気抜き孔20と、傾斜部22とを備える。ダイヤフラム本体16の上面は水平である。
【0021】
コンクリート打設孔18は、コンクリート14を打設するための孔であり、ダイヤフラム本体16の中央(中心)を上下方向に貫通して設けられる。なお、本実施の形態では、コンクリート打設孔18の形状が円形の場合を例にとり説明するが、形状はこれに限るものではなく、矩形でもその他多角形でもなんでもよい。コンクリート打設孔18の設置位置はダイヤフラム本体16の中央に限るものではなく、ダイヤフラム本体16であればどこでもよいし、個数についても1個でも複数でもよい。
【0022】
空気抜き孔20は、ダイヤフラム本体16の下側の空気を上側に排出するための小孔であり、ダイヤフラム本体16の周縁側を上下方向に貫通して設けられる。本実施の形態では、ダイヤフラム本体16の四隅に近い側にそれぞれ設けられる。空気抜き孔20は、ダイヤフラム本体16を鋼管12に溶接する際のスカラップで兼用してもよい。なお、本実施の形態では、空気抜き孔20の形状が円形の場合を例にとり説明するが、形状はこれに限るものではなく、矩形でもその他多角形でもなんでもよい。空気抜き孔20の設置位置はダイヤフラム本体16の周縁側に限るものではなく、ダイヤフラム本体16であればどこでもよいし、個数についても1個でも複数でもよい。
【0023】
傾斜部22は、ダイヤフラム本体16の下面に形成され、コンクリート打設孔18から空気抜き孔20に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した部分である。このため、ダイヤフラム本体16の下面は、側面視で略台形状を呈している。ダイヤフラム本体16の下面に傾斜部22を形成する方法には、例えばダイヤフラム本体16を構成する鋼板を削って、ダイヤフラム本体16の中心から周縁間にて板厚を変えることにより、傾斜を付ける方法を用いることができる。なお、本実施の形態のようにダイヤフラム本体16の中央にコンクリート打設孔18を設ける場合には、中央側が高くなるように傾斜を付ける加工を行うとよい。
【0024】
上記の構成によれば、ダイヤフラム本体16の下面が傾斜部22によって上側に傾斜するとともに、下面の高い位置に空気抜き孔20を設けているので、コンクリート打設孔18から鋼管12内にコンクリート14を充填する際にダイヤフラム本体16の下面に溜まった空気は自然に高い方に流れて、空気抜き孔20から上に抜ける。このため、ダイヤフラム本体16の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体16の上側に容易に排出することができる。これにより、ダイヤフラム本体16の下面のコンクリート14の充填性が向上し、コンクリートの空隙が少ない良好な躯体を構築することができる。
【0025】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム200は、上記の実施の形態1において、複数の高くなった部分を設けたものである。具体的には、実施の形態1のダイヤフラム本体16の下面に形成される傾斜部22の代わりに、傾斜方向が異なる2つの傾斜部24、26を用いている。
【0026】
傾斜部24は、側面視で下方に尖ったV字形状の頂部28から周縁側の空気抜き孔20に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した部分である。傾斜部26は、頂部28から中央のコンクリート打設孔18に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した部分である。こうすることで、コンクリート打設孔18を空気抜き孔として兼用することができる。
【0027】
上記の構成によれば、ダイヤフラム本体16の下面が傾斜部24、26によって上側に傾斜しているので、コンクリート打設孔18からコンクリート14を充填する際にダイヤフラム本体16の下に溜まった空気は自然に上に向かって流れ、周縁側の空気抜き孔20と中央のコンクリート打設孔18から上に抜ける。このため、ダイヤフラム本体16の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体16の上側に容易に排出することができる。
【0028】
なお、ダイヤフラム本体16の下面の頂部28を間隔をあけて複数配置して、側面視でギザギザにすることによって高くなる部分を複数形成し、その部分に空気抜き孔20を設けてもよい。これにより、ダイヤフラム本体16が鉄骨梁4のフランジの軸線から大きく離れるのを防ぐことができる。また、柱断面が大きい場合には、そうすることによりダイヤフラム本体16の板厚があまり小さくならないようにすることができる。傾斜の方向は1方向であってもよいし、場所によって変えて2方向であってもよいし、軸対称形であってもよいし、そのほかの自由な形でもよい。
【0029】
図6に、ダイヤフラム本体16の下面の形状例を示す。(1)は円錐形、(2)は角錐形、(3)は山形、(4)は凹凸形である。ダイヤフラム本体16の下面を、この図のような形状(ダイヤフラム本体16の中心を凹頂部とする凹錘状、凹状または凹凸状)に設定してもよい。
【0030】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図3に示すように、本実施の形態3に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム300は、上記の実施の形態2の変形例であり、ダイヤフラム本体16自体に傾斜加工を施したものである。具体的には、実施の形態2において、ダイヤフラム本体16を上に凸の略錐面状に傾斜加工している。これに伴い、周縁側の空気抜き孔20と、これに対応する傾斜部24を省略する一方、傾斜部26と中央のコンクリート打設孔18を残している。したがって、コンクリート打設孔18が空気抜き孔として兼用される。
【0031】
ダイヤフラム本体16の傾斜加工方法は如何なる方法を用いてもよく、例えば、ダイヤフラム本体16を構成する鋼板を曲げてもよいし、角度をつけて鋼板を溶接してもよいし、鋼板の表面を削ってもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0032】
上記の構成によれば、ダイヤフラム本体16の下面が傾斜部26によって上側に傾斜しているので、コンクリート打設孔18からコンクリート14を充填する際にダイヤフラム本体16の下に溜まった空気は自然に上に向かって流れ、中央のコンクリート打設孔18から上に抜ける。このため、ダイヤフラム本体16の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体16の上側に容易に排出することができる。
【0033】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図4に示すように、本実施の形態4に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム400は、上記の実施の形態2の変形例であり、ダイヤフラム本体16自体に傾斜加工を施したものである。具体的には、実施の形態2において、ダイヤフラム本体16を下に凸の略錐面状に傾斜加工している。これに伴い、中央のコンクリート打設孔18に対応する傾斜部26を省略する一方、周縁側の空気抜き孔20と、これに対応する傾斜部24を残している。
【0034】
ダイヤフラム本体16の傾斜加工方法は如何なる方法を用いてもよく、例えば、ダイヤフラム本体16を構成する鋼板を曲げてもよいし、角度をつけて鋼板を溶接してもよいし、鋼板の表面を削ってもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、ダイヤフラム本体16の下面が傾斜部24によって上側に傾斜しているので、コンクリート打設孔18からコンクリート14を充填する際にダイヤフラム本体16の下に溜まった空気は自然に上に向かって流れ、周縁側の空気抜き孔20から上に抜ける。このため、ダイヤフラム本体16の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体16の上側に容易に排出することができる。
【0036】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図5に示すように、本実施の形態5に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム500は、上記の実施の形態1において、ダイヤフラム本体16の上面を水平とせずに、空気抜き孔20の周辺をコンクリート打設孔18よりも高くしたものである。
【0037】
コンクリート打設孔18以外に空気抜き孔20を設ける場合、このようにダイヤフラム本体16の上面が空気抜き孔20の周辺でコンクリート打設孔18よりも高くなっていると、空気抜き孔20の作用効率が向上するので好ましい。空気抜き孔20の周辺が高いことにより、下から圧入されたコンクリート14がコンクリート打設孔18からダイヤフラム本体16の上に昇ってきたとき、下から空気が抜ける前に空気抜き孔20を上から塞いでしまうことを未然に防ぐことができる。
【0038】
なお、ダイヤフラム本体16の上面を水平とせずに、空気抜き孔20の周辺をコンクリート打設孔18よりも高くするという構成は、上記の実施の形態2~4で、コンクリート打設孔18以外に空気抜き孔20を設ける場合にも適用可能である。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
以上説明したように、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、鋼管と、この鋼管の内部に充填されたコンクリートとを有する鋼管コンクリート柱における鋼管の内周面に固定される内ダイヤフラムであって、略水平板状のダイヤフラム本体と、ダイヤフラム本体の下側の空気を上側に排出するためにダイヤフラム本体を上下方向に貫通して設けられる空気抜き孔と、ダイヤフラム本体の下面に形成され、空気抜き孔に近づくにつれて上方に向かうように傾斜した傾斜部とを備えるので、コンクリート充填の際にダイヤフラム本体の下側に溜まる空気を、ダイヤフラム本体の上側に容易に排出することができる。
【0040】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、コンクリートを打設するためにダイヤフラム本体の中心側を上下方向に貫通して設けられる打設孔をさらに備え、空気抜き孔は、ダイヤフラム本体の周縁側に設けられるので、中心側の打設孔からコンクリートを充填し、周縁側の空気抜き孔から空気を排出することができる。
【0041】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、ダイヤフラム本体の上面における空気抜き孔が、打設孔よりも高い位置にあるので、ダイヤフラム本体の下側から空気が抜ける前に、打設孔から上側に溢れたコンクリートによって空気抜き孔が塞がれる事態を未然に防ぐことができる。
【0042】
また、本発明に係る他の鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムによれば、ダイヤフラム本体の下面の形状が、ダイヤフラム本体の中心を凹頂部とする凹錘状、凹状または凹凸状に形成されているので、ダイヤフラム本体の下側の空気を、空気抜き孔に容易に導くことができる。
【0043】
また、本発明に係る鋼管コンクリート柱によれば、上述した鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムを備えるので、ダイヤフラム本体の下側のコンクリートの充填性を向上した鋼管コンクリート柱を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る鋼管コンクリート柱用ダイヤフラムおよび鋼管コンクリート柱は、内ダイヤフラムを備えた鋼管コンクリート柱に有用であり、特に、コンクリート充填時のダイヤフラムの下側に溜まった空気を容易に排出するのに適している。
【符号の説明】
【0045】
4 鉄骨梁
10 鋼管コンクリート柱
12 鋼管
14 コンクリート
16 ダイヤフラム本体
18 コンクリート打設孔
20 空気抜き孔
22,24,26 傾斜部
28 頂部
100~500 鋼管コンクリート柱用ダイヤフラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7