(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020083538
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤山 雄樹
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176516(JP,A)
【文献】米国特許第05976088(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1250490(KR,B1)
【文献】特開2017-023497(JP,A)
【文献】特開2004-344564(JP,A)
【文献】特開2009-066188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15 、
G01N29/00 -29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム動作時に受信データ列を記憶し、
前記リアルタイム動作後のフリーズ状態で実行される再生動作時に前記受信データ列の一部又は全部を再生受信データ列として出力するシネメモリ
であって、前記リアルタイム動作中に動作モード又は電子走査方式が変更されても所定のリセット条件が満たされるまでは記憶された受信データ列を維持するシネメモリと、
前記リアルタイム動作時に前記受信データ列を処理して表示データ列を生成し、前記再生動作時に前記再生受信データ列を処理して再生表示データ列を生成する処理部と、
前記リアルタイム動作時に前記受信データ列を管理するための第1情報を生成し、前記再生動作時に
、ユーザーにより指定された再生期間を受け付け、前記再生期間及び前記第1情報に基づいて
前記シネメモリ上の前記再生受信データ列を特定することにより前記再生受信データ列の出力を制御する第1再生制御部と、
前記リアルタイム動作時に
前記動作モード又は前記電子走査方式の変更に伴って前記処理部における
前記受信データ列から前記表示データ列を生成する処理条件が変更された場合に当該処理条件の変更を再現するための第2情報を生成し、前記再生動作時に前記第2情報に基づいて
前記処理部での前記再生受信データ列の処理を制御する第2再生制御部と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記リアルタイム動作時に前記表示データ列に合成されるグラフィックデータを生成し、前記再生動作時に前記再生表示データ列に合成される再生グラフィックデータを生成する生成部と、
前記リアルタイム動作時に前記生成部における
前記グラフィックデータを生成する生成条件が変更された場合に当該生成条件の変更を再現するための第3情報を生成し、前記再生動作時に前記第3情報に基づいて
前記生成部での前記再生グラフィックデータの生成を制御する第3再生制御部と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記第1情報には、前記受信データ列を構成する複数の受信データを時間的に管理するための第1時刻情報が含まれ
、
前記第2情報には、前記処理条件の変更タイミングを再現するための第2時刻情報が含まれ、
前記第3情報には、前記生成条件の変更タイミングを再現するための第3時刻情報が含まれる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
時刻情報を生成する共通時計を含み、
前記時刻情報が前記第1時刻情報、前記第2時刻情報及び前記第3時刻情報として利用される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の超音波診断装置において、
前記再生動作時に、前記シネメモリ、前記処理部及び前記生成部は、前記時刻情報に基づいて同期して動作する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記第1情報には前記複数の受信データに対応する複数の第1レコードが含まれ、
前記第1時刻情報には前記複数の第1レコードに含まれる複数の第1タイムスタンプが含まれ、
前記第2情報には前記処理条件の変化ごとに生成される少なくとも1つの第2レコードが含まれ、
前記第2時刻情報には前記少なくとも1つの第2レコードに含まれる少なくとも1つの第2タイムスタンプが含まれ、
前記第3情報には前記生成条件の変化ごとに生成される少なくとも1つの第3レコードが含まれ、
前記第3時刻情報には前記少なくとも1つの第3レコードに含まれる少なくとも1つの第3タイムスタンプが含まれる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の超音波診断装置において、
前記第1再生制御部は前記再生動作時に前記複数の第1タイムスタンプに基づいて再生期間に対応する前記再生受信データ列を特定し、
前記第2再生制御部は前記再生動作時に前記第2タイムスタンプに基づいて前記処理条件を変更するタイミングを決定し、
前記第3再生制御部は前記再生動作時に前記第3タイムスタンプに基づいて前記生成条件を変更するタイミングを決定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記第1情報、前記第2情報及び前記第3情報を外部へ出力する手段を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置に関し、特に、超音波画像の再生に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において超音波診断装置が活用されている。超音波診断装置は、被検者に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置における動作モードとして、Bモード、Mモード、CFM(Color Flow Mapping)モード、PW(Pulsed Wave)モード、CW(Continuous Wave)モード、等が知られている。超音波ビームを電子走査する方式として、リニア走査方式、セクタ走査方式、コンベックス走査方式等が知られている。
【0003】
超音波診断装置は、受信データ列(受信フレームデータ列)を一時的に格納するメモリ(以下、シネメモリという。)を備えている(特許文献1を参照)。シネメモリは、通常、リングバッファ構造を有する。リアルタイム動作中において、個々の受信データがシネメモリに順次格納される。フリーズ操作の時点で送受信が停止し、フリーズ状態に移行する。フリーズ状態において、シネメモリに格納された受信データ列を読み出し、それを動画像として又は静止画像列として表示し得る。
【0004】
従来の超音波診断装置において、動作モード、電子走査方式等の動作条件(特に基本的な動作条件)が変更された場合、超音波の送受波が自動的に停止され、それまで設定されていた動作条件に代えて新しい動作条件が設定される。新しい動作条件の設定が完了した後、シネメモリへ格納したデータが自動的に破棄された上で、超音波の送受波が再開される。また、その時点で、シネメモリへの新しい受信データ列の格納が再開される。新しい動作条件の設定後においては、古い動作条件の下で生成及び記憶された受信データ列を再生することはできない。
【0005】
超音波検査中においては、通常、複数回にわたって動作条件が変更される。検査者は、動作条件の変更の都度、それに先立って、シネメモリに格納されているデータを保存等しておく必要がある。そのような操作は煩雑であり、検査効率の低下を招く。
【0006】
そもそも、従来の超音波診断装置は、超音波画像の再生時に、データ処理条件や画像生成条件の変更を再現する仕組みを備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、再生動作時に処理条件等の変更を再現できる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る超音波診断装置は、リアルタイム動作時に受信データ列を記憶し、再生動作時に前記受信データ列の一部又は全部を再生受信データ列として出力するシネメモリと、前記リアルタイム動作時に前記受信データ列を処理して表示データ列を生成し、前記再生動作時に前記再生受信データ列を処理して再生表示データ列を生成する処理部と、前記リアルタイム動作時に前記受信データ列を管理するための第1情報を生成し、前記再生動作時に前記第1情報に基づいて前記再生受信データ列の出力を制御する第1再生制御部と、前記リアルタイム動作時に前記処理部における処理条件の変更を再現するための第2情報を生成し、前記再生動作時に前記第2情報に基づいて前記再生受信データ列の処理を制御する第2再生制御部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る超音波診断装置によれば、再生動作時に処理条件等の変更を再現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【
図2】シネメモリに格納される複数のレコードを示す図である。
【
図3】第1メモリに格納される複数のレコードを示す図である。
【
図4】第2メモリに格納される複数のレコードを示す図である。
【
図5】第3メモリに格納される複数のレコードを示す図である。
【
図6】リアルタイム動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】他の再生動作を示すタイミングチャートである。
【
図10】変形例における第2メモリの内容を示す図である。
【
図11】変形例における第3メモリの内容を示す図である。
【
図12】変形例における再生動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、シネメモリ、処理部、第1再生制御部、及び、第2再生制御部を含む。シネメモリは、リアルタイム動作時に受信データ列を記憶し、再生動作時に受信データ列の一部又は全部を再生受信データ列として出力する。処理部は、リアルタイム動作時に受信データ列を処理して表示データ列を生成し、再生動作時に再生受信データ列を処理して再生表示データ列を生成する。第1再生制御部は、リアルタイム動作時に受信データ列を管理するための第1情報を生成し、再生動作時に第1情報に基づいて再生受信データ列の出力を制御する。第2再生制御部は、リアルタイム動作時に処理部における処理条件の変更を再現するための第2情報を生成し、再生動作時に第2情報に基づいて再生受信データ列の処理を制御する。
【0014】
上記構成によれば、リアルタイム動作時に、第1再生制御部が第1情報を生成し、第2再生制御部が第2情報を生成する。再生動作時に、第1再生制御部は第1情報に基づいて再生受信データ列の出力を制御し、第2再生制御部は第2情報に基づいて再生受信データ列の処理を制御する。このような仕組みにより、再生受信データを処理する過程で、処理条件の変更が再現される。
【0015】
処理条件は、動作モード等の動作条件の変更に伴って自動的に変更され、あるいは、ユーザーにより直接的に変更される。そのような処理条件の変更が再生動作時に再現される。処理部に設定された処理条件の全部が再現されてもよいし、その一部が再現されてもよい。
【0016】
実施形態において、超音波診断装置は、更に、生成部、及び、第3再生制御部を含む。生成部は、リアルタイム動作時に表示データ列に合成されるグラフィックデータを生成し、再生動作時に再生表示データ列に合成される再生グラフィックデータを生成する。第3再生制御部は、リアルタイム動作時に生成部における生成条件の変更を再現するための第3情報を生成し、再生動作時に第3情報に基づいて再生グラフィックデータの生成を制御する。
【0017】
リアルタイム動作時において、第3再生制御部が第3情報を生成する。再生動作時において、第3再生制御部が第3情報に基づいて生成条件の変更を再現する。リアルタイム動作時に処理条件や再生条件の変更に基づいて超音波画像の内容が変化した場合、再生動作時においてその変化が再現される。第1再生制御部、第2再生制御部、及び、第3再生制御部は、それぞれ、情報を管理するデータベースにより構成され得る。
【0018】
実施形態において、第1情報には、受信データ列を構成する複数の受信データを時間的に管理するための第1時刻情報が含まれる。第2情報には、処理条件の変更タイミングを再現するための第2時刻情報が含まれる。第3情報には、生成条件の変更タイミングを再現するための第3時刻情報が含まれる。
【0019】
上記構成によれば、複数の受信データの出力タイミングに対して、処理条件の変更タイミング及び生成条件の変更タイミングを適合させることが可能となる。つまり、リアルタイム動作時に表示されていた超音波画像が内容的及び時間的に正しく再生される。
【0020】
実施形態において、超音波診断装置は、時刻情報を生成する共通時計を含む。時刻情報が第1時刻情報、記第2時刻情報及び第3時刻情報として利用される。超音波診断装置は、一般に、互いに独立して動作する複数のユニットにより構成される。共通時計により生成された時刻情報を各ユニットに供給すれば、第1時刻情報、第2時刻情報及び第3時刻情報の間に時間的なずれが生じることを防止できる。
【0021】
実施形態において、再生動作時に、シネメモリ、処理部及び生成部は、時刻情報に基づいて同期して動作する。再生動作時において、時刻情報は、現在の時刻情報であり、記憶された各時刻情報は、過去の時刻情報である。必要に応じて、現在の時刻情報と過去の時刻情報の差分が演算される。現在の時刻情報に基づいて、各再生制御部を動作させる場合、各再生制御部の動作タイミングの決定に際して差分が考慮される。
【0022】
実施形態において、第1情報には複数の受信データに対応する複数の第1レコードが含まれる。第1時刻情報には複数の第1レコードに含まれる複数の第1タイムスタンプが含まれる。第2情報には処理条件の変化ごとに生成される少なくとも1つの第2レコードが含まれる。第2時刻情報には少なくとも1つの第2レコードに含まれる少なくとも1つの第2タイムスタンプが含まれる。第3情報には生成条件の変化ごとに生成される少なくとも1つの第3レコードが含まれる。第3時刻情報には少なくとも1つの第3レコードに含まれる少なくとも1つの第3タイムスタンプが含まれる。個々のタイムスタンプは、データ又はレコードに付与された時間的なラベルであり、典型的には、データ又はレコードが生成又は記録等された時刻を示すデータである。
【0023】
実施形態において、第1再生制御部は、再生動作時に、複数の第1タイムスタンプに基づいて再生期間に対応する再生受信データ列を特定する。第2再生制御部は、再生動作時に、第2タイムスタンプに基づいて処理条件を変更するタイミングを決定する。第3再生制御部は、再生動作時に、第3タイムスタンプに基づいて生成条件を切り換えるタイミングを決定する。
【0024】
実施形態において、超音波診断装置は、第1情報、第2情報及び第3情報を外部へ出力する手段を含む。この構成によれば、第1情報、第2情報及び第3情報を他の超音波診断装置等に転送し得る。
【0025】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置がブロック図として示されている。図示された超音波診断装置は、病院等の医療機関において設置され、生体に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。
【0026】
超音波診断装置は、Bモード、Mモード、CFMモード、PWドプラモード、CWドプラモード、エラストイメージングモード、ハーモニックイメージングモード、三次元画像表示モード等の多様な動作モードを備えている。この超音波診断装置は、リニア走査方式、セクタ走査方式、コンベックス走査方式等に対応しており、それらの走査方式の中から実際に用いる走査方式が選択される。また、この超音波診断装置においては、表示形式を選択することが可能であり、具体的には、1画面表示、2画面表示、4画面表示等の中からいずれかを選択することが可能である。
【0027】
なお、以下の説明において、リアルタイム動作は、超音波の送受波を行いながら超音波画像をリアルタイムで表示する動作である。再生動作は、フリーズ状態(送受信停止状態)において超音波画像を再生する動作である。
【0028】
図1において、超音波診断装置は、装置本体10、プローブ12、操作パネル14等を備えている。装置本体10は、フロントエンド(FE)ユニット16、バックエンド(BE)ユニット18、表示処理ユニット20、及び、制御ユニット22を有している。それらのユニット16,18,20,22は、それぞれ、独立して動作するプロセッサを備えている。
図1中に示されている各ブロックは、プロセッサが発揮する機能、電子回路、専用デバイス等に相当する。
【0029】
プローブ12は、装置本体10に対して着脱可能に接続される可搬型の送受器である。プローブ12は、本実施形態において、直線又は曲線に沿って一次元配列された複数の振動素子からなる振動素子アレイを有している。振動素子アレイによって超音波ビームが形成され、その超音波ビームが電子的に走査される。これにより観測面としてのビーム走査面が形成される。なお、超音波ビームの二次元走査により三次元データ取込空間を形成し、当該空間からボリュームデータを得るようにしてもよい。
【0030】
FEユニット16について説明する。送信回路24は送信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。送信時において、送信回路24は、振動素子アレイに対して複数の送信信号を並列的に出力する。これにより送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波が振動素子アレイにおいて受波される。これにより振動素子アレイから受信回路26へ複数の受信信号が並列的に出力される。
【0031】
受信回路26は受信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。受信回路26は、入力される複数の受信信号をそれぞれデジタル信号に変換した上で、複数のデジタル受信信号を遅延加算(整相加算)し、これによりビームデータを生成する。1回のビーム走査で、電子走査方向に並ぶ複数のビームデータが取得される。それらにより受信フレームデータ(以下、受信データという。)が構成される。個々のビームデータは深さ方向に並んだ複数のエコーデータにより構成される。送受信制御部28は、プロセッサ等により構成される。送受信制御部28は、後述する主制御部50の制御の下で、送信回路24及び受信回路26の動作を制御する。
【0032】
次に、BEユニット18について説明する。データ処理部30は、各受信データをビームデータ単位で処理する回路である。具体的には、データ処理部30は、各ビームデータに対し、選択された動作モードに対応する複数のデータ処理を適用する。データ処理部30は、例えば、直交検波回路、振幅演算回路、対数変換回路、フィルタ回路、相関回路等を有する。データ処理部30から出力された複数の受信データが、シネメモリ制御部32を介して、DSC(デジタルスキャンコンバータ)38へ順次送られる。
【0033】
シネメモリ制御部32は、リアルタイム動作時において、シネメモリ34に対して、複数の受信データを時系列順で格納する制御を実行する。シネメモリ34は、超音波画像を再生する際に必要となる受信データ列を一時的に記憶しておく再生用メモリである。シネメモリ34は、リングバッファ構造を有している。シネメモリ34が他の構造を有していてもよい。実施形態においては、シネメモリ34は、大量のデータを記憶することが可能な記憶デバイスで構成される。なお、リアルタイム動作時に、個々の受信データをシネメモリ34にいったん書き込んだ上で、そこから個々の受信データを読み出してDSC38へ転送するようにしてもよい。
【0034】
実施形態において、シネメモリ制御部32は、再生動作時において、第1再生制御部36の制御の下で、シネメモリ34から受信データ列を読み出してDSC38へ出力する制御を実行する。
【0035】
第1再生制御部36は、リアルタイム動作時に、シネメモリ34に格納される複数の受信データを管理するための第1情報を生成し、再生動作時に、第1情報に基づいてシネメモリ34からの受信データ列の読み出しを制御する。図示の構成例では、第1再生制御部36は、シネメモリ制御部32を介して、受信データ列の読み出しを制御している。
【0036】
シネメモリ制御部32が第1情報を生成してもよく、シネメモリ制御部32が第1情報に基づいて受信データ列の読み出し制御を主体的に行うようにしてもよい。その場合、シネメモリ制御部32は再生制御手段として観念される。シネメモリ制御部32と第1再生制御部36が統合されてもよい。
【0037】
実施形態において、第1再生制御部36は、第1情報を管理するための第1メモリ37を有している。第1再生制御部36はデータベースとして機能する。第1情報は、シネメモリ34へ格納される複数の受信データに対応する複数のレコードにより構成される。各レコードは各受信データを管理するためのデータである。各レコードには、各受信データを時間的に管理するための時刻情報としてのタイムスタンプが含まれる。一般に、タイムスタンプは、データ又はレコードの生成時、記憶時等を示す時刻ラベルである。シネメモリ34と第1メモリ37とが一体化されてもよい。
【0038】
以上のように、リアルタイム動作時においては、受信データごとに、受信データ及びレコードからなるデータセットが、シネメモリ34及び第1メモリ37へ記憶される。再生動作時においては、第1メモリ37内の複数のレコード(特に複数のタイムスタンプ)に基づいて、再生期間に対応する特定の受信データ列が特定される。シネメモリ34から、特定の受信データ列を構成する複数の受信データが順次読み出され、それらがDSC38へ順次転送される。なお、再生動作時においてシネメモリ34からシネメモリ制御部32を介してDSC32へ転送される受信データ列を再生受信データ列と称してもよい。
【0039】
DSC38は、座標変換機能、補間機能、フレームレート調整機能等を有する。座標変換機能は、例えば、rθ座標(極座標)をxy座標(直交座標)に変換する機能である。DSC38により、受信データ列(受信フレームデータ列)から表示データ列(表示フレームデータ列)が生成される。個々の表示データは、図示の構成例において、断層画像データである。なお、再生動作時において受信データ列から生成される表示データ列を再生表示データ列と称してもよい。
【0040】
データ処理部40は、各表示データに対して、平滑化処理、エッジ強調処理等を適用する。データ処理部40は、例えば、デジタルフィルタ回路で構成される。カラー変換部42は、各表示データに対して、階調補正、ガンマ補正、カラー処理等を適用する。カラー変換部42により、RGB形式に従う表示データ列が生成される。
【0041】
パラメータ配信部44は通信部として機能する。パラメータ配信部44は、主制御部50から送られてくる処理パラメータ群(処理コマンド、制御値等を含む)を受信する。処理パラメータ群により処理条件が規定される。パラメータ配信部44は、BEユニット18内の各構成要素に対し、受信した処理パラメータ群を分配する。BEユニット18内の各構成要素は、受領した1又は複数の処理パラメータに従って動作する。
【0042】
主制御部50は、動作条件が変更された時点で、BEユニット18に対して、新しい処理条件を規定する新しい処理パラメータ群を送信する。その場合、実際に変更された1又は複数の処理パラメータのみが送信されてもよい。ユーザーにより処理条件が直接的に変更されてもよい。
【0043】
第2再生制御部46は、リアルタイム動作時において、第2情報を生成する。第2情報は、再生動作時において、処理条件の変更(具体的には処理パラメータ群の変更)を再現するための情報である。第2情報は、図示の構成例において、処理条件の変更ごとに生成されるレコードにより構成される。レコードには、新しい処理パラメータ群が含まれる。但し、再生動作時において、BEユニット18の内で機能するのはデータ処理部30を除く部分である。データ処理部30に与えられる1又は複数の処理パラメータは、第2再生制御部46の管理対象外である。
【0044】
図示された構成例において、第2再生制御部46は、複数のレコードが記憶される第2メモリ47を管理する。第2再生制御部46は、データベースとして機能する。再生動作時の最初に、第2再生制御部46は、初期設定を行うために、再生開始時に対応する特定のレコードを参照し、その内容に基づいてBEユニット18の処理条件を設定する。すなわち、第2再生制御部46は、パラメータ配信部44を介して、BEユニット18内の各構成要素へ1又は複数の処理パラメータを供給し、それらの初期設定を行う。
【0045】
その後、複数の受信データの再生の過程で、上記の特定のレコードに続く1又は複数のレコードの内容に従って処理条件を順次変更する。換言すれば、処理条件の変更を順次再現する。処理条件の変更の都度、第2再生制御部46からパラメータ配信部44を介して各構成要素へ1又は複数のパラメータが供給される。
【0046】
第1メモリ37に記憶された第1情報及び第2メモリ47に記憶された第2情報が、必要に応じて、主制御部50に提供され、又は、主制御部50により第1情報及び第2情報が参照される。
【0047】
ファイル出力部48は、出力要求があった場合に、第1メモリ37に記憶されている第1情報をファイルとして外部へ出力し、また、第2メモリ47に記憶されている第2情報をファイルとして外部へ出力する。ファイル出力部48により、シネメモリ34に記憶されている受信データ列が外部に出力されてもよい。外部へのファイルの出力や受信データ列の出力が主制御部50により実行されてもよい。
【0048】
制御ユニット22について説明する。制御ユニット22は、それが有する記憶部分を除き、プログラムを実行するCPUで構成される。主制御部50は、超音波診断装置に含まれる個々の構成要素の動作を制御する。
【0049】
生成制御部52は、主制御部50の制御の下で、グラフィック生成部54でのグラフィック(グラフィック画像)の生成を制御する。具体的には、生成制御部52からグラフィック生成部54へ、生成条件を規定する生成パラメータ群が送られている。生成パラメータ群には、生成コマンド、テキストコード、コンテンツ識別子、座標、URL、等が含まれる。
【0050】
グラフィック生成部54は、上記のとおり、生成制御部52により制御され、グラフィックを生成するものである。グラフィックには、文字列、マーク、記号、図形、アイコン、サムネイル画像、等が含まれる。例えば、グラフィックには、検査情報(日時、施設名等)、被検者情報(氏名、性別等)、動作条件を示す情報(送信周波数、ゲイン値等)、諸々の図形(ボディマーク、枠、目盛り、アイコン等)、等が含まれる。リアルタイム動作中において動作条件の変更に伴って生成条件(具体的にはグラフィック内容)が変更された場合、再生動作時においてその生成条件の変更が再現される。
【0051】
第3再生制御部56は、リアルタイム動作時において、生成制御部52からグラフィック生成部54へ送られる生成パラメータ群の変更を管理するための第3情報を生成し、それを第3メモリ57に記憶する。第3再生制御部56はデータベースとして機能する。具体的には、生成条件の変更の都度、レコードが生成される。第3メモリ57には、第3情報として、1又は複数のレコードが記憶される。
【0052】
第3再生制御部56は、再生動作時において、第3メモリ57に格納された1又は複数のレコードの内容に従って、グラフィック生成を制御する。具体的には、個々のレコードに含まれる生成パラメータ群を、個々のレコードに含まれる時刻情報に従うタイミングで、グラフィック生成部54に出力する。これにより生成条件の変更が再現される。第3メモリ57の内容が必要に応じて主制御部50へ出力され、あるいは、主制御部50により第3メモリ57の内容が参照される。再生動作時に生成されるグラフィックを再生グラフィックと称し得る。
【0053】
ファイル出力部58は、第3メモリ57に記憶された1又は複数のレコードをファイルとして外部へ出力する。そのファイルが主制御部50を介して外部へ出力されてもよい。主制御部50には操作パネル14が接続されている。操作パネル14は、複数のボタン、複数のスイッチ、トラックボール、キーボード等を有する入力デバイスである。
【0054】
表示処理ユニット20について説明する。合成部60は、超音波画像とグラフィックとを合成し、表示用画像データとして合成画像データを生成する。その合成はフレーム単位で実行される。合成画像データは、画像出力部62を介して、図示されていない表示器に出力される。表示器には合成画像が表示される。表示器はLCD、有機ELデバイスにより構成される。合成画像データがプリンタや通信部へ出力されてもよい。
【0055】
時計64は、時刻情報を生成する電子回路又はプログラムにより構成される。時刻情報は、BEユニット18及び制御ユニット22に並列的に提供されている。時刻情報に基づいて、第1メモリ37、第2メモリ47及び第3メモリ57に格納される各レコードにタイムスタンプが挿入される。再生動作時に、個々のレコードに含まれるタイムスタンプを参照することにより、BEユニット18での受信データ処理動作及び制御ユニット22でのグラフィック生成動作を同期させることが可能となる。時刻情報がFEユニット16及び表示処理ユニット20に供給されてもよい。
【0056】
以上のように、実施形態に係る超音波診断装置は、再生動作時に処理条件の変更及び生成条件の変更を再現する仕組みを備えている。ユーザーからの明示的な指示等の所定条件が満たされた場合に、シネメモリ34の記憶内容がリセットされ、それと共に、第1メモリ37、第2メモリ47、及び、第3メモリ57の内容がリセットされる。逆に言えば、所定条件が満たされるまでは、シネメモリ34、第1メモリ37、第2メモリ47、及び、第3メモリ57の記憶内容が維持される。所定条件には、シネメモリ34の空き容量の欠乏等が含まれ得る。
【0057】
図2には、シネメモリ34の構造が示されている。シネメモリ34には、リセット後に入力された複数の受信データ66が時系列順で格納される。各受信データ66は、時系列順で並ぶ複数のビームデータ70により構成される。
図2において、rは深さ方向を示しており、θは電子走査方向を示している。
【0058】
図3には、第1メモリ37の記憶構造が示されている。第1メモリ37には時系列順で複数のレコード72が格納される。1つのレコード72が1つの受信データに対応している。ビームデータごとにレコードが生成されてもよい。tは時間軸を示している。
【0059】
レコード72には、タイムスタンプ74、送受信条件76、表示形式78、先頭アドレス80、データサイズ82等が含まれる。タイムスタンプ74は、例えば、シネメモリへ受信データを記録した時刻を示す情報である。他の時刻情報をタイムスタンプ74としてもよい。
【0060】
送受信条件76は、動作モード、走査方式、等を特定する情報である。表示形式78は、画像フォーマット等を特定する情報である。送受信条件76及び表示形式78は、例えば、再生動作時において、複数のメモリにわたって記録される複数のレコード相互間を正しく対応付ける際の識別情報として用い得る。それらの情報が無くても対応付けを正しく行える場合、それらの情報の記録は不要である。
【0061】
先頭アドレス80は、第1シネメモリ上に格納された受信データの先頭アドレスであり、データサイズ82はその受信データのサイズである。それらの情報に基づいて、第1シネメモリ上における受信データの記憶エリアを特定し得る。再生期間が指定された場合、各レコード中のタイムスタンプ74が参照され、再生対象となった受信データ列が特定される。具体的には、最初の受信データ及び最後の受信データが特定される。
【0062】
図4には、第2メモリ47の記憶構造が示されている。第2メモリ47には時系列順で複数のレコード84が格納される。第2メモリ47における先頭のレコード84は、リセット後、最初に設定された処理条件を含むレコードである。その後、リアルタイム動作の過程で、処理条件が変更される都度、レコード84が生成される。第2メモリ47における2番目以降のレコード84はそのようなレコードである。
【0063】
各レコード84には、タイムスタンプ86、送受信条件88、表示形式90、処理パラメータセット92、等が含まれる。タイムスタンプ86は、表示条件の変更タイミングを管理及び特定するための情報であり、例えば、処理条件の変更タイミング又はレコード84の生成タイミングを示す情報である。
【0064】
送受信条件88は、
図3に示した送受信条件と同様、動作モード、走査方式、等を特定する情報である。表示形式78は、
図3に示した表示形式と同様、画像フォーマット等を特定する情報である。それらの情報は、上記同様に、例えば、レコード識別子として利用される。
【0065】
処理パラメータセット92は、BEユニットにおいて、再生受信データ列を処理する複数の構成要素に設定される複数の処理パラメータにより構成される。それには、変更されない制御パラメータも含まれ得る。そのようなスナップショット記憶方式に代えて、変更された1又は複数の制御パラメータだけ、つまり差分だけを記憶しておく差分記憶方式を採用することも考えられる。もっとも、差分記憶方式によると、処理条件の再現に際して最初のレコードを含む過去すべてのレコードを参照しなければならなくなる。その問題を回避するためには、差分記憶方式とスナップショット記憶方式とを併用すればよい。そのような混合方式については後に変形例として説明する。
【0066】
図5には、第3メモリ57の記憶構造が示されている。第3メモリ57には複数のレコード94が時系列順で記憶される。第3メモリ57における先頭のレコード94は、最初に設定された生成条件を含むレコードである。リアルタイム動作の開始後、生成条件が変更される都度、レコード94が生成される。第3メモリ57における2番目以降のレコード94はそのようなレコードである。
【0067】
各レコード94には、タイムスタンプ96、送受信条件98、表示形式100、生成パラメータセット102、等が含まれる。タイムスタンプ96は、生成条件の変更タイミングを管理及び特定するための情報であり、例えば、生成条件の変更タイミング又はレコード94の生成タイミングを示す情報である。
【0068】
送受信条件98は、
図3及
図4に示した送受信条件と同様、動作モード、走査方式、等を特定する情報である。表示形式100は、
図3及び
図4に示した表示形式と同様、画像フォーマット等を特定する情報である。それらの情報は、既に説明したように、例えば、レコード識別子として利用される。
【0069】
生成パラメータセット102は、グラフィックを再現する際に必要となる複数の生成パラメータにより構成される。それには、変更されない生成パラメータも含まれる。既に説明したように、そのようなスナップショット記憶方式に代えて、後述する混合方式が採用されてもよい。
【0070】
なお、第1メモリ、第2メモリ、及び、第3メモリに記憶される各レコードを管理するために、各レコードにレコード識別子を付与してもよい。第1メモリ、第2メモリ及び第3メモリを統合してもよい。
【0071】
図6には、リアルタイム動作の一例がタイミングチャートとして示されている。各横軸は時間軸である。(A)は、第1メモリへのレコード110の書き込みを示している。(B)は、シネメモリへの受信データ108の書き込みを示している。(C)は、処理条件の設定(再設定)104a~104dを示している。処理条件の変更の都度、上記のようにレコードが生成及び記憶される。(D)は、生成条件の設定(再設定)106a~106dを示している。処理条件の変更の都度、上記のようにレコードが生成及び記憶される。なお、本願に含まれる各タイミングチャートは、実施形態の動作を分かり易く説明するためのものであり、各タイミングチャートには、実際の動作に一致していない部分が含まれ得る。
【0072】
T0はリセット後のリアルタイム動作開始タイミングを示している。T1,T2,T3は、動作条件の変更タイミングを示している。動作条件の変更の一例として、動作モードの変更及び電子走査方式の変更があげられる。
【0073】
T0の直後に、処理条件及び生成条件が初期設定されている(104a及び符号106aを参照)。その後、送受信が開始され、複数の受信データ108が取得されている。先頭の受信データ108aは、T0から期間107をおいたタイミングで、シネメモリに格納されている。先頭のレコード110aも、T0から期間107をおいたタイミングで、第1メモリに格納されている。
【0074】
T1で動作条件が変更されると、処理条件及び生成条件が変更される(符号104b及び符号106bを参照)。T1から期間109をおいたタイミングで、動作条件変更後の最初の受信データ108b及び最初のレコード110bが記憶されている。T2,T3の直後においても、上記同様に、処理条件が記憶され(符号104c,104dを参照)、また、生成条件が記憶されている(符号106c、106dを参照)。
【0075】
図7には、再生動作を示すタイミングチャートが示されている。
図6に示した要素と同一の要素には同一の符号を付しその説明を省略する。このことは
図8以降の各図においても同様である。
【0076】
図7において、追加された(C1)は、再生受信データの処理124を示している。また、追加された(D1)は、再生グラフィックの生成126を示している。ユーザーにより、再生期間103が指定される。再生期間は、時間軸上の過去の期間として指定される。tsは再生期間103の先頭つまり再生開始時を示しており、teは再生期間103の末尾つまり再生終了時を示している。
【0077】
図示の例では、再生開始時tsに基づいて、再生基準時ts1が決定されている。例えば、第1メモリ上において、再生開始時tsに最も近いタイムスタンプを有する先頭のレコード110cが特定される。先頭のレコード100cに基づいて先頭の受信データ108cが特定される。図示の例では、再生基準時ts1は再生開始時tsよりも期間tx分だけ遅れている。再生開始時tsよりも前に再生基準時ts1が決定されてもよい。
【0078】
その一方、第2メモリ上において、再生開始時tsよりも前であって再生開始時tsに最も近いタイムスタンプを有する先頭のレコードが特定される(符号104Bを参照)。先頭のレコードに基づいて、初期設定する処理条件が特定される。それと並行して、第3メモリ上において、再生開始時tsよりも前であって再生開始時tsに最も近いタイムスタンプを有する先頭のレコードが特定される(符号106bを参照)。先頭のレコードに基づいて、初期設定する生成条件が特定される。
【0079】
処理条件及び生成条件が再現された上で、再生基準時ts1以降の複数の受信データがシネメモリから順次読み出される。それらの受信データに対して処理部による処理及び合成部によるグラフィック合成が順次適用される。例えば、先頭のレコード110cに基づいて受信データ108cが読み出され、それが処理部において処理され(符号124aを参照)、先頭の表示データが生成される。一方、最初のグラフィックが生成されて(符号126aを参照)、その最初のグラフィックが先頭の表示データに合成される。
【0080】
処理部での処理は、再生基準時ts1よりも遅れ時間Δt1だけ遅れている。グラフィック生成は、再生基準時ts1よりも遅れ時間Δt2だけ遅れている。再生動作の開始時に、それらの遅れ時間Δt1、Δt2が演算され、それらの遅れ時間Δt1、Δt2に従うタイミングで、処理部及びグラフィック生成部が動作する。これにより、処理条件の変更及び生成条件の変更をそれらのタイミングを含め正しく再現することが可能となる。遅れ時間Δt1、Δt2の演算に当たって、各回路や各モジュールの応答遅れ時間が考慮される。
【0081】
図示の例では、第1メモリ上において、再生終了時teに近いタイムスタンプを有する最終のレコード110dが特定されている。最終のレコード110dに基づいて最終の受信データ108dが読み出され、それが処理され(符号124bを参照)、これにより最終の受信データから最終の表示データが生成される。最終の表示データに対しては、グラフィック生成部により生成されたグラフィックが合成される(符号126bを参照)。
【0082】
なお、実施形態においては、再生動作時において、時計が生成する現在の時刻情報に基づいて各構成が同期して動作する。再生期間103が自動的に指定されてもよい。例えば、心電信号に基づいて再生期間103が自動的に指定されてもよい。
【0083】
図8には、再生動作の一例がフローチャートとして示されている。S10では、検査者つまりユーザーにより指定された再生期間が主制御部により受け付けられる。例えば、時間軸上において、再生開始時及び再生終了時に相当する過去の2時点が指定される。
【0084】
S12においては、主制御部から、第2再生制御部及び第3再生制御部へ、再生期間、特に再生開始時が通知される。S14においては、第2再生制御部により、参照すべき所定のレコードが特定され、同様に、第3再生制御部により、参照すべき所定のレコードが特定される。例えば、各再生制御部により、再生開始時よりも前であって再生開始時に最も近いレコードが特定される。再生開始時に代えて再生基準時を基準として、レコードを特定するようにしてもよい。
【0085】
S16においては、第2再生制御部及び第3再生制御部により、上記のように特定されたレコードの内容に基づいて、過去の設定が再現される。その設定は、再生動作における初期設定に相当する。第2再生制御部及び第3再生制御部は、設定完了後、設定完了の旨を主制御部へ通知する。
【0086】
S18では、主制御部により、再生開始時に基づいて、再生基準時が決定される。再生基準時は、現在の時刻として又は過去の時刻として決定される。例えば、再生基準時が現在の時刻として決定される場合、時計により今後生成される現在の時刻情報を基準として各構成要素が動作する。一方、再生基準時が過去の時刻として決定される場合、時計により今後生成される現在の時刻情報から変換される過去の時刻情報を基準として各構成要素が動作する。それらの間に本質的な違いはない。各構成要素が結果として同期して動作するように各構成要素の動作タイミングを一致させる又は整合させることになる。
【0087】
実施形態においては、S20において、現在の時刻として再生基準時が決定される。例えば、設定準備期間を考慮して、現時点(再生期間指定時)からN秒先の時点として再生基準時が決定される。その場合、主制御部は、再生基準時と過去の時刻である再生開始時との時間差を演算し、その時間差を、第2再生制御部及び第3再生制御部に通知する。必要に応じて、主制御部は、時間差を第1再生制御部等にも通知する。S22では、主制御部、又は、第2及び第3再生制御部により、遅れ時間(Δt1及びΔt2)が計算され、又は、特定される。
【0088】
S24では、再生動作が実行される。具体的には、第1再生制御部の制御により、再生基準時に基づいて特定される受信データ列が順次読み出される。第2再生制御部の制御の下で、処理部により複数の受信データが順次処理されて複数の表示データが生成される。 第3再生制御部の制御の下で生成されたグラフィックが個々の表示データに合成される。これにより超音波画像が再生される。その再生過程において、処理条件の変更及び生成条件の変更が再現される。
【0089】
個々の受信データの再生・処理、個々のグラフィックの生成、及び、個々の表示データへのグラフィックの合成に際しては、上記の時間差分が考慮され、また、上記の遅れ時間が考慮される。すなわち、処理条件の変更や生成条件の変更がそれらのタイミングを含めて再現される。
【0090】
図9には、他の動作例がタイミングチャートとして示されている。再生期間103Aの先頭である再生開始時tsはT2に近接している。T2以前の受信データは再生対象となっていない。
【0091】
このような場合には、第2メモリ上及び第3メモリ上において、再生開始時tsに基づいて、それよりも時間的に後であって再生開始時tsに最も近いタイムスタンプを有するレコードが特定される(符号130、132を参照)。再生基準時ts1は、図示のように定められ、再生開始時tsと再生基準時ts1との間が期間txである。この場合においても、遅れ時間Δt1、Δt2が特定され、それらが再生制御において考慮される。
【0092】
図9においては、先頭のレコード110dが特定され、その内容に従ってシネメモリから先頭の受信データ108dが読み出される。それに対して処理が適用され(符号124cを参照)、また、それに対応する先頭の表示データに合成されるグラフィックが生成される(符号126cを参照)。2番目以降の各受信データについても、上記同様に再生される。その過程において、処理条件の変更や生成条件の変更が再現される。
【0093】
次に、
図10~
図12に基づいて、変形例について説明する。変形例においては混合方式が採用されている。すなわち、変形例では、差分記憶方式が繰り返し実行される中で、定期的又は間欠的に、スナップショット記憶方式が実行される。例えば、最初にスナップショット記憶方式に従うレコード記憶が実行され、その後、差分記憶方式に従うレコード記憶がk回実行される都度、スナップショット記憶方式に従うレコード記憶が1回実行される。kは1以上の自然数である。
【0094】
混合方式では、
図10に示されるように、第2メモリ47に2種類のレコード72,72Aが記憶される。レコード72は、
図4に示した内容を有する。レコード72はスナップショットレコードとも言い得る。レコード72Aは、
図10に示される内容を有する。すなわち、レコード72Aは、タイムスタンプ74A、送受信条件の中での更新部分(つまり差分)76A、表示形式の中での更新部分(つまり差分)78A、処理パラメータセットの内での更新部分(つまり差分)82A、等を有する。レコード72Aに全情報ではなく差分情報を含めることにより、レコード72Aのサイズを小さくできる。レコード72Aは差分レコードとも言い得る。
【0095】
再生動作時には、再生開始時から過去に遡って最も近いスナップショットレコード72が特定され、その内容が参照される。そのスナップショットレコード72と再生開始時との間に、1又は複数の差分レコード72Aが存在する場合には、それらも参照される。間欠的にスナップショットレコード72を生成及び記憶しておくことにより、再生動作の開始時に、多数のレコードを参照することを回避できる。
【0096】
図11には、混合方式における第3メモリ57の内容が示されている。第3メモリ57には、2種類のレコード94,94Aが記憶される。レコード94は、
図5に示した内容を有する。レコード94はスナップショットレコードと言い得る。レコード94Aは、
図11に示される内容を有する。すなわち、レコード94Aは、タイムスタンプ96A、送受信条件の内で更新された部分(つまり差分)98A、表示形式の内で更新された部分(つまり差分)100A、生成パラメータセットの内で更新された部分(つまり差分)102A、等を有する。レコード94Aは差分レコードと言い得る。
【0097】
再生動作時には、再生開始時から過去に遡って最も近いスナップショットレコード94が特定され、その内容が参照される。そのスナップショットレコード94と再生開始時との間に、1又は複数の差分レコード94Aが存在する場合には、それらも参照される。
【0098】
図12には、混合方式が適用された場合における動作例が示されている。(C)で示す複数の設定の内で、グレー表現されている要素104e,104gは、スナップショット記憶方式に従うレコード記憶に相当する。(C)で示す複数の設定の内で、白表現されている要素104f,104hは、差分記憶方式に従うレコード記憶に相当する。同様に、(D)で示す複数の設定の内で、グレー表現されている要素106e,106gは、スナップショット記憶方式に従うレコード記憶に相当する。(C)で示す複数の設定の内で、白表現されている要素106f,106hは、差分記憶方式に従うレコード記憶に相当する。
【0099】
第2メモリ上において、符号134で示すように、再生開始時tsから過去に遡って、最も近いタイムスタンプを有するスナップショットレコードが特定され(符号104eを参照)、続いて、符号136で示すように、そのタイムスタンプと再生開始時tsとの間に存在する差分レコードが特定される(符号104fを参照)。特定された複数のレコードの内容に基づいて、処理部が初期設定される。
【0100】
また、第3メモリ上において、符号138で示すように、再生開始時tsから過去に遡って、最も近いタイムスタンプを有するスナップショットレコードが特定され(符号106eを参照)、続いて、符号140で示すように、そのタイムスタンプと再生開始時tsとの間に存在する差分レコードが特定される(符号106fを参照)。特定された複数のレコードの内容に基づいて、グラフィック生成部が初期設定される。
【0101】
再生動作開始後、スナップショットレコードが参照された場合(例えば、符号104g,106gを参照)、その内容の全体が処理条件又は生成条件に反映される。但し、差分に相当する部分だけが参照及び反映されてもよい。差分レコードが参照された場合(例えば、符号104h,106hを参照)、その内容が処理条件又は生成条件に反映される。
【0102】
図1に示した構成と同様の構成を有する他の超音波診断装置へ、シネメモリ、第1メモリ、第2メモリ及び第3メモリに記憶されたデータを転送し、他の超音波診断装置において、超音波画像を再生してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 装置本体、12 プローブ、16 フロントエンド(FE)ユニット、18 バックエンド(BE)ユニット、20 表示処理ユニット、22 制御ユニット、32 シネメモリ制御部、34 シネメモリ、36 第1再生制御部、46 第2再生制御部、48 第1ファイル出力部、50 主制御部、54 グラフィック生成部、56 第3再生制御部、58 第2ファイル出力部、60 合成部、64 時計。