(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】同軸端子、同軸コネクタ、配線板、及び、電子部品試験装置
(51)【国際特許分類】
H01R 24/44 20110101AFI20240313BHJP
H01R 24/30 20110101ALI20240313BHJP
H01R 12/75 20110101ALI20240313BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01R24/44
H01R24/30
H01R12/75
G01R31/28 H
(21)【出願番号】P 2020091493
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敦章
(72)【発明者】
【氏名】新井 政之
(72)【発明者】
【氏名】大山 誠敬
(72)【発明者】
【氏名】秋山 茂
(72)【発明者】
【氏名】松元 絢子
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-026145(JP,A)
【文献】国際公開第2009/034620(WO,A1)
【文献】特開2000-156266(JP,A)
【文献】特開平03-233879(JP,A)
【文献】特表2018-501622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/56-13/72
H01R 24/00-24/86
G01R 31/28-31/3193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号端子と、
前記信号端子を覆う筒状のグランド端子と、
前記信号端子と前記グランド端子との間に介在する絶縁部材と、を備えた同軸端子であって、
前記信号端子は、
前記絶縁部材に覆われた第1の本体部と、
前記第1の本体部から一方の側に延出する第1の接触片と、
前記第1の本体部から他方の側に延出する第2の接触片と、を備え、
前記絶縁部材は、前記第1の本体部の一部を前記絶縁部材から露出させる開口部を有しており、
下記の(1)式を満たす同軸端子。
L
2≧1/2×L
1 …(1)
但し、上記の(1)式において、L
1は、前記同軸端子の軸方向に沿った前記絶縁部材の長さであり、L
2は、前記軸方向に沿った前記開口部の長さである。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸端子であって、
下記の(2)式を満たし、前記第1の本体部の幅方向に沿った全体が、前記開口部を介して、前記絶縁部材から露出している同軸端子。
W
2>W
1 …(2)
但し、上記の(2)式において、W
1は、前記第1の本体部において前記開口部を介して露出している部分の幅であり、W
2は、前記開口部の幅である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の同軸端子であって、
前記グランド端子は、
前記絶縁部材を介して前記信号端子を保持する筒状の第2の本体部と、
前記第2の本体部から一方の側に延出する第3の接触片と、
前記第2の本体部から他方の側に延出する第4の接触片と、を備え、
前記第2の本体部は、前記第2の本体部の一方の側の端部で開口する切欠部を有しており、
下記の(3)式を満たす同軸端子。
W
4>W
3 …(3)
但し、上記の(3)式において、W
3は、前記信号端子において前記切欠部に対向している部分の幅であり、W
4は、前記切欠部の幅である。
【請求項4】
請求項
3に記載の複数の同軸端子と、
前記同軸端子を保持するハウジングと、を備えた同軸コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の同軸コネクタと、
前記同軸コネクタが実装された配線板本体と、を備え、
前記配線板本体は、
前記信号端子の前記第2の接触片が接触している第1の配線パターンと、
前記グランド端子の前記第4の接触片が接触している第2の配線パターンと、を有する配線板。
【請求項6】
DUTを試験する電子部品試験装置であって、
請求項5に記載の配線板を備えた電子部品試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路素子等の被試験電子部品(DUT:Device Under Test)を試験する電子部品試験装置に用いることのできる同軸端子、並びに、その同軸端子を備えた同軸コネクタ、配線板、及び、電子部品試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸端子は、筒状本体を有するグランド端子と、筒状本体の内側に配置された信号端子と、を備え、グランド端子が、回路基板と接触する複数の接触部を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の同軸端子を用いたコネクタでは、より多くの同軸端子を高密度に配置することが要求されており、同軸端子自体の小型化が必要とされている。その一方で、同軸端子を単に小型化すると、所望の電気的特性を満たさなくなってしまう場合がある。
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、小型化を図ると共に所望の電気的特性を確保することが可能な同軸端子、並びに、その同軸端子を備えた同軸コネクタ、配線板、及び、電子部品試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示に係る同軸端子は、信号端子と、前記信号端子を覆う筒状のグランド端子と、前記信号端子と前記グランド端子との間に介在する絶縁部材と、を備えた同軸端子であって、前記信号端子は、前記絶縁部材に覆われた第1の本体部と、前記第1の本体部から一方の側に延出する第1の接触片と、前記第1の本体部から他方の側に延出する第2の接触片と、を備え、前記絶縁部材は、前記第1の本体部の一部を前記絶縁部材から露出させる開口部を有しており、下記の(1)式を満たす同軸端子である。
【0007】
L2≧1/2×L1 …(1)
【0008】
但し、上記の(1)式において、L1は、前記同軸端子の軸方向に沿った前記絶縁部材の長さであり、L2は、前記軸方向に沿った前記開口部の長さである。
【0009】
[2]上記開示において、下記の(2)式を満たし、前記第1の本体部の幅方向に沿った全体が、前記開口部を介して、前記絶縁部材から露出していてもよい。
【0010】
W2>W1 …(2)
【0011】
但し、上記の(2)式において、W1は、前記第1の本体部において前記開口部を介して露出している部分の幅であり、W2は、前記開口部の幅である。
【0012】
[3]上記開示において、前記グランド端子は、前記絶縁部材を介して前記信号端子を保持する筒状の第2の本体部と、前記第2の本体部から一方の側に延出する第3の接触片と、前記第2の本体部から他方の側に延出する第4の接触片と、を備え、前記第2の本体部は、前記第2の本体部の一方の側の端部で開口する切欠部を有しており、下記の(3)式を満たしていてもよい。
【0013】
W4>W3 …(3)
【0014】
但し、上記の(3)式において、W3は、前記信号端子において前記切欠部に対向している部分の幅であり、W4は、前記切欠部の幅である。
【0015】
[4]本開示に係る同軸コネクタは、上記の複数の同軸端子と、前記同軸端子を保持するハウジングと、を備えた同軸コネクタである。
【0016】
[5]本開示に係る配線板は、上記の同軸コネクタと、前記同軸コネクタが実装された配線板本体と、を備え、前記配線板本体は、前記信号端子の前記第2の接触片が接触している第1の配線パターンと、前記グランド端子の前記第4の接触片が接触している第2の配線パターンと、を有する配線板である。
【0017】
[6]本開示に係る電子部品試験装置は、DUTを試験する電子部品試験装置であって、上記の配線板を備えた電子部品試験装置である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、信号端子の第1の本体部の一部が開口部を介して絶縁部材から露出しており、絶縁部材の長さL1と開口部の長さL2とが上記の(1)式の関係を満たしているので、樹脂よりも比誘電率の低い空気を信号端子とグランド端子との間に多く介在させることができる。このため、本開示では、同軸端子を小型化しても当該同軸端子のインピーダンスを維持することができ、同軸端子の小型化を図ると共に所望の電気的特性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態における配線板を上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態における同軸コネクタの平面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態における同軸コネクタの底面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態における同軸コネクタを下方から見た分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態における同軸コネクタの変形例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態における同軸端子を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態における同軸端子の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態における信号端子を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態における信号端子及ぶ絶縁部材を示す正面図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態における同軸端子を正面から見た斜視図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態における同軸端子を背面から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態における同軸端子を示す底面図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態におけるハウジングを示す拡大断面図であり、
図2のXIII-XIII線に対応する図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態におけるハウジングの保持孔を示す拡大平面図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態における配線板を下方から透視した透過平面図であり、同軸端子と配線パターンの位置関係を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態における電子部品試験装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本実施形態における配線板を示す斜視図である。
図2は本実施形態における同軸コネクタの平面図であり、
図3は本実施形態における同軸コネクタの底面図であり、
図4は本実施形態における同軸コネクタを下方から見た分解斜視図である。
図5は本実施形態における同軸コネクタの変形例を示す平面図である。
【0022】
本実施形態における配線板1は、
図1に示すように、配線板本体10と、当該配線板本体10に実装された同軸コネクタ20と、を備えている。この配線板1は、後述するように、例えば、電子部品試験装置100(
図16参照)のパフォーマンスボード120や試験モジュール141として用いることができる。
【0023】
配線板本体10は、電気絶縁性を有する絶縁基板11と、当該絶縁基板11の主面11a上に設けられた配線パターン12,13(
図15参照)と、を備えたプリント配線板である。同軸コネクタ20は、配線板本体10に固定された状態で、当該配線パターン12,13に電気的に接続されている。
【0024】
なお、配線板本体10に実装される同軸コネクタ20の数は、特に限定されず、任意の数の同軸コネクタ20を配線板本体10に実装することができる。例えば、電子部品試験装置100の用途で用いる場合には、電子部品試験装置100が有するソケット121(
図16参照)の数等に応じて、配線板本体10に実装される同軸コネクタ20の数が設定される。なお、本開示に係る配線板の用途は、電子部品試験装置に限定されない。また、本実施形態では、同軸コネクタ20を配線板本体10の主面に実装しているが、特にこれに限定されず、同軸コネクタ20を配線板本体10の側面(縁)に実装してもよい。
【0025】
同軸コネクタ20は、
図2~
図4に示すように、複数の同軸端子30と、当該同軸端子30を保持しているハウジング70と、を備えている。本実施形態では、92個の同軸端子30が千鳥状に配置されている。
【0026】
なお、同軸コネクタが有する同軸端子の数は、特に上記に限定されない。例えば、
図5に示すように、同軸コネクタ20Bが、千鳥状に配置された65個の同軸端子30を備えていてもよい。また、本実施形態では、複数の同軸端子30が千鳥状に配置されているが、同軸端子の配置は特にこれに限定されない。
【0027】
この同軸コネクタ20には、同軸ケーブル90(
図1参照)の端部に接続された相手方の同軸端子91が挿入される。この同軸ケーブル90の同軸端子91は、同軸コネクタ20の複数の同軸端子30にそれぞれ嵌合する。これにより、同軸端子91の信号端子92(
図4参照)が、同軸コネクタ20の同軸端子30の信号端子40(後述)に電気的に接続されると共に、当該同軸端子91のグランド端子93(
図4参照)が、同軸コネクタ20の同軸端子30のグランド端子60(後述)に電気的に接続される。
【0028】
図6は本実施形態における同軸端子を示す正面図であり、
図7は本実施形態における同軸端子の分解斜視図である。
図8は本実施形態における信号端子を示す斜視図であり、
図9は本実施形態における信号端子及ぶ絶縁部材を示す正面図である。
図10は本実施形態における同軸端子を正面から見た斜視図であり、
図11は本実施形態における同軸端子を背面から見た斜視図、
図12は実施形態における同軸端子を示す底面図である。
【0029】
本実施形態における同軸端子30は、
図6及び
図7に示すように、信号端子40と、絶縁部材50と、グランド端子60と、を備えている。グランド端子60は、所定の間隔を空けて信号端子40を筒状に囲んでいる。絶縁部材50は、信号端子40とグランド端子60との間に介在している。
【0030】
信号端子40は、例えば、金属材料等の導電性を有する材料から構成されており、金属製の板材を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工を行うことによって形成されている。この信号端子40は、
図8に示すように、Z方向に沿って延在している本体部41と、当該本体部41から+Z方向側に延出している一対の上側接触片42と、当該本体部41から-Z方向側に向かって延出している下側接触片43と、を備えている。この本体部41、上側接触片42、及び、下側接触片43は、一体的に形成されている。
【0031】
なお、本実施形態における本体部41が本開示における「第1の本体部」の一例に相当し、本実施形態における上側接触片42が本開示における「第1の接触片」の一例に相当し、本実施形態における下側接触片43が本開示における「第2の接触片」の一例に相当する。
【0032】
一対の上側接触片42は、本体部41の上端411から+Z方向に向かって突出している。この一対の上側接触片42は、X方向において相互に対向しており、相互に離れる方向に弾性変形可能となっている。また、この上側接触片42は、先端に略U字状の接触部421をそれぞれ有し、先端に近づくに従って上側接触片42の間の間隔が狭くなっており、接触部421同士の間で最も狭くなっている。また、それぞれの上側接触片42は、Y方向に向かって突出する爪部422を、当該上側接触片42の根元部分の近傍に有している。
【0033】
相手方の同軸端子91が同軸端子30に嵌合する際には、当該同軸端子91の信号端子92(
図4参照)が一対の上側接触片42の間を押し広げながら進入する。そして、当該信号端子92が一対の上側接触片42の接触部421の間に挟まれることで、この信号端子40と相手方の同軸端子91の信号端子92とが電気的に接続される。
【0034】
これに対し、下側接触片43は、根元部431で本体部41の下端412に接続されている。この根元部431が湾曲していることで、当該下側接触片43は、本体部41の下端412から斜め下方に向かって突出している。この下側接触片43は、根元部431を支点として、上方に向かって弾性変形可能となっている。また、この下側接触片43は、先端に略U字状の接触部432を有している。この接触部432は、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装された際に、配線板本体10の信号用配線パターン12(
図15参照)に接触する。
【0035】
絶縁部材50は、例えば、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されており、
図7及び
図9に示すように、インサート成形等の成形方法によって信号端子40と一体的に成型されている。この絶縁部材50は、略八角柱の形状を有しており、信号端子40の本体部41を覆っている。なお、絶縁部材50の形状は、柱形状であれば特に上記に限定されず、例えば円柱形状であってもよい。
【0036】
また、本実施形態の絶縁部材50は、-Y方向に開口する開口部51を有している。
図9に示すように、この開口部51は、下記の(4)式を満たすような長さを有しており、この開口部51を介して、信号端子40の本体部41の一部が絶縁部材50から露出している。
【0037】
L2≧1/2×L1 …(4)
【0038】
但し、上記の(4)式において、L1は、同軸端子30の軸方向(Z方向)に沿った絶縁部材50の長さであり、L2は、当該軸方向(Z方向)に沿った開口部51の長さである。
【0039】
ここで、同軸端子を単に小型化(小径化)すると、信号端子とグランド端子の間に介在する絶縁部材が薄くなるので、同軸端子のインピーダンスが低下してしまう。これに対し、本実施形態では、上記の(4)式を満たす開口部51が絶縁部材50に形成されていることで、樹脂よりも比誘電率の低い空気を信号端子40とグランド端子60との間に多く介在させることができ、同軸端子30を小型化しても同軸端子30のインピーダンスを維持することができる。
【0040】
また、この開口部51は、下記の(5)式を満たすような幅を有していることが好ましい。これにより、開口部51を十分大きくすることができる。
【0041】
W2>W1 …(5)
【0042】
但し、上記の(5)式において、W1は、本体部41において開口部51を介して露出している部分の幅であって、同軸端子30の軸方向(Z方向)に対して実質的に直交する幅方向(X方向)に沿った幅である。また、W2は、当該幅方向(X方向)に沿った開口部51の幅である。
【0043】
グランド端子60は、
図6、
図7、
図10及び
図11に示すように、2つの半筒部材61,65を重ね合わせることで構成されている。このグランド端子60は、略八角筒形状の本体部60aを有しており、絶縁部材50を介して信号端子40を囲んでおり、絶縁部材50を介して信号端子40を保持している。なお、グランド端子60の形状は、柱形状であれば特に上記に限定されず、絶縁部材50の形状に応じて設定され、例えば円柱形状であってもよい。また、グランド端子60を一つの部材で構成してもよい。
【0044】
第1の半筒部材61は、例えば、金属材料等の導電性を有する材料から構成されており、金属製の板材を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工を行うことによって形成されている。この第1の半筒部材61は、本体部62と、一対の上側接触片63と、一対の内側接触片64と、を備えている。本体部62は、絶縁部材50の外周面に沿うように半八角筒状の形状を有している。上側接触片63は、本体部62から+Z方向側に延出している。一方、下側の内側接触片64は、本体部62から-Z方向側に延出している。本体部62、上側接触片63、及び、内側接触片64は、一体的に形成されている。
【0045】
本体部62の上端621から、一対の上側接触片63が+Z方向に向かって突出している。この上側接触片63は、本体部62の周方向の両端に配置され、X方向において相互に対向しており、相互に離れる方向に弾性変形可能となっている。また、この上側接触片63は、先端に略U字状の接触部631をそれぞれ有し、先端に近づくに従って内側に向かって傾斜している。この接触部631は、相手方の同軸端子91が同軸端子30に嵌合した際に、相手方の同軸端子91のグランド端子93(
図4参照)と電気的に接続される。
【0046】
また、本体部62の下端622には、一対の下側切欠部623が形成されている。この下側切欠部623の上縁に、内側接触片64の根元部641が接続されており、内側接触片64は、この根元部641で外側に屈曲している。また、それぞれの内側接触片64は、内側に屈曲した屈曲部642を有しており、全体として略L字形状を有している。この内側接触片64は、根元部641及び屈曲部642を支点として、上方に向かって弾性変形可能となっている。また、この内側接触片64は、先端に接触部643を有している。この接触部643は、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装された際に、配線板本体10のグランド用配線パターン13(
図15参照)に接触する。
【0047】
また、本体部62は、一対の突起部624を有している。この突起部624は、本体部62の両端の近傍にそれぞれ形成されており、当該本体部62の外側(X方向)に向かって突出している。
【0048】
第2の半筒部材65も、上述の第1の半筒部材61と同様に、例えば、金属材料等の導電性を有する材料から構成されており、金属製の板材を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工を行うことによって形成されている。この第2の半筒部材65は、本体部66と、一対の外側接触片67と、を備えている。本体部66は、絶縁部材50の外周面に沿うように半八角筒状の形状を有している。下側の外側接触片67は、本体部66から-Z方向側に向かって延出している。この本体部62と外側接触片67は、一体的に形成されている。なお、この第2の半筒部材65は上側の接触片を有していない。
【0049】
上述の第1の半筒部材61の本体部62と同様に、本体部66の下端662に、一対の下側切欠部663が形成されている。この下側切欠部663の上縁に、外側接触片67の根元部671が接続されており、当該外側接触片67は、この根元部671で内側に屈曲している。また、それぞれの外側接触片67は、外側に屈曲した屈曲部672を有しており、全体として略L字形状を有している。この外側接触片67は、根元部671及び屈曲部672を支点として、上方に向かって弾性変形可能となっている。また、この外側接触片67は、先端に接触部673を有している。この接触部673は、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装された際に、配線板本体10のグランド用配線パターン13(
図15参照)に接触する。
【0050】
また、本体部66は、上側切欠部664と、複数(本例では4つ)の爪部665と、一対の貫通孔666と、を有している。上側切欠部664は、本体部66の周方向の中央に配置されており、本体部66の上端661で開口している。爪部665は、本体部66の両端から+Y方向に向かってそれぞれ突出している。貫通孔666は、上述の第1の半筒部材61の突起部624に対応するように、本体部66の両端の近傍に形成されている。
【0051】
本実施形態では、本体部66の上側切欠部664は、下記の(6)式を満たしており、
図6に示すように、グランド端子60の本体部60aで覆われている信号端子40の一部が、当該上側切欠部664を介して露出している。これにより、小型化された同軸端子30であっても、後述するハウジング70の連結部73(後述)の大きさを維持し、若しくは、太くすることができるので、同軸端子30をハウジング70に確実に圧入して固定することができる。
【0052】
W4>W3 …(6)
【0053】
但し、上記の(6)式において、W3は、信号端子40において上側切欠部664に対向している部分の幅であって、同軸端子30の軸方向(Z方向)に対して実質的に直交する幅方向(X方向)に沿った幅であり、W4は、当該幅方向(X方向)に沿った上側切欠部664の幅である。
【0054】
上述のように、グランド端子60は、以上に説明した第1及び第2の半筒部材61,65を重ね合わせることで構成されている。具体的には、
図7に示すように、絶縁部材50で覆われた信号端子40を第1及び第2の半筒部材61,65の間に介在させた状態で、第1の半筒部材61と第2の半筒部材65とを重ね合わせることで、グランド端子60を構成する。この際、第1の半筒部材61の両端の外側に第2の半筒部材65の両端が重ねられ、第2の半筒部材65の貫通孔666に第1の半筒部材61の突起部624が係合することで、第1及び第2の半筒部材61,65が固定される。
【0055】
なお、本実施形態では、上述のように、同軸端子30をハウジング70に挿入する前に、当該同軸端子30を組み立てているが、同軸端子30を組み立てるタイミングは、特にこれに限定されない。例えば、日本国特開2013-26145号公報に記載されているように、ハウジング70への同軸端子30の挿入動作を利用して、第1及び第2の半筒部材61,65を固定してもよい。
【0056】
上記のように組み立てられた同軸端子30のグランド端子60は、第1及び第2の半筒部材61,65の本体部62,66から構成された略八角筒形状の本体部60aを有している。
図12に示すように、一対の内側接触片64は、仮想直線VL
0を中心として対称の位置に配置されている。同様に、一対の外側接触片67も、仮想直線VL
0を中心として対称の位置に配置されている。なお、仮想直線VL
0は、同軸端子30の中心を通過し且つY方向に実質的に平行な仮想上の直線である。
【0057】
そして、内側接触片64は、
図10及び
図11に示すように、略八角筒形状の本体部60aから当該本体部60aの径方向内側であり且つ当該本体部60aの下方に向かって延出している。より具体的には、この内側接触片64は、根元部641で略八角筒形状の本体部60aの外側に向かって屈曲し、根元部641から屈曲部642との間の部分が本体部60aの外側に位置し、屈曲部642で本体部60aの内側に向かって屈曲している。そのため、
図12に示すように、同軸端子30の軸方向(Z方向)に沿って視た場合に、この内側接触片64の先端の接触部643は、略八角筒形状の本体部60aの内側に位置している。
【0058】
これに対し、外側接触片67は、
図10及び
図11に示すように、略八角筒形状の本体部60aから当該本体部60aの径方向外側であり且つ当該本体部60aの下方に向かって延出している。より具体的には、この外側接触片67は、根元部671で本体部60aの内側に向かって屈曲し、根元部671から屈曲部672との間の部分が本体部60aの内側に位置し、屈曲部642で本体部60aの外側に向かって屈曲している。そのため、
図12に示すように、同軸端子30の軸方向(Z方向)に沿って視た場合に、この外側接触片67の先端の接触部673は、本体部60aの外側に位置している。
【0059】
また、
図12に示すように、同軸端子30の軸方向(Z方向)に沿って視た場合に、信号端子40の下側接触片43が、グランド端子60の本体部60aの内側に位置している。この下側接触片43は、Y方向に沿って、-Y方向(内側接触片64から外側接触片67に向かう方向)側に向かって、当該信号端子40の本体部41の下端412から延出している。
【0060】
本実施形態における本体部60aが本開示における「第2の本体部」の一例に相当する。また、本実施形態における上側接触片63が本開示における「第3の接触片」の一例に相当し、本実施形態における内側接触片64及び外側接触片67が本開示における「第4の接触片」の一例に相当する。
【0061】
図13は本実施形態におけるハウジングを示す拡大断面図であり、
図14は本実施形態におけるハウジングの保持孔を示す拡大平面図である。
【0062】
ハウジング70は、例えば、樹脂材料等の電気絶縁性を有する材料から構成されており、
図1~
図4に示すように、略直方体の形状を有している。このハウジング70には、複数(本例では92個)の保持孔71が形成されている。また、このハウジング70には、同軸コネクタ20を配線板本体10に固定するための複数(本例では6個)のプレスフィット等と称される固定ピン80が埋設されている。
【0063】
それぞれの保持孔71は、
図13及び
図14に示すように、ハウジング70を上下方向(Z方向)に貫通している。この保持孔71は、グランド端子60の外径に対応した内径の八角形、又は、相手方端子としての同軸端子91の外形に対応した内径の円形の断面形状を有している。
【0064】
また、この保持孔71の内部には、略円柱状の保持部72が設けられている。この保持部72は、連結部73を介して保持孔71の内周面に連結されている。さらに、この保持部72には、当該保持部72を上下方向(Z方向)に貫通する貫通孔721が形成されている。この貫通孔721は、信号端子40の外径に対応した内径の円形の断面形状を有している。
【0065】
そして、同軸端子30がハウジング70に下方から挿入されると(
図4参照)、当該同軸端子30のグランド端子60が保持孔71内に下方から挿入されると共に、当該同軸端子30の信号端子40が貫通孔721内に下方から挿入される。そして、グランド端子60の上側切欠部664にハウジング70の連結部73が挿通すると共に、このグランド端子60の爪部665が保持孔71の内周面に食い込むことで、当該グランド端子60がハウジング70に固定される。また、信号端子40の爪部422がハウジング70の貫通孔721に食い込むことで、当該信号端子40がハウジング70に固定される。
【0066】
こうした複数の保持孔71は、ハウジング70に千鳥状に配置されている。具体的には、
図2に示すように、本実施形態のハウジング70は、5つの保持孔列75A~75Eを有している。それぞれの保持孔列75A~75Eは、Y方向に沿って実質的に同一のピッチP
1で並べられた複数の保持孔71で構成されている。
【0067】
図2において最上段の第1の保持孔列75Aは、18個の保持孔71が相互に隣り合うように等ピッチP
1で並べられている。同様に、中央段の第3の保持孔列75Cも、20個の保持孔71が相互に隣り合うように等ピッチP
1で並べられている。また、最下段の第5の保持孔列75Eも、18個の保持孔71が相互に隣り合うように等ピッチP
1で並べられている。
【0068】
これに対し、上から二段目の第2の保持孔列75Bは、18個の保持孔71が等ピッチP1で並べられているが、左側から6番目と7番目の保持孔71の間に歯抜け部分76を有している。同様に、下から二段目の第4の保持孔列75Dも、18個の保持孔71が等ピッチP1で並べられているが、右側から7番目と8番目の保持孔71の間に歯抜け部分76を有している。
【0069】
相互に隣り合う第1~第5の保持孔列75A~75E同士は、保持孔71が半ピッチ(P1/2)分だけ相互にずれるように平行に並べている。すなわち、相互に隣り合う保持孔列75A~75Eの保持孔71は、互い違いに配置されている。ここで、第2の保持孔列75Bにおける6番目と7番目の保持孔71は、保持孔71のピッチP1の整数倍(本例では3倍)に相当する距離だけ離れている。同様に、第4の保持孔列75Dにおける7番目と8番目の保持孔71も、保持孔71のピッチP1の整数倍(本例では3倍)に相当する距離だけ離れている。このため、第2及び第4の保持孔列75B,75Dが歯抜け部分76を有していても、第1~第5の保持孔列75A~75Eを互い違いに規則的に並べることができる。
【0070】
第1の保持孔列75Aの両側に固定ピン80がそれぞれ配置されている。同様に、第5の保持孔列75Eの両側に固定ピン80がそれぞれ配置されている。また、上記の第2の保持孔列75Bの歯抜け部分76に、固定ピン80が配置されている。同様に、上記の第2の保持孔列75Bの歯抜け部分76に、固定ピン80が配置されている。
図4に示すように、これらの固定ピン80は、ハウジング70内に埋設されていると共に、その先端がハウジング70の下面から下方に向かって突出している。
【0071】
このように、本実施形態では、複数の固定ピン80がハウジング70の上面の中心を対称点として非点対称の位置に配置されているので、配線板本体10への同軸コネクタ20の誤実装を防止することができる。また、本実施形態では、保持孔71の列75B,75Dの中に固定ピン80が配置されているので、同軸コネクタ20を配線板本体10に安定して固定することができる。
【0072】
図15は本実施形態における配線板を下方から透視した透過平面図であり、同軸端子と配線パターンの位置関係を示す図である。
【0073】
なお、この
図15は、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装された状態を示している。この状態においては、信号端子40の下側接触片43が配線板本体10により押圧されて弾性変形していると共に、グランド端子60の各接触片64,67も配線板本体10により押圧されて弾性変形している。これに対し、
図12は、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装される前の状態を示している。この状態においては、同軸端子30の各接触片43,64,67はいずれも配線板本体10により押圧されておらず弾性変形していない。
【0074】
以上に説明した同軸コネクタ20は、配線板本体10に実装されている。同軸コネクタ20は、ハウジング70から突出する固定ピン80が絶縁基板11の取付孔(不図示)に挿入されることで、当該絶縁基板11に固定されている。
【0075】
本実施形態では、
図15に示すように、同軸コネクタ20が配線板本体10に実装された状態では、信号端子40の下側接触片43の接触部432が配線板本体10の信号用配線パターン12に接触している。この際、下側接触片43は根元部431を支点として弾性変形して、接触部432が信号用配線パターン12に押し付けられていることで、信号端子40が信号用配線パターン12と電気的に接続されている。また、この下側接触片43の弾性変形により、当該下側接触片43の接触部432は、配線板本体10に実装する前の状態(
図12参照)と比較して、-Y方向に移動している。
【0076】
また、同軸コネクタ20が配線板本体10に実施された状態では、グランド端子60の内側接触片64の接触部643が配線板本体10のグランド用配線パターン13に接触している。この際、内側接触片64は根元部641と屈曲部642を支点として弾性変形して、接触部643がグランド用配線パターン13に押し付けられている。
【0077】
本実施形態では、この内側接触片64の弾性変形により、当該内側接触片64の接触部643は、同軸コネクタ20を配線板本体10に実装する前の状態(
図12参照)と比較して、本体部60aの径方向内側に移動しており、底面視(同軸端子30の軸方向(Z方向)に沿って視た場合)において、信号端子40の本体部41の下端412と重なっている。なお、この状態において、内側接触片64は、信号端子40の本体部41と接触してはいない。
【0078】
同様に、同軸コネクタ20が配線板本体10に実施された状態では、グランド端子60の外側接触片67の接触部673が配線板本体10のグランド用配線パターン13に接触している。この際、外側接触片67は根元部671と屈曲部672を支点として弾性変形して、接触部673がグランド用配線パターン13に押し付けられている。
【0079】
本実施形態では、この外側接触片67の弾性変形により、当該外側接触片67の接触部673は、同軸コネクタ20を配線板本体10に実装する前の状態(
図12参照)と比較して、本体部60aの径方向外側に移動している。
【0080】
このように、内側接触片64及び外側接触片67の接触部643,673がグランド用配線パターン13に押し付けられていることで、グランド端子60がグランド用配線パターン13と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、
図15に示すように、配線板本体10の信号用配線パターン12は、略矩形の平面形状を有しているのに対し、グランド用配線パターン13は、略U字状の平面形状を有しており、信号用配線パターン12を囲んでいる。本実施形態における信号用配線パターン12が本開示における「第1の配線パターン」の一例に相当し、本実施形態におけるグランド用配線パターン13が本開示における「第2の配線パターン」の一例に相当する。
【0081】
図16は本実施形態における電子部品試験装置の構成を示す概略図である。
【0082】
以上に説明した同軸コネクタ20を備えた配線板1は、
図16に示す電子部品試験装置100のパフォーマンスボード120や試験モジュール141として用いることができる。
【0083】
この電子部品試験装置100は、
図16に示すように、テストヘッド110とテスタ150を備えており、テストヘッド110は、パフォーマンスボード120と、マザーボード130と、テストヘッド本体140と、を備えている。なお、
図16に示す電子部品試験装置100の構成は一例に過ぎず、本開示に係る配線板を適用可能な電子部品試験装置の構成は、特にこれに限定されない。
【0084】
パフォーマンスボード120の上面には、DUT200がハンドラ(不図示)により押し付けられる複数のソケット121が実装されている。試験対象であるDUT200の具体例としては、特に限定されないが、SoC(System on a chip)、ロジック系のデバイス、或いは、メモリ系のデバイスを例示することができる。このパフォーマンスボード120の下面には、複数の同軸コネクタ122が実装されている。ソケット121と同軸コネクタ122とは配線パターン(不図示)等を介して電気的に接続されている。この同軸コネクタ122として、上述した同軸コネクタ20を用いることができる。
【0085】
マザーボード130は、複数の同軸ケーブル131を有している。この同軸ケーブル131は、上述した同軸ケーブル90と同様の構成を有している。この同軸ケーブル131の上端が、マザーボード130の上部に設けられたホルダ132に保持されており、同軸ケーブル131の下端も、マザーボード130の下部に設けられたホルダ133に保持されている。パフォーマンスボード120がマザーボード130に装着されると、パフォーマンスボード120の同軸コネクタ122と、マザーボード130の同軸ケーブル131の一端の同軸端子とが嵌合する。
【0086】
テストヘッド本体140は、複数の試験モジュール141(ピンエレクトロニクスカード)を備えている。それぞれの試験モジュール141の上縁には、同軸コネクタ142が取り付けられている。マザーボード130がテストヘッド本体140に装着されると、マザーボード130の同軸ケーブル131の他端の同軸端子と、テストヘッド本体140の同軸コネクタ142とが嵌合する。この同軸コネクタ142として、上述した同軸コネクタ20を用いることができる。各試験モジュール141は、ケーブル151を介してテスタ150に接続されており、テスタ150からの指示に応じて試験信号を生成し、DUT200に対して出力する。
【0087】
以上のように、本実施形態では、信号端子40の本体部41の一部が開口部51を介して当該絶縁部材50から露出しており、絶縁部材50の長さL1と開口部51の長さL2とが上記の(4)式の関係を満たしているので、樹脂よりも比誘電率の低い空気を信号端子40とグランド端子60との間に多く介在させることができる。このため、同軸端子20を小型化しても当該同軸端子20のインピーダンスを維持することができ、同軸端子20の小型化を図ると共に所望の電気的特性を確保することができる。
【0088】
なお、以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0089】
1…配線板
10…配線板本体
12…信号用配線パターン
13…グランド用配線パターン
20,20B…同軸コネクタ
30…同軸端子
40…信号端子
41…本体部
42…上側接触片
43…下側接触片
50…絶縁部材
51…開口部
60…グランド端子
60a…本体部
63…上側接触片
64…内側接触片
664…上側切欠部
67…外側接触片
70…ハウジング
100…電子部品試験装置