(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】全固体型ECミラー、車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/15 20190101AFI20240313BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20240313BHJP
G02F 1/157 20060101ALI20240313BHJP
B60R 1/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G02F1/15 501
G02F1/15 507
G02F1/155
G02F1/157
B60R1/08 Z
(21)【出願番号】P 2020094044
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】523099264
【氏名又は名称】美里工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐村田 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】石毛 理
(72)【発明者】
【氏名】涌田 康治
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194616(JP,A)
【文献】米国特許第05066112(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15
G02F 1/155
G02F 1/157
B60R 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板の裏面側に積層成膜された
第1金属反射膜、透明導電膜
、全固体型EC膜
および第2金属反射膜と、
前記
第1金属反射膜に接続されていて、前記
第1金属反射膜を介して前記全固体型EC膜に電圧を印加する第1ターミナル
、および
、前記第2金属反射膜に接続されていて、前記第2金属反射膜を介して前記全固体型EC膜に電圧を印加する第2ターミナルと、
前記透明基板の裏面側に配置されている封止基板と、
前記透明基板と前記封止基板との間に充填されていて、前記
第1金属反射膜、前記透明導電膜、前記全固体型EC膜、
前記第2金属反射膜、前記第1ターミナルの一部分、および、前記第2ターミナルの一部分を封止する封止部材と、
を備え、
前記第1ターミナルの一部分および前記第2ターミナルの一部分には、前記透明基板と前記封止基板との間の隙間を保持する保持部が、それぞれ、設けられてい
て、
前記保持部は、前記透明基板の裏面に対して平行な方向に、かつ、前記透明基板の外周縁に沿って長尺形状をなす、
ことを特徴とする全固体型ECミラー。
【請求項2】
透明基板と、
前記透明基板の裏面側に積層成膜された
第1金属反射膜、透明導電膜
、全固体型EC膜
および第2金属反射膜と、
前記
第1金属反射膜に接続されていて、前記
第1金属反射膜を介して前記全固体型EC膜に電圧を印加する第1ターミナル
、および
、前記第2金属反射膜に接続されていて、前記第2金属反射膜を介して前記全固体型EC膜に電圧を印加する第2ターミナルと、
前記透明基板の裏面側に配置されている封止基板と、
前記透明基板と前記封止基板との間に充填されていて、前記
第1金属反射膜、前記透明導電膜、前記全固体型EC膜、
前記第2金属反射膜、前記第1ターミナルの一部分、および、前記第2ターミナルの一部分を封止する封止部材と、
を備え、
前記第1ターミナルの一部分および前記第2ターミナルの一部分には、前記透明基板と前記封止基板との間の隙間を保持する保持部が、それぞれ、設けられてい
て、
前記第1ターミナルおよび前記第2ターミナルは、それぞれ、
外部電源に接続される接続部と、
前記金属反射膜に接続されていて、前記金属反射膜に電圧を印加する給電部と、
前記保持部と、
を備え、
前記保持部は、
前記透明基板に当接する第1当接部と、
前記封止基板に当接する第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部とを相互に連結する連結部と、
から構成されていて、
前記第1当接部は、前記保持部と前記給電部との双方を兼用する、
ことを特徴とする全固体型ECミラー。
【請求項3】
前記保持部は、前記透明基板の裏面に対して平行な方向に、かつ、前記透明基板の外周縁に沿って長尺形状をなす、
ことを特徴とする請求項
2に記載の全固体型ECミラー。
【請求項4】
前記第1ターミナルまたは前記第2ターミナルのいずれか一方は、複数個有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の全固体型ECミラー。
【請求項5】
前記透明基板と前記封止基板との間に介在されているスペーサを備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の全固体型ECミラー。
【請求項6】
前記の請求項1から5のいずれか1項に記載の全固体型ECミラーと、
前記全固体型ECミラーが取り付けられているミラーハウジングと、
前記ミラーハウジングを車体に取り付ける取付部材と、
を備える、
ことを特徴とする車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全固体型ECミラーに関する。また、この発明は、全固体型ECミラーを備える車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体型ECミラー、または、全固体型ECミラーを備える車両用ミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、特許文献1の導電性クリップを備えたエレクトロクロミック素子を利用した防眩ミラー(以下、「特許文献1の防眩ミラー」と称する)について説明する。
【0003】
特許文献1の防眩ミラーは、基板ガラスの裏面に、下部透明電極、エレクトロクロミック層(以下、「EC層」と称する)および上部透明電極を、成膜積層し、下部透明電極および上部透明電極に導電性クリップをそれぞれ取り付け、基板ガラスの裏面側に封止基板ガラスを配置し、基板ガラスと封止基板ガラスとの間に封止材を充填してなるものである。
【0004】
特許文献1の防眩ミラーは、導電性クリップを介して下部透明電極および上部透明電極にそれぞれ電圧を印加することにより、EC層が着消色して、反射率が変化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の防眩ミラーは、基板ガラスと封止基板ガラスとの間の隙間を保持する手段が設けられていない。この結果、特許文献1の防眩ミラーは、基板ガラスと封止基板ガラスとの間に充填されている封止材がオーバーフローやアンダーフィルして、製品の品質の低下やミラーの視認性の低下などの不良が発生する場合がある。
【0007】
このように、かかる全固体型ECミラー、車両用ミラー装置(特許文献1の防眩ミラーを含む)において、透明基板(基板ガラス)と封止基板(封止基板ガラス)との間の隙間を保持して制御することは、重要である。この透明基板(基板ガラス)と封止基板(封止基板ガラス)との間の隙間を制御する重要性については、特開2011-150200号公報に記載されている。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、封止部材のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を防止できる全固体型ECミラー、車両用ミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の全固体型ECミラーは、透明基板と、透明基板の裏面側に積層成膜された金属反射膜、透明導電膜および全固体型EC膜と、金属反射膜に接続されていて、金属反射膜を介して全固体型EC膜に電圧を印加する第1ターミナルおよび第2ターミナルと、透明基板の裏面側に配置されている封止基板と、透明基板と封止基板との間に充填されていて、金属反射膜、透明導電膜、全固体型EC膜、第1ターミナルの一部分、および、第2ターミナルの一部分を封止する封止部材と、を備え、第1ターミナルの一部分および第2ターミナルの一部分には、透明基板と封止基板との間の隙間を保持する保持部が、それぞれ、設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明の全固体型ECミラーにおいて、第1ターミナルおよび第2ターミナルが、それぞれ、外部電源に接続される接続部と、金属反射膜に接続されていて、金属反射膜に電圧を印加する給電部と、保持部と、を備え、保持部が、透明基板に当接する第1当接部と、封止基板に当接する第2当接部と、第1当接部と第2当接部とを相互に連結する連結部と、から構成されていて、第1当接部が、保持部と給電部との双方を兼用する、ことが好ましい。
【0011】
この発明の全固体型ECミラーにおいて、保持部が、透明基板の裏面に対して平行な方向に、かつ、透明基板の外周縁に沿って長尺形状をなす、ことが好ましい。
【0012】
この発明の全固体型ECミラーにおいて、第1ターミナルまたは第2ターミナルのいずれか一方が、複数個有する、ことが好ましい。
【0013】
この発明の全固体型ECミラーにおいて、透明基板と封止基板との間に介在されているスペーサを備える、ことが好ましい。
【0014】
この発明の車両用ミラー装置は、この発明の全固体型ECミラーと、全固体型ECミラーが取り付けられているミラーハウジングと、ミラーハウジングを車体に取り付ける取付部材と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明の全固体型ECミラー、車両用ミラー装置は、封止部材のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明にかかる全固体型ECミラー、車両用ミラー装置の実施形態を示す使用状態の正面図である。
【
図2】
図2は、全固体型ECミラーを示す正面図である。
【
図3】
図3は、全固体型ECミラーを示す一部拡大縦断面図(
図2におけるIII-III線一部拡大断面図)である。
【
図4】
図4は、全固体型ECミラーを示す一部拡大背面図である。
図4(A)は、
図3におけるA矢視図である。
図4(B)は、
図3におけるB矢視図である。
【
図5】
図5は、ターミナルを示す拡大平面図(
図4(A)におけるV矢視図、
図4(B)におけるV矢視図)である。
【
図6】
図6は、ターミナルを示す拡大背面図(
図5におけるVI矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明にかかる全固体型ECミラー、車両用ミラー装置の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面においては、概略図であるため、部品の一部の図示を省略し、また、ハッチングの一部を省略し、あるいは、断面の一部を省略する。
図4は、封止基板7および封止部材70の一部を破断省略した状態で図示されている。
【0018】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる全固体型ECミラー、車両用ミラー装置の構成について説明する。
【0019】
(車両用ミラー装置100の説明)
図1において、符号100は、この実施形態にかかる車両用ミラー装置である。車両用ミラー装置100は、この例では、車両用アウトサイドミラー装置であって、車両用のドアミラー(以下、「ドアミラー100」と称する)である。
【0020】
ドアミラー100は、車両の左右のドアDにそれぞれ装備される。なお、
図1に示されているドアミラー100は、車両の左のドアDに装備されている。ドアミラー100は、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1と、ミラーハウジング101と、取付部材102と、を備える。
【0021】
ミラーハウジング101は、中空状の箱形形状をなしている。ミラーハウジング101の正面側(車両の後側)の部分には、開口部103が設けられている。
【0022】
全固体型ECミラー1は、ミラーハウジング101の開口部103に配置されている。全固体型ECミラー1は、ミラーハウジング101に取り付けられている。
【0023】
ミラーハウジング101および全固体型ECミラー1は、取付部材102を介して車体であるドアDに取り付けられている。取付部材102は、ベース104と、電動格納ユニット105と、を有する。
【0024】
ベース104は、ドアDに固定されている。電動格納ユニット105は、ベース104に固定されていて、かつ、ミラーハウジング101に取り付けられている。なお、電動格納ユニット105は、必ずしも、搭載されるものではない。すなわち、電動格納ユニット105を搭載しない車両用ミラー装置もある。
【0025】
(全固体型ECミラー1の説明)
全固体型ECミラー1は、
図1から
図4に示すように、透明基板2と、透明基板2の裏面20側に積層成膜された第1金属反射膜3、透明導電膜4、全固体型EC膜5および第2金属反射膜6と、封止基板7と、封止部材70と、第1ターミナル81と、第2ターミナル82と、を備えるものである。
【0026】
(透明基板2の説明)
ここで、透明基板2の裏面20は、全固体型ECミラー1のミラー面に対して、反対側の面である。すなわち、裏面20は、全固体型ECミラー1の見る側(車両の運転者の視点側)の面に対して、反対側の面である。
【0027】
透明基板2は、この例では、ガラス板などから構成されている。透明基板2の外形は、
図1に示すように、ミラーハウジング101の開口部103の内形よりも一回り小さい。透明基板2の正面21は、透明基板2の裏面20に対して反対側の面であって、全固体型ECミラー1のミラー面である。透明基板2の正面21は、凸曲面をなす。
【0028】
なお、
図3において、透明基板2の正面21は、平面に図示されている。透明基板2の正面21は、平面などであっても良い。また、透明基板2の角部は、
図3中の破線にて示すように、面取りされていても良い。
【0029】
(第1金属反射膜3の説明)
第1金属反射膜3は、透明基板2の裏面20の外周に、帯状に、成膜されている。第1金属反射膜3は、この例では、アルミ膜から構成されている。第1金属反射膜3の一部分、この例では、下辺の中央部分には、第1金属反射膜3が成膜されていない切欠部分30が、設けられている(
図4(B)を参照)。
【0030】
(透明導電膜4の説明)
透明導電膜4は、透明基板2および第1金属反射膜3に、透明基板2の形状よりも一回り小さい形状に、成膜されている。透明導電膜4は、この例では、ITOなどから構成されている。透明導電膜4の外周縁のうち第1金属反射膜3の切欠部分30に対応する一部分には、透明導電膜4が成膜されていない凹部40が、設けられている(
図4(B)を参照)。
【0031】
(全固体型EC膜5の説明)
全固体型EC膜5は、透明基板2、第1金属反射膜3および透明導電膜4に、透明基板2の形状よりも一回り小さい形状に、成膜されている。
【0032】
全固体型EC膜5は、この例では、酸化発色層、固体電解質層および還元発色層の3層を順次積層した全固体積層膜で構成されている。
酸化発色層は、この例では、IrSnOx (x =1~2)などである。
固体電解質層は、この例では、TaOx (x =2~2.5)などである。
還元発色層は、この例では、WO3 などである。
【0033】
全固体型EC膜5の外周縁の一部分、この例では、上辺の中央部分には、全固体型EC膜5が成膜されていない凹部50が、設けられている(
図4(A)を参照)。全固体型EC膜5の凹部50と、第1金属反射膜3の切欠部分30および透明導電膜4の凹部40とは、透明基板2の上下両辺において、相互に、向き合っている。
【0034】
(第2金属反射膜6の説明)
第2金属反射膜6は、透明基板2、第1金属反射膜3、透明導電膜4および全固体型EC膜5に、透明基板2、透明導電膜4および全固体型EC膜5の形状よりも一回り小さい形状に、成膜されている。第2金属反射膜6は、この例では、アルミ膜から構成されている。
【0035】
第2金属反射膜6の外周縁のうち第1金属反射膜3の切欠部分30に対応する一部分には、第2金属反射膜6が成膜されている凸部60が、設けられている(
図4(B)を参照)。第2金属反射膜6の外周縁のうち全固体型EC膜5の凹部50に対応する一部分には、第2金属反射膜6が成膜されていない凹部61が、設けられている(
図4(A)を参照)。
【0036】
(第1金属反射膜3および第2金属反射膜6の説明)
第1金属反射膜3および透明導電膜4は、一部分がラップしていて作用電極を構成する。第2金属反射膜6は、対向電極を構成する。作用電極の第1金属反射膜3および透明導電膜4と、対向電極の第2金属反射膜6との間には、全固体型EC膜5が介在されている。この結果、第1金属反射膜3および透明導電膜4と第2金属反射膜6とは、全固体型EC膜5を介して絶縁状態ある。
【0037】
第1金属反射膜3は、全固体型ECミラー1の外側のミラーを構成する。第2金属反射膜6は、全固体型ECミラー1の内側のミラーを構成する。外側のミラーの第1金属反射膜3の内周部分と、内側のミラーの第2金属反射膜6の外周部分とは、ラップしている。
【0038】
(封止基板7および封止部材70の説明)
透明基板2の裏面側には、封止基板7が配置されている。封止基板7は、この例では、透明基板2と同様にガラス板などから構成されている。封止基板7は、透明基板2の形状よりも一回り小さい形状をなしている。また、封止基板7の角部は、透明基板2の角部と同様に、
図3中の破線にて示すように、面取りされていても良い。
【0039】
透明基板2と封止基板7との間には、封止部材(封止材)70が充填されている。封止部材70は、第1金属反射膜3、透明導電膜4、全固体型EC膜5、第2金属反射膜6、第1ターミナル81の一部分、および、第2ターミナル82の一部分を封止する。これにより、透明基板2、第1金属反射膜3、透明導電膜4、全固体型EC膜5、第2金属反射膜6、封止基板7、封止部材70、第1ターミナル81および第2ターミナル82が一体構造となり、全固体型ECミラー1が構成される。封止部材70は、この例では、エポキシ樹脂である。
【0040】
(第1ターミナル81、第2ターミナル82の説明)
第1金属反射膜3のうち全固体型EC膜5の凹部50および第2金属反射膜6の凹部61に対応する一部分には、第1ターミナル81が導電性ペースト(導電性接着剤、半田)80を介して接続されている(
図3および
図4(A)参照)。第2金属反射膜6の凸部60には、第2ターミナル82が同じく導電性ペースト80を介して接続されている(
図3および
図4(B)参照)。第1ターミナル81と第2ターミナル82は、全固体型ECミラー1の上下方向に配置されている。
【0041】
第1ターミナル81、第2ターミナル82は、この例では、導電性部材(洋白など)から構成されている。
【0042】
第1ターミナル81、第2ターミナル82は、
図3、
図4、
図5および
図6に示すように、側面から見て、水平部分と垂直部分とからなるL字形状をなす。第1ターミナル81、第2ターミナル82は、水平部分の接続部83と垂直部分の給電部84とから構成されている。給電部84の幅は、接続部83の幅よりも広い。すなわち、給電部84の両側が、接続部83の両側から外側に突出している。
【0043】
接続部83は、駆動回路など(図示せず)を介して外部電源(図示せず)に接続される。給電部84は、第1ターミナル81側の作用電極(第1金属反射膜3および透明導電膜4)と第2ターミナル82側の対向電極(第2金属反射膜6)とに、それぞれ、接続されていて、作用電極と対向電極とに、それぞれ、外部電源からの電圧を印加(給電)する。すなわち、給電部84は、作用電極と対向電極とに、それぞれ、電気を供給して電流を流す。
【0044】
第1ターミナル81の一部分および第2ターミナル82の一部分は、封止部材70により封止されていて、スペーサと同様に、透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持する保持部を構成する。
【0045】
保持部は、第1当接部86と、第2当接部87と、連結部88と、から構成されている。第1当接部86は、上側の第1当接部86と下側の第1当接部86との2点で、透明基板2の裏面20に当接する。第2当接部87は、上側の第1当接部86と下側の第1当接部86との間の1箇所で、封止基板7の正面に当接する。連結部88は、上側の第1当接部86および下側の第1当接部86と第2当接部87とを相互に連結する。
【0046】
保持部の第1当接部86、第2当接部87および連結部88は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持する。なお、保持部の第1当接部86、第2当接部87および連結部88の形状を変えたりや寸法を調整したりすることにより、透明基板2と封止基板7との間の隙間を調整することができる。ここで、第1当接部86は、保持部と給電部84との双方を兼用する。
【0047】
保持部(垂直部分の給電部84)は、透明基板2の裏面20および封止基板7の正面に対して平行な方向に、かつ、透明基板2および封止基板7の外周縁に沿って長尺形状をなす。長尺形状の保持部(垂直部分の給電部84)は、透明基板2と封止基板7との向き合う方向に弾性を有する。
【0048】
(スペーサの説明)
なお、透明基板2と封止基板7との間には、スペーサ(図示せず)が、介在される場合がある。スペーサは、透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持する。スペーサは、樹脂部材などの絶縁部材から構成されている。
【0049】
スペーサは、たとえば、
図2中の二点鎖線の楕円にて示す2箇所に配置される。2個のスペーサは、全固体型ECミラー1の左右方向に配置されている。この結果、2個のスペーサと第1ターミナル81と第2ターミナル82は、全固体型ECミラー1の左右上下にほぼ等間隔で配置されている。なお、スペーサの構造は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持する構造であれば、特に、限定しない。
【0050】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0051】
全固体型ECミラー1のミラー面は、正面側(車両の後側)に向いていて、車両の後側の情報を写す。運転者は、全固体型ECミラー1のミラー面に写し出された車両の後側の情報を視認する。
【0052】
この時、全固体型ECミラー1のミラー面は、第1金属反射膜3の外側のミラーと、第2金属反射膜6の内側のミラーとにより、全固体型ECミラー1の全面がミラー面となる。
【0053】
第1ターミナル81および第2ターミナル82を介して、作用電極(第1金属反射膜3および透明導電膜4)と対向電極(第2金属反射膜6)とに、それぞれ、電圧を印加(給電)する。
【0054】
すると、全固体型EC膜5の光透過率が変化する。これにより、透明基板2の正面21側、すなわち、見る側(車両の運転者の視点側)から、透明基板2、透明導電膜4および全固体型EC膜5を透過して見た第2金属反射膜6の反射率が変化する。
【0055】
昼モードの高反射率のミラー面と、夜モードの低反射率のミラー面とが得られる。この時、反射率が変化するのは、全固体型ECミラー1のミラー面のうち、第2金属反射膜6に対応する内側のミラーである。外側のミラーの反射率は、変化しない。
【0056】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0057】
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、第1ターミナル81の一部分の保持部および第2ターミナル82の一部分の保持部が透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持するものである。この結果、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を保持して制御することができるので、封止部材70がオーバーフローやアンダーフィルして、製品の品質の低下やミラーの視認性の低下などの不良が発生するのを防止することができる。
【0058】
ここで、透明基板2と封止基板7との間の隙間が広いと、封止部材70が透明基板2と封止基板7との間の必要な範囲までに広がらず、逆に、透明基板2と封止基板7との間の隙間が狭いと、封止部材70が透明基板2と封止基板7との間から溢れ出てしまう。これに対して、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を制御して、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を防止できる。
【0059】
しかも、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、第1ターミナル81の一部分の保持部が透明基板2および封止基板7の下辺の中央部分に配置されていて、第2ターミナル82の一部分の保持部が透明基板2および封止基板7の上辺の中央部分に配置されている。すなわち、2個のターミナル81、82の保持部が透明基板2および封止基板7の周方向に等間隔に配置されている。この結果、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を確実に保持することができ、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を確実に防止できる。
【0060】
その上、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、治具などを使用せずに、封止部材70を充填することができる。また、封止部材70がオーバーフローすることが無いので、オーバーフローした封止部材70を除去する必要が無い。これにより、製造コストを安価にすることができる。
【0061】
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、第1ターミナル81の保持部および第2ターミナル82の保持部が、透明基板2に当接する第1当接部86と、封止基板7に当接する第2当接部87と、第1当接部86と第2当接部87とを相互に連結する連結部88と、から構成されている。この結果、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、前記の構成からなる保持部により、透明基板2と封止基板7との間の隙間を確実に保持することができ、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を確実に防止できる。
【0062】
しかも、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、第1当接部86が保持部と給電部との双方を兼用するので、構造や構成部品を簡略化して、製造コストを安価にすることができる。
【0063】
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、保持部が透明基板2の裏面20および封止基板7の正面に対して平行な方向に、かつ、透明基板2および封止基板7の外周縁に沿って長尺形状をなすものである。この結果、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、長尺形状の保持部により、透明基板2と封止基板7との間の隙間を確実に保持することができ、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を確実に防止できる。
【0064】
しかも、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、長尺形状の保持部が透明基板2と封止基板7との向き合う方向に弾性を有するので、透明基板2と封止基板7との間の隙間の寸法公差を吸収することができる。これにより、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間の隙間を確実に保持することができ、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を確実に防止できる。
【0065】
この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間であって、
図2中の二点鎖線の楕円にて示す2箇所に、スペーサ(図示せず)を配置するものである。この結果、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、2個のスペーサと第1ターミナル81と第2ターミナル82を、透明基板2および封止基板7の左右上下にかつ周方向にほぼ等間隔で配置するものである。これにより、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、透明基板2と封止基板7との間の隙間の制御を安定させることができ、封止部材70のオーバーフローやアンダーフィルによる不良を確実に防止できる。
【0066】
なお、この実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100においては、透明基板2と封止基板7との間に充填(塗布)される封止部材70の量のばらつきは、たとえば、±約1%未満内に収めるのが望ましい。
【0067】
(実施形態以外の例の説明)
なお、前記の実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、車両用アウトサイドミラー装置について説明するものである。しかしながら、この発明においては、車両用インサイドミラー装置に使用しても良い。また、この発明においては、車両用のミラー装置以外のミラー装置にも使用することができる。
【0068】
また、前記の実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、金属反射膜として、第1金属反射膜3と第2金属反射膜6とから構成されている例について説明するものである。しかしながら、この発明においては、金属反射膜として、第1金属反射膜3と第2金属反射膜6とから構成されている例以外の金属反射膜を使用しても良い。
【0069】
たとえば、レーザーカットによる分割線で第1領域と第2領域に分割されている金属反射膜(国際公開2017-169243号公報参照)、あるいは、特許文献1の防眩ミラーのように、基板ガラスに成膜された下部透明電極と封止基板ガラスに成膜された上部透明電極とからなる金属反射膜、であっても良い。
【0070】
さらに、前記の実施形態にかかる全固体型ECミラー1、車両用ミラー装置100は、1個の第1ターミナル81と1個の第2ターミナル82とを備えるものである。しかしながら、この発明においては、第1ターミナル81または第2ターミナル82のいずれか一方を複数個備えても良い。第1ターミナル81または第2ターミナル82を複数個備えた場合は、1個だけの場合と比べて、同じ電荷をより短時間で注入することができる。すなわち、より短時間で反射率を変化させることができる。
【0071】
さらにまた、この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 全固体型ECミラー
2 透明基板
20 裏面
21 正面
3 第1金属反射膜
30 切欠部分
4 透明導電膜
40 凹部
5 全固体型EC膜
50 凹部
6 第2金属反射膜
60 凸部
61 凹部
7 封止基板
70 封止部材
80 導電性ペースト(導電性接着剤、半田)
81 第1ターミナル
82 第2ターミナル
83 接続部
84 給電部
86 第1当接部
87 第2当接部
88 連結部
100 ドアミラー(車両用ミラー装置)
101 ミラーハウジング
102 取付部材
103 開口部
104 ベース
105 電動格納ユニット
D ドア(車体)