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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】磁気治療器具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/02 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A61N2/02 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020095801
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021186348
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112299
【氏名又は名称】ピップ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】北村 等
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太
(72)【発明者】
【氏名】森下 直美
(72)【発明者】
【氏名】太田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】川濱 佳祐
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202542(JP,A)
【文献】特開2008-173405(JP,A)
【文献】特開2017-055967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に巻き付けて使用する磁気治療具であって、
長尺体と、
前記長尺体を被覆する被覆部と、
を備え、
前記長尺体は、磁性粉と可撓性材料との混合物、及び前記混合物内に長手方向に沿って配列される複数の磁石、を備え、
前記混合物は断面において中心を挟む一方側がN極、他方側がS極となるように着磁され、
前記各磁石は、前記長手方向の一方がN極、他方がS極となるように配列さ
れている、磁気治療具。
【請求項2】
前記各磁石は、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、及びネオジウム磁性体を含むプラスチック磁石の少なくとも1つ、によって形成されている、請求項1に記載の磁気治療具。
【請求項3】
前記混合物を構成する可撓性材料は、シリコーンゴムによって形成され、
前記被覆部は、シリコーンゴムによって形成されている、請求項1または2に記載の磁気治療具。
【請求項4】
前記長尺体において、前記磁石を囲む前記混合体の肉厚が、0.1mm以上である、請求項1から3のいずれかに記載の磁気治療具。
【請求項5】
第1押出機によって磁性粉と可撓性材料との混合物を押し出すとともに、前記混合物内に複数の磁石を当該混合物の長手方向に沿って所定間隔で挿入することで、長尺体を形成するステップと、
第2押出機によって可撓性材料を押し出し、前記長尺体の外周面を連続的に被覆することで、被覆部を成形するステップと、
を備え、
前記混合物は断面において中心を挟む一方側がN極、他方側がS極となるように着磁され、
前記各磁石は、前記長手方向の一方がN極、他方がS極となるように配列さ
れている、磁気治療具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体に巻き付けて使用する磁気治療具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気の作用による血行促進等の健康上の効果を目的として、ネックレスやブレスレット等の態様で身体の一部に巻き付けて使用する磁気治療具が公知である。特許文献1には、可撓性を有する長尺体内に磁石粒を等間隔に埋め込んだ磁気治療具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-18061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、血行促進のためには、さらに強く磁力を発することが好ましく、そのような磁気治療具が要望されていた。本発明は、さらに強い磁力を発することができ、血行促進等の健康上の効果を高めることが可能な磁気治療具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、身体に巻き付けて使用する磁気治療具であって、長尺体と、前記長尺体を被覆する被覆部と、を備え、前記長尺体は、磁性粉と可撓性材料との混合物、及び前記混合物内に長手方向に沿って配列される複数の磁石、を備えている。
【0006】
上記磁気治療具において、前記各磁石は、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、及びネオジウム磁性体を含むプラスチック磁石の少なくとも1つによって形成することができる。
【0007】
上記磁気治療具において、前記混合物を構成する可撓性材料は、シリコーンゴムによって形成することができ、前記被覆部も、シリコーンゴムによって形成することができる。
【0008】
上記磁気治療具では、前記長尺体において、前記磁石を囲む混合体の肉厚を、0.1mm以上とすることができる。
【0009】
本発明に係る磁気治療具の製造方法は、第1押出機によって磁性粉と可撓性材料との混合物を押し出すとともに、前記混合物内に複数の磁石を当該混合物の長手方向に沿って所定間隔で挿入することで、長尺体を形成するステップと、第2押出機によって可撓性材料を押し出し、前記長尺体の外周面を連続的に被覆することで、被覆部を成形するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁気治療具によれば、さらに強い磁力を発することができ、血行促進等の健康上の効果を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気治療具の外観図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4図3のC-C線断面図である。
図5】連結具を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る磁気治療具について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る磁気治療具の外観図、図2図1のA-A線断面図、図3図1のB-B線断面図、図4図3のC-C線断面図である。
【0013】
<1.磁気治療具の構成>
図1に示すように、この磁気治療具は、磁気の作用による血行促進等の健康上の効果を目的として、身体に巻き付けて使用するものである。例えば、ネックレスとして首に巻き付けたり、ブレスレットとして手首に巻き付けることもできる。図1に示すように、この磁気治療具は、可撓性を有する長尺体1と、この長尺体1の外周面を被覆する被覆部2と、長尺体1の両端部にそれぞれ取り付けている連結具3,4と、を有している。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0014】
<1-1.長尺体>
長尺体1は、断面円形状に形成されており、主としてシリコーンゴムと磁性粉とが混合された混合体11を有している。そして、図2図4に示すように、この混合体11の内部には、長手方向に沿って所定間隔をおいて配置された複数の磁石12が埋め込まれている。
【0015】
混合体11は、シリコーンゴムが有する弾性により全体として可撓性を有している。磁性粉としては、特には限定されないが、例えば、比較的磁力の強い希土類磁石とフェライト磁石の混合磁石からなる磁性粉を用いることができる。シリコーンゴムと磁性粉との混合比は、特には限定されないが、例えば、5:5~9:1とすることが好ましく、6:4~8:2とすることがさらに好ましい。そして、この混合体11においては、着磁が施されており、例えば、図3に示すように、両磁極がそれぞれ外側に現れるように構成されている。また、混合体11には、必要に応じて加硫剤や顔料が含有される。
【0016】
図2及び図4に示すように、このように構成された混合体11の内部には、長手方向に沿って複数の磁石12が配置されている。各磁石12は、四角柱状に形成されており、その軸線方向が、長尺体1の長手方向と概ね一致するように、混合体11の内部に配置されている。また、各磁石12の磁極の向きは揃えられており、各磁石のN極及びS極が同じ方向を向くように配置される。そして、各磁石12は、概ね混合体11の軸線付近に配置され、磁石12全体が混合体11によって覆われるように配置されている。すなわち、磁石12は混合体11から露出せず、混合体11の内部に配置されている。特に、磁石12を囲む混合体11の最も薄い部分の肉厚dを0.1mm以上とすることが好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましく、0.3mm以上であることが特に好ましい。
【0017】
磁石12は、種々の材料で形成することができ、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、湿式異方性ストロンチウムフェライト磁石、及びネオジウム磁性体を含むプラスチック磁石等の中から少なくとも1つを選択することができるが、これ以外の磁石を用いることもできる。
【0018】
<1-2.被覆部>
被覆部2は、長尺体1の外周面を囲むように被覆されており、図2に示すように、断面が環状に形成されている。この被覆部2により、長尺体1の磁性粉が利用者の肌に直接触れるのを防止することができる。また、被覆部2を形成する材料は、混合体11と同様に、シリコーンゴムであり、これによって、混合体11のシリコーンゴムとなじみやすくなり、混合体11から発せられる磁気を容易に均一化することができ、磁気の管理が容易になるとともに、この磁気による血行促進作用を効果的に身体に作用させることができる。被覆部2の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.2~1.5mmであることが好ましく、0.2~0.4mmであることがさらに好ましい。
【0019】
<1-3.連結具>
図5に示すように、長尺体1の両端部には、それぞれ第1連結具3及び第2連結具4が取り付けられており、両者3,4が着脱自在に連結されるようになっている。これにより、長尺体1を身体に巻き付けやすいように環状の形態にすることができる。第1連結具3は、長尺体1の一方の端部に固定され、係止突部31が設けられている。一方、第2連結具4は、長尺体1の他方の端部に固定され、第1連結具3の係止突部31が係止する係止穴41が形成されている。両連結具3,4は、弾性変形可能な樹脂材料などで形成されており、これによって係止突部31と係止穴41とは弾性変形により着脱自在に固定される。
【0020】
<2.磁気治療具の製造方法>
次に、磁気治療具の製造方法の一例について説明する。まず、混合体11の原料であるミラブル型シリコーンゴムを、ローラを有する第1混練機により素練りして可塑化する。続いて、可塑化されたミラブル型シリコーンゴムに、磁性粉、加硫剤である有機過酸化物、顔料等が投入され、混練される。こうして、混合体11用の第1混合物が形成される。
【0021】
同様にして、第2混練機において、被覆部2を形成するミラブル型シリコーンゴムを素練りして可塑化し、これに加硫剤である有機過酸化物、顔料等が投入され、混練される。こうして、被覆部2用の第2混合物が形成される。
【0022】
続いて、第1混練機で混練された第1混合物を第1押出機に投入し、第1押出機から第1混合物を長尺状に成形して押し出す。また、この第1押出機においては、第1混合物の内部に、磁極の向きを揃えた磁石12を所定間隔をおいて、第1混合物の側面から順次埋め込んだ上で、長尺状に押し出す。また、第2混練機で混練された第2混合物を第2押出機に投入し、長尺状の第1混合物の周囲を被覆するように押し出す。これにより、第1混合物の周囲に第2混合物が被覆される。その後、これを加硫機に通過させ、各混合物に含まれるミラブル型シリコーンゴムを加硫して硬化させる。このとき、各混合物に含まれるシリコーンゴムは、一体された状態で硬化される。こうして、長尺体1が形成される。
【0023】
これに続いて、長尺体1を所定長さおきに切断し、その両端に第1連結具3及び第2連結具4をそれぞれ固定する。
【0024】
最後に、長尺体1に高磁気を放射し、混合体11の磁粉に着磁を施す。こうして、混合体11は、その長手方向に沿って磁極が配列された磁石となり、磁気が均一に身体に作用するようになる。以上の工程を経て、磁気治療具が完成する。
【0025】
<3.特徴>
本実施形態に係る磁気治療具によれば、磁粉が含まれる混合体11の中に、複数の磁石12を長手方向に配置している。そのため、磁気治療具の磁力を大幅に向上することができ、血行促進等の健康上の効果を高めることができる。
【0026】
例えば、直径が約4mmの長尺体1(シリコーンゴムと磁粉の混合比が7:3)に、断面形状が2.4×1.5mm、軸方向の長さが5.0mmの角柱状のネオジム磁石12を配置し、0.2mmの厚みの被覆部2で被覆した場合、本発明者が試験したところによると、ネオジム磁石12が配置されている箇所の磁束密度が約200mT、ネオジム磁石12が配置されていない箇所の磁束密度が約55mTであることを確認した。ネオジム磁石12が配置されていない箇所では、直径4mmの混合体11の磁粉による磁束密度が測定され、ネオジム磁石12が配置されている箇所では、ネオジム磁石12及びこれを覆う混合体11の磁粉による磁束密度が測定されている。したがって、高い磁力を得ることができる。
【0027】
また、長尺体1において、磁石12が配置されている箇所は、混合体11の肉厚が小さくなる傾向にあるが、混合体11には磁粉が含まれているため、例えば、磁石12を小さくし、混合体11の肉厚を大きくしても、磁力が低下するのを抑制することができる。したがって、磁石12が配置されている箇所の混合体11の肉厚を確保することができるため、長尺体1の引っ張り強度が低下するのを防止することができる。
【0028】
特に、磁力の強いネオジム磁石を用いると、磁石12が小型であっても、所望の磁力を得ることができるため、磁石12の外側の混合体11の肉厚をさらに大きくすることができる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る製造方法によれば、混合体11に対し、複数の磁石12を側方から順に埋め込むことで、長尺体1を形成し、さらにこの長尺体1に対して連続的に被覆部2を被覆しているため、生産性を大きく向上することができる。すなわち、従来の製造技術では、個々に準備された非常に複雑な工程を取る必要があり、製造コストが高いという問題があったが、本実施形態に係る製造方法を採用することで、磁気治療具の製造コストを低減することができ、ひいては磁気治療具のリーズナブルな価格での提供も可能となる。
【0030】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0031】
<4-1>
長尺体1の混合体11を構成する材料、つまり本発明の可撓性材料は、上述したシリコーンゴム以外であってもよい。すなわち、シリコーンゴム以外のゴム材料や、軟質のエラストマー、軟質の樹脂等を選択することができ、ウレタンゴムやニトリルブタジエンラバー等を選択することができる。但し、肌への悪影響が比較的小さいという点では、シリコーンゴムが選択されることが好ましい。また、シリコーンゴムは、その柔らかな肌触りの点でも好ましい。
【0032】
また、被覆部2を構成する材料についても同様であり、可撓性材料として挙げた材料を適宜利用することができる。
【0033】
<4-2>
長尺体1に埋め込まれる磁石12の形状は特には限定されず、多角柱状、円柱状、球状、粒状等、種々の形状にすることができる。また、一種類の磁石を埋め込む以外に、複数種の磁石を埋め込むこともできる。例えば、ネオジム磁石とフェライト磁石とを長手方向に交互に埋め込むことができる。さらに、磁石12の大きさや形状も一定でなくてもよく、例えば、長手方向の長さや外径の異なる複数の磁石を長尺体1に埋め込むこともできる。
【0034】
<4-3>
連結具3,4の構成は特には限定されず、長尺体1の両端部を着脱自在に連結できるのであれば、種々の構成の連結具を適用することができる。
【0035】
<4-4>
本発明に係る磁気治療器具の製造方法は特には限定されず、種々の方法により製造することができる。上記実施形態では、押出機によって長尺体1を成形したが、例えば、金型によって長尺体1を成形することもできる。具体的には、溝状のキャビティが形成された金型を準備し、このキャビティに複数の磁石を並べた状態で、キャビティに上記第1混合物を充填して成形する。この状態では、第1混合物から磁石が露出している状態であるため、再度金型を用いて、露出している磁石を埋めるように第1混合物を成形し、長尺体を形成する。その後、第2混合物によって長尺体を被覆し、連結具を取り付ければ、磁気治療器具が完成する。
【符号の説明】
【0036】
1 長尺体
11 混合体
12 磁石
2 被覆部
図1
図2
図3
図4
図5