(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】仮設グラウンドアンカー架台および土留め構造
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20240313BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
E02D17/04 B
E02D17/04 E
E02D5/80 Z
(21)【出願番号】P 2020109637
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設グラウンドアンカーを地山に定着するための架台であって、
土留め壁の前面側の上段側と下段側に設けられ、フランジ面が前面側および後面側に位置するように配置されたH形鋼からなる腹起しと、
土留め壁の前面側の左側と右側に設けられ、上下段の腹起しを上下方向に連結する腹起し継材と、
グラウンドアンカーの後端部を土留め壁の前面側に固定するために、上下段の腹起しおよび左右の腹起し継材によって囲まれた部分に設けられ、グラウンドアンカーからの水平反力および鉛直反力を、腹起し継材を介して上下段の腹起しに伝達する支圧材と
、
上下段の腹起しのフランジ面に設置されたスティフナーとを備え、
腹起し継材は、スティフナーにボルトで固定された溝形鋼からなり、支圧材は、仮設グラウンドアンカーの後端部を固定する支圧プレートと、支圧プレートの前面側に配置されるとともに、左右の腹起し継材にそれぞれボルトで固定される溝形鋼からなる支圧プレート受けによって構成されることを特徴とする仮設グラウンドアンカー架台。
【請求項2】
請求項
1に記載の仮設グラウンドアンカー架台を備えることを特徴とする土留め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削側の突出を最小限に抑えた仮設グラウンドアンカー架台および土留め構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設グラウンドアンカーの定着架台として、
図3および
図4に示すような上下の腹起し1、2に引っ掛ける形状の架台3が一般的に使用されている(例えば、特許文献1を参照)。そのため、腹起し前面側へ大きく突出することで、土留め壁と近接した重機による施工や本設構造物の施工をする際は施工者に不利な条件となりうることがある。
【0003】
また、計算上アンカー4に発生する水平力は、上下段の腹起し1、2に等分の荷重が作用することとなるが、鉛直力は下段の腹起し2のみで負担することとなるので、上段の腹起し1は応力的に余裕のある設計となり、不経済となる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させる機構を持つ仮設グラウンドアンカー架台の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させる機構を持つ仮設グラウンドアンカー架台および土留め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台は、仮設グラウンドアンカーを地山に定着するための架台であって、土留め壁の前面側の上段側と下段側に設けられ、フランジ面が前面側および後面側に位置するように配置されたH形鋼からなる腹起しと、土留め壁の前面側の左側と右側に設けられ、上下段の腹起しを上下方向に連結する腹起し継材と、グラウンドアンカーの後端部を土留め壁の前面側に固定するために、上下段の腹起しおよび左右の腹起し継材によって囲まれた部分に設けられ、グラウンドアンカーからの水平反力および鉛直反力を、腹起し継材を介して上下段の腹起しに伝達する支圧材とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の仮設グラウンドアンカー架台は、上述した発明において、上下段の腹起しのフランジ面に設置されたスティフナーをさらに備え、腹起し継材は、スティフナーにボルトで固定された溝形鋼からなり、支圧材は、グラウンドアンカーの後端部を固定する支圧プレートと、支圧プレートの前面側に配置されるとともに、左右の腹起し継材にそれぞれボルトで固定される溝形鋼からなる支圧プレート受けによって構成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る土留め構造は、上述した仮設グラウンドアンカー架台を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台によれば、仮設グラウンドアンカーを地山に定着するための架台であって、土留め壁の前面側の上段側と下段側に設けられ、フランジ面が前面側および後面側に位置するように配置されたH形鋼からなる腹起しと、土留め壁の前面側の左側と右側に設けられ、上下段の腹起しを上下方向に連結する腹起し継材と、グラウンドアンカーの後端部を土留め壁の前面側に固定するために、上下段の腹起しおよび左右の腹起し継材によって囲まれた部分に設けられ、グラウンドアンカーからの水平反力および鉛直反力を、腹起し継材を介して上下段の腹起しに伝達する支圧材とを備えるので、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させることができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の仮設グラウンドアンカー架台によれば、上下段の腹起しのフランジ面に設置されたスティフナーをさらに備え、腹起し継材は、スティフナーにボルトで固定された溝形鋼からなり、支圧材は、グラウンドアンカーの後端部を固定する支圧プレートと、支圧プレートの前面側に配置されるとともに、左右の腹起し継材にそれぞれボルトで固定される溝形鋼からなる支圧プレート受けによって構成されるので、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させることができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る土留め構造によれば、上述した仮設グラウンドアンカー架台を備えるので、腹起し前面側への突出が最小限となることから、土留め壁に近接した重機施工や本設構造物の構築を有利に進めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台の実施の形態を示す図であり、(1)は側断面図、(2)は正断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台の実施の形態を示す写真図である。
【
図3】
図3は、従来の仮設グラウンドアンカー架台を示す写真図である。
【
図4】
図4は、従来の仮設グラウンドアンカー架台を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台および土留め構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る仮設グラウンドアンカー架台10は、土留め壁12に設けるグラウンドアンカー14を地山16に定着するための架台である。この架台10は、腹起し18と、スティフナープレート20と、腹起し継材22と、支圧プレート24と、支圧プレート受け26を備える。
【0016】
腹起し18は、土留め壁12の前面側の上段側と下段側に間隔をあけて設けられ、フランジ28の面が前面側および後面側に位置するように配置されたH形鋼からなる。
【0017】
スティフナープレート20は、矩形鋼板であり、上下段の腹起し18にそれぞれ配置される。上側のスティフナープレート20は、上段の腹起し18の下側のフランジ28とウェブに囲まれた矩形状の凹部に固定される。下側のスティフナープレート20は、下段の腹起し18の上側のフランジ28とウェブに囲まれた矩形状の凹部に固定される。
【0018】
腹起し継材22は、土留め壁12の前面側の左側と右側に設けられ、上下段の腹起し18を上下方向に連結する溝形鋼である。溝形鋼のフランジは左右方向外側に延びている。腹起し継材22の上下端のウェブは、上下段の腹起し18のフランジ28に固定されたスティフナープレート20に対してボルト30で固定されている。
【0019】
支圧プレート24は、グラウンドアンカー14の後端部を土留め壁12の前面側に固定する厚肉の矩形鋼板である。この支圧プレート24は、上下段の腹起し18および左右の腹起し継材22によって囲まれた矩形状の部分に設けられる。支圧プレート24と支圧プレート受け26は、グラウンドアンカー14からの水平反力および鉛直反力を、腹起し継材22を介して上下段の腹起し18に伝達する支圧材である。
【0020】
支圧プレート受け26は、支圧プレート24の前面側に配置されるとともに、左右の腹起し継材22にそれぞれボルト32で固定される左右一対の溝形鋼である。具体的には、左右の支圧プレート受け26のフランジは左右方向内側に延びている。支圧プレート受け26のウェブと腹起し継材22のウェブどうしがボルト32で固定される。支圧プレート受け26の後端には、支圧プレート24が配置される。
【0021】
上記構成の動作および作用について説明する。
架台10は、上下段の腹起し18のフランジ28内に設置したスティフナープレート20を介してグラウンドアンカー14からの荷重を伝達する。具体的には、グラウンドアンカー14→支圧プレート24→支圧プレート受け26→腹起し継材22→スティフナープレート20→上下段の腹起し18の順で荷重を伝達する。
【0022】
本実施の形態によれば、腹起し継材22の上下端が腹起し18のフランジ28間にスティフナープレート20を介して固定されるので、腹起し18の前面側への突出を最小限にすることができる。また、上下段の腹起し18が左右の腹起し継材22によって上下方向に連結されるので、上下段の腹起し18に対してグラウンドアンカー14の水平力と鉛直力を等分に伝達させることができる。
【0023】
グラウンドアンカー14の水平力は、上下段の腹起し18に等分の荷重が作用することとなり、鉛直力についても上下段の腹起し18で負担することとなる。このため、上下段の腹起し18の設計を経済的に実施することが可能である。
【0024】
掘削側への突出を最小限とすることで、土留め壁12に近接した重機施工や本設構造物の構築に有利な構造を実現することができる。溝形鋼や矩形鋼板などの汎用部材を主部材に使用することで、多くの施工現場で転用可能である。
【0025】
また、本実施の形態に係る土留め構造100は、上述した仮設グラウンドアンカー架台10とグラウンドアンカー14を備えるものである。上述したように、架台10によって腹起し18の前面側への突出が最小限となることから、土留め壁12に近接した重機施工や本設構造物の構築を有利に行うことができる。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台によれば、仮設グラウンドアンカーを地山に定着するための架台であって、土留め壁の前面側の上段側と下段側に設けられ、フランジ面が前面側および後面側に位置するように配置されたH形鋼からなる腹起しと、土留め壁の前面側の左側と右側に設けられ、上下段の腹起しを上下方向に連結する腹起し継材と、グラウンドアンカーの後端部を土留め壁の前面側に固定するために、上下段の腹起しおよび左右の腹起し継材によって囲まれた部分に設けられ、グラウンドアンカーからの水平反力および鉛直反力を、腹起し継材を介して上下段の腹起しに伝達する支圧材とを備えるので、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させることができる。
【0027】
また、本発明に係る他の仮設グラウンドアンカー架台によれば、上下段の腹起しのフランジ面に設置されたスティフナーをさらに備え、腹起し継材は、スティフナーにボルトで固定された溝形鋼からなり、支圧材は、グラウンドアンカーの後端部を固定する支圧プレートと、支圧プレートの前面側に配置されるとともに、左右の腹起し継材にそれぞれボルトで固定される溝形鋼からなる支圧プレート受けによって構成されるので、腹起し前面側への突出を最小限にし、また、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させることができる。
【0028】
また、本発明に係る土留め構造によれば、上述した仮設グラウンドアンカー架台を備えるので、腹起し前面側への突出が最小限となることから、土留め壁に近接した重機施工や本設構造物の構築を有利に進めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る仮設グラウンドアンカー架台および土留め構造は、土留め壁に有用であり、特に、腹起し前面側への突出を最小限にして、上下段の腹起しに水平力・鉛直力を等分に伝達させるのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 仮設グラウンドアンカー架台
12 土留め壁
14 グラウンドアンカー
16 地山
18 腹起し
20 スティフナープレート
22 腹起し継材
24 支圧プレート(支圧材)
26 支圧プレート受け(支圧材)
28 フランジ
30,32 ボルト