(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】塗材仕上げ工法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240313BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240313BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240313BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240313BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240313BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240313BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240313BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240313BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240313BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240313BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D1/36 Z
B05D3/00 F
B05D3/12 B
B05D5/06 101Z
B05D5/06 104C
B05D7/24 302P
B05D7/24 303A
C09D5/00 D
C09D5/02
C09D7/61
C09D133/00
E04F13/02 A
(21)【出願番号】P 2020117593
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮弥
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119266(JP,A)
【文献】特開2015-181968(JP,A)
【文献】特開2010-248304(JP,A)
【文献】特開2013-241773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0049272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m
2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m
2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7であって上記水系塗材組成物と略同色の砂壁状塗料組成物を、
1m
2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、光輝顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の色調と異なる色調の水系上塗り組成物Iを、
1m
2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して乾燥させ、
さらに該水系上塗り組成物Iに配合した光輝顔料と色調が異なる光輝顔料と、アクリル樹脂系エマルジョンと、増粘剤と、成膜助剤と、から成る水系上塗り組成物IIを、
1m
2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法。
【請求項2】
請求項1記載の塗材仕上げ工法にて使用した水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の塗材仕上げ工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁に0.7~1.5mm厚に塗付し、外観上、錆が生じた状態の赤錆調や緑青調、及び経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような壁に仕上げることが可能な塗材仕上げ工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁を左官工による仕上げ工法で仕上げるにあたって、合成樹脂エマルジョンから成る塗材を使用して漆喰調、土壁風に仕上げる工法が提案されている。漆喰調の仕上げ工法としては、下地に、石灰成分を40%以上含有し、合成樹脂成分が10%以下である漆喰調塗材に骨材を配合し塗付後、プラスチック鏝或いは木鏝で前記骨材をひっかき転がすことにより筋溝状の模様を形成することを特徴とする表面仕上げ方法がある(特許文献1)。
【0003】
また、土壁風の仕上げ工法としては、JISA6909に規定される合成樹脂エマルジョン系仕上塗材で凹凸を有する塗膜形成後、水系塗材組成物を塗付する壁面施工方法であって、該水系塗材組成物は、合成樹脂エマルジョン、粘土、シルト、砂、水からなる、2.0kg/m2の塗布でJISA6909の吸放湿量が70以上となる水系塗材組成物であって、揮発分を除いた重量を100重量%として、合成樹脂系エマルジョンの固形分6~10.14重量%、粘土およびシルト26~35重量%、砂55~65重量%であり、塗布乾燥後、ひび割れが生じるような水系塗材組成物である、壁面施工方法がある(特許文献2、請求項5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-209541号公報
【文献】特許第5580509号公報
【0005】
しかしながら、これらの方法では、合成樹脂エマルジョンを含む塗材組成物を使用して、壁面を鉄錆や銅錆が生じた状態の赤錆調や緑青調、及び経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような壁に仕上げることが出来ないという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、建物の外壁を合成樹脂エマルジョンからなる塗材を使用して左官工により、外観上、鉄錆や銅錆が生じた状態の赤錆調や緑青調、及び経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような壁に仕上げることが出来る塗材仕上げ工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7であって上記水系塗材組成物と略同色の砂壁状塗料組成物を、
1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、光輝顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の色調と異なる色調の水系上塗り組成物Iを、
1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して乾燥させ、
さらに該水系上塗り組成物Iに配合した光輝顔料と色調が異なる光輝顔料と、アクリル樹脂系エマルジョンと、増粘剤と、成膜助剤と、から成る水系上塗り組成物IIを、
1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法を提供する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の塗材仕上げ工法にて使用した水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であることを特徴とする請求項1記載の塗材仕上げ工法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗材仕上げ工法は、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの大き目の鏝波に沿って波間隔が1~10mmの細かな鏝ビビリ波が形成された仕上げ表面となる効果と、水系塗材組成物と砂壁状塗料組成物とを略同色とし、これらと色調が異なる水系上塗り組成物Iとさらに該水系上塗り組成物Iの光輝顔料と色調が異なる光輝顔料を配合した水系上塗り組成物IIとを組み合わせている効果と、さらにはローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛により水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを塗付することにより光輝顔料が不均一に塗付される効果とにより、塗膜の表面の意匠が肉眼視においてあたかも金属が長い時間を経て、部分的に鉄錆や銅錆が生じた状態の赤錆調、緑青調等の塗材表面や、経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような状態とすることが出来る効果がある。
【0010】
また、本発明の塗材仕上げ工法は、アクリル樹脂系エマルジョンがバインダーとして配合された水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物及び水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを使用するため、硬化した塗膜は可とう性があり、建物の地震や風圧、車両の通過等による振動や該振動により生じた下地のひび割れに追従することが出来る、という効果がある。
【0011】
また、請求項2記載の塗材仕上げ工法で仕上げられた塗膜は、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の各々に含まれる有機質分の合計重量部が、これらの組成物の合計重量部に対して7.0~8.5重量%であり少ないため、結果として内装用仕上げ塗材として要求される不燃性能を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の塗材仕上げ工法によって仕上げられた実施例1(黒皮鉄調)の塗膜表面(200×260mm)の平面写真である。
【
図2】本発明の塗材仕上げ工法に使用する、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛(直径約45mm長さ150mm)の正面写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の塗材仕上げ工法は、下地に必要によりシーラーを塗付して乾燥させ、この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:2.8~15.0である水系塗材組成物を、
厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上に前記水系塗材組成物を、前記金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、
この上にアクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、充填材と骨材の重量比が充填材:骨材=1:1.3~2.7であって上記水系塗材組成物と略同色の砂壁状塗料組成物を、
1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝又はヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、
研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨し、
この上に、アクリル樹脂系エマルジョンと、光輝顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の色調と異なる色調の水系上塗り組成物Iを、
1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して乾燥させ、
さらに該水系上塗り組成物Iに配合した光輝顔料と色調が異なる光輝顔料と、アクリル樹脂系エマルジョンと、増粘剤と、成膜助剤と、から成る水系上塗り組成物IIを、
1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して仕上げることを特徴とする塗材仕上げ工法であり、使用する水系塗材組成物、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIには、上記成分のほか必要に応じて消泡剤や分散剤等を配合することが出来る。
【0015】
まず、本発明である塗材仕上げ工法に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物について説明する。
【0016】
<アクリル樹脂エマルジョン>
本発明に使用する水系塗材組成物、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物A及び水系上塗り組成物を構成するアクリル樹脂系エマルジョンには、アクリル酸エステル系共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル系共重合樹脂、シリコン変性アクリル樹脂等のアクリル樹脂系エマルジョンを使用することができる。アクリル樹脂とするアクリル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等を使用することが出来る。
【0017】
他の不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2-アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を使用することが出来る。
【0018】
アクリル樹脂系エマルジョン中の樹脂のガラス転移温度は-30~40℃が好ましい。ガラス転移温度が-30℃未満の場合は仕上がり表面にタックが生じて汚れやすくなり、40℃超の場合は成膜不良となる。本発明の水系塗材組成物又は砂壁状塗料組成物の組成物全体中の樹脂固形分は5.0~20.0重量%が好ましく、5.0重量%未満では粘着性、塗付作業性が低下し、また20.0重量%超では粘度が低下し塗付作業性が低下する。また本発明の水系上塗り組成物I又は水系上塗り組成物IIの組成物全体中の樹脂固形分は20~40重量%が好ましく、20重量%未満では水系上塗り組成物I又は水系上塗り組成物IIの粘度が低下し、光輝顔料の貯蔵安定性及び組成物の塗付作業性が低下する。40重量%超では樹脂光沢過剰となり意匠性が低下する。市販のアクリル樹脂系エマルジョンとしては、アクロナールPS743(BASF社製、固形分55重量%)がある。
【0019】
<充填材>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する充填材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm未満のものを言い、組成物の粘度や塗付性の調整を目的として配合し、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、硅砂粉等が使用でき、重質炭酸カルシウムが安価でコスト的負担を軽減させることが出来る。充填材の配合量は水系塗材組成物においては組成物全体に対して3~20重量%、好ましくは4~12重量%であり、3重量%未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、20重量%超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。4重量%未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、12重量%超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
【0020】
砂壁状塗料組成物における充填材の配合量は組成物全体に対して10~25重量%、好ましくは13~21重量%であり、10重量%未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、25重量%超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。13重量%未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、21重量%超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
【0021】
<骨材>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する骨材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm以上のものを言い、仕上がり表面に凹凸を付与することを目的として配合されるが、平均粒径が100μm以上であればその粒子径は任意に選択することができ、例えば硅砂、ガラス、シリカ、タルク、重質炭酸カルシウムなどが使用可能である。市販の平均粒径が200μmの重質炭酸カルシウムとしてはK-250(商品名,旭鉱末株式会社製)がある。骨材の配合量は水系塗材組成物においては組成物全体に対して40~60重量%であり40重量%未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、60重量%超では作業性が低下する。
【0022】
砂壁状塗料組成物における骨材の配合量は組成物全体に対して20~40重量%であり20重量%未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、40重量%超では作業性が低下する。
【0023】
<充填材と骨材の重量比>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物をそれぞれ構成する上記充填材と上記骨材の重量比は、水系塗材組成物においては充填材:骨材=1:2.8~15.0であり、1:2.8未満では塗材として凹凸感の無い仕上がりとなり、15.0超では塗付作業性が不十分となる。同様に砂壁状塗料組成物における充填材:骨材の重量比は、充填材:骨材=1:1.3~2.7であり、1.3未満では砂壁状塗料としての凹凸感が不足し、2.7超では隠ぺい性が低下する。ここでいう「塗材として」と「砂壁状塗料として」の違いであるが、具体的には「塗材として」とは1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量である際、と言い換えることができ、「砂壁状塗料として」とは1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量である際、と言い換えることが出来る。
【0024】
なお、砂壁状塗料組成物においては、充填材と骨材の重量比が、充填材:骨材=1:1.3~2.7となるような、好ましい充填材の平均粒径と骨材の平均粒径の組合わせは、充填材は平均粒径D50が10μmと同20μmとから成り、骨材は平均粒径D50が200μmから成る場合である。
【0025】
<顔料>
本発明に使用する水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物を構成する顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、クロム酸鉛、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機系顔料等が使用できるが、中でも酸化チタンは下地の隠蔽性に優れ、白色であるため主たる顔料として使用することが出来る。
【0026】
<増粘剤>
本発明に使用する水系塗材組成物、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを構成する増粘剤は、鏝塗り作業性や保水性の向上を目的として配合し、水溶性セルロースエーテル、ウレタン変性ポリエーテル、ポリカルボン酸等が使用できる。水溶性セルロースエーテルとしてはhiメトローズ90SH15000(信越化学株式会社製、商品名)がある。増粘剤の配合量は組成物全体に対して0.1~5.0重量%が好ましく、0.1重量%未満では十分な増粘効果が得られず塗材の凹凸模様が不十分となり、5.0重量%超では塗付作業性が低下する。
【0027】
<成膜助剤>
本発明に使用する水系塗材組成物、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを構成する成膜助剤には、エマルジョンのポリマー粒子の融着を促進し、ポリマーによる均一な皮膜を形成させることを目的で配合し、エチレングリコールジエチルエーテル、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ、エステルアルコール等を使用することが出来る。成膜助剤の配合量は組成物全体に対して0.5~10重量%が好ましく、0.5重量%未満では低温での成膜が不十分となる場合があり、10重量%超では塗材の表面に汚れが付着し易くなる場合がある。
【0028】
<光輝顔料>
本発明に使用する水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIに含まれる光輝顔料は、表面が金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレーク顔料を言い、上記金属としては、銀やニッケル、上記金属酸化物としては酸化チタンを挙げることができる。金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレーク顔料は、鱗片状のガラスフレークを基材として、表面が金属又は金属酸化物で被覆された光輝顔料である。基材がガラスであるため透明であり、比較的厚みがある光輝顔料であるため、複層塗膜において、粒子感を発現し、虹色干渉を生じない特徴がある。光輝顔料は、金属又は金属酸化物が被覆された状態における平均粒子径が、形成される塗膜の光輝感や仕上がりの点から5μm~90μmの範囲内であることが好ましい。該平均粒子径は、長径を意味し、厚さは、光輝顔料の塗料中における安定性や形成される塗膜の仕上がりの点から、0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。該金属又は金属酸化物で被覆されたガラスフレーク顔料の具体例としては、例えば、日本板硝子社製のメタシャインシリーズ(商品名)、ディアイシー社製のFIREMISTシリーズ(商品名)等を使用することができる。
【0029】
光輝顔料の水系上塗り組成物I又は水系上塗り組成物IIの組成物全体に対する配合量は、0.5~10重量%が好ましく、0.5重量%未満では光輝顔料による金属光沢感が得られず、10重量%超では光輝顔料の分散が不均一となる。
【0030】
本発明の塗材仕上げ工法は、モルタル下地、コンクリート下地、PCパネル、ALCパネル、窯業系サイディング下地等の下地に塗付することが出来、十分な付着性を保持するため、各下地に適したシーラーを塗付して乾燥させる。下地に直接水系塗材組成物を塗付した際の下地と水系塗材組成物との付着性が十分である場合は、シーラーは不要である。シーラーを塗付した場合は乾燥させた上で、上記説明により構成される水系塗材組成物を、厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成る金鏝にて、1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させ、次にこの上に同水系塗材組成物を、同金鏝にて1m2当り0.6kg~1.0kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。鏝ビビリ波とは、塗付量が1m2当り0.6kg~1.0であるため、実際の施工に当っては金鏝のエッジが立った状態で該金鏝を移動させる態様となり、その際金鏝が振動する状態となって、所謂ビビった状態で塗膜表面が凹凸状となる状態を表したものである。
【0031】
次に砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.2kg~0.4kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同金鏝又は厚み0.3mm~0.7mmのステンレスから成るヘラにて、前記鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させ、次に研磨材の粒度がP60~P150の研磨手段にて塗材表面を研磨する。ここで研磨手段とは、直接的にはJIS R 6251に規定する研磨布、JIS R 6252に規定する研磨紙、JIS R 6253に規定する耐水研磨紙、及びJIS R 6256に規定する研磨ベルトを指すが、研磨材の粒度がP60~P150であれば、どのような形態であっても良いという意義である。
【0032】
本発明は、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを塗付して仕上げるが、水系上塗り組成物Iを塗付する前に上記研磨手段で研磨した塗材表面に研磨粉が付着している場合は、布ウエス等に水を含ませて水拭きして乾燥させるか、高圧空気等にて塗膜表面の研磨粉を除去する。
【0033】
水系上塗り組成物Iは、アクリル樹脂系エマルジョンと、光輝顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の色調と異なる色調であり、1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付する。該水系上塗り組成物Iが乾燥後、さらに水系上塗り組成物Iに配合した光輝顔料と色調が異なる光輝顔料と、アクリル樹脂系エマルジョンと、増粘剤と、成膜助剤と、から成る水系上塗り組成物IIを、1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛を使用して塗付して仕上げる。
【0034】
ローラーの表面が天然海綿から成るローラー刷毛は
図2に示すようなローラー刷毛であり、天然海綿独特の大小さまざまな径の気孔が形成されていると共に、ローラー刷毛の表面の凹凸が大きく、その高低差は大きいところで20mm程度の部分があって、該高低差に係る凹凸の効果でローラー刷毛の直径が一つのローラー刷毛で20~50mm程度に変化している。したがって表面は柔らかいが一見ゴツゴツした状態のローラー刷毛である。該ローラー刷毛を使用することで、光輝顔料が不均一に塗付されて、これが、塗膜の表面の意匠が肉眼視においてあたかも金属が長い時間を経て、部分的に錆が発生したような、赤錆調、緑青調等の塗材表面や、経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような状態となる一つの要因と成っている。ローラー刷毛の市販品としては、アイカ 海綿ローラーJR-225H(アイカ工業株式会社製)がある。
【0035】
本発明の塗材仕上げ工法は、水系塗材組成物と砂壁状塗料組成物と水系上塗り組成物Iと水系上塗り組成物IIとによって構成されるが、水系塗材組成物と砂壁状塗料組成物の色調は略同一とし、水系上塗り組成物Iは、水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物の色調と異なった色調とし、さらに水系上塗り組成物IIは該水系上塗り組成物Iに配合している光輝顔料と色調が異なった光輝顔料を配合しているため、全体として水系上塗り組成物Iと水系上塗り組成物IIの色調は異なっていて、この色調の変化と塗膜のテクスチュアにより、該塗膜は肉眼視においてあたかも金属が長い時間を経て、部分的に鉄錆や銅錆が生じた状態の赤錆調、緑青調等になり、また、経年変化した青銅、黒皮鉄、赤銅、真鍮等の金属で仕上げられたような状態とすることが出来る効果がある。
【0036】
以下、実施例にて具体的に説明する。
【実施例】
【0037】
<材料の作製>
表1の配合に従って、実施例の水系塗材組成物A、水系塗材組成物B、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを作製した。下記評価項目において意匠性についての評価は、水系塗材組成物と砂壁状塗料組成物については顔料を同一にすることで同色とし、水系上塗り組成物Iは水系塗材組成物及び砂壁状塗料組成物と色調が異なる光輝顔料を配合し、水系上塗り組成物IIは水系上塗り組成物Iと色調が異なる光輝顔料を配合して作製し、その色調の組み合わせは表2に示すようにした。表2において、実施例1によって仕上げられる塗膜は、肉眼視において黒皮鉄調、実施例2は同 緑青調、実施例3は同 真鍮調、実施例4及び実施例5は同 赤銅調となる。
【0038】
表1において、アクリル樹脂系エマルジョンはアクロナールPS743(固形分:54~56%、樹脂のガラス転移温度:30℃、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの共重合体、BASF社製、商品名)を使用し、充填剤Aは硅砂粉#300(平均粒径D5025μm、株式会社トウチュウ製、商品名)を、充填材Bは平均粒径D50が10μmの重質炭酸カルシウムBF-200(備北粉化社製、商品名)を、充填材Cは平均粒径D50が20μmの重質炭酸カルシウムSFT-2000(三共製粉製、商品名)を使用し、骨材Aは、東北硅砂7号(比重1.5、平均粒径D50150μm、東北硅砂株式会社製、商品名)を、骨材Bは、平均粒径D50が200μmの重質炭酸カルシウムK-250(旭鉱末社製、商品名)を使用し、顔料には酸化チタンR-820(石原産業株式会社製、商品名)を使用し、増粘剤は水溶性セルロースエーテルhiメトローズ90SH-15000(信越化学株式会社製、商品名)を、成膜助剤はテキサノールCS-12(チッソ株式会社製、商品名)を、使用した。この他には消泡剤及び分散剤を添加したが、これらは水系塗材用の市販品より適宜選択されるものを使用することが出来る。
【0039】
これらの原料を均一に混合分散させ、実施例の水系塗材組成物A、水系塗材組成物B、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIとした。
【0040】
【0041】
【0042】
実施例の水系塗材組成物A、水系塗材組成物B、砂壁状塗料組成物、水系上塗り組成物I及び水系上塗り組成物IIを使用して、本発明の塗材仕上げ工法の工程に従い下地に塗付して仕上げ、以下に示す評価項目について具体的に評価した。
【0043】
<意匠性>
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(150×210mm厚さ10mm)を使用し、シーラーとして固形分40重量%の水系アクリル樹脂シーラーJS-500(商品名,アイカ工業株式会社製)を0.075kg/m2塗布し,温度23℃湿度50%RHで12時間養生する。乾燥後表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0044】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後水系上塗り組成物Iを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、乾燥後、さらに水系上塗り組成物IIを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で塗付して仕上げた。その塗膜表面の意匠が肉眼視で、あたかも金属が長い時間を経て、部分的に錆が発生した状態又は経年変化した金属で仕上げられた状態である場合を〇と、そうでないものを×と評価した。
【0045】
<不燃性>
不燃材料認定番号NM-8619に該当するせっこうボード(厚さ12.5mm×縦100mm×横100mm)に下塗材として固形分40重量%の水系アクリル樹脂シーラーJS-500(商品名,アイカ工業株式会社製)を0.075kg/m2塗布し,温度23℃湿度50%RHで12時間養生する。乾燥後表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0046】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後水系上塗り組成物Iを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、乾燥後、さらに水系上塗り組成物IIを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で塗付して仕上げ、試験板とした。該試験板についてISO5660 Part1に準拠したコーンカロリーメーターを使用した発熱性試験を行った。試験時間は20分、輻射強度は50kW/m2、排気流量速度は24L/secとし、20分間の総発熱量(MJ/m2)を測定し、8MJ/m2以下を○と評価し、8MJ/m2超を×と評価した。
【0047】
<ゼロスパン引張伸び>
下地としてJISA5430規定のフレキシブルボード(100×100mm厚さ10mm)を使用し、当該下地2枚の木口同士を突き付け、その裏面を養生テープで仮止めする。下地のオモテ面にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、表1の水系塗材組成物A、又はBを厚み0.5mmのステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が70~500mmの鏝波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。次に塗付した材料と同一水系塗材組成物A、又はBを、同ステンレス製金鏝にて1m2当り0.8kgの塗付量で、且つ、塗膜断面視にて波間隔が1~10mmの鏝ビビリ波が連続して形成されるように塗付して乾燥させる。
【0048】
次に、上記砂壁状塗料組成物を、1m2当り0.3kgの塗付量でローラー刷毛を使用して配り塗りした後、同ステンレス製金鏝にて鏝ビビリ波の進行方向に対して略直角方向にシゴキ塗りして乾燥させる。次に研磨材の粒度がP80の研磨紙にて塗材表面を研磨し、その後水系上塗り組成物Iを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で、乾燥後、さらに水系上塗り組成物IIを1m2当り0.01kg~0.04kgの塗付量で塗付して仕上げ、気温23℃湿度50%RHで14日間養生して試験体とした。その後裏面の仮止めの養生テープをはがし、インストロン万能試験機にて、試験体の両端を2mm/分で引張り、突きつけ部にピンホールが発生した距離が0.5mm以上を○、0.5mm未満を×と評価した。
【0049】
<評価結果>
【0050】
評価結果を表3に示す。
【0051】