IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図2
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図3
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図4
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240313BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240313BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020126225
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023349
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 国一
(72)【発明者】
【氏名】福永 剛久
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-215459(JP,A)
【文献】特開2019-053193(JP,A)
【文献】特開2002-182142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
G02B 7/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に連結されたリードスクリュと、
前記モータの駆動による前記リードスクリュの回転に伴って、該リードスクリュの軸線に沿って移動する動力伝達部材と、
表示光を出射する表示器と、
前記動力伝達部材の移動に応じて回転軸を中心に回動するとともに、前記表示光を反射面で反射して表示画像を投射する反射部材と、を備え、
前記反射部材は、前記反射面を有したミラー本体と、前記ミラー本体から下方に向けて突出する突出片を有し、
前記突出片は、前記ミラー本体に接続される基部と、前記基部から延びて前記基部と別部材で構成されると共に前記動力伝達部材との接触部位を有した延出部と、を備え、
前記動力伝達部材と前記反射部材の前記接触部位とは、一方が磁石部材を有し、他方が前記磁石部材と引き合う部材を有する
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記基部は、前記ミラー本体と一体に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネル上面に形成された開口内に、表示器と、表示器に表示される映像をウィンドシールドに向けて反射するミラーとを備えたヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このヘッドアップディスプレイ装置は、モータの回転軸に連結されたリードスクリュと、リードスクリュの回転に伴ってリードスクリュの軸線に沿って移動する動力伝達部材とを備えている。ヘッドアップディスプレイ装置は、モータを駆動して動力伝達部材をリードスクリュの軸線に沿った一方に移動させた場合、動力伝達部材がミラーを保持する保持ユニットの突出片を押す。この押した状態においてミラーは回転軸を中心にして一方向に回転する。一方、ヘッドアップディスプレイ装置は、突出片に取り付けられたばねを有しており、モータを駆動して動力伝達部材をリードスクリュの軸線に沿った他方に移動させた場合には、突出片がばねにより引っ張られる。このばねの引っ張りによりミラーは回転軸を中心にして他方向に回転する。ヘッドアップディスプレイ装置は、このような一方向及び他方向の回転によって、ウィンドシールドに映る虚像の高さ位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6107380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、ばねを有していることから、ばね掛け作業が必要となり組付け性に問題がある。さらには、ばねによって突出片を引っ張る構成であることから、突出片を押してミラーを一方向に回転させたい場合には、ばねの引っ張り力が抗力として作用してしまい、より大きな動力伝達部材の推力及びモータトルクが必要となってしまう。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、組付け性を改善すると共に、動力伝達部材の推力及びモータトルクの低減を図ることができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、モータの回転軸に連結されたリードスクリュと、前記モータの駆動による前記リードスクリュの回転に伴って、該リードスクリュの軸線に沿って移動する動力伝達部材と、表示光を出射する表示器と、前記動力伝達部材の移動に応じて回転軸を中心に回動するとともに、前記表示光を反射面で反射して表示画像を投射する反射部材と、を備え、前記反射部材は、前記反射面を有したミラー本体と、前記ミラー本体から下方に向けて突出する突出片を有し、前記突出片は、前記ミラー本体に接続される基部と、前記基部から延びて前記基部と別部材で構成されると共に前記動力伝達部材との接触部位を有した延出部と、を備え、前記動力伝達部材と前記反射部材の前記接触部位とは、一方が磁石部材を有し、他方が前記磁石部材と引き合う部材を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組付け性を改善すると共に、動力伝達部材の推力及びモータトルクの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略上面図である。
図3図1及び図2に示した凹面ミラー及びリードスクリュユニットの詳細を示す斜視図である。
図4図3の一部拡大側面図である。
図5】本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の動作を説明する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略側面図であり、図2は、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置を示す概略上面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、車両のインストルメントパネル2の上面に形成された開口部Oに収納されて配置されている。このヘッドアップディスプレイ装置1は、図1及び図2に示すように、表示器10と、折り返しミラー20と、凹面ミラー(反射部材)30とを備えている。
【0013】
表示器10は、運転者に提供すべき情報を表示光として出射するものである。表示器10からの表示光は図2に示す折り返しミラー20に向けて出射され、折り返しミラー20にて凹面ミラー30に向けて反射される。凹面ミラー30は表示光を反射し、表示画像を車両のウィンドシールドWに投射するものである。ウィンドシールドWに投射された表示画像は、運転者に虚像Iとして認識される。
【0014】
また、ヘッドアップディスプレイ装置1は、リードスクリュユニット40と、制御基板50とを備えている。ここで、凹面ミラー30は、回転軸32(図3参照)を有し、回転軸32を中心に回動する構成となっている。リードスクリュユニット40は、当該回転軸32を中心とした凹面ミラー30の回転を制御するものである。リードスクリュユニット40により凹面ミラー30の回転が制御されることで、表示画像のウィンドシールドWへの投射位置(高さ位置)を変化させることができる。
【0015】
制御基板50は、ヘッドアップディスプレイ装置1の全体を制御する制御部を搭載したものであり、表示器10の表示光の制御、及び、リードスクリュユニット40による凹面ミラー30の回転制御を行うものである。
【0016】
図3は、図1及び図2に示した凹面ミラー30及びリードスクリュユニット40の詳細を示す斜視図である。図4は、図3の一部拡大側面図である。
【0017】
図3に示すように、凹面ミラー30は、車幅方向が長手方向となる横長の反射面30aを有したミラー本体31を備えている。ミラー本体31の反射面30aは、車両前方に向かって凸となる曲面を形成している。このような凹面ミラー30は、その長手方向の両端部に回転軸32を備えている。回転軸32は、ヘッドアップディスプレイ装置1のケース等に直接又は間接的に支持されており、凹面ミラー30は、回転軸32を中心に回転する構成となっている。
【0018】
なお、本実施形態において回転軸32は、凹面ミラー30に設けられているが、ケース側に回転軸が設けられ、凹面ミラー30にはその回転軸が嵌る円形等の凹部が形成されていてもよい。
【0019】
さらに、凹面ミラー30は、図3及び図4に示すように突出片33を備えている。突出片33は、ミラー本体31から下方に向けて突出する部位であり、ミラー本体31の左下端に一体に接続される基部33aと、基部33aから車両後方に向けて延びる延出部33bとを備えている。基部33aと延出部33bとは別部材によって構成されており、例えば両者がねじ止め等されて連結されている。延出部33bは、概略上下方向に延びる接触板部(接触部位)33cを備えている。接触板部33cは、後述する動力伝達部材(図3及び図4の符号41参照)が接触する部位となる。また、後述の図5に示すように、接触板部33cは、上下方向に所定の長さを有しており、動力伝達部材の突出部(図4の符号41b参照)がスライド接触するのに充分な長さとなっている。
【0020】
リードスクリュユニット40は、動力伝達部材41を備えており、動力伝達部材41を動作させることで、凹面ミラー30の回転制御を行うものである。このようなリードスクリュユニット40は、動力伝達部材41のほか、モータMと、リードスクリュ42と、ガイドシャフト43と、支持体44とを備えている。
【0021】
リードスクリュ42は、モータMの回転軸に連結された棒状部材である。このリードスクリュ42は、ねじ切り溝(不図示)が形成されており、モータMの回転に応じて軸線を中心に回転可能となっている。
【0022】
動力伝達部材41は、リードスクリュ42が貫通する部材であって、リードスクリュ42の貫通部位においてリードスクリュ42のねじ切り溝と噛み合うナット等の部材を備えている。このため、モータMがリードスクリュ42を回転させた場合、動力伝達部材41は、その回転に伴ってリードスクリュ42の軸線に沿って移動することとなる。
【0023】
図4に示すように、動力伝達部材41は、側面視して、その上端から車両前方側に向けて延びる突出部41aを有している。突出部41aは、先端部41bが曲面形状となっており、この曲面形状の先端部41bが突出片33の接触板部33cに接触する構成となっている。
【0024】
図3に示すガイドシャフト43は、リードスクリュ42と略平行配置される棒状部材である。このガイドシャフト43についても動力伝達部材41を貫通してる。このガイドシャフト43を備えることで、動力伝達部材41は、モータMの駆動時におけるリードスクリュ42の回転に伴って回転してしまうことが防止される。これにより、動力伝達部材41は、リードスクリュ42の軸線に沿って適切に移動することとなる。
【0025】
支持体44は、リードスクリュユニット40の各種構成を支持する金属板等からなる部材である。この支持体44は、その車両後方側にモータMを支持している。また、支持体44は、車両前方側においてリードスクリュ42を回転可能に支持しており、車両前後方向の双方でガイドシャフト43を固定的に支持する。
【0026】
ここで、本実施形態において動力伝達部材41は、突出部41aの先端部41b付近に磁石(磁石部材)41cを有している。加えて、本実施形態において突出片33の接触板部33cは、磁石41cと引き合う金属部材により構成されている。なお、金属部材として形成されるものは、接触板部33cのみならず延出部33bの全体であってもよい。また、可能であれば基部33aについても金属部材で構成されていてもよい。
【0027】
なお、本実施形態においては、動力伝達部材41が磁石41cを有し、接触板部33cが金属部材にて構成されているが、これに限らず、接触板部33cが磁石33d(図4の破線参照)を有し、動力伝達部材41(特に突出部41aの先端部41b)が金属部材により構成されていてもよい。加えて、動力伝達部材41が磁石(第1の磁石部材)41cを有し、接触板部33cが磁石41cと引き合う磁石(第2の磁石部材)33dを有していてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を説明する。図5は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1の動作を説明する概略側面図である。
【0029】
まず、制御基板50(図2参照)は、車両運転者からの操作に基づく操作信号等を受信し、虚像I(図1参照)の高さ位置を低く変更すると判断したとする。この場合、モータM(図3及び図4参照)はリードスクリュ42を回転させて、動力伝達部材41を車両前方側に移動させる。これにより、動力伝達部材41の突出部41a(図4参照)は接触板部33cを車両前方側に移動させる。この結果、凹面ミラー30(図3参照)は回転軸32(図3参照)を中心に回転して、表示光の反射方向を変更し虚像Iの高さ位置を低くする。
【0030】
一方、制御基板50(図2参照)は、車両運転者からの操作に基づく操作信号等を受信し、虚像I(図1参照)の高さ位置を高く変更すると判断したとする。この場合、モータM(図3及び図4参照)はリードスクリュ42を回転させて、動力伝達部材41を車両後方側に移動させる。この際、動力伝達部材41の磁石41c(図4参照)が接触板部33cを引き寄せることとなり接触板部33cを車両後方側に移動させる。この結果、凹面ミラー30(図3参照)は回転軸32(図3参照)を中心に回転して、表示光の反射方向を変更し虚像Iの高さ位置を高くする。
【0031】
なお、上記において説明を省略したが、動力伝達部材41を車両前方側に移動させる場合において、磁石41cによる磁力は突出部41aから接触板部33cが離れないようにも作用している。
【0032】
このようにして、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1によれば、動力伝達部材41が磁石41cを有し、凹面ミラー30が磁石41cと引き合う金属部材を有するため、例えば動力伝達部材41をリードスクリュ42の軸線に沿って車両前方側に移動させた場合には、動力伝達部材41で接触板部33cを押すこととなり凹面ミラー30を一方向に回転させることができる。また、例えば動力伝達部材41をリードスクリュ42の軸線に沿って接触板部33cから離れる方向に移動させた場合には、ばね部材を用いることなく磁力を利用して接触板部33cを引くこととなり凹面ミラー30を他方向に回転させることができる。よって、凹面ミラー30の回転にあたりばね部材を要することなく、組付け性を改善すると共に、動力伝達部材41の推力及びモータトルクの低減を図ることができる。
【0033】
また、動力伝達部材41が磁石41cを有し、接触板部33cが磁石33dを有する場合には、双方の磁力を利用して動力伝達部材41と接触板部33cとを引き合わせることとなり、車両走行時の振動等によって両者が離れてしまう可能性をより低減することができる。
【0034】
加えて、本実施形態においては、リードスクリュユニット40が凹面ミラー30の下方位置に設けられているため、左右位置に設けられている場合と比較して横幅を抑えて、ヘッドアップディスプレイ装置1のケースを小さくすることに寄与することができる。また、車両にヘッドアップディスプレイ装置1を搭載する場合に、左右方向のスペースに制約がある場合には凹面ミラー30を幅方向に小さくしなければならず、表示画像が小さくなるおそれもあるが、このような事態を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施形態においては、凹面ミラー30の回転にあたりギアを用いていないことから、ギアの噛み合い調整の必要がなく、一層組付け性の向上が図られている。また、例えば凹面ミラー30の回転軸32に対してばね部材の力を作用させることがなく、凹面ミラー30が撓んでしまうことを防止することもできる。
【0036】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0037】
例えば、本実施形態に係るリードスクリュユニット40は、突出片33の車両後方側に動力伝達部材41が位置しているが、これに限らず、突出片33の車両前方側に動力伝達部材41が位置するように構成されていてもよい。また、可能であれば、磁石41c,33dは電磁石により構成されていてもよい。さらに、本実施形態においてヘッドアップディスプレイ装置1は、折り返しミラー20を備えているが、特に折り返しミラー20を備えていなくともよい。また、動力伝達部材41が接触可能なリミットスイッチを備えて初期位置等の算出に用いるようにしてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態においては凹面ミラー30を備えているが、これに限らず、表示光を反射して表示画像を投射するものであれば、凹凸面や凸面等のミラーを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 :ヘッドアップディスプレイ装置
10 :表示器
30 :凹面ミラー(反射部材)
32 :回転軸
33 :突出片
33c :接触板部(接触部位)
33d :磁石(第2の磁石部材)
41 :動力伝達部材
41c :磁石(磁石部材,第1の磁石部材)
42 :リードスクリュ
M :モータ
図1
図2
図3
図4
図5