(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】再生装置、ガス処理装置、再生方法及びガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B01D53/14 220
(21)【出願番号】P 2020168358
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504358148
【氏名又は名称】株式会社コベルコE&M
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】前田 基秀
(72)【発明者】
【氏名】岸本 啓
(72)【発明者】
【氏名】重久 卓夫
(72)【発明者】
【氏名】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦彦
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134604(JP,A)
【文献】特開平04-126514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118350(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0258007(US,A1)
【文献】実開昭60-095925(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、
53/34-53/96、
19/00-19/04
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
C01B 32/50
F25B 15/00、37/00
F28D 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置に用いられ、前記吸収装置における酸性化合物の吸収により相分離した状態の
前記処理液
であって両液相部分の体積流量比が調整された処理液が導入され、導入された処理液を加熱することにより、前記酸性化合物を放出させて前記処理液を再生する再生装置であって、
前記処理液を収容する容器と、
前記容器内の空間を、前記
相分離した状態の処理液が供給されると共に前記処理液を加熱する加熱部が配置された加熱領域と
、前記加熱領域の側方に位置し、加熱により
ガス状の前記酸性化合物を放出した前記処理液
及び相分離した状態の処理液が静置される静置領域と
、を含む第1空間と、前記酸性化合物を放出した前記処理液を排出する第2空間と、に仕切る第1壁部と、を備え、
前記相分離した処理液は、第1液相部分と、前記第1液相部分に比べて酸性化合物の含有率が低く且つ前記第1液相部分よりも比重の小さい第2液相部分とを含み、
前記酸性化合物を放出した処理液は、前記静置領域において前記第1液相部分と前記第2液相部分との間に位置し、
前記第1壁部には、前記静置領域にある前記処理液
のうちガス状の前記酸性化合物を放出した前記処理液を前記第2空間に流入させる
位置に開口が形成されている、再生装置。
【請求項2】
前記第1壁部は、前記容器の底部に対して立設されており、
前記開口は、前記第1壁部のうち高さ方向の中央部又は前記中央部よりも前記底部側の部位に形成されている、請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記開口は、前記第1壁部のうち前記高さ方向の最下部に形成されている、請求項2に記載の再生装置。
【請求項4】
前記第1壁部は、前記容器の底部に対して立設されており、
前記開口は、前記第1壁部のうち高さ方向の中央部又は前記中央部よりも上端側の部位に形成されている、請求項1に記載の再生装置。
【請求項5】
前記処理液を前記加熱領域に供給する処理液供給部をさらに備え、
前記処理液供給部は、前記容器の底部側又は天井部側に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記処理液と熱交換する加熱用媒体が流れると共に前記加熱領域に配置された伝熱管を含み、
前記処理液供給部には、前記伝熱管に向かって前記処理液を供給する供給口が設けられている、請求項5に記載の再生装置。
【請求項7】
前記容器内の空間において前記第2空間と第3空間とを仕切る第2壁部をさらに備え、
前記第2壁部は、前記容器の底部に対して立設されると共に、前記第2空間から前記第3空間に液を溢れさせる上端を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の再生装置。
【請求項8】
前記第3空間から前記第1空間に液を還流させるための還流路をさらに備えた、請求項7に記載の再生装置。
【請求項9】
被処理ガスを処理液に接触させることにより、前記被処理ガスに含まれる酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収装置と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の再生装置と、を備えた、ガス処理装置。
【請求項10】
吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置における前記再生装置での処理液の再生方法であって、
前記吸収装置における酸性化合物の吸収により相分離した
状態の処理液であって両液相部分の体積流量比が調整された処理液を、
前記再生装置の容器内の第1空間に供給することと、
前記第1空間に供給された前記処理液を
前記第1空間内の加熱領域において加熱することにより、前記処理液から前記酸性化合物を放出させることと、
前記酸性化合物を放出した前記処理液
及び相分離した状態の処理液を
、前記第1空間
内における前記加熱領域の側方に位置する静置領域において静置した後、前記第1空間と第2空間とを仕切る壁部に形成された開口を通じて、
前記酸性化合物を放出した前記処理液を前記第1空間から前記第2空間に流入させることと、を含
み、
前記相分離した処理液は、第1液相部分と、前記第1液相部分に比べて酸性化合物の含有率が低く且つ前記第1液相部分よりも比重の小さい第2液相部分とを含み、
前記酸性化合物を放出した処理液は、前記静置領域において前記第1液相部分と前記第2液相部分との間に位置する、再生方法。
【請求項11】
吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置におけるガス処理方法であって、
吸収装置において酸性化合物を含む被処理ガスを処理液に接触させることにより、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて前記処理液を相分離させることと、
相分離した前記処理液を
両液相部分の体積流量比を調整した上で前記吸収装置から再生装置に送ることと、
前記再生装置において請求項10に記載の再生方法を実施し、酸性化合物を放出した前記処理液を前記再生装置から抜き出して前記吸収装置に還流することと、を含む、ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生装置、ガス処理装置、再生方法及びガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸性化合物を含む被処理ガスを処理液と接触させることにより、当該酸性化合物を分離する技術が知られている。この種の技術として、例えば非特許文献1に記載されているように、酸性化合物の含有率が高い第1相部分(例えばアミン相)と酸性化合物の含有率が低い第2相部分(例えばエーテル相)とに液相分離する処理液を用いることが知られている。
【0003】
非特許文献2に記載されたガス処理装置は、被処理ガス中の酸性化合物を処理液に吸収させる吸収器と、加熱によって処理液から酸性化合物を脱離させる再生器と、吸収器から再生器に処理液を導入させると共に再生器から吸収器に処理液を還流させる循環路と、を備えている。この装置では、吸収器内で相分離した処理液の第1相部分と第2相部分の2液に分離せずに再生器へと供給する。このように、相分離液を2液に分離せずに再生器へ供給することによって第1相部分と第2相部分との接触面積が増大し、それにより処理液の再生(酸性化合物の放散)が促進される。
【0004】
第1相部分(例えばアミン相)と第2相部分(例えばエーテル相)との接触面積の増大による処理液の再生促進は、第2相部分による再生済みアミンの抽出作用により以下の通り説明される。相分離液においては、酸性化合物は第1相部分に多く存在する。具体的には、酸性化合物がCO2であり、処理液が1級アミンである場合には、RNH3
++RNHCOO-、等の形態で酸性化合物が第1相部分内に存在する。
【0005】
これらが加熱されると、RNH3
++RNHCOO- → 2RNH2+CO2、等の反応により、再生済みアミン(RNH2)とCO2に乖離し、処理液の再生が達成される。この際、再生済みアミンが第2相部分に抽出される。これにより、第1相部分内での乖離反応は、上記反応式において右に進行し易くなり、CO2が容易に放散される。このような第2相部分による再生済みアミンの抽出作用は、第1相部分と第2相部分との間の液液界面で進行するため、これらの接触面積を増大させることによってCO2の放散が促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】Hiroshi Machida et al.,“Development of phase separation solvent for CO2 capture by aqueous(amine+ether) solution”,Journal of Chemical Thermodynamics,(米),Elsevier Ltd.,2017,Vol.113,p.64-70
【文献】Hiroshi Machida et al.,“Low temperature swing process for CO2 absorption-desorption using phase separation CO2 capture solvent”,International Journal of Greenhouse Gas Control,(米),Elsevier Ltd.,2018,Vol.75,p.1-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献2では、相分離した処理液を2液に分離せずに再生器へ供給することにより第1相部分と第2相部分との接触界面を増大させ、酸性化合物の放散を促進することができる。しかし、同文献では、再生後の処理液を再生器から吸収器に還流する際に、再生前の相分離状態の処理液が混ざる可能性があり、この点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸性化合物の放散を促進させると共に、再生後の処理液の選択的な抜き出しを可能とする再生装置及び再生方法、当該再生装置を備えたガス処理装置並びに当該再生方法が実施されるガス処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る再生装置は、吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置に用いられ、前記吸収装置における酸性化合物の吸収により相分離した状態の前記処理液であって両液相部分の体積流量比が調整された処理液が導入され、導入された処理液を加熱することにより、前記酸性化合物を放出させて前記処理液を再生する装置である。この再生装置は、前記処理液を収容する容器と、前記容器内の空間を、前記相分離した状態の処理液が供給されると共に前記処理液を加熱する加熱部が配置された加熱領域と、前記加熱領域の側方に位置し、加熱によりガス状の前記酸性化合物を放出した前記処理液及び相分離した状態の処理液が静置される静置領域と、を含む第1空間と、前記酸性化合物を放出した前記処理液を排出する第2空間と、に仕切る第1壁部と、を備えている。前記相分離した処理液は、第1液相部分と、前記第1液相部分に比べて酸性化合物の含有率が低く且つ前記第1液相部分よりも比重の小さい第2液相部分とを含む。前記酸性化合物を放出した処理液は、前記静置領域において前記第1液相部分と前記第2液相部分との間に位置する。前記第1壁部には、前記静置領域にある前記処理液のうちガス状の前記酸性化合物を放出した前記処理液を前記第2空間に流入させる位置に開口が形成されている。
【0010】
この再生装置では、相分離状態の処理液を加熱することにより酸性化合物を放出させ、当該処理液を再生することができる。この再生処理中に、処理液から放出される酸性化合物により当該処理液が撹拌混合されるため、処理液の第1液相部分と第2液相部分との接触界面が増大する。これにより、処理液からの酸性化合物の放出が促進されるため、被処理ガスからの酸性化合物の除去が達成される。また本装置では、酸性化合物を放出した再生後の処理液を静置した後、第1壁部の開口を通じて第2空間に流入させることができる。これにより、再生後の処理液を再生前の処理液から容易に分離することができ、再生後の処理液を選択的に抜き出すことが可能になる。
【0011】
上記再生装置において、前記第1壁部は、前記容器の底部に対して立設されていてもよい。前記開口は、前記第1壁部のうち高さ方向の中央部又は前記中央部よりも前記底部側の部位に形成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1壁部の開口の高さ位置が再生後の処理液の高さ位置に近くなるため、再生後の処理液を第2空間に容易に流入させることができる。
【0013】
上記再生装置において、前記開口は、前記第1壁部のうち前記高さ方向の最下部に形成されていてもよい。
【0014】
容器内の第1空間では、多くの場合、再生前の処理液の各液相が存在するが、当該容器への処理液の供給量が著しく少ない場合には、明確な2相の液液界面が形成されないこともある。上記構成によれば、このような場合にも、再生後の処理液を第2空間に容易に流入させることができる。
【0015】
上記再生装置において、前記第1壁部は、前記容器の底部に対して立設されていてもよい。前記開口は、前記第1壁部のうち高さ方向の中央部又は前記中央部よりも上端側の部位に形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、処理液の組成や液面高さによって再生後の処理液が第1壁部の高さ方向の中央部又はそれよりも上端側に位置する場合でも、再生後の処理液を第2空間に容易に流入させることができる。
【0017】
上記再生装置は、前記処理液を前記加熱領域に供給する処理液供給部をさらに備えていてもよい。前記処理液供給部は、前記容器の底部側又は天井部側に配置されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、容器に貯まった処理液を有効に撹拌混合することが可能になる。具体的に、処理液供給部が容器の底部側に配置される場合には、液相の内部から処理液を供給するときの流動作用によって当該処理液を撹拌混合し、第1液相部分と第2液相部分との接触界面を増大させることができる。一方、処理液供給部が容器の天井部側に配置される場合には、液面に向かって処理液を供給するときの作用により、当該処理液を撹拌混合することができる。
【0019】
上記再生装置において、前記加熱部は、前記処理液と熱交換する加熱用媒体が流れると共に前記加熱領域に配置された伝熱管を含んでいてもよい。前記処理液供給部には、前記伝熱管に向かって前記処理液を供給する供給口が設けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、加熱用媒体から処理液への伝熱が起こり易くなり、処理液の再生を促進することが可能になる。
【0021】
上記再生装置は、前記容器内の空間において前記第2空間と第3空間とを仕切る第2壁部をさらに備えていてもよい。前記第2壁部は、前記容器の底部に対して立設されると共に、前記第2空間から前記第3空間に液を溢れさせる上端を含んでいてもよい。
【0022】
この構成によれば、再生前の処理液(相分離液)のうち比重が小さい方の液相部分が第2空間に流入した場合でも、当該液相部分を第3空間に溢れさせることにより再生後の処理液から容易に分離することができる。
【0023】
上記再生装置は、前記第3空間から前記第1空間に液を還流させるための還流路をさらに備えていてもよい。
【0024】
この構成によれば、第3空間に溢れた液相部分を、還流路を通じて第1空間に戻すことにより、再生前の処理液(相分離液)における各液相部分の比率が変動するのを抑制することができる。
【0025】
本発明の他の局面に係るガス処理装置は、被処理ガスを処理液に接触させることにより、前記被処理ガスに含まれる酸性化合物を前記処理液に吸収させる吸収装置と、上記再生装置と、を備えている。
【0026】
本発明のさらに他の局面に係る再生方法は、吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置における前記再生装置での処理液の再生方法であって、前記吸収装置における酸性化合物の吸収により相分離した状態の処理液であって両液相部分の体積流量比が調整された処理液を、前記再生装置の容器内の第1空間に供給することと、前記第1空間に供給された前記処理液を前記第1空間内の加熱領域において加熱することにより、前記処理液から前記酸性化合物を放出させることと、前記酸性化合物を放出した前記処理液及び相分離した状態の処理液を、前記第1空間内における前記加熱領域の側方に位置する静置領域において静置した後、前記第1空間と第2空間とを仕切る壁部に形成された開口を通じて、前記酸性化合物を放出した前記処理液を前記第1空間から前記第2空間に流入させることと、を含む。前記相分離した処理液は、第1液相部分と、前記第1液相部分に比べて酸性化合物の含有率が低く且つ前記第1液相部分よりも比重の小さい第2液相部分とを含む。前記酸性化合物を放出した処理液は、前記静置領域において前記第1液相部分と前記第2液相部分との間に位置する。
【0027】
この方法によれば、加熱によって処理液から放出される酸性化合物により当該処理液を撹拌混合し、第1液相部分と第2液相部分との接触界面を増大させることにより、酸性化合物の放散を促進することができる。また酸性化合物を放出した処理液を第1空間において静置した後、壁部の開口を通じて第1空間から第2空間に流入させることにより、再生後の処理液を再生前の処理液から容易に分離し、再生後の処理液を選択的に抜き出すことが可能になる。
【0028】
本発明のさらに他の局面に係るガス処理方法は、吸収装置及び再生装置間で処理液を循環させるガス処理装置におけるガス処理方法であって、吸収装置において酸性化合物を含む被処理ガスを処理液に接触させることにより、前記酸性化合物を前記処理液に吸収させて前記処理液を相分離させることと、相分離した前記処理液を両液相部分の体積流量比を調整した上で前記吸収装置から再生装置に送ることと、前記再生装置において上記再生方法を実施し、酸性化合物を放出した前記処理液を前記再生装置から抜き出して前記吸収装置に還流することと、を含む。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、酸性化合物の放散を促進させると共に、再生後の処理液の選択的な抜き出しを可能とする再生装置及び再生方法、当該再生装置を備えたガス処理装置並びに当該再生方法が実施されるガス処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態1に係るガス処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1における吸収装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る再生装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る再生装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係る再生装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態4に係る再生装置の構成を模式的に示す図である。
【
図7】本発明のその他実施形態における吸収装置の構成を模式的に示す図である。
【
図8】本発明のその他実施形態における吸収装置の構成を模式的に示す図である。
【
図9】本発明のその他実施形態に係る再生装置の構成を説明するための模式図である。
【
図10】本発明のその他実施形態に係る再生装置の構成を説明するための模式図である。
【
図11】本発明のその他実施形態に係る再生装置の構成を説明するための模式図である。
【
図12】本発明のその他実施形態に係る再生装置の構成を説明するための模式図である。
【
図13】本発明のその他実施形態に係る再生装置の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る再生装置、ガス処理装置、再生方法及びガス処理方法を詳細に説明する。
【0032】
(実施形態1)
<ガス処理装置>
まず、本発明の実施形態1に係るガス処理装置1を、
図1に基づいて説明する。ガス処理装置1は、例えばCO
2含有ガス等の被処理ガスと処理液L1とを接触させることにより、当該被処理ガスに含まれる酸性化合物を分離する装置である。はじめに、ガス処理装置1で用いられる処理液L1について詳細に説明する。
【0033】
処理液L1は、CO2等の酸性化合物を可逆的に吸収放出することが可能な液であり、酸性化合物の吸収により単一相の状態から二相分離の状態に変化すると共に、酸性化合物の放出により二相分離の状態から単一相の状態に戻る。処理液L1は、例えば、水、アミン化合物、及び有機溶剤を含むアルカリ性の吸収液である。一例として、アミン化合物は30wt%、有機溶剤は60wt%、水は10wt%であることが望ましい。
【0034】
アミン化合物としては、例えば、2-アミノエタノール(MEA)、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(AEE)、等の1級アミン、例えば2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(ブチルアミノ)エタノール(BAE)等の2級アミン、又は、例えばトリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミン等が挙げられる。
【0035】
有機溶剤としては、例えば1-ブタノール、1-ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGDEE)、又は、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)等が挙げられ、これらのうち複数種が混合して用いられてもよい。
【0036】
非特許文献1によると、アミン化合物及び有機化合物の組合せを選択すると、酸性化合物の吸収により酸性化合物の含有率が高い相と酸性化合物の含有率が低い相とに二相分離する吸収液となる。
【0037】
次に、ガス処理装置1の構成を説明する。
図1に示すように、ガス処理装置1は、吸収装置10と、再生装置20と、循環路30と、熱交換器40と、ヒートポンプ60とを主に備える。
【0038】
吸収装置10は、被処理ガスを処理液L1に接触させることにより、当該被処理ガスに含まれる酸性化合物(例えばCO2)を処理液L1に吸収させる。吸収装置10における酸性化合物の吸収は、発熱反応である。
【0039】
図1に示すように、吸収装置10には、被処理ガスを供給するガス供給路11と、処理後のガスを排出するガス排出路12と、CO
2を吸収した処理液L1を再生装置20に送るための第1流路31と、CO
2を放出した再生後の処理液L1を再生装置20から吸収装置10に戻すための第2流路32とが接続されている。第1流路31と第2流路32とによって循環路30が構成されている。
【0040】
ガス供給路11は吸収装置10の底部に接続されており、ガス排出路12は吸収装置10の上部に接続されている。第1流路31は上流端側が2本の流路に分岐しており(第1分岐路31A、第2分岐路31B)、各分岐路が吸収装置10の底部に接続されている。また各分岐路には、送液ポンプ53,33が設置されている。第2流路32の下流端は、吸収装置10の上部に接続されている。第2流路32にも送液ポンプ51が設置されている。吸収装置10の内部構成は後に詳述する。
【0041】
再生装置20は、酸性化合物の吸収により相分離した状態の処理液L1を加熱することにより、当該酸性化合物を放出させて処理液L1を再生する装置である。処理液L1からの酸性化合物の放出は、吸熱反応である。再生装置20では、処理液L1が加熱されると、酸性化合物が放出されるだけでなく、処理液L1に含まれる水の一部が蒸発する。
【0042】
図1に示すように、再生装置20には、第1流路31の下流端と第2流路32の上流端とが接続されている。第1流路31は再生装置20の底部に接続されており、吸収装置10から導出された処理液L1を再生装置20内に導入させる。第2流路32も再生装置20の底部に接続されており、再生装置20から処理液L1を導出させる。
【0043】
再生装置20には、供給路21が接続されている。供給路21は、再生装置20内で得られた酸性化合物(例えばCO2)を供給先に送る。供給路21には、酸性化合物のガスと水蒸気との混合気体を冷却するコンデンサ22が設けられている。混合気体が冷却されると、水蒸気が凝縮するので、水蒸気を酸性化合物のガスから分離することができる。分離された水蒸気は、還流路24を通じて再生装置20に還流される。コンデンサ22としては、川水等の安価な冷却水を用いた熱交換器を用いることができる。再生装置20の内部構成は後に詳述する。
【0044】
熱交換器40は、第1流路31及び第2流路32に接続され、第1流路31を流れる処理液L1と第2流路32を流れる処理液L1との間で熱交換させる。熱交換器40は、例えばプレート熱交換器等によって構成されるが、温度差が比較的小さい流体間での熱交換が可能なマイクロチャネル熱交換器によって構成され得る。これにより、エネルギー効率が向上する。
【0045】
ヒートポンプ60は、吸収装置10で生じる反応熱を再生装置20に輸送する熱輸送手段である。
図1に示すように、ヒートポンプ60は、冷媒が封入された閉ループ状の循環流路65と、当該循環流路65にそれぞれ設けられた圧縮機62、蒸発器61、膨張機構64及び凝縮器63と、を備える。
【0046】
蒸発器61は、伝熱管を含み、吸収装置10内に配置されている。吸収装置10内では、処理液L1がCO2を吸収する発熱反応が起こっている。蒸発器61内を流れる液状の冷媒は、この熱によって加熱されて蒸発する。
【0047】
ガス状の冷媒は、圧縮機62によって圧縮された後、凝縮器63内に流入する。凝縮器63は、伝熱管を含み、再生装置20内に配置されている。再生装置20内では、処理液L1からCO2が放出される吸熱反応が起こっている。凝縮器63内を流れるガス状の冷媒は、この吸熱反応により凝縮する。凝縮した液状の冷媒は、膨張機構64によって膨張し、蒸発器61に流れ込む。このように、冷媒の循環によって、吸収装置10の反応熱が再生装置20に輸送される。
【0048】
<吸収装置>
次に、吸収装置10の構成を、
図2に基づいてより詳細に説明する。なお、以下では、便宜上、上下は鉛直方向を意味し、横は水平方向を意味する。
図2に示すように、吸収装置10は、横長のタンクである容器13と、第1壁部18と、第2壁部19と、ガス供給部17と、処理液供給部14とを含む。
【0049】
容器13内には、蒸発器61の伝熱管を固定する管板15が設けられている。この伝熱管は、横長のU字形状からなり、両端部が管板15にそれぞれ固定されている。管板15によって、容器13内の空間は、ヒートポンプ60の冷媒が出入するための出入空間S8と、処理液L1が貯まる貯留空間S9とに仕切られている。蒸発器61の伝熱管は、貯留空間S9に配置されている。
【0050】
なお、上述の通り横置きのタンク(例えばケトル型等)を容器13として用いることにより、伝熱面積を広げるために蒸発器61の伝熱管をより長くしようとする場合にも、容器13の横サイズを大きくすることによって対応可能となる。容器13が縦長の場合には、高さの制約等によって伝熱面積を一定以上広げるのが困難な場合もあるが、横長のタンクを用いる場合にはこのような制約がない。したがって、伝熱面積を自由に設定し、必要な伝熱面積を確保することが可能である。
【0051】
出入空間S8は、仕切り板16によって入口空間S1と出口空間S2とに仕切られている。循環流路65から入口空間S1に流入した液状の冷媒は、一端側の開口から蒸発器61の伝熱管内に流入し、当該一端から他端に向かって流れる。このとき、液状の冷媒は、酸性化合物の吸収反応の熱を受けて蒸発する。その後、ガス状の冷媒が、出口空間S2を通過して循環流路65に流出する。
【0052】
第1壁部18は、貯留空間S9のうち第1空間S3と第2空間S4とを互いに仕切るものであり、容器13の底部に対して立設されている。
図2に示すように、蒸発器61、ガス供給部17及び処理液供給部14は、第1空間S3にそれぞれ配置されている。本実施形態では、第1壁部18のうち高さ方向の中央部又はそれよりも下側に、具体的には最下部に、液が流通可能な開口G1が形成されている。
【0053】
第2壁部19は、貯留空間S9のうち第2空間S4と第3空間S5とを互いに仕切るものであり、容器13の底部に対して立設されている。第2壁部19は、第1壁部18から見て管板15と反対側に位置し、当該第1壁部18との間に間隔(第2空間S4)を空けて設けられている。第2壁部19は、第1壁部18と略平行であり、その上端は第1壁部18の上端よりも下側(容器13の底部側)に位置する。
【0054】
容器13の底部のうち第2空間S4に面する部位には第1流出口25が設けられており、当該底部のうち第3空間S5に面する部位には第2流出口26が設けられている。第1分岐路31Aの一端は第1流出口25に接続されており、第2分岐路31Bの一端は第2流出口26に接続されている。
【0055】
ガス供給部17は、酸性化合物を含む被処理ガスを容器13内(第1空間S3)に供給するためのノズルであり、容器13の底部に配置されている。より具体的には、ガス供給部17は、蒸発器61の伝熱管よりも下側に位置すると共に、ガス噴出口を上側に向けた状態で配置されている。本実施形態では、ガス供給部17は容器13の底部に沿って間隔を空けて複数配置されており、ガス供給路11の下流端が分岐して各ガス供給部17に接続されている。
【0056】
このガス噴出口は、処理液L1の液面よりも下側に位置する。これにより、噴出後のガスが気泡となって処理液L1内を浮上し、その作用によって処理液L1が撹拌される。その結果、処理液L1からヒートポンプ60の冷媒(蒸発器61の伝熱管内を流れる冷媒)への伝熱を促進すると共に、被処理ガスと処理液L1との気液接触を改善して酸性化合物の吸収を促進することもできる。またガス噴出口を蒸発器61の伝熱管側に向けることにより、処理液L1から前記冷媒への伝熱がさらに促進される。
【0057】
処理液供給部14は、再生装置20(
図1)から還流された処理液L1を、容器13内(第1空間S3)に供給するためのものである。処理液供給部14には、第2流路32の下流端が接続されている。
図2に示すように、処理液供給部14は、横方向に延びると共に、複数の液供給口が横方向に間隔を空けて設けられている。処理液供給部14は、蒸発器61の伝熱管よりも上側(処理液L1の液面よりも上側)において、液供給口を下側に向けた状態で配置されている。
【0058】
<再生装置>
次に、再生装置20の構成を、
図3に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、再生装置20は、横長のタンクである容器35と、第1壁部39と、処理液供給部38とを備える。
【0059】
容器35は、吸収装置10(
図2)から送られる処理液L1を収容するものである。なお、本実施形態において容器35が横置きタンク(例えばケトル型等)である理由は、吸収装置10の場合と同様に、処理液L1とヒートポンプ60の冷媒との熱交換に寄与する伝熱面積の設定自由度を考慮したためである。
【0060】
第1壁部39は、容器35内の空間を第1空間S12と第2空間S13とに仕切るものであり、容器35の底部に対して立設されている。第1空間S12は、処理液L1が供給されると共に当該処理液L1を加熱する加熱部(凝縮器63)が配置された加熱領域R1と、加熱により酸性化合物を放出した処理液L1が静置される静置領域R2とを含む。第2空間S13は、酸性化合物を放出した処理液L1を排出するための空間であり、処理液L1の流出口42が設けられている。
【0061】
容器35内には、凝縮器63の伝熱管を固定する管板36が設けられている。この伝熱管は、処理液L1と熱交換する冷媒(加熱用媒体)が流れるものであり、横長のU字形状からなると共に両端部が管板36にそれぞれ固定されている。この管板36によって、ヒートポンプ60の冷媒が出入するための出入空間S10が、第1空間S12に対して仕切られている。加熱領域R1は第1空間S12のうち凝縮器63の伝熱管が配置された領域であり、静置領域R2は第1空間S12のうち当該伝熱管が配置されていない領域(当該伝熱管のU字底部と第1壁部39との間の領域)である。
【0062】
出入空間S10は、仕切り板37によって入口空間S6と出口空間S7とに仕切られている。循環流路65から入口空間S6に流入したガス状の冷媒は、一端側の開口から凝縮器63の伝熱管内に流入し、当該一端から他端に向かって流れる。このとき、処理液L1が冷媒から熱を受けることにより当該処理液L1から酸性化合物が放出され、冷媒が凝縮する。その後、液状の冷媒が出口空間S7を通過して循環流路65に流出する。
【0063】
処理液供給部38は、吸収装置10から送られる再生前の処理液L1を加熱領域R1に供給するノズルであり、第1流路31の下流端が接続されている。本実施形態における処理液供給部38は、容器35の底部側に配置されている。より具体的には、処理液供給部38は、凝縮器63よりも下側において容器35の底面に沿って延びると共に、複数の供給口(ノズル噴出口)が互いに間隔を空けて設けられている。各供給口は上側(凝縮器63側)を向いており、当該供給口から凝縮器63の伝熱管に向かって処理液L1が供給される。
【0064】
第1壁部39には、静置領域R2にある処理液L1を第2空間S13に流入させる開口39Aが形成されている。
図3に示すように、開口39Aは、高さ方向において少なくとも一部が凝縮器63の伝熱管と重なるように、第1壁部39のうち高さ方向の中央部又は当該中央部よりも容器35の底部側の部位に形成されている。この開口39Aを設けることにより、以下に説明する通り、再生装置20内において、再生後の処理液L1を再生前の処理液L1から容易に分離することができる。
【0065】
<ガス処理方法、再生方法>
次に、本実施形態に係るガス処理方法及び再生方法を説明する。本方法では、以下のプロセスにより、被処理ガスに含まれる酸性化合物(例えばCO2)を処理液L1に吸収させると共に、加熱によって当該処理液L1から酸性化合物を放出させる。
【0066】
まず、吸収装置10において酸性化合物を含む被処理ガスを処理液L1に接触させることにより、当該酸性化合物を処理液L1に吸収させて処理液L1を相分離させる。具体的には、吸収装置10の貯留空間S9に処理液L1が貯留された状態において、被処理ガスがガス供給部17から第1空間S3に供給される。
【0067】
これにより、気泡状の被処理ガスと処理液L1とが接触し、酸性化合物が処理液L1に吸収される。具体的には、酸性化合物がCO2であり、処理液L1が1級アミンを含む場合には、2RNH2+CO2 → RNH3
++RNHCOO-、等の反応式の通りCO2の吸収反応が起こる。なお、被処理ガスには、CO2等の酸性化合物の他に窒素等のその他のガス成分も含まれているため、酸性化合物の吸収が進んでも気泡状の被処理ガスによる処理液L1の撹拌効果は維持される。
【0068】
これにより、処理液L1は、第1空間S3において、酸性化合物の含有率が高い第1液相部分(例えばアミン相)と酸性化合物の含有率が低い第2液相部分(例えばエーテル相)とに分離する。本実施形態では、第1液相部分、第2液相部分の順に比重が小さくなる。
【0069】
比重が小さい第2液相部分は、第1壁部18の上端から溢れて第2空間S4に流入し、比重が大きい第1液相部分は、第1壁部18の開口G1を通過して第2空間S4に流入する。さらに第2液相部分は、第2壁部19の上端から溢れて第3空間S5に流入する。
【0070】
このようにして、容器13内において処理液L1の第1液相部分と第2液相部分とを分離することができる。そして、第1液相部分は、第1流出口25から第1分岐路31Aに流出し、第2液相部分は、第2流出口26から第2分岐路31Bに流出する。これにより、再生装置20に送られる処理液L1における両液相部分の体積流量比を一定に維持することができる。
【0071】
次に、相分離した処理液L1を、吸収装置10から再生装置20に送る。具体的には、送液ポンプ53,33によって第1及び第2液相部分が再生装置20に送液される。このとき、第1流路31の途中(第1分岐路31Aと第2分岐路31Bの合流点)で両液相部分が混ざり、二相流の状態となって再生装置20に流入する。また再生前の処理液L1は、再生装置20に流入する前に、熱交換器40において再生後の処理液L1との熱交換により加熱される。
【0072】
次に、再生装置20において処理液L1を加熱し、加熱によって酸性化合物を放出した処理液L1を再生装置20から抜き出して吸収装置10に還流する。この再生ステップでは、以下説明する本実施形態に係る再生方法が実施される。
【0073】
本再生方法では、まず、酸性化合物の吸収により相分離した処理液L1を、容器35内の第1空間S12に供給する。具体的には、二相流の状態となった処理液L1を、処理液供給部38のノズル噴出口から加熱領域R1に噴出する。
【0074】
次に、加熱領域R1に供給された処理液L1を、凝縮器63内を流れる冷媒との熱交換を介して加熱することにより、処理液L1から酸性化合物を放出させる。これにより、酸性化合物を放出した処理液L1が、第1液相部分(例えばアミン相)と第2液相部分(例えばエーテル相)との間に形成される。このとき、加熱領域R1では、放出された酸性化合物の気泡や処理液L1の噴流によって処理液L1が撹拌されるのに対し、静置領域R2では撹拌は起こり難い。
【0075】
次に、酸性化合物を放出した処理液L1が、静置領域R2において静置される。これにより、再生後の処理液L1の高さ位置が安定し、開口39Aの高さ位置と略一致する。そして、再生後の処理液L1が、開口39Aを通じて、第1空間S12(静置領域R2)から第2空間S13に流入する。その後、再生後の処理液L1は、流出口42から再生装置20の外に流出し、第2流路32を介して吸収装置10に還流される。
【0076】
以上の通り、本実施形態では、再生装置20において相分離状態の処理液L1を加熱することにより酸性化合物を放出させ、処理液L1を再生することができる。この再生処理中に、処理液L1から放出されるガス状の酸性化合物(例えばCO2)により処理液L1が撹拌混合されるため、第1液相部分(例えばアミン相)と第2液相部分(例えばエーテル相)との接触界面が増大し、酸性化合物の放散を促進することができる。また本実施形態では、酸性化合物を放出した再生後の処理液L1を静置領域R2において静置した後、第1壁部39の開口39Aを通じて第2空間S13に流入させることができる。これにより、再生後の処理液L1を再生前の処理液L1から容易に分離することができ、再生後の処理液L1を再生装置20から選択的に抜き出すことが可能になる。
【0077】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る再生装置20Aについて、
図4に基づいて説明する。実施形態2に係る再生装置20Aは、基本的に実施形態1に係る再生装置20と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、処理液供給部38の位置が異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0078】
実施形態2では、処理液供給部38は、容器35の天井部側に配置されている。具体的には、処理液供給部38は、処理液L1の液面よりも上側に位置し、ノズル噴出口を下側(凝縮器63の伝熱管側)に向けた状態で容器35内に配置されている。本実施形態では、処理液L1の噴流が液面に当たるときの作用によって、処理液L1を撹拌混合することができる。
【0079】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る再生装置20Bについて、
図5に基づいて説明する。実施形態3に係る再生装置20Bは、基本的に実施形態2に係る再生装置20Aと同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、第2壁部43及び還流路44を備える点で実施形態2と異なっている。以下、実施形態2と異なる点についてのみ説明する。
【0080】
第2壁部43は、容器35内の空間において第2空間S13と第3空間S14とを仕切るものであり、容器35の底部に対して立設されている。第2壁部43は、第1壁部39と略平行であり、第1壁部39から見て管板36と反対側に位置する。また第2壁部43は、第2空間S13から第3空間S14に液を溢れさせる上端を含み、当該上端は第1壁部39の上端よりも下側(容器35の底部側)に位置する。
【0081】
還流路44は、第3空間S14から第1空間S12に液を還流させるための経路である。
図5に示すように、還流路44は、上流端が容器35の底部のうち第3空間S14に面する部位に接続されると共に、下流端が第1流路31のうち下流端近傍の部位に接続されている。また還流路44には、送液ポンプ45が設置されている。
【0082】
実施形態3によれば、例えばエーテル相等の第2液相部分が開口39Aを通じて第2空間S13に流入した場合でも、当該第2液相部分を第2壁部43の上端から第3空間S14に溢れさせることにより、再生後の処理液L1から容易に分離することができる。そして、第3空間S14に溢れた第2液相部分を、還流路44を通じて第1空間S12に戻すことにより、再生前の処理液L1における各液相部分の比率(例えばエーテル相とアミン相の比率)が変動するのを抑制することができる。なお、本実施形態において、処理液供給部38が、
図3に示すように容器35の底部側に配置されてもよい。
【0083】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係る再生装置20Cについて、
図6に基づいて説明する。実施形態4に係る再生装置20Cは、基本的に実施形態3に係る再生装置20Bと同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、第1壁部39における開口39Aの位置が実施形態3と異なっている。以下、実施形態3と異なる点についてのみ説明する。
【0084】
図6に示すように、実施形態4における開口39Aは、第1壁部39のうち高さ方向の最下部に形成されている。この場合でも、再生後の処理液L1を、開口39Aを通じて第1空間S12から第2空間S13に流入させることができる。
【0085】
第1空間S12では、再生後の処理液L1の上下に再生前の処理液L1の各液相部分(例えばエーテル相とアミン相)が存在するが、再生装置20への処理液L1の供給量が著しく少ない場合に、再生後の処理液L1の下側に比重が大きい方の液相部分(例えばアミン相)が存在しないこともある。この場合、再生後の処理液L1が容器35の底部近傍にあるため、最下部に形成された開口39Aを通じて再生後の処理液L1を第2空間S13に流入させることができる。
【0086】
なお、実施形態4において、処理液供給部38が、
図3に示すように容器35の底部側に配置されてもよい。また第2壁部43、還流路44及び送液ポンプ45が省略されてもよい。
【0087】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。したがって、以下の実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0088】
横置きのタンクである容器13を備えた吸収装置10に限定されず、
図7に示すように、塔型の容器71を備えた吸収装置10Aが用いられてもよい。この場合、ガス供給路11は容器71の下部に接続され、ガス排出路12は容器71の頂部に接続される。また第1流路の各分岐路(第1分岐路31A,第2分岐路31B)は容器71の底部にそれぞれ接続され、第2流路32は容器71の上部に接続される。
【0089】
容器71の底面には第2壁部19が立設されており、当該第2壁部19によって第2空間S4と第3空間S5とが仕切られている。また第3空間S5を上側から覆うカバー部材19Aが設けられているため、酸性化合物を吸収して塔底部に流下した処理液L1は第2空間S4に貯まる。その後、比重が小さい第1液相部分が第2壁部19の上端から第3空間S5に溢れることにより、第1液相部分と第2液相部分とが分離される。そして、第1分岐路31Aと第2分岐路31Bとによって各液相部分が吸収装置10Aから抜き出され、それぞれ流量調整されて再生装置20に送られる。
【0090】
また
図8の吸収装置10Bのように、処理液L1の分離用タンク72が容器71の下側に配置されると共に、回収路73を介して容器71の底部に接続されてもよい。また分離用タンク72の底部から第2壁部19が立設され、当該第2壁部19によって第2空間S4と第3空間S5とが仕切られていてもよい。この場合、酸性化合物を吸収した処理液L1が分離用タンク72の第2空間S4に貯まり、当該処理液L1の第1液相部分(上相部分)が第2壁部19の上端から第3空間S5に溢れる。そして、第1分岐路31Aと第2分岐路31Bとによって各液相部分が分離用タンク72から抜き出され、それぞれ流量調整されて再生装置20に送られる。
【0091】
図9~
図12に示すように、再生装置の第1壁部39は、一対の壁部材(第1壁部材81,第2壁部材82)を含むものでもよく、この場合、両壁部材の間の隙間が開口39Aとなる。
図9では、第1壁部材81が容器35の底部に対して立設されると共に、第2壁部材82が容器35の底部から離間すると共に第1壁部材81の後側(凝縮器63と反対側)に配置され、且つ第1壁部材81の上端部と第2壁部材82の下端部とが高さ方向において一部重なっている。
図10は、
図9において第1壁部材81と第2壁部材82の位置を前後入れ替えたものである。すなわち、
図10では、第1壁部材81が容器35の底部に対して立設されると共に、第2壁部材82が容器35の底部から離間すると共に第1壁部材81の前側(第1壁部材81よりも凝縮器63に近い側)に配置され、且つ第1壁部材81の上端部と第2壁部材82の下端部とが高さ方向において一部重なっている。
図11は、
図9において両壁部材を端部同士が重ならないように配置したものである。
図12は、
図10において両壁部材を端部同士が重ならないように配置したものである。
【0092】
実施形態1では、開口39Aが第1壁部39のうち高さ方向の中央部又は当該中央部よりも容器35の底部側の部位に形成される場合を例示したが、これに限定されない。
図13に示すように、開口39Aは、第1壁部39のうち高さ方向の中央部C1又は中央部C1よりも上端側(容器35の底部と反対側)の部位に形成されていてもよい。この構成でも、処理液L1の組成や液面高さの位置によって再生後の処理液L1が第1壁部39の上端側に位置する場合には、再生後の処理液L1を第2空間S13に流入させることができる。
【0093】
実施形態1では、ガス処理装置1にヒートポンプ60が設けられる場合を説明したが、当該ヒートポンプ60が省略されてもよい。この場合、ヒートポンプ60に代わる加熱部として、再生装置20から外部に抜き出された処理液L1を、電気、蒸気又はバーナー等の任意の熱源により加熱するものが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 ガス処理装置
10,10A,10B 吸収装置
20,20A,20B,20C 再生装置
35 容器
38 処理液供給部
39 第1壁部
39A 開口
43 第2壁部
44 還流路
63 凝縮器(加熱部)
L1 処理液
R1 加熱領域
R2 静置領域
S12 第1空間
S13 第2空間
S14 第3空間