(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】エネルギー線管
(51)【国際特許分類】
H01J 35/16 20060101AFI20240313BHJP
H01J 35/18 20060101ALI20240313BHJP
H01J 35/08 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01J35/16
H01J35/18
H01J35/08 F
(21)【出願番号】P 2020182957
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 銀治
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮迪
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 幹章
(72)【発明者】
【氏名】夏目 佳幸
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0291901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0092909(US,A1)
【文献】特開平05-066300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357150(US,A1)
【文献】特開2009-036570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00-35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成されていると共に、前記開口を画定する縁部を含んでいる筐体部と、
前記開口の開口方向から見た場合に前記開口を覆っていると共に、エネルギー線を透過する窓を含んでいる窓部と、
前記縁部に沿って設けられていると共に前記窓部を前記筐体部に固定している枠部と、を備え、
前記筐体部と前記窓部と前記枠部とは、封止された内部空間を形成しており、
前記筐体部は、金属を含んでおり、
前記窓部は、前記開口方向において前記縁部と対向している端部を含んでおり、
前記枠部は、前記筐体部に固定されている第一枠部と、前記窓部に固定されている第二枠部と、前記第一枠部と前記第二枠部との間に配置されている変形部とを含んでおり、
前記変形部及び前記第二枠部は、前記開口方向から見た場合に前記開口と重なる領域内に、前記窓部よりも前記筐体部側に配置されている、エネルギー線管。
【請求項2】
前記第一枠部は、前記筐体部に沿って延在する第一延在部を含んでおり、前記第一延在部において前記筐体部に固定され、
前記第二枠部は、前記窓部に沿って延在する第二延在部を含んでおり、前記第二延在部において前記窓部に固定されている、請求項1に記載のエネルギー線管。
【請求項3】
前記変形部の少なくとも一部は、前記窓部又は前記筐体部の少なくとも一方と離間している、請求項1又は2に記載のエネルギー線管。
【請求項4】
前記窓部は、前記開口方向から見た場合に前記開口と重なる領域内に位置する中央部をさらに含んでおり、
前記第一枠部は、前記縁部に固定され、
前記第二枠部は、前記中央部に固定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギー線管。
【請求項5】
前記変形部は、前記縁部に沿って連続して形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のエネルギー線管。
【請求項6】
前記変形部は、前記窓部から離れる方向に突出した凸部を備えている、請求項5に記載のエネルギー線管。
【請求項7】
前記第二枠部を前記窓部に固定する固定部材をさらに備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載のエネルギー線管。
【請求項8】
前記第一枠部は、溶接によって前記筐体部に固定されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のエネルギー線管。
【請求項9】
前記第一枠部の少なくとも一部は、前記開口方向から見た場合に、前記窓部よりも外側に位置している、請求項8に記載のエネルギー線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線管に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー線を照射又は入射するエネルギー線管が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、エネルギー線を放出させる透過型のエネルギー線管が記載されている。このエネルギー線管は、筐体部と筐体部に設けられた窓部とを備えている。窓部は、エネルギー線を透過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エネルギー線管において、筐体部の内部空間は封止されている。上記エネルギー線管において内部空間は、真空状態に保たれている。しかし、内部空間の封止状態は、様々な要因によって生じる応力によって損なわれるおそれがある。例えば、真空封止する際においては、加熱工程が行われる場合が多い。この加熱工程において、エネルギー線管は高温に加熱された後に常温に戻される。この際、窓部と筐体部との熱膨張係数との差に起因した熱応力が、窓部を筐体部に固定する固定部分に生じる場合がある。この場合、熱応力によって、上記固定部分に歪みが生じるおそれがある。上記固定部分における歪みの発生によって、当該固定部分が破損し、内部空間の封止状態が損なわれるおそれがある。例えば、製造時において封止状態が損なわれれば、生産効率の低下が生じる。
【0005】
本発明の一つの態様は、内部空間の封止状態が損なわれることが抑制され得るエネルギー線管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様におけるエネルギー線管は、筐体部と、窓部と、枠部とを備えている。筐体部は、開口が形成されていると共に、開口を画定する縁部を含んでいる。窓部は、開口の開口方向から見た場合に開口を覆っていると共に、エネルギー線を透過する窓を含んでいる。枠部は、縁部に沿って設けられていると共に窓部を筐体部に固定している。筐体部と窓部と枠部とは、封止された内部空間を形成している。筐体部は、金属を含んでいる。窓部は、端部を含んでいる。端部は、開口方向において縁部に対向している。枠部は、第一枠部と第二枠部と変形部とを含んでいる。第一枠部は、筐体部に固定されている。第二枠部は、窓部に固定されている。変形部は、第一枠部と第二枠部との間に配置されている。変形部及び第二枠部は、開口方向から見た場合に開口と重なる領域内に、窓部よりも筐体部側に配置されている。
【0007】
上記一つの態様において、エネルギー線管は、窓部を筐体部に固定する枠部を備えている。筐体部と窓部と枠部とによって、封止された内部空間が形成されている。枠部は、第一枠部において筐体部と固定され、第二枠部において窓部と固定されている。枠部は、第一枠部と第二枠部との間に変形部を含んでいる。このため、窓部と筐体部との間の距離の変化に応じて、変形部も変形する。この結果、筐体部と窓部との間に生じる応力が抑制される。したがって、例えば、温度変化による熱膨張などによって窓部と筐体部との間に応力が生じたとしても、内部空間の封止状態が損なわれ難い。窓部は、開口方向において縁部に対向している端部を有している。このため、窓部と筐体部との間における変位が抑制される。変形部及び第二枠部は、開口方向から見た場合に開口と重なる領域内に、窓部よりも筐体部側に配置されている。このため、窓部を第二枠部に固定する固定部分、及び、変形部が、窓部及び筐体部によって保護される。これらの構成からも、内部空間の封止状態が損なわれ難い。
【0008】
上記一つの態様において、第一枠部は、筐体部に沿って延在する第一延在部を含んでおり、第一延在部において筐体部に固定されていてもよい。第二枠部は、窓部に沿って延在する第二延在部を含んでおり、第二延在部において窓部に固定されていてもよい。この場合、第一枠部及び第二枠部のそれぞれは、第一延在部及び第二延在部のそれぞれによって確実に筐体部および窓部に固定される。この場合においても、内部空間の封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0009】
上記一つの態様において、変形部の少なくとも一部は、窓部又は筐体部の少なくとも一方と離間していてもよい。この場合、変形部が変形するための空間が確実に得られるため、内部空間の封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0010】
上記一つの態様において、窓部は、開口方向から見た場合に開口と重なる領域内に位置する中央部をさらに含んでいてもよい。第一枠部は、縁部に固定されていてもよい。第二枠部は、中央部に固定されていてもよい。この場合、枠部の各構成を適切な位置に配置することができるため、内部空間の封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0011】
上記一つの態様において、変形部は、縁部に沿って連続して形成されていてもよい。この場合、窓部と筐体部との間に生じる応力が、筐体部の縁部に沿って広範囲に配分され得る。この結果、内部空間の封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0012】
上記一つの態様において、変形部は、窓部から離れる方向に突出した凸部を備えていてもよい。この場合、簡易な構成によって、内部空間の封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0013】
上記一つの態様において、エネルギー線管は、第二枠部を窓部に固定する固定部材をさらに備えていてもよい。この場合、内部空間が製造容易な構成において封止され得る。
【0014】
上記一つの態様において、第一枠部は、溶接によって筐体部に固定されていてもよい。この場合、枠部と筐体部との枠部分の強度が確保され得る。
【0015】
上記一つの態様において、第一枠部の少なくとも一部は、開口方向から見た場合に、窓部よりも外側に位置していてもよい。この場合、第一枠部と筐体部とが容易に溶接され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様は、内部空間の封止状態が損なわれることが抑制され得るエネルギー線管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態におけるエネルギー線発生装置を示す断面図である。
【
図5】(a)は、本実施形態における枠部及び窓部の構成を示す模式図であり、(b)は、本実施形態の変形例における枠部及び窓部の構成を示す模式図である。
【
図6】(a)から(c)は、本実施形態の変形例における枠部及び窓部の構成を示す模式図である。
【
図7】本実施形態の変形例における枠部の構成を示す模式図である。
【
図8】本実施形態の変形例における枠部の構成を示す模式図である。
【
図10】エネルギー線管の製造工程を示す図である。
【
図11】比較例のエネルギー線管を説明するための図である。
【
図12】本実施形態のエネルギー線管における作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有している要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態におけるエネルギー線管の構成を説明する。
図1は、本実施形態におけるエネルギー線発生装置の構成を示す概略図である。
図2は、本実施形態におけるエネルギー線管の縦断面図である。
図1及び
図2に示されるように、エネルギー線発生装置100は、例えば、X線を照射するX線発生装置である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、互いに直交している。本実施形態において、X線は、Z軸方向に照射される。エネルギー線発生装置100は、装置筐体1と、電源部2と、エネルギー線管3とを備えている。
【0020】
装置筐体1は、筒部材10と、電源部ケース20と、を備える。筒部材10は、金属により形成されている。筒部材10は、その一方の端部に開口10aが形成され、他方の端部に開口10bとが形成されている円筒状を呈する。筒部材10は、開口10aにエネルギー線管3の一部が挿入されている。
【0021】
筒部材10の一方の端部には、エネルギー線管3の取付フランジ3aが当接され且つネジ等で固定されている。エネルギー線管3は、筒部材10の開口10aにて固定され、開口10aを封止している。筒部材10の内部には、液状の電気絶縁性物質である絶縁油11が封入されている。
【0022】
電源部2は、エネルギー線管3に電力を供給する。電源部2は、上述した電源部ケース20に加えて、絶縁ブロック21と、昇圧回路22と、制御基板23と、を有している。電源部ケース20は、絶縁ブロック21と、昇圧回路22と、制御基板23とを収容している。絶縁ブロック21は、モールド成形された固形の絶縁材料、例えば絶縁樹脂であるエポキシ樹脂からなる。昇圧回路22は、絶縁ブロック21中にモールドされている。昇圧回路22は、高電圧Vを発生させる。絶縁ブロック21は、昇圧回路22を絶縁材料により封止している。制御基板23は、エネルギー線発生装置100の動作を制御する。制御基板23は、エネルギー線の発生に関する制御を行う。制御基板23は、例えばエネルギー線管3に供給する電圧又は電流の制御、及び、昇圧回路22の駆動を制御する。制御基板23は、絶縁ブロック21中にモールドされた内部基板23aと、絶縁ブロック21の外部に配置された外部基板23bとを有している。
【0023】
電源部2には、筒部材10の他方の端部が固定されている。それにより、筒部材10の開口10bが封止され、絶縁油11が筒部材10の内部に気密に封入される。開口10bは、開口10aの反対側に位置する。
【0024】
エネルギー線発生装置100は、高電圧給電部4をさらに備えている。高電圧給電部4は、絶縁ブロック21上に配置されている。高電圧給電部4は、昇圧回路22及び制御基板23に電気的に接続された円筒状のソケットを含んでいる。エネルギー線管3は、高電圧給電部4を介して電源部2に電気的に接続されている。これと共に、高電圧給電部4は、昇圧回路22及び制御基板23に電気的に接続された状態で絶縁ブロック21に固定されている。
【0025】
エネルギー線管3は、後述する内部空間Rにおいて発生したX線を外部に照射するX線管である。エネルギー線管3は、絶縁バルブ6とヘッド部7とを備えている。絶縁バルブ6は、絶縁性材料により形成されている。絶縁性材料としては、例えばガラス、セラミック等が挙げられる。絶縁バルブ6は、例えば、ガラス又はセラミックからなる。絶縁バルブ6は、筒部材10に挿入されている。ヘッド部7は、金属を含んでいる。ヘッド部7は、主に金属材料によって形成されている。金属材料としては、例えばステンレス鋼、コバール等が挙げられる。ヘッド部7は、例えば、ステンレス鋼又はコバールからなる。絶縁バルブ6とヘッド部7とは、内部空間Rを形成している。内部空間Rは、真空空間となるように封止されている。エネルギー線管3は、内部空間R内に、電子銃110をさらに備えている。電子銃110は、電位的にエネルギー線管3の陰極に相当し、電子ビームBを発生し、出射する。
【0026】
電子銃110は、絶縁バルブ6に固定されている。絶縁バルブ6は、エネルギー線管3の管軸に沿って延在する円筒状を呈している。絶縁バルブ6は、ヘッド部7に対向する底部6aを有している。底部6aには、電子銃110の給電等に用いるステムピンSが設けられている。ステムピンSは、底部6aを貫通しており、内部空間Rの所定位置で電子銃110を支持する。ステムピンSは、エネルギー線管3の絶縁バルブ6の底部6aから内部空間Rの外部に突出し、高電圧給電部4に電気的に接続されている。
【0027】
電子銃110は、ヒータ111と、カソード112と、第一グリッド電極113と、第二グリッド電極114と、を有している。ヒータ111は、通電によって発熱するフィラメントにより形成されている。カソード112は、ヒータ111による加熱によって電子を放出する。第一グリッド電極113は、カソード112から放出される電子の量を制御する。第二グリッド電極114は、第一グリッド電極113を通過した電子をターゲットTに向けて集束する。第二グリッド電極114は、円筒状を呈している。第一グリッド電極113は、カソード112と第二グリッド電極114との間に配置されている。エネルギー線管3は、筒部材10の一方の端部に固定されている。
【0028】
ヘッド部7は、電位的にエネルギー線管3の陽極に相当する。ヘッド部7は、X線の出射方向軸と同軸の円筒状を呈する。X線の出射方向軸は、Z軸に相当する。ヘッド部7には、内部空間Rの一部を構成する中空部7aが形成されている。ヘッド部7は、中空部7aの電子銃110側において、出射方向軸と同軸の絶縁バルブ6と連通している。本実施形態においては、ヘッド部7を接地電位とし、電源部2からはマイナスの高電圧が高電圧給電部4を介してエネルギー線管3の電子銃110に供給される。電源部2によってエネルギー線管3に付与される電圧は、例えば-10kV~-500kVである。
【0029】
次に、
図2から
図6(c)を参照して、エネルギー線管の構造についてさらに詳細に説明する。
図3は、エネルギー線管3のヘッド部7を示している。
図4は、ヘッド部7の部分拡大図である。
図3及び
図4に示されているように、ヘッド部7は、筐体部40と窓部50と枠部60とを備えている。内部空間Rは、筐体部40と窓部50とに囲まれている。筐体部40と窓部50と枠部60とは、内部空間Rの一部を形成している。
【0030】
筐体部40は、筒状を呈している。例えば、筐体部40は、円筒状を呈している。筐体部40は、Z軸方向に延在している。筐体部40には、一方の端部側に開口40aが形成され、他方の端部側に開口40bが形成されている。筐体部40は、開口40aを画定する縁部41を含んでいる。縁部41は、筐体部40の一方側端面において、全周にわたり、深さdとなるようにザグリ加工された円環状の平面部である。縁部41は、エネルギー線管3の管軸方向と交わる方向に沿って延びる平面状の底面45と、エネルギー線管3の管軸方向に沿って延びる側面46とを含んでいる。本実施形態において、エネルギー線管3の管軸方向は、Z軸方向に相当する。開口40a,40bは、Z軸方向に開口している。換言すれば、開口40a,40bの開口方向は、Z軸方向である。筐体部40の開口40a,40bは、内部空間Rに連続している。開口40aは、内部空間Rの縁に位置している。筐体部40は、金属を含んでいる。筐体部40は、主に金属材料によって形成されている。金属材料としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。筐体部40は、例えばステンレス鋼からなる。
【0031】
窓部50は、エネルギー線を透過する窓を構成する。窓部50は、Z軸方向から見た場合に開口40aを覆っている。窓部50は、端部51と、中央部52とを含んでいる。端部51は、縁端領域である。中央部52は、端部51に囲まれており、後述する窓53が配置される中央領域である。窓部50には、中央部52の略中心に貫通孔Hが形成されている。貫通孔Hは、電子ビームBの通過孔である。中央部52は、端部51に連続している。端部51は、枠状の領域であって、Z軸方向において縁部41に対向している。例えば、端部51は、円環状を呈している。中央部52は、Z軸方向から見た場合に、開口40aを覆っている。本実施形態においては、端部51と中央部52とは一体の部材であり、厳密な境界をもって区分されるものではなく、窓部50におけるおおよその領域を定義したものである。中央部52は、Z軸方向において縁部41に面していない。窓部50は、ターゲットTと、窓53と、窓保持部材54とを含んでいる。
図2に示されているように、ターゲットTは、窓53の内部空間R側の面上に設けられており、電子銃110からの電子ビームBの照射によってX線を発生する。ターゲットTは、例えば金属材料からなる。金属材料としては、例えばタングステン等が挙げられる。ターゲットTは、例えばタングステンからなる。
【0032】
窓53は、エネルギー線を透過する。窓53は、中央部52に配置されている。窓53は、貫通孔Hを塞いで、封止している。換言すれば、窓53は、中央部52の一部を構成している。窓53は、円板形状を呈している。窓53は、内部空間R側においてターゲットTを保持している。本実施形態において、エネルギー線管3は、透過型のX線管であり、ターゲットTにおいて発生したX線は、窓53を透過して外部に照射される。窓53は、例えば、エネルギー線に対して透過性の高い材料で形成されている。窓53の材料としては、例えば、ベリリウム、ダイヤモンド等が挙げられる。窓53は、例えば、ベリリウム又はダイヤモンドからなる。
【0033】
窓保持部材54は、窓部50の本体部を構成し、窓53を保持している。窓保持部材54によって、窓53が位置決めされる。窓保持部材54は、円板形状を呈している。本実施形態において、窓保持部材54は、端部51と中央部52とによって構成されている。つまり、窓保持部材54は、Z軸方向において、端部51において縁部41に対向しており、中央部52において開口40aを覆っている。窓保持部材54は、例えば、金属材料からなる。金属材料としては、例えばモリブデン等が挙げられる。窓保持部材54は、例えば、モリブデンからなる。
【0034】
枠部60は、窓部50を筐体部40に固定する。枠部60は、縁部41に沿って連続して設けられており、枠状を呈している。枠部60は、分断されることなく枠状に連続して形成されている。例えば、枠部60は、円環状を呈している。
図4に示されているように、枠部60は、窓部50の窓保持部材54と筐体部40の縁部41とに固定されている。この結果、内部空間Rは、気密に封止されている。枠部60は、例えば、金属材料からなる。金属材料としては、例えばコバール等が挙げられる。枠部60は、例えば、コバールからなる。筐体部40の熱膨張係数は、窓部50の熱膨張係数よりも大きい。筐体部40の熱膨張係数は、窓保持部材54の熱膨張係数よりも大きい。本実施形態において、筐体部40の縁部41の熱膨張係数は、窓53、窓保持部材54、及び枠部60の熱膨張係数よりも大きい。枠部60の熱膨張係数は、窓保持部材54の熱膨張係数とほぼ等しい。窓53の熱膨張係数は、筐体部40、窓保持部材54及び枠部60のいずれの熱膨張係数よりも小さい。
【0035】
枠部60は、第一枠部61と、第二枠部62と、変形部63とを含んでいる。本実施形態において、第一枠部61、第二枠部62、及び、変形部63は、一体に形成されている。第一枠部61と第二枠部62とは、それぞれ、板枠形状を呈している。本実施形態において、第一枠部61と第二枠部62とは、それぞれ円環形状を呈している。第一枠部61と第二枠部62とは、それぞれ板形状を呈している。第一枠部61の厚み方向と第二枠部62の厚み方向とは、Z軸方向に一致している。第一枠部61の厚さの大きさは、筐体部40の深さdの大きさと略等しい。第一枠部61と第二枠部62とは、Z軸方向に直交する方向において、同一平面状に位置している。第一枠部61は、筐体部40の縁部41に沿って延在する第一延在部61eを含んでいる。第二枠部62は、窓部50の窓保持部材54に沿って延在する第二延在部62eを含む。変形部63は、第一枠部61と第二枠部62との間に配置されている。変形部63は、第一枠部61と第二枠部62とを連結している。変形部63及び第二枠部62は、Z軸方向から見た場合に、開口40aと重なる領域内に配置されている。換言すれば、変形部63及び第二枠部62は、Z軸方向から見た場合に、中央部52と重なるように配置されている。変形部63及び第二枠部62は、Z軸方向から見た場合に、縁部41と重なっていない。変形部63及び第二枠部62は、窓部50の内部空間R側の表面50aよりも開口40a側に配置されている。
【0036】
第一枠部61は、第一延在部61eの他方側の面において筐体部40の縁部41に固定されている。第一延在部61eは、エネルギー線管3の管軸から離れる方向側の端部において、枠部60の外縁61aを形成している。縁部41は、第一延在部61eの他方側の面と対向する底面45と、外縁61aと対向する側面46とを有している。第一枠部61の第一延在部61eは、例えば、溶接によって筐体部40に接合されている。第一枠部61の第一延在部61eは、外縁61a側の端部領域において、例えば、レーザ溶接によって筐体部40に接合されている。第一枠部61の第一延在部61eの少なくとも一部は、Z軸方向から見た場合に、窓部50よりも外側に位置している。外縁61a側の端部領域は、Z軸方向から見た場合に、窓部50よりも外側に位置している。第一枠部61の第一延在部61eの少なくとも一部は、Z軸方向から見た場合に、窓部50に覆われることなく、露出している。よって、レーザ溶接において、レーザが窓部50に遮られることなく溶接部に照射される。第一枠部61は、第一延在部61eの一方側の面において、窓部50に固定されていない。本実施形態において、第一枠部61は、窓部50から隙間S1を介して離間している。
【0037】
第二枠部62は、第二延在部62eの一方側の面において窓部50の窓保持部材54に固定されている。第二枠部62の第二延在部62eは、内部空間R側における窓部50の表面50aのうち、中央部52に相当する部位に接合されている。表面50aは、窓部50の表面50aのうち開口40aに対向する面である。第二延在部62eの他方側の面は、内部空間R内に露出している。
【0038】
本実施形態において、ヘッド部7は、封止部70をさらに備えている。封止部70は、固定部材71を含んでおり、内部空間Rを封止すると共に枠部60と窓部50とを固定している固定部材71により封止されている。封止部70の固定部材71は、第二枠部62と窓部50との間に配置されている。封止部70の固定部材71は、第二枠部62における第二延在部62eの一方側の面と窓部50の表面50aとを接合している。封止部70の固定部材71は、表面50aのうち開口40aの縁に沿った枠状の領域αに配置されている。枠状の領域αは、連続している。領域αは、中央部52に位置する。換言すれば、封止部70の固定部材71は、分断されることなく連続してエネルギー線管3の管軸を囲っている。封止部70の固定部材71は、例えば、円環形状を呈している。
【0039】
封止部70は、例えば、ロウ付けによって形成されている。換言すれば、枠部60は、例えば、ロウ付けによって窓部50に接合されている。この場合、固定部材71は、ロウ材によって構成されている。ロウ材としては、例えば、合金が挙げられる。例えば、合金としては、銀ロウが挙げられる。
【0040】
変形部63は、外力に応じて、第一枠部61と第二枠部62との間において変形する。外力は、例えば、熱応力である。変形部63は、第一枠部61及び第二枠部62よりも変形しやすい。変形部63は、筐体部40及び窓部50よりも変形し易い。変形部63は、例えば、少なくともZ軸方向と交差する方向において可撓性を有している。変形部63は、例えば、Z軸方向と交差する方向において弾性的に変形する。換言すれば、変形部63は、第一枠部61と第二枠部62との距離を弾性的に変化させる。
【0041】
変形部63は、縁部41に沿って枠状に連続して形成されている。換言すれば、変形部63は、Z軸方向から見た場合に、窓53を完全に囲うように配置されている。さらに換言すれば、変形部63は、分断されることなく連続してエネルギー線管3の管軸を囲っている。変形部63は、例えば、開口40aの縁に沿って円環状に形成されている。
【0042】
図5(a)は、本実施形態における枠部60及び窓部50の構成を示す模式図である。
図5(a)において、変形部63及び窓保持部材54の断面形状が示されている。
図5(a)に示されているように、変形部63の少なくとも一部は、窓部50又は筐体部40の少なくとも一方と離間している。本実施形態においては、変形部63は、その全体において窓部50および筐体部40のいずれとも接触せず、離間している。変形部63は、窓部50から離れる方向に突出した凸部を備え、当該凸部が単一のバネ部として機能する。換言すれば、変形部63は、Z軸方向において、第一枠部61及び第二枠部62よりも窓部50から離れるように突出している。変形部63は、同一の断面形状が縁部41に沿って枠状に連続するように構成されている。そのため、窓保持部材54は平板形状であるが、変形部63と窓保持部材54との接触が抑制されている。
【0043】
図5(b)は、本実施形態の変形例における枠部60A及び窓部50Aの構成を示す模式図である。枠部60Aは、変形部63の代わりに変形部63Aを有している点のみにおいて枠部60と異なる。窓部50Aは、窓保持部材54の代わりに窓保持部材54Aを有している点のみにおいて異なる。
図5(b)において、変形部63A及び窓保持部材54Aの断面形状が示されている。
図5(b)に示されているように、変形部63Aは、窓部50側に突出した凸部を備え、当該凸部が単一のバネ部として機能する。換言すれば、変形部63Aは、Z軸方向において、第一枠部61及び第二枠部62よりも開口40aから離れるように突出している。変形部63Aは、同一の断面形状が縁部41に沿って枠状に連続するように構成されている。
【0044】
窓保持部材54Aは、溝55Aが形成されている点のみにおいて窓保持部材54と異なる。溝55Aは、窓保持部材54の内部空間R側において、変形部63Aに沿って設けられている。溝55Aは、Z軸方向において、変形部63Aの突出幅よりも大きい深さを有している。溝55Aは、Z軸方向と直交する方向において、変形部63Aの横幅よりも大きい幅を有している。溝55Aは、同一の断面形状が縁部41に沿って枠状に連続するように構成されている。変形部63Aは、溝55Aの内部に位置している。この結果、変形部63Aと窓保持部材54Aとの接触が抑制されている。
【0045】
図6(a)は、本実施形態の変形例における枠部60B及び窓部50の構成を示す模式図である。
図6(b)は、本実施形態の変形例における枠部60C及び窓部50Cの構成を示す模式図である。
図6(c)は、本実施形態の変形例における枠部60D及び窓部50Dの構成を示す模式図である。枠部60B,60C,60Dは、それぞれ、変形部63の代わりに変形部63B,63C,63Dを有している点のみにおいて枠部60と異なる。窓部50C,50Dは、窓保持部材54の代わりに窓保持部材54C,54Dを有している点のみにおいてことなる。
図6(a)、
図6(b)、及び、
図6(c)において、それぞれ、変形部63B,63C,63D及び窓保持部材54,54C,54Dの断面形状が示されている。
【0046】
図6(a)、
図6(b)、及び、
図6(c)に示されているように、変形部63B,63C,63Dは、複数のバネを含んでいる。変形部63B,63C,63Dは、2つのバネを含んでいる。変形部63B,63C,63Dの各々において、複数のバネがZ軸方向と直交する方向において並んでいる。変形部63B,63C,63Dの各々において、各バネは同一の断面形状が縁部41に沿って枠状に連続するように構成されている。変形部63B,63C,63Dの各々において、一方の枠状のバネの内側に他方の枠状のバネが配置されている。
【0047】
変形部63Bの各バネは、変形部63と同様に、窓部50から離れる方向に突出している。変形部63Cの各バネは、変形部63Aと同様に、窓部50C側に突出している。変形部63Dの一方のバネは、窓部50から離れる方向に突出している。変形部63Dの他方のバネは、変形部63Aと同様に、窓部50C側に突出している。
【0048】
図6(a)に示されている構成において、窓保持部材54は平板形状である。
図6(a)に示されている構成においても、変形部63Bと窓保持部材54との接触が抑制されている。
【0049】
図6(b)及び
図6(c)において、窓保持部材54C,54Dは、それぞれ、溝55C,55Dが形成されている点のみにおいて窓保持部材54と異なる。溝55C,55Dは、窓保持部材54の内部空間R側において、変形部63C,63Dに沿って設けられている。溝55C,55Dは、Z軸方向において、変形部63C,63Dの突出幅よりも大きい深さを有している。溝55C,55Dは、同一の断面形状が縁部41に沿って枠状に連続するように構成されている。
【0050】
溝55Cは、Z軸方向と直交する方向において、変形部63Cにおける2つのバネの横幅の合計よりも大きい幅を有している。変形部63Cの2つのバネは、溝55Cの内部に位置している。
【0051】
溝55Dは、Z軸方向と直交する方向において、変形部63Cにおける1つのバネの横幅よりも大きい幅を有している。変形部63Dの窓部50D側に突出しているバネは、溝55Dの内部に位置している。この結果、変形部63Dと窓保持部材54Dとの接触が抑制されている。
【0052】
次に、
図7及び
図8を参照して、本実施形態の変形例における枠部60E,60Fについて説明する。
図7及び
図8は、本実施形態の変形例における枠部60E,60Fの構成を示す模式図である。これらの変形例は、概ね、上述した実施形態及び変形例と類似又は同じである。これらの変形例は、変形部の構成に関して、上述した実施形態及び変形例と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0053】
図7に示されている枠部60Eは、変形部63の代わりに変形部63Eを有している点のみにおいて枠部60と異なる。変形部63Eの厚さは、枠部60Eの他の部分の厚さよりも薄い。例えば、変形部63Eの厚さは、第一枠部61及び第二枠部62の厚さよりも薄い。換言すれば、Z軸方向において、変形部63Eの長さは、枠部60Eの他の部分の長さよりも小さい。変形部63Eは、この構成によって可撓性を有している。変形部63Eは、弾性変形する。
【0054】
図8に示されている枠部60Fは、変形部63の代わりに変形部63Fを有している点のみにおいて枠部60と異なる。変形部63Fの材質は、枠部60Fの他の部分の材質よりも柔らかい。例えば、変形部63Fの材質のヤング率は、第一枠部61及び第二枠部62の材質のヤング率よりも小さい。例えば、変形部63Fの材質は、コバール又はステンレス剛よりも柔らかい材質の金属である。変形部63Fの材料としては、例えばチタンや銅、アルミニウム等が挙げられる。変形部63Fは、この構成によって可撓性を有している。変形部63Fは、弾性変形する。
【0055】
次に、
図9及び
図10を参照して、エネルギー線管の製造方法の一部を説明する。
図9及び
図10は、エネルギー線管の製造工程を示す図である。
【0056】
まず、
図9に示されているように、ターゲットTを設けた窓53と、窓保持部材54と、枠部60とが、互いに接続される。矢印A1は、窓53が窓保持部材54に取り付けられる方向を示している。矢印A2は、窓保持部材54が枠部60に取り付けられる方向を示している。窓53は、窓保持部材54の中央部52の中央に固定される。枠部60は、窓保持部材54に対してロウ付けによって固定される。具体的には、窓保持部材54に対して第二枠部62の第二延在部62eの一方側の面が、ロウ付けによって固定される。この際、窓53と直交する方向において、窓保持部材54と第二枠部62とが重ね合わされる。ロウ付けは、例えば、600~1000℃で行われる。
【0057】
次に、窓53と、窓保持部材54と、枠部60とが互いに接続されたユニット80に対して、真空加熱処理が行われる。真空加熱処理は、例えば、200~1000℃で行われる。
【0058】
次に、
図10に示されているように、ユニット80が筐体部40に対して固定される。矢印A3は、ユニット80が筐体部40に取り付けられる方向を示している。これによって、ユニット80が筐体部40の縁部41に嵌め込まれる。ユニット80が筐体部40の縁部41に嵌め込まれている状態において、枠部60と筐体部40とが溶接によって固定される。具体的には、枠部60の第一枠部61の第一延在部61eと筐体部40とが、レーザによって溶接される。ユニット80と筐体部40との接合は、室温で行われる。
【0059】
次に、ユニット80と筐体部40とが接続されたユニット90に絶縁バルブ6などを組み合わせた後に、内部空間Rが真空引きされる。この際の加熱工程は、例えば、200~650℃で行われる。エネルギー線管3は、加熱工程によって内部空間Rが真空引きされた後に封止され、室温に冷却される。以上の工程が行われることによって、エネルギー線管3が製造される。
【0060】
次に、エネルギー線管3の作用効果について説明する。
図11は、比較例のエネルギー線管の一部を示している。
図11に示されている構成では、エネルギー線管が枠部60の代わりに枠部200を備えている。枠部200は、封止部210を介して窓部50に接続されている。枠部200は、変形部63に相当する部分を有していない点において枠部60と相違する。
【0061】
図11において、このエネルギー線管の封止部210にかかる力が示されている。例えば、エネルギー線管が高温環境下に置かれた場合、筐体部40は、Z軸方向と直交する方向に熱膨張する。枠部200は、筐体部40に固定されている。枠部200は、領域αにおいて、封止部210によって窓部50に固定されている。筐体部40の熱膨張係数が、窓部50及び枠部200の熱膨張係数よりも大きい場合、同じ加熱条件下において、筐体部40は、窓部50及び枠部200よりも相対的に大きく膨張する。換言すれば、筐体部40は、窓部50及び枠部200よりも相対的に大きく変形する。換言すれば、窓部50及び枠部200は、筐体部40よりも熱によって相対的に変形し難い。このため、筐体部40と窓部50及び枠部200との熱膨張係数差に起因した力A4及び力A5が、封止部210に付与される。
【0062】
力A4及び力A5は、Z軸方向と直交する方向において互いに逆向きに生じる力である。このため、力A4,A5による応力が封止部210にかかる。この応力は、例えば、剪断応力である。この応力の大きさが、封止部210の機械的強度を上回る場合、封止部210において亀裂等の損傷が生じるおそれがあった。この結果、内部空間Rの封止状態が損なわれるおそれがあった。
【0063】
本実施形態におけるエネルギー線管3の枠部60は、第一枠部61において筐体部40と固定され、第二枠部62において窓部50と固定されている。枠部60は、さらに、第一枠部61と第二枠部62との間に変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fを含んでいる。このため、窓部50と筐体部40との間の距離の変化に応じて、変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fも変形する。
【0064】
例えば、
図12において、エネルギー線管3の作用効果が示されている。エネルギー線管3において、筐体部40がZ軸方向と直交する方向に熱膨張した場合、筐体部40の熱膨張に応じて力A6が生じる。エネルギー線管3においては、変形部63の変形によって、力A6は力A4よりも小さい。この結果、力A6と反対方向の力A7も抑制され、力A5よりも小さい。したがって、筐体部40と窓部50との間に付与される応力が抑制される。例えば、温度変化による熱膨張などによって窓部50と筐体部40との間に応力が生じたとしても、内部空間Rの封止状態が損なわれ難い。
【0065】
窓部50は、Z軸方向において縁部41に対向している端部51を有している。このため、例えば窓部50に対して、筐体部40側に押し付けるような外部からの力βが加えられても、窓部50は縁部41によって支持される。この結果、窓部50と筐体部40との間における変位が抑制される。したがって、この点においても、内部空間Rの封止状態が損なわれ難い。さらに、窓部50を透過するエネルギー線の出射条件の変化も抑制され得る。
【0066】
変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63F及び第二枠部62は、Z軸方向から見た場合に開口40aと重なる領域内に窓部50よりも筐体部40側に配置されている。このため、窓部50を第二枠部62に固定する固定部分、及び、変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fは、窓部50及び筐体部40によって保護されている。
【0067】
第一枠部61は、筐体部40に沿って延在する第一延在部61eを含んでおり、第一延在部61eにおいて筐体部40に固定されている。第二枠部62は、窓部50に沿って延在する第二延在部62eを含んでおり、第二延在部62eにおいて窓部50に固定されている。この場合、第一枠部61及び第二枠部62のそれぞれは、第一延在部61e及び第二延在部62eのそれぞれによって確実に筐体部40および窓部50に固定される。この場合においても、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0068】
変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fの少なくとも一部は、窓部50又は筐体部40の少なくとも一方と離間している。この場合、変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fが変形するための空間が確実に得られるため、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0069】
第一枠部61は、窓部50とは固定されていない。より具体的には隙間S1を備えている。この場合、窓部50と筐体部40との間の距離の変化がスムーズに行われるため、変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fの変形もスムーズに行われる。よって、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0070】
第一枠部61は、縁部41に固定され、第二枠部62は、中央部52に固定されている。この場合、枠部60の各構成を適切な位置に配置することができるため、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0071】
変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fは、縁部41に沿って連続して形成されている。この場合、窓部50と筐体部40との間に生じる応力が、筐体部40の縁部41に沿って広範囲に配分され得る。この結果、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0072】
変形部63,63A,63B,63C,63D,63E,63Fは、窓部50から離れる方向に突出した凸部を備えている。この場合、簡易な構成によって、内部空間Rの封止状態が損なわれることがさらに抑制され得る。
【0073】
エネルギー線管3は、第二枠部62を窓部50に固定する固定部材71をさらに備えている。この場合、内部空間Rが製造容易な構成において封止され得る。
【0074】
第一枠部61は、溶接によって筐体部40に固定されている。この場合、枠部60と筐体部40との枠部分の強度が確保され得る。
【0075】
第一枠部61の少なくとも一部は、Z軸方向から見た場合に、端部51よりも外側に位置している。この場合、第一枠部61と筐体部40とが容易に溶接され得る。
【0076】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0077】
例えば、エネルギー線管は、エネルギー線発生装置に設けられたエネルギー線管3に限定されない。例えば、エネルギー線が外部からエネルギー線管に照射されて検出を行う、エネルギー線検出管であってもよい。この場合、エネルギー線は、窓部50からエネルギー線管の内部空間Rに入射する。
【0078】
本実施形態において、変形部63は、分断されることなく1つの連続した枠形状を呈している。しかし、変形部63の形状はこれに限定されない。例えば、変形部63は、Z軸方向から見た場合に、分断された部分を有していてもよい。変形部63が分断されることなく1つの連続した枠形状に形成されることによって、封止が損なわれることを抑制する効果が格段に向上する。
【0079】
、本実施形態において、第一枠部61は溶接によって固定され、第二枠部62はロウ付けによって固定された。しかし、第一枠部61及び第二枠部62は、が、他の固定方法によって固定されてもよい。例えば、第一枠部61がロウ付けによって固定され、第二枠部62が溶接によって固定されてもよい。
【0080】
第一枠部61と窓部50との間には、隙間S1のように明確な離間空間が形成されていなくてもよい。第一枠部61と窓部50とは、固定されてさえいなければ当接していてもよい。
【符号の説明】
【0081】
3…エネルギー線管、40a…開口、40…筐体部、41…縁部、50,50A,50C,50D…窓部、51…端部、52…中央部、53…窓、60,60A,60B,60C,60D,60E,60F…枠部、61…第一枠部、62…第二枠部、61e…第一延在部、62e…第二延在部、63,63A,63B,63C,63D,63E,63F…変形部、71…固定部材、R…内部空間。