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特許7453894立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法
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  • 特許-立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法 図1
  • 特許-立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法 図2
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  • 特許-立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/08 20060101AFI20240313BHJP
   F16C 33/06 20060101ALI20240313BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240313BHJP
   F16C 23/04 20060101ALI20240313BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20240313BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F16C17/08
F16C33/06
F16C33/20
F16C23/04 B
H02K7/08 B
H02K15/14 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020185311
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074895
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】末松 妃菜子
(72)【発明者】
【氏名】牧野 駿介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠利
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
(72)【発明者】
【氏名】澤 史雄
(72)【発明者】
【氏名】幡野 浩
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122202(JP,A)
【文献】特開平08-084452(JP,A)
【文献】特開2003-289085(JP,A)
【文献】特開平10-029256(JP,A)
【文献】特開2001-140892(JP,A)
【文献】特開2012-086579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26,21/00-27/08,
33/00-33/28
H02K 7/00-7/20,15/00-15/02,
15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材であって、
第1層と、
前記第1層とは異なる材料で構成され、前記第1層に積層された第2層であって、前記ランナの下端部が摺動する摺動面を有する第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた中間層と、を備え、
前記中間層は、前記第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、前記第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含み、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2層の一部が入り込んでおり、
前記第2板状部は、前記第1板状部の側に位置する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を含み、
前記第2面は、主面と、前記主面と前記第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、
前記孔周囲面は、前記主面から前記第2貫通孔に近づくにつれて、前記第1面に近づくように形成されており
平面視において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、円形状を有しているとともに、前記第1貫通孔の中心点と前記第2貫通孔の中心点とが重なるように配置され、
前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の直径よりも大きい直径を有する、摺動部材。
【請求項2】
前記孔周囲面は、凸状に湾曲している、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材であって、
第1層と、
前記第1層とは異なる材料で構成され、前記第1層に積層された第2層であって、前記ランナの下端部が摺動する摺動面を有する第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた中間層と、を備え、
前記中間層は、前記第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、前記第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含み、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2層の一部が入り込んでおり、
前記第2板状部は、前記第1板状部の側に位置する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を含み、
前記第2面は、主面と、前記主面と前記第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、
前記孔周囲面は、前記主面から前記第2貫通孔に近づくにつれて、前記第1面に近づくように形成されており、
前記第1層の前記第2層の側の面および前記第2板状部の前記主面のうち少なくとも一方に、前記第2層と結合する結合層が設けられている、摺動部材。
【請求項4】
前記孔周囲面は、凸状に湾曲している、請求項3に記載の摺動部材。
【請求項5】
平面視において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、円形状を有しているとともに、前記第1貫通孔の中心点と前記第2貫通孔の中心点とがずれるように配置されている、請求項またはに記載の摺動部材。
【請求項6】
平面視において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、円形状を有しているとともに、前記第1貫通孔の中心点と前記第2貫通孔の中心点とが重なるように配置され、
前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の直径よりも大きい直径を有する、請求項またはに記載の摺動部材。
【請求項7】
平面視において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、円形状を有しており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、2mm以上10mm以下の直径を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項8】
前記中間層は、0.5mm以上3mm以下の厚みを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項9】
前記摺動面と前記主面との間の寸法は、1mm以上3mm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項10】
前記第1層は、金属材料を含み、
前記第2層は、樹脂材料を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項11】
前記第1層の前記第2層の側の面および前記第2板状部の前記主面のうち少なくとも一方は、30μm以上80μm以下の算術平均粗さを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の摺動部材。
【請求項12】
立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材の製造方法であって、
第1層と中間層とを準備する準備工程であって、前記中間層は、前記第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、前記第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含む、準備工程と、
前記第1層とは異なる材料で構成された第2層を前記第1層に積層する積層工程であって、前記中間層が前記第1層と前記第2層との間に設けられる、積層工程と、を備え、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2層の一部が入り込んでおり、
前記第2板状部は、前記第1板状部の側に位置する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を含み、
前記第2面は、主面と、前記主面と前記第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、
前記孔周囲面は、前記主面から前記第2貫通孔に近づくにつれて、前記第1面に近づくように形成されており
平面視において、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、円形状を有しているとともに、前記第1貫通孔の中心点と前記第2貫通孔の中心点とが重なるように配置され、
前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔の直径よりも大きい直径を有する、摺動部材の製造方法。
【請求項13】
立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材の製造方法であって、
第1層と中間層とを準備する準備工程であって、前記中間層は、前記第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、前記第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含む、準備工程と、
前記第1層とは異なる材料で構成された第2層を前記第1層に積層する積層工程であって、前記中間層が前記第1層と前記第2層との間に設けられる、積層工程と、を備え、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とに前記第2層の一部が入り込んでおり、
前記第2板状部は、前記第1板状部の側に位置する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を含み、
前記第2面は、主面と、前記主面と前記第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、
前記孔周囲面は、前記主面から前記第2貫通孔に近づくにつれて、前記第1面に近づくように形成されており、
前記第1層の前記第2層の側の面および前記第2板状部の前記主面のうち少なくとも一方に、前記第2層と結合する結合層が設けられている、摺動部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立形水車発電機や揚水発電設備の発電電動機等の立軸回転電機に用いられる摺動部材が知られている。この立軸回転電機用の摺動部材は、立軸回転電機の軸方向の荷重を支持するように構成されており、立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動するようになっている。
【0003】
一般に、立軸回転電機用の摺動部材は、第1層と、第1層とは異なる材料で構成された第2層とが積層された複合材料によって構成されている。しかしながら、例えば、第1層が金属材料で構成され、第2層が樹脂材料で構成されている場合、これらの材料を十分な接合強度で接合することは困難である。第1層と第2層との接合強度が十分でない場合、立軸回転電機1の運転時、摺動部材に積層方向に直交する方向に大きな荷重が加わることにより、第1層と第2層とが分離するおそれがある。このような問題に対処するため、第1層と第2層との間に、複数の貫通穴を有する2枚の板材から成る中間層を配置して、第1層と第2層との接合強度を向上させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-29256号公報
【文献】特開2000-35622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、立軸回転電機用の摺動部材は、立軸回転電機の軸方向の荷重を支持するため、積層方向に大きな荷重が加わり得る。このとき、上述した中間層の貫通穴の周囲に設けられた角部に荷重が集中し、この角部の近傍において第2層に大きな圧縮応力が生じ、第2層が変形あるいは破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、摺動部材の変形や破損を防止することができる立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による摺動部材は、立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材である。摺動部材は、第1層と、第1層とは異なる材料で構成され、第1層に積層された第2層であって、ランナの下端部が摺動する摺動面を有する第2層と、第1層と第2層との間に設けられた中間層と、を備える。中間層は、第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含む。第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、第1貫通孔と第2貫通孔とに第2層の一部が入り込んでいる。第2板状部は、第1板状部の側に位置する第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面と、を含む。第2面は、主面と、主面と第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、孔周囲面は、主面から第2貫通孔に近づくにつれて、第1面に近づくように形成されている。
【0008】
また、実施の形態による摺動部材の製造方法は、立軸回転電機のロータシャフトに取り付けられたランナの下端部が摺動する立軸回転電機用の摺動部材の製造方法である。摺動部材の製造方法は、第1層と中間層とを準備する準備工程であって、中間層は、第1層に接合された、複数の第1貫通孔を有する第1板状部と、第1板状部に接合された、複数の第2貫通孔を有する第2板状部と、を含む、準備工程を備える。また、摺動部材の製造方法は、第1層とは異なる材料で構成された第2層を第1層に積層する積層工程であって、中間層が第1層と第2層との間に設けられる、積層工程を備える。第1貫通孔と第2貫通孔とが少なくとも部分的に重なっているとともに、第1貫通孔と第2貫通孔とに第2層の一部が入り込んでいる。第2板状部は、第1板状部の側に位置する第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面と、を含む。第2面は、主面と、主面と第2貫通孔との間に設けられた孔周囲面と、を含み、孔周囲面は、主面から第2貫通孔に近づくにつれて、第1面に近づくように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態によれば、摺動部材の変形や破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施の形態による立軸回転電機の子午面断面図である。
図2図2は、図1のスラストパッドを示す斜視図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図3の第1貫通孔および第2貫通孔の配置例を示す上面断面図である。
図5図5は、図3の部分拡大図である。
図6図6は、比較例によるスラストパッドを示す断面図である。
図7図7は、図3の変形例(第1変形例)である。
図8図8は、図7の第1貫通孔および第2貫通孔の配置例を示す上面図である。
図9図9は、図5の変形例(第2変形例)である。
図10図10は、図3の変形例(第3変形例)である。
図11図11は、図4の変形例(第4変形例)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本実施の形態による立軸回転電機用の摺動部材および立軸回転電機用の摺動部材の製造方法について説明する。
【0012】
まず、図1を用いて、本実施の形態による立軸回転電機について説明する。
【0013】
図1に示すように、立軸回転電機1は、回転子2と、不図示の固定子と、軸受構造体3と、を有している。
【0014】
回転子2は、鉛直方向に延びる円柱状のロータシャフト4と、ロータシャフト4の周囲に取り付けられた回転子鉄心(不図示)と、を有している。図1にはロータシャフト4の上部が示されており、回転子鉄心は、図1のロータシャフト4の下方に配置されている。ロータシャフト4は、不図示のランナ羽根等を介して流水から動力を得ることで回転するように構成されている。
【0015】
固定子(不図示)は、回転子2の外周側に配置されている。固定子は、図1のロータシャフト4の下方に配置されている。固定子は、円筒状の固定子鉄心を有している。固定子鉄心は、固定子鉄心の内周面が回転子鉄心の外周面に対向するように配置されている。回転子鉄心の外周面と固定子鉄心の内周面との間には間隙が設けられている。
【0016】
軸受構造体3は、ランナ10と、油槽20と、ジャーナル軸受25と、スラスト軸受30と、を有している。
【0017】
ランナ10は、ロータシャフト4に取り付けられており、ロータシャフト4の回転に伴って回転するようになっている。ランナ10は、ロータシャフト4に取り付けられた円環状のランナ上部12と、ランナ上部12から下方に延びる円筒状のランナ円筒部14と、ランナ円筒部14から更に下方に延びるランナ下部16と、を有している。ランナ上部12、ランナ円筒部14およびランナ下部16は一体に形成されている。ランナ下部16は、ランナ円筒部14の外径よりも大きい外径を有している。ランナ下部16の下端部16a、すなわちランナ10の下端部16aは、後述するスラスト軸受30のスラストパッド40の摺動面64aに対向している。ロータシャフト4が回転した際、ランナ10の下端部16aが、スラストパッド40の摺動面64aに摺動するようになっている。
【0018】
油槽20は、潤滑油Lを貯留している。油槽20は、ランナ10、ジャーナル軸受25およびスラスト軸受30を覆うように設けられており、ランナ円筒部14およびランナ下部16並びにジャーナル軸受25およびスラスト軸受30が潤滑油Lに浸かっている。これにより、ランナ10の回転により、油槽20内の潤滑油Lを撹拌することができる。また、ランナ円筒部14とジャーナル軸受25との間、およびランナ下部16とスラスト軸受30との間に潤滑油Lを供給し、摺動を滑らかにすることができる。油槽20には、油槽20内に潤滑油Lを供給する油供給口(不図示)と、油槽20内から潤滑油Lを排出する油排出口(不図示)とが設けられていてもよい。
【0019】
ジャーナル軸受25は、円筒状に形成されており、ジャーナル軸受25の内周面はランナ円筒部14の外周面に対向している。ジャーナル軸受25は、ランナ10が回転可能なように、ランナ円筒部14を径方向に支持している。ロータシャフト4が回転した際、ランナ円筒部14の外周面が、ジャーナル軸受25の内周面に摺動するようになっている。
【0020】
スラスト軸受30は、立軸回転電機1の軸方向の荷重、より具体的には、回転子2の軸方向の荷重を支持している。スラスト軸受30は、台座32と、パッド支持部34と、スラストパッド40と、を有している。
【0021】
台座32は、直方体形状を有しており、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。台座32は、立軸回転電機1の構造物に固定されている。これらの複数の台座32上に円筒状のパッド支持部34が取り付けられている。
【0022】
パッド支持部34上には、スラストパッド40が取り付けられている。パッド支持部34とスラストパッド40との間に弾性部材が介在していてもよい。スラストパッド40は、図2に示すように、底面が扇形状の柱体であり、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。スラストパッド40は、上述したように、立軸回転電機1の軸方向の荷重を支持するように構成されており、ランナ10の下端部16aが摺動するようになっている。
【0023】
次に、図2図5を用いて、本実施の形態によるスラストパッド40(立軸回転電機用の摺動部材)について詳細に説明する。
【0024】
図2および図3に示すように、スラストパッド40は、第1層50と、第2層60と、第1層50と第2層60との間に設けられた中間層70と、を備えている。スラストパッド40は、第1層50、中間層70および第2層60がこの順番で積層されている。
【0025】
図3に示すように、第1層50は、第2層60とは反対側に位置する第1面52と、第1面52とは反対側、すなわち第2層60の側に位置する第2面54と、を有している。第1層50は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚みを有していてもよい。図2に示すように、平面視において、第1層50は、扇形状を有していてもよい。第1層50は、金属材料で構成されていてもよい。金属材料としては、例えば、鉄およびクロムを含むステンレス鋼、鉄、クロムおよびニッケルを含むステンレス鋼、並びに、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、シリコン、ニオブおよびチタンを含むステンレス鋼等を挙げることができる。第1層50は、30mm以上200mm以下の厚みを有していてもよい。
【0026】
図3に示すように、第2層60は、第1層50の側に位置する第1面62と、第1面62とは反対側に位置する第2面64と、を有している。第2層60の第2面64は、ランナ10の下端部16aが摺動する摺動面64aを構成している。すなわち、第2層60は、第1層50の側とは反対側に、ランナ10の下端部16aが摺動する摺動面64aを有している。図2に示すように、平面視において、第2層60は、扇形状を有していてもよい。第2層60の平面面積は、第1層50の平面面積と等しくてもよい。
【0027】
また、図3に示すように、第2層60は、第1面62から第1層50の側に突出して、後述する中間層70の第1板状部80の第1貫通孔85および第2板状部90の第2貫通孔95に入り込んだ入込み部66を有している。すなわち、第2層60の一部が、第1板状部80の第1貫通孔85および第2板状部90の第2貫通孔95に入りこんでいる。
【0028】
第2層60は、第1層50とは異なる材料で構成されている。第2層60は、高い摺動性を有する材料で構成されていてもよい。第1層50が金属材料で構成されている場合、第2層60は、樹脂材料で構成されていてもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、熱硬化性樹脂にPTFE等の有機固体潤滑剤または二硫化モリブデン、グラファイト等の無機固体潤滑剤を含有させた複合材料等を挙げることができる。また、第2層60は、ゴム材料や、ガラス材料、セラミックス材料で構成されていてもよい。第2層60を構成する材料は、第1層50を構成する材料の融点および中間層70を構成する材料の融点よりも低い硬化温度あるいは融点を有していてもよい。
【0029】
第2層60は、1mm以上3mm以下の厚みを有していてもよい。すなわち、第2層60の第1面62と第2面64との間の寸法、あるいは摺動面64aと後述する第2板状部90の主面96との間の寸法が、1mm以上3mm以下であってもよい。
【0030】
図3に示すように、中間層70は、第1層50に接合された第1板状部80と、第1板状部80に接合された第2板状部90と、を有している。
【0031】
図3に示すように、第1板状部80は、第1層50の側に位置する第1面82と、第1面82とは反対側、すなわち第2板状部90の側に位置する第2面84と、を有している。第1板状部80の第1面82は、第1層50の第2面54に接合されている。第1板状部80の第2面84(より具体的には、後述する主面86)は、後述する第2板状部90の第1面92に接合されている。第1板状部80は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚みを有していてもよい。平面視において、第1板状部80は、扇形状を有していてもよく、第1板状部80の平面面積は、第1層50の平面面積および第2層60の平面面積と等しくてもよい。
【0032】
図3および図4に示すように、第1板状部80は、複数の第1貫通孔85を有している。ここで、図4のB-B線断面図が図3の断面図に対応している。第1貫通孔85は、第1板状部80の第1面82から第2面84に延びて、第1板状部80を貫通している。平面視において、第1貫通孔85は、円形状を有していてもよい。第1貫通孔85は、2mm以上10mm以下の直径を有していてもよい。また、平面視において、第1貫通孔85は、千鳥状に配置されていてもよい。第1貫通孔85の配置間隔(配列ピッチ、孔同士の中心間距離)は、0.5mm以上10mm以下であってもよい。第1貫通孔85内には、上述した第2層60の入込み部66が配置されている。すなわち、第1貫通孔85に第2層60の一部が入り込んでいる。
【0033】
図3図5に示すように、第1板状部80の第2面84は、主面86と、主面86と第1貫通孔85との間に設けられた孔周囲面88と、を含んでいる。孔周囲面88は、各第1貫通孔85の周囲に設けられている。平面視において、孔周囲面88は、中空円形状を有しており、第1貫通孔85の外輪郭から所定の距離離れた位置まで延在している。平面視における孔周囲面88の幅は、0.2mm以上3mm以下であってもよい。孔周囲面88は、主面86から第1貫通孔85に近づくにつれて、第1面82の側に近づくように形成されている。本実施の形態においては、孔周囲面88は、凸状に湾曲している。孔周囲面88の曲率半径は、0.5mm以上3mm以下であってもよい。
【0034】
第1板状部80は、第1層50の材料と同様の金属材料で構成されていてもよい。すなわち、第1板状部80は、鉄およびクロムを含むステンレス鋼、鉄、クロムおよびニッケルを含むステンレス鋼、並びに、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、シリコン、ニオブおよびチタンを含むステンレス鋼等の金属材料で構成されていてもよい。第1板状部80の第1面82と第1層50の第2面54、および第1板状部80の第2面84と後述する第2板状部90の第1面92とは、ろう付けによって接合されていてもよい。ろう材としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いることができる。第1板状部80は、0.25mm以上1.5mm以下の厚みを有していてもよい。
【0035】
図3に示すように、第2板状部90は、第1板状部80の側に位置する第1面92と、第1面92とは反対側、すなわち第2層60の側に位置する第2面94と、を有している。上述したように、第2板状部90の第1面92は、第1板状部80の第2面84(主面86)に接合されている。第2板状部90は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚みを有していてもよい。平面視において、第2板状部90は、扇形状を有していてもよく、第2板状部90の平面面積は、第1板状部80の平面面積と等しくてもよい。
【0036】
図3および図4に示すように、第2板状部90は、複数の第2貫通孔95を有している。第2貫通孔95は、第2板状部90の第1面92から第2面94に延びて、第2板状部90を貫通している。平面視において、第2貫通孔95は、円形状を有していてもよい。第2貫通孔95は、2mm以上10mm以下の直径を有していてもよい。第2貫通孔95の直径は、第1貫通孔85の直径と等しくてもよい。また、平面視において、第2貫通孔95は、千鳥状に配置されていてもよい。第2貫通孔95の配置間隔は、0.5mm以上10mm以下であってもよく、第1貫通孔85の配置間隔と等しくてもよい。第1板状部80の第1貫通孔85と第2板状部90の第2貫通孔95とは、部分的に重なっている。図4に示すように、第1貫通孔85および第2貫通孔95は、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とがずれるように配置されていてもよい。本実施の形態においては、第1貫通孔85と第2貫通孔95とは、平面視における一方向(図4における左右方向)に半ピッチ分ずれて配置されている。第2貫通孔95内には、上述した第2層60の入込み部66が配置されている。すなわち、第2貫通孔95に第2層60の一部が入り込んでいる。
【0037】
図3図5に示すように、第2板状部90の第2面94は、主面96と、主面96と第2貫通孔95との間に設けられた孔周囲面98と、を含んでいる。孔周囲面98は、各第2貫通孔95の周囲に設けられている。平面視において、孔周囲面98は、中空円形状を有しており、第2貫通孔95の外輪郭から所定の距離離れた位置まで延在している。平面視における孔周囲面98の幅は、0.2mm以上3mm以下であってもよい。孔周囲面98は、主面96から第2貫通孔95に近づくにつれて、第1面92の側に近づくように形成されている。本実施の形態においては、孔周囲面98は、凸状に湾曲している。孔周囲面98の曲率半径は、0.5mm以上3mm以下であってもよい。
【0038】
第2板状部90は、第1層50の材料と同様の金属材料で構成されていてもよい。すなわち、第2板状部90は、鉄およびクロムを含むステンレス鋼、鉄、クロムおよびニッケルを含むステンレス鋼、並びに、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、シリコン、ニオブおよびチタンを含むステンレス鋼等の金属材料で構成されていてもよい。また、第2板状部90は、0.25mm以上1.5mm以下の厚みを有していてもよい。第2板状部90の厚みは、第1板状部80の厚みと等しくてもよい。
【0039】
中間層70は、0.5mm以上3mm以下の厚みを有していてもよい。すなわち、第1板状部80の厚みと第2板状部90の厚みとの和が、0.5mm以上3mm以下であってもよい。また、スラストパッド40は、全体として、30mm以上200mm以下の厚みを有していてもよい。
【0040】
次に、このような構成からなるスラストパッド40の製造方法について説明する。
【0041】
スラストパッド40の製造方法は、第1層50と中間層70とを準備する準備工程と、第2層60を第1層50に積層する積層工程と、を備えている。
【0042】
準備工程においては、まず、金属材料で構成された平板状の第1層50を準備する。
【0043】
続いて、中間層70を構成するようになる第1板状部80および第2板状部90をそれぞれ準備する。上述したように、第1板状部80には、第1貫通孔85が形成されている。第1貫通孔85は、第1板状部80を構成するようになる板材に打ち抜き加工を行うことにより形成されてもよい。また、上述したように、第1板状部80には、第1貫通孔85の周囲に孔周囲面88が形成されている。孔周囲面88は、第1貫通孔85の周囲に切削加工を行うことにより形成されてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1板状部80は、積層造形により作製されてもよい。この場合、積層造形に係る3次元データに、上述した第1貫通孔85や孔周囲面88が含まれる。同様に、第2板状部90には、第2貫通孔95が形成されている。第2貫通孔95は、第2板状部90を構成するようになる板材に打ち抜き加工を行うことにより形成されてもよい。また、上述したように、第2板状部90には、第2貫通孔95の周囲に孔周囲面98が形成されている。孔周囲面98は、第2貫通孔95の周囲に切削加工を行うことにより形成されてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第2板状部90は、積層造形により作製されてもよい。この場合、積層造形に係る3次元データに、上述した第2貫通孔95や孔周囲面98が含まれる。
【0044】
次に、第1板状部80および第2板状部90を接合して中間層70を形成する。より具体的には、第1板状部80の第2面84と第2板状部90の第1面92とを、ろう付け等により接合する。このとき、第1貫通孔85と第2貫通孔95とが部分的に重なる。より具体的には、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とがずれるように、第1貫通孔85および第2貫通孔95が配置される。
【0045】
続いて、中間層70を第1層50に接合する。より具体的には、中間層70の第1板状部80の第1面82と第1層50の第2面54とを、ろう付け等により接合する。
【0046】
このようにして、第1層50と、第1層50に接合された中間層70と、を準備することができる。
【0047】
なお、ここでは、第1板状部80および第2板状部90を接合して中間層70を形成した後に、中間層70を第1層50に接合する例を示した。しかしながら、このことに限られることなく、第1板状部80を第1層50に接合した後に、第1板状部80に第2板状部90を接合して中間層70を形成してもよい。
【0048】
次に、第2層60を第1層50に積層する工程においては、まず、第2層60を構成するようになる粉末状の樹脂材料もしくは液体状の未硬化樹脂材料を準備する。
【0049】
続いて、粉末状の樹脂材料もしくは液体状の未硬化樹脂材料を第1層50に積層する。ここで、粉末状の樹脂材料もしくは液体状の未硬化樹脂材料を、第1貫通孔85および第2貫通孔95に入り込ませつつ、第1層50および中間層70に積層していく。
【0050】
次に、粉末状の樹脂材料もしくは液体状の未硬化樹脂材料を加熱して溶融(硬化)させる。ここで、加熱には、加熱装置やレーザ光を用いてもよい。
【0051】
そして、溶融した樹脂材料を冷却して凝固させる。これにより、樹脂材料が硬化して、第1層50上に第2層60が形成される。
【0052】
このようにして、第1層50とは異なる材料で構成された第2層60を第1層50に積層することができる。
【0053】
以上により、第1層50と、第1層50に積層された第2層60と、第1層50と第2層60との間に設けられた中間層70と、を備える上述したスラストパッド40を製造することができる。
【0054】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0055】
本実施の形態による立軸回転電機1の運転時、スラストパッド40は、ランナ10を介して立軸回転電機1の軸方向の荷重を支持し、スラストパッド40に、ランナ10の下端部16aが摺動する。これにより、スラストパッド40には、積層方向および積層方向に直交する方向に大きな荷重が加わる。ここで、スラストパッド40において、第1層50と第2層60との間に中間層70が設けられており、中間層70の第1板状部80の第1貫通孔85と第2板状部90の第2貫通孔95とに、第2層60の一部が入り込んでいる。このため、第1層50と第2層60とは高い接合強度で接合されており、上述した荷重によって第1層50と第2層60とが分離することが防止される。
【0056】
ここで、本実施の形態の作用効果について、図6に示すスラストパッド40’と比較して説明する。図6に示すスラストパッド40’においては、中間層70’を構成する第2板状部90’の第2面94’は、上述した本実施の形態のような孔周囲面98を含んでいない。すなわち、第2板状部90’の第2面94’は、主面96’により構成され、この主面96’が第2貫通孔95’まで延びるように形成されている。このため、第2貫通孔95’の周囲には、直角に尖った角部99’が形成されている。
【0057】
図6に示すスラストパッド40’において、積層方向に大きな荷重が加わった場合、この角部99’に荷重が集中し得る。この場合、この角部99’の近傍において第2層60’に大きな圧縮応力が生じ、第2層60’が変形あるいは破損するおそれがある。
【0058】
これに対して本実施の形態によれば、第2板状部90の第2面94は、主面96と第2貫通孔95との間に設けられた孔周囲面98を含み、孔周囲面98は、主面96から第2貫通孔95に近づくにつれて、第1面92に近づくように形成されている。このことにより、積層方向に大きな荷重が加わった場合、第2貫通孔95の周囲に加わる荷重を積層方向と積層方向に直交する方向とに分散させることができる。このため、第2貫通孔95の周囲において、第2層60に大きな圧縮応力が生じることを抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、孔周囲面98は、凸状に湾曲している。このことにより、第2貫通孔95の周囲に加わる荷重をより効果的に積層方向に直交する方向に分散させることができる。このため、第2貫通孔95の周囲において、第2層60に大きな圧縮応力が生じることをより一層抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損をより効果的に防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、平面視において、第1貫通孔85および第2貫通孔95は、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とがずれるように配置されている。このような構成において、第1板状部80の第1貫通孔85と第2板状部90の第2貫通孔95とに第2層60の一部が入り込むことで、第1層50と第2層60とがより一層高い接合強度で接合されることができる。このため、第1層50と第2層60とが分離することをより効果的に防止することができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、第1貫通孔85および第2貫通孔95は、2mm以上10mm以下の直径を有している。直径が2mm以上であることにより、第1貫通孔85および第2貫通孔95に、第2層60の一部を十分に入り込ませることができる。このため、第1層50と第2層60とがより一層高い接合強度で接合されることができる。また、直径が10mm以下であることにより、第1板状部80と第1層50との接合強度および第1板状部80と第2板状部90との接合強度の低下を抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、中間層70は、0.5mm以上3mm以下の厚みを有している。厚みが0.5mm以上であることにより、第1貫通孔85および第2貫通孔95に第2層60の一部を十分に入り込ませることができ、第1層50と第2層60とがより一層高い接合強度で接合されることができる。また、厚みが3mm以下であることにより、スラストパッド40の厚みの増大を抑制しつつ、第1層50に十分な厚みを持たせることができ、スラストパッド40の剛性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、摺動面64aと第2板状部90の主面96との間の寸法が、1mm以上3mm以下である。この寸法が1mm以上であることにより、第2層60の剛性を確保することができ、積層方向に大きな荷重が加わった場合に、第2層60の変形や破損を防止することができる。また、この寸法が3mm以下であることにより、スラストパッド40の厚みの増大を抑制しつつ、第1層50に十分な厚みを持たせることができ、スラストパッド40の剛性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、第1層50は、金属材料を含み、第2層60は、樹脂材料を含んでいる。このような場合、第1層50と第2層60とを十分な接合強度で接合することが困難であるとともに、貫通孔を有する中間層を配置しても、貫通孔の周囲で第2層60に大きな圧縮応力が生じ、第2層60に変形あるいは破損が生じるおそれがある。本実施の形態によれば、このような場合であっても、第1層50と第2層60とを高い接合強度で接合しつつ、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0065】
とりわけ、第2層60が樹脂材料を含む場合、スラストパッド40とランナ10の下端部16aとの摺動により、スラストパッド40が高温になり、第2層60が熱膨張して、積層方向により大きな荷重が加わり得る。本実施の形態によれば、このような場合であっても、第2貫通孔95の周囲に加わる荷重を積層方向と積層方向に直交する方向とに分散させることができる。このため、第2貫通孔95の周囲において、第2層60に大きな圧縮応力が生じることを抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態においては、第1板状部80の第2面84および第2板状部90の第2面94の両方に、それぞれ孔周囲面88、98が設けられている例について説明した。しかしながら、第1板状部80の第2面84には孔周囲面88が設けられていなくてもよい。すなわち、第2板状部90の第2面94に孔周囲面98が設けられていれば、上述した本実施の形態の作用効果を奏することができる。
【0067】
(第1変形例)
上述した実施の形態においては、平面視において、第1貫通孔85および第2貫通孔95が、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とがずれるように配置されている例について説明した(図4参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、平面視において、第1貫通孔85および第2貫通孔95が、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とが重なるように配置されていてもよい。また、この場合において、第1貫通孔85は、第2貫通孔95よりも大きい直径を有していてもよい。
【0068】
図7および図8に示す例においては、平面視において、第1貫通孔85および第2貫通孔95は、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とが重なるように配置されている。また、第1貫通孔85の直径は、第2貫通孔95の直径よりも大きくなっている。このような構成により、第1貫通孔85と第2貫通孔95とに入り込んだ第2層60の入込み部66は、図7に示すような凸形状を有するように形成される。
【0069】
図7および図8に示す例においても、第2板状部90の第2面94に、主面96と第2貫通孔95との間に設けられた孔周囲面98が形成されている。孔周囲面98は、主面96から第2貫通孔95に近づくにつれて、第1面92に近づくように形成されている。孔周囲面98は、凸状に湾曲している。なお、図7および図8に示す例においては、第1板状部80の第2面84には、孔周囲面は形成されていない。
【0070】
このような場合であっても、上述した孔周囲面98により、積層方向に大きな荷重が加わった場合、第2貫通孔95の周囲に加わる荷重を積層方向と積層方向に直交する方向とに分散させることができる。このため、第2貫通孔95の周囲において、第2層60に大きな圧縮応力が生じることを抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0071】
また、本変形例によれば、平面視において、第1貫通孔85および第2貫通孔95は、第1貫通孔85の中心点O1と第2貫通孔95の中心点O2とが重なるように配置され、第1貫通孔85は、第2貫通孔95よりも大きい直径を有している。このような構成において、第1板状部80の第1貫通孔85と第2板状部90の第2貫通孔95とに第2層60の一部が入り込むことで、第1層50と第2層60とがより一層高い接合強度で接合されることができる。このため、第1層50と第2層60とが分離することをより効果的に防止することができる。
【0072】
(第2変形例)
また、上述した実施の形態においては、孔周囲面98が凸状に湾曲している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、孔周囲面98は、主面96から第2貫通孔95に近づくにつれて第1面92に近づくような形状であれば、任意の形状を有していてもよい。
【0073】
図9に示す例においては、第2板状部90の第2面94に設けられた孔周囲面98は、主面96に対して傾斜している。換言すると、断面視において、孔周囲面98は、主面96から第2貫通孔95に向かって直線状に延びている。同様に、第1板状部80の第2面84に設けられた孔周囲面88も、主面86に対して傾斜している。換言すると、断面視において、孔周囲面88は、主面86から第1貫通孔85に向かって直線状に延びている。
【0074】
このような場合であっても、上述した孔周囲面98により、積層方向に大きな荷重が加わった場合、第2貫通孔95の周囲に加わる荷重を積層方向と積層方向に直交する方向とに分散させることができる。このため、第2貫通孔95の周囲において、第2層60に大きな圧縮応力が生じることを抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0075】
(第3変形例)
また、上述した実施の形態において、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96のうち少なくとも一方が、30μm以上80μm以下の算術平均粗さRa(JIS B 0601-2001)を有していてもよい。
【0076】
上述したスラストパッド40の製造方法の準備工程において、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96に、例えばブラスト処理を行うことによって、このような数値範囲の算術平均粗さRaを得ることができる。なお、算術平均粗さRaの測定には、菱化システム社製の走査型白色干渉計VertScanを用いてもよい。
【0077】
さらに、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96のうち少なくとも一方に、第2層60と結合する結合層100が設けられていてもよい。
【0078】
図10に示す例においては、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96のそれぞれに、結合層100が設けられている。結合層100は、上述した算術平均粗さRaを有する面、すなわち、上述したブラスト処理が行われた第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96に設けられてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、ブラスト処理が行われていない第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96に設けられてもよい。
【0079】
結合層100は、第2層60を構成する材料と結合(接着)する成分を含んでいる。例えば、第2層60がPTFE等の樹脂材料を含んでいる場合には、結合層100は、フッ素系のシランカップリング剤を含んでいてもよい。あるいは、結合層100は、フッ素樹脂と親和性の高い表面処理剤を含んでいてもよい。
【0080】
上述したスラストパッド40の製造方法の準備工程において、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96に、上述したブラスト処理を行った後、上述したシランカップリング剤あるいは上述した表面処理剤を塗布することで、このような結合層100を設けることができる。
【0081】
本変形例によれば、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96のうち少なくとも一方が、30μm以上80μm以下の算術平均粗さRaを有している。このことにより、積層方向および積層方向に直交する方向に大きな荷重が加わった場合に、第1層50あるいは中間層70と第2層60との間に滑りが生じることを抑制することができる。このため、スラストパッド40の圧縮弾性率の低下を抑制することができ、スラストパッド40の剛性の低下を抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損を防止することができる。
【0082】
また、本変形例によれば、第1層50の第2面54および第2板状部90の主面96のうち少なくとも一方に、第2層60と結合する結合層100が設けられている。このことにより、積層方向および積層方向に直交する方向に大きな荷重が加わった場合に、第1層50あるいは中間層70と第2層60との間に滑りが生じることをより一層抑制することができる。このため、スラストパッド40の圧縮弾性率の低下をより一層抑制することができ、スラストパッド40の剛性の低下をより一層抑制することができる。この結果、スラストパッド40の変形や破損をより効果的に防止することができる。
【0083】
(第4変形例)
また、上述した実施の形態においては、第1貫通孔85と第2貫通孔95とが、平面視における一方向にずれて配置されている例について説明した(図4参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、第1貫通孔85と第2貫通孔95とが少なくとも部分的に重なっていれば、第1貫通孔85および第2貫通孔95の配置は任意である。
【0084】
図11に示す例においては、第1貫通孔85と第2貫通孔95とが、平面視における一方向(図11における左右方向)に半ピッチ分ずれているとともに、一方向と直交する他方向(図11における上下方向)にも半ピッチ分ずれて配置されている。これにより、1つの第1貫通孔85に対して3つの第2貫通孔95が部分的に重なるようになっている。また、1つの第2貫通孔95に対して3つの第1貫通孔85が部分的に重なるようになっている。
【0085】
このような場合であっても、第1板状部80の第1貫通孔85と第2板状部90の第2貫通孔95とに第2層60の一部が入り込むことで、第1層50と第2層60とが高い接合強度で接合されることができる。このため、第1層50と第2層60とが離間することを防止することができる。
【0086】
以上述べた実施の形態によれば、摺動部材の変形や破損を防止することができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1:立軸回転電機、4:ロータシャフト、10:ランナ、16a:下端部、40:スラストパッド、50:第1層、60:第2層、64a:摺動面、70:中間層、80:第1板状部、85:第1貫通孔、90:第2板状部、92:第2板状部の第1面、94:第2板状部の第2面、95:第2貫通孔、96:主面、98:孔周囲面、100:結合層、O1:第1貫通孔の中心点、O2:第2貫通孔の中心点
図1
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