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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】回転機械のインペラ及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
F04D29/30 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020188402
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077570
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 信頼
(72)【発明者】
【氏名】岡田 徳幸
(72)【発明者】
【氏名】明連 千尋
(72)【発明者】
【氏名】中庭 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 修一
(72)【発明者】
【氏名】枡谷 穣
(72)【発明者】
【氏名】樋口 寛史
(72)【発明者】
【氏名】小田 貴士
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-504621(JP,A)
【文献】特開2015-075040(JP,A)
【文献】米国特許第10634157(US,B2)
【文献】特表2017-502207(JP,A)
【文献】特開2009-057959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
F02C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ブレードのキャンバラインを前記軸方向の一方側から前記ディスクに投影した投影曲線における接線と、前記投影曲線と前記接線との接点と軸線とを結ぶ仮想直線と、が形成する角度のうち、前記仮想直線に対して前記ディスクの回転方向上流側であって前記接点よりも径方向外側に形成される角度を翼角と定義し、
前記翼角は、前記接点よりも前記径方向外側において、前記接線が前記仮想直線よりも前記ディスクの回転方向上流側に存在する場合に負の値となることとし、
前記ブレードの前縁の位置を0とし、前記ブレードの後縁の位置を1とした前記ブレードのキャンバラインに沿った無次元位置の内、前記ブレードのディスク側の端部における第1翼角と、前記ブレードのカバー側の端部における第2翼角との角度差が最大となる位置は、0.5以上1以下の範囲に存在し、
前記角度差が最大となる位置において、前記第1翼角は、-10度以上0度以下である
回転機械のインペラ。
【請求項2】
前記前縁から前記後縁にかけて前記無次元位置の変化量に対する前記第2翼角の変化量が不変であると仮定したときの仮定角度と前記第2翼角との差が最大となる前記無次元位置は、前記無次元位置における0.5未満の範囲に存在する
請求項1に記載の回転機械のインペラ。
【請求項3】
前記前縁から前記後縁にかけて前記無次元位置の変化量に対する前記第2翼角の変化量が不変であると仮定したときの仮定角度と前記第2翼角との差を前記仮定角度と前記前縁における前記第2翼角との差で除した値は、前記角度差が最大となる位置において、0.15以下である
請求項1又は2に記載の回転機械のインペラ。
【請求項4】
前記第2翼角は、前記角度差が最大となる位置よりも後縁側において前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて単調増加する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項5】
前記第1翼角は、前記角度差が最大となる位置よりも後縁側において前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて単調減少する
請求項1乃至4の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項6】
前記第1翼角は、前記角度差が最大となる位置よりも前縁側において、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて-30度よりも小さい値から漸増する
請求項1乃至5の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項7】
前記角度差は、前記無次元位置が前記角度差が最大となる位置よりも前縁側の範囲では、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて30度よりも小さい値から漸増し、該位置よりも後縁側の範囲では、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて30度よりも小さい値まで漸減する
請求項1乃至6の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項8】
前記第1翼角は、
前記無次元位置における0以上0.4未満の範囲内に、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて漸増し、且つ、-50度以上-30度以下となる範囲を含んでおり、
前記無次元位置における0.4以上0.7以下の範囲内に、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて漸増し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでおり、
前記無次元位置における0.7を超え1以下の範囲内に、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて漸減し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでいる
請求項1乃至7の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項9】
前記角度差は、
前記無次元位置における0以上0.4未満の範囲内に、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて漸増し、且つ、30度以下となる範囲を含んでおり、
前記無次元位置における0.4以上0.7以下の範囲内に、前記無次元位置が前縁側から前記角度差が最大となる位置に近づくにつれて漸増し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでおり、
前記無次元位置における0.4以上0.7以下の範囲内に、前記無次元位置が前記角度差が最大となる位置から後縁側に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでおり、
前記無次元位置における0.7を超え1以下の範囲内に、前記無次元位置が前記後縁に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以下となる範囲を含んでいる
請求項1乃至8の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項10】
前記ブレードの子午面において、前記前縁における前記ディスク側の端部と前記カバー側の端部とを結ぶ線分の延在方向と径方向との角度差は、15度以下である
請求項1乃至9の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項11】
前記軸方向において前記前縁と少なくとも一部が離れて配置され、前記ディスクと前記カバーとを接続する接続部材、をさらに備える
請求項1乃至10の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項12】
前記ディスクは、前記軸方向に延在する貫通孔が形成されており、
前記軸方向における前記ディスクの前縁側の端部についての径方向に沿った肉厚を1としたときの、前記貫通孔の半径は、2以上5以下である
請求項1乃至11の何れか一項に記載の回転機械のインペラ。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のインペラ
を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械のインペラ及び回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用圧縮機や、ターボ冷凍機や、小型ガスタービンなどに用いられる回転機械として、回転軸に固定されたディスクに複数のブレードを取り付けたインペラを具備したものが知られている。上記回転機械は、インペラを回転させることで、ガスに圧力エネルギー及び速度エネルギーを与えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インペラを備えた遠心圧縮機が開示されている。インペラは、ディスクと、ディスクに設けられた複数のブレードと、複数のブレードを覆うように設けられたカバーと、を備えた、いわゆるクローズドインペラである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-122516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、圧縮機のような回転機械では大容量化や寸法の小型化が要請されている。このような要請に応えるための手法として、例えばインペラの高周速化が挙げられる。
しかし、インペラの回転数を単に大きくするだけでは、インペラのカバーに作用する遠心力が増大してしまう。遠心力の増大に備えて、カバー内周部の肉厚を大きくすると、カバー内周部の剛性が高まる一方で、重量が増大し、遠心力の影響をより多く受けることになる。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、カバーに作用する遠心力の影響を抑えることが可能なインペラ及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラは、
ディスクと、
径方向流路を隔てて前記ディスクと軸方向に対向配置されるカバーと、
前記ディスクと前記カバーとの間に配置されるブレードと、
を備え、
前記ブレードの前縁の位置を0とし、前記ブレードの後縁の位置を1とした前記ブレードのキャンバラインに沿った無次元位置の内、前記ブレードのディスク側の端部における第1翼角と、前記ブレードのカバー側の端部における第2翼角との角度差が最大となる位置は、0.5以上1以下の範囲に存在し、
前記角度差が最大となる位置において、前記第1翼角は、-10度以上0度以下である。
【0008】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、上記(1)の構成のインペラを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、剛性を高めつつカバーに作用する遠心力の影響を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機の回転軸の軸方向に沿った断面図である。
図2】幾つかの実施形態に係るインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図3】幾つかの実施形態に係るインペラのブレードの翼角について説明するための模式図である。
図4A】幾つかの実施形態に係るインペラにおける第1翼角及び第2翼角の分布を示すグラフの一例である。
図4B】幾つかの実施形態に係るインペラにおける第1翼角と第2翼角との角度差の分布を示すグラフの一例である。
図5】幾つかの実施形態に係るインペラについて接続部材を設けた例を示す図である。
図6】幾つかの実施形態に係るインペラのディスクにおける軸方向上流側の径方向の肉厚について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(遠心圧縮機1の全体構成)
以下においては、回転機械の一例として、軸方向に配列された複数段のインペラを備えた多段式の遠心圧縮機を例に挙げて説明する。
図1は、幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機の回転軸の軸方向に沿った断面図である。
図1に示すように、遠心圧縮機1は、ケーシング2と、ケーシング2内で回転自在に支持されるロータ7を備えている。ロータ7は、回転軸(シャフト)4と、回転軸4の外面に固定されている複数段のインペラ8と、を有する。
【0013】
ケーシング2の内部には、軸方向に配列される複数のダイアフラム10が収容されている。複数のダイアフラム10は、インペラ8を外周側から囲うように設けられている。また、ケーシング2の内周側において、複数のダイアフラム10の軸方向における両側には、ケーシングヘッド5,6が設けられている。
ロータ7は、ラジアル軸受20,22及びスラスト軸受24により回転可能に支持されており、回転軸4の軸線Oの周りを回転するようになっている。
【0014】
ケーシング2の一端部には、外部からの流体が流入する吸込口16が設けられているとともに、ケーシング2の他端部には、遠心圧縮機1で圧縮された流体を外部に排出するための吐出口18が設けられている。ケーシング2の内部には、複数段のインペラ8間を繋ぐように形成された流路9が形成されており、吸込口16と吐出口18とは、複数のインペラ8及び流路9を介して連通している。吐出口18には、吐出配管50が接続されている。
【0015】
吸込口16を介して遠心圧縮機1に流入した流体は、複数段のインペラ8及び流路9を通って上流から下流へと流れ、複数段のインペラ8を通過する際に、インペラ8の遠心力が付与されることにより段階的に圧縮される。複数段のインペラ8のうち最下流側に設けられるインペラ8を通過した圧縮流体は、スクロール流路30及び吐出口18を介してケーシング2の外部に導かれ、吐出配管50を介して吐出流路51の出口部52から排出される。
以下の説明では、遠心圧縮機1の軸方向に沿って、すなわち回転軸4の軸線Oに沿って吸込口16側を軸方向上流側又は単に上流側と称し、吐出口18側を軸方向下流側又は単に下流側と称する。
【0016】
(インペラ8)
図2は、幾つかの実施形態に係るインペラの軸方向に沿った断面を模式的に示した図である。
図2に示すように、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、軸方向上流側から軸方向下流側に進むにつれて漸次拡径した略円盤状のディスク81と、ディスク81のハブ面(ディスク主面)811から回転軸4の軸線Oの一方側に向かって立ち上がるように、ディスク81に放射状に取り付けられて周方向に並んだ複数のブレード82とを有している。幾つかの実施形態に係るインペラ8は、軸方向上流側からこれら複数のブレード82を覆うように取り付けられたカバー83を有している。カバー83において、ディスク81のハブ面811と対向する面を対向面831と称する。
幾つかの実施形態に係るインペラ8は、このカバー83とダイアフラム10との間に、インペラ8とダイアフラム10とが接触しないように間隙が画成されている。
説明の便宜上、インペラ8に関して遠心圧縮機1の軸方向上流側をカバー側とも称し、軸方向下流側をディスク側とも称する。
【0017】
幾つかの実施形態に係るインペラ8には、径方向に流体が流通するように画成された空間である径方向流路85が画成される。径方向流路85は、互いに隣り合う一対のブレード82の二つの面(圧力面及び負圧面)とともに、ブレード82の軸線O方向の両側にそれぞれ設けられるディスク81及びカバー83の面(ハブ面811及び対向面831)によって画成される。そして、径方向流路85は、ブレード82がディスク81と一体に回転することで流体を取り込んで排出する。具体的には、径方向流路85は、内部を流通する流体がブレード82における軸方向上流側、即ち、径方向内側を流体の流入する入口として流体を取り込む、そして、径方向流路85は、径方向外側を流体が流出する出口として案内して流体を排出する。
【0018】
すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、ディスク81と、径方向流路85を隔ててディスク81と軸方向に対向配置されるカバー83と、ディスク81とカバー83との間に配置されるブレード82と、を備えている。
【0019】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク81は、軸方向上流側を向く端面が小径とされ、軸方向下流側を向く端面が大径とされている。そして、ディスク81は、これら二つの端面が軸方向上流側から軸方向下流側に向かうにしたがって漸次拡径している。即ち、ディスク81は、軸線O方向視で略円盤状をなし、全体として略傘形状をなしている。
【0020】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク81の径方向内側には、ディスク81を軸線O方向に貫く貫通孔813が形成されている。この貫通孔813に回転軸4が挿入されて嵌合されることで、インペラ8が回転軸4に固定されて、一体として回転可能となっている。
【0021】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、カバー83は、複数のブレード82を軸方向上流側から覆うようにこれらブレード82と一体に設けられた部材である。カバー83は、軸方向上流側から軸方向下流側に向かうに従って漸次拡径する略傘形状をなしている。すなわち、幾つかの実施形態に係るインペラ8は、カバー83を有するクローズインペラとなっている。
【0022】
図3は、幾つかの実施形態に係るインペラのブレードの翼角について説明するための模式図であり、幾つかの実施形態に係るインペラを軸方向上流側から見ており、カバーの記載を省略している。なお、図3では、以下で説明するキャンバラインCLを記載することでブレード82の形状や位置を模式的に表している。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ブレード82は、軸線Oを中心としてディスク81から軸方向上流側にカバー83に向かって立ち上がるように、軸線Oの周方向、すなわち、インペラ8の回転方向Rに一定間隔をあけて複数配置されている。ここで、例えば図2に示すように、ブレード82のディスク81側でありディスク81に接続されている根元端部をディスク側端部821とし、ブレード82のカバー83側の先端部をカバー側端部822とする。幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ブレード82は、ディスク側端部821とカバー側端部822とで、異なる形状に湾曲している。即ち、ブレード82は、それぞれディスク81の径方向内側から外側に向かうにしたがって、回転方向Rの後方側に向かって三次元的に湾曲するように形成されている。具体的には、ブレード82は、ディスク側端部821の翼角βとカバー側端部822の翼角βとが異なる角度分布を有するように形成されている。そのため、ブレード82の前縁823から後縁824に向かうディスク側端部821の輪郭と、前縁823から後縁824に向かうカバー側端部822の輪郭とが異なっている。
【0023】
(翼角βについて)
幾つかの実施形態に係るインペラ8に関して、翼角βは、次のように定義される。
すなわち、翼角βとは、ブレード82の前縁823から後縁824にかけて、ブレード82の曲面形状を決定する角度である。具体的には、翼角βは、図3に示すように、ブレード82の厚み方向の中間を結ぶことで描かれる仮想曲線である中心曲線(キャンバライン)CLを、軸線O方向の一方側からディスク81に投影して投影曲線PLを描くことで導かれる。投影曲線PLにおける接線TLと、投影曲線PLと接線TLとの接点Tpと軸線Oとを結ぶ仮想直線VLと、が形成する角度のうち、仮想直線VLに対してディスク81の回転方向Rの後側(回転方向上流側)であって接点Tpよりも径方向外側に形成される角度を翼角βと定義する。
幾つかの実施形態に係るインペラ8に関して、翼角βは、接点Tpよりも径方向外側において、投影曲線PLにおける接線TLが仮想直線VLよりもディスク81の回転方向Rの後側に存在する場合に負の値となることとする。
幾つかの実施形態に係るインペラ8に関して、ディスク側端部821における翼角βを第1翼角β1、カバー側端部822における翼角βを第2翼角β2と定義する。
【0024】
図4Aは、幾つかの実施形態に係るインペラ8における第1翼角β1及び第2翼角β2の分布を示すグラフの一例である。
図4Bは、幾つかの実施形態に係るインペラ8における第1翼角β1と第2翼角β2との角度差(翼角差△β)の分布を示すグラフの一例である。
なお、図4Bに示した翼角差△βは、第1翼角β1の値から第2翼角β2の値を減じた値(β1-β2)である。
【0025】
図4A及び図4Bにおけるグラフの横軸は、ブレード82の前縁823の位置を0とし、ブレード82の後縁824の位置を1としたブレード82のキャンバラインCLに沿った無次元位置Mである。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、少なくとも、翼角差△βが最大となる無次元位置Mである翼角差最大位置Maの付近において、第1翼角β1は第2翼角β2よりも大きい。
【0026】
遠心圧縮機1のような回転機械では大容量化や寸法の小型化が要請されている。このような要請に応えるための手法として、例えばインペラ8の高周速化が挙げられる。
しかし、インペラ8の回転数を単に大きくするだけでは、インペラ8のカバー83に作用する遠心力が増大してカバー83が変形してしまう。遠心力でカバー83が変形するとカバー83には周方向応力が作用するため、カバー83の強度が問題となる。
ここで、カバー83に作用する遠心力は、径方向外側に向かうにつれて大きくなる。そのため、カバー83の内、径方向外側の領域における変形を抑制することが、カバー83に作用する周方向応力を抑制する上で特に有効となる。
【0027】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、カバー83は、上述したようにブレード82を介してディスク81に接続されている。したがって、遠心力でカバー83が変形するとブレード82も変形する。そのため、ブレード82の変形を抑制できるとカバー83の変形も抑制されて、カバー83の周方向応力を低減できる。
【0028】
そこで、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、第1翼角β1と第2翼角β2との角度差である翼角差△βが最大となる無次元位置Mは、無次元位置Mにおける0.5以上1以下の範囲に存在するように第1翼角β1及び第2翼角β2を設定した。そして、翼角差△βが最大となる無次元位置Mである翼角差最大位置Maにおいて、第1翼角β1が-10度以上0度以下となるように第1翼角β1を設定した。
【0029】
幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、翼角差△βの絶対値が大きくなるとブレード82が平板形状から捩じれるようにブレード82の厚さ方向に変形して、3次元的な形状が複雑化するので、ブレード82の厚さを厚くしなくてもブレード82の剛性を大きくすることができる。これにより、ブレード82の重量増を抑制しつつ、遠心力によるカバー83の変形を抑制できる。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、翼角差最大位置Maが無次元位置Mにおける0.5以上1以下の範囲に存在するようにすることで、径方向外側の領域におけるブレード82の剛性を大きくすることができる。そのため、径方向外側で大きくなる傾向にある遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できる。
【0030】
なお、第1翼角β1が0度に近づくほど、前縁823から後縁824にかけてのブレード82の延在方向が径方向に近づくため、カバー83から受ける遠心力によるブレード82の曲げに対するブレード82の根元付近の剛性、すなわちディスク側端部821付近の剛性が大きくなる。そこで、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、翼角差最大位置Maにおいて第1翼角β1が-10度以上となるようにしている。これにより、径方向外側で大きくなる傾向にある遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できる。
また、翼角差最大位置Maにおいて第1翼角β1が-10度以上となるようにすることで、従来のインペラに比べて翼角差△βを大きくすることができ、ブレード82の厚さを厚くしなくてもブレード82の剛性を大きくすることができる。
しかし、単に翼角差△βを大きくするだけなら、仮に第1翼角β1を正の値にすれば翼角差△βはより大きくなる。しかし、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、インペラ8の性能維持の観点から、第1翼角β1に上限値(0度)を設けている。
幾つかの実施形態に係るインペラ8によれば、遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できるので、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。これにより、インペラ8の高周速化に寄与でき、遠心圧縮機1の大容量化及び寸法の小型化に寄与できる。
【0031】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、例えば図4Bに示すように、翼角差△βを無次元位置Mによって異なるようにすることで、遠心力によるカバー83の変形でブレード82が変形する際に、ブレード82の変形状態が無次元位置Mに沿って一様ではなくなるため、ブレード82が変形し難くなるので、ブレード82の剛性が大きくなる。
【0032】
図4Aにおいて、前縁823(すなわち無次元位置Mが0となる位置)から後縁824(すなわち無次元位置Mが1となる位置)にかけて無次元位置Mの変化量に対する第2翼角β2の変化量が不変であると仮定したときの仮定角度Vaを細い破線で表す。
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、仮定角度Vaと第2翼角β2との差Δβ2aが最大となる無次元位置Mbは、無次元位置Mにおける0.5未満の範囲に存在するとよい。
例えば図4Aに示すように、第2翼角β2のグラフ線が上に凸になる形状を有する場合、仮定角度Vaと第2翼角β2との差Δβ2aが最大となる無次元位置Mbが翼角差最大位置Maから離れるほど翼角差△βを大きくし易い。
したがって、仮定角度Vaと第2翼角β2との差Δβ2aが最大となる無次元位置Mbが0.5以上の範囲に存在する場合と比べて、翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
なお、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、少なくとも仮定角度Vaと第2翼角β2との差が最大となる無次元位置Mbにおいて、仮定角度Vaよりも第2翼角β2の方が大きい。
【0033】
図4Aにおいて、仮定角度Vaと第2翼角β2との差Δβ2aを仮定角度Vaと前縁823(すなわち無次元位置Mが0となる位置)における第2翼角β2-0との差Δβ2bで除した値(Δβ2a/Δβ2b)は、翼角差最大位置Maにおいて、0.15以下であるとよい。
なお、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、少なくとも仮定角度Vaと第2翼角β2との差が最大となる無次元位置Mbにおいて、無次元位置Mが0となる位置における第2翼角β2-0よりも仮定角度Vaの方が大きく、仮定角度Vaよりも第2翼角β2の方が大きい。
これにより、翼角差△βを大きくすることができ、ブレード82の剛性を大きくすることができる。
【0034】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、第2翼角β2は、翼角差最大位置Maよりも後縁824側において無次元位置Mが後縁824(すなわち無次元位置Mが1となる位置)に近づくにつれて単調増加するとよい。
これにより、後縁824(すなわち無次元位置Mが1となる位置)における第2翼角β2よりも翼角差最大位置Maにおける第2翼角β2の方が小さくなるので、翼角差最大位置Maにおいて翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
【0035】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、第1翼角β1は、翼角差最大位置Maよりも後縁824側において無次元位置Mが後縁824(すなわち無次元位置Mが1となる位置)に近づくにつれて単調減少するとよい。
これにより、後縁824(すなわち無次元位置Mが1となる位置)における第1翼角β1よりも翼角差最大位置Maにおける第1翼角β1の方が大きくなるので、翼角差最大位置Maにおいて翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
【0036】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、第1翼角β1は、翼角差最大位置Maよりも前縁823側において、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて-30度よりも小さい値から漸増するとよい。
これにより、翼角差最大位置Maよりも前縁823側において前縁823(すなわち無次元位置Mが0となる位置)に近づくにつれて第1翼角β1を従来のインペラにおける第1翼角β1に近づけることができる。これにより、インペラ8の性能維持に寄与できる。
【0037】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、翼角差△βは、無次元位置Mが翼角差最大位置Maよりも前縁823側の範囲では、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて30度よりも小さい値から漸増し、翼角差最大位置Maよりも後縁824側の範囲では、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて30度よりも小さい値まで漸減するとよい。
これにより、翼角差最大位置Maよりも後縁824側において後縁824に近づくにつれて第1翼角β1を従来のインペラにおける第1翼角β1に近づけることができる。これにより、インペラ8の性能維持に寄与できる。
【0038】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、-50度以上-30度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内の少なくとも一部において、-50度以上-30度以下となる角度から、該角度よりも大きく且つ-30度以下となる角度まで、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増する角度分布を有しているとよい。
第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内の少なくとも一部において、-30度以上0度以下となる角度から、該角度よりも大きく且つ0度以下となる角度まで、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増する角度分布を有しているとよい。
第1翼角は、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内の少なくとも一部において、-30度以上0度以下となる角度から、該角度よりも小さく且つ-30度以上となる角度まで、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減する角度分布を有しているとよい。
【0039】
これにより、インペラ8の性能を維持しつつ、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。
【0040】
幾つかの実施形態に係るインペラ8では、翼角差△βは、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、30度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、翼角差△βは、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内の少なくとも一部において、30度以下となる角度差から、該角度差よりも大きく且つ30度以下となる角度差まで、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増する角度差の分布を有しているとよい。
翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが前縁823側から翼角差最大位置Maに近づくにつれて漸増し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内の少なくとも一部において、30度以上40度以下となる角度差から、該角度差よりも大きく且つ40度以下となる角度差まで、無次元位置Mが前縁823側から翼角差最大位置Maに近づくにつれて漸増する角度差の分布を有しているとよい。
翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが翼角差最大位置Maから後縁824側に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内の少なくとも一部において、30度以上40度以下となる角度差から、該角度差よりも小さく且つ30度以上となる角度差まで、無次元位置Mが翼角差最大位置Maから後縁824側に近づくにつれて漸減する角度差の分布を有しているとよい。
翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以下となる範囲を含んでいるとよい。すなわち、翼角差△βは、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内の少なくとも一部において、30度以下となる角度差から、該角度差よりも小さい角度差まで、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減する角度差の分布を有しているとよい。
【0041】
これにより、インペラ8の性能を維持しつつ、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。
【0042】
(前縁823の形状について)
例えば図2に示すように、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ブレード82の子午面において、前縁823におけるディスク81側の端部823aとカバー83側の端部823bとを結ぶ線分の延在方向と径方向との角度差Δθは、15度以下であるとよい。なお、上記角度差Δθが15度以下であれば、前縁823におけるディスク81側の端部823aは、前縁823におけるカバー83側の端部823bよりも軸方向上流側に位置していてもよく、下流側に位置していてもよく、軸方向における同じ位置に位置していてもよい。
これにより、ブレード82がディスク81とカバー83とを接続する範囲を軸方向上流側に大きくすることができるので、前縁823側におけるカバー83の剛性を大きくすることができる。
【0043】
(接続部材90について)
図5は、幾つかの実施形態に係るインペラ8について接続部材90を設けた例を示す図である。図5に示すように、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、軸方向において前縁823と少なくとも一部が離れて配置され、ディスク81とカバー83とを接続する接続部材90を備えていてもよい。
幾つかの実施形態係るインペラ8では、接続部材90は、前縁823よりも軸方向上流側に配置され、前縁823近傍におけるブレード82の厚さと同等の厚さを有する板状の部材であってもよい。
幾つかの実施形態係るインペラ8では、接続部材90の軸方向下流側の端部92は、前縁823と離間していてもよく、少なくとも一部で前縁823と接続されていてもよい。すなわち、接続部材90の配置数は、ブレード82の数と同数であるとよいが、ブレード82の数と異なってもよい。また、接続部材90は、ブレード82のキャンバラインCLを軸方向上流側に延長した仮想曲線上に配置されているとよいが、該仮想曲線から周方向に離れた位置に配置されていてもよい。
幾つかの実施形態係るインペラ8では、接続部材90を設けることで、接続部材90によってディスク81とカバー83とが接続されるので、前縁823側におけるカバー83の剛性を大きくすることができる。
【0044】
(ディスク81における軸方向上流側の径方向の肉厚について)
図6は、幾つかの実施形態に係るインペラ8のディスク81における軸方向上流側の径方向の肉厚について説明するための図である。
上述したように、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク81の径方向内側には、ディスク81を軸線O方向に貫く貫通孔813が形成されている。幾つかの実施形態に係るインペラ8では、ディスク81は、ディスク81における軸方向上流側の領域で貫通孔813を取り囲む円筒部815を有する。幾つかの実施形態に係るインペラ8では、円筒部815の肉厚として、例えば、軸方向におけるディスク81の前縁823側の端部についての径方向に沿った肉厚tを1としたときの、貫通孔813の半径rは、2以上5以下であるとよい。なお、従来のインペラでは、該インペラについての上記の肉厚tを1としたときに、該インペラについての上記の半径rは、一般的に5以上15以下となることが多い。
これにより、軸方向におけるディスク81の前縁823側の端部についての径方向に沿った肉厚tを従来のインペラよりも大きくすることができ、遠心力に対するディスク81の剛性を大きくすることができる。上述したように、カバー83は、ブレード82を介してディスク81に接続されている。したがって、上記肉厚及び上記半径rを上述のように設定することで、カバー83が遠心力によって変形することを抑制できる。
【0045】
以上説明したように、幾つかの実施形態に係るインペラ8では、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。さらに、幾つかの実施形態に係るインペラ8を備える遠心圧縮機1によれば、幾つかの実施形態に係るインペラ8を用いることで、遠心圧縮機1の大容量化及び寸法の小型化を図れる。
【0046】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、インペラ8が回転機械の一例として多段式の遠心圧縮機1に用いられる場合について説明した。しかし、上述した幾つかの実施形態に係るインペラ8は、単段式の圧縮機や、ラジアルタービン、ポンプ等、他の種類の回転機械に用いられるものであってもよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のインペラ8は、ディスク81と、径方向流路85を隔ててディスク81と軸方向に対向配置されるカバー83と、ディスク81とカバー83との間に配置されるブレード82と、を備える。ブレード82の前縁823の位置を0とし、ブレード82の後縁824の位置を1としたブレード82のキャンバラインCLに沿った無次元位置Mの内、ブレード82のディスク81側の端部(ディスク側端部821)における第1翼角β1と、ブレード82のカバー83側の端部(カバー側端部822)における第2翼角β2との角度差(翼角差△β)が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)は、0.5以上1以下の範囲に存在する。角度差(翼角差△β)が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)において、第1翼角β1は、-10度以上0度以下である。
【0048】
上記(1)の構成によるインペラ8によれば、翼角差△βが大きくなるとブレード82が平板形状から捩じれるようにブレード82の厚さ方向に変形して、3次元的な形状が複雑化するので、ブレード82の厚さを厚くしなくてもブレード82の剛性を大きくすることができる。これにより、ブレード82の重量増を抑制しつつ、遠心力によるカバー83の変形を抑制できる。
上記(1)の構成によるインペラ8では、翼角差最大位置Maが無次元位置Mにおける0.5以上1以下の範囲に存在するようにすることで、径方向外側の領域におけるブレード82の剛性を大きくすることができる。そのため、径方向外側で大きくなる傾向にある遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できる。
【0049】
なお、第1翼角β1が0度に近づくほど、前縁823から後縁824にかけてのブレード82の延在方向が径方向に近づくため、カバー83から受ける遠心力によるブレード82の曲げに対するブレード82の根元付近の剛性、すなわちディスク側端部821付近の剛性が大きくなる。そこで、上記(1)の構成によるインペラ8では、翼角差最大位置Maにおいて第1翼角β1が-10度以上となるようにしている。これにより、径方向外側で大きくなる傾向にある遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できる。
また、翼角差最大位置Maにおいて第1翼角β1が-10度以上となるようにすることで、従来のインペラに比べて翼角差△βを大きくすることができ、ブレード82の厚さを厚くしなくてもブレード82の剛性を大きくすることができる。
しかし、単に翼角差△βを大きくするだけなら、仮に第1翼角β1を正の値にすれば翼角差△βはより大きくなる。しかし、上記(1)の構成によるインペラ8では、インペラ8の性能維持の観点から、第1翼角β1に上限値(0度)を設けている。
上記(1)の構成によれば、遠心力によるカバー83の変形を効果的に抑制できるので、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。これにより、インペラ8の高周速化に寄与でき、遠心圧縮機1の大容量化及び寸法の小型化に寄与できる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前縁823から後縁824にかけて無次元位置Mの変化量に対する第2翼角β2の変化量が不変であると仮定したときの仮定角度Vaと第2翼角β2との差が最大となる無次元位置Mbは、無次元位置Mにおける0.5未満の範囲に存在するとよい。
【0051】
上記(2)の構成によれば、上記仮定角度Vaと第2翼角β2との差が最大となる無次元位置Mbが0.5以上の範囲に存在する場合と比べて、翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前縁823から後縁824にかけて無次元位置Mの変化量に対する第2翼角β2の変化量が不変であると仮定したときの仮定角度Vaと第2翼角β2との差Δβ2aを仮定角度Vaと前縁823における第2翼角β2-0との差Δβ2bで除した値は、上記角度差(翼角差△β)が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)において、0.15以下であるとよい。
【0053】
上記(3)の構成によれば、翼角差△βを大きくすることができ、ブレード82の剛性を大きくすることができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、第2翼角β2は、上記角度差(翼角差△β)が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)よりも後縁824側において無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて単調増加するとよい。
【0055】
上記(4)の構成によれば、後縁824における第2翼角β2よりも翼角差最大位置Maにおける第2翼角β2の方が小さくなるので、翼角差最大位置Maにおいて翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、第1翼角β1は、上記角度差が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)よりも後縁824側において無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて単調減少するとよい。
【0057】
上記(5)の構成によれば、後縁824における第1翼角β1よりも翼角差最大位置Maにおける第1翼角β1の方が大きくなるので、翼角差最大位置Maにおいて翼角差△βを大きくし易くなり、ブレード82の剛性を大きくし易くなる。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、第1翼角β1は、上記角度差が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)よりも前縁823側において、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて-30度よりも小さい値から漸増するとよい。
【0059】
上記(6)の構成によれば、翼角差最大位置Maよりも前縁823側において前縁823に近づくにつれて第1翼角β1を従来のインペラにおける第1翼角β1に近づけることができる。これにより、インペラ8の性能維持に寄与できる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、上記角度差(翼角差△β)は、無次元位置Mが上記角度差が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)よりも前縁823側の範囲では、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて30度よりも小さい値から漸増し、該位置よりも後縁824側の範囲では、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて30度よりも小さい値まで漸減するとよい。
【0061】
上記(7)の構成によれば、翼角差最大位置Maよりも後縁824側において後縁824に近づくにつれて第1翼角β1を従来のインペラにおける第1翼角β1に近づけることができる。これにより、インペラ8の性能維持に寄与できる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、-50度以上-30度以下となる範囲を含んでいるとよい。第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでいるとよい。第1翼角β1は、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減し、且つ、-30度以上0度以下となる範囲を含んでいるとよい。
【0063】
上記(8)の構成によれば、インペラ8の性能を維持しつつ、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。
【0064】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、上記角度差(翼角差△β)は、無次元位置Mにおける0以上0.4未満の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸増し、且つ、30度以下となる範囲を含んでいるとよい。上記角度差(翼角差△β)は、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが前縁823側から上記角度差が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)に近づくにつれて漸増し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでいるとよい。上記角度差(翼角差△β)は、無次元位置Mにおける0.4以上0.7以下の範囲内に、無次元位置Mが上記角度差が最大となる位置(翼角差最大位置Ma)から後縁824側に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以上40度以下となる範囲を含んでいるとよい。上記角度差(翼角差△β)は、無次元位置Mにおける0.7を超え1以下の範囲内に、無次元位置Mが後縁824に近づくにつれて漸減し、且つ、30度以下となる範囲を含んでいるとよい。
【0065】
上記(9)の構成によれば、インペラ8の性能を維持しつつ、遠心力によるカバー83の変形によってカバー83に作用する周方向応力を抑制できる。
【0066】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、ブレード82の子午面において、前縁823におけるディスク81側の端部823aとカバー83側の端部823bとを結ぶ線分の延在方向と径方向との角度差Δθは、15度以下であるとよい。
【0067】
上記(10)の構成によれば、ブレード82がディスク81とカバー83とを接続する範囲を前縁823側(軸方向上流側)に大きくすることができるので、前縁823側におけるカバー83の剛性を大きくすることができる。
【0068】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、軸方向において前縁823と少なくとも一部が離れて配置され、ディスク81とカバー83とを接続する接続部材90、をさらに備えるとよい。
【0069】
上記(11)の構成によれば、接続部材90によってディスク81とカバー83とが接続されるので、前縁823側におけるカバー83の剛性を大きくすることができる。
【0070】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかの構成において、ディスク81は、軸方向に延在する貫通孔813が形成されている。軸方向におけるディスク81の前縁823側の端部についての径方向に沿った肉厚tを1としたときの、貫通孔813の半径rは、2以上5以下であるとよい。
【0071】
上記(12)の構成によれば、軸方向におけるディスク81の前縁823側の端部についての径方向に沿った肉厚tを従来のインペラよりも大きくすることができ、遠心力に対するディスク81の剛性を大きくすることができる。上述したように、カバー83は、ブレード82を介してディスク81に接続されている。したがって、上記(12)の構成によれば、カバー83が遠心力によって変形することを抑制できる。
【0072】
(13)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械は、上記(1)乃至(12)の何れかの構成のインペラ8を備える。
【0073】
上記(13)の構成によれば、回転機械の大容量化及び寸法の小型化に寄与できる。
【符号の説明】
【0074】
1 遠心圧縮機
8 インペラ
81 ディスク
82 ブレード
83 カバー
85 径方向流路
90 接続部材
813 貫通孔
823 前縁
824 後縁
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6