(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】運搬体
(51)【国際特許分類】
B65D 5/462 20060101AFI20240313BHJP
B65D 67/00 20060101ALI20240313BHJP
B65D 71/44 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B65D5/462 126
B65D67/00 E
B65D71/44
(21)【出願番号】P 2020215163
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000106715
【氏名又は名称】ザ・パック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石倉 友里恵
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-41216(JP,U)
【文献】実開平6-51119(JP,U)
【文献】実開昭58-133516(JP,U)
【文献】実開昭63-183020(JP,U)
【文献】実開昭59-129786(JP,U)
【文献】中国実用新案第203581520(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/462
B65D 67/00
B65D 71/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物の底部を支持する底支持部と、前記底支持部の前後左右の各端縁から上方に向かって起立状に折り返し可能に配備された前支持部、後支持部、左支持部、及び右支持部と、前記前支持部、後支持部、左支持部、及び右支持部の上縁に内側に折り返し可能に設けられた4つのフラップを組み合わることで上部開口を開閉可能な天板と、を備えた運搬体であって、
前記4つのフラップのうち、前記前支持部及び後支持部の上縁に設けられる前フラップ及び後フラップは、下端側同士が離間した状態で上端側同士が互いに面状態で重なり合うように折り返されると共に、重ね合わされた上端側の左右端部に左右方向に突出した左右一対の係止片を有しており、
前記4つのフラップのうち、前記左支持部及び右支持部の上縁に設けられる左フラップ及び右フラップは、互いに近接し合うように傾斜状に折り曲げられると共に、前記係止片を差し込んで係止するスリットを有しており、
前記左右それぞれのフラップは、互いに近接し合うように折り重ねることで前記スリットが形成された部分が二重状態とされており、
前記スリットは、内側に配備されたフラップに形成された内側スリット孔と、外側に配備されたフラップに形成された外側スリット孔とを連通状に重ね合わされることで構成されており、
前記内側スリット孔の上端には、前記外側スリット孔を通って外側に折り返し可能とされた舌片が形成されている
ことを特徴とする運搬体。
【請求項2】
前記舌片の前後方向に沿った横幅が、前記内側スリット孔の前後方向に沿った横幅と等しい寸法とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の運搬体。
【請求項3】
前記内側スリット孔に形成された前記舌片の前後方向に沿った横幅をa(mm)、前記外側スリット孔の前後方向に沿った横幅をb(mm)、前後フラップの各シート厚みをt(mm)とした場合に、前記舌片の横幅a(mm)と、前記外側スリット孔の横幅b(mm)との間に、式(1)の関係が成立する
ことを特徴とする請求項2に記載の運搬体。
b―(t×2×2)<a<b―(t×1.2×2) ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋菓子、ピザ、寿司などの被運搬物をそのまま収容して手提げ状態で運搬、あるいは箱などに収容して手提げ状態で運搬する運搬体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洋菓子店などでは購入済のケーキなどを運ぶのにケーキ箱などの運搬体が用いられている。また、寿司などを持ち帰ったりデリバリーしたりする場合には、被運搬物が収容された容器を包んで手提げで運搬する運搬体が用いられている。これらの運搬体は、上部に取手を備えており、手提げ状態での運搬に適した構造となっている。このような運搬体としては、特許文献1~特許文献4のようなものが知られている。
【0003】
特許文献1には、底板及び周壁と開閉可能な蓋を構成する天板によって箱体を構成し、上記天板の開閉端に互いに重なり合って起立する把手を設け、該把手の端部にフック部を形成するとともに、上記周壁側には把手の起立状態で上記フック部に係脱可能に挿通係止する係止孔を形成した舌状の係止板を設けた包装箱において、上記係止板の中央部上方であって係止孔の上端側にはフック部を挿通せしめた時に先端がフック部の谷部内に当接することによって係止板の外側への揺動を規制する舌状の係止片を折り曲げ揺動可能に設けてなる把手係止構造を備えた包装箱が開示されている。
【0004】
特許文献2には、正方形又は長方形の底板と、相対する左右の側壁と前後壁を有し、該前後壁上端には蓋を兼ねた前天板及び後天板を折り曲げ可能に連接し、該前後天板先端にはそれぞれ折り曲げ起伏可能な把手を連接するとともに、左右側壁の先端には、閉蓋時に前後に重ね合わせた起立状態の把手の左右両端部を挿通係止して、把手を左右側壁側に係止固定する舌状の係止板を折り曲げ可能に連接してなる把手付き折り畳み式紙箱において、係止板に、前後に重ね合わせた起立状態の把手の両端部を挿通可能にする左右又は片方に開く扉を有する係止窓を設け、該左右又は片方の扉を上下方向に略半分位で上扉と下扉に分断し、一方、少なくとも係止窓の上扉が付いている側に挿通される把手端部において、把手端部の凹部から係止板折り曲げ支点方向に向けて、本紙箱に使用する紙厚み以上の幅で、かつ上扉の下端までが嵌るに足る長さを持った上扉係止溝を設けた事を特徴とする把手付き折り畳み式紙箱が開示されている。
【0005】
特許文献3には、係止片を両端部の両側に延設した主帯状体と、この主帯状体の中央に位置する主帯状体中央部の両側に平行に、かつ、前記主帯状体中央部に台形状の連結片をそれぞれ介して副帯状体中央部が連設された2個の副帯状体を設けた1枚の厚板からなり、前記主帯状体は、方形状の前記主帯状体中央部を底部とし、該主帯状体中央部を除いた両側部分を互いに対向するように折曲して前記両端部を突き合わせた把手部が形成されており、前記副帯状体は、副帯状体中央部の両側に重合部及び掛着部を分画して設けてあり、前記連結片の下底は前記主帯状体中央部の他の両側部分との折り目を形成するとともに、前記連結片の上底は前記主帯状体とほぼ45°傾斜して前記副帯状体中央部の斜辺との折り目を形成し、前記連結片の下底と上底ならびに前記重合部の折り曲げにより、前記主帯状体に前記副帯状体をほぼ直交するように配位させ、前記重合部をそれぞれ前記主帯状体中央部に重ねるとともに、前記掛着部を前記把手部の両側に位置する前記係止片に係止させたことを特徴とする携帯用組立式包装箱が開示されている。
【0006】
特許文献4には、手提孔を有する手提部を両端に突設してなる帯板と、両端部に切溝を有する帯板とを夫々並列し、帯板の中央下端部にV状突出部を突設すると共に帯板の中央上端部にこの突出部に対応するV状切欠部を穿設し、更にこの切欠部と突出部との一辺を斜折曲線を介して連結したことを特徴とする手提バンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3339576号公報
【文献】特開2007-084090号公報
【文献】実公平07-023375号公報
【文献】実公昭62-029414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1~特許文献4の運搬体は、上部に設けられるフラップのうち、一方のフラップに係止片、もう一方のフラップにスリットを設け、係止片をスリットに掛け止めすることで箱の上部開口を閉鎖可能となっている。
しかし、このような構造であると、被運搬物の重量が大きくなると、係止片を介してスリットに大きな力が加わる場合があり、スリットの上端が上方に裂ける不具合を起こしやすくなる。運搬体は一般に段ボールやボール紙のような紙材で形成されていることが多く、被運搬物として重量が大きな寿司のパックなどを運搬する際には紙材の破けを起こしやすくなる可能性がある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、フラップ同士の係合箇所で破れが生じることを防止して、重量がある被運搬物でも運搬することが可能となる運搬体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の運搬体は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の運搬体は、被運搬物の底部を支持する底支持部と、前記底支持部の前後左右の各端縁から上方に向かって起立状に折り返し可能に配備された前支持部、後支持部、左支持部、及び右支持部と、前記前支持部、後支持部、左支持部、及び右支持部の上縁に内側に折り返し可能に設けられた4つのフラップを組み合わることで上部開口を開閉可能な天板と、を備えた運搬体であって、前記4つのフラップのうち、前記前支持部及び後支持部の上縁に設けられる前フラップ及び後フラップは、下端側同士が離間した状態で上端側同士が互いに面状態で重なり合うように折り返されると共に、重ね合わされた上端側の左右端部に左右方向に突出した左右一対の係止片を有しており、前記4つのフラップのうち、前記左支持部及び右支持部の上縁に設けられる左フラップ及び右フラップは、互いに近接し合うように傾斜状に折り曲げられると共に、前記係止片を差し込んで係止するスリットを有しており、前記左右それぞれのフラップは、互いに近接し合うように折り重ねることで前記スリットが形成された部分が二重状態とされており、前記スリットは、内側に配備されたフラップに形成された内側スリット孔と、外側に配備されたフラップに形成された外側スリット孔とを連通状に重ね合わされることで構成されており、前記内側スリット孔の上端には、前記外側スリット孔を通って外側に折り返し可能とされた舌片が形成されていることを特徴とする。
【0011】
なお、好ましくは、前記舌片の前後方向に沿った横幅が、前記内側スリット孔の前後方向に沿った横幅と等しい寸法とされているとよい。
なお、好ましくは、前記内側スリット孔に形成された前記舌片の前後方向に沿った横幅をa(mm)、前記外側スリット孔の前後方向に沿った横幅をb(mm)、前後フラップの各シート厚みをt(mm)とした場合に、前記舌片の横幅a(mm)と、前記外側スリット孔の横幅b(mm)との間に、式(1)の関係が成立するとよい。
【0012】
b―(t×2×2)<a<b―(t×1.2×2) ・・・(1)
【発明の効果】
【0013】
本発明の運搬体によれば、フラップ同士の係合箇所で破れが生じることを防止して、重量がある被運搬物でも運搬することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】前方やや上側から見た場合の本実施形態の運搬体を示した図である。
【
図4】側方やや上側から見た場合の本実施形態の運搬体を示した図である。
【
図5】フラップ同士の係合箇所を拡大して示した図である。
【
図6】舌片の横幅aと外側スリット孔の横幅bとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本実施形態]
以下、本発明の運搬体1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
本発明の運搬体1は、ケーキやプリンなどの洋菓子を持ち運ぶケーキ箱のように、食品などの被運搬物を手提げで持ち運ぶ際に用いられる。また、本発明の運搬体1には、ピザ、寿司などのように持ち帰りやデリバリー販売を行っている業界で、被運搬物が入ったトレーなどを包んで持ち運ぶ際にも用いられる。例えば、この「トレーなどを包んで持ち運ぶ運搬体1」とは、上述した特許文献4(実公昭62-029414号公報)の手提バンドなどのように、少なくとも2本の帯板(後述する底・前後左右の支持部に相当する)を交差状に設け、交差した部分(後述する底支持部に相当する)の上にトレーなどを配備し、帯状の支持部の端部を上部で寄せ合わせて持ち手として運搬を行うような運搬体を意味する。
【0016】
以降では、一般にケーキを持ち運ぶケーキ箱に用いられる例を挙げて、本発明の運搬体1の実施形態を説明する。
図1は、ケーキ箱の用途に用いられる本実施形態の運搬体1の外観を示した斜視図である。なお、以降の説明では、特に断らない限り、組立状態の運搬体1の上下左右前後を基準として、運搬体1を説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の運搬体1は、被運搬物の底部を支持する底支持部2と、底支持部2の前後左右の各端縁から上方に向かって起立状に折り返し可能に配備された前支持部3、後支持部4、左支持部5、及び右支持部6と、前支持部3、後支持部4、左支持部5、及び右支持部6の上縁に内側に折り返し可能に設けられた4つのフラップ7F、7B、7L、7Rを組み合わることで上部開口8を開閉可能な天板9と、を備えている。つまり、本実施形態の運搬体1は、底支持部2、前支持部3、後支持部4、左支持部5、及び右支持部6により上方に向かって開口した有底箱状に形成されている。そして、上方に向かって開口した運搬体の上部開口8は、4つのフラップ7F、7B、7L、7Rを組み合わせた天板9で閉鎖可能となっている。
【0018】
また、上述した天板9を構成するフラップには、前支持部3の上縁に設けられる前フラップ7F、後支持部4の上縁に設けられる後フラップ7B、左支持部5の上縁に設けられる左フラップ7L、及び右支持部6の上縁に設けられる右フラップ7Rの4枚がある。
以降では、本実施形態の運搬体1を構成する底支持部2、前支持部3、後支持部4、左支持部5、右支持部6、及び天板9、更には天板9を構成する4枚のフラップ7F、7B、7L、7Rについて詳しく説明する。
【0019】
底支持部2は、被運搬物の底部を支持する部材であり、運搬体1の底側に設けられている。底支持部2は、底側前フラップ10F、底側後フラップ10B、底側左フラップ10L、及び底側右フラップ10Rの4枚のフラップを組み合わせることで、略平面状に形成されている。
具体的には、底側前フラップ10Fは、前支持部3の下縁に設けられた罫線Aを境に折り返し可能に設けられており、底面の前側約半分を被覆可能な略長方形の板状に形成されている。
【0020】
底側左フラップ10Lは、左支持部5の下縁に設けられた罫線Bを境に折り返し可能に設けられている。底側左フラップ10Lの後側には、底側左フラップ10Lを底側後フラップ10Bの下面に貼り着けるための左貼付片11Lが設けられており、左貼付片11Lを底側後フラップ10Bの左側下面に粘着のりやテープ類などを用いて貼り付けることで、フラップ同士を固定できるようになっている。
【0021】
底側後フラップ10Bは、後支持部4の下縁に設けられた罫線Cを境に折り返し可能に設けられており、底支持部2を全面に亘って被覆可能な略長方形の板状に形成されている。
底側右フラップ10Rは、右支持部6の下縁に設けられた罫線Dを境に折り返し可能に設けられている。底側右フラップ10Rの前側には、底側右フラップ10Rを底側前フラップ10Fの下面に貼り着けるための右貼付片11Rが設けられており、右貼付片11Rを底側前フラップ10Fの右側下面に粘着のりやテープ類などを用いて貼り付けることで、フラップ同士を固定できるようになっている。
【0022】
前支持部3は底支持部2の前縁(運搬体1の前側)に起立状に配備され、後支持部4は底支持部2の後縁(運搬体1の後側)に起立状に配備されていて、前後方向に等間隔をあけて互いに平行に設けられている。前支持部3及び後支持部4は、いずれも上下方向の寸法に比べて左右方向の寸法の方が長い横長の長方形に形成されている。
左支持部5は底支持部2の左端(運搬体1の左側)に起立状に配備され、右支持部6は底支持部2の右端(運搬体1の右側)に起立状に配備されている。左支持部5及び右支持部6は、いずれも上下方向の寸法に比べて前後方向の寸法の方が長い横長の長方形の板状に形成されている。なお、本実施形態では、運搬体1に、前後方向に比べて左右方向の方が長い箱状のものを例示しているので、左支持部5及び右支持部6の横寸法は前支持部3及び後支持部4の横寸法より短尺とされている。
【0023】
前支持部3と右支持部6との間には上下方向に伸びる罫線Eが設けられ、この罫線Eを境に前支持部3と右支持部6とは折り返し可能に連結されている。また、右支持部6と後支持部4との間にも上下方向に伸びる罫線Fが設けられ、この罫線Fを境に右支持部6と後支持部4とは折り返し可能に連結されている。さらに、後支持部4と左支持部5との間にも上下方向に伸びる罫線Gが設けられ、この罫線Gを境に後支持部4と左支持部5とは折り返し可能に連結されている。
【0024】
そして、前支持部3の左縁には、左支持部5に前支持部3を貼り付けるための支持部貼付片12が、上下方向に伸びる罫線Hを境に折り返し自在に設けられている。この支持部貼付片12を左支持部5の前側内面に粘着のりやテープ類などを用いて貼り付けることで、前後左右の4つの支持部3、4、5、6で被運搬物の周囲を隙間なく取り囲むことが可能とされている。
【0025】
上述した前支持部3、後支持部4、左支持部5、及び右支持部6を底支持部2の四辺に配設することで、本実施形態の運搬体1の内部には周囲が起立した壁面で囲まれた内部空間が形成される。そして、この内部空間に被運搬物が収容可能となっている。なお、内部空間の上部は上方に向かって開口した上部開口8となっており、上部開口8は天板9により閉鎖可能となっている。
【0026】
上述した天板9は、前後左右の4枚のフラップ、すなわち前フラップ7F、後フラップ7B、左フラップ7L、及び右フラップ7Rを、ちょうど寄棟造りの屋根のように互いが近接し合うように傾けた状態で組み合わすことで、内部空間の上部開口8を閉鎖可能となっている。
図2に示すように、前フラップ7Fは、前支持部3の上縁に連結される長方形状の下片7Fdと、下片7Fdの上側に設けられる台形状の上片7Fuと、上片7Fuの左右両端に設けられた係止片13と、を有している。この下片7Fdと上片7Fuとの間には罫線Iが水平方向に形成されており、下片7Fdに対して上片7Fuは前後方向に折り返し自在とされている。
【0027】
一方、後フラップ7Bも、前フラップ7Fと同様の構造に形成されており、下片7Bd、上片7Bu、係止片13を有していて、下片7Bdに対して上片7Buが罫線Jを介して前後方向に折り返し自在とされている。
下片7Fd、7Bdは、前支持部3や後支持部4とほぼ同じ横幅の略長方形状に形成されており、上部開口8のうち前側半分または後側半分を被覆可能とされている。一方、上片7Fu、7Buは、上方に向かうにつれて先細りとなるような台形形状に形成されており、左右両側の辺は傾斜している。
【0028】
それゆえ、
図3及び
図4に示すように天板9として組み上げる場合には、前支持部3や後支持部4に対して前フラップ7Fや後フラップ7Bの下片7Fd、7Bdをまず水平方向を向くように略90度折り曲げる。そうすると、下片7Fd、7Bdは上部開口8のうちそれぞれ前後半分を被覆するだけであるため、折り曲げられた下片7Fd、7Bdの先が上部開口8の前後方向の中途側で会合することになる。
【0029】
次に、前フラップ7Fや後フラップ7Bの下片7Fd、7Bdに対して上片7Fu、7
Buを上方に向かって略90度折り曲げる。そうすると、上片7Fu、7Buは、いずれも(下片7Fd、7Bdに対して)垂直に起立した状態で、前後に二重に重なり合うようになる。
なお、後フラップ7Bの上片7Buには、左右方向の中途側に、扁平なU字状の切り込みが形成されており、U字状に切り込まれた部分を側方(図面2では図面奥方向)に折り曲げると、運搬体の持ち運びを可能とする把手を形成可能となっている。
【0030】
また、前フラップ7Fの上片7Fuには、左右方向の中途側に、上方に向かって膨らむ横長の逆U字状の切り込みが形成されている。この切り込みで囲まれた部分は、切り込みにより上片7Fuから切り離された状態となっている。また、切り込みで囲まれた部分には罫線Iが全く設けられておらず、ちょうど下片7Fdを上片7Fu側に伸ばした状態となっている。そのため、罫線Iを境に上片7Fuを折り曲げても、切り込みで囲まれた部分は上片7Fuと一緒に折り曲げることはなく、下片7Fdを水平に後方まで伸ばした状態となるため、切り込みで囲まれた部分を粘着のりやテープ類などを用いて(後フラップ7Bの下片7Bdに)貼り付けることで、前フラップ7Fと後フラップ7Bの下片同士7Fd、7Bdを水平方向に連ねた状態で固定可能となっている。
【0031】
一方、前後方向に重なり合った上片7Fu、7Buの左右両側の辺は、左右方向の外側から内側に向かって傾斜している。そして、この傾斜した辺に、係止片13が形成されている。
係止片13は、上片Fu、7Buの左右両側の辺から外方上側に遠ざかるように突出した角状の板部材である。係止片13の上辺13aは、後述するスリット14への差し込みを容易にするように、水平方向に沿うように形成されている。さらに、上片7Fu、7Buの傾斜した辺に接する係止片13の上端部には、上方から下方に向かってU字状に凹むガイド部が形成されており、このガイド部にスリット14の上側の孔縁を噛み込ませるようにすることで、スリット14から係止片13が抜け難くなっている。
【0032】
図2に示すように、左フラップ7Lは、左支持部5の上縁に連結される台形形状の下片7Ldと、下片7Ldの上側に設けられる多角形状(下隅切欠四角形状)の上片7Luと、を有している。左フラップ7Lの上片7Luと下片7Ldとの間には水平方向に沿って罫線Kが設けられており、この罫線Kを境に左フラップ7Lの上片7Luは下片7Ldに対して上下方向あるいは左右方向に折り返し自在とされている。つまり、左フラップ7Lの上片7Luと下片7Ldとは、互いに近接し合うように、言い換えれば右方上側に向かって傾斜状に折り曲げた下片7Ldの右面に向かって、上片7Luを右方から近接させるように折り重ね可能となっている。
【0033】
また、右フラップ7Rは、左フラップ7Lと同様に、右支持部6の上縁に連結される台形形状の下片7Rdと、下片7Rdの上側に設けられる多角形状(下隅切欠四角形状)の上片7Ruと、を有している。右フラップ7Rの上片7Ruと下片7Rdとの間にも水平方向に沿って罫線Lが設けられており、この罫線Lを境に右フラップ7Rの上片7Ruは下片7Rdに対して上下方向あるいは左右方向に折り返し自在とされている。つまり、右フラップ7Rの上片7Ruと下片7Rdとは、互いに近接し合うように、言い換えれば左方上側に向かって傾斜状に折り曲げた下片7Rdの左面に向かって、上片7Ruを左方から近接させるように折り重ね可能となっている。
【0034】
具体的には、左右フラップ7L、7Rの下片7Ld、7Rdは、上方に向かうにつれて先細りとなるような台形形状に形成されている。詳しく言えば、下片Ld、7Rdの左右両側の辺は水平方向に対して傾斜角度が略45度となるように傾斜しており、前フラップ7Fや後フラップ7Bの上片7Fu、7Buの左右両側の辺に対応して傾斜するものとなっている。
【0035】
左右フラップ7L、7Rの上片7Lu、7Ruは、罫線K、Lを境に上述した下片7Ld、7Rdに連接して設けられており、その形状は左右下隅を直線状に切り落としたような四角形(下隅切欠四角形)あるいは多角形とされている。そして、上片7Lu、7Ruの左右両側の辺も、水平方向に対して略45度の傾斜角度で傾斜しており、罫線K、Lを境に折り返すと下片7Ld、7Rdの左右両側の辺と重なり合うようになっている。
【0036】
上述した左右フラップ7L、7Rの前後方向の中央側には、前後フラップ7F、7Bの係止片13を差し込み可能なスリット14が形成されている。具体的には、このスリット14は、上下方向に沿って長穴状に形成されており、上述した係止片13を2枚重ね合わせた状態で差し込み可能とされている。そして、このスリット14は、左右フラップ7L、7Rのいずれも、内側に配備されたフラップ(上片7Lu、7Ru)に形成された内側スリット孔15と、外側に配備されたフラップ(下片7Ld、7Rd)に形成された外側スリット孔16とを連通状に重ね合わして構成されている。
【0037】
上述した外側スリット孔16は、左右フラップ7L、7Rの下片7Ld、7Rdに、上下方向に長い溝を形成したものとなっている。外側スリット孔16の上側の孔縁は、上方に向かって膨らんだ半円状に形成されている。また、外側スリット孔16の下側の孔縁は、水平方向に沿った直線状に形成されており、外側スリット孔16は、下片7Ld、7Rdに縦長のかまぼこ形状の開口を設けたものとされている。そして、外側スリット孔16の開口縁には、開口を閉鎖可能な左右の開口扉17が両開き(観音開き)可能に設けられている。
【0038】
一方、内側スリット孔15は、外側スリット孔16と同様に、左右フラップ7L、7Rの上片7Lu、7Ruに、上下方向に長い溝として形成されている。
図2において展開状態で示すように、内側スリット孔15の上側の孔縁は、外側スリット孔16の場合と同様に上方に向かって膨らんだ半円状に形成されている。しかし、内側スリット孔15の下側の孔縁は、外側スリット孔16の場合よりも上方に位置すると共に、略H字状に切り込まれたものとなっており、このような切り込みにより舌片18を形成したものとなっている。
【0039】
ところで、本発明の運搬体1は、連通状に重ね合わせた組立状態における内側スリット孔15の上端(
図2の展開状態では下端)に舌片18を備えており、この舌片18によりスリット14の破れが抑制可能となっていることを特徴としている。
具体的には、
図2に示すような展開状態とされた内側スリット孔15の下側の孔縁に、上述したH字状の切り込みを形成すると、舌片18は紙面貫通方向に(
図2で図の奥に向かって)に折り曲げ可能となる。そして、
図1に示すように組立状態とすると、内側スリット孔15と、外側スリット孔16とが連通状に重ね合わされるため、この舌片18を内側スリット孔15の上側の孔端から、外側スリット孔16を通って外側に折り返すことが可能となり、スリット14の破れが抑制可能となっている。
【0040】
例えば、左フラップ7Lのスリット14に係止片13を右から左に向かって(内側から外側に向かって)差し込む場合を考える。
このとき、係止片13の上辺は水平に沿った直線状に形成されており、係止片13をスリット14にスムーズに差し込みつつ、係止片13が内側スリット孔15の上端の孔縁に設けられた舌片18を押圧し、外側スリット孔16を通って外側スリット孔16の外側(左方)に折り返すことが可能となる。
【0041】
なお、まず、左フラップ7Lの上片7Luに形成された内側スリット孔15に対して、この内側スリット孔15の上端の孔縁に設けられた舌片18を、予め外側スリット孔16を通って外側スリット孔16の外側(左方)に折り返しておき、次に、スリット14に係止片13を右から左に向かって差し込んでもいい。
スリット14に係止片13が完全に嵌まり込むと、係止片13のガイド部にスリット14の上側の孔端が押し込まれ、係止片13がスリット14に係合される。また、外側スリット孔16の孔縁に設けられた左右の開口扉17に舌片18が接触するため、外側に飛び出た舌片18は戻りにくくまた左右にも寄りがたくなり、外側に飛び出た状態に維持される。
【0042】
例えば、被運搬物の重量が係止片13に荷重として加わっても、舌片18を介して係止片13の荷重がスリット14の孔端に均等に伝達される。そのため、スリット14の孔端の一部に大きな荷重が加わることがなくなり、スリット14の破れを防止することが可能となる。
また、舌片18が係止片13のガイド部とスリット14(の孔端)との間に介在すると
、舌片18が邪魔になって係止片13がスリット14から外れにくくなる。つまり、舌片18は係止片13の抜け止めをも可能としている。
【0043】
ところで、係合片13のスリット差し込みという動作のみで舌片の折り返しを可能にし、また舌片18の破れ抑制効果を最大限に発揮するためには、舌片18の寸法(横幅)と、スリット14の寸法(横幅)との間の関係を、最適な寸法比に規定するのが望ましい。
具体的には、舌片18の前後方向に沿った横幅が、内側スリット孔15の前後方向に沿った横幅と等しい寸法とされているとよい。このようにすれば内側スリット孔15を切り込むのに合わせて舌片18を形成することができ、舌片18を簡単に設けることが可能となる。
【0044】
そして、
図6に示すように、内側スリット孔15に形成された舌片18の前後方向に沿った横幅をa、外側スリット孔16の前後方向に沿った横幅をb、またフラップ(係止片13が形成される前後フラップ)のシート厚みをt(フラップが紙材で形成される場合は紙厚)、とした場合に、舌片18の横幅aと、外側スリット孔16の横幅bとの間に、式(1)の関係が成立するとよい。
「数1」
b―(t×2×2)<a<b―(t×1.2×2) ・・・(1)
なお、式(1)のa、b、t(紙厚)の単位はすべてmmであり、またt(紙厚)は小数点以下第三位を四捨五入したものであり、それ以外の数値はいずれも小数点以下第二位を四捨五入したものとなっている。
【0045】
式(1)の関係が成立する根拠は、以下の通りである。
坪量が異なる2種類の用紙、言い換えれば紙厚が異なる2種類の用紙を用意し、これらの用紙から
図2に示すような展開図の型紙を切り出す。そして、切り出した運搬体のサンプルの左右フラップ7L、7Rに、表1に示すような寸法のスリット14を形成する。なお、表1の例では内側スリット孔15の横幅は舌片幅aと同じである。
【0046】
【0047】
なお、表1の「a」は、舌片18の横幅、言い換えれば内側スリット孔15の水平方向に沿った開口幅を意味する。また、「b」は、外側スリット孔16の水平方向に沿った開口幅を意味する。さらに、「α」は、以下の式(2)で示される係数であり、表1の例では1.2~2.2の範囲に設定している。なお、いずれの評価例も舌片の長さc(縦幅)は7mmであり、また内側スリット孔15の長さdは28mmである。
【0048】
α=(b-a)/(紙厚×2) ・・・(2)
また、「舌片の貫通・重合状態」は、係合片13の差し込み動作により舌片18が外側スリット孔16を確実に貫通し、スリット14の上側の孔端に確実に重合されているかどうかを評価したものである。舌片の先端の片角が貫通していない状態や、舌片の先端が両
角とも貫通していない状態(舌片の胴部だけが貫通している状態)、さらには舌片は全部貫通しているが、片側に寄ってしまい、折り返し重合ができていない状態の場合は、「舌片の貫通・重合状態」の評価を×とし、舌片18が外側スリット孔16を確実に貫通し、スリット14の上側の孔端に確実に重合されている場合を、○の評価とした。
【0049】
表1の結果を見ると、αが1.2の場合は「舌片18の貫通・重合状態」の評価が×となるが、αが1.3の場合は「舌片18の貫通・重合状態」の評価が○となる。また、αが1.8の場合は「舌片18の貫通・重合状態」の評価が○となるが、αが2、2.2の場合は「舌片18の貫通・重合状態」の評価が×となる。このことから、αを1.2より大きく、且つ、2.0より小さくすることで、係合片13の差し込みという動作のみで舌片18をスリット14の上側の孔端に確実に重合させるよう折り返すことが可能と判断される。
【0050】
また、紙厚0.45mmの紙材を用いてスリット14を形成した場合に、ケーキ箱内部に4kgの重りを入れて、運搬を想定した振動を与える耐荷重試験を行うと、舌片18を設けない場合はスリット14上部に裂けが生じるが、横幅6mmの舌片18を設けた場合にはスリット14上部に裂けが発生しないことを、出願人は確認している。
このことから、上述した式(1)を満足する寸法に舌片18や外側スリット孔16を形成すれば、係合片13の差し込みという動作のみで舌片18を係止片13とスリット14との間に間違いなく配備可能となり、スリット14の破れをより確実に防止することが可能となると判断される。
【0051】
また、舌片の長さc(縦幅)は、フラップ(外側スリット孔16が形成されるフラップ)のシート厚みをt1(フラップが紙材で形成される場合は紙厚であり、また運搬体が一枚のブランクで形成される場合はt1=tである)、とした場合に、外側スリット孔の上端と重合させるためにはcはt1以上である必要があるが、より確実に重合させるためには、舌片の長さc、フラップのシート厚みt1、内側スリット孔15の長さdとの間で、式(3)の関係が成立するとよい。
【0052】
t1×4+3<c<d÷3 ・・・(3)
なお、式(3)のc、t1(紙厚)、dの単位はすべてmmであり、またt1(紙厚)は小数点以下第三位を四捨五入したものであり、それ以外の数値はいずれも小数点以下第二位を四捨五入したものとなっている。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、洋菓子などの被運搬物を収容する箱状の運搬体1を例示して、本発明の運搬体1を説明した。しかし、本発明の運搬体1は、被運搬物を収容する箱、コンテナ、ケースなどを外から覆うようにして支持しつつ手提げ状態で運搬するものであっても良い。
具体例を挙げれば、ピザが入ったケース、寿司のお持ち帰りパック、ファーストフード、コーヒーショップ、弁当屋などのデリバリーパックなどを被運搬物とし、細長い帯状の支持部3、4、5、6を前後左右にタスキ状に配して、これらの被運搬物を底側から支えつつ手提げで運搬する運搬体1を用いても良い。
【0054】
また上述の実施例では、上片7Lu、7Ruを内側に、下片7Ld、7Rdを外側に配備するよう構成しているが、内外を逆に構成するようにしてもよい。即ち、内側スリット孔を下片7Ld、7Rdに、外側スリット孔を上片7Lu、7Ruに形成し、各フラップを(罫線K、Lで)上述の実施例とは逆に折り返すことで、内外を逆に構成できる。この場合、舌片は下片7Ld、7Rdに形成された内側スリット孔の上端(罫線K,L側の端部)の孔縁に設けられる。
【0055】
また、上述の実施例では、段ボールやボール紙といった紙材を例示しているが、その他シート材も利用可能であり、例えば、PET、PPといったプラスチック材なども使用で
きる。
また 上述の実施例では、左右フラップの上片下片を重ね合わせて、連通状に重ね合わさせたスリットを形成しているが、両片は上下に配置せず、左右や斜めなどに配置してもよい。つまりは、左右支持部の上縁に連接される片(上述の実施例では下片)と、更にこれをいずれの方向かに延長する片(上述の実施例では上片)とで重ねあわせできる構成であればよい。また上述の実施例では、前記上下片は略台形形状を例示しているが、形状はこれには限らない。スリットを形成し重ね合わせできる形状ならばよく、多角形以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 運搬体
2 底支持部
3 前支持部
4 後支持部
5 左支持部
6 右支持部
7F 前フラップ
7Fd 前フラップの下片
7Fu 前フラップの上片
7B 後フラップ
7Bd 後フラップの下片
7Bu 後フラップの上片
7L 左フラップ
7Ld 左フラップの下片
7Lu 左フラップの上片
7R 右フラップ
7Rd 右フラップの下片
7Ru 右フラップの上片
8 上部開口
9 天板
10F 底側前フラップ
10B 底側後フラップ
10L 底側左フラップ
10R 底側右フラップ
11L 左貼付片
11R 右貼付片
12 支持部貼付片
13 係止片
14 スリット
15 内側スリット孔
16 外側スリット孔
17 開口扉
18 舌片