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特許7453919入口ダクトと触火面に対して傾いた弁の校正との交点を有するガス入口装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】入口ダクトと触火面に対して傾いた弁の校正との交点を有するガス入口装置
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/42 20060101AFI20240313BHJP
   F02B 31/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F02F1/42 F
F02B31/04 540A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020561833
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019056930
(87)【国際公開番号】W WO2019211040
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】1853856
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ゴートロト、 グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】トロスト、 ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】リッター、 マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レッカード、 クリストフ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200042(JP,A)
【文献】特開2001-227350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107551(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102102582(CN,A)
【文献】米国特許第06213090(US,B1)
【文献】特開2016-169713(JP,A)
【文献】特開2009-138617(JP,A)
【文献】特開2008-175213(JP,A)
【文献】特開2018-003713(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260913(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0050012(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24 ~ 1/42
F02B 31/00 ~ 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関エンジンのシリンダ用のガス吸気装置であって、
吸気管(2)と、
前記吸気管(2)内に配置された少なくとも1つの吸気弁(3)と、
前記吸気管(2)の一端に配置され、前記シリンダの触火面(FF)に向けられた前記吸気弁(3)用の少なくとも1つの校正部(4)と、
前記吸気管(2)の形状のみからなり、前記シリンダの軸に実質的に垂直な軸の周りで、前記シリンダ内に前記ガスの空力運動を生成するための前記ガスの方向転換手段(5、6)と、を備えるガス吸気装置(1)において、
前記吸気管(2)は、流れ断面が実質的に角の丸い長方形であり、
前記吸気管(2)の内弧面で、前記吸気管(2)と前記吸気弁(3)の前記校正部(4)との交点(7)は、該交点(7)を通り前記シリンダの前記触火面(FF)に平行な平面(F´F´)に対して5度から45度の間の範囲の角度αを形成する直線母線(YY)上にあり、前記角度αは、前記吸気管(2)の端部の捩れに相当することを特徴とする、ガス吸気装置。
【請求項2】
前記角度αは10度から20度の範囲である、請求項1に記載の吸気装置。
【請求項3】
前記ガスの前記方向転換手段は、前記吸気管(2)の下部の輪郭に傾斜路形状(6)を備える、請求項1または2に記載の吸気装置。
【請求項4】
前記ガスの前記方向転換手段は、前記弁(3)の前記校正部(4)の近くの前記吸気管(2)の前記流れ断面の収束(5)を備える、請求項1から3の何れか1項に記載の吸気装置。
【請求項5】
前記ガスの前記方向転換手段は、前記吸気管(2)と前記校正部(4)の交点に対する正接の角度βによって定義される前記吸気管(2)の傾斜を含み、角度βは0度から45度の範囲である、請求項1から4の何れか1項に記載の吸気装置。
【請求項6】
前記吸気管(2)は、前記シリンダに開口する2つのガス出口と、2つの吸気弁(3)とを備える、請求項1から5の何れか1項に記載の吸気装置。
【請求項7】
前記吸気装置は、吸気マスクを備える、請求項1から6の何れか1項に記載の吸気装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の少なくとも1つの吸気装置を備えた少なくとも1つのシリンダと、少なくとも1つの排気装置と燃料噴射手段とを備える、内燃機関エンジン。
【請求項9】
前記燃料噴射手段は、前記シリンダに配置されている、請求項8に記載の内燃機関エンジン。
【請求項10】
前記燃料噴射手段は、前記吸気装置(1)に配置されている、請求項8に記載の内燃機関エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関エンジンのガス吸気装置の分野に関する。特に、本発明は、エンジンシリンダ内で空力ガス運動を生成することを可能にするガス吸気装置に関する。
【0002】
このタイプのエンジンは一般的に、少なくとも1つのシリンダと、このシリンダ内を往復直線運動で摺動するピストンと、酸化剤用の吸気手段と、燃焼ガス排気手段と、燃焼室と、燃料を噴射する噴射手段とを備えている。
一般的に認められているように、エンジンの設計時に、性能と汚染物質排出の制約がますます高くなっている。したがって、最終的なエンジン効率を高めるために新しい解決策を見つける必要がある。
したがって、燃焼効率を向上させることは、同等以上の性能を得るために排出量を制限するための重要なポイントである。したがって、燃焼室内に存在する全ての燃料が、例えば、大気圧の空気、過給空気、または空気(過給されているか否かにかかわらず)と再循環した燃焼ガスとの混合物を含む酸化剤によって使用されることが非常に重要である。
実際、燃焼室内の燃料混合物(酸化剤/燃料)は、可能な限り均質である必要がある。
【0003】
さらに、良好な効率および燃焼速度を確保するため、燃料混合物の点火時およびその後の燃焼中に、高い乱流レベル、より具体的には、高い乱流運動エネルギーレベルを有することが望ましい。
この高い乱流レベルは、スワンブルとして知られている特定の吸気空気力学によって達成することができる。このタイプの空気力学は、燃料混合物の巨視的な運動が、スワール(垂直シリンダ軸の周りのシリンダ内のガスの回転運動)とタンブル(縦置きエンジン軸の周りのシリンダ内のガスの回転運動)の組合せであることを特徴とする。
【0004】
スワールは、シリンダ軸と同一直線上にある軸の周りの燃料混合物の巨視的な回転運動であり、吸気プロセスの間、より具体的にはピストンの上昇中の良好な運動保存によって特徴付けられる。それは、燃料混合物を均質化するための優れた方法である圧縮点火内燃機関エンジンに一般的に使用される空力巨視的運動である。
タンブルも燃料混合物の巨視的な回転運動であるが、シリンダ軸に全体的に垂直な軸の周りである。タンブルは、ピストンが上昇するにつれて乱流を作り出す微視的な空力運動に変わるという特有の特徴を有している。それは火花点火内燃機関エンジンに一般的に用いられる空力巨視的運動であり、適切な燃焼速度を得るための優れた方法である。その上、この運動は、最大リフト高さだけでなく広がりの点でも、燃焼室の形状とリフト法則に非常に敏感である。
スワンブルを使用すると、上記2つの空力構造の利点から利益を得ることができる。したがって、現在の最良の火花点火エンジンで観察されるレベルよりも吸気段階中の乱流レベルが高いため、優れた均質化とより良い燃焼速度から利益を得ることができる。
【背景技術】
【0005】
シリンダ内のこれらの乱流を達成するために種々の技術的解決策が開発されている。
第1の解決策は、特に米国特許第6,606,975号に記載されている。この解決策は、乱流を生成するように吸気管に配置されたフラップを制御することで構成されている。この特許はまた、低負荷でのスワンブルの概念にも言及している。このような解決策は複雑であり、シリンダの充填に関して不利である。
第2の解決策は、特に米国特許第5,056,486号に記載されている。この解決策は、非対称の吸気管の定義を提供し、複雑な空気力学を生成できるようにする。しかしながら、この解決策は吸気弁の開口部を位相シフトする必要があり、これは、高い負荷において不利である。
第3の解決策は、特に独国特許出願10,128,500号および欧州特許出願1,783,341に記載されている。この解決策は、吸気管内の受動的または能動的な付属物によって複雑な空気力学を生成することができる。どちらの場合も、これらの付属物は、シリンダへのガスの充填を制限する。さらに、能動的な付属物は、解決策をより複雑にする制御システムを必要とする。
【0006】
これらの欠点を克服するため、本発明は、内燃機関エンジンのシリンダ用のガス吸気装置に関する。ガス吸気装置は、吸気管、吸気弁、吸気弁校正部、およびシリンダ内のガスの空力タンブル型運動を生成する手段を備える。さらに、吸気管と校正部との交点は、触火面の平面に非平行な線で発生する。この傾斜により、シリンダ内に空力スワール型運動を生成することができ、タンブルと結合することで空力スウンブル型運動を生成することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、内燃機関エンジンのシリンダ用のガス吸気装置であって、前記ガス吸気装置は、吸気管と、前記吸気管内に配置された少なくとも1つの吸気弁と、前記吸気管の一端に配置され、前記シリンダの触火面に向けられた前記吸気弁の少なくとも1つの校正部と、前記シリンダの軸に実質的に垂直な軸の周りで、前記シリンダ内に前記ガスの空力運動を生成するための前記ガスの方向転換手段と、を備える。前記吸気管の内弧面で、前記吸気管と前記吸気弁の前記校正部の交点は前記シリンダの前記触火面に平行な平面に対して5度から45度の間の範囲の角度αを形成する直線母線上にあり、前記平面は前記吸気管と前記校正部の交点を通過する。
【0008】
一実施形態によれば、前記角度αは、10度から20度、好ましくは13度から17度の範囲である。
本発明の一実施形態によれば、前記ガスの方向転換手段は、前記吸気管の形状からなる。
一態様によれば、前記ガスの方向転換手段は、前記吸気管の下部の輪郭に傾斜路形状を備える。
有利には、前記ガスの方向転換手段は、前記弁の前記校正部の近くの前記吸気管の前記流れ断面の収束を備える。
有利には、前記ガスの方向転換手段は、前記吸気管と前記校正部との交点に対する正接の角度βによって定義される前記吸気管の傾斜を含み、角度βは0度から45度の範囲である。
一つの特徴によれば、前記吸気管は、前記シリンダに開口する2つのガス出口と、2つの吸気弁とを備える。
【0009】
さらに、本発明は、上記特徴の1つによる少なくとも1つの吸気装置を備えた少なくとも1つのシリンダにおいて、少なくとも1つの排気装置と燃料噴射手段とを備えた内燃機関エンジンに関する。
一実施形態によれば、前記燃料噴射手段は、前記シリンダに配置されている。
本発明の一実施形態によれば、前記燃料噴射手段は、前記吸気装置に配置されている。
さらに、本発明は、ミラーサイクルまたはアトキンソンサイクル用の上記特徴の1つによる内燃機関エンジンの使用に関する。
本発明による装置の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるガス吸入装置を側面図で示すものである。
図2】本発明の一実施形態によるガス吸入装置を三次元図で示すものである。
図3a】従来技術によるガス吸入装置の内弧面の図である。
図3b】本発明によるガス吸入装置の内弧面の図である。
図4】従来技術による吸気装置および本発明の一実施形態による吸気装置の標準法則の状況におけるタンブル数、乱流運動エネルギー(TKE)、スワール数の曲線を示す図である。
図5】従来技術による吸気装置および本発明の一実施形態による吸気装置のミラー法則の状況におけるタンブル数、乱流運動エネルギー(TKE)、スワール数の曲線を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による内燃機関エンジンのシリンダを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、内燃機関エンジンのシリンダ用のガス吸気装置に関する。
ガス吸気装置は、
シリンダにガスを供給するためのガス吸気管、
吸気管に挿入された吸気弁、ガスをシリンダに供給することを可能にする弁の開口
シリンダ側の吸気弁の端部に配置された吸気弁校正部であって、校正部はシリンダの触火面に向けられ、吸気弁校正部は弁が移動する実質的に円筒形の機械部分である、そして、
シリンダ内のガスの空力運動をシリンダ軸に垂直な方向に生成するための、換言すれば、ガスの空力タンブル型運動を生成するためのガスの方向転換手段、を含む。
触火面または燃焼面は、シリンダ軸に直交する(内燃機関エンジンの)シリンダヘッドの下面であると理解される。弁校正部はシリンダヘッドの下面に挿入され、シリンダにガスを供給する。
【0012】
本発明によれば、吸気装置はこのような方法で形成される。それは、吸気管の内弧面において、吸気管と弁校正部の間の交点は触火面に平行な平面に対して5度から45度の間の範囲の角度αを形成し、吸気管と弁校正部の間の交点を通る直線母線上にあるように形成される。吸気管の内弧面は、吸気管の下面であると理解される。これにより、吸気管の下面と弁校正部との交点は触火面に平行な平面に対して傾斜する。この傾斜により、ガスを校正部の入口、特にはシリンダの入口で方向転換させることができる。このガスの方向転換は、シリンダ軸に平行な方向、換言すれば空力スワール型ガス運動で、シリンダに空力ガス運動を生成する。この傾斜は、その端部の吸気管の回転(吸気管の端部が次いで捩れる)という結果になり、ガスの空力スワール型運動を促進する。さらに、この実施形態はマスク、フラップまたはブレード型の如何なる特別の付属物なしで、ガスの空力スワール型運動を生成することを可能にする。さらに、これらの吸気装置の構造は、単気筒または多気筒内燃機関エンジンのシリンダヘッド内の配置に関する追加の制約を伴わない。
【0013】
5度から45度の範囲の角度αの傾斜により、ガスの空力スワール型運動を生成することができる。5度未満では、傾斜はシリンダ内のガスの空力運動に十分な影響を与えるには不十分である。45度以上では、吸気管の幾何学的形状は複雑で達成することが困難である。
【0014】
タンブル型およびスワール型の空力ガス運動を組み合わせることによって、本発明によるガス吸入装置はシリンダ内のガスの空力スワンブル型運動を提供し、これにより、現在最良の火花点火エンジンで観察される圧縮段階中の乱流レベルよりもより高い乱流レベルによって、優れた均質化およびより良い燃焼速度から恩恵を受けることを可能にする。
【0015】
ガスは、酸化剤または燃料混合物(間接噴射)であり、特に、周囲圧力の空気、過給空気、または空気(過給または非過給)および燃焼ガスの混合物を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、角度αは、10度から20度、好ましくは13度から17度の範囲とすることができる。これらの角度範囲はガスの空力スワール型運動を最適化することを可能にし、したがって、結合されたガスの空力スウンブル型運動を最適化することを可能にする。
本発明の一実施形態によれば、ガスの方向転換手段は、吸気装置の形状のみから構成される。したがって、能動的または受動的要素が吸気管を通るガスの通過を妨げることはない。
【0017】
第1の例示的な実施形態によれば、ガスの方向転換手段は、吸気管の下部の輪郭に傾斜路形状を備えている。傾斜路形状は吸気管内のガス流の分離を促進し、ガス流を吸気管の上部に送り、したがって、シリンダの上部に送り、ガスの空力タンブル型運動を最大化する。
第2の例示的な実施形態(第1の実施形態と組み合わせることができる)によれば、ガスの方向転換手段は、弁校正部の近くの流れ断面の収束を含むことができる。換言すれば、吸気管の流れ断面は、弁校正部に近いその端部で減少する。この収束は、空力ガス運動と充填を促進するガス流の加速を引き起こす。
第3の例示的な実施形態(第1の実施形態および/または第2の実施形態と組み合わせることができる)によれば、ガスの方向転換手段は、吸気管の傾斜を備えることができる。この吸気管の傾斜は、吸気管と校正部の交点における正接の角度βで定義することができ、0度から45度の範囲である。この傾斜はシリンダの燃焼室上部の傾斜に接続されることができる。吸気管の傾斜により、シリンダに入るガス流を傾斜させて、ガスの空力タンブル型運動を生成することができる。例えば、ガスの空力タンブル型運動の最適化は、角度βと燃焼室の上部の傾斜の角度との接触によって得ることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、ガス吸気装置は、サイアミーズ型とすることができる。換言すれば、吸気管はシリンダを向いた1つの入口と2つの出口を備え、各出口は吸気弁と吸気弁校正部を備える。各出口は、空力スワール型ガス運動を生成するために定義された角度特性を有する。このタイプの吸気装置は、2つの吸気弁を有するシリンダに適しており、吸気プレナム(吸気プレナムは吸気管から上流の空間である)の設計を簡略化することを可能にする。
本発明の一態様によれば、ガスの方向転換手段は吸気管の形状のみから構成されるが、吸気マスクのような能動または受動ガスの方向転換要素との適合性が保証される。したがって、吸気装置は、燃焼室に形成された吸気マスクをさらに備えることができる。吸気マスクは吸気弁シートに近い燃焼室内で特別に機械加工されると理解されており、したがって、シートで吸気管の流れ断面の一部の通過を妨げ、ガス流を加速し、それによって燃焼室内の乱流を増大させる。
【0019】
本発明の特徴によれば、吸気管の流れ断面は、角が丸い、実質的に長方形の形状を有することができる。この場合、吸気管と弁校正部の交点は4つの端部から構成され、4つの端部のうちの1つは内弧面側、1つは前面、そして2つは側方端部にある。
この実施形態の一例によれば、弁校正部との交点における吸気管の長方形の流れ断面は、触火面の方向に対して傾斜している。換言すれば、長方形の流れ断面の端部は、何れも触火面に平行な方向に対して平行または垂直でない。
【0020】
図1および図2は、非限定的な例として、本発明の一実施形態による吸気装置1を概略的に示す。図1は吸気装置1の側面図、図2は吸気装置1の三次元図である。吸気装置1は、吸気管2、吸気管に配置された弁3、および吸気弁校正部4を備えている。開いた時にガスの通過を可能にする吸気弁3の端部は示されていない。
【0021】
吸気装置1は、さらにガスの方向転換手段を備え、ガスの方向転換手段はシリンダ内でシリンダの軸に垂直な方向に空力ガス運動(ガスの空力タンブル型運動)を生成する。これらのガスの方向転換手段は、弁校正部4に近い吸気管2の流れ断面の収束5を含む。この収束5は、弁校正部4に近い流れ断面の減少に対応する。さらに、ガスの方向転換手段は、吸気管2の下部の輪郭から構成されている傾斜路6を備える。そのうえ、ガスの方向転換手段は、傾斜角度β、吸気管と校正部の交点の接線方向XX、および水平方向AAにおいて吸気管2の傾斜を含む。
この図は、触火面の平面に属する線FFも示す。方向AAは線FFと平行である。
吸気管の内弧面において吸気管2と校正部4の交点は符号7で示される。
【0022】
図3aおよび3bは、非限定的な例として、ガス吸入装置の内弧面(下面)の図を概略的に示す。図3aおよび3bは、触火面に垂直な平面にある。図3aは、ガスの空力タンブル型運動を生成するためのガスの方向転換手段のみを有する従来技術による装置に対応する。図3bは本発明のガスの方向転換手段を有する装置に対応し、ガスの空力タンブル型運動を生成し、内弧面内では、吸気管と弁校正部の交点の傾斜を生成する。
これらの図において、線FFは(シリンダによって定義される)触火面の平面を図示し、方向F’F’は、吸気管2と吸気弁校正部4の間の交点を通過する触火面FFに平行な平面に属する線である。
【0023】
図3aに示された従来技術によれば、吸気管2と吸気弁校正部4の間の交点7は、線F’F’と合流する。
一方、図3bに示される発明によれば、吸気管2と吸気弁校正部4の間の交点7は、線F’F’に対して角度αで傾斜した軸YYの直線母線によって保有される。この角度αは、5度から45度の間にわたる。図3bから、この傾きが、実質的に長方形の流れ断面を有する吸気管2の僅かな回転を生成することが分かる。
【0024】
本発明はまた、上記の変形例または変形例の組み合わせの1つによる内燃機関エンジンのシリンダと吸気装置を備える組立体に関する。
さらに、本発明は少なくとも1つのシリンダを備える内燃機関エンジンに関し、各シリンダは、
シリンダにガスを供給するため、上記の変形例または変形例の組合せの1つによる少なくとも1つの吸気装置、
燃焼ガスをシリンダから排出するため、少なくとも1つの排気装置であって、排気弁が有利に装備されている排気装置、
燃焼から機械的エネルギーを生成するために(クランク軸の回転によって)シリンダ内で往復直線並進運動をするピストン、
燃焼を生成する燃料噴射手段、が備えられている。
【0025】
一実施形態によれば、燃料噴射手段は直接噴射手段とすることができ、換言すれば、燃料噴射手段は、シリンダ内に直接配置される。
あるいは、燃料噴射手段は間接噴射装置とすることができ、換言すれば、燃料噴射手段は吸気装置内に配置される。
本発明の実施によれば、内燃機関エンジンは火花点火エンジンである。この場合、エンジンは、ガス/燃料混合物の燃焼を生成する少なくとも1つのプラグをさらに備える。
あるいは、内燃機関エンジンは圧縮点火エンジンである。この場合、エンジンは、ガス/燃料混合物の燃焼を生成するプラグを備えていない。
本発明の一態様によれば、シリンダが2つの吸気管を備える場合、これらの2つの管は、燃焼室の中央面に対して同一かつ平行とすることができる。
【0026】
変形例では、シリンダはサイアミーズ吸気装置によってガスを供給することができる。
図6は、非限定的な例として、本発明の一実施形態による内燃機関エンジンのシリンダの部分図を概略的に示す。ピストン(図示せず)が移動するシリンダ9は、燃焼室8を備える。吸気装置1、特に弁校正部4は、燃焼室8内に配置される。排気装置(図示せず)も燃焼室8内に配置される。
シリンダ9の軸方向をCCで示す。この図はまた、触火面FFも示す。触火面FFは軸CCに垂直であり、触火面FFは内燃機関エンジンのシリンダヘッド(図示せず)の下部に対応する。
吸気装置1は図1図2および図3bの吸気装置と同一であり、特に吸気管2、弁3および弁校正部4を備える。
【0027】
さらに、本発明は、ミラーサイクルまたはアトキンソンサイクルにおける、上記の変形例または変形例の組み合わせの1つによる内燃機関エンジンの使用に関する。
ミラーサイクルは、吸気段階中のピストンの下死点の前に吸気弁の閉鎖によって特徴付けられた熱力学的サイクルである。これは、許可された装入物の冷却に加えて、作業の回復を引き上げることを可能にする。本発明による吸気装置は、ガスの空力スワンブル型運動の生成のおかげで、広い動作範囲にわたってミラーサイクルでの使用に特に適している。
アトキンソンサイクルは、可変燃焼エンジンで使用される標準的な熱力学的サイクルである。
本発明による内燃機関エンジンは、道路、海、または航空輸送などの組み込み用途の分野、または発電機セットなどの固定設備の分野で使用することができる。
【0028】
(比較例)
本発明による吸気装置の特徴および利点は、以下の比較例を読むことから明らかになるであろう。
これらの例について、ガスの空力的タンブル型運動(図3aに対応する)のみを備えた従来技術による吸気装置を装備した内燃機関エンジンの特性は、本発明による吸気装置を装備しガスの空力スウンブル型運動(図3bに対応する)を有する同じ内燃機関エンジンと比較される。この例では、角度αの値は15度である。
【0029】
図4は、吸気下死点(360度)から圧縮上死点(720度)までのエンジンサイクルの一部について、タンブル数T(左上)、乱流運動エネルギーTKE(右上)、およびスワール数S(左下)の曲線をクランク角度Vil度の関数として示したものである。右下の図は圧縮上死点(クランク角度720度)後に起こる燃焼に近い、クランク角度Vil度の角度範囲が減少したゾーンの乱流運動エネルギーTKEを示す。方向xのタンブル数は、クランクシャフト角速度に対する方向x(シリンダ軸に垂直な方向)の重心の周りのガスの角速度の比率として定義される。スワール数は、クランクシャフト角速度に対するシリンダ軸方向の重心の周りのガスの角速度の比率として定義される。タンブル数とスワンブル数は無次元数である。
【0030】
図4は標準サイクルに関する。これらの図において、従来技術による吸気装置を装備した内燃機関エンジンに対応する曲線はAAで示され、本発明による吸気装置を装備した内燃機関エンジンに対応する曲線はINVで示される。
乱流運動エネルギーTKEは、気団に「閉じ込められた」エネルギー量を表す。
これらの図において、2つの吸気装置は、空力タンブル型運動を生成できることに注意されたい(高いタンブル数T)。さらに、スワール数Sは、本発明のINVによる吸気装置の方がはるかに高いことに注意されたい。それゆえ、吸気管と校正部の交点の傾斜により、空力スワール型運動が効果的に生成される。したがって、本発明による装置は、空力スワンブル(タンブルおよびスワール)型運動を効果的に生成することを可能にする。さらに、本発明による吸気装置は、燃焼前に、この乱流エネルギーの増加を可能にすることによって、従来技術に関連して乱流運動エネルギー(TEK)利得を提供することに注意されたい。
【0031】
図5は、吸気下死点(360度)から圧縮上死点(720度)までのエンジンサイクルの一部について、タンブル数T(左上)、乱流運動エネルギーTKE(右上)、およびスワール数S(左下)の曲線をクランク角度Vil度の関数として示したものである。右下の図は圧縮上死点(クランク角度720度)後に起こる燃焼に近い、クランク角度Vil度の角度範囲が減少したゾーンの乱流運動エネルギーTKEを示す。図5はミラーサイクルに関する。これらの図において、従来技術による吸気装置を装備した内燃機関エンジンに対応する曲線はAAで示され、本発明による吸気装置を装備した内燃機関エンジンに対応する曲線はINVで示される。
これらの図において、2つの吸気装置は、空力タンブル型運動を生成できることに注意されたい(高いタンブル数T)。さらに、スワール数Sは、本発明による吸気装置の方がはるかに高いことに注意されたい。それゆえ、吸気管と校正部の交点の傾斜により、空力スワール型運動が効果的に生成される。したがって、本発明による装置は、空力スワンブル(タンブルおよびスワール)型運動を効果的に生成することを可能にする。さらに、本発明による吸気装置は、燃焼前にこの乱流エネルギーの増加を可能にすることによって、従来技術に関連して乱流運動エネルギー(TEK)利得を提供することに注意されたい。
【0032】
したがって、ガスの空力スワール型運動の生成は、エンジンサイクルの吸気中、空力運動に含まれるエネルギーのより良い保存を可能にする。したがって、燃焼を開始する乱流レベルは、特にミラーサイクル運転に適したリフト法則の場合、純粋なタンブル型の管よりも高い。
本発明による吸気装置を使用すると、大幅な燃焼効率の向上が得られる。さらに、これらの吸気装置のアーキテクチャは単気筒または多気筒エンジンのシリンダヘッド内の配置に追加の制約を必要とせず、これはスワンブルを生成するための既存の解決策に関連して著しい利点である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6