IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローブライド株式会社の特許一覧

特許7453925釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法
<>
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図1
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図2
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図3
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図4
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図5
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図6
  • 特許-釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20240313BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240313BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240313BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240313BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240313BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240313BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240313BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240313BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20240313BHJP
   A01K 89/01 20060101ALI20240313BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20240313BHJP
   A01K 83/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A01K87/00 630N
B32B15/01 E
B05D7/24 301B
B05D3/02 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 303E
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D7/20
C09D1/00
A01K89/01 A
A01K89/015 B
A01K83/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021020410
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123237
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康弘
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-139291(JP,A)
【文献】特開2015-198578(JP,A)
【文献】特開2004-351391(JP,A)
【文献】特開2006-328472(JP,A)
【文献】特開2016-187939(JP,A)
【文献】特開2018-114747(JP,A)
【文献】特開2018-134606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00
B32B 15/01
B05D 7/24
B05D 3/02
B05D 3/00
C09D 5/00
C09D 7/61
C09D 7/20
C09D 1/00
A01K 89/01
A01K 89/015
A01K 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に銀被膜を被覆する方法であって、
該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤であり、
前記溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンであり、前記銀皮膜は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成され、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm 2 以上であることを特徴とする基材の表面に銀皮膜を被覆する方法。
【請求項2】
前記溶剤は、前記銀錯体溶液中の50重量%から99重量%の範囲を占める、請求項1に記載の銀皮膜を被覆する方法。
【請求項3】
前記吹き付けは、スプレー放射によりなされる、請求項1又は2に記載の銀皮膜を被覆する方法。
【請求項4】
前記銀皮膜は、前記基材に吹き付けられた銀錯体溶液が熱処理されて形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の銀皮膜を被覆する方法。
【請求項5】
前記基材と前記銀皮膜との間に下地層が形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の銀皮膜を被覆する方法。
【請求項6】
前記銀皮膜の表面に被覆層が形成される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の銀皮膜を被覆する方法。
【請求項7】
リール本体を備える魚釣用リールの該リール本体の表面の少なくとも一部に銀皮膜を被覆する方法であって、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該リール本体の少なくとも一部に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤であり、
前記溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンであり、前記銀皮膜は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成され、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm 2 以上であることを特徴とする魚釣用リールのリール本体の少なくとも一部に銀皮膜を被覆する方法。
【請求項8】
竿体を備える釣竿の該竿体の表面の少なくとも一部に銀皮膜を被覆する方法であって、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該竿体の表面の少なくとも一部に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤であり、
前記溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンであり、前記銀皮膜は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成され、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm 2 以上であることを特徴とする釣竿の該竿体の表面の少なくとも一部に銀皮膜を被覆する方法。
【請求項9】
基材を形成する工程と、
該基材の外面に溶剤を含む銀錯体溶液を塗布する工程と、
前記銀錯体溶液を熱処理する工程と、
前記銀錯体溶液を乾燥させる工程と、
を備え、
前記溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤であり、
前記溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンであり、前記銀皮膜は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成され、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm 2 以上であることを特徴とする基材に銀皮膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣部材等の基材を被覆する銀皮膜及びこれを形成する方法に関する。また、本発明は、このような銀皮膜を有する魚釣用リール又は釣竿に関する。また、本発明は、ゴルフクラブシャフト、テニスラケットなどのスポーツ用品及びこれに銀皮膜を形成する方法にも適用できる。また、本発明は、その他の部材に銀皮膜を形成する場合にも適当可能である。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属やプラスチック等の基材に対して鏡面光沢を付与するために、銀鏡反応を利用した装飾用皮膜を形成することが知られている。
【0003】
このような表面装飾構造として、例えば、特許文献1では基体表面に下塗り塗膜、銀鏡膜層及び上塗り塗膜が形成された表面装飾構造において、前記銀鏡膜層は、ナノメーターサイズの銀粒子が焼結されておらず、個々の前記ナノメーターサイズの銀粒子が堆積した状態で膜を形成している表面装飾構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、基体表面に下塗り塗膜、銀鏡膜層及び上塗り塗膜が形成された表面装飾構造において、前記銀鏡膜層は、ナノメーターサイズの銀粒子が積層された状態で膜を形成しており、前記上塗り塗膜は、溶媒として、脂肪族炭化水素化合物、10質量%以下の芳香族化合物を含む脂肪族炭化水素化合物溶液及びジイソブチルケトンから選択された少なくとも1種を含むものを用いて形成されたものからなる表面装飾構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-031086号公報
【文献】特開2018-114747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの特許文献に係る方法であっても、安定した外観(色調)を有する銀膜を形成することができるものではないという問題があった。
【0007】
本発明の目的の一つは、安定した銀外観を有する銀錯体溶液を用いた銀皮膜、これを形成した魚釣用リール若しくは釣竿及びこれを形成する方法を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜は、基材の表面を被覆する銀皮膜であって、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0009】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、前記溶剤は、前記銀錯体溶液中の50重量%から99重量%の範囲を占める。
【0010】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、前記銀皮膜は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成されている。
【0011】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm2以上である。
【0012】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜に、前記吹き付けは、スプレー放射によりなされる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜は、前記基材に吹き付けられた銀錯体溶液が熱処理されて形成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、前記溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンである。
【0015】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、前記基材と前記銀皮膜との間に下地層が形成される。また、本発明の一実施形態に係る銀皮膜の表面に被覆層が形成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、リール本体と、該リール本体の表面の少なくとも一部に形成された銀皮膜とを備え、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る釣竿は、竿体と、該竿体の表面の少なくとも一部に形成された銀皮膜とを備え、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜を形成する方法は、基材を形成する工程と、該基材の外面に溶剤を含む銀錯体溶液を塗布する工程と、前記銀錯体溶液を熱処理する工程と、前記銀錯体溶液を乾燥させる工程と、を備え、前記溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記各実施形態によれば、銀錯体溶液を用いて安定かつ良好な銀外観を有する銀皮膜、これを形成した魚釣用リール若しくは釣竿及びこれを形成する方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る銀皮膜を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る銀皮膜の形態を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る銀皮膜の形成と溶剤との関係性を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造を模式的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造を模式的に示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る銀皮膜の形成に使用する溶剤を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0022】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る銀皮膜について説明する。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る銀皮膜1は、基材2の表面(外面)3を被覆する銀皮膜1であって、該銀皮膜1は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0023】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜によれば、銀錯体溶液を用いて安定かつ良好な銀外観を有する銀皮膜を形成することが可能となる。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る銀皮膜1を形成する方法について説明する。本発明の一実施形態に係る銀皮膜1を形成する方法は、ステップ1として、基材2を形成する工程と、ステップ2として、該基材2の表面(外面)3に溶剤を含む銀錯体溶液を塗布する工程と、ステップ3として、銀錯体溶液を熱処理する工程(80-120℃の温度で1-2時間程度)と、を備える。ここで、ステップ2において、当該溶剤の沸点は、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)は、3から8の範囲である溶剤を用いる。また、溶剤を含む銀錯体溶液の塗布は、基材2への吹き付け(例えば、スプレー放射等)により行うことができるが、これに限られない。
【0025】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜1において、当該溶剤は、当該銀錯体溶液中、50重量%から99重量%の範囲を占めるようにされる。このようにして、安定した銀皮膜の外観を得ることが可能となる。
【0026】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る銀皮膜1の形態について説明する。図2に示すように、銀皮膜1の形態は大まかに6つの形態に大別される。まず、銀皮膜1の形態Iは、錯体銀のままの状態である。この状態では、銀原子が有機キレート化合物に被覆されているため加熱しなければ発色しないという問題がある。次に、銀皮膜1の形態II(表面積は、0.01から0.02mm2)は、銀の初期集合段階の状態である。この状態は小さい集合体であるため銀発色が弱く、また比表面積が大きいことから外気影響を受け変色し易いという問題がある。ここで、表面積とは、水平投影面積を指し、水平投影面積とは、ある面を水平面に投影したときの面積をいうものとする(以下同様)。次に、銀皮膜1の形態III(表面積は、0.02から0.08mm2)は、銀の結合が進行した大きめの集合体の状態である。この状態では比較的良好な発色をするものの、まだ成長途上であるため、依然として比表面積が大きく(ここで言う比表面積は集合体全体の表面積を意味する)、変色し易いという問題がある。
【0027】
次に、銀皮膜1の形態IV(表面積は、0.08から0.1mm2)は、銀がさらに結合し緻密な集合体となった状態(結合体の径は1mm以上)である。この状態は、良好な銀色を形成し、比較的安定している。次に、銀皮膜1の形態V(表面積は、0.1mm2以上)は、ほぼ銀皮膜となった状態である。この状態は、良好な銀色を形成し、さらに安定している。さらに、次に、銀皮膜1の形態VIは、バルク体の状態である。この状態は、良好な銀色を形成し、最も安定している。
【0028】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜1において、当該銀皮膜1は、その正面からみて、複数の粒子の集合体又は構造体により形成されている。
【0029】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜1において、前記集合体又は構造体の表面積は、0.08mm2以上である。このような状態であると、銀色の発色もよく、また安定した状態を維持することができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る銀皮膜において、当該溶剤は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、又はヘキサンである。
【0031】
次に、図3、7を参照して、本発明の一実施形態に係る銀皮膜1の形成の際に使用する溶剤の種類、該溶剤の種類による銀皮膜への影響についてより具体的に説明する。まず、図7は、各溶剤の種類毎の蒸発速度(酢酸ブチルの蒸発速度に対する相対蒸発速度)を横軸に、各溶剤の種類毎の沸点を縦軸としたものである。
【0032】
図示のように、メチルエチルケトン、酢酸エチル、及びヘキサンは、当該沸点が60℃から80℃の範囲であり、当該相対蒸発速度が、3から8の範囲となっている。このような範囲の溶剤を用いると、上述した銀皮膜の形態(図2)が銀皮膜の形態IV以上の良好な状態となることが、図3に示す銀皮膜の撮像写真(塗装及び乾燥後の銀皮膜を撮影倍率100倍にして撮像したもの)の解析結果から判明した。
【0033】
その理由は、特定の蒸発速度の溶剤と銀原子を被覆している「有機キレート化合物」の蒸散タイミングがほぼ同じであることから、銀が外気や残留物の影響を受けにくい状態で結合を開始するため結合が進みやすくバルク体に近づきやすく、綺麗な皮膜が形成されるためである。
【0034】
一方、図7に示した、相対蒸発速度が、上記各溶剤よりも低い溶剤(例えば、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン)を用いた場合、銀皮膜の形態がII又はIIIとなることが、図3に示す銀皮膜の撮像写真の解析結果から判明した。
【0035】
次に、図4-6を参照して、本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造10について説明する。まず、図4に示すように、本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造10は、基材2の表面に形成された銀皮膜1と、当該銀皮膜1を覆う被覆層4と、当該被覆層4を覆う上塗り層5と、を備える。ここで、被覆層4は、各層間密着性を向上させる役割を果たし、上塗り層5は、被覆層4以下の皮膜を外的因子から保護する役割を果たす。また、図4に示す例以外にも、被覆層4又は上塗り層5のいずれかの場合や、これらの層に加えてさらに1又は複数の層を形成するようにしてもよい。また、被覆層4、上塗り層5はそれぞれ複数の層で形成されるようにしてもよい。
【0036】
次に、図5に示すように、本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造10は、基材2の表面に形成された下塗り層6と、当該下塗り層6の表面に形成された銀皮膜1と、当該銀皮膜1を覆う被覆層4と、当該被覆層4を覆う上塗り層5と、を備える。ここで、下塗り層6は、銀皮膜1の外観を向上させる役割を果たす。また、被覆層4は、各層間密着性を向上させる役割を果たし、上塗り層5は、被覆層4以下の皮膜を外的因子から保護する役割を果たす。また、図5に示す例以外にも、被覆層4又は上塗り層5のいずれかの場合、被覆層4又は上塗り層5のいずれもない場合や、これらの層に加えてさらに1又は複数の層を形成するようにしてもよい。また、下塗り層6、被覆層4、上塗り層5はそれぞれ複数の層で形成されるようにしてもよい。
【0037】
次に、図6に示すように、本発明の一実施形態に係る銀皮膜を含む皮膜構造10は、基材2の表面に形成された下塗り層6と、当該下塗り層6の表面に形成された銀皮膜1と、当該銀皮膜1を覆う被覆層4と、当該被覆層4を覆う第2の被覆層7と、当該被覆層7を覆う上塗り層5と、を備える。ここで、下塗り層6は、銀皮膜1の外観を向上させる役割を果たす。また、被覆層4は、各層間密着性を向上させる役割を果たす。また、第2の被覆層7は、主に、加飾の役割を果たし、上塗り層5は、被覆層7以下の皮膜を外的因子から保護する役割を果たす。また、図5に示す例以外にも、被覆層4、下塗り層6、第2の被覆層7、上塗り層5に加えてさらに1又は複数の層をこれらの層の間若しくは上塗り層5の外面に形成するようにしてもよい。また、下塗り層6、被覆層4、第2の被覆層7、上塗り層5はそれぞれ複数の層で形成されるようにしてもよい。
【0038】
次に、上述した銀皮膜は、魚釣用リールの基材の少なくとも一部に設けることができる。図示しないが、本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、リール本体と、該リール本体の表面の少なくとも一部に形成された銀皮膜1とを備え、該銀皮膜1は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0039】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールによれば、銀錯体溶液を用いて安定かつ良好な銀外観を有する銀皮膜を形成した魚釣用リールを提供することが可能となる。
【0040】
また、本発明の一実施形態に係る釣竿は、竿体と、該竿体の表面の少なくとも一部に形成された銀皮膜とを備え、該銀皮膜は、溶剤を含む銀錯体溶液が該基材に吹き付けられて形成され、該溶剤の沸点が、60℃から80℃の範囲であり、酢酸ブチルの蒸発速度に対する該溶剤の蒸発速度(相対蒸発速度)が、3から8の範囲である溶剤である。
【0041】
本発明の一実施形態に係る釣竿によれば、銀錯体溶液を用いて安定かつ良好な銀外観を有する銀皮膜を形成した釣竿を提供することが可能となる。
【0042】
また、本発明は、ゴルフクラブシャフト、テニスラケットなどのスポーツ用品及びこれに銀皮膜を形成する方法にも適用できる。また、本発明は、その他の種々の部材に銀皮膜を形成する場合にも適当可能である。
【0043】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 銀皮膜
2 基材
3 表面(外面)
4 被覆層
5 上塗り層
6 下塗り層
7 第2の被覆層
10 銀皮膜を含む皮膜構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7