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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】融着シート及び配線部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240313BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240313BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240313BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240313BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20240313BHJP
【FI】
B32B27/00 M
H02G3/04
H02G3/30
C09J7/38
C09J7/21
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021020978
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123583
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】蒲 拓也
(72)【発明者】
【氏名】江端 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 大純
(72)【発明者】
【氏名】三谷 佑介
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112440(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207641(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002634(WO,A1)
【文献】特開平11-335637(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H02G 3/00-3/40
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する基材層と、
前記基材層の前記第1面に部分的に積層され、線状伝送部材と融着可能な融着ベース部分と、
前記基材層の前記第2面に部分的に積層され、前記基材層よりも粘着部材との粘着力が大きい粘着ベース部分と、
を備え、
前記基材層の延在方向に沿って複数の第1区間及び複数の第2区間が設けられ、
前記第1区間は、前記基材層に対して前記粘着ベース部分の積層区間を避けて前記融着ベース部分が積層された区間であり、
前記第2区間は、前記基材層に対して前記融着ベース部分の積層区間を避けて前記粘着ベース部分が積層された区間であり、
前記基材層は、互いに異なる方向に延びる2つの直線領域と、前記2つの直線領域をつなぐ連結領域とを有し、
前記2つの直線領域それぞれの前記連結領域側の端部に前記第1区間が設けられ、
前記連結領域に前記第2区間が設けられる、融着シート。
【請求項2】
請求項1に記載の融着シートであって、
前記第1区間において、前記基材層の前記第2面が露出し、
前記第2区間において、前記基材層の前記第1面が露出する、融着シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の融着シートであって、
前記基材層に対する前記融着ベース部分の積層区間と、前記粘着ベース部分の積層区間とが重ならないようにずれて設けられている、融着シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の融着シートであって、
前記基材層の延在方向に沿って前記第2区間の寸法が前記第1区間の寸法よりも大きい、融着シート。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の融着シートであって、
前記融着ベース部分の主原料である樹脂材料と、前記粘着ベース部分の主原料である樹脂材料とは、同じである、融着シート。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の融着シートであって、
前記基材層は、繊維材シートによって形成され、
前記粘着ベース部分は、内部が一様に埋まったシートによって形成され、
前記粘着ベース部分の表面は、前記基材層の表面よりも平滑である、融着シート。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の融着シートと、
前記第1区間において前記融着ベース部分と融着された線状伝送部材と、
を備える、配線部材。
【請求項8】
請求項7に記載の配線部材であって、
前記連結領域に曲がって配置された前記線状伝送部材が、2つの前記直線領域それぞれの前記連結領域の側の端部に設けられた前記第1区間に融着されている、配線部材。
【請求項9】
融着シートと、
前記融着シートに融着された線状伝送部材と、
を備え、
前記融着シートは、
第1面及び第2面を有する基材層と、
前記基材層の前記第1面に部分的に積層され、線状伝送部材と融着可能な融着ベース部分と、
前記基材層の前記第2面に部分的に積層され、前記基材層よりも粘着部材との粘着力が大きい粘着ベース部分と、
を備え、
前記基材層の延在方向に沿って複数の第1区間及び複数の第2区間が設けられ、
前記第1区間は、前記基材層に対して前記粘着ベース部分の積層区間を避けて前記融着ベース部分が積層された区間であり、
前記第2区間は、前記基材層に対して前記融着ベース部分の積層区間を避けて前記粘着ベース部分が積層された区間であり、
前記線状伝送部材は、前記第1区間において前記融着ベース部分と融着されると共に、前記基材層の前記延在方向に沿って延びるように配置されている、配線部材。
【請求項10】
請求項9に記載の配線部材であって、
前記融着シートにおいて、前記第2区間の両側に前記第1区間が設けられ、前記線状伝送部材が前記第2区間を通りつつ前記第2区間の両側の前記第1区間それぞれに融着されている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融着シート及び配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、線状伝送部材とシート部材とが固定された配線部材を開示している。例えば、特許文献1には、当該シート部材が、内部が一様に埋った樹脂層と不織布層とが積層したものであり、樹脂層が線状伝送部材との融着に用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-24787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不織布層は、毛羽立っていることによって両面粘着テープなどとの粘着性が良くない場合があり、シート部材の粘着性の向上が望まれている。一方で、シート部材の粘着性の向上が図られる際、シート部材の重量増加、及び線状伝送部材との融着性の低下を避けることも望まれている。
【0005】
そこで、融着シートにおいて、重量増加を避けつつ、良好な粘着性及び融着性を得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の融着シートは、第1面及び第2面を有する基材層と、前記基材層の前記第1面に部分的に積層され、線状伝送部材と融着可能な融着ベース部分と、前記基材層の前記第2面に部分的に積層され、前記基材層よりも粘着部材との粘着力が大きい粘着ベース部分と、を備え、前記基材層の延在方向に沿って第1区間及び第2区間が設けられ、前記第1区間は、前記基材層に対して前記粘着ベース部分の積層区間を避けて前記融着ベース部分が積層された区間であり、前記第2区間は、前記基材層に対して前記融着ベース部分の積層区間を避けて前記粘着ベース部分が積層された区間である、融着シートである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、融着シートにおいて、重量増加を避けつつ、良好な粘着性及び融着性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる融着シートを示す斜視図である。
図2図2は融着シートに線状伝送部材を融着する様子を示す説明図である。
図3図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は配線部材を固定する様子を示す分解斜視図である。
図5図5は配線部材の固定構造を示す断面図である。
図6図6は実施形態2にかかる融着シート及びそれを備える配線部材を示す側面図である。
図7図7は融着シートを備える配線部材の固定構造を示す側面図である。
図8図8は実施形態3にかかる融着シート及びそれを備える配線部材を示す平面図である。
図9図9は変形例にかかる融着シート及びそれを備える配線部材を示す側面図である。
図10図10は配線部材の変形例を示す断面図である。
図11図11は配線部材の積層体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の融着シートは、次の通りである。
【0011】
(1)第1面及び第2面を有する基材層と、前記基材層の前記第1面に部分的に積層され、線状伝送部材と融着可能な融着ベース部分と、前記基材層の前記第2面に部分的に積層され、前記基材層よりも粘着部材との粘着力が大きい粘着ベース部分と、を備え、前記基材層の延在方向に沿って第1区間及び第2区間が設けられ、前記第1区間は、前記基材層に対して前記粘着ベース部分の積層区間を避けて前記融着ベース部分が積層された区間であり、前記第2区間は、前記基材層に対して前記融着ベース部分の積層区間を避けて前記粘着ベース部分が積層された区間である、融着シートである。粘着ベース部分が設けられていることによって、良好な粘着性を得ることができる。また、第1区間と第2区間とが設けられていることによって、融着ベース部分の設けられる領域及び粘着ベース部分の設けられる領域を少なくでき、融着シートの重量増加を抑制できる。また、第1区間に粘着ベース部分がないことによって、第1区間における融着ベース部分と線状伝送部材との良好な融着性が得られる。
【0012】
(2)(1)の融着シートにおいて、前記第1区間において、前記基材層の前記第2面が露出し、前記第2区間において、前記基材層の前記第1面が露出してもよい。これにより、基材層を露出させることができる。また第1区間において、融着シートの厚みを薄くでき、良好な融着性を得ることができる。
【0013】
(3)(1)又は(2)の融着シートにおいて、前記基材層に対する前記融着ベース部分の積層区間と、前記粘着ベース部分の積層区間とが重ならないようにずれて設けられていてもよい。これにより、融着シートの重量増加が抑制される。また、基材層の延在方向に沿った融着ベース部分の寸法が小さくても、融着用の治具が粘着ベース部分に接触しにくい。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの融着シートにおいて、前記基材層の延在方向に沿って前記第2区間の寸法が前記第1区間の寸法よりも大きくてもよい。これにより、基材層の延在方向に沿って粘着に向く領域を大きくすることができる。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの融着シートにおいて、前記基材層は、互いに異なる方向に延びる2つの直線領域と、前記2つの直線領域をつなぐ連結領域とを有し、前記2つの直線領域それぞれの前記連結領域側の端部に前記第1区間が設けられ、前記連結領域に前記第2区間が設けられてもよい。線状伝送部材が、2つの直線領域の一方から連結領域を経て2つの直線領域の他方に曲がって配置される際、線状伝送部材が第1区間の融着ベース部分に融着されることによって、曲がった経路に保持されやすい。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの融着シートにおいて、前記融着ベース部分の主原料である樹脂材料と、前記粘着ベース部分の主原料である樹脂材料とは、同じであってもよい。これにより、粘着ベース部分に線状伝送部材を融着したりすることも容易となる。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの融着シートにおいて、前記基材層は、繊維材シートによって形成され、前記粘着ベース部分は、内部が一様に埋まったシートによって形成され、前記粘着ベース部分の表面は、前記基材層の表面よりも平滑であってもよい。これにより、粘着ベース部分を簡易に設けることができる。
【0018】
(8)また、本開示の配線部材は、(1)から(7)のいずれか1つの融着シートと、前記第1区間において前記融着ベース部分と融着された線状伝送部材と、を備える、配線部材である。粘着ベース部分が設けられていることによって、良好な粘着性を得ることができる。また、第1区間と第2区間とが設けられていることによって、融着ベース部分の設けられる領域及び粘着ベース部分の設けられる領域を少なくでき、融着シートの重量増加を抑制できる。また、第1区間に粘着ベース部分がないことによって、第1区間における融着ベース部分と線状伝送部材との良好な融着性が得られる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の融着シートの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる融着シートについて説明する。図1は実施形態1にかかる融着シート10を示す斜視図である。
【0021】
融着シート10は、基材層20と融着ベース部分30と粘着ベース部分40とを備える。基材層20は第1面21及び第2面22を有する。第1面21及び第2面22は互いに反対側を向く。基材層20は、融着シート10の延在方向に沿って第1端部から第2端部まで連続的に設けられている。基材層20の延在方向が融着シート10の延在方向となる。融着ベース部分30は基材層20の第1面21に部分的に積層されている。融着ベース部分30は、基材層20の延在方向に沿って間隔をあけた複数箇所に積層されている。粘着ベース部分40は基材層20の第2面22に部分的に積層されている。粘着ベース部分40は、基材層20の延在方向に沿って間隔をあけた複数箇所に積層されている。融着シート10の2つの面のうち、融着ベース部分30が設けられた面を融着シート10の第1面とし、粘着ベース部分40が設けられた面を融着シート10の第2面とする。
【0022】
基材層20は融着ベース部分30及び粘着ベース部分40を保持する。基材層20は、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40とは異なる構造を有したり、異なる材料で形成されたりしてもよい。基材層20は、融着ベース部分30又は粘着ベース部分40にある機能を高めたり、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40にない機能を融着シート10に追加したりしてもよい。
【0023】
ここでは基材層20は、1層構造を有している。例えば、基材層20は、繊維材シートによって形成される。繊維材シートは、繊維の集合体である。繊維材シートは、繊維を有する糸が規則的に集合するもの(例えば、織地、編地など)であってもよいし、繊維がランダムに集合するもの(例えば、不織布など)であってもよい。繊維材シートの表面において、繊維材シートを構成する繊維が毛羽立っていてもよい。この毛羽立ちにより、繊維材シートの表面は粘着部材90(図4参照)との粘着性が低下する。例えば、繊維材シートの表面と粘着部材との実質的な接触面積が低下したり、繊維が繊維材シートからほつれたりして、粘着性が低下する。繊維材シートが、例えば、不織布又はマルチフィラメントの糸による織地、編地などであると、繊維材シートの表面において、繊維材シートを構成する繊維が毛羽立ちやすい。
【0024】
基材層20を構成する主原料は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、基材層20が繊維材シートである場合に、繊維材シートを構成する繊維は天然繊維であってもよいし、合成繊維などの化学繊維であってもよい。合成繊維としては、如何なるものであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系合成繊維であってもよいし、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系合成繊維であってもよいし、ナイロンなどのポリアミド系合成繊維などが用いられてもよい。
【0025】
融着ベース部分30は、線状伝送部材60(図2参照)と融着可能な部分である。融着ベース部分30は基材層20よりも線状伝送部材60の被覆層62(図3参照)と融着しやすい。融着ベース部分30の主原料は、基材層20の主原料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。融着ベース部分30の主原料は、樹脂材料、好ましくは熱可塑性樹脂材料であるとよい。好ましくは融着ベース部分30の樹脂材料が軟化して線状伝送部材60に融着される。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、ポリ塩化ビニル(PVC)、PE、PP、PET等を採用することができる。例えば融着ベース部分30は、被覆層62の樹脂材料と相性が良い樹脂材料によって構成される。
【0026】
融着ベース部分30の構造は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば融着ベース部分30は、内部が一様に埋まったシート(非発泡シート又はソリッドシートなどとも呼ばれる)であってもよい。また例えば、融着ベース部分30は、発泡シート等であることも考えられる。
【0027】
粘着ベース部分40は、基材層20よりも粘着部材90との粘着力が大きい部分である。例えば、粘着ベース部分40の表面が、基材層20の表面よりも平滑であることによって、毛羽立ちが少なくなり、粘着ベース部分40と粘着部材90との粘着力は、基材層20と粘着部材90との粘着力よりも大きくなる。粘着ベース部分40の構造は融着ベース部分30の構造と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、粘着ベース部分40は、ソリッドシート又は発泡シートによって形成されてもよい。粘着ベース部分40の主原料は、基材層20の主原料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。粘着ベース部分40の主原料は、融着ベース部分30の主原料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。粘着ベース部分40の主原料は、樹脂材料、好ましくは熱可塑性樹脂材料であるとよい。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、PVC、PE、PP、PET等を採用することができる。
【0028】
基材層20の第1面21に融着ベース部分30が固定され、基材層20の第2面22に粘着ベース部分40が固定されている。基材層20と融着ベース部分30との固定態様及び基材層20と粘着ベース部分40との固定態様は特に限定されるものではないが、融着又は接着により固定されているとよい。例えば、基材層20の第1面21又は第2面22が、繊維材シートのように表面に空隙があるシートであると、空隙に融着ベース部分30、粘着ベース部分40の樹脂材料又は接着剤が入り込んで固定されることができる。これによりいわゆるアンカー効果が発揮されて、基材層20と融着ベース部分30及び粘着ベース部分40とが強固に固定される。
【0029】
ここでは融着ベース部分30及び粘着ベース部分40が樹脂製のソリッドシートであり、基材層20が繊維材シートである。またここでは融着ベース部分30及び粘着ベース部分40が基材層20に融着されている。融着ベース部分30及び粘着ベース部分40の樹脂が流動性を有する状態で基材層20の繊維の間に入り込んだ後に硬化される。これにより、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40の樹脂が基材層20における繊維の間などの空隙に入り込んだ状態が維持され、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40が、基材層20にそれぞれ強固に固定される。
【0030】
融着ベース部分30及び粘着ベース部分40は、基材層20よりも小さく形成されている。融着ベース部分30及び基材層20は接触する領域が全体的に固定されている。融着ベース部分30及び基材層20は接触する領域の一部のみが固定されていてもよい。粘着ベース部分40及び基材層20は接触する領域が全体的に固定されている。粘着ベース部分40及び基材層20は接触する領域の一部のみが固定されていてもよい。
【0031】
融着ベース部分30の平面形状及び粘着ベース部分40の平面形状は方形状である。融着ベース部分30の平面形状及び粘着ベース部分40の平面形状は方形状以外の形状であってもよい。融着ベース部分30と粘着ベース部分40とは、同じ大きさに形成されている。融着ベース部分30と粘着ベース部分40とは、一方が他方よりも大きく形成されていてもよい。
【0032】
融着シート10には、基材層20に対する融着ベース部分30及び粘着ベース部分40の積層状態が互いに異なる区間が、延在方向に沿って設けられている。基材層20に対する融着ベース部分30及び粘着ベース部分40の積層状態が互いに異なる区間として、基材層20に対する融着ベース部分30の積層の有無及び粘着ベース部分40の積層の有無の組み合わせに応じた4つの区間が生じうる。本開示において、この4つの区間は、第1区間S1(図2参照)、第2区間S2(図2参照)、第3区間S3(図6参照)及び第4区間S4(図9参照)と称される。
【0033】
第1区間S1は、基材層20に対して融着ベース部分30が積層されつつ、粘着ベース部分40が積層されない区間である。第1区間S1は、基材層20に対して粘着ベース部分40の積層区間を避けて融着ベース部分30が積層された区間である。第2区間S2は、基材層20に対して融着ベース部分30が積層されずに粘着ベース部分40が積層された区間である。第2区間S2は、基材層20に対して融着ベース部分30の積層区間を避けて粘着ベース部分40が積層された区間である。第3区間S3は、基材層20に対して融着ベース部分30及び粘着ベース部分40のうち両方とも積層されていない区間である。第4区間S4は、基材層20に対して融着ベース部分30及び粘着ベース部分40の両方が積層された区間である。
【0034】
融着シート10の第1面に融着ベース部分30が現れる。融着シート10の第1面において、融着ベース部分30が現れうる部分は、第1区間S1又は第4区間S4である。融着シート10の第1面において、融着ベース部分30が現れえない部分は、第2区間S2又は第3区間S3である。融着シート10の第1面には厚み方向に凹凸が生じている。融着シート10の第1面における凸部に融着ベース部分30が現れる。融着シート10の第1面における凹部に融着ベース部分30が現れない。
【0035】
融着シート10の第2面に粘着ベース部分40が現れる。融着シート10の第2面において、粘着ベース部分40が現れうる部分は、第2区間S2又は第4区間S4である。融着シート10の第2面において、粘着ベース部分40が現れえない部分は、第1区間S1又は第3区間S3である。融着シート10の第2面には厚み方向に凹凸が生じている。融着シート10の第2面における凸部に粘着ベース部分40が現れる。融着シート10の第2面における凹部に粘着ベース部分40が現れない。
【0036】
融着シート10には、上記4つの区間のうち少なくとも第1区間S1及び第2区間S2が延在方向に沿って設けられている。融着シート10の延在方向に沿って、第3区間S3及び第4区間S4は設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0037】
ここでは基材層20に対する融着ベース部分30の積層区間と、粘着ベース部分40の積層区間とが重ならないようにずれて設けられている。つまり、融着シート10には第4区間S4が設けられていない。さらにここでは、基材層20の延在方向に沿った第1端部から第2端部に向けて、第1区間S1及び第2区間S2が間隔をあけずに交互に連続している。つまり、融着シート10には基材層20の延在方向に沿って第1区間S1及び第2区間S2のみが設けられ、第3区間S3及び第4区間S4は設けられていない。このため、融着シート10において、第1面の凹凸形状と第2面の凹凸形状とが完全に逆転している。融着シート10において、基材層20の延在方向に沿った第1端部及び第2端部の両方に融着ベース部分30が設けられている。融着シート10において、基材層20の延在方向に沿った第1端部及び第2端部の両方に粘着ベース部分40が設けられていてもよい。融着シート10において、基材層20の延在方向に沿った第1端部に融着ベース部分が設けられ、第2端部に粘着ベース部分40が設けられていてもよい。
【0038】
ここでは、基材層20の第1面21において、融着ベース部分30が設けられていない部分には、他の層は積層されていない。このため、融着シート10の第2区間S2において、基材層20の第1面21が露出している。融着シート10の第1面において、融着ベース部分30とは異なる部分(ここでは融着シート10の第1面における凹部)に基材層20が現れる。ここでは、基材層20の第2面22において、粘着ベース部分40が設けられていない部分には、他の層は積層されていない。このため、融着シート10の第1区間S1において、基材層20の第2面22が露出している。融着シート10の第2面において、粘着ベース部分40とは異なる部分(ここでは融着シート10の第2面における凹部)に基材層20が現れる。
【0039】
図1に示す例では、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40は、基材層20の幅方向に沿った一端から他端まで全体にわたって設けられている。融着ベース部分30は基材層20の幅方向に沿った一部のみに設けられていてもよい。粘着ベース部分40は基材層20の幅方向に沿った一部のみに設けられていてもよい。例えば、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40は基材層20の幅方向に沿った両端部に設けられずに、中間部のみに設けられていてもよい。この場合、基材層20の幅方向に沿った両端部それぞれにおいて、第3区間S3が基材層20の幅方向に沿った一端部から他端部まで連続する。
【0040】
融着シート10は柔らかい部材であってもよい。例えば、融着ベース部分30及び粘着ベース部分40が軟質PVCなど軟質な樹脂を材料とするソリッドシートであり、基材層20がPETを材料とする不織布であるなどして、融着シート10が柔らかい部材とされる。例えば、融着シート10は線状伝送部材60の曲げに追従可能な柔らかさを有してもよい。つまり配線部材70は厚み方向への曲げ(折目が融着シート10の主面に沿うような曲げ)が可能とされてもよい。
【0041】
<配線部材70>
図2は融着シート10に線状伝送部材60を融着して配線部材70とする様子を示す説明図である。図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0042】
配線部材70は、融着シート10と線状伝送部材60とを備える。線状伝送部材60は、基材の延在方向に沿って延びるように融着シート10の第1面上に配置される。線状伝送部材60は、第1区間S1において融着ベース部分30と融着される。
【0043】
線状伝送部材60は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。線状伝送部材60は、1本又は複数本含まれる。ここでは、線状伝送部材60は、複数本含まれる。融着シート10は、全体として扁平な形状に形成されている。複数の線状伝送部材60が融着シート10の幅方向に並んだ状態で融着シート10に固定されることによって、配線部材70が扁平な形態に保たれる。
【0044】
線状伝送部材60は、車両における部品同士を接続する部材であることが想定される。線状伝送部材60の端部には、例えばコネクタCが設けられる。このコネクタCが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、線状伝送部材60が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材70は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材70として用いられる。コネクタCは、融着シート10に固定されていてもよい。
【0045】
線状伝送部材60の経路は、接続先となる部品の位置等に応じて設定される。線状伝送部材60が融着シート10に固定されることによって、線状伝送部材60がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。線状伝送部材60は、幹線から枝線が分岐する態様で、融着シート10に固定されていてもよい。融着シート10も幹線が固定される部分から枝線が固定される部分が分岐する形状に形成されていてもよい。線状伝送部材60は、融着シート10上で曲がった経路を有していてもよい。融着シート10の平面形状も線状伝送部材60の曲がった経路に応じて曲がった形状とされていてもよい。
【0046】
線状伝送部材60は、伝送線本体61と被覆層62とを含む。伝送線本体61は、電気又は光等を伝送する。伝送線本体61は、電線における芯線、又は、光ファイバにおけるコア及びクラッドに相当する。被覆層62は伝送線本体61を覆う。例えば被覆層62は樹脂等が伝送線本体61の周囲に押出成形されたものである。例えば、線状伝送部材60は、芯線と芯線の周囲の被覆層62とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0047】
電気を伝送する線状伝送部材60は、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材60の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0048】
また、線状伝送部材60は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0049】
線状伝送部材60と融着シート10とは、被覆層62と融着ベース部分30とが融着されることによって固定される。線状伝送部材60と融着シート10とが融着された部分は融着部WPとされる。融着部WPにおいて、被覆層62の材料と融着ベース部分30の材料との両方が溶けて混ざり合った状態となっているとよい。この場合、被覆層62の主原料の樹脂材料は、融着ベース部分30の主原料の樹脂材料と同じであると良い。被覆層62の樹脂材料と融着ベース部分30の樹脂材料との一方のみが溶けて相手側の部材に接着した状態となっていてもよい。
【0050】
線状伝送部材60と融着シート10との融着は、加熱加圧機構を有する融着機によって行われてもよい。かかる融着機は、特に限定されるものではないが、例えば、超音波融着機UWである。超音波融着機UWは、加熱加圧機構としてのホーンH及びアンビルAを備える。ホーンHは、互いに融着される2部材に対して一方側に位置し、融着対象部分に超音波振動を付与する部材である。アンビルAは、互いに融着される2部材に対してホーンHとは反対側に位置する。互いに融着される2部材はホーンHとアンビルAとによって挟まれつつ、ホーンHからの超音波振動を受ける。この超音波振動によって融着対象部分に摩擦熱が生じることによって、融着対象部分が加熱される。この際、融着対象部分を効率的に発熱させる(ここでは融着対象部分に効率的に超音波振動による摩擦熱を生じさせる)観点から、加熱部材(ここではホーンH)と融着対象部分との距離が近いことが好ましい。本例では、融着シート10側に加熱部材(ここではホーンH)が位置する。本例では、第1区間S1において、粘着ベース部分40が設けられていないため、その分、ホーンHを融着ベース部分30に近づけることができる。これにより、線状伝送部材60と融着シート10との良好な融着性が得られる。
【0051】
図2に示す例では、融着ベース部分30のうち基材層20の延在方向に沿った一部分のみが融着部WPとされる。融着ベース部分30には、基材層20の延在方向に沿って融着部WPとされる部分と、融着部WPとされない部分とが生じる。これは、ホーンHが融着ベース部分30よりも小さいためである。本例のように、第1区間S1と第2区間S2とが基材層20の延在方向に沿って間隔をあけずに連続する場合、ホーンHが融着ベース部分30よりも小さくされることによって、粘着ベース部分40がホーンHに干渉する恐れを低くできる。なお、融着ベース部分30のうち基材層20の延在方向に沿った全体が融着部WPとされてもよい。
【0052】
<配線部材70の固定構造>
図4は配線部材70を固定する様子を示す分解斜視図である。図5は配線部材70の固定構造を示す断面図である。
【0053】
配線部材70の固定対象80は、車両に搭載される部品であればよく、例えばルーフトリムなどの内装部材、車体パネルなどの外装部材、又はボディなどであってもよい。固定対象80は、配置面82を有する。配置面82上に配線部材70が配置される。配置面82が平坦面であり、平坦面に沿って配線部材70が平坦なまま配置されてもよい。配置面82が曲面であり、曲面に沿って配線部材70が曲って配置されてもよい。配置面82には段差があり、段差を越えるように配線部材70が配置されてもよい。
【0054】
配置面82上には粘着部材90が設けられている。粘着部材90は特に限定されるものではないが、例えばブチルテープなどの両面粘着テープである。粘着部材90は融着シート10の延在方向に沿って連続的に設けられている。粘着部材90は融着シート10の延在方向に沿って断続的に設けられていてもよい。この場合、粘着部材90は第2区間S2が配置される位置に部分的に設けられていればよい。
【0055】
配線部材70は、融着シート10のうち粘着ベース部分40が現れる第2面を粘着部材90に向けた姿勢で、配置面82上に配置される。粘着ベース部分40が粘着部材90に粘着することによって配線部材70が固定対象80に固定される。粘着ベース部分40は、基材層20よりも粘着部材90との粘着力が大きいため、良好な粘着性が得られる。融着シート10における第2面のうち粘着ベース部分40が設けられない部分(例えば第1区間S1)は、粘着部材90に接してもよいし、接していなくてもよい。
【0056】
<効果>
以上のように構成された融着シート10及びそれを備える配線部材70によると、粘着ベース部分40が設けられていることによって、良好な粘着性を得ることができる。また、第1区間S1と第2区間S2とが設けられていることによって、融着ベース部分30の設けられる領域及び粘着ベース部分40の設けられる領域を少なくでき、融着シート10の重量増加を抑制できる。また、第1区間S1に粘着ベース部分40がないことによって、第1区間S1における融着ベース部分30と線状伝送部材60との良好な融着性が得られる。
【0057】
また、基材層20に対する融着ベース部分30の積層区間と、粘着ベース部分40の積層区間とが重ならないようにずれて設けられている。これにより、融着シート10の重量増加が抑制される。また、基材層20の延在方向に沿った融着ベース部分30の寸法が小さくても、融着用の治具が粘着ベース部分40に接触しにくい。
【0058】
また、第1区間S1において、基材層20の第2面22が露出し、第2区間S2において、基材層20の第1面21が露出する。これにより、基材層20を露出させることができる。また第1区間S1において、融着シート10の厚みを薄くでき、良好な融着性を得ることができる。
【0059】
また、融着ベース部分30の主原料である樹脂材料と、粘着ベース部分40の主原料である樹脂材料とは、同じである。これにより、粘着ベース部分40に線状伝送部材60を融着したりすることも容易となる。
【0060】
また、基材層20は、繊維材シートによって形成され、粘着ベース部分40は、内部が一様に埋まったシートによって形成され、粘着ベース部分40の表面は、基材層20の表面よりも平滑である。これにより、粘着ベース部分40を簡易に設けることができる。
【0061】
[実施形態2]
実施形態2にかかる融着シートについて説明する。図6は実施形態2にかかる融着シート110及びそれを備える配線部材170を示す側面図である。図7は融着シート110を備える配線部材170の固定構造を示す側面図である。なお、以下の各実施形態及び変形例の説明において、これまで説明されたものと同様構成要素については同一符号が付されて、その説明が省略される。
【0062】
融着シート110は、基材層20の延在方向に沿って第2区間S2の寸法が第1区間S1の寸法よりも大きい点で上記融着シート10とは異なる。融着シート110において、基材層20の延在方向に沿って第2区間S2の寸法が第1区間S1の寸法よりも大きいことによって、基材層20の延在方向に沿って粘着に向く領域を大きくすることができる。
【0063】
これを満たす第1区間S1の寸法及び第2区間S2の寸法は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法は、10ミリメートルから30ミリメートルの間のいずれかの値とされてもよい。例えば、基材層20の延在方向に沿った第2区間S2の寸法は、50ミリメートルから150ミリメートルの間のいずれかの値とされてもよい。また例えば、基材層20の延在方向に沿った第2区間S2の寸法と、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法との差が、50ミリメートルから150ミリメートルの間のいずれかの値とされてもよい。また例えば、基材層20の延在方向に沿った第2区間S2の寸法は、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法の2倍から10倍の間のいずれかの値とされてもよい。また例えば、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法は、基材層20の幅方向に沿った基材層20の寸法よりも小さく、基材層20の延在方向に沿った第2区間S2の寸法は、基材層20の幅方向に沿った基材層20の寸法と同じかそれよりも大きくてもよい。
【0064】
さらに融着シート110には、第3区間S3が設けられている点で、上記融着シート10とは異なる。第3区間S3が第1区間S1と第2区間S2との間に設けられている。これにより、融着シート110においても、上記融着シート10と同様に、基材層20に対する融着ベース部分30の積層区間と、粘着ベース部分40の積層区間とが重ならないようにずれて設けられている。つまり、融着シート110に第4区間S4が設けられない。また第3区間S3が設けられていることによって、基材層20の延在方向に沿った融着ベース部分30の寸法が小さくても、融着用の治具が粘着ベース部分40により接触しにくい。また図6に示す例のように、融着ベース部分30のうち基材層20の延在方向に沿った全体が融着部WPとされることも容易となる。
【0065】
基材層20の延在方向に沿った第3区間S3の寸法は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、基材層20の延在方向に沿った第3区間S3の寸法は、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法及び第2区間S2の寸法よりも小さくてもよい。
【0066】
[実施形態3]
実施形態3にかかる融着シートについて説明する。図8は実施形態3にかかる融着シート210及びそれを備える配線部材270を示す平面図である。
【0067】
融着シート210は、基材層20が曲った経路を有する点で、上記融着シート10とは異なる。具体的には、基材層20は、互いに異なる方向に延びる2つの直線領域23、24と、2つの直線領域23、24をつなぐ連結領域25とを有する。図8に示す例では、2つの直線領域23、24の延在方向は直交しているが、直交以外の角度で交差していてもよい。2つの直線領域23、24それぞれの連結領域25側の端部に第1区間S1が設けられている。連結領域25に第2区間S2が設けられている。なお、連結領域25は、2つの直線領域23、24それぞれの延長領域が互いに重なる領域である。典型的には、連結領域25は平行四辺形状を呈する。図8に示す例のように、2つの直線領域23、24の延在方向が直交している場合、連結領域25は方形状を呈する。
【0068】
本例の融着シート210によると、線状伝送部材60が、2つの直線領域23、24の一方から連結領域25を経て2つの直線領域23、24の他方に曲がって配置される際、線状伝送部材60が2つの直線領域23、24それぞれの連結領域25側の端部に設けられた第1区間S1の融着ベース部分30に融着されることによって、曲がった経路に保持されやすい。
【0069】
[変形例]
図9は変形例にかかる融着シート310及びそれを備える配線部材370を示す側面図である。
【0070】
融着シート310には、第4区間S4が設けられている。第4区間S4は、第1区間S1と第2区間S2との間に設けられている。基材層20の延在方向に沿った第4区間S4の寸法は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、基材層20の延在方向に沿った第4区間S4の寸法は、基材層20の延在方向に沿った第1区間S1の寸法及び第2区間S2の寸法よりも小さくてもよい。融着シート310において、第4区間S4が設けられていることによって、第1区間S1と第2区間S2との間で融着シート310が折れ曲がりにくくなる。融着シート310において、第4区間S4が設けられている場合、第4区間S4は、線状伝送部材60と融着されていてもよいが、融着されていないことが好ましい。
【0071】
また融着シート310は、融着ベース部分30をつなぐ第1連結部分50を有している。第1連結部分50は、融着ベース部分30と同じ材料製で、融着ベース部分30よりも厚みが薄く形成される。この場合、基材層20の第1面21が、融着ベース部分30及び第1連結部分50によって全面的に隠される。融着シート310の第1面に第1連結部分50が現れ、基材層20は現れない。融着シート310の第1面において第1連結部分50が現れる部分は、融着ベース部分30が現れる部分よりも凹んでいる。融着シート310の第1面において第1連結部分50が現れる部分は、第2区間S2又は第3区間S3である。
【0072】
また融着シート310は、粘着ベース部分40をつなぐ第2連結部分52を有している。第2連結部分52は、粘着ベース部分40と同じ材料製で、粘着ベース部分40よりも厚みが薄く形成される。この場合、基材層20の第2面22が、粘着ベース部分40及び第2連結部分52によって全面的に隠される。融着シート310の第2面に第2連結部分52が現れ、基材層20は現れない。融着シート310の第2面において第2連結部分52が現れる部分は、粘着ベース部分40が現れる部分よりも凹んでいる。融着シート310の第2面において第2連結部分52が現れる部分は、第1区間S1又は第3区間S3である。
【0073】
図10は配線部材70の変形例を示す側面図である。
【0074】
図10に示す変形例にかかる配線部材470において、融着シート10の両面に線状伝送部材60が融着されている。融着シート10の第1面において、配線部材70と同様に、融着ベース部分30に線状伝送部材60が融着されている。融着シート10の第2面において、粘着ベース部分40に線状伝送部材60が融着されている。かかる粘着ベース部分40は、融着ベース部分30と同じ材料、及び構造を有していると良い。
【0075】
融着ベース部分30に融着される線状伝送部材60と、粘着ベース部分40に融着される線状伝送部材60とは、融着シート10の幅方向に沿ってずれている。融着ベース部分30に融着される線状伝送部材60は、融着シート10の幅方向に沿った一端側に位置する。粘着ベース部分40に融着される線状伝送部材60は、融着シート10の幅方向に沿った他端側に位置する。
【0076】
図11は配線部材の積層体及びその固定構造を示す側面図である。
【0077】
図11に示す例では、3つの配線部材70、70A、470が積層して配線部材の積層体を構成している。3つの配線部材70、70A、470のうち1つの配線部材70は、上記配線部材70と同じである。3つの配線部材70、70A、470のうち他の1つの配線部材470は、上記配線部材470と同じである。3つの配線部材70、70A、470のうち残りの1つの配線部材70Aは、上記配線部材70、170、270、370、470とは異なる。配線部材70Aの融着シート10Aには、粘着ベース部分40が設けられていない。融着シート10Aにおいて、基材層20の第1面に、基材層20の延在方向に沿って第1端部から第2端部まで全体にわたって連続的に融着ベース部分30が設けられている。配線部材70Aにおいて、融着シート10Aの第1面に線状伝送部材60が融着されている。配線部材70Aにおいて、融着シート10Aの第2面には線状伝送部材60が融着されていない。配線部材70Aにおいて、基材層20の第2面22が露出している。
【0078】
3つの配線部材70は、配線部材70、配線部材470、配線部材70Aの順に重なっている。配線部材70の粘着ベース部分40が固定対象80を向いている。配線部材70Aの基材層20が外面を向いている。
【0079】
3つの配線部材70、70A、470の線状伝送部材60は、配線部材70の融着シート10と、配線部材70Aの融着シート10Aとの間に位置し、これらの融着シート10、10Aに保護される。本例のように、融着シート10の両面にそれぞれ線状伝送部材60が融着された配線部材470は、3つ以上の配線部材の積層体の中間層として設けられてもよい。
【0080】
このほか、これまで基材層20が1層構造であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。基材層20は複数層構造を有していてもよい。基材層20が複数層構造を有している場合、基材層20の少なくとも第2面22が繊維材シートによって構成されているとよい。
【0081】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10、10A、110、210、310 融着シート
20 基材層
21 第1面
22 第2面
23、24 直線領域
25 連結領域
30 融着ベース部分
40 粘着ベース部分
50 第1連結部分
52 第2連結部分
60 線状伝送部材
61 伝送線本体
62 被覆層
70、70A、170、270、370 配線部材
80 固定対象
82 配置面
90 粘着部材
S1 第1区間
S2 第2区間
S3 第3区間
S4 第4区間
C コネクタ
WP 融着部
UM 超音波融着機
H ホーン
A アンビル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11