(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240313BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240313BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/02 J
H02J7/02 F
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2021123002
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-045017(JP,A)
【文献】特開2013-172552(JP,A)
【文献】特開2013-179780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0066291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、
前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、
前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、
前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、
前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理と
を実行する蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記充電処理の実行前に、前記複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲内であるか否かを判定する第1の判定処理と、
前記第1の判定処理において前記複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲外と判定された場合に、前記複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に調整する第1の調整処理と
を実行する請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記バイパス処理の実行後に、前記複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲内であるか否かを判定する第2の判定処理と、
前記第2の判定処理において前記複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲外と判定された場合に、前記複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に調整する第2の調整処理と
を実行する請求項2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部と、前記バイパス部と前記切換部とを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、
前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、
前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、
前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理と
を実行する蓄電システム。
【請求項5】
直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部とを備える蓄電システムをコンピュータを用いて制御する蓄電池制御方法であって、
前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、
前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、
前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、
前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理と
を実行する蓄電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバッテリが直列接続されたバッテリ装置の充電を制御するシステムとして、各バッテリの状態に基づいて充電を避けるバッテリを選択し、その充電を避けるバッテリをバイパスして他のバッテリに充電するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の電池セルが直列接続される電池セル列が複数並列に接続された電池セル群を備えるシステムとして、電池セルを劣化と判定すると各電池セル列の健全状態を示す評価値が所定の閾値以上となるように、電池セルの接続構成を電池セル列間で電池セルを交換した状態に変更するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載のシステムでは、電池セルをバイパスして電池セル単位での充放電を行うことができる。また、特許文献2に記載のシステムでは、電池セル列の並列接続による大容量化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-31249号公報
【文献】特開2013-240155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の電池セル列が並列接続されるシステムでは、充放電の進行中に電池セルのバイパス制御が実行される度に、バイパスされた電池セルを含む電池セル列の総電圧が段階的に変化し、電池セル列間で総電圧に差が生じる。総電圧に差のある複数の電池セル列を並列接続した場合には、総電圧の高い電池セル列から総電圧の低い電池セル列へ循環電流が流れる。そのため、循環電流が許容範囲を超える場合には、複数の電池セル列を並列接続することができず、大容量化を実現できない。
【0006】
電池セル列内で満充電になった電池セルの電力を消費して他の電池セルへの充電を継続するという従来から公知のバランシングという方法は存在するが、大規模な蓄電システムや容量の大きく異なる電池セルが混在する蓄電システムでは、電力のロスが大きくなる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、複数の蓄電池列が並列接続される蓄電システムにおいて、蓄電池列間の循環電流を十分に抑えたうえで、複数の蓄電池列を並列接続することができ、且つ、充電中に放電に切り換わった際に複数の蓄電池列から放電することができる蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電池制御装置は、直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理とを実行する。
【0009】
本発明の蓄電システムは、直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部と、前記バイパス部と前記切換部とを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理とを実行する。
【0010】
本発明の蓄電池制御方法は、直列接続される複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスするバイパス部とをそれぞれ備え並列接続される複数の蓄電池列と、前記複数の蓄電池列の接続/切断を切り換える切換部とを備える蓄電システムをコンピュータを用いて制御する蓄電池制御方法であって、前記複数の蓄電池列を前記切換部により並列接続した状態で充電する充電処理と、前記充電処理の実行中に満充電の蓄電池を検知する第1の検知処理と、前記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の蓄電池列の充電中の蓄電池の中で最も高電位の蓄電池を検知する第2の検知処理と、前記切換部により前記複数の蓄電池列を遮断した状態で、前記第1の検知処理において検知された蓄電池と前記第2の検知処理において検知された全ての蓄電池とを前記バイパス部によりバイパスするバイパス処理とを実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の蓄電池列が並列接続される蓄電システムにおいて、蓄電池列間の循環電流を十分に抑えたうえで、複数の蓄電池列を並列接続することができ、且つ、充電中に放電に切り換わった際に複数の蓄電池列から放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備える蓄電システムの概略を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す制御装置の機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す制御装置による充電制御について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置100を備える蓄電システム1の概略を示す図である。この図に示すように、蓄電システム1は、第1の蓄電池列10と、第2の蓄電池列20と、切換部30と、充放電回路15と、制御装置100とを備える。この蓄電システム1は、車載用あるいは定置用の電源である。
【0015】
第1の蓄電池列10は、直列接続されたn個(nは2以上の整数)の蓄電池C1-1~C1-nを備える。また、第2の蓄電池列20は、直列接続されたn個の蓄電池C2-1~C2-nを備える。なお、第1の蓄電池列10が備える蓄電池C1-1~C1-nを蓄電池C1-xと総称する場合がある。また、第2の蓄電池列20が備える蓄電池C2-1~C1-nを蓄電池C2-xと総称する場合がある。
【0016】
蓄電池C1-x,C2-xは、蓄電池セル、又は複数の蓄電池セルが接続された蓄電池モジュールや蓄電池パックである。また、蓄電池C1-x,C2-xは、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池である。特に限定するわけではないが、本実施形態の蓄電池C1-x,C2-xは、車載利用等された中古電池を再生したものであり、各蓄電池C1-x,C2-xの劣化度に差がある。これらの蓄電池C1-x,C2-xを組み合わせて第1の蓄電池列10、第2の蓄電池列20として構成する際には、各蓄電池C1-x,C2-xの劣化状態を計測してそれらを電池容量に応じて選別した後、蓄電システム1の総容量が必要容量を満足するように、蓄電池C1-x,C2-xを組み合わせている。なお、第1の蓄電池列10の蓄電池C1-xの劣化度や第2の蓄電池列20の蓄電池C2-xの劣化度を揃える必要はなく、第1の蓄電池列10の全容量や第2の蓄電池列20の全容量が蓄電システム1の要件を満たしていればよい。
【0017】
これらの蓄電池C1-x,C2-xは、充放電回路15を通じて外部系統16から電力を供給されて充電され、充電された電力を充放電回路15を通じて放電して外部系統16に電力を供給する。ここで、外部系統16は、負荷や発電機等を含む。蓄電システム1が車載用の場合には、駆動用モータ、エアコン、各種車載電装品等が負荷となる。なお、駆動用モータは負荷になり発電機にもなる。また、蓄電システム1が定置用の場合には、家庭内の家電、商用電源系統、液晶表示器、通信モジュール等が負荷となり、太陽光発電システム等が発電機となる。
【0018】
第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20とは充放電回路15に対して並列で接続されている。切換部30は、第1スイッチS10と第2スイッチS20とを備える。第1スイッチS10は、第1の蓄電池列10に設けられており、第1の蓄電池列10と充放電回路15との接続/遮断の状態を切り換える。他方で、第2スイッチS20は、第2の蓄電池列20に設けられており、第2の蓄電池列20と充放電回路15との接続/遮断の状態を切り換える。なお、第1スイッチS10は、第1の蓄電池列10の始端と終端との間の何れかに設けてもよい。同様に、第2スイッチS20は、第2の蓄電池列20の始端と終端との間の何れかに設けてもよい。
【0019】
第1の蓄電池列10は、n個(nは2以上の整数)のバイパス回路B1-1~B1-nを備える。第2の蓄電池列20は、n個のバイパス回路B2-1~B2-nを備える。なお、第1の蓄電池列10が備えるバイパス回路B1-1~B1-nをバイパス回路B1-xと総称する場合がある。また、第2の蓄電池列20が備えるバイパス回路B2-1~B2-nをバイパス回路B2-xと総称する場合がある。
【0020】
各バイパス回路B1-xは、各蓄電池C1-xに対応して設けられ、各バイパス回路B2-xは、各蓄電池C2-xに対応して設けられている。各バイパス回路B1-xは、バイパス線BLと、バイパススイッチS1A-1~S1A-nと、遮断スイッチS1B-1~S1B-nとを備える。また、各バイパス回路B2-xは、バイパス線BLと、バイパススイッチS2A-1~S2A-nと、遮断スイッチS2B-1~S2B-nとを備える。なお、第1の蓄電池列10が備えるバイパススイッチS1A-1~S1A-nをバイパススイッチS1A-xと総称する場合がある。また、第1の蓄電池列10が備える遮断スイッチS1B-1~S1B-nを遮断スイッチS1B-xと総称する場合がある。また、第2の蓄電池列20が備えるバイパススイッチS2A-1~S2A-nをバイパススイッチS2A-xと総称する場合がある。さらに、第2の蓄電池列20が備える遮断スイッチS2B-1~S2B-nを遮断スイッチS2B-xと総称する場合がある。
【0021】
バイパス線BLは、各蓄電池C1-x,C2-xをバイパスする電力線である。バイパススイッチS1A-x,S2A-xは、バイパス線BLに設けられている。このバイパススイッチS1A-x,S2A-xは、例えば機械的スイッチである。遮断スイッチS1B-x,S2B-xは、各蓄電池C1-x,C2-xの正極とバイパス線BLの一端との間に設けられている。この遮断スイッチS1B-x,S2B-xは、例えば半導体スイッチである。
【0022】
始端の蓄電池C1-1,C2-1は充放電回路15を介して負荷等の外部系統16に接続され、終端の蓄電池C1-n,C2-nも充放電回路15を介して負荷等の外部系統16に接続されている。第1の蓄電池列10の全てのバイパス回路B1-xにおいてバイパススイッチS1A-xがOFFになり遮断スイッチS1B-xがONになった場合に、第1の蓄電池列10の全ての蓄電池C1-xが充放電回路15を介して負荷等の外部系統16に直列接続される。他方で、第1の蓄電池列10の何れかのバイパス回路B1-xにおいて遮断スイッチS1B-xがOFFになり、バイパススイッチS1A-xがONになった場合に、当該バイパス回路B1-xに対応する蓄電池C1-xがバイパスされる。
【0023】
同様に、第2の蓄電池列20の全てのバイパス回路B2-xにおいてバイパススイッチS2A-xがOFFになり遮断スイッチS2B-xがONになった場合に、第2の蓄電池列20の全ての蓄電池C2-xが充放電回路15を介して負荷等の外部系統16に直列接続される。他方で、第2の蓄電池列20の何れかのバイパス回路B2-xにおいて遮断スイッチS2B-xがOFFになり、バイパススイッチS2A-xがONになった場合に、当該バイパス回路B2-xに対応する蓄電池C2-xがバイパスされる。
【0024】
第1の蓄電池列10は、複数の電圧測定部12と、電流測定部13とを備える。電圧測定部12は、各蓄電池C1-xの正負極端子間に接続されており、各蓄電池C1-xの端子間電圧を測定する。また、電流測定部13は、第1の蓄電池列10の始端に設けられており、第1の蓄電池列10の充放電電流を測定する。
【0025】
第2の蓄電池列20は、複数の電圧測定部22と、電流測定部23とを備える。電圧測定部22は、各蓄電池C2-xの正負極端子間に接続されており、各蓄電池C2-xの端子間電圧を測定する。また、電流測定部23は、第2の蓄電池列20の始端に設けられており、第2の蓄電池列20の充放電電流を測定する。
【0026】
図2は、
図1に示す制御装置100の機能を示すブロック図である。この図に示すように、制御装置100は、スイッチ制御部101と、満充電検知部102と、高電位検知部103と、バイパス制御部104と、総電圧判定部105と、総電圧調整部106とを備える。
【0027】
スイッチ制御部101は、第1スイッチS10及び第2スイッチS20のON/OFFを制御する。スイッチ制御部101により第1スイッチS10及び第2スイッチS20がONにされることで第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20とが充放電回路15に並列接続される。他方で、スイッチ制御部101により第1スイッチS10がOFFにされることで第1の蓄電池列10が充放電回路15から遮断され、スイッチ制御部101により第2スイッチS20がOFFにされることで第2の蓄電池列20が充放電回路15から遮断される。
【0028】
満充電検知部102は、各蓄電池C1-x,C2-xの満充電を検知する。ここで、充電が進行すると各蓄電池C1-x,C2-xの電圧が充電終止電圧に近づき充電電流が低下する。満充電検知部102は、電圧測定部12から出力される第1の蓄電池列10の各蓄電池C1-xの電圧値や電流測定部13から出力される第1の蓄電池列10の電流値に基づいて、第1の蓄電池列10の満充電の蓄電池C1-xを検知する。また、満充電検知部102は、電圧測定部22から出力される第2の蓄電池列20の各蓄電池C2-xの電圧値や電流測定部23から出力される第2の蓄電池列20の電流値に基づいて、第2の蓄電池列20の満充電の蓄電池C2-xを検知する。
【0029】
高電位検知部103は、第1の蓄電池列10の充電中の蓄電池C1-xの中から満充電の蓄電池C1-xが満充電検知部102により検知された場合に、第2の蓄電池列20の蓄電池C2-xの中で最も高電位の蓄電池C2-xを検知する。他方で、高電位検知部103は、第2の蓄電池列20の充電中の蓄電池C2-xの中から満充電の蓄電池C2-xが満充電検知部102により検知された場合に、第1の蓄電池列10の蓄電池C1-xの中で最も高電位の蓄電池C1-xを検知する。
【0030】
バイパス制御部104は、各バイパス回路B1-x,B2-xのバイパススイッチS1A-x,S2A-x、及び遮断スイッチS1B-x,S2B-xのON/OFFの切り換えを制御する。バイパス制御部104は、バイパススイッチS1A-x,S2A-xがOFF、遮断スイッチS1B-x,S2B-xがONの接続状態から、両スイッチがOFFの状態を経由して、バイパススイッチS1A-x,S2A-xがON、遮断スイッチS1B-x,S2B-xがOFFのバイパス状態に切り換える。
【0031】
バイパス制御部104は、満充電検知部102により検知された満充電の蓄電池C1-x,C2-xと、高電位検知部103により検知された最も高電位の蓄電池C1-x,C2-xとをバイパスする。具体的には、バイパス制御部104は、第1の蓄電池列10の満充電の蓄電池C1-xと、第2の蓄電池列20の充電中の蓄電池C2-xの中で最も高電位の蓄電池C2-xとをバイパスする。また、バイパス制御部104は、第2の蓄電池列20の満充電の蓄電池C2-xと、第1の蓄電池列10の充電中の蓄電池C1-xの中で最も高電位の蓄電池C1-xとをバイパスする。これにより、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧とが略等しい状態に維持される。
【0032】
総電圧判定部105は、充電開始前に、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲内であるか否かを判定する。この「所定範囲」は、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20との間の循環電流が許容量に抑えられる、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差の許容範囲に相当する。総電圧判定部105は、第1の蓄電池列10の複数の電圧測定部12から出力される電圧値の合計値と、第2の蓄電池列20の複数の電圧測定部22から出力される電圧値の合計値との差を求め、この差が上記の「所定範囲」内であるか否かを判定する。
【0033】
総電圧調整部106は、総電圧判定部105により第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲外と判定された場合に、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整する。具体的には、総電圧調整部106は、充電開始前に、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲外である場合に、充放電回路15を制御し、総電圧が低い方の蓄電池列に対して充電を行うことにより、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整する。なお、総電圧調整部106は、総電圧が高い方の蓄電池列から放電を行うことにより、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整してもよい。
【0034】
また、総電圧判定部105は、バイパス処理後に、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲内であるか否かを判定する。この「所定範囲」は、バイパス処理後に、満充電に近い蓄電池C1-x,C2-xと他の蓄電池列10,20の充電中の蓄電池C1-x,C2-xの中で最も高電位のものとをバイパスする場合に、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20との間の循環電流が許容範囲に抑えられる、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差の許容範囲に相当する。総電圧判定部105は、第1の蓄電池列10の第1の蓄電池列10の複数の電圧測定部12から出力される電圧値の合計値と、第2の蓄電池列20の複数の電圧測定部22から出力される電圧値の合計値との差を求め、この差が上記の「所定範囲」内であるか否かを判定する。
【0035】
総電圧調整部106は、バイパス処理後に、総電圧判定部105により第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲外と判定された場合に、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整する。具体的には、満充電に近い蓄電池C1-x,C2-xを含む蓄電池列(第1及び第2の蓄電池列10,20の一方)を第1及び第2スイッチS10,S20の一方により遮断し、しばらくの間、他の蓄電池列(第1及び第2の蓄電池列10,20の他方)に対して充電を継続する。そして、総電圧調整部106は、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲内に収まったことを確認してから、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20とを第1及び第2スイッチS10,S20により並列接続する。
【0036】
図3は、
図2に示す制御装置100による充電制御について説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、蓄電システム1が充電モードに設定されると開始されてステップS1に移行する。
【0037】
ステップS1において、スイッチ制御部101は、第1スイッチS10及び第2スイッチS20をOFFにし、バイパス制御部104は、バイパススイッチS1A-x,S2A-x及び遮断スイッチS1B-x,S2B-xをOFFにする。次に、ステップS2において、バイパス制御部104は、遮断スイッチS1B-x,S2B-xをONにする。
【0038】
次に、ステップS3において、総電圧判定部105は、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差が所定範囲内であるか否かを判定する。ステップS3において否定判定がされた場合にはステップS4に移行し、ステップS3において肯定判定がされた場合にはステップS5に移行する。ステップS3での第1及び第2の蓄電池列10,20の総電圧は、バイパスされた蓄電池C1-x,C2-xの電圧を除いた値になる。
【0039】
ステップS4において、総電圧調整部106は、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20との総電圧が低い方に対して充電を行うことにより、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整する。なお、総電圧調整部106は、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20との総電圧が高い方から放電を行うことにより、第1の蓄電池列10の総電圧と第2の蓄電池列20の総電圧との差を所定範囲内に調整してもよい。ステップS4からステップS3に移行する。
【0040】
ステップS5において、スイッチ制御部101は、第1スイッチS10及び第2スイッチS20をONにする。次に、ステップS6において、充放電回路15は、第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20に対する充電を開始する。この際、第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20は、充放電回路15に対して並列接続されている。
【0041】
次に、ステップS7において、満充電検知部102は、電圧測定部12,22により測定された電圧値や電流測定部13,23により測定された電流値に基づいて、直列接続している充電中の蓄電池C1-x,C2-xの中で満充電のものがあるか否かを判定する。ステップS7において肯定判定がされるまでステップS7が繰り返し実行され、ステップS7において肯定判定がされた場合にステップS8に移行する。
【0042】
ステップS8において、スイッチ制御部101は、第1スイッチS10及び第2スイッチS20をOFFにする。次に、ステップS9において、バイパス制御部104は、満充電の蓄電池C1-x,C2-xをバイパスする。具体的には、バイパス制御部104は、第1の蓄電池列10に満充電の蓄電池C1-xがある場合に、当該蓄電池C1-xに対応するバイパス回路B1-xの遮断スイッチS1B-xをONからOFFに切り換え、次に、当該バイパス回路B1-xのバイパススイッチS1A-xをOFFからONに切り換える。他方で、バイパス制御部104は、第2の蓄電池列20に満充電の蓄電池C2-xがある場合に、当該蓄電池C2-xに対応するバイパス回路B2-xの遮断スイッチS2B-xをONからOFFに切り換え、次に、当該バイパス回路B2-xのバイパススイッチS2A-xをOFFからONに切り換える。
【0043】
次に、ステップS10において、高電位検知部103は、ステップS7において第1の蓄電池列10から満充電の蓄電池C1-xが検知された場合には、電圧測定部22により測定された電圧値に基づいて、第2の蓄電池列20から最も高電位の蓄電池C2-xを検知する。他方で、高電位検知部103は、ステップS7において第2の蓄電池列20から満充電の蓄電池C2-xが検知された場合には、電圧測定部12により測定された電圧値に基づいて、第1の蓄電池列10から最も高電位の蓄電池C1-xを検知する。
【0044】
次に、ステップS11において、バイパス制御部104は、高電位検知部103により検知された第1の蓄電池列10又は第2の蓄電池列20の中で最も高電位の蓄電池C1-x,C2-xをバイパスする。具体的には、バイパス制御部104は、第1の蓄電池列10に上記の最も高電位の蓄電池C1-xがある場合に、当該蓄電池C1-xに対応するバイパス回路B1-xの遮断スイッチS1B-xをONからOFFに切り換え、次に、当該バイパス回路B1-xのバイパススイッチS1A-xをOFFからONに切り換える。他方で、バイパス制御部104は、第2の蓄電池列20に上記の最も高電位の蓄電池C2-xがある場合に、当該蓄電池C2-xに対応するバイパス回路B2-xの遮断スイッチS2B-xをONからOFFに切り換え、次に、当該バイパス回路B2-xのバイパススイッチS2A-xをOFFからONに切り換える。
【0045】
次に、ステップS12において、スイッチ制御部101は、第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20の全ての蓄電池C1-x,C2-xの充電が完了したか否かを判定する。即ち、ステップS12において、スイッチ制御部101は、第1の蓄電池列10の全ての蓄電池C1-xがバイパス回路B1-xによりバイパスされたか否か、第2の蓄電池列20の全ての蓄電池C2-xがバイパス回路B2-xによりバイパスされたか否かを判定する。ステップS12において否定判定がされた場合にはステップS3に移行し、ステップS12において肯定判定がされた場合には充電制御を終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の制御装置100は、充電処理、第1の検知処理、第2の検知処理、及びバイパス処理を実行する。制御装置100は、充電処理において、複数の蓄電池列(第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20)を切換部30により並列接続した状態で充電する。また、制御装置100は、第1の検知処理において、上記充電処理の実行中に満充電の蓄電池C1-x,C2-xを検知する。また、制御装置100は、第2の検知処理において、上記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池C1-x,C2-xを備える蓄電池列(第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20の一方)とは異なる他の蓄電池列(第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20の他方)の充電中の蓄電池C1-x,C2-xの中で最も高電位のものを検知する。さらに、制御装置100は、切換部30により第1の蓄電池列10及び第2の蓄電池列20を遮断した状態で、上記第1の検知処理において検知された満充電の蓄電池C1-x,C2-xと上記第2の検知処理において検知された最も高電位の蓄電池C1-x,C2-xとをバイパス回路B1-x,B2-xによりバイパスする。
【0047】
即ち、本実施形態では、複数の蓄電池列が並列接続された状態で充電が進行し、何れか一方の蓄電池列において満充電の蓄電池C1-x,C2-xが検知される度に、他方の蓄電池列において接続中の蓄電池C1-x,C2-xの中で最も高電位のものが検知され、これらが共にバイパス回路B1-x,B2-xによりバイパスされる。これにより、満充電の蓄電池C1-x,C2-xがバイパスされた一方の蓄電池列において、バイパスされた蓄電池C1-x,C2-xの分(例えば4~4.2V程度)だけ総電圧が低下するのに対して、他方の蓄電池列においても、総電圧が追従して低下する。従って、複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に抑えることができ、切換部30により複数の蓄電池列を並列接続したままであっても、複数の蓄電池列間の循環電流を十分に抑えることができる。よって、複数の蓄電池列を接続したままの状態での一括充電、そして、充電モードから放電モードに切り換わる際に、並列接続した複数の蓄電池列から一斉に放電すること、即ち、複数の蓄電池列の並列運転による大出力の実現が可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の蓄電池列を並列接続して一括で充電し、満充電の蓄電池C1-x,C2-xや蓄電池列の中で最も高電位の蓄電池C1-x,C2-xをバイパスしていく。これにより、各蓄電池C1-x,C2-xの容量や温度のばらつきにより充電のバランスが崩れても、全ての蓄電池C1-x,C2-xを満充電にすることができる。また、全ての蓄電池C1-x,C2-xを満充電にすることができることにより、搭載している蓄電池C1-x,C2-xの全容量を使い切ることが可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、制御装置100が、第1の判定処理、及び第1の調整処理を実行する。まず、制御装置100は、第1の判定処理において、充電開始前(第1スイッチS10及び第2スイッチS20をONにする前)に、複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲内であるか否かを判定する。そして、制御装置100は、上記第1の判定処理において複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲外と判定された場合に、第1の調整処理において、総電圧が高い方の蓄電池列に補充電を行う等により、複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に調整する。これにより、複数の蓄電池列を並列接続した状態で充電を開始する際に、複数の蓄電池列間の循環電流を許容範囲に抑えることが可能になる。
【0050】
さらに、本実施形態では、制御装置100が、第2の判定処理、及び第2の調整処理を実行する。まず、制御装置100は、第2の判定処理において、バイパス処理後に、複数の蓄電池列の総電圧の差が所定範囲内であるか否かを判定する。そして、制御装置100は、上記第2の判定処理において複数の蓄電池列の総電圧(バイパスされている蓄電池C1-x,C2-xを除いた値)の差が所定範囲外と判定された場合に、第2の調整処理において、総電圧が高い方の蓄電池列に補充電を行う等により、複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に調整する。これにより、バイパス処理後に複数の蓄電池列を並列接続して充電を再開する際に、複数の蓄電池列間の循環電流を許容範囲に抑えることが可能になる。
【0051】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態では、第1の蓄電池列10と第2の蓄電池列20との2系統の蓄電池列を備える蓄電システム1を例に挙げたが、3系統以上の蓄電池列を備える蓄電システムにも本発明を適用できる。3系統以上の蓄電池列を備える蓄電システムにおいては、制御装置100は、充電処理において、3系統以上の蓄電池列を切換部30により接続した状態で充電し、第2の検知処理において、満充電の蓄電池を備える蓄電池列とは異なる他の全ての蓄電池列について、充電中の蓄電池の中で最も高電位のものを検知する。さらに、制御装置100は、切換部30により3系統以上の全ての蓄電池列を遮断した状態で、1系統の蓄電池列の満充電の蓄電池をバイパスすると共に、その他の全系統の蓄電池列について最も高電位の蓄電池をバイパスする。
【0053】
また、上記実施形態では、中古の蓄電池を利用した蓄電システム1を例に挙げたが、新品の蓄電池を使用する蓄電システムにも本発明を適用できる。使用する蓄電池が新品であっても、製造ばらつきや使用に伴う劣化のばらつきにより各蓄電池の容量に差が生じるので、本発明を適用することにより上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
さらに、上記実施形態では、複数の蓄電池列の総電圧の差を所定範囲内に調整する処理を実行したが、当該処理の実行は必須ではない。例えば、放電後に複数の蓄電池列の総電圧が略等しくなる場合、想定される総電圧差が小さく循環電流が許容範囲を超えないのであれば、当該処理の実行は不要である。
【符号の説明】
【0055】
1 :蓄電システム
10 :第1の蓄電池列(蓄電池列)
20 :第2の蓄電池列(蓄電池列)
30 :切換部
100 :制御装置(蓄電池制御装置)
B1-1~B1-n,B1-x:バイパス回路(バイパス部)
B2-1~B2-n,B2-x:バイパス回路(バイパス部)
C1-1~C1-n,C1-x:蓄電池
C2-1~C2-n,C2-x:蓄電池