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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20240313BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240313BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 M
F16K31/68 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021141463
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034951
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 純一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-038302(JP,A)
【文献】特開2020-063747(JP,A)
【文献】特開2006-292185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
F16K 31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を所定方向に送り出す送流体手段と、
前記冷媒を通過させるとともに冷却対象から受熱する受熱部と、
前記冷却対象の温度に応じて通過する前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、
前記冷媒の熱を放熱する放熱手段と、
を備え、
前記送流体手段、前記受熱部、前記流量調整弁、及び、前記放熱手段を接続し、前記冷媒を循環させる冷却装置であって、
前記流量調整弁は、
前記冷媒が導入される第1ポート、前記第1ポートから流入した前記冷媒を通過させる弁ポート、及び、前記弁ポートを通過した前記冷媒を送り出す第2ポートを有する弁ハウジングと、
前記弁ハウジングに移動自在に設けられ、前記弁ポートの弁開度を調整する弁体と、
前記弁体に所定の弁閉方向の力を付与する弁閉力付与手段と、
前記弁体を駆動する駆動エレメントと、
を備え、
前記駆動エレメントは、封入ガスが封入される封入空間を形成する感温部と、前記封入空間と前記冷媒が導入される空間とを区画するとともに、前記弁体に対して弁開力を付与可能な密封部材と、を備え、
前記感温部は、有底筒形状からなり、平板部及び壁部を備え、
前記受熱部は、底面及び側面を有する凹部を備え、
前記凹部に前記感温部を収容する際に、前記凹部の前記底面に前記感温部の前記平板部を熱的に接触させることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記駆動エレメントは、上蓋と、前記感温部である下蓋と、をさらに備え、
前記上蓋及び前記下蓋の間に、前記密封部材の外周縁部を挟持することにより、鍔部が形成され、
前記凹部の前記底面から立ち上がる前記側面の高さは、前記感温部の前記壁部の軸線方向の高さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記凹部における前記底面の幅は、前記感温部の前記壁部の幅と同程度であることを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記感温部の前記壁部には、前記封入ガスを封入し、密封される封入管が接続され、
前記受熱部には、前記感温部を前記凹部に収容する際に、前記封入管との干渉を避けるための逃げ溝が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記側面の開口側に、前記側面の内径より拡径された段差部と、前記段差部の内周面に形成された環状溝と、をさらに備え、
前記凹部に前記感温部を収容した後に、前記環状溝内に止め輪を挿入し、前記止め輪と前記凹部との間に、前記駆動エレメントの前記鍔部を固定することを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整弁の駆動エレメントを受熱部に接触させる冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車にはモータやインバータ等の発熱を伴う発熱部品が搭載されている、あるいは、大型のコンピュータシステムやサーバ等にはCPUやメモリ等の発熱量の大きい発熱部品が搭載されている。
【0003】
これらの発熱部品を冷却するために、構成部材が比較的少なく、軽量かつ信頼性の高い水冷式の冷却装置が採用されている。この水冷式の冷却装置は、冷やした冷媒をポンプで循環させ、対象物を冷却するものである。
【0004】
例えば、特許文献1(特に、図10参照)には、水冷式の冷却装置であって、冷媒を所定方向に送り出すポンプと、冷媒を通過させるとともに冷却対象から受熱する冷却器と、通過する冷媒の流量を調整する流量調整弁と、冷媒の熱を放熱する放熱器と、を備え、コントロールユニットが、温度計により検出した冷却器の出口温度に基づいて、流量調整弁の弁開度を制御するものが記載されている。
【0005】
この水冷式の冷却装置は、コントロールユニットを介して、流量調整弁の弁開度を制御していることから、冷却対象の温度変化に対する弁開度の応答性が低くなっていた。そこで、電気的に流量調整弁の弁開度を制御するのではなく、冷却対象の温度を、流量調整弁に設けられる感温部が直接受熱して、流量調整弁の弁開度を制御することが考えられる。
【0006】
ここで、水冷式ではないが、特許文献2(特に、図3参照)には、冷凍サイクルに用いられる流量調整弁であって、冷却対象である蒸発器の出口配管の温度を、感温部である駆動ユニットの上蓋が直接受熱して、流量調整弁の弁開度を制御するものが記載されている。具体的には、感温部である上蓋に、冷却対象である蒸発器の出口配管の形状に対応した凹部を設け、この上蓋の凹部を、蒸発器の出口配管に直接固定させることにより、冷却対象の温度変化に対する弁開度の応答性を高めようとするものである。
【0007】
しかしながら、特許文献2の流量調整弁は、主に、以下の2つの問題点を有していた。第1に、この流量調整弁は、上蓋の凹部のみを介して、冷却対象の温度を直接受熱しているが、上蓋における凹部以外の部分は、雰囲気温度の影響を強く受ける。このため、依然として、感温応答性に遅れを有しているという問題(以下、「従来の問題点(感温特性の遅れ)」という)が生じていた。第2に、上蓋に形成される凹部の深さは、上蓋の内部に配置されるダイヤフラムと干渉しないように、構造的な制約を有している。このため、流量調整弁の軸線方向に沿う方向に、比較的大きな設置スペースを要するという問題(以下、「従来の問題点(軸線方向の設置スペースの必要性)」という)が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-38302号公報
【文献】特開2020-60356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、流量調整弁の感温特性の向上、及び、流量調整弁の装着高さの低背化を実現する冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、冷媒を所定方向に送り出す送流体手段と、前記冷媒を通過させるとともに冷却対象から受熱する受熱部と、前記冷却対象の温度に応じて通過する前記冷媒の流量を調整する流量調整弁と、前記冷媒の熱を放熱する放熱手段と、を備え、前記送流体手段、前記受熱部、前記流量調整弁、及び、前記放熱手段を接続し、前記冷媒を循環させる冷却装置であって、前記流量調整弁は、前記冷媒が導入される第1ポート、前記第1ポートから流入した前記冷媒を通過させる弁ポート、及び、前記弁ポートを通過した前記冷媒を送り出す第2ポートを有する弁ハウジングと、前記弁ハウジングに移動自在に設けられ、前記弁ポートの弁開度を調整する弁体と、前記弁体に所定の弁閉方向の力を付与する弁閉力付与手段と、前記弁体を駆動する駆動エレメントと、を備え、前記駆動エレメントは、封入ガスが封入される封入空間を形成する感温部と、前記封入空間と前記冷媒が導入される空間とを区画するとともに、前記弁体に対して弁開力を付与可能な密封部材と、を備え、前記感温部は、有底筒形状からなり、平板部及び壁部を備え、前記受熱部は、底面及び側面を有する凹部を備え、前記凹部に前記感温部を収容する際に、前記凹部の前記底面に前記感温部の前記平板部を熱的に接触させる冷却装置である。
【0011】
また、上記冷却装置であって、前記駆動エレメントは、上蓋と、前記感温部である下蓋と、をさらに備え、前記上蓋及び前記下蓋の間に、前記密封部材の外周縁部を挟持することにより、鍔部が形成され、前記凹部の前記底面から立ち上がる前記側面の高さは、前記感温部の前記壁部の軸線方向の高さ以下であるものとしてもよい。
【0012】
また、上記冷却装置であって、前記凹部における前記底面の幅は、前記感温部の前記壁部の幅と同程度であるものとしてもよい。
【0013】
また、上記冷却装置であって、前記感温部の前記壁部には、前記封入ガスを封入し、密封される封入管が接続され、前記受熱部には、前記感温部を前記凹部に収容する際に、前記封入管との干渉を避けるための逃げ溝が形成されているものとしてもよい。
【0014】
また、上記冷却装置であって、前記凹部は、前記側面の開口側に、前記側面の内径より拡径された段差部と、前記段差部の内周面に形成された環状溝と、をさらに備え、前記凹部に前記感温部を収容した後に、前記環状溝内に止め輪を挿入し、前記止め輪と前記凹部との間に、前記駆動エレメントの前記鍔部を固定するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流量調整弁の感温特性の向上、及び、流量調整弁の装着高さの低背化を実現する冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る冷却装置の概略図である。
図2図1の流量調整弁を示す縦断面図である。
図3図1の冷却器に装着された流量調整弁を説明する側面図であり、(a)は、冷却器の凹部に流量調整弁を装着した状態(本実施形態)、(b)は、冷却器の上面に流量調整弁を装着した状態(比較例)を、それぞれ表す。
図4図3の破線IV(a)で囲まれる部分拡大図であり、(a)は、駆動エレメントの鍔部が冷却器の上面と離間した状態(本実施形態)、(b)は、駆動エレメントの鍔部が冷却器の上面と接触した状態(比較例)を、それぞれ表す。
図5】第2の実施形態に係る冷却器に装着された流量調整弁を説明する図であり、(a)は、取り付け向きが正しい状態の側面図(本実施形態)、(b)は、(a)における冷却器の上面図、(c)は、取り付け向きが誤った状態の側面図(比較例)を、それぞれ表す。
図6】第3の実施形態に係る冷却器に装着された流量調整弁を説明する図であり、(a)は、流量調整弁が冷却器に固定された状態の側面図、(b)は、(a)における冷却器の上面図を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図1から図6を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0018】
<用語について>
本明細書及び特許請求の範囲の記載において、「上」、「下」、「右」、「左」は、図面の側面図に対応する方向を示す。
【0019】
(第1の実施形態)
<冷却装置について>
図1を用いて、本発明の第1の実施形態に係る冷却装置1について説明する。なお、図中における直線矢印は、冷媒の送液方向を示している。
【0020】
冷却装置1は、通過する冷媒の流量を冷却対象Aの温度に応じて調整する流量調整弁100と、冷却対象Aから受熱する冷却器(受熱部)200aと、冷媒(液冷媒)を所定方向に送り出すポンプ(送流体手段)300と、冷媒の熱を放熱する放熱器(放熱手段)400と、を備え、これらを環状に接続して冷媒を循環させる。この冷却装置1は、電気自動車やハイブリッド車等に搭載される発熱部品(例えば、モータやインバータ等)である冷却対象Aを冷却する。あるいは、大型のコンピュータシステムやサーバ等に搭載される発熱部品(例えば、CPUやメモリ等)である冷却対象Aを冷却する。以下、冷却装置1のそれぞれの構成について順に説明する。
【0021】
流量調整弁100は、詳細は後述するが、ダイヤフラム式の駆動エレメント40を有している。流量調整弁100の一次側継手10aは、冷却器200aの出口側配管に接続され、流量調整弁100の二次側継手10bは、放熱器400の入口側配管に接続される。また、流量調整弁100は、駆動エレメント40を冷却器200aに熱的に接触させ、この冷却器200aを介して、冷却対象Aの温度を感知することにより、冷却器200aを通過する冷媒の流量調整を行っている。
【0022】
冷却器200aは、コールドプレートなどから構成されており、冷媒との熱交換を促進させるために、ジグザグに蛇行する内部流路や、冷媒と衝突するようにピンなど設けられた内部流路を有している。この冷却器200aの一側には、発熱部品である冷却対象Aが接触して配置され、他側には、流量調整弁100が接触して配置される。なお、本実施形態における冷却器200aは、冷媒を通過させるとともに冷却対象Aから受熱することにより、冷却対象Aから冷媒へと熱伝達させ得るものであれば、どのような形態であってもよい。
【0023】
ポンプ300は、液体状態の冷媒を循環させ、冷却対象Aを冷却する。この冷媒は、絶縁性の冷媒、例えば、純水やフッ素系不活性液体(例えば、フロリナート(登録商標)や、ガルデン(登録商標)、ノベック(登録商標))等を用いるものである。本実施形態の冷媒は、冷却器200a及び流量調整弁100を通過する際に、液体であるが、これに限らず、冷却装置1の流路の一部において、気液混合状態に遷移する液体であってもよい。
【0024】
放熱器400は、自然対流や強制対流により周囲環境と熱交換する空冷方式である。本実施形態の放熱器400は、空冷方式であるが、これに限らず、水冷方式や油冷方式など、周囲環境と熱交換できるものであれば、どのような形態であってもよい。
【0025】
<冷却装置の冷却動作について>
ポンプ300によって送り出された冷媒は、冷却対象Aに接触するように設けられた冷却器200a内を通過することで冷却対象Aと熱交換した後、流量調整弁100を通過し、放熱器400によって放熱され、再び、ポンプ300に戻る。この際、冷却器200aを通過する冷媒の流量は、流量調整弁100によって、冷却対象Aの温度が高くなると、冷却器200aに多くの冷媒が流れる一方、冷却対象Aの温度が低くなると、冷却器200aに少ない冷媒が流れるように調整される。
【0026】
なお、本実施形態の冷却装置1は、1台のポンプ300及び放熱器400に対し、1対の冷却器200a及び流量調整弁100を1台備えたものであるが、これに限らず、例えば、1台のポンプ300及び放熱器400に対し、1組の冷却器200a及び流量調整弁100を並列に複数備えてもよいし、ポンプ300を直列に複数又は並列に複数備えてもよい。
【0027】
<流量調整弁について>
図2を用いて、流量調整弁100について説明する。なお、図中における一点鎖線で示す軸線Lは、後述の弁ポート14の中心線であるとともに、弁体20の移動方向に対応している。流量調整弁100は、弁ハウジング10と、弁体20と、弁体20に所定の弁閉方向の力を付与する調整ばねユニット(弁閉力付与手段)30と、駆動エレメント40とから主に構成される。以下、流量調整弁100のそれぞれの構成について順に説明する。
【0028】
弁ハウジング10は、SUS等の金属部材によって構成され、一次側継手10aに接続される第1ポート11と、二次側継手10bに接続される第2ポート12と、弁室13と、が形成される。第1ポート11は、弁室13に連通され、弁室13と第2ポート12との間には、弁ポート14が形成される。また、弁ハウジング10には、弁ポート14が弁体20により閉となっても、弁室13と第2ポート12とを連通するためのブリード流路15と、第2ポート12と後述の均圧室45とを連通する均圧路16とが形成される。さらに、弁ハウジング10には、弁ポート14の軸線L上で第2ポート12から均圧室45側に開口するガイド孔17が形成され、このガイド孔17は軸線Lを中心とする円筒状の形状をしている。
【0029】
弁体20は、フランジ部21と、円錐状のニードル部22と、作動軸23と、を有している。この弁体20は、弁ハウジング10内に配置される。具体的には、弁体20において、フランジ部21が弁室13内に配設され、ニードル部22が弁ポート14内に配設され、作動軸23が第2ポート12内及びガイド孔17内に配設される。この作動軸23は、ガイド孔17の内周面に対してクリアランスを有して嵌挿される。これにより、弁体20は、ガイド孔17内を軸線L方向に移動自在に収容され、この軸線L方向の移動によりニードル部22が弁ポート14の弁開度を調整する。
【0030】
調整ばねユニット30は、圧縮ばねからなる調整ばね31と、金属部材で構成され、弁ハウジング10と螺合する調整ねじ32と、を備える。調整ばね31は、軸線L方向に延在するコイル状に形成され、弁体20のフランジ部21と、調整ねじ32との間に挟持される。この調整ねじ32を、弁ハウジング10と螺合させ、調整ねじ32のねじ込み量を調整することで、調整ばね31を介して、弁体20に付与される所定の弁閉力(付勢力)が調整されて、弁ポート14の弁開圧力を設定することができる。この弁開圧力を設定した後は、調整ねじ32と弁ハウジング10とを溶接や接着等で全周を固着し気密封止する。
【0031】
駆動エレメント40は、金属製からなりケース体を構成する上蓋41及び下蓋42と、ダイヤフラム(密封部材)43と、当金47と、封入管48と、吸着材内包体49と、を備える。
【0032】
上蓋41は、開口が形成された環形状の板部と、板部の外周縁から下方に向かって延びる筒状部と、筒状部の下端から外方に向かって延びるフランジ部と、を有している。この上蓋41は、弁ハウジング10の下方側端部に対して加締め及びろう付けによって気密に固定される。
【0033】
下蓋42は、有底筒形状であり、円形状の平板部(感温部)42aと、平板部42aの外周縁から上方に向かって延びる壁部(感温部)42bと、壁部42bの上端から外方に向かって延びるフランジ部と、を有している。この平板部42aは、冷却対象A(図1参照)に熱的に接触されて、冷却対象Aの温度を感知している。また、壁部42bには、後述の密閉室46に封入ガス3を封入するために、外方に向かって延在する封入管48が設けられており、封入管48は、封入ガス3の封入後に封止される。なお、本実施形態の封入管48は、外方に延在するものであるが、これに限らず、例えば、封入管48の長さを比較的短くし、壁部42bと略面一の様態としてもよい。
【0034】
ダイヤフラム43は、弁体20に対して弁開力を付与可能なものであって、外周縁部が上蓋41及び下蓋42の間に挟持された後、溶接やろう付けによって気密に固定されることにより鍔部44が形成される。このダイヤフラム43により、上蓋41の内側空間が、冷媒が導入される空間である均圧室45に区画され、また、下蓋42の内側空間が、封入ガス3が封入される封入空間である密閉室46に区画される。
【0035】
当金47は、上方に窪み部と、下方に平坦部と、を有する。この当金47は、均圧室45内に配置され、下方の平坦部が、ダイヤフラム43に当接するとともに、上方の窪み部が、弁体20の作動軸23と接続する。
【0036】
吸着材内包体49は、不織布等の袋状の仕切り部材49aと、仕切り部材49aに内包された粒状の活性炭等の吸着材49bと、を備える。この吸着材内包体49は、封入ガス3が封入される密閉室46内、つまり、平板部42aの内壁42a1に接触して配置される。これにより、吸着材49bは、冷却対象Aに対して熱的に接触している。
【0037】
吸着材49bは、封入ガス3に対して、二酸化炭素のみに吸着・脱着特性を示す。これにより、封入ガス3は、冷却すると吸着量が増加して密閉室46内の圧力が減少し、加熱すると吸着量が減少して密閉室46内の圧力が増加するような温度-圧力特性を持つ。即ち、温度に応じて吸着材49bが、封入ガス3を吸着する吸着量が変化する。本実施形態の封入ガス3は、主成分ガスを二酸化炭素とし、漏れ検知ガスをヘリウムとし、これらを混入したガスを採用するものであるが、これに限らない。例えば、熱的安定性や環境負荷等を考慮して、使用される温度域で気体状態として存在する封入ガス3を選択するとともに、この封入ガス3を吸着する吸着材49bをさらに選択してもよい。
【0038】
<流量調整弁の動作について>
流量調整弁100において、一次側継手10aに導入された冷媒は、第1ポート11から弁室13に流入し、弁室13からブリード流路15、第2ポート12及び均圧路16を介して均圧室45に導入される。また、第2ポート12の冷媒は、二次側継手10bから流出される。これにより、弁ポート14が全閉状態でも、所定の冷媒流量が得られる。
【0039】
一方、駆動エレメント40の下蓋42において、平板部42aの感知温度に応じて密閉室46内の封入ガス3の圧力が上昇又は低下すると、ダイヤフラム43が変位する。そして、このダイヤフラム43の変位に伴い、当金47を介して、弁体20の作動軸23が軸線L方向に移動し、弁ポート14と弁体20のニードル部22との隙間すなわち弁開度が変化する。この弁開度、つまり、冷却対象Aの温度に応じて、一次側継手10aから二次側継手10bに流れる冷媒の流量が調整される。
【0040】
<流量調整弁の装着様態について>
図3は、冷却器200aに装着された流量調整弁100を説明する図であり、(a)は、冷却器200aの凹部210に流量調整弁100を装着した状態(本実施形態)、(b)は、冷却器200a’の上面201に流量調整弁100を装着した状態(比較例)を、それぞれ表す。なお、図中の冷却器200a,200a’は説明のために、断面図として示している。また、図中の流量調整弁100は、封入管の長さが極めて短く、壁部42bと略面一である様態のものを示している。
【0041】
図3(a)に示すように、冷却器200aは、底面211及び側面212からなる凹部210を有している。この凹部210は、流量調整弁100の駆動エレメント40を収容するために、軸線L方向からみて、駆動エレメント40における外形に対応した形状(例えば、円形形状)を有している。
【0042】
これにより、流量調整弁100を冷却器200aに装着する際に、凹部210に駆動エレメント40を収容することができる。よって、軸線L方向の流量調整弁100の装着高さZを、冷却器200a’の上面201に流量調整弁100を装着した状態における流量調整弁100の装着高さZ’と比べ、低くすることができる。これにより、従来の問題点(軸線方向の設置スペースの必要性)を解消させ、機器レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0043】
また、駆動エレメント40の壁部42bは、凹部210の側面212に囲まれるように収容されている。これにより、駆動エレメント40の壁部42bは、図3(b)の比較例と比べ、雰囲気温度の影響を受け難いため、従来の問題点(感温特性の遅れ)を解消させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、駆動エレメント40の平板部42aを、凹部210の底面211に直接接触させているが、平板部42aと底面211との間を熱的に接触させていればよく、例えば、平板部42aと底面211との間を、伝熱グリス等を介して、熱的に接触させてもよい。
【0045】
<凹部における底面から立ち上がる側面の高さについて>
図4は、駆動エレメント40の鍔部44と冷却器200aの上面201との配置関係について説明する図であり、(a)は、鍔部44が冷却器200aの上面201と離間した状態(本実施形態)、(b)は、鍔部44が冷却器200aの上面201と接触した状態(比較例)を、それぞれ表す。
【0046】
まず、図2に示すように、平板部42a及び壁部42bは、封入ガス3が封入された密閉室46を画定している。よって、冷却対象Aから冷却器200aが受熱した熱を、確実に吸着材49bに伝えるためには、感温部である平板部42a及び壁部42bを介した受熱面積を増加させることが必要となる。
【0047】
そこで、図4(a)に示すように、底面211から立ち上がる側面の高さHrを、流量調整弁100の壁部42bの軸線L方向の高さHd以下に設定することにより、鍔部44が冷却器200aの上面201と離間するため、凹部210の底面211を平板部42aに確実に面接触させることができる。これにより、従来の問題点(感温特性の遅れ)を解消させることができる。
【0048】
一方、図4(b)に示すように、底面211’から立ち上がる側面の高さHr’を、流量調整弁100の壁部42bの軸線L方向の高さHd超に設定する場合には、鍔部44が、冷却器200a’の上面201と干渉するため、凹部210’の底面211’が平板部42aと離間してしまう。これにより、冷却対象Aから冷却器200a’が受熱した熱を、直接平板部42aに伝えることができなくなるので、吸着材49bに伝わる熱に遅れが生ずることになる。
【0049】
<凹部における底面の幅について>
図4(a)に示すように、凹部210における底面211の幅Wrは、壁部42bの幅Wdと同程度に設定されている。ここで、底面211の幅Wrが、壁部42bの幅Wdと同一に設定されている場合には、凹部210の側面212を壁部42bに面接触させることができる。これにより、冷却対象Aから冷却器200aが受熱した熱を、平板部42aに加え、壁部42bを介して、確実に吸着材49bに伝えることができる。また、底面211の幅Wrが、壁部42bの幅Wdより若干大きく設定されている場合においても、側面212と壁部42bとの隙間に、伝熱グリス等を塗布することにより、前述と同様に、冷却対象Aから冷却器200aが受熱した熱を、平板部42aに加え、壁部42bを介して、確実に吸着材49bに伝えることができる。
【0050】
このように、本実施形態の冷却装置1は、平板部42aに加え、壁部42bを介して、冷却対象Aから冷却器200aが受熱した熱を確実に吸着材49bに伝えることができるため、従来の問題点(感温特性の遅れ)を解消させ、感温特性を向上させることができる。
【0051】
以上より、第1の実施形態では、機器レイアウトの自由度を向上、及び、感温特性を向上させることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
図5を用いて、第2の実施形態に係る冷却器200bに装着された流量調整弁100について説明する。なお、図中の流量調整弁100は、外方に向かって延在する封入管48を有する様態のものを示している。第2の実施形態に係る冷却器200bは、凹部210に加え、逃がし溝220を設けた点で、第1の実施形態の冷却器200aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
まず、第1の実施形態において、流量調整弁100を冷却器200aに装着する際に、取り付け向きが正しい状態では、図3(a)に示すように、流量調整弁100の一次側継手10aが冷却器200aの出口側配管(図3(a)の左側)に接続され、二次側継手10bが放熱器400の入口側配管(図3(a)の右側)に接続される。しかしながら、作業員による取り付け作業中に、流量調整弁100が冷却器200aに誤った状態(左右反対)で取り付けられてしまうおそれがあった。これにより、流量調整弁100における冷媒の流れが反対向きとなり、所望の流量調整を実施できないおそれがあった。
【0054】
そこで、第2の実施形態においては、図5(a)に示すように、駆動エレメント40の壁部42bには、封入ガス3を封入するための封入管48が、外方に向かって延在して設けられている。また、冷却器200bは、凹部210に加え、凹部210と接続される逃がし溝220を有している。この凹部210及び逃がし溝220は、封入管48を含む駆動エレメント40を収容するために、図5(b)に示すように、軸線L方向からみて、封入管48を含む駆動エレメント40における外形に対応した形状(例えば、円形形状と矩形形状を組み合わせた形状など)を有している。
【0055】
これにより、流量調整弁100を冷却器200bに装着する際に、駆動エレメント40を凹部210に収容するとともに、封入管48を逃がし溝220に収容し、封入管48が冷却器200bの表面201と干渉することを避けることができる。
【0056】
ここで、図5(c)に示すように、仮に、流量調整弁100を冷却器200bに取り付け方向が誤った状態(左右反対)で取り付けようとしても、封入管48が冷却器200bの上面201と干渉するため、取り付け方向の間違いを防止することができる。また、作業員は、瞬時に、流量調整弁100の正しい取り付け方向を視認できるため、取り付け作業の効率を向上させることができる。
【0057】
以上より、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果(機器レイアウトの自由度向上、及び、感温特性向上)に加え、取り付け方向の間違いを防止することや、取り付け作業の効率を向上させることができる。
【0058】
(第3の実施形態)
図6を用いて、第3の実施形態に係る冷却器200cに装着された流量調整弁100について説明する。なお、図6(b)は、説明のために、流量調整弁100を省略して示している。第3の実施形態に係る冷却器200cは、凹部210内に、流量調整弁100を固定する手段を有する点で、第2の実施形態の冷却器200bと相違するが、その他の基本構成は第2の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0059】
図6(a)に示すように、凹部210において、底面211から立ち上がる側面212の開口側に、側面212の内径より拡径された段差部213が形成されている。この段差部213の内周面には、環状溝214がさらに形成されている。ここで、段差部213の内径は、鍔部44の外径より大きく設定されるとともに、底面211から立ち上がる側面212の高さが、流量調整弁100の壁部42bの軸線L方向の高さ以下に設定されている。
【0060】
<流量調整弁の固定手段について>
流量調整弁100の固定手段は、メンテナンスのために、流量調整弁100が冷却器200cに対して、着脱可能に固定される必要がある。まず、軸線L方向からみて、封入管48を含む駆動エレメント40を、凹部210及び逃がし溝220との形状を一致させた状態で、封入管48を含む駆動エレメント40を、凹部210及び逃がし溝220内に挿入させる。これにより、駆動エレメント40の壁部42b及び封入管48が、側面212及び逃がし溝220に取り囲まれた状態で、駆動エレメント40の平板部42aが、凹部210の底面211と面接触する。そして、駆動エレメント40の鍔部44の上方において、止め輪230(例えば、Cリングなど)を一旦半径方向に圧縮し、環状溝214内に挿入した後、止め輪230の圧縮を解放する。ここで、底面211と環状溝214の下端との軸線L方向距離が、平板部42aと鍔部44の上端との軸線L方向距離と、同一又は僅かに小さく設定されている。これにより、鍔部44が、止め輪230と凹部210との間に挟持され、結果、流量調整弁100を、駆動エレメント40の平板部42aが、凹部210の底面211と面接触した状態で冷却器200cに堅固に固定することができる。本実施形態において、凹部210の深さは、流量調整弁100を冷却器200cに固定した際に、冷却器200cの上面201と二次側継手10bとが干渉しないように設定されている。しかしながら、これに限らず、例えば、冷却器200cの上面201が、二次側継手10bと干渉しないように、冷却器200cの上面201に溝を形成してもよい。
【0061】
以上より、第3の実施形態では、第2の実施形態と同様の効果(機器レイアウトの自由度向上、感温特性向上、取り付け作業の効率向上)に加え、流量調整弁100を冷却器200cに対して、堅固に固定することができる。また、第3の実施形態では、第1の実施形態(図4(a)参照)のように、鍔部44を、冷却器200aの上面201の上方ではなく、凹部210内に収容できることから、流量調整弁100の装着高さのさらなる低背化を実現することができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述し、その他の実施形態についても詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 冷却装置
3 封入ガス
10 弁ハウジング
10a 一次側継手
10b 二次側継手
11 第1ポート
12 第2ポート
13 弁室
14 弁ポート
15 ブリード流路
16 均圧路
17 ガイド孔
20 弁体
30 調整ばねユニット(弁閉力付与手段)
40 駆動エレメント
41 上蓋
42 下蓋
42a 平板部(感温部)
42b 壁部(感温部)
42a1 内壁
43 ダイヤフラム(密封部材)
44 鍔部
45 均圧室
46 密閉室
47 当金
48 封入管
49 吸着材内包体
100 流量調整弁
200a,200b,200c 冷却器(受熱部)(本実施形態)
200a’ 冷却器(比較例)
201 上面
210 凹部(本実施形態)
210’ 凹部(比較例)
211 底面(本実施形態)
211’ 底面(比較例)
212 側面
213 段差部
214 環状溝
220 逃がし溝
230 止め輪
300 ポンプ(送流体手段)
400 放熱器(放熱手段)

A 冷却対象
Hr 底面から立ち上がる側面の高さ(本実施形態)
Hr’ 底面から立ち上がる側面の高さ(比較例)
Hd 壁部の軸線方向の高さ
L 軸線
Wd 壁部の幅
Wr 底面の幅
Z 流量調整弁の装着高さ(本実施形態)
Z’ 流量調整弁の装着高さ(比較例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6