(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】アスピレータ減圧手段を用いる減圧タービン発電システム
(51)【国際特許分類】
F01K 21/00 20060101AFI20240313BHJP
F01K 25/00 20060101ALI20240313BHJP
B01D 3/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F01K21/00 A
F01K25/00 Z
B01D3/06 A
(21)【出願番号】P 2021183306
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521493352
【氏名又は名称】上原 一哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】上原 一哉
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-007553(JP,B2)
【文献】特開2018-204715(JP,A)
【文献】特開昭61-029671(JP,A)
【文献】特開2012-237301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292798(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108014601(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 1/00-21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧蒸留塔を用い、常圧発電機を用いて発電するシステムであって、下部貯水池
(100)と、上部貯水池
(110)と、
前記下部貯水池
(100)から
前記上部貯水池
(110)に揚水する水路
(120)と、夜間電力NTを利用して駆動する汲上ポンプ
(130)と、
前記上部貯水池
(110)から
前記下部貯水池
(100)に放水する流路
(160)と、該放水
する流路
(160)に連結し、放水力により減圧吸引するアスピレータ
(200)と、該アスピレータ
(200)に吸気路
(170)で連通する一方、大気と遮断される気密容器であって、前記アスピレータ
(200)で減圧され、室温に近い温度で水を沸騰させるフラッシュ蒸留器からなる減圧蒸留塔
(300)と、
該減圧蒸留塔
(300)で発生する水蒸気を利用し、減圧
下に回転する減圧ラジアルタービン
(400)と、該
減圧ラジアルタービン(400)のかかる駆動力で駆動される常圧発電機
(500)と、
前記減圧ラジアルタービン(400)から放出させる蒸気を液化する常圧凝集器
(600)と、を備え、夜間電力を用いて揚げ水してエネルギーを貯め、減圧水蒸気を利用して発電するとともに、発電後の水蒸気を
前記常圧凝集器(600)で凝縮させて液化し、循環ポンプ
(140)を介して
前記減圧蒸留塔
(300)に送り、循環使用することを特徴とする減圧沸騰形発電システム。
【請求項2】
前記減圧蒸留塔
(300)を加熱する一方、
前記常圧凝集器
(600)を冷却する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
水の代わりにアンモニアを用いる請求項1記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスピレータを用いる減圧真空手段を利用し、減圧蒸留に伴い生成される水蒸気で減圧ラジアルタービンを駆動させて発電させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に蒸気タービンを用いる発電装置は高温高圧蒸気を軸流タービンに投入して蒸気の運動エネルギーを回転運動に変え、発電するシステムである。他方、海洋温度差を利用する発電システムとしてOTECが提案されている(非特許文献1)。海洋温度差発電システムでは、海洋水の温度差を有効利用して真空蒸留塔で発生する減圧蒸気をラジアルタービンに投入すると、減圧蒸気で発電できることが示唆されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】佐賀大学海洋エネルギー研究センターホームページ・NELHA(ハワイ州立自然エネルギー研究所)ハワイ島コナ海岸に建設したハワイ210kwオープンサイクル実験装置OTEC(1993)・佐賀大学OTEC実験装置-不知火1号(1974年4月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この海洋温度差発電システムでは、真空を利用することを教示するものの、どのような減圧蒸発器や、どのような発電タービンを使い、どのように蒸気を回収する凝縮器など使用するかについての具体的開示もない。
そこで、本発明は減圧下に水蒸気を得て、発電するに有効なシステムを提供することを課題とする。
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、減圧沸騰形発電システムの実現には、次の技術課題があることを見出した。
・ 減圧蒸留の減圧手段としては、アスピレータ効果を利用するのが好ましく、夜間電力を利用して揚げ水しておき、その揚げ水の放水により蒸留器を減圧するのが好ましい。
・ 蒸留手段としては、フラッシュ蒸留器を使用するのが好ましく、効率確保には蒸留器内を減圧する必要がある。
・ タービンにはラジアルタービンを用いるのが好ましく、効率確保にはタービン内を減圧する必要がある。
・ タービンから排出される蒸気はフィンチューブ形熱交換器で液相に戻し、循環使用するのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に着目し、鋭意研究の結果、夜間電力によるくみ揚げ水と揚げ水の放水を利用することで減圧するアスピレータを用い、減圧蒸留塔としてフラッシュ蒸留器を用い、発生する減圧水蒸気を用いて減圧ラジアルタービンを回転させ、常圧発電機を用いて発電するシステムを提供するもので、
下部貯水槽100と、上部貯水槽110と、下部貯水槽100から上部貯水槽110に揚水する水路120と、夜間電力NTを利用して駆動する駆動ポンプ130と、上部貯水槽110から下部貯水槽100に放水する流路を備え、該放水流路に連結し、放水力により減圧吸引するアスピレータ200と、該アスピレータに連通する一方、大気と遮断される気密容器であって、前記アスピレータで減圧され、室温に近い温度で水を沸騰させるフラッシュ蒸留器からなる減圧蒸留塔300と、減圧蒸留塔で発生する水蒸気を利用し、減圧下に回転する減圧ラジアルタービン400と、該タービンのかかる駆動力で駆動される常圧発電機500と、上記タービンから放出させる蒸気を凝集する常圧器600とを備え、夜間電力を用いて揚げ水してエネルギーを上部貯水槽110に貯め、減圧水蒸気を利用して発電するとともに、発電後の水蒸気を常圧器600で冷却凝縮させて液化し、給水ポンプ140を介して減圧蒸留塔200に送り、循環使用することを特徴とする減圧沸騰形発電システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、夜間電力による揚げ水によりアスピレータ200を用いて減圧するので、減圧作用のエネルギー効率に優れる。しかも、減圧蒸留塔300としてフラッシュ蒸留器を用いるので減圧下の蒸留効率に優れる。しかも、タービンとしてラジアルタービンを減圧下に用いるので、減圧蒸気により回転が可能である。したがって、エネルギー効率よく得られる減圧蒸気により常圧発電機を回転させて発電することができる。
【0008】
本発明においては、通常蒸留塔においては水が用いられるが、海水を用い、これを加熱した上で減圧蒸留し、タービンから出てくる蒸気を常圧器で冷却し、循環使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発電システムを図面に基づいて説明する。
本発明においては、水源として下部貯水槽100と、上部貯水槽110とを備える。
下部貯水槽100から上部貯水槽110へは揚水する水路120を備え、駆動ポンプ130を用いて、夜間電力NTを利用して揚水する。上部貯水槽110には必要な発電量を考慮して貯水量を決定する。他方、上部貯水槽110の貯水量で蒸留塔300を減圧すべく、アスピレータ200を設ける。このアスピレータ200はまず、上部貯水槽110から下部貯水槽100に放水する流路160を形成する一方、該放水流路には減圧蒸留塔300から吸気路170を連結して構成される。これにより、アスピレータ200の放水流路160に上部貯水槽110より放水すると、アスピレータ200は吸気作用を発揮し、吸気路を介して蒸留塔300を減圧する。蒸留塔300は大気と遮断される気密容器であって、前記アスピレータ200で減圧され、室温に近い温度で水を沸騰させるフラッシュ蒸留器が備えられる。減圧程度は常温で水を気化する20Torrが好ましい。蒸留塔300は蒸発能力を向上させるため、要求に応じて加熱するのが好ましく、太陽熱加熱方式が望ましい。
減圧蒸留塔300からは、減圧蒸留により発生する水蒸気をタービン400に投入する。タービン400は減圧蒸留塔300の減圧程度に合わせて減圧するのが好ましく、減圧下(好ましくは常温、20Torr)で回転する減圧ラジアルタービンが選ばれる。該タービン400にはかかる回転で駆動される常圧発電機500を設ける。発電機は1atmで回転し、発電することになる。
他方、上記タービン400から放出させる蒸気は常圧器600で液化され、循環ポンプ140を介して減圧蒸留塔300に循環し、再び、減圧水蒸気に再生される。
【0011】
本発電システムに於いて、水に代え、アンモニアを使用することができる。アンモニアの蒸気圧は25℃において1.00[MPa]であり、30℃で1.17[MPa]である。従って25℃と30℃の差圧は0.17[MPa]となり、この差圧でラジアルタービン発電機101を駆動させることができる。
【0012】
以上の実施例によれば、アスピレータ200で蒸留塔300内の圧力を最大20Torrまで減圧することができる。減圧蒸留塔300では真空近くまで減圧することができるので、加熱なしで水蒸気を得ることができる。発電は減圧ラジアルタービンを用いるので、揚げ水を利用する水力発電をはるかに凌ぐ発電量を得ることができる。なお、揚げ水ポンプ130及び循環ポンプ140等は深夜電力を使用するので経済的である。
【符号の説明】
【0013】
100 下部貯水槽
110 上部貯水槽
200 アスピレータ
300 蒸留塔
400 減圧タービン
500 常圧発電機
600 常圧器