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特許7453957高成形性リサイクルアルミニウム合金及びその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】高成形性リサイクルアルミニウム合金及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20240313BHJP
   C22F 1/043 20060101ALI20240313BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C22C21/02
C22F1/043
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 686A
C22F1/00 686B
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 694B
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021503785
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019042809
(87)【国際公開番号】W WO2020023375
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】62/701,977
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/810,585
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】サゾル・クマール・ダス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ハイエン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・エバンズ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ビーチ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・チャンウク
(72)【発明者】
【氏名】マーク・マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラジーブ・ジー・カマット
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・コサク
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・フライヤット
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・スコット・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・フロレイ
(72)【発明者】
【氏名】シリル・ブザンソン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ティム
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0002761(US,A1)
【文献】特開平11-071623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5~2.0重量%のSi、0.2~0.4重量%のFe、最大0.4重量%のCu、最大0.5重量%のMg、0.02~0.1重量%のMn、0.01~0.1重量%のCr、最大0.15重量%のSr、最大0.1重量%のTi、最大0.1重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及び残部がAlからなり、鉄含有金属間粒子を含み、
前記鉄含有金属間粒子は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子を含む、アルミニウム合金。
【請求項2】
0.7~1.4重量%のSi、0.2~0.3重量%のFe、最大0.2重量%のCu、最大0.4重量%のMg、0.02~0.08重量%のMn、0.02~0.05重量%のCr、0.01~0.12重量%のSr、最大0.1重量%のTi、最大0.1重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及び残部がAlからなり、鉄含有金属間粒子を含み、
前記鉄含有金属間粒子は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項3】
1.0~1.4重量%のSi、0.22~0.28重量%のFe、最大0.15重量%のCu、最大0.35重量%のMg、0.02~0.06重量%のMn、0.02~0.04重量%のCr、0.02~0.10重量%のSr、最大0.1重量%のTi、最大0.1重量%のZn、最大0.15重量%の不純物、及び残部がAlからなり、鉄含有金属間粒子を含み、
前記鉄含有金属間粒子は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項4】
FeとCrを組み合わせた含有量は、0.22重量%~0.5重量%である、請求項1に記載のアルミニウム合金。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金を含む、アルミニウム合金製品。
【請求項6】
前記アルミニウム合金製品を構成する結晶粒の平均結晶粒径が最大35μmである、請求項5に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項7】
前記平均結晶粒径は、25μm~35μmである、請求項6に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項8】
前記鉄含有金属間粒子の少なくとも36%は、球形である、請求項7に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項9】
前記アルミニウム合金製品中に存在する前記鉄含有金属間粒子の少なくとも36%は、円相当径が3μm以下である、請求項7または8に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項10】
前記アルミニウム合金製品中に存在する前記鉄含有金属間粒子の少なくとも50%は、円相当径が3μm以下である、請求項7から9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項11】
前記アルミニウム合金製品中に存在する前記鉄含有金属間粒子の少なくとも75%は、円相当径が3μm以下である、請求項7から10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項12】
前記鉄含有金属間粒子の少なくとも36%は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、請求項7から11のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項13】
前記鉄含有金属間粒子の少なくとも50%は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、請求項7から12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項14】
前記鉄含有金属間粒子の少なくとも80%は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、請求項7から13のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項15】
前記アルミニウム合金製品中の立方体集合組織成分の体積率は、少なくとも12%を占める、請求項7から14のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項16】
前記アルミニウム合金製品は、全伸びが少なくとも32%である、請求項7から15のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項17】
前記アルミニウム合金製品は、自動車車体部品を含む、請求項7から16のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製品。
【請求項18】
アルミニウム合金製品の製造法であって、以下:
請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造品を製造すること;
前記アルミニウム合金鋳造品を均質化して、均質化アルミニウム合金鋳造品を製造すること;
前記均質化アルミニウム合金鋳造品を熱間圧延及び冷間圧延して、最終ゲージのアルミニウム合金製品を製造すること;ならびに
前記最終ゲージのアルミニウム合金製品を溶体化処理すること
を含む、製造法。
【請求項19】
前記均質化は、530℃~570℃の均質化温度で行われる、請求項18に記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月23日出願の米国仮特許出願第62/701,977号及び2019年2月26日出願の米国仮特許出願第62/810,585号の優先権及びそれらの利益を主張する。これら出願は、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0002】
本開示は、概して冶金に関し、より詳細には、アルミニウム合金の製造、任意選択でリサイクルスクラップからの製造、アルミニウム合金製品の製造、及びアルミニウム合金のリサイクルに関する。
【背景技術】
【0003】
一次アルミニウムの製造に関する費用及び時間を理由に、多くの相手先商標製造会社は、アルミニウム合金材料を調製するのに既存のアルミニウム含有スクラップに依存している。しかしながら、再生可能スクラップは、高性能アルミニウム合金の調製で使用するのに適さない可能性がある。というのも、再生可能スクラップは、ある種の望ましくない元素を高濃度で含有する可能性があるからである。例えば、再生可能スクラップは、アルミニウム合金の機械特性、例えば成形性及び強度などに影響を及ぼす量で、ある種の元素を含む可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明で取り上げられる実施形態は、この概要によってではなく、特許請求の範囲により定義される。この概要は、本発明の様々な態様についての高レベルな概説であり、概念の一部を紹介するが、概念は以下の詳細な説明の章でさらに説明される。この概要は、特許請求される発明の対象の重要なまたは本質的な特長を特定することを意図するものでもなければ、特許請求される発明の対象の範囲を決定するために単独で使用されることも意図しない。発明の対象は、明細書全体、あらゆる図面、及び各特許請求項の中の適切な部分を参照することにより理解されるべきである。
【0005】
本明細書中記載されるのは、高成形性リサイクルアルミニウム合金及びアルミニウム合金の製造方法である。本明細書中記載されるアルミニウム合金は、約0.5~2.0重量%のSi、0.2~0.4重量%のFe、最大0.4重量%のCu、最大0.5重量%のMg、0.02~0.1重量%のMn、0.01~0.1重量%のCr、最大0.15重量%のSr、最大0.15重量%の合計不純物(各不純物は、最大約0.05重量%の量で存在する)、及びAlを含む。限定ではない例のいくつかにおいて、アルミニウム合金は、約0.7~1.4重量%のSi、0.2~0.3重量%のFe、最大0.2重量%のCu、最大0.4重量%のMg、0.02~0.08重量%のMn、0.02~0.05重量%のCr、0.01~0.12重量%のSr、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。限定ではない例のいくつかにおいて、アルミニウム合金は、約1.0~1.4重量%のSi、0.22~0.28重量%のFe、最大0.15重量%のCu、最大0.35重量%のMg、0.02~0.06重量%のMn、0.02~0.04重量%のCr、0.02~0.10重量%のSr、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む。任意選択で、アルミニウム合金中のFeとCrを合計した含有量は、約0.22重量%~約0.5重量%である。
【0006】
同じく本明細書中記載されるのは、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金を含むアルミニウム合金製品である。いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、最大約35μm(例えば、約25μm~約35μmまたは約28μm~約32μm)の結晶粒径を含む。任意選択で、アルミニウム合金製品は、鉄含有金属間粒子を含む。場合によっては、鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%は、球形である可能性がある。限定ではない例のいくつかにおいて、アルミニウム合金製品に存在する鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%(例えば、少なくとも約50%または少なくとも約75%)は、約3μm以下の円相当径(すなわち、「ECD」)を有する。任意選択で、鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%)は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される。場合によっては、アルミニウム合金製品中の立方体集合組織成分の体積率は、少なくとも約12%を占める。場合によっては、アルミニウム合金製品は、少なくとも約32%の全伸びを有する。アルミニウム合金製品は、とりわけ、車体部品に含まれる可能性がある。
【0007】
さらに本明細書中記載されるのは、アルミニウム合金製品の製造法である。本方法は、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造品を製造すること、アルミニウム合金鋳造品を均質化して、均質化アルミニウム合金鋳造品を製造すること、熱間圧延すること、及び均質化アルミニウム合金鋳造品を冷間圧延して、最終ゲージのアルミニウム合金製品を製造すること、及び最終ゲージのアルミニウム合金製品を溶体化処理することを含む。任意選択で、均質化は、約530℃~約570℃の均質化温度で実施される。任意選択で、鋳造工程におけるアルミニウム合金は、リサイクルされた内容物を少なくとも約40重量%の量で含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本明細書中記載されるとおりの処理方法を示す概略図である。
図1B】本明細書中記載されるとおりの処理方法を示す概略図である。
図1C】本明細書中記載されるとおりの処理方法を示す概略図である。
図2】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の降伏強度を示すグラフである。
図3】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の極限引張強度を示すグラフである。
図4】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の一様伸びを示すグラフである。
図5】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の全伸びを示すグラフである。
図6】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金のn値(すなわち、変形後の強度の上昇)を示すグラフである。
図7】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金のr値(すなわち、異方性)を示すグラフである。
図8】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の平均r値(すなわち、異方性)を示すグラフである。
図9】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の焼付塗装後の降伏強度の変化を示すグラフである。
図10】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の曲げ加工性を示すグラフである。
図11】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の曲げ加工性を示すグラフである。
図12】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金のカッピング試験結果を示すグラフである。
図13A】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金製品の粒子分布を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図13B】比較のアルミニウム合金製品の粒子分布を撮影したSEM写真である。
図13C】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金製品の粒子分布を撮影したSEM写真である。
図13D】比較のアルミニウム合金製品の粒子分布を撮影したSEM写真である。
図13E】比較のアルミニウム合金製品の粒子分布を撮影したSEM写真である。
図14】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金中の非球形粒子の円相当径(ECD)測定に基づく粒径分布を示すグラフである。
図15】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金中の粒子のアスペクト比に基づく粒径分布を示すグラフである。
図16】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金中の鉄含有構成粒子の体積率を示すグラフである。
図17】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金中の鉄含有構成粒子の数密度を示すグラフである。
図18A】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金製品の結晶粒構造を撮影した光学顕微鏡(OM)写真である。
図18B】比較のアルミニウム合金製品の結晶粒構造を撮影したOM写真である。
図18C】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金製品の結晶粒構造を撮影したOM写真である。
図18D】比較のアルミニウム合金製品の結晶粒構造を撮影したOM写真である。
図18E】比較のアルミニウム合金製品の結晶粒構造を撮影したOM写真である。
図19】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の平均結晶粒径を示すグラフである。
図20】本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金の集合組織成分含有量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中提供されるのは、望ましい機械特性を有するアルミニウム合金製品、ならびにその鋳造及び処理方法である。アルミニウム合金製品は、リサイクル可能であるとともに、リサイクル材料(例えば、使用済みスクラップ)から製造可能であり、それでもなお望ましい機械特性、例えば亀裂及び/またはひび割れしない良好な成形性、高い破断伸び、及び良好な耐久性を示す。
【0010】
本明細書中記載されるアルミニウム合金製品は、アスペクト比(例えば、幅対高さ比)の低い金属間粒子を含有する。場合によっては、低アスペクト比は、約4以下(例えば、約3以下、約2以下、または約1.5以下)の比である。詳細には、金属間粒子は、形状が円形または球形である。アスペクト比が1(例えば、円形断面に近い、すなわち、球形粒子)であることは、機械特性、例えば、曲げ加工、成形、破砕、及び/または衝突試験に関して好適なFe含有金属間粒子形状であるということである。こうした金属間粒子は、製品の望ましい機械特性を向上させ、形状が楕円形または針状である金属間粒子を有するアルミニウム合金製品と比較した場合に優れた結果を示す製品をもたらす。
【0011】
定義及び説明
本明細書中使用される場合、「発明(invention)」、「本発明(the invention)」、「本発明(this invention)」、及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願及び以下の特許請求の範囲における発明の対象の全てを広く示すものとする。これらの用語を含む記述は、本明細書中記載される発明の対象を制限すると理解されるべきではなく、また以下の特許請求の範囲の意味または範囲を制限すると理解されるべきではない。
【0012】
この説明において、合金についての言及は、アルミニウム産業記号、例えば、「シリーズ」または「6xxx」により特定して行われる。アルミニウム及びその合金の命名及び同定において最も一般的に使用される番号指定システムについて理解するには、「International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys」または「Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot」、共に出版元The Aluminum Association、を参照。
【0013】
本明細書中使用される場合、「a」、「an」、または「the」の意味には、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、単数及び複数についての言及を含む。
【0014】
本明細書中使用される場合、プレートとは、概して、厚さが約15mmを超えるものである。例えば、プレートは、厚さが約15mm超、約20mm超、約25mm超、約30mm超、約35mm超、約40mm超、約45mm超、約50mm超、約100mm超、または最大約300mmであるアルミニウム製品を示す場合がある。
【0015】
本明細書中使用される場合、シェート(shate)(シートプレートとも称する)とは、概して、厚さが約4mm~約15mmのものである。例えば、シェートは、厚さが約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、または約15mmである場合がある。
【0016】
本明細書中使用される場合、シートは、概して、厚さが約4mm未満のアルミニウム製品を示す。例えば、シートは、厚さが約4mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1mm未満、約0.5mm未満、約0.3mm未満、または約0.1mm未満である場合がある。
【0017】
本出願では、合金の調質または状態について言及する。最も一般的に使用されている合金の調質の説明について理解するには、「American National Standards (ANSI) H35on Alloy and Temper Designation Systems」を参照。F状態または調質は、押出ままのアルミニウム合金を示す。O状態または調質は、焼鈍後のアルミニウム合金を示す。T1状態または調質は、熱間加工から冷却して自然時効させた(例えば、室温で)アルミニウム合金を示す。T2状態または調質は、熱間加工から冷却し、冷間加工し、自然時効させたアルミニウム合金を示す。T3状態または調質は、溶体化処理し、冷間加工し、自然時効させたアルミニウム合金を示す。T4状態または調質は、溶体化処理して自然時効させたアルミニウム合金を示す。T5状態または調質は、熱間加工から冷却して人工時効させた(高温で)アルミニウム合金を示す。T6状態または調質は、溶体化処理して人工時効させたアルミニウム合金を示す。T7状態または調質は、溶体化処理して人工過時効させたアルミニウム合金を示す。T8x状態または調質は、溶体化処理し、冷間加工し、及び人工時効させたアルミニウム合金を示す。T9状態または調質は、溶体化処理し、人工時効させ、及び冷間加工したアルミニウム合金を示す。
【0018】
本明細書中使用される場合、「室温」の意味は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含むことができる。
【0019】
本明細書中使用される場合、「アルミニウム合金鋳造品」、「金属鋳造品」、「鋳造品」、などの用語は、同義で使用され、直接チル鋳造法(直接チル同時鋳造法(direct cill co-casting)を含む)または半連続鋳造法、連続鋳造法(例えば、双ベルト連続鋳造機、双ロール連続鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用によるものを含む)、電磁鋳造法、ホットトップ鋳造法、または任意の他の鋳造法、あるいはそれらの任意の組み合わせにより製造された製品を示す。
【0020】
本明細書中開示される全ての範囲は、当然のことながら、いずれの端点も包含し、及び範囲内に組み込まれるありとあらゆるサブ範囲を包含する。例えば、「1~10」で指定される範囲は、最小値の1から最大値の10までの間の(及びそれらの値を含む)ありとあらゆるサブ範囲;すなわち、最小値1以上から始まる全てのサブ範囲、例えば、1~6.1、及び最大値10以下で終わる全てのサブ範囲、例えば、5.5~10、を含むとみなされるべきである。
【0021】
以下のアルミニウム合金は、それらの元素組成に関して、合金の総重量を基準にして重量パーセンテージ(重量%)で記載される。各合金のある特定の例において、不純物の総和は最大重量%が0.15%であり、残部はアルミニウムである。
【0022】
合金組成物
本明細書中記載されるのは、望ましい機械特性を示す新規アルミニウム合金及び製品である。本明細書中記載されるアルミニウム合金及び製品は、特性の中でもとりわけ、優れた伸び特性及び成形性ならびに並外れた耐久性を示す。場合によっては、機械特性は、合金の元素組成により達成可能である。例えば、本明細書中記載される合金は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、及びクロム(Cr)を含む。これらの成分のうち少なくとも2種、例えば、Fe及びMn、Fe及びCr、またはFe、Mn、及びCrが、記載される量で存在することで、望ましい金属間粒子がもたらされる。以下に記載のとおり、Fe含有量が少なくとも約0.50重量%であることにより、鋳造プロセス中の金属間粒子の数が上昇する。また、他の元素、例えば、Mn及び/またはCrなどは、金属間粒子の大きさ及びアスペクト比に影響を及ぼし、アスペクト比の低い小さな球形粒子をもたらす。そうなると、金属間粒子は、新たな結晶粒の核生成部位として働き、したがって、粗く伸長した結晶粒ではなく小さい等軸の結晶粒を含有するアルミニウム合金製品をもたらす。そのようなアルミニウム合金製品は、望ましい成形特性を示す。Fe含有量が約0.20重量%と高く、ほぼ典型的には成形性及び曲げ加工性の低下をもたらすものであることからすると、本明細書中記載されるアルミニウム合金製品が示す特性は、予想外のものである。
【0023】
場合によっては、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金は、表1に提示するとおりの以下の元素組成を有することができる。
表1
【0024】
いくつかの例において、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金は、表2に提示するとおりの以下の元素組成を有することができる。
表2

【0025】
いくつかの例において、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金は、表3に提示するとおりの以下の元素組成を有することができる。
表3
【0026】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、ケイ素(Si)を、合金の総重量に基づき約0.5%~約2.0%(例えば、約0.7~約1.5%または約1.0~約1.4%)の量で含む。例えば、合金は、0.5%、0.51%、0.52%、0.53%、0.54%、0.55%、0.56%、0.57%、0.58%、0.59%、0.6%、0.61%、0.62%、0.63%、0.64%、0.65%、0.66%、0.67%、0.68%、0.69%、0.7%、0.71%、0.72%、0.73%、0.74%、0.75%、0.76%、0.77%、0.78%、0.79%、0.8%、0.81%、0.82%、0.83%、0.84%、0.85%、0.86%、0.87%、0.88%、0.89%、0.9%、0.91%、0.92%、0.93%、0.94%、0.95%、0.96%、0.97%、0.98%、0.99%、1.0%、1.01%、1.02%、1.03%、1.04%、1.05%、1.06%、1.07%、1.08%、1.09%、1.1%、1.11%、1.12%、1.13%、1.14%、1.15%、1.16%、1.17%、1.18%、1.19%、1.2%、1.21%、1.22%、1.23%、1.24%、1.25%、1.26%、1.27%、1.28%、1.29%、1.3%、1.31%、1.32%、1.33%、1.34%、1.35%、1.36%、1.37%、1.38%、1.39%、1.4%、1.41%、1.42%、1.43%、1.44%、1.45%、1.46%、1.47%、1.48%、1.49%、1.5%、1.51%、1.52%、1.53%、1.54%、1.55%、1.56%、1.57%、1.58%、1.59%、1.6%、1.61%、1.62%、1.63%、1.64%、1.65%、1.66%、1.67%、1.68%、1.69%、1.7%、1.71%、1.72%、1.73%、1.74%、1.75%、1.76%、1.77%、1.78%、1.79%、1.8%、1.81%、1.82%、1.83%、1.84%、1.85%、1.86%、1.87%、1.88%、1.89%、1.9%、1.91%、1.92%、1.93%、1.94%、1.95%、1.96%、1.97%、1.98%、1.99%、または2.0%のSiを含むことができる。表示は全て重量%である。
【0027】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、鉄(Fe)を、合金の総重量に基づき約0.2%~約0.4%(例えば、約0.2%~約0.35%、約0.2%~約0.3%、約0.2%~約0.28%、または約0.22%~約0.28%)の量で含む。例えば、合金は、0.2%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.3%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、または0.4%のFeを含むことができる。表示は全て重量%である。
【0028】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、銅(Cu)を、合金の総重量に基づき最大約0.4%(例えば、0.0%~約0.35%または0.0%~約0.15%)の量で含む。例えば、合金は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.3%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、または0.4%のCuを含む。場合によっては、Cuは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。表示は全て重量%である。
【0029】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、マグネシウム(Mg)を、合金の総重量に基づき最大約0.5%(例えば、0.0%~約0.5%、0.0%~約0.4%、0.0%~約0.35%、約0.1%~約0.5%、または約0.2%~約0.35%)の量で含む。例えば、合金は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.3%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、0.4%、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%、0.45%、0.46%、0.47%、0.48%、0.49%、または0.5%のMgを含むことができる。場合によっては、Mgは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。表示は全て重量%である。
【0030】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、マンガン(Mn)を、合金の総重量に基づき約0.02%~約0.1%(例えば、約0.02%~約0.08%または約0.02%~約0.06%)の量で含む。例えば、合金は、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のMnを含むことができる。表示は全て重量%である。
【0031】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、クロム(Cr)を、合金の総重量に基づき約0.01%~約0.1%(例えば、約0.02~約0.1%、約0.02%~約0.08%、または約0.02%~約0.06%)の量で含む。例えば、合金は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のCrを含むことができる。表示は全て重量%である。
【0032】
いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、ストロンチウム(Sr)を、合金の総重量に基づき最大約0.15%(例えば、0.0%~約0.15%、約0.02%~約0.15%、約0.02%~約0.10%、または約0.02%~約0.14%)の量で含む。例えば、合金は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、または0.15%のSrを含むことができる。場合によっては、Srは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。表示は全て重量%である。場合によっては、Srを本明細書中記載されるアルミニウム合金に加えることで、材料の成形性及び耐久性をさらに高めることができる。理論に固執するつもりはないが、成形性の向上は、金属間粒子の共晶改良によるものである可能性がある。共晶改良は、アルミニウム合金の鋳造中及び固化中の、共晶成分内のラメラ間隔を低減する可能性がある。すなわち、共晶成分のSr改変は、例えば、熱間圧延プロセス中に、金属間粒子を粉々にしてより小さい及び/またはより細かい金属間粒子にする可能性がある。最終的に、より細かい金属間粒子は、アルミニウム合金が変形(例えば、成形)中に内部損傷を起こす傾向を低減し、それによりアルミニウム合金の成形性を改善することができる。
【0033】
任意選択で、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、チタン(Ti)及び亜鉛(Zn)の一方または両方を含むことができる。いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、Tiを、合金の総重量に基づき最大約0.1%(例えば、約0.001%~約0.08%または約0.005%~約0.06%)の量で含む。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のTiを含むことができる。場合によっては、Tiは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。いくつかの例において、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、Znを、合金の総重量に基づき最大約0.1%(例えば、約0.001%~約0.08%または約0.005%~約0.06%)の量で含む。例えば、合金は、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のZnを含むことができる。場合によっては、Znは、合金中に存在しない(すなわち、0%)。表示は全て重量%である。
【0034】
上記のとおり、Feが少なくとも約0.2重量%の量で存在し、及びCrと組み合わされていることは、本明細書中記載されるアルミニウム合金製品が示す望ましい特性をもたらす要因である。任意選択で、FeとCrを組み合わせた含有量は、少なくとも約0.22重量%である。場合によっては、FeとCrを組み合わせた含有量は、約0.22重量%~約0.5重量%、約0.22重量%~約0.4重量%、または約0.25重量%~約0.35重量%が可能である。例えば、FeとCrを組み合わせた含有量は、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.3%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、0.4%、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%、0.45%、0.46%、0.47%、0.48%、0.49%、または0.5%が可能である。表示は全て重量%である。
【0035】
任意選択で、本明細書中記載されるアルミニウム合金は、さらに、他の微量元素を、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で含むことができ、場合によってはこれらを不純物と称する。こうした不純物として、V、Ni、Sc、Hf、Zr、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、V、Ni、Sc、Hf、Zr、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、またはPbは、合金中に、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、0.02%以下、または0.01%以下の量で存在する場合がある。全ての不純物の合計は、0.15%を超えない(例えば、0.1%)。表示は全て重量%である。各合金の残部のパーセンテージは、アルミニウムである。
【0036】
本明細書中記載されるアルミニウム合金製品は、鉄含有金属間粒子を含む。場合によっては、鉄含有金属間粒子は、球形である。例えば、鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%は、球形である(例えば、鉄含有金属間粒子の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%は、球形である)。アルミニウム合金製品中に存在する粒子の少なくとも約36%は、円相当径(すなわち、「ECD」)で測定して、約3μm以下(例えば、約2.5μm以下、約2.0μm以下、約1.5μm以下、または約1.2μm以下)の粒径を有する。ECDは、非球形の測定対象に推定円断面を重ね合わせることにより、特定可能である。例えば、アルミニウム合金製品中に存在する鉄含有金属間粒子は、3μm以下、2.9μm以下、2.8μm以下、2.7μm以下、2.6μm以下、2.5μm以下、2.4μm以下、2.3μm以下、2.2μm以下、2.1μm以下、2μm以下、1.9μm以下、1.8μm以下、1.7μm以下、1.6μm以下、1.5μm以下、1.4μm以下、1.3μm以下、1.2μm以下、1.1μm以下、1μm以下、0.9μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、0.1μm以下、またはそれらのいずれかの間にあるECDを有することができる。場合によっては、アルミニウム合金製品中に存在する粒子の少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が、3μm以下のECDを有する。
【0037】
いくつかの限定ではなく例において、本明細書中記載される鉄含有金属間粒子は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子を含む。α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子は、球形粒子であることが可能である。そのような球形金属間粒子を有する本明細書中記載されるアルミニウム合金は、主にβ-AlFeSi金属間粒子で構成されるアルミニウム合金と比較した場合に、成形(例えば、曲げ加工、研削成形、プレス加工、または任意の適切な成形法)しやすい。β-AlFeSi金属間粒子は、典型的には、長い針状の形状を有する。そのような針状金属間粒子は、成形にとって有害であり、したがって、リサイクルアルミニウム合金からアルミニウム合金部品を作製する場合に問題となる。
【0038】
一次アルミニウム合金の製造及び/またはリサイクル(例えば、スクラップアルミニウム合金を溶解させ、任意選択で一次アルミニウム合金を加えることによる)中の溶解段階で、Crを上記の濃度(例えば、約0.01重量%~約0.1重量%)でアルミニウム合金に導入することにより、Crがアルミニウム合金(例えば、一次アルミニウム合金及び溶解スクラップを含有する溶解合金)中に見られるあらゆる過剰なFeと相互作用して、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子をもたらすことが可能になり、そして、β-AlFeSi金属間粒子と置き換わることが可能になる。したがって、β-AlFeSi金属間粒子がα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子に置き換わることにより、高い成形性及び耐久性を実証するアルミニウム合金が提供される。場合によっては、本明細書中記載されるアルミニウム合金中の鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子である。例えば、本明細書中記載されるアルミニウム合金中の鉄含有金属間粒子の少なくとも36%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%は、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子である。
【0039】
場合によっては、本明細書中記載されるとおりのCrの添加は、アルミニウム合金を提供するときのリサイクル内容物の量を上昇させることができる。本明細書中記載されるアルミニウム合金は、リサイクル内容物を少なくとも約40重量%含有することができる。例えば、アルミニウム合金は、リサイクル内容物を少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%含有することができる。
【0040】
いくつかの例において、鉄含有金属間粒子は、アルミニウム合金中、1平方ミリメートル(mm)あたり少なくとも約2000~約3000の粒子の平均量で存在することができる。例えば、鉄含有金属間粒子の平均量は、約2000粒子/mm、2100粒子/mm、2200粒子/mm、2300粒子/mm、2400粒子/mm、2500粒子/mm、2600粒子/mm、2700粒子/mm、2800粒子/mm、2900粒子/mm、3000粒子/mm、またはそれらのいずれかの間にある量が可能である。
【0041】
上記のとおり、アルミニウム合金中の金属間粒子は、結晶粒の核形成部位として機能することができる。アルミニウム合金及びアルミニウム合金を含む製品は、平均結晶粒径が最大約35μm(例えば、約5μm~約35μm、約25μm~約35μm、または約28μm~約32μm)の結晶粒を含むことができる。例えば、平均結晶粒径は、約1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、またはそれらのいずれかの間にある大きさが可能である。
【0042】
場合によっては、アルミニウム合金製品は、例えば、T4調質である場合に、少なくとも約27%及び最大約40%の全伸びを有することができる。例えば、アルミニウム合金製品は、約27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%、またはそれらのいずれかの間にある全伸びを有することができる。
【0043】
場合によっては、アルミニウム合金製品は、例えば、T4調質である場合に、少なくとも約20%及び最大約30%の一様伸びを有することができる。例えば、アルミニウム合金製品は、約20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%、またはそれらのいずれかの間にある一様伸びを有することができる。
【0044】
いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、例えば、T4調質である場合に、約100MPa以上の降伏強度を有する。例えば、アルミニウム合金製品は、105MPa以上、110MPa以上、115MPa以上、120MPa以上、125MPa以上、130MPa以上、135MPa以上、140MPa以上、145MPa以上、または150MPa以上の降伏強度を有することができる。場合によっては、降伏強度は、約100MPa~約150MPa(例えば、約105MPa~約145MPa、約110MPa~約140MPa、または約115MPa~約135MPa)である。
【0045】
いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、例えば、T4調質である場合に、約200MPa以上の極限引張強度を有する。例えば、アルミニウム合金製品は、205MPa以上、210MPa以上、215MPa以上、220MPa以上、225MPa以上、230MPa以上、235MPa以上、240MPa以上、245MPa以上、または250MPa以上の極限引張強度を有することができる。場合によっては、極限引張強度は、約200MPa~約250MPa(例えば、約205MPa~約245MPa、約210MPa~約240MPa、または約215MPa~約235MPa)である。
【0046】
アルミニウム合金製品は、複数の結晶学的集合組織成分を有する少なくとも第一の表面部分を備える。結晶学的集合組織成分として、再結晶集合組織成分(例えば、Goss成分、Cube成分、ならびにRCRD1成分、RCRD2成分、RCRN1成分、及びRCRN2成分を含むRotated Cube(RC)成分)を挙げることができる。結晶学的集合組織成分として、変形集合組織成分(例えば、Brass(Bs)成分、S成分、Copper成分、Shear1成分、Shear2成分、Shear3成分、P成分、Q成分、及びR成分)も挙げることができる。
【0047】
いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、Cube成分を含むことができる。任意選択で、アルミニウム合金製品中のCube成分の体積率は、少なくとも約12%(例えば、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、または少なくとも約18%)が可能である。いくつかの例において、アルミニウム合金製品中のCube成分の体積率は、最大約20%(例えば、最大約15%または最大約10%)である。例えば、アルミニウム合金製品中のCube成分の体積率は、約12%~約20%(例えば、約13%~約20%または約16%~約18%)の範囲にあることが可能である。
【0048】
いくつかの例において、アルミニウム合金製品は、Brass成分、S成分、Copper成分、及びGoss成分を含むことができる。任意選択で、アルミニウム合金製品中のBrass、S、Copper、またはGoss成分のいずれか1種の体積率は、約5%未満(例えば、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満)であることが可能である。例えば、アルミニウム合金製品中のBrass、S、Copper、またはGoss成分のいずれか1種の体積率は、約1%~約5%、約1.5%~約4.5%、または約2%~約4%であることが可能である。
【0049】
アルミニウム合金の調製法
アルミニウム合金の特性は、部分的に、合金調製中の微小構造の形成により決定される。ある特定の態様において、合金組成物の調製法は、合金が所望の用途に適合した特性を有するようになるかどうかに影響を及ぼす可能性があり、そうなるかどうかを決定付ける可能性さえある。
【0050】
鋳造
本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金は、任意の適切な鋳造法を用いて、鋳造してアルミニウム合金鋳造品にすることができる。例えば、鋳造プロセスとして、直接チル(DC)鋳造プロセスまたは連続鋳造(CC)プロセスを挙げることができる。いくつかの限定ではない例において、鋳造工程で使用されるアルミニウム合金は、原材料から生成した一次材料(例えば、精製アルミニウム及び追加の合金形成元素)が可能である。いくつかのさらなる例において、鋳造工程で使用されるアルミニウム合金は、少なくとも部分的にアルミニウムスクラップから、及び任意選択で一次材料を併用して生成したリサイクル材料が可能である。場合によっては、鋳造工程で使用されるアルミニウム合金は、リサイクル内容物を少なくとも約40%含有することができる。例えば、鋳造工程で使用されるアルミニウム合金は、リサイクル内容物を少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%含有することができる。
【0051】
次いで、アルミニウム合金鋳造品を、さらなる処理工程に供することができる。例えば、本明細書中記載されるとおりの処理方法は、アルミニウム合金製品を形成するために均質化工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、及び/または溶体化処理工程を含むことができる。
【0052】
均質化
本明細書中記載されるとおりの均質化工程は、上記のアルミニウム合金用に設計された。本明細書中記載されるアルミニウム合金は、Si含有量が高く(すなわち、0.5~2.0重量%)、このことは、約550℃より高い温度(例えば、560℃以上)で均質化した場合、アルミニウム合金マトリクス内での局所溶解を招く可能性がある。そのような局所溶解は、下流の熱処理工程中に割裂を引き起こす可能性がある。本明細書中記載される均質化工程は、どのようなSi元素も溶解させ、それと同時に局所溶解を回避するのに有効である。
【0053】
均質化工程は、アルミニウム合金鋳造品を加熱して、約570℃または最高で約570℃(例えば、最高約560℃、最高約550℃、最高約540℃、最高約530℃、最高約520℃、最高約510℃、最高約500℃、最高約490℃、最高約480℃、最高約470℃、または最高約460℃)に到達させることを含むことができる。例えば、アルミニウム合金鋳造品は、約460℃~約570℃(例えば、約465℃~約570℃、約470℃~約570℃、約480℃~約570℃、約490℃~約570℃、約500℃~約570℃、約510℃~約570℃、約520℃~約570℃、約530℃~約570℃、約540℃~約570℃、または約550℃~約570℃)の温度に加熱することができる。場合によっては、加熱速度は、約100℃/時間以下、75℃/時間以下、50℃/時間以下、40℃/時間以下、30℃/時間以下、25℃/時間以下、20℃/時間以下、または15℃/時間以下が可能である。他の場合では、加熱速度は、約10℃/分~約100℃/分(例えば、約10℃/分~約90℃/分、約10℃/分~約70℃/分、約10℃/分~約60℃/分、約20℃/分~約90℃/分、約30℃/分~約80℃/分、約40℃/分~約70℃/分、または約50℃/分~約60℃/分)が可能である。
【0054】
次いで、アルミニウム合金鋳造品は、ある長さの時間、浸漬することができる。1つの限定ではない例に従って、アルミニウム合金鋳造品は、最高約15時間(例えば、限度値も含めて約20分間~約15時間または約5時間~約10時間)浸漬することができる。例えば、アルミニウム合金鋳造品は、約500℃~約550℃の温度で、約20分間、約30分間、約45分間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、またはそれらのいずれかの間にある時間、浸漬することができる。
【0055】
熱間圧延
均質化工程に続き、熱間圧延工程を行うことができる。ある特定の場合において、アルミニウム合金鋳造品を横たえて、約500℃~560℃(例えば、約510℃~約550℃または約520℃~約540℃)の入側温度範囲で熱間圧延する。入側温度は、例えば、約505℃、510℃、515℃、520℃、525℃、530℃、535℃、540℃、545℃、550℃、555℃、560℃、またはそれらのいずれかの間にある温度が可能である。ある特定の場合において、熱間圧延の出側温度は、約200℃~約290℃(例えば、約210℃~約280℃または約220℃~約270℃)の範囲が可能である。例えば、熱間圧延の出側温度は、約200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃、240℃、245℃、250℃、255℃、260℃、265℃、270℃、275℃、280℃、285℃、290℃、またはそれらのいずれかの間にある温度が可能である。
【0056】
ある特定の場合において、アルミニウム合金鋳造品は、熱間圧延されて約4mm~約15mmゲージ(例えば、約5mm~約12mmゲージ)になり、これを、ホットバンドと称する。例えば、鋳造品は、熱間圧延されて15mmゲージ、14mmゲージ、13mmゲージ、12mmゲージ、11mmゲージ、10mmゲージ、9mmゲージ、n8mmゲージ、7mmゲージ、6mmゲージ、5mmゲージ、または4mmゲージになることが可能である。このように圧延されたホットバンドの調質は、F調質と称する。
【0057】
コイル冷却
任意選択で、ホットバンドは、ホットミルから出てきた際に、巻きあげてホットバンドコイルにすることができる(すなわち、中間ゲージのアルミニウム合金製品コイル)。いくつかの例において、ホットバンドは、F調質をもたらすホットミルから出てきた際に、巻きあげてホットバンドコイルにすることができる。いくつかのさらなる例において、ホットバンドコイルは、空気中で冷却される。空冷工程は、約12.5℃/時間(℃/h)~約3600℃/hの速度で行うことができる。例えば、コイル冷却工程は、約12.5℃/h、25℃/h、50℃/h、100℃/h、200℃/h、400℃/h、800℃/h、1600℃/h、3200℃/h、3600℃/h、またはそれらのいずれかの間にある速度で行うことが可能である。いくつかのなおさらなる例において、空冷されたコイルは、ある長さの時間、貯蔵される。いくつかの例において、中間体コイルは、約100℃~約350℃(例えば、約200℃または約300℃)の温度に維持される。
【0058】
冷間圧延
冷間圧延工程は、溶体化処理工程の前に、任意選択で行うことができる。ある特定の態様において、ホットバンドは、冷間圧延されて、最終ゲージのアルミニウム合金製品(例えば、シート)になる。いくつかの例において、最終ゲージのアルミニウム合金シートは、厚さが、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.9mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、または0.1mmである。
【0059】
任意選択の圧延間焼鈍(inter-annealing)
いくつかの限定ではない例において、任意選択の圧延間焼鈍工程を、冷間圧延中に行うことができる。例えば、ホットバンドを冷間圧延して中間冷間圧延ゲージにし、焼き鈍しし、続いて冷間圧延して最終ゲージにすることができる。態様によっては、任意選択の圧延間焼鈍は、バッチプロセスで行うことができる(すなわち、バッチ型圧延間焼鈍工程)。圧延間焼鈍工程は、約300℃~約450℃(例えば、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃、約400℃、約410℃、約420℃、約430℃、約440℃、または約450℃)の温度で行うことができる。
【0060】
溶体化処理
溶体化処理工程は、最終ゲージのアルミニウム合金製品を、室温からピーク金属温度まで加熱することを含むことができる。任意選択で、ピーク金属温度は、約530℃~約570℃(例えば、約535℃~約560℃、約545℃~約555℃、または約540℃)が可能である。最終ゲージのアルミニウム合金製品は、ピーク金属温度で、ある長さの時間、浸漬させることができる。ある特定の態様において、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、最長約2分間(例えば、限度値を含めて約10秒間~約120秒間)浸漬させることができる。例えば、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、約530℃~約570℃の温度で、10秒間、15秒間、20秒間、25秒間、30秒間、35秒間、40秒間、45秒間、50秒間、55秒間、60秒間、65秒間、70秒間、75秒間、80秒間、85秒間、90秒間、95秒間、100秒間、105秒間、110秒間、115秒間、120秒間、またはそれらのいずれかの間にある時間、浸漬させることができる。溶体化処理後、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、少なくとも約75℃毎秒(℃/秒)の速度でピーク金属温度からクエンチすることができる。例えば、最終ゲージのアルミニウム合金製品は、約75℃/秒、100℃/秒、125℃/秒、150℃/秒、175℃/秒、200℃/秒、またはそれらのいずれかの間にある速度でクエンチすることができる。
【0061】
任意選択で、アルミニウム合金製品は、次いで、自然時効または及び/または人工時効させることができる。いくつかの限定ではない例において、アルミニウム合金製品は、室温(例えば、約15℃、約20℃、約25℃、または約30℃)で少なくとも72時間貯蔵することにより、自然時効されてT4調質になることが可能である。例えば、アルミニウム合金製品は、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間、132時間、144時間、156時間、168時間、180時間、192時間、204時間、216時間、240時間、264時間、288時間、312時間、336時間、360時間、384時間、408時間、432時間、456時間、480時間、504時間、528時間、552時間、576時間、600時間、624時間、648時間、672時間、またはそれらのいずれかの間にある時間、自然時効させることができる。
【0062】
使用法
本明細書中記載される合金及び方法は、自動車及び/または輸送用途、あるいは任意の他の所望に使用可能であり、自動車及び/または輸送用途として、動力車両、飛行機、及び鉄道用途が挙げられる。いくつかの例において、合金及び方法は、動力車両の車体部品製品の製造に使用可能であり、車体部品製品としては、例えば、安全ケージ、ホワイトボディ、クラッシュレール、バンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラーレインフォースメント(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、アウターパネル、サイドパネル、インナーフード、アウターフード、またはトランクリッドパネルなどである。本明細書中記載されるアルミニウム合金及び方法は、飛行機または鉄道車両用途において、例えば、アウターパネル及びインナーパネルを製造するのにも使用可能である。
【0063】
本明細書中記載される合金及び方法は、電子機器用途において、例えば、外部包装及び内部包装を製造するのにも使用可能である。例えば、本明細書中記載される合金及び方法は、携帯電話及びタブレットコンピュータをはじめとする電子デバイス用のハウジングを製造するのにも使用可能である。いくつかの例において、合金は、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシング及びタブレットのボトムシャーシ用のハウジングを製造するのにも使用可能である。
【0064】
適切な合金、製品、及び方法の例示
例示1は、約0.5~2.0重量%のSi、0.2~0.4重量%のFe、最大0.4重量%のCu、最大0.5重量%のMg、0.02~0.1重量%のMn、0.01~0.1重量%のCr、最大0.15重量%のSr、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、アルミニウム合金である。
【0065】
例示2は、約0.7~1.4重量%のSi、0.2~0.3重量%のFe、最大0.2重量%のCu、最大0.4重量%のMg、0.02~0.08重量%のMn、0.02~0.05重量%のCr、0.01~0.12重量%のSr、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金である。
【0066】
例示3は、約1.0~1.4重量%のSi、0.22~0.28重量%のFe、最大0.15重量%のCu、最大0.35重量%のMg、0.02~0.06重量%のMn、0.02~0.04重量%のCr、0.02~0.10重量%のSr、最大0.15重量%の不純物、及びAlを含む、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金である。
【0067】
例示4は、FeとCrを組み合わせた含有量が、約0.22重量%~0.50重量%である、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金である。
【0068】
例示5は、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金を含む、アルミニウム合金製品である。
【0069】
例示6は、最大約35μmの結晶粒径を含む、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0070】
例示7は、結晶粒径が約25μm~約35μmである、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0071】
例示8は、鉄含有金属間粒子を含む、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0072】
例示9は、鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%が球形である、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0073】
例示10は、アルミニウム合金製品中に存在する鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%が約3μm以下の円相当径を有する、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0074】
例示11は、アルミニウム合金製品中に存在する鉄含有金属間粒子の少なくとも約50%が約3μm以下の円相当径を有する、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0075】
例示12は、アルミニウム合金製品中に存在する鉄含有金属間粒子の少なくとも約75%が約3μm以下の円相当径を有する、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0076】
例示13は、鉄含有金属間粒子の少なくとも約36%がα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0077】
例示14は、鉄含有金属間粒子の少なくとも約50%がα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0078】
例示15は、鉄含有金属間粒子の少なくとも約80%がα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子で構成される、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0079】
例示16は、アルミニウム合金製品中の立方体集合組織成分の体積率が少なくとも約12%を占める、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0080】
例示17は、アルミニウム合金製品が少なくとも約32%の全伸びを有する、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0081】
例示18は、アルミニウム合金製品が自動車車体部品に含まれる、先行または後続する例示のいずれかに記載のアルミニウム合金製品である。
【0082】
例示19は、アルミニウム合金製品の製造法であって、以下:先行または後続するいずれかの例示に記載のアルミニウム合金を鋳造して、アルミニウム合金鋳造品を製造すること;アルミニウム合金鋳造品を均質化して、均質化アルミニウム合金鋳造品を製造すること;均質化アルミニウム合金鋳造品を熱間圧延及び冷間圧延して、最終ゲージのアルミニウム合金製品を製造すること;ならびに、最終ゲージのアルミニウム合金製品を溶体化処理すること、を含む方法である。
【0083】
例示20は、均質化が、約530℃~約570℃の均質化温度で行われる、先行または後続する例示のいずれかに記載の方法である。
【0084】
例示21は、鋳造におけるアルミニウム合金が、リサイクルされた内容物を少なくとも約40重量%の量で含む、先行または後続する例示のいずれかに記載の方法である。
【0085】
以下の実施例は、本発明をさらに解説するように機能するが、しかし本発明に対するどのような制限も構成することはない。それどころか、明らかに当然のことながら、様々な実施形態、改変、及びその等価物に対して手段を与えることが可能であり、それらは、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者に示唆され得る。
【実施例
【0086】
実施例1:アルミニウム合金製品の特性
表4に示すとおりの組成を有するアルミニウム合金製品を調製した:
表4
【0087】
表4において、全ての値は、全体に対する重量パーセント(重量%)である。合金は、最大0.15重量%の合計不純物を含有することができ、残部はアルミニウムである。合金1は、本明細書中記載されるとおりの高度再生可能アルミニウム合金であり、0.26重量%のFe及び0.025重量%のCrを含有する。合金2、合金3、及び合金4は、比較の6xxxシリーズアルミニウム合金である。
【0088】
合金1及び合金2をそれぞれ、バッチ圧延間焼鈍工程を含まない方法(本明細書中「BAなし」と称する)、バッチ圧延間焼鈍工程を含む方法(本明細書中「BA」と称する)、及びコイル冷却工程を含むプロセス(本明細書中「CC」と称する)で処理した。図1Aは、本明細書中使用された処理法100を示す概略図である。合金1及び合金2をDC鋳造して、インゴット110とした。インゴット110を、上記のとおりの均質化工程に供した。次いで、インゴット110を反転ミルで熱間圧延に供して、インゴット110をブレークダウンした。ブレークダウン後、インゴット110をさらに、タンデムミルで熱間圧延に供して中間ゲージのアルミニウム合金製品とした。中間ゲージのアルミニウム合金製品をさらに、冷間ミルで冷間圧延に供して、最終ゲージのアルミニウム合金製品とした。
【0089】
図1Bは、本明細書中使用されるバッチ圧延間焼鈍工程を含む第二の処理法150を示す概略図である。合金1及び合金2をそれぞれ、DC鋳造して、インゴット110とした。インゴット110を、上記のとおりの均質化工程に供した。次いで、インゴット110を反転ミルで熱間圧延に供して、インゴット110をブレークダウンした。ブレークダウン後、インゴット110をさらに、タンデムミルで熱間圧延に供して中間ゲージのアルミニウム合金製品とした。中間ゲージのアルミニウム合金製品をさらに、冷間ミルで冷間圧延に供した。合金1及び合金2を巻き取り、上記のとおりのバッチ圧延間焼鈍工程において、炉で焼き鈍した。バッチ圧延間焼鈍後、合金1及び合金2をさらに、冷間圧延して最終ゲージにした。
【0090】
図1Cは、本明細書中使用される第三の処理法175を示す概略図である。合金3及び合金4をそれぞれ、DC鋳造して、インゴット110とした。インゴット110を、上記のとおりの均質化工程に供した。次いで、インゴット110を反転ミルで熱間圧延に供して、インゴット110をブレークダウンした。ブレークダウン後、インゴット110をさらに、タンデムミルで熱間圧延に供して中間ゲージのアルミニウム合金製品とした。熱間圧延後、中間ゲージのアルミニウム合金製品を巻き取り、アルミニウム合金中間ゲージ製品コイルを室温まで放冷した。中間ゲージのアルミニウム合金製品をさらに、冷間ミルで冷間圧延に供して、最終ゲージのアルミニウム合金製品とした。
【0091】
図2は、合金1、合金2、合金3、及び合金4から採取した試験試料の降伏強度を示すグラフである。引張特性は、長軸方向(「L」と称する)、横断方向(「T」と称する)、及び対角方向(「D」と称する)を含む3方向で評価した。方向は全て、処理中の圧延方向に対するものである。合金1及び合金2は、図1Aの処理法に従って冷間圧延中のバッチ圧延間焼鈍工程なし(「BAなし」)で、同じく図1Bの処理法に従って冷間圧延中のバッチ圧延間焼鈍工程あり(「BA」)で処理して、T4調質の合金1及び合金2とした。合金3及び合金4は、図1Cの処理法により、冷間圧延の前にコイル冷却あり(「CC」)で、処理した。図2では、引張特性は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図2に示すとおり、T4調質の合金1及び合金2は両方とも、引張試験方向または処理法に関係なく、降伏強度が105MPa~125MPaの範囲であり、等方性の引張特性を実証した。さらに、合金1は、優れた降伏強度を示し、したがって、様々な自動車用途(例えば、構造部品、美観部品、及び/またはそれらの任意の組み合わせ)にとって余裕のある強度を有する再生可能な高形成性アルミニウム合金であることを実証した。
【0092】
図3は、合金1、合金2、合金3、及び合金4から採取した試験試料の極限引張強度を示すグラフである。調製、処理、及び試験は、図2の実施例のとおりに行った。図3では、引張特性は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図3に示すとおり、合金1は、優れた極限引張強度を示し、したがって、様々な自動車用途にとって余裕のある強度を有する再生可能な高形成性アルミニウム合金であることを実証した。
【0093】
図4は、合金1、合金2、合金3、及び合金4から採取した試験試料の一様伸びを示すグラフである。成形特性は、長軸方向(「L」と称する)、横断方向(「T」と称する)、及び対角方向(「D」と称する)を含む3方向で評価した。方向は全て、処理中の圧延方向に対するものである。合金1及び合金2は、上記のとおり、図1A及び図1Bに示される方法に従って処理し、合金3及び合金4は、上記のとおり、図1Cに示される方法に従い、冷間圧延の前にコイル冷却工程を用いて処理した(「CC」)。図4では、引張特性は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図4に示すとおり、合金1は、各方向(L、T、及びD)において合金2及び合金4よりも優れた伸びを示した。
【0094】
図5は、合金1、合金2、合金3、及び合金4から採取した試験試料の全伸びを示すグラフである。合金1及び合金2は、それぞれ、図1A及び図1Bに示される上記の方法に従って処理し、合金3及び合金4は、上記のとおり、図1Cに示される方法に従い、冷間圧延の前にコイル冷却工程を用いて処理した(「CC」)。図5では、引張特性は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図5に示すとおり、T4調質の合金1及び合金2は両方とも、引張試験方向または処理法に関係なく、全伸びが26~32%であり、合金1及び合金2の等方性特性を示した。さらに、合金1は、合金2及び合金4よりも高い成形性を示し、合金3に匹敵する成形性を示した。すなわち、本明細書中調製及び処理されるとおりの合金1は、高成形性の再生可能アルミニウム合金である。
【0095】
図6は、それぞれ上記のとおり調製及び処理した合金1、合金2、合金3、及び合金4のn値(すなわち、変形後の強度の上昇)を示すグラフである。図6では、n値は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図6に示すとおり、バッチ圧延間焼鈍工程なしの図1Aの方法に供した合金1及び合金2の試料の方が高いn値を示し、したがって、成形能力が改善されていた。さらに、合金1は、試験方向(例えば、L、T、及びD)に関係なく等価なn値を有する等方性を示した。
【0096】
図7は、それぞれ上記のとおり調製及び処理した合金1、合金2、合金3、及び合金4のr値(すなわち、異方性)を示すグラフである。図7では、r値は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。グラフで示すとおり、図1Bの方法(バッチ圧延間焼鈍工程を含む)により処理された合金1は、3方向全て(例えば、長軸、横断、及び対角)で0.5超のr値を示した。
【0097】
図8は、合金1、合金2、合金3、及び合金4の平均r値を示すグラフである。第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図8に示すとおり、図1Bのプロセス(バッチ圧延間焼鈍工程を含む)に従って調製した合金1及び合金2は、図1Aのプロセス(バッチ圧延間焼鈍工程なし)に従って調製した合金よりも低いr値をもたらした。合金1及び合金2は、処理経路に関係なく同様なr値を示した。
【0098】
図9は、図1A及び図1Bの実施例で上記された方法に従って調製及び処理された合金1及び合金2、ならびに図1Cの実施例で上記された方法に従って調製及び処理された合金3及び合金4の、焼付塗装後の降伏強度の変化を示すグラフである。処理後、2%のひずみを加え、続いて185度に加熱し試料を20分間この温度に維持することによる熱処理により、焼付塗装を行った。図9では、降伏強度値の変化は、方向(すなわち、L、T、またはD)に基づくセットで示される。各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは(存在する場合は)、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表し、各セットの第六ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。図9に示すとおり、合金1及び合金2の降伏強度は、追加のひずみ及び熱処理を用いることにより、190~220MPaに上昇した。さらに、合金1と合金2の間には、Fe含有量にかかわらず(合金1は0.26重量%のFeを含み、合金2は0.16重量%のFeを含む)、塗料焼き付け反応の明らかな差異は観察されなかった。さらに、アルミニウム合金中のSiは、Feと結合してより多くのFe構成粒子を形成し、塗料焼き付け反応を減少させることが知られているが、これは、合金1では見られない。
【0099】
図10は、図1Aのプロセスに従って調製及び処理され、さらにVDA 238-100の3点曲げ試験に供された合金1及び合金2の曲げ加工性を示すグラフである。曲げ試験の前に、合金1及び合金2に、横断方向で10%のひずみを加えた。グラフに示すとおり、合金1及び合金2は、顕著に異なるFe含有量を有するが、同様な曲げ加工性を示した。Fe含有量の増加は、成形性(例えば、曲げ加工性)に悪影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、添加されたCrにより、Fe含有金属間粒子は、アスペクト比が低くなるとともに平均円相当径が低下していたので、優れた成形性をもたらした。
【0100】
図11は、図1Bのプロセスに従って調製及び処理された合金1及び合金2、ならびに図1Cのプロセスに従って調製及び処理された合金4の曲げ加工性を示すグラフであり、合金3種は全て、VDA 238-100の3点曲げ試験に供された。曲げ試験の前に、合金1、合金2、及び合金4に、横断方向で15%のひずみを加えた。第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、第三ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金4(「合金4CC」)を表す。グラフに示すとおり、合金1及び合金2は、顕著に異なるFe含有量を有するが、同様な曲げ加工性を示した。また、合金1及び合金2は、合金4よりも高い曲げ加工性を示した。
【0101】
図12は、Erichsenカッピング試験(DIN EN ISO 20482)に供した合金1及び合金2の深絞り性を示すグラフである。グラフに示すとおり、合金1及び合金2は、顕著に異なるFe含有量を有するが、同様な絞り性を示した。Fe含有量の増加は、成形性(例えば、曲げ加工性)に悪影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、添加されたCrにより、Fe含有金属間粒子は、アスペクト比が低くなるとともに平均円相当径が低下していたので、優れた深絞り性をもたらした。
【0102】
図13Aは、本明細書中記載されるとおり、図1Aのプロセスに従って処理された合金1が、所望の形状及び分布を有する鉄含有(Fe含有)金属間粒子をもたらすことを示すSEM顕微鏡画像である。顕微鏡画像に示すとおり、本明細書中記載されるとおりのアルミニウム合金製品は、β-AlFeSi金属間粒子をほとんど含まず、α-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子をはじめとする球状Fe含有金属間粒子を示した。図13Bは、図1Aのプロセスに従って処理された合金2が、鉄含有(Fe含有)金属間粒子における針状形のβ-AlFeSi金属間粒子の量を増加させる結果となったことを示す顕微鏡画像である。合金2は、アルミニウム合金の成形特性にとって有害な量のβ-AlFeSi金属間粒子を含むアルミニウム合金製品をもたらした。
【0103】
図13Cは、本明細書中記載されるとおり、図1Bのプロセスに従って処理された合金1が、図1Aのプロセスに従って処理された合金1(図13Aを参照)よりも小さい鉄含有(Fe含有)金属間粒子をもたらしたことを示すSEM顕微鏡画像である。図13Dは、図1Bのプロセスに従って処理された合金2もまた、図1Bのプロセスに従って処理された合金2(図13Bを参照)よりも小さい鉄含有(Fe含有)金属間粒子をもたらしたことを示すSEM顕微鏡画像である。図13Eは、図1Cのプロセスに従って処理された合金3が、より多くのそしてより大きなFe含有金属間粒子を示したことを示すSEM顕微鏡画像である。
【0104】
図14及び図15は、それぞれ、Fe含有金属間粒子の粒径分布及びアスペクト比を示すグラフである。図14に示すとおり、合金1及び合金2は、同様なFe含有金属間粒子平均粒径分布及びアスペクト比を示した。図15では、合金1及び合金2は、同様なFe含有金属間粒子アスペクト比を示した。Crを添加することにより、Fe含有金属間粒子は、処理中にα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子を形成することによる、アスペクト比の低下及び平均円相当径の減少を示した。合金3は、合金1及び合金2よりも小さい粒径及びアスペクト比を示したが、これは、Si含有量がより低いことに起因した(例えば、0.79重量%のSi)。
【0105】
図16及び図17は、β-AlFeSi金属間粒子(「β」と標識)及びα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子(「α」と標識)のFe含有金属間粒子濃度分布を示すグラフである。図16及び図17では、各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金2(「合金2BA」)を表し、各セットの第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表す。図16に示すとおり、合金1は、合金2よりも高いα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子の体積率を示した。同様に、図17に示すとおり、合金1は、合金2よりも高いα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子の数密度を示した。Crを添加することにより、Fe含有金属間粒子は、処理中にα-AlFe(Mn,Cr)Si金属間粒子がβ-AlFeSi金属間粒子より多く形成されることを示した。さらに、合金3は、合金1よりも低い、Fe含有金属間粒子の面積率及び数密度を示した。
【0106】
図18Aは、本明細書中記載されるとおり、図1Aのプロセスに従って処理された合金1が、伸長した結晶粒構造をもたらすことを示すOM顕微鏡画像である。図18Bは、図1Aのプロセスに従って処理された合金2が、伸長した結晶粒構造をもたらすことを示すOM顕微鏡画像である。図18Cは、本明細書中記載されるとおり、図1Bのプロセスに従って処理された合金1が、等軸結晶粒構造をもたらすことを示すOM顕微鏡画像である。図18Dは、図1Bのプロセスに従って処理された合金2も、等軸結晶粒構造をもたらすことを示すOM顕微鏡画像である。図18Eは、図1Cのプロセスに従って処理された合金3が、より細かい等軸結晶粒構造をもたらすことを示すOM顕微鏡画像である。
【0107】
図19は、ともにバッチ圧延間焼鈍工程あり(図1B)及びバッチ圧延間焼鈍工程なし(図1A)で処理された合金1及び合金2、ならびにコイル冷却工程を用いて処理された合金3(図1C)の結晶粒径分布を示すグラフである。図19では、第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金(「合金2BA」)を表し、第五ヒストグラムバーは、コイル冷却法により処理された合金3(「合金3CC」)を表す。図19に示すとおり、合金1の平均結晶粒径は、処理経路に関係なく、約28~32μmであった。合金2は、バッチ圧延間焼鈍工程に供した場合により大きな結晶粒径を示した。合金3は、合金1及び合金2よりも小さな粒径を示した。
【0108】
図20は、バッチ圧延間焼鈍工程あり及びバッチ圧延間焼鈍工程なしで処理された合金1及び合金2の集合組織成分の分布を示すグラフである。集合組織成分には、Brass(「bs」)、S(「s」)、銅(「cu」)、Goss、及びCubeが含まれていた。図20では、各セットの第一ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金1(「合金1BAなし」)を表し、各セットの第二ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍なしで処理された合金2(「合金2BAなし」)を表し、各セットの第三ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金1(「合金1BA」)を表し、各セットの第四ヒストグラムバーは、バッチ焼鈍ありで処理された合金(「合金2BA」)を表す。合金1は、立方体集合組織成分の量が、合金2(例えば、13~15%)よりも多い(例えば、16~18%)ことを示した。バッチ圧延間焼鈍工程なしで処理された試料は、Goss集合組織成分の量が、バッチ圧延間焼鈍工程ありで処理された試料よりも多いことを示した。
【0109】
上記で引用される全ての特許、刊行物、及び要約は、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。本発明の様々な実施形態が、本発明の様々な目的の実現について説明されてきたが、それらの実施形態は、本発明の原理の例示にすぎないことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲に定義されるとおりの本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない、それらの数多くの修飾及び適応が、当業者には容易に明らかとなるだろう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19
図20