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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】検索装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/31 20200101AFI20240313BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20240313BHJP
   G06F 111/12 20200101ALN20240313BHJP
   G06F 119/20 20200101ALN20240313BHJP
【FI】
G06F30/31
G06F16/906
G06F111:12
G06F119:20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021519027
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2020054055
(87)【国際公開番号】W WO2020229927
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019092100
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】郷戸 宏充
(72)【発明者】
【氏名】福留 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悟
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-200298(JP,A)
【文献】特開2004-030122(JP,A)
【文献】特開平04-239973(JP,A)
【文献】特開2007-280000(JP,A)
【文献】特開2007-128383(JP,A)
【文献】米国特許第8434037(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G06F 16/00 -16/958
G06F 3/048 - 3/04892
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
第1の回路図情報を第1のグラフに変換する機能を有する処理部と、
前記第1のグラフと、データベースに登録された第2の回路図情報に基づく第2のグラフとの類似度を計算する演算手段と、
を有し、
前記表示部は、前記第1の回路図情報に対応する回路図と、前記回路図に対応する前記第1のグラフとを並べて表示する機能を有し、
前記表示部は、前記表示部に表示された前記回路図が有する複数の素子のうち、いずれか一の素子にユーザーがタッチしたとき、前記表示部に表示された前記第1のグラフの、前記一の素子に対応するノード及びエッジを、ユーザーが視覚により確認できる機能を有する検索装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記表示部は、前記類似度を表示する機能を有する検索装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の回路図情報には、トランジスタのチャネルに用いられる半導体材料の情報が含まれており、
前記第1のグラフには、前記情報が反映されている検索装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記表示部は、前記第1の回路図情報を入力する機能を有する検索装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の回路図情報は、前記回路図を説明するテキストである検索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、検索方法、検索装置、および検索システムに関する。特に、回路図、および回路図に関する文章の検索方法、検索装置、および検索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理の分野で、グラフと呼ばれるデータ構造が提案されている。グラフは頂点(ノード)と辺(エッジ)の集合からなり、例えば、コミュニティにおける人と人との繋がりや、交通網など、ネットワーク構造を表現する手段に用いられる(特許文献1)。
【0003】
グラフを理論的に解析する方法はこれまでにも数多く提案されている。例えば、非特許文献1には、グラフ同士の類似度を計算する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-119082号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Nino Shervashidze,et al.,Journal of Machine Learning Research 12,pp.2539-2561,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンピューターやサーバーなどに保存された図面、または文書に記載された図面、または図面を説明する文章(テキスト情報ともいう)を検索したいという需要は多い。ここで文書の例として、特許公報、および論文などがある。また図面の例として、電子回路図などの回路図がある。しかし、現在普及している一般的な図面検索の方法は、回路素子の接続情報まで考慮することができない。そのため、機械は検索クエリを用いた検索方法等ではネットワークの回路図を見つけることができず、結局、人間が目視で探すことになる。
【0007】
本発明の一態様は、回路図の検索方法を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路図の検索装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路図の検索システムを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路図を説明する文章の検索方法を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路図を説明する文章の検索装置を提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路図を説明する文章の検索システムを提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、端末に第1の回路図情報を入力する手段と、第2の回路図情報が登録されたデータベースと、入力された第1の回路図情報を第1のグラフに変換する手段と、第1のグラフと、第2の回路図情報に基づく第2のグラフとの類似度を計算する演算手段と、類似度を端末に表示する手段と、を有する検索システムである。
【0009】
上記において、検索システムは、端末とネットワークを介して接続するサーバーを有し、データベースは、サーバーに保存されることが好ましい。
【0010】
上記において、第1の回路図情報は、回路図を構成する回路素子であることが好ましい。
【0011】
上記において、第1の回路図情報は、回路図を説明するテキストであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様は、端末に入力された第1の回路図情報を第1のグラフに変換する工程と、第1のグラフと、データベースに登録された第2のグラフとの類似度を計算する工程と、類似度を端末に表示する工程と、を有する検索方法である。
【0013】
上記において、第1の回路図情報は、回路図を構成する回路素子であることが好ましい。
【0014】
上記において、第1の回路図情報は、回路図を説明するテキストであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様により、回路図の検索方法を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図の検索装置を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図の検索システムを提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図を説明する文章の検索方法を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図を説明する文章の検索装置を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図を説明する文章の検索システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A1乃至図1F2は、回路素子、または該回路素子に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図2A1乃至図2F2は、回路素子、または該回路素子に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図3A1乃至図3G2は、回路素子、または該回路素子に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図4A、および図4Bは、回路図、または該回路図に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図5A、および図5Bは、回路図、または該回路図に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図6A、および図6Bは、回路図、または該回路図に対応するグラフを示し、本発明の一態様を説明する図である。
図7A、および図7Bは、本発明の一態様の回路図検索に用いられる端末の操作方法を説明する模式図である。
図8Aは、本発明の一態様の回路図検索に用いられる端末の操作方法を説明する模式図である。図8B、および図8Cは、本発明の一態様の回路図の一例である。
図9は、本発明の一態様の端末を説明する模式図である。
図10は、本発明の一態様の回路図検索に用いられるネットワークを説明する模式図である。
図11A1乃至図11E2は、本発明の一態様のグラフどうしの類似度の計算方法を説明する図である。
図12は、本発明の一態様を説明するフローチャートである。
図13は、本発明の一態様を説明するフローチャートである。
図14A、および図14Bは、本発明の一態様の回路図検索に用いられる端末の操作方法を説明する模式図である。
図15は、本発明の一実施例を説明する図である。
図16A乃至図16Dは、本発明の一実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である検索システムについて説明を行う。本実施の形態の検索システムでは、回路図や回路図を説明する文章の検索を行うことができる。
【0018】
なお、本明細書においてグラフとは、頂点(ノード)と辺(エッジ)からなるデータ構造であり、各データ間の繋がりを表したものである。グラフにはエッジの向きを考慮した有向グラフと、エッジの向きを考慮しない無向グラフが存在するが、本明細書は特に断りがない限り、無向グラフを扱うことにする。
【0019】
図1A1はNMOSトランジスタの回路記号を示し、図1A2はそれに対応するグラフを示している。図1A2のグラフは、1つのノードN、2つのノードNsd、および1つのノードNgから構成されている。ノードNgはゲートを表し、ノードNsdはソースまたはドレインを表している。ノードNg、およびNsdは、それぞれノードNに接続されている。
【0020】
本明細書において、黒丸で図示されたノードを「素子ノード」と呼び、素子の中心を表すことにする。また、白丸で図示されたノードを「端子ノード」と呼び、素子の端子を表すことにする。例えば、図1A2において、ノードNは素子ノードであり、ノードNg、およびNsdは端子ノードである。通常、1つの素子ノードに複数の端子ノードが接続される。
【0021】
図1B1はPMOSトランジスタの回路記号を示し、図1B2はそれに対応するグラフを示している。図1B2のグラフは、1つのノードP、2つのノードPsd、および1つのノードPgから構成されている。ノードPgはゲートを表し、ノードPsdはソースまたはドレインを表している。ノードPは素子ノードであり、ノードPg、およびPsdは、それぞれノードPに接続された端子ノードである。
【0022】
図1C1はNMOSトランジスタの回路記号を示し、図1C2はそれに対応するグラフを示している。図1C1に示すNMOSトランジスタは、ソース/ドレインが区別されている場合に用いられる(矢印が記載されている方がソース)。図1C2のグラフは、1つのノードN、1つのノードNg、1つのノードNs、および1つのノードNdから構成されている。ノードNgはゲートを表し、ノードNsはソースを表し、ノードNdはドレインを表している。ノードNは素子ノードであり、ノードNg、Ns、およびNdは、それぞれノードNに接続された端子ノードである。
【0023】
図1D1はPMOSトランジスタの回路記号を示し、図1D2はそれに対応するグラフを示している。図1D1に示すPMOSトランジスタは、ソース/ドレインが区別されている場合に用いられる(矢印が記載されている方がソース)。図1D2のグラフは、1つのノードP、1つのノードPg、1つのノードPs、および1つのノードPdから構成されている。ノードPgはゲートを表し、ノードPsはソースを表し、ノードPdはドレインを表している。ノードPは素子ノードであり、ノードPg、Ps、およびPdは、それぞれノードPに接続された端子ノードである。
【0024】
図1E1は2つのゲート電極を持つNMOSトランジスタの回路記号を示し、図1E2はそれに対応するグラフを示している。図1E2のグラフは、1つのノードN、2つのノードNsd、1つのノードNg、および1つのノードNbgから構成されている。ノードNgは第1のゲート(フロントゲートともいう)を表し、ノードNbgは第2のゲート(バックゲートともいう)を表し、ノードNsdはソースまたはドレインを表している。ノードNは素子ノードであり、ノードNg、Nbg、およびNsdは、それぞれノードNに接続された端子ノードである。
【0025】
その他、図示しないが、2つのゲート電極をもつPMOSトランジスタのグラフも、同様に定義できる。
【0026】
図1F1は基板電位を印加できるNMOSトランジスタの回路記号を示し、図1F2はそれに対応するグラフを示している。図1F2のグラフは、1つのノードN、2つのノードNsd、1つのノードNg、および1つのノードNsubから構成されている。ノードNgはゲートを表し、ノードNsubは電位を印加できる基板を表し、ノードNsdはソースまたはドレインを表している。ノードNは素子ノードであり、ノードNg、Nsub、およびNsdは、それぞれノードNに接続された端子ノードである。
【0027】
その他、図示しないが、基板電位を印加できるPMOSトランジスタのグラフも、同様に定義できる。
【0028】
また、MOSトランジスタのチャネルに用いられる半導体材料の情報を回路図、およびグラフに含めることができる。
【0029】
図2A1は、チャネルとしてシリコンを用いたNMOSトランジスタの回路記号を示し、図2A2はそれに対応するグラフを示している。図2A2のグラフは、1つのノードSN、2つのノードSNsd、および1つのノードSNgから構成されている。ノードSNgはゲートを表し、ノードSNsdはソースまたはドレインを表している。ノードSNは素子ノードであり、ノードSNg、およびSNsdはそれぞれノードSNに接続された端子ノードである。
【0030】
図2B1は、チャネルとしてシリコンを用いたPMOSトランジスタの回路記号を示し、図2B2はそれに対応するグラフを示している。図2B2のグラフは、1つのノードSP、2つのノードSPsd、および1つのノードSPgから構成されている。ノードSPgはゲートを表し、ノードSPsdはソースまたはドレインを表している。ノードSPは素子ノードであり、ノードSPgおよびSPsdはそれぞれノードSPに接続された端子ノードである。
【0031】
また、トランジスタの半導体材料として、酸化物半導体(Oxide Semiconductor:OS)を用いることができる。特にチャネル形成領域にOSを用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さく、好ましい。このようなトランジスタは、表示装置、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、および電子機器などの半導体装置に用いることができる。表示装置の具体例として、液晶表示装置、および発光表示装置などが挙げられる。また、半導体回路の具体例として、CPU、メモリなどのLSI、およびそれらの一、または複数を搭載したICチップなどが挙げられる。チャネル形成領域にOSを用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0032】
OSとして、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)の少なくとも一を含む酸化物を用いることができる。例えば、OSとして、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、インジウムおよび亜鉛に加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、OSとして、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0033】
また、OSは結晶構造を有することが好ましい。結晶構造を有するOSとして、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、およびnc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)などがある。
【0034】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0035】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0036】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0037】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(V:oxygen vacancyともいう。)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0038】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0039】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0040】
また、OSは、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、または非晶質酸化物半導体でもよい。
【0041】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0042】
OSは、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様のOSは、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0043】
図2C1は、チャネルとしてOSを用いたNMOSトランジスタの回路記号を示し、図2C2はそれに対応するグラフを示している。図2C2のグラフは、1つのノードON、2つのノードONsd、および1つのノードONgから構成されている。ノードONgはゲートを表し、ノードONsdはソースまたはドレインを表している。ノードONは素子ノードであり、ノードONgおよびONsdはそれぞれノードONに接続された端子ノードである。
【0044】
図2D1は、チャネルとしてOSを用いたPMOSトランジスタの回路記号を示し、図2D2はそれに対応するグラフを示している。図2D2のグラフは、1つのノードOP、2つのノードOPsd、および1つのノードOPgから構成されている。ノードOPgはゲートを表し、ノードOPsdはソースまたはドレインを表している。ノードOPは素子ノードであり、ノードOPgおよびOPsdはそれぞれノードOPに接続された端子ノードである。
【0045】
図2E1は、チャネルとしてOSを用い、2つのゲート電極を持つNMOSトランジスタの回路記号を示し、図2E2はそれに対応するグラフを示している。図2E2のグラフは、1つのノードON、2つのノードONsd、1つのノードONg、および1つのノードONbgから構成されている。ノードONgは第1のゲート(フロントゲートともいう)を表し、ノードONbgは第2のゲート(バックゲートともいう)を表し、ノードONsdはソースまたはドレインを表している。ノードONは素子ノードであり、ノードONg、ONbg、およびONsdは、それぞれノードONに接続された端子ノードである。
【0046】
図2F1はチャネルとしてシリコンを用い、基板電位を印加できるNMOSトランジスタの回路記号を示し、図2F2はそれに対応するグラフを示している。図2F2のグラフは、1つのノードSN、2つのノードSNsd、1つのノードSNg、および1つのノードSNsubから構成されている。ノードSNgはゲートを表し、ノードSNsubは電位を印加できる基板を表し、ノードSNsdはソースまたはドレインを表している。ノードSNは素子ノードであり、ノードSNg、SNsub、およびSNsdは、それぞれノードSNに接続された端子ノードである。
【0047】
図3A1はNPN型のバイポーラトランジスタの回路記号を示し、図3A2はそれに対応するグラフを示している。図3A2のグラフは、1つのノードNB、1つのノードNBb、1つのノードNBe、および1つのノードNBcから構成されている。ノードNBbはベースを表し、ノードNBeはエミッタを表し、ノードNBcはコレクタを表している。ノードNBは素子ノードであり、ノードNBb、NBe、およびNBcは、それぞれノードNBに接続された端子ノードである。
【0048】
図3B1はPNP型のバイポーラトランジスタの回路記号を示し、図3B2はそれに対応するグラフを示している。図3B2のグラフは、1つのノードPB、1つのノードPBb、1つのノードPBe、および1つのノードPBcから構成されている。ノードPBbはベースを表し、ノードPBeはエミッタを表し、ノードPBcはコレクタを表している。ノードPBは素子ノードであり、ノードPBb、PBe、およびPBcは、それぞれノードPBに接続された端子ノードである。
【0049】
図3C1は容量の回路記号を示し、図3C2はそれに対応するグラフを示している。図3C2のグラフは、1つのノードC、および2つのノードCtから構成されている。ノードCは素子ノードであり、ノードCtは、ノードCに接続された端子ノードである。
【0050】
図3D1は抵抗の回路記号を示し、図3D2はそれに対応するグラフを示している。図3D2のグラフは、1つのノードR、および2つのノードRtから構成されている。ノードRは素子ノードであり、ノードRtは、ノードRに接続された端子ノードである。
【0051】
図3E1はインダクタの回路記号を示し、図3E2はそれに対応するグラフを示している。図3E2のグラフは、1つのノードL、および2つのノードLtから構成されている。ノードLは素子ノードであり、ノードLtは、ノードLに接続された端子ノードである。
【0052】
図3F1はダイオードの回路記号を示し、図3F2はそれに対応するグラフを示している。図3F2のグラフは、1つのノードD、1つのノードDa、および1つのノードDcから構成されている。ノードDaは陽極を表し、ノードDcは陰極を表している。ノードDは素子ノードであり、ノードDa、およびDcは、ノードDに接続された端子ノードである。
【0053】
図3G1は発光ダイオードの回路記号を示し、図3G2はそれに対応するグラフを示している。図3G2のグラフは、1つのノードLE、1つのノードLEa、および1つのノードLEcから構成されている。ノードLEaは陽極を表し、ノードLEcは陰極を表している。ノードLEは素子ノードであり、ノードLEa、およびLEcは、ノードLEに接続された端子ノードである。
【0054】
以上、上述のように、回路素子を表すグラフは、「素子ノード」と「端子ノード」で定義することができる。素子ノードの数は1つであり、端子ノードの数は素子が有する端子の数だけ存在する。図1A1乃至図3G2に示されていない他の回路記号も、同様の考え方でグラフを定義することができる。
【0055】
図4Aは、CMOSトランジスタで構成されたSRAM(Static Random Access Memory)の回路図を示し、図4Bは、それに対応するグラフを示している。なお、図4Bのグラフは、見やすさのため、一部のエッジを曲線で表している。
【0056】
図4AのSRAMは、4つのNMOSトランジスタと、2つのPMOSトランジスタと、配線WLと、2つの配線BLと、電源線(Vdd)と、GNDで構成されている。なお、2つの配線BLのうち、一方は他方の反転信号が入力される。
【0057】
図4Bのグラフは、図1A2、および図1B2に示したグラフと、配線WLや配線BLなど、各配線を表す端子ノードで構成されている。各端子ノードは、等電位な全ての端子ノードとエッジを共有する。なお、図4Bのグラフにおいて、配線WLおよび配線BLなどの配線は、必要に応じて設ければよく、不要なら省略してもよい。
【0058】
図5Aは、有機ELディスプレイの画素回路を示し、図5Bは、それに対応するグラフを示している。なお、図5Bのグラフは、見易さを重視して、一部のエッジを曲線で表している。
【0059】
図5Aの画素回路は、3つのNMOSトランジスタと、1つの容量と、1つの発光ダイオード(OLED:organic light-emitting diode)と、走査線GL、信号線SL、モニター線ML、陽極ANL、陰極CTLからなる。なお、3つのNMOSトランジスタは、それぞれ第1のゲートと第2のゲートを持つ。
【0060】
図5Bのグラフは、図1E2図3C2、および図3G2に示したグラフと、走査線GLや信号線SLなど、各配線を表す端子ノードで構成されている。また、図4Bと同様に、各端子ノードは、等電位な全ての端子ノードとエッジを共有する。なお、図5Bのグラフにおいて、走査線GL、信号線SLおよびモニター線MLなどの配線は、必要に応じて設ければよく、不要なら省略してもよい。
【0061】
図6Aは、OSトランジスタを用いたメモリセルの回路図である。当該メモリセルは、OSトランジスタのオフ電流が低いことを利用した不揮発性メモリで、NOSRAM(登録商標、Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ばれる。
【0062】
図6AのNOSRAMは、1つのバックゲートをもつOSトランジスタと、2つのSi-PMOSトランジスタと、容量Cと、配線BLと、配線SLと、配線WWLと、配線RWLと、配線WCLと、配線BGで構成されている。
【0063】
図6Bのグラフは、図2B2図2E2および図3C2に示したグラフと、配線BLや配線SLなど、各配線を表す端子ノードで構成されている。また、図4Bおよび図5Bと同様に、各端子ノードは、等電位な全ての端子ノードとエッジを共有する。なお、図6Bのグラフにおいて、配線BL、配線SL、配線WWL、配線RWL、配線WCLおよび配線BGなどの配線は、必要に応じて設ければよく、不要なら省略してもよい。
【0064】
このように、同一回路内に、OSトランジスタとSiトランジスタが混在する場合でも、それぞれのトランジスタをグラフで区別することで、回路の特徴をグラフで表すことができる。
【0065】
なお、回路図をグラフで表す際、必ずしも全ての配線をグラフ化する必要は無い。例えば、回路の特徴を示す配線のみグラフ化すればよい。図4Bにおいて、配線WL、配線BL、電源線Vdd、およびGNDのすべてをグラフで表す必要は無い。これらの一部のみグラフで表してもよいし、これらをグラフで表さなくてもよい。図5Bにおいて、走査線GL、信号線SL、モニター線ML、陽極ANL、および陰極CTLのすべてをグラフで表す必要は無い。これらの一部のみグラフで表してもよいし、これらをグラフで表さなくてもよい。図6Bにおいて、配線BL、配線SL、配線WWL、配線RWL、配線WCL、および配線BGのすべてをグラフで表す必要は無い。これらの一部のみグラフで表してもよいし、これらをグラフで表さなくてもよい。
【0066】
以上、回路図をグラフで表現する方法について説明を行った。次に、上述のグラフを用いた、本発明の一態様である、検索装置、および検索システムについて説明を行う。
【0067】
図7A図7B、および図8Aに示す端末10は、データベースに登録された回路図から、ユーザーが入力した回路図に近いものを検索し、結果を表示する機能を有する検索装置の一例である。また、図9は端末10の構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、端末10は表示部101、入力部103、処理部105、演算部107、記憶部109、および外部接続回路111を有する。表示部101は、タッチパネルディスプレイであることが好ましい。なお、演算部107が、処理部105の機能を兼ねてもよい。また、図8B、および図8Cに、端末10の表示部101に表示される回路図の例を示す。
【0068】
上記データベースには、回路図情報として、複数の回路図と、それぞれの回路図に対応したグラフが予め登録されている。また、上記データベースには、該回路図を説明する文章が登録されていてもよい。上記データベースは、端末10が内蔵する記憶部109に保存されていてもよいし、端末10に接続された外部記憶装置に保存されていてもよい。また、上記データベースは、図10に示すように、端末10とネットワークを介して接続されているサーバー50に保存されていてもよい。端末10は、外部接続回路111を用いて、ネットワークに接続することができる。
【0069】
ここで、ネットワークには、ローカルエリアネットワーク(LAN)や、インターネットが含まれる。また、上記ネットワークは、有線、および無線のいずれか一方、または両方による通信を用いることができる。また、上記ネットワークにおいて無線通信を用いる場合、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離通信手段の他に、第3世代移動通信システム(3G)に準拠した通信手段、LTE(3.9Gと呼ぶ場合もある)に準拠した通信手段、第4世代移動通信システム(4G)に準拠した通信手段、または第5世代移動通信システム(5G)に準拠した通信手段などの様々な通信手段を用いることができる。
【0070】
なお、端末10としてタブレット型のコンピューターの例を示すが、本実施の形態はこれに限らない。図10では、端末30として、デスクトップ型のコンピューター、および端末40として、ラップトップ型のコンピューターを用いる例を示す。端末30は、本体301と、表示部302と、入力部303と、を有する。端末40は、本体401と、表示部402と、入力部403と、を有する。端末30、および端末40は、それぞれ端末10の処理部105、演算部107、記憶部109、および外部接続回路111と対応する処理部、演算部、記憶部、および外部接続回路を有することが好ましい。サーバー50は、ラック501と、複数のラックマウント型の計算機502と、を有する。計算機502に設けられた記憶装置にデータベースが保存される。端末30、および端末40は、端末10と同様の機能を有し、サーバー50にネットワークを介して接続される。端末10、端末30、および端末40は、サーバー50の計算機502に保存されたデータベースにアクセスすることができる。
【0071】
図7A図7Bは、ユーザーが端末10に検索したい回路図を入力する例を示している。端末10の表示部101に、領域11と領域12が表示され、ユーザーは領域11に検索したい回路図を作成する。領域11と領域12の上下にそれぞれ領域13、および領域14が配置される。領域13、および領域14には、回路図を構成する回路素子が配置される。端末10には、タッチパネルディスプレイ、キーボード、およびマウスなどの入力手段が設けられており、ユーザーは、各回路素子を領域11へドラッグ&ドロップすることで、所望の回路図を作成することができる(図7A)。
【0072】
ユーザーが領域11に回路図を入力し終えると、端末10、またはネットワークを介して端末10と接続されたサーバー50に内蔵された処理部105により、領域11に入力された回路図に相当するグラフが作成される。なお、グラフの作成は、演算部107で行われてもよい。作成されたグラフは、領域12に表示される。また、ユーザーが領域11の回路素子のどれか1つをタッチすると、領域12において、ユーザーがタッチした素子に対応するグラフのノードとエッジの色が変わる(図7B)。これによって、ユーザーは自分が作成した回路図と、端末10が生成したグラフの対応関係を確認することができる。
【0073】
なお、端末10は回路図の代わりに、ネットリストを入力データとして扱うことができる。ネットリストは回路素子の接続情報が記載されたテキストファイルである。端末10は、ネットリストをグラフに変換することができる。
【0074】
また、端末10は、グラフを直接入力データとして扱うこともできる。
【0075】
また、端末10は、回路図が描かれた画像データを入力データとして扱うことができる。端末10は、画像データから回路素子の接続情報を読み取り、グラフを生成することができる。
【0076】
次に、領域12に表示されたグラフと、データベースに登録されているグラフとの類似度を計算する。グラフどうしの類似度の計算には、ラベルヒストグラムカーネル法、ランダムウォークカーネル法、WL(Weisfeiler-Lehman)カーネル法、GNN(Graph Neural Network)、等を用いればよい。特にWLカーネル法を用いた方法は精度が高く、計算時間も短いため好ましい。
【0077】
<WLカーネルの説明>
ここで、グラフどうしの類似度を計算する手法の一つである、WLカーネルの方法について、単純な回路を用いて説明を行う。
【0078】
図11A1に示す回路Gは、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタを直列に接続した回路である。また、図11A2に示す回路G′は、NMOSトランジスタとPMOSトランジスタを並列に接続した回路である。以下、これら2つの回路の類似度を計算する方法を説明する。
【0079】
まず、回路GおよびG′を、上述した方法を用いてグラフで表す。図11B1は回路Gをグラフで表したものであり、図11B2は回路G′をグラフで表したものである。これらグラフを構成するノードは、ノードの種類ごとにラベル(数字)が割りあてられている。図11B1図11B2では、括弧内の数字が上記ラベルに相当する。
【0080】
次に、それぞれの回路内のラベルの数をカウントし、それぞれの回路の特徴ベクトルを生成する。式1のφ(G)は回路Gの特徴ベクトルを表し、式2のφ(G′)は回路G′の特徴ベクトルを表している。
【0081】
φ(G )=(1、1、2、1、1、2) (式1)
【0082】
φ(G′)=(1、1、2、1、1、2) (式2)
【0083】
例えば、式1の右辺は、左から順に、ラベル「1」が1つ、ラベル「2」が1つ、ラベル「3」が2つ、ラベル「4」が1つ、ラベル「5」が1つ、ラベル「6」が2つ、という意味を表している。式2も同様である。
【0084】
次に、隣接ノードのラベルを数える(図11C1図11C2)。例えば、図11C1における「1.233」は、ラベル「1」の隣接ノードは、ラベル「2」が1つ、ラベル「3」が2つという意味である。他のノードも同様である。
【0085】
次に、図11C1図11C2で与えた数値に、新しいラベルを割りあてる(図11D1、および図11D2参照)。
【0086】
次に、図11D1および図11D2で割りあてたラベルを、回路GおよびG′に振りなおす(図11E1図11E2参照)。なお、この図11C1図11D1図11E1(または、図11C2図11D2図11E2)に示す一連の作業をリラベリングと呼ぶ。
【0087】
次に、リラベリングを行った回路GおよびG′のラベルの数をカウントし、それぞれの回路の特徴ベクトルを再び求める。式3は回路Gの特徴ベクトルを表し、式4は回路G′の特徴ベクトルを表している。
【0088】
φ(G )=(1、1、2、1、1、2、1、1、1、1、1、1、1、1) (式3)
【0089】
φ(G′)=(1、1、2、1、1、2、1、1、0、2、1、1、0、2) (式4)
【0090】
例えば、式3の右辺において、左から順に、始めの6項は式(1)と同じであるが、その後に続く8項は、リラベリングによって追加されたものである。式4も同様である。
【0091】
以下、上記リラベリングの作業を、ある一定数繰り返すことで、グラフの特徴をより正確に表した特徴ベクトルφ(G)およびφ(G′)が得られる。最後に、以下の式5で表されるKWL(ガウスカーネル、またはRBFカーネルと呼ぶ)を計算することで、回路Gと回路G′の類似度が計算される。
【0092】
【数1】
【0093】
以上が、WLカーネルの方法を用いたグラフ同士の類似度の計算方法である。
【0094】
上記類似度の計算は、端末10に内蔵されたCPUまたはGPUなどの演算部107で行ってもよいし、ネットワークを介して端末10と接続されたサーバー50に内蔵されたCPUまたはGPUなどの演算手段で行ってもよい。
【0095】
図8Aは、端末10の表示部101に検索結果を表示させた例を示している。表示部101における領域16にはユーザーが入力した検索クエリの回路図が表示され、領域18には検索結果の一覧が表示される。領域18における数値19は類似度を示している。領域18に表示される回路図のうち、どれか1つをユーザーがタッチすると、その拡大図が領域17に表示される。こうして、ユーザーは検索結果を確認することができる。
【0096】
例えば、図8B、および図8Cに示す2つの回路図は、ともにSRAMを表したものであり、回路としては等価である。しかし、検索システムが、回路の接続情報を理解できない場合は、これら2つの回路を異なる図面として認識してしまう。一方、上記方法を用いれば、図8B、および図8Cは、同じグラフに置き換えられるため、本発明の検索システムはこの2つを同じ回路図と認識することができる。
【0097】
また、領域18には、表示された回路図を説明する文章を併せて表示することができる。ユーザーは、得られた類似度を参照しながら、入力したテキスト情報と、端末10に表示された回路図や文章を比較することができる。
【0098】
図12は、本発明の回路図、および回路図を説明する文章の検索方法の一態様を説明するフローチャートである。
【0099】
まず、端末10に回路図情報を入力する(S101)。ユーザーは、入力部103を用いて端末10に回路素子を入力する。また、複数の回路素子を用いて、回路図を作成できる。ここで、入力された回路素子、および作成された回路図を回路図情報とする。
【0100】
次に、処理部105にて、入力された回路図情報からグラフを生成する(S102)。ここで、生成されたグラフを、便宜上第1のグラフとする。処理部105には、入力された回路図情報を一時保存する第2の記憶部、および第1のグラフを生成するための第2の演算部を有していることが好ましい。一方、入力された回路図情報は、記憶部109に一時保存されてもよい。また、第1のグラフの生成を演算部107で行ってもよい。
【0101】
次に、演算部107にて、第1のグラフと、データベースに登録されている複数のグラフとの類似度を計算する(S103)。ここで、データベースに登録されているグラフを、便宜上第2のグラフとする。演算部107では、処理部105、または記憶部109に保存された第1のグラフと、第2のグラフとの類似度を、ラベルヒストグラムカーネル法、ランダムウォークカーネル法、WLカーネル法、GNN等を用いて計算する。複数の第2のグラフに対してそれぞれ類似度を求める。類似度が大きい程、当該第2のグラフは、第1のグラフに類似したグラフであるといえる。
【0102】
データベースが、端末10とネットワークを介して接続されているサーバー50に保存されていている場合、端末10は、外部接続回路111を用いて、ネットワークに接続し、データベースにアクセスすることができる。
【0103】
また、上記計算をサーバー50にて行ってもよい。この場合、第1のグラフのデータを、外部接続回路111、およびネットワークを介してサーバー50に送信し、サーバー50にて第1のグラフと第2のグラフの類似度を計算する。計算結果は、ネットワーク、および外部接続回路111を介して端末10に送信される。
【0104】
次に、計算結果、すなわち検索結果を表示部101に表示する(S104)。計算結果として、類似度を大きいものから順に表示することができる。また、類似度の表示と同時に、当該類似度に対応するグラフ、回路図、および回路図を説明する文章の一、または複数を表示してもよい。また、ある類似度の範囲内で、回路図、および回路図を説明する文章の作成日の早い順、または遅い順に計算結果を表示してもよい。
【0105】
ユーザーは、計算結果を基に、データベースに登録された複数の回路図から、所望の回路図、または所望の回路図に類似した回路図を検索することができる。
【0106】
以上、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索方法を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索装置を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索システムを提供することが可能になる。
【0107】
本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態、および実施例に示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0108】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図13、および図14を用いて、先の実施の形態とは異なる、本発明の一態様である検索システムについて説明を行う。本実施の形態の検索システムでは、回路図を説明する文章や回路図の検索を行うことができる。
【0109】
本実施の形態では、テキスト情報をグラフ化し、データベースに登録されたグラフ情報と比較し、類似度を算出する。テキスト情報には、回路図の情報、すなわち回路素子、およびその接続関係を文字で表した情報が含まれている。テキスト情報の具体例として、論文、特許明細書などの文章が含まれる。特に、特許明細書においては、発明を実施するための形態、実施例、特許請求の範囲に記載の請求項等がテキスト情報となる。
【0110】
テキスト情報は、検索クエリとして、端末10に入力される(図13、S201)。例えば、図14Aに示すように、端末10の表示部101の領域15にキーボードなどを表示させ、テキスト情報を入力することができる。入力されたテキスト情報は、領域11に表示される。また、ユーザーが用意した文章の電子データをコピーし、ペーストすることでテキスト情報を入力してもよい。
【0111】
端末10、または端末10とネットワークを介して接続されているサーバー50は、端末10に入力されたテキスト情報から回路素子を抽出する。次に、該回路素子の名称から素子ノードを特定する(S202)。回路素子の抽出、および素子ノードの特定を端末10で行う場合、これらの処理は、処理部105で行うことができる。
【0112】
ここで、回路素子とは、トランジスタ、容量、抵抗、インダクタ、ダイオード、および発光ダイオードなどを示す。
【0113】
次に、端末10、またはサーバー50は、該回路素子が有する端子ノードを特定する(S203)。該端子ノードの特定は、端末10に入力されたテキスト情報、または端末10、またはサーバー50が有するデータベースに登録された情報に基づき実施できる。
【0114】
次に、端末10に入力されたテキスト情報から端子ノードの接続関係を特定する(S204)。
【0115】
以下に例文を示す。端末10に、「トランジスタと、容量を有し、前記トランジスタのゲートは、前記容量の第1端子と接続する。」というテキスト情報が入力された場合、端末10、またはサーバー50は、素子ノードとして、トランジスタ、および容量を特定する。端末10、またはサーバー50が有するデータベースには、トランジスタはゲート、ソース、およびドレインにそれぞれ対応する端子を有するという情報、および容量は2つの端子を有するという情報が登録されている。そのため、端末10、またはサーバー50は、トランジスタの素子ノードに対して少なくとも3の端子ノード、容量の素子ノードに対して2の端子ノードを特定する。
【0116】
次に、前記トランジスタのゲートは、前記容量の第1の端子と接続するというテキスト情報から、トランジスタのゲートに対応する端子ノードと、容量の端子ノードの一方が接続するという接続関係を特定できる。
【0117】
以上の方法により、端末10、またはサーバー50により、テキスト情報から、素子ノード、端子ノード、および各端子ノードの接続関係を特定する。
【0118】
次に、得られた素子ノード、端子ノード、および各端子ノードの接続関係から、回路図情報をグラフ化し、第1のグラフを作成する(S205)。得られた第1のグラフは、図14Bに示すように、表示部101の領域12に表示させることができる。
【0119】
回路図情報のグラフ化が完了したら、先の実施の形態と同様に第1のグラフと、データベースに保存された第2のグラフとの類似度を計算し(S206)、計算結果を端末10に表示することができる(S207)。
【0120】
また、データベースには、グラフデータ、該グラフデータに対応する文章、および該グラフデータに対応する回路図が登録されていてもよい。上記のようにグラフの類似度を求め、類似度を端末10に表示する際、類似度に対応する文章、および回路図の一方、または両方も併せて表示してもよい。グラフの類似度、文章、および回路図の表示方法については、ユーザーが適宜選択できる。
【0121】
すなわち、ユーザーは、テキスト情報を入力することで、それに類似した文章や、回路図を検索することができる。
【0122】
ユーザーは、得られた類似度を参照しながら、入力したテキスト情報と、端末10に表示された文章や回路図を比較することができる。
【0123】
以上、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索方法を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索装置を提供することが可能になる。また、本発明の一態様により、回路図、および回路図を説明する文章を検索することが可能な検索システムを提供することが可能になる。
【0124】
本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態、および実施例に示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例
【0125】
本実施例では、実施の形態1で説明した方法を用いて、実際に回路図の類似度を計算した例を説明する。具体的には、回路図をグラフで表し、WL(Weisfeiler-Lehman)カーネルの方法を用いてグラフ同士の類似度を計算した。
【0126】
<類似度の計算例>
図15は、クエリとして入力した回路図Gと、比較対象の回路図G′の類似度(KWL)を、上述のWLカーネルの方法を用いて計算した例である。すなわち、図15は、回路図1101と、回路図1102、回路図1103、および回路図1104それぞれとの比較を行っている。
【0127】
回路図1101は、CMOSインバータをループ状に接続した回路図である。回路図1102は、CMOSインバータを2つ直列に接続した回路図である。回路図1103はSRAMの回路図である。回路図1104は、NANDゲートの回路図である。
【0128】
図16A乃至図16Dは、図15に示す回路図を、それぞれグラフで表したものである。図16Aは回路図1101のグラフを示し、図16Bは回路図1102のグラフを示し、図16Cは回路図1103のグラフを示し、図16Dは回路図1104のグラフを示している。
【0129】
再び、図15に説明を戻す。図15に示すKWLは式5で表されるガウスカーネルであり、2つの回路図の類似度を表している。KWLの値が1に近いほど、2つの回路図は類似していることを表している。なお、KWLの計算において、式5のγを0.001とし、イタレーションの回数(リラベリングの回数)を3とした。
【0130】
上記リラベリングの計算、およびKWLの計算は、端末10で計算を行ってもよいし、サーバーで行ってもよい。
【0131】
図15の結果をみると、回路図1101との類似度は、回路図1102が最も高く、回路図1104、回路図1103の順に続いていることがわかる。このように、回路図をグラフで表すことで、回路図どうしの類似度を計算できることが確認された。
【0132】
本実施例に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態、および実施例に示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0133】
10:端末、11:領域、12:領域、13:領域、14:領域、15:領域、16:領域、17:領域、18:領域、19:数値、30:端末、40:端末、50:サーバー、101:表示部、103:入力部、105:処理部、107:演算部、109:記憶部、111:外部接続回路、301:本体、302:表示部、303:入力部、401:本体、402:表示部、403:入力部、501:ラック、502:計算機、1101:回路図、1102:回路図、1103:回路図、1104:回路図
図1A1
図1A2
図1B1
図1B2
図1C1
図1C2
図1D1
図1D2
図1E1
図1E2
図1F1
図1F2
図2A1
図2A2
図2B1
図2B2
図2C1
図2C2
図2D1
図2D2
図2E1
図2E2
図2F1
図2F2
図3A1
図3A2
図3B1
図3B2
図3C1
図3C2
図3D1
図3D2
図3E1
図3E2
図3F1
図3F2
図3G1
図3G2
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A1
図11A2
図11B1
図11B2
図11C1
図11C2
図11D1
図11D2
図11E1
図11E2
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C
図16D