(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240313BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
G01N35/10 B
G01N1/00 101G
(21)【出願番号】P 2021525708
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 GB2019053185
(87)【国際公開番号】W WO2020099844
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-05
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521201311
【氏名又は名称】グレート ノース リサーチ アンド イノベーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドス,ジョージオス
(72)【発明者】
【氏名】ハワース,ダン
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ウィル
(72)【発明者】
【氏名】シェルフォード,リー
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0002718(US,A1)
【文献】特開2014-160075(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143478(WO,A1)
【文献】特表2016-533184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的流体試料を分析するための生化学アッセイ装置であって、当該生化学アッセイ装置は検出機器及び試料処理装置を含み、
前記検出機器は、
エンクロージャと、
前記エンクロージャ内にあり、複数の位置に選択的に移動可能な可動プラットフォームと、
前記エンクロージャ内で前記可動プラットフォームの上に取り付けられ且つ直線軸に沿って作動可能な線形アクチュエータと、
を含み、
前記試料処理装置は、前記エンクロージャ内の可動プラットフォーム上に取り付けられるか又は取り付け可能であるとともに、
マニホールドと、
前記マニホールドに取り付けられ且つ細長い流体区画内に前記生物学的流体試料を受け入れ可能な区画化されたハウジングであって、該区画化されたハウジングは、バルブ区画、ラック区画及び空気プランジャによりシールされた細長い空気チャンバを有する、区画化されたハウジングと、
前記ラック区画内で上方非展開位置又は非上方展開位置に取り付けられる細長い容器のラックであって、各細長い容器は、流体プランジャによりシールされる流体チャンバを画定し、該細長い容器のラックは、細長い容器を前記マニホールドに流体接続するために前記上方非展開位置から前記非上方展開位置に移動可能である、細長い容器のラックと、
抗体アレイであって、該抗体アレイは、前記マニホールドが前記細長い容器のそれぞれを該抗体アレイに選択的に流体連結できるように前記マニホールドの床の下に取り付けられている、抗体アレイと、
前記細長い容器を前記抗体アレイから隔離する閉位置と、前記マニホールドを介して前記細長い容器を前記抗体アレイに流体接続する開位置とを有するアレイバルブと、
を含み、
前記細長い容器のラックが前記非上方展開位置にある場合、前記可動プラットフォームは、前記複数の位置のうちの選択された位置に連続的に動かされ、
前記複数の位置のうちの初期位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い空気チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記空気プランジャを押し下げて、前記細長い空気チャンバからの空気を前記細長い流体区画に流入させて前記細長い容器のラックのうちの第1の希釈試薬を含む第1の細長い容器の第1の流体チャンバ内に前記生物学的流体試料を流し込み、希釈された生物学的流体試料を形成し、
前記複数の位置のうちの第1の位置では、前記線形アクチュエータは前記第1の細長い容器の第1の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第1の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、前記希釈された生物学的流体試料が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにし、
前記複数の位置のうちの第2の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第2の細長い容器の第2の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第2の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、洗浄試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにし、
前記複数の位置のうちの第3の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第3の細長い容器の第3の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第3の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、アッセイ標識試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにする、生化学アッセイ装置。
【請求項2】
前記可動プラットフォームは、複数の回転位置に選択的に回転可能な回転プラットフォームである、請求項1に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項3】
前記可動プラットフォームは、複数のx-y位置に選択的に移動可能なx-yプラットフォームである、請求項1に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項4】
前記複数の位置のうちの第4の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第4の細長い容器の第4の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第4の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、追加の洗浄試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項5】
前記アレイバルブは、前記バルブ区画内に取り付けられる作動可能なアレイバルブである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項6】
前記細長い容器のラックが前記非上方展開位置にある場合、前記可動プラットフォームは、前記複数の位置のうちのバルブ位置に追加で移動可能であり、該バルブ位置では、前記線形アクチュエータは前記バルブ区画と実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に、前記細長い容器と前記抗体アレイとを前記マニホールドを介して流体接続するために前記作動可能なアレイバルブを前記開位置に作動させる、請求項5に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項7】
前記抗体アレイは前記マニホールドの床の下に密閉されて取り付けられている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項8】
前記抗体アレイは、アレイ入口部とアレイ出口部との間に連続的な流体経路を作り出す1つ以上の流路を含み、該流路の壁又は床に抗体が取り付けられている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項9】
前記流路の壁又は床に突起が設けられ、該突起は相互に離間されている、請求項8に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項10】
前記流体経路は螺旋状又はジグザグ状の流体経路である、請求項8又は9に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項11】
前記希釈された生物学的流体試料、前記洗浄試薬、前記アッセイ標識試薬及び/又は追加の洗浄試薬は、前記アレイ出口部から前記マニホールド内の廃棄チャンバ内に排出される、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項12】
前記マニホールドは、前記細長い容器のそれぞれを前記抗体アレイに流体連結可能な流体回路を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項13】
前記細長い容器のラックは、相互に離間されるとともに、カラーによりそれらのネック部で接続された複数の実質的に円筒状の容器を含む、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項14】
前記上方非展開位置では、前記細長い容器のラックは前記ラック区画内に据え付けられ、前記細長い容器のそれぞれは、前記マニホールドの床から上方に突出するスピゴット又は針と整合し且つ該スピゴット又は針から離間し、前記細長い容器のラックは、前記細長い容器の下端が前記スピゴット又は針によって貫通されるように非上方展開位置に押し下げられる、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項15】
前記マニホールドは、その床から上方に突出する中空状の第1及び第2の針を含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項16】
前記空気チャンバ、前記バルブ区画、前記第1の流体チャンバ、前記第2の流体チャンバ、前記第3の流体チャンバ及び前記第4の流体チャンバは実質的に共通の直径を有するピッチ円を画定し、前記試料処理装置が前記回転プラットフォームに取り付けられている場合、前記ピッチ円は、前記試料処理装置が回転されると、前記空気プランジャと、バルブプランジャと、前記第1の流体チャンバ、前記第2の流体チャンバ、前記第3の流体チャンバ及び前記第4の流体チャンバのそれぞれの流体プランジャとが、前記線形アクチュエータの下で実質的に整合するように、前記線形アクチュエータの直線軸と交差する、請求項2に従属する場合の、請求項4に
記載の生化学アッセイ装置。
【請求項17】
前記空気チャンバ、前記バルブ区画、前記第1の流体チャンバ、前記第2の流体チャンバ、前記第3の流体チャンバ及び前記第4の流体チャンバは矩形のアレイを画定し、前記試料処理装置が前記x-yプラットフォームに取り付けられている場合、前記矩形のアレイは、前記試料処理装置が動かされると前記空気プランジャと、バルブプランジャと、前記第1の流体チャンバ、前記第2の流体チャンバ、前記第3の流体チャンバ及び前記第4の流体チャンバのそれぞれの流体プランジャとが、前記線形アクチュエータの下で実質的に整合するように、前記線形アクチュエータの直線軸と交差する、請求項3に従属する場合の、請求項4に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項18】
前記抗体アレイは、プローブキャプチャリガンドが固定化されたコントロール領域と、2つ以上の検査領域が画定された第1の主面とを含み、第1の検査領域上には、第1の病原体又はマーカー上の第1の捕獲対象に結合するよう適合された第1の病原体特異的抗体が固定化され、第2の検査領域上には、第2の病原体又はマーカー上の第2の捕獲対象に結合するよう適合された第2の病原体特異的抗体が固定化されている、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置に含まれる試料処理装置。
【請求項20】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置に含まれる検出機器。
【請求項21】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の生化学アッセイ装置に含まれる抗体アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生化学アッセイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学アッセイは、試料中の生化学的検体の存在、量又は機能的活性を定性的に又は定量的に測定するために、とりわけ実験医学、薬理学、環境生物学又は分子生物学で用いられる分析方法である。
【0003】
生化学アッセイは数多く且つ多様であるが、分析のステップは一般的に、(a)検体を測定可能な形態で選択的に検出システムに提示するために検体を処理及び操作すること、(b)試料中の検体を特定の属性により同定すること、(c)検体の存在又は量を検出可能な信号に変換すること及び(d)検出可能な信号を検出し、検出可能な信号を、定量的又は定性的であり得る解釈可能な属性に関連付けることである。
【0004】
これらのステップを実現するために、アッセイ装置は、一般に、試料を処理するための手段及び検出のための手段(例えば、リーダー)を含む。免疫アッセイ装置の例は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、試料の処理を検出機器と統合することにより生化学アッセイの性能を改善することを目指す。より具体的には、本発明は、生物学的流体試料に対して生化学アッセイを実行するために、一連の直線及び/又は回転作動を介して試料処理装置が検出機器により制御される装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、一態様から見た場合、本発明は、生物学的流体試料を分析するための生化学アッセイ装置を提供する。当該生化学アッセイ装置は検出機器及び試料処理装置を含み、
前記検出機器は、
エンクロージャと、
前記エンクロージャ内にあり、複数の位置に選択的に移動可能な可動プラットフォームと、
前記エンクロージャ内で前記可動プラットフォームの上に取り付けられ且つ直線軸に沿って作動可能な線形アクチュエータと、
を含み、
前記試料処理装置は、前記エンクロージャ内の可動プラットフォーム上に取り付けられるか又は取り付け可能であるとともに、
マニホールドと、
前記マニホールドに取り付けられ且つ細長い流体区画内に前記生物学的流体試料を受け入れ可能な区画化されたハウジングであって、該区画化されたハウジングは、バルブ区画、ラック区画及び空気プランジャによりシールされた細長い空気チャンバを有する、区画化されたハウジングと、
前記ラック区画内で上方非展開位置elevated (non-deployed) position)又は非上方展開位置(non-elevated (deployed) position)に取り付けられる細長い容器のラック(rack of elongated
vessels)であって、各細長い容器は、流体プランジャによりシールされる流体チャンバを画定し、該細長い容器のラックは、細長い容器を前記マニホールドに流体接続するために前記上方非展開位置から前記非上方展開位置に移動可能である、細長い容器のラックと、
抗体アレイであって、該抗体アレイは、前記マニホールドが前記細長い容器のそれぞれを該抗体アレイに選択的に流体連結できるように前記マニホールドの床の下に取り付けられている、抗体アレイと、
前記細長い容器を前記抗体アレイから隔離する閉位置と、前記マニホールドを介して前記細長い容器を前記抗体アレイに流体接続する開位置とを有するアレイバルブと、
を含み、
前記細長い容器のラックが前記非上方展開位置にある場合、前記可動プラットフォームは、前記複数の位置のうちの選択された位置に連続的に動かされ、
前記複数の位置のうちの初期位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い空気チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記空気プランジャを押し下げて、前記細長い空気チャンバからの空気を前記細長い流体区画に流入させて前記細長い容器のラックのうちの第1の希釈試薬を含む第1の細長い容器の第1の流体チャンバ内に前記生物学的流体試料を流し込み、希釈された生物学的流体試料を形成し、
前記複数の位置のうちの第1の位置では、前記線形アクチュエータは前記第1の細長い容器の第1の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第1の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、前記希釈された生物学的流体試料が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにし、
前記複数の位置のうちの第2の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第2の細長い容器の第2の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第2の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、洗浄試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにし、
前記複数の位置のうちの第3の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第3の細長い容器の第3の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第3の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、アッセイ標識試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにする。
【0008】
好ましい実施形態では、前記可動プラットフォームは、複数の回転位置に選択的に回転可能な回転プラットフォームである。前記線形アクチュエータの直線軸は回転プラットフォームの回転に実質的平行であり且つ離間され得る。
【0009】
好ましい実施形態では、前記可動プラットフォームは、複数のx-y位置に選択的に移動可能なx-yプラットフォーム(又はx-yステージ)である。前記線形アクチュエータの直線軸はx-yプラットフォームのz軸に実質的平行であり得る。
【0010】
前記複数の位置のうちの第4の位置では、前記線形アクチュエータは前記細長い容器のラックのうちの第4の細長い容器の第4の流体チャンバと実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に前記第4の細長い容器の流体プランジャを押し下げて、追加の洗浄試薬が前記マニホールドを介して前記抗体アレイに入るようにすることが好ましい。
【0011】
本発明の生化学アッセイ装置はポイントオブケア診断を促進する。
【0012】
前記アレイバルブは閾値理由体圧で開く流体圧バルブ又はアンブレラバルブであり得る。
【0013】
前記アレイバルブは、前記バルブ区画内に取り付けられる作動可能なアレイバルブであることが好ましい。一般に、作動可能なアレイバルブはバルブプランジャを含む。
【0014】
特定の好ましい実施形態では、前記細長い容器のラックが前記非上方展開位置にある場合、前記可動プラットフォームは、前記複数の位置のうちのバルブ位置に追加で移動可能であり、該バルブ位置では、前記線形アクチュエータは前記バルブ区画と実質的に同軸であるため、前記線形アクチュエータは作動された場合に、前記細長い容器と前記抗体アレイとを前記マニホールドを介して流体接続するために前記作動可能なアレイバルブを前記開位置に作動させる。
【0015】
前記作動可能なアレイバルブはバルブステム、バルブキャップ及びバルブプランジャを含み得る。バルブステムはマニホルの一部であってもよく、中央ボアを含み得る。中央ボアは、中央ボアに沿って実質的に途中で止まる溝を備える。出口流路は中央ボアと実質的に平行であり得る。バルブプランジャは、溝の上で中央ボアに液密シールを提供し得る。バルブプランジャは、バルブキャップにより溝の位置まで下方に押し下げることができるように締まりばめを有し得る。
【0016】
バルブキャップは、バルブステムを円周方向にシールするワイパーシールと、バルブプランジャを作動させるプッシャとを含み得る。アレイバルブが閉じられている場合、バルブキャップ及びバルブプランジャは、中央ボアがブロックされる上方位置にあり得る。アレイバルブは、中央ボア内にバルブプランジャを変位させ、出口流路との流体連通を可能にするバルブキャップを作動させることによって開かれる。出口流路は、マニホールドを抗体アレイに流体連結する。
【0017】
前記抗体アレイは前記マニホールドの床の下に密閉されて取り付けられていることが好ましい。前記抗体アレイは、機械的手段(例えば、ルアー型コネクタ若しくはスピゴット)により又は接合(例えば、レーザー接合又は接着剤接合)により前記マニホールドに流体的にシールされ得る。
【0018】
前記抗体アレイは、アレイ入口部とアレイ出口部との間に連続的な流体経路を作り出す1つ以上の流路を含むことが好ましく、該流路の壁及び/又は床に抗体が取り付けられている。アレイカバーは、流路を密閉し、漏れを防止するために抗体アレイのベース部に(例えば、締結具により又はレーザー接合又は接着接合により)取り付けられ得る。
【0019】
好ましい実施形態では、前記流路の壁又は床に突起(例えば、リブ又はピラー)が設けられる。これは、生物学的流体試料にさらされる表面積を増やす役割を果たす。該突起は相互に(例えば、ランダムに又は非ランダムに)離間されていることがとりわけ好ましい。突起を離間することにより、生物学的流体試料内の検体(例えば、対象病原体)と、流体流路の壁又は床にある抗体との相互作用を促進するために流体の流れが妨げられ得る。
【0020】
流体流路は単一の断面を有し得る。流体流路は矩形又は楕円形の断面を有し得る。
【0021】
流体流路は曲がりくねっていてもよい。流体経路は螺旋状又はジグザグ状の流体経路であることが好ましい。
【0022】
前記流体は、前記アレイ出口部から前記マニホールド内(例えば、前記マニホールドの周辺領域内)の廃棄チャンバ内に排出されることが好ましい。空気圧を緩和するために、廃棄チャンバの上部に疎水性のフリット又はベントを含むことができる。
【0023】
前記抗体アレイは、プローブキャプチャリガンド(probe capture ligand)が固定化されたコントロール領域と、2つ以上の検査領域が画定された第1の主面とを含み得る。第1の検査領域上には、第1の病原体又はマーカー上の第1の捕獲対象に結合するよう適合された第1の病原体特異的抗体が固定化され、第2の検査領域上には、第2の病原体又はマーカー上の第2の捕獲対象に結合するよう適合された第2の病原体特異的抗体が固定化されている。
【0024】
前記ハウジングは部分的な蓋を有し得る。例えば、蓋は弓形の開口を有し得る。細長い容器のラックは弓形の開口を介して挿入され得る。細長い空気チャンバ及びバルブ区画は蓋の開口を介してアクセス可能であり得る。
【0025】
前記ハウジングは前記マニホールドに(例えば、前記マニホールドの外側に)摺動可能に取り付けられ得る。
【0026】
前記マニホールドは、前記細長い容器のそれぞれを前記抗体アレイに流体連結可能な流体回路を含むことが好ましい。
【0027】
前記細長い容器のラックは、相互に離間されるとともに、カラーによりそれらのネック部で接続された複数の実質的に円筒状の容器を含むことが好ましい。一般に、細長い容器のラックは第1のチャンバ、第2のチャンバ、第3のチャンバ及び第4のチャンバをそれぞれ画定する4つの細長い容器を有する。カラーは弓形又は箱状のカラーであり得る。
【0028】
前記上方非展開位置では、前記細長い容器のラックは前記ラック区画内に据え付けられ、前記細長い容器のそれぞれは、前記マニホールドの床から上方に突出するスピゴット又は針と整合し且つ該スピゴット又は針から離間されている。前記細長い容器のラックは、前記細長い容器の下端が前記スピゴット又は針によって貫通されるように非上方展開位置に押し下げられ得る。
【0029】
前記非上方展開位置では、細長い容器のラックはハウジングにより垂直方向に拘束されている。細長い容器のラックは、細長い容器のラックの外面に取り付けられるクリップにより垂直方向に拘束され得る。あるいは、細長い容器のラックはマニホールドとラッチすることにより垂直方向に拘束され得る。
【0030】
各細長い容器はその下端にストッパ、シリンジエンドキャップ又は壊れやすい部材(例えば、フォイル又はフィルム)を備え得る。
【0031】
各細長い容器はその下端にストッパを備えていることが好ましい。細長い容器のラックが非上方展開位置に動かされると、スピゴットは細長い容器とマニホールド(例えば、流体回路)との間の流体通路を開くためにストッパを押しやる。ストッパは、細長い容器の下部に押しやられ得る。ストッパが細長い容器とマニホールド(例えば、流体回路)との間の流体通路をブロックするのを防止するために、スピゴットの上面に特徴(例えば、溝又はキャスタレーション)が設けられ得る。
【0032】
生物学流体の試料はバキュテナー内の流体区画に提供され得る。バキュテナーは、ハウジング(例えば、蓋)のバキュテナーポートを介して試料処理装置内に挿入され得る。
【0033】
あるいは、流体区画を形成するためにキャップを含む試料容器がマニホールドにシールされ得る。試料容器はユーザーにより生物学的流体試料が充填され得る。
【0034】
好ましい実施形態では、前記マニホールドは、その床から上方に突出する中空状の第1及び第2の針を含む。第1及び第2の針は試料処理装置の主軸(例えば、z軸又は回転軸)と実質的に一致し得る。第1及び第2の針はバキュテナー(例えば、バキュテナーの隔壁)を貫通するように適合され得る。第1の針は第1のチャンバと流体連通し得る。第2の針は空気チャンバと流体連通し得る。空気チャンバからの空気が第1の針に直接バイパスするのを防止するために、第2の針は第1の針と異なる高さの位置にあり得る。
【0035】
代替的な好ましい実施形態では、第1の流体開口及び第2の流体開口がマニホールド(例えば、流体回路)に含まれる。第1及び第2の流体開口は、空気チャンバからの空気がそれらの間を直接バイパスするのを防止するために異なる高さの位置にあり得る。
【0036】
線形アクチュエータが空気プランジャを押し下げると、空気チャンバからの空気は第2の針を介して流体区画に入って、第1の針及びスピゴットのボアを介して生物学的流体試料を第1のチャンバ内に流し込み得る。空気プランジャはリトラクタブルでなくてもよい。例えば、空気プランジャは空気プランジャをボトムストロークでロックする戻り止めと相互作用し得る。あるいは、空気チャンバへの流体の逆流を防止するために、ダックビル、ドームバルブ又は同様のもの等の一方向バルブが空気チャンバに含まれ得る。
【0037】
第1のチャンバ内の流体プランジャは、先ず実質的に中間ストローク位置に位置し得る。第1のチャンバは流体プランジャをトップストロークで止めるために高さストップ部を含み得る。これは、流体プランジャが第1のチャンバから出るのを防止する。
【0038】
第2、第3及び第4のチャンバのそれぞれ内の流体プランジャは、先ず実質的にトップストローク位置に位置し得る。第2、第3及び第4のチャンバのそれぞれは流体プランジャをトップストロークで止める内部戻り止めを含み得る。これは、生物学的流体試料が第2、第3及び第4のチャンバに入るのを防止する。
【0039】
第1、第2、第3及び第4のチャンバのそれぞれは、流体プランジャをボトムストロークでロックする内部戻り止めを含み得る。これは、プランジャが引っ込められるのを防止する。
【0040】
検出機器は電力ケーブルと、周辺機器を接続するための接続ポート(USBポート等)とを備え得る。周辺機器はバーコードスキャナ、プリンタ及びローカルエリアネットワークを含み得る。検出機器は、試料処理装置の存在を確認するために光学又は近接センサと、ユーザーインターフェースとして機能する外部タッチスクリーンを含み得る。
【0041】
検出機器はエンクロージャを閉じるためのドアを含み得る。
【0042】
検出機器は可動プラットフォームを駆動するアクチュエータを含み得る。
【0043】
好ましい実施形態では、前記空気チャンバ、前記バルブ区画、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバ及び前記第4のチャンバは実質的に共通の直径を有するピッチ円を画定する。前記試料処理装置が前記回転プラットフォームに取り付けられている場合、前記ピッチ円は、前記試料処理装置が回転されると、前記空気プランジャと、前記バルブプランジャと、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバ及び前記第4のチャンバのそれぞれの流体プランジャとが、前記線形アクチュエータの下で実質的に整合するように、前記線形アクチュエータの直線軸と交差する。
【0044】
好ましい実施形態では、前記空気チャンバ、前記バルブ区画、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバ及び前記第4のチャンバは矩形のアレイを画定する。前記試料処理装置が前記x-yプラットフォームに取り付けられている場合、前記矩形アレイは、前記試料処理装置が動かされると前記空気プランジャと、前記バルブプランジャと、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、前記第3のチャンバ及び前記第4のチャンバのそれぞれの流体プランジャとが、前記線形アクチュエータの下で実質的に整合するように、前記線形アクチュエータの直線軸と交差する。
【0045】
線形アクチュエータ及び可動プラットフォームは、前記複数の位置のそれぞれで流体プランジャ、空気プランジャ又はバルブプランジャの作動を協調する位置センサを含み得る。
【0046】
一般に、検出機器のベース部に光学モジュールが位置する。光学モジュールは、抗体アレイの底面を撮像する蛍光又はIR撮像装置又はレーザーであり得る。光学モジュールは磁気ラベルを撮像するように適合され得る。
【0047】
検体は細胞検体(例えば、微生物、バクテリア、菌類又はウイルス)、単細胞原生動物、ヒト若しくは非ヒト由来の真核細胞(例えば、ヒトがん細胞)又は有機若しくは無機分子であり得る。
【0048】
抗体は、検体内の対象分子に選択的に結合するように適合され得る。抗体は免疫グロブリン、アフィマー又はアプタマーであり得る。
【0049】
さらなる態様から見た場合、本発明は上記で定義した試料処理装置を提供する。
【0050】
さらに別の態様から見た場合、本発明は上記で定義した検出機器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
添付の図面を参照しながら、本発明を非限定的な意味で説明する。
【
図1】
図1は、本発明の生化学アッセイ装置の実施形態を示す。
【
図2a】
図2aは、
図1に示す実施形態の試料処理装置を分解された状態で示す。
【
図2c】
図2cは、
図1に示す実施形態の試料処理装置を組み立てられた状態で示す。
【
図2b-1】
図2b-1は、容器ラックの展開の前で、バキュテナーが装着される前の
図2cに示す試料処理装置の断面図を示す。
【
図2b-2】
図2b-2は、容器ラックの展開の後で、バキュテナーが装着される前の
図2cに示す試料処理装置の断面図を示す。
【
図3a】
図3aは、バキュテナーを装着した後の
図2cに示す試料処理装置の断面図を示す。
【
図3b】
図3bは、試料処理装置の代替的な実施形態の断面図を示す。
【
図4a】
図4aは、
図3aの試料処理装置のマニホールドの床の下を示す。
【
図4b】
図4bは、
図3bの試料処理装置のマニホールドの床の下を示す。
【
図4c】
図4cは、マニホールドの床の下から取り外された、
図2cに示す試料処理装置の抗体アレイを示す。
【
図5a】
図5aは、閉(非作動)位置にある、
図2cに示す試料処理装置のバルブの断面図を示す。
【
図5b】
図5bは、開(作動)位置にある、
図2cに示す試料処理装置のバルブの断面図を示す。
【
図6a】
図6aは、検出機器のドアを閉める前の生化学アッセイ装置の実施形態を示す。
【
図6b】
図6bは、検出機器のドアを閉めた後の生化学アッセイ装置の実施形態を示す。
【
図6c】
図6cは、生化学アッセイ装置の実施形態の断面図を示す。
【
図6d】
図6dは、生化学アッセイ装置の実施形態の断面図を示す。
【
図7】
図7a~
図7cは試料処理装置の様々な実施形態を示す。
【
図8】
図8は、本発明の生化学アッセイ装置を用いて行った検査を概略的に示す。
【
図9】
図9は、本発明の生化学アッセイ装置の代替的な実施形態を断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は本発明の生化学アッセイ装置の実施形態を示す。生化学アッセイ装置は概して、検出機器(1)と、生物学的流体試料に対して生化学アッセイを行うために一連の線形及び回転作動を介して検出機器(1)により制御される試料処理装置(2)とを含む。
【0053】
試料処理装置(2)は、生物学的流体試料に対して生化学アッセイを行うために必要な流体試薬(例えば、機能化された要素、緩衝液及び標識)を含む使い捨ての消耗品である。
図2aを参照して、試料処理装置(2)は、ハウジング(7)と、ハウジング(7)のラック区画内で垂直方向に拘束可能な容器ラック(3)とを含む。
【0054】
容器ラック(3)は、相互に離間し且つ弓形カラー(333)によりそれらのネック部で接続された4つの実質的に円筒状の容器(3a)を含む。各容器(3a)は、下端(foot end)にストッパ(4)を、上端に流体プランジャ(5)を備える。
図2cに示すように、4つの容器(3a)は、希釈緩衝液のための第1のチャンバ(19)、第1の洗浄緩衝液のための第2のチャンバ(21)、アッセイ標識のための第3のチャンバ(22)及び第2の洗浄緩衝液のための第4のチャンバ(23)をそれぞれ画定する。容器ラック(3)は、ハウジング(7)の蓋(77)内の相補的な形状の弓形開口(113)を介して挿入される。
【0055】
ハウジング(7)は、マニホールド(6)の外側に摺動可能に取り付けられる。マニホールド(6)は、マニホールド(6)の床の下に密閉して取り付けられる抗体アレイ(27)に第1、第2、第3及び第4のチャンバー(19、21、22及び23)を流体連結可能な流体回路(32)を含む。流体回路(32)は、後述するように、各容器(3a)に選択的に流体接続される使用の時点まで容器(3a)のチャンバ(19、21、22、23)から密閉されている。ハウジング(7)は、空気チャンバ(17)と、アレイバルブ(26)のためのバルブ区画(24)とをさらに画定する。空気チャンバ(17)及びバルブ区画(24)はそれぞれ、ハウジング(7)の蓋(77)の開口(17a、24a)を介してアクセス可能である。空気チャンバ(17)は、空気プランジャ(18)によりシールされている。
【0056】
抗体アレイ(27)のアレイ入口部(28)は、アレイ入口部(28)の上流に位置するアレイバルブ(26)によって流体回路(32)から通常隔離されている(
図4a及び4c参照)。抗体アレイ(27)は、アレイ入口部(28)とアレイ出口部(29)との間に連続的な流体経路を作り出す螺旋状流路(90)を含む。流体はアレイ出口部(29)からマニホールド(6)の周辺領域の廃棄チャンバ(30)に放出される。抗体は流路(90)の壁に取り付けられている。流路(90)の床にあるリブ(31)は、流体にさらされる表面積を増やすとともに、検体(例えば、病原体)と壁に取り付けられた抗体との相互作用を促進するために流体の流れを妨げるように機能する。抗体アレイ(27)は、ルアー型コネクタ若しくはスピゴット等の機械的手段により又はレーザー接合又は接着剤によりマニホールド(6)に流体的にシールされている。アレイカバー(91)は、流路(90)を密閉し、漏れを防止するために抗体アレイ(27)のベース部にレーザー接合又は接着剤により取り付けられている。流路(90)の経路長及び断面積は、死容量を低減するために最小化されている。
【0057】
図2b-1は試料処理装置(2)の断面図を示し、容器ラック(3)は、蓋(77)にある相補的形状の開口(113)を介して挿入されて展開前の上方(非展開)位置(にある。この上方(非展開)位置では、容器ラック(3)はハウジング(7)のラック区画内に据え付けられ、各容器(3a)は、マニホールド(6)の床から上方に突出するスピゴット(8)と整合し且つスピゴット(8)から離間されている。使用の時、容器ラック(3)は、容器(3a)の下端がスピゴット(8)によって貫通されるように非上方(展開)位置に押し下げられる(
図2b-2参照)。非上方(展開)位置にある場合、容器ラック(3)はハウジング(7)によって拘束される。スピゴット(8)は、容器(3a)と流体回路(32)との間の流体経路を開くためにストッパ(4)を変位させる。ストッパ(4)は、容器(3a)の下部に押しのけられる。スピゴット(8)の上面にある溝は、容器(3a)と流体回路(32)との間の流体経路をストッパ(4)がブロックするのを防止する役割を果たす。
【0058】
図3aは、標準的なバキュテナー(12)が搭載された後の密閉状態にある
図2cに示す試料処理装置(2)の断面図である。生物学的流体試料を含むバキュテナー(12)は、蓋(77)のバキュテナーポート(12a)を介して試料処理装置(2)に挿入されている。マニホールド(6)は、その床から上方に突出するとともに、試料処理装置(2)の主回転軸と実質的に一致する中空状の第1及び第2の針(10、11)を含む。第1及び第2の針(10、11)は、バキュテナー(12)の隔壁を穿刺するように適合されている。第1の針(10)は、第1のチャンバ(19)と流体連通している。第2の針(11)は、空気チャンバ(17)と流体連通している。第2の針(11)は、空気チャンバ(17)からの空気が第1の針(10)に直接バイパスされるのを防止するために第1の針(10)とは異なる高さにある。
【0059】
図3bは、試料処理装置(2a)の代替的な実施形態の断面図を示す。この実施形態では、針の代わりに一対の流体開口(14)が流体回路(32)に含まれる。流体開口(14)は、空気チャンバ(17)からの空気がそれらの間を直接通過するのを防止するために異なる高さにある。キャップ(16)を含む試料容器(15)はマニホールド(6)にシールされており、ユーザーは試料容器(15)に生物学的流体試料を充填できる。
【0060】
(以下で説明するように)空気プランジャ(18)が作動されると、空気チャンバ(17)からの空気が第2の針(11)を介してバキュテナー(12)内に押し込まれ(又は代替的な実施形態では流体開口(14)のうちの1つを介して試料容器(15)内に押し込まれ)、希釈緩衝液を含む第1のチャンバ(19)内に生物学的流体試料が第1の針(10)及びスピゴット(8)内の狭いボアを介して流し込まれる。空気プランジャ(18)は、流体圧により引き戻すことができないようにストロークの底で空気プランジャ(18)を固定する戻り止め(20)と相互作用する。
【0061】
第1のチャンバ(19)において、流体プランジャ(5)は先ず中間ストロークに位置し、希釈緩衝液及び生物学的流体試料を含むために容積を拡大するため移動する。スピゴット(8)の狭いボア及び第1のチャンバ(19)の拡大された容積を通じて生物学的流体試料が第1のチャンバ(19)に入る作用により、生物学的流体試料と希釈緩衝液とが効果的に混合される。高さストップ(66)は、流体プランジャ(5)が第1のチャンバ(19)から出るのを防止する。それぞれの流体プランジャ(5)がフルストロークを越えて移動するのを内部戻り止め(33)が阻止するため、生物学的流体試料は、第2、第3、及び第4のチャンバ(21、22、及び23)に入ることができない。
【0062】
ハウジング(7)内のバルブ区画(24)はアレイバルブ(26)を含み、
図5a及び
図5bにアレイバルブ(26)が閉じた状態及び開いた状態をそれぞれ示す。アレイバルブ(26)は、バルブステム(50)、バルブキャップ(51)及びバルブプランジャ(52)を含む。バルブステム(50)はマニホールド(6)の一部であり、中央ボア(53)を含む。中央ボア(53)は、中央ボア(53)に沿って途中で止まる溝(54)を備える。出口流路(55)は中央ボア(53)と平行である。バルブプランジャ(52)は、溝(54)の上で中央ボア(53)に液密シールを提供し、バルブキャップ(51)により溝(54)の位置まで下方に押し下げることができるように締まりばめを有する。バルブキャップ(51)は、バルブステム(50)を円周方向にシールするワイパーシール(56)と、バルブプランジャ(52)を作動させるプッシャ(57)とを含む。アレイバルブ(26)が閉じられている場合(
図5a参照)、バルブキャップ(51)及びバルブプランジャ(52)は、中央ボア(53)がブロックされ、流体が出口流路(55)に入ることができない上方位置にある。アレイバルブ(26)は、(後で説明するように)中央ボア(53)内にバルブプランジャ(52)を変位させ、出口流路(55)との流体連通を可能にするバルブキャップ(51)を作動させることによって開かれる。出口流路(55)は、流体回路(32)をアレイ入口部(28)に流体連結する。
【0063】
アレイバルブ(26)が開いた状態で、マニホールド(6)の流体回路(32)は、チャンバ(19、21、22及び23)を抗体アレイ(27)に選択的に連結できる(
図4a~
図4c参照)。先ず、(後で説明するように)第1のチャンバ(19)内の流体プランジャ(5)が制御された速度で作動されて、希釈された試料が流体回路(32)内に移される。次いで、希釈された試料は、アレイバルブ(26)を介して、アレイ入口部(28)を通り抗体アレイ(27)に送られる。流体は、アレイ出口部(29)を通って抗体アレイ(27)から出て、廃棄チャンバ(30)に排出される。第1のチャンバ(19)内の流体プランジャ(5)がストロークの底に達すると、内部戻り止め(34)は、流体プランジャ(5)が流体圧によって引き戻すことができないように所定の位置に固定する。
【0064】
次いで、(以下で説明するように)第2のチャンバ(21)内の流体プランジャ(5)を制御された速度で作動させて、第1の洗浄緩衝液が抗体アレイ(27)を越えて廃棄チャンバ(30)内に送られる。第2のチャンバ(21)内の流体プランジャ(5)は、内部の戻り止め(34)によってストロークの底で固定される。次いで、(以下で説明するように)第3のチャンバ(22)内の流体プランジャ(5)を制御された速度で作動させて、アッセイ標識が抗体アレイ(27)を越えて廃棄チャンバ(30)に送られる。第3のチャンバ(22)内の流体プランジャ(5)は、内部戻り止め(34)によりストロークの底でロックされる。次いで、(以下で説明するように)第4のチャンバ(23)内の流体プランジャ(5)を制御された速度で作動させて、洗浄緩衝液が抗体アレイ(27)を越えて廃棄チャンバ(30)内に送られる。第4のチャンバ(23)内の流体プランジャ(5)は内部戻り止め(34)によりストロークの底で固定される。
【0065】
検出機器(1)は電力ケーブルと、装置の機能に必要な周辺機器(バーコードスキャナ、プリンタ、ローカルエリアネットワーク等)を接続するための接続ポート(USBポート等)とを備える。検出機器(1)の前面にあるLEDライト(660)は、色に基づく状態、例えば、レディー(緑)、ビジー(黄色)、検査完了(青)、エラー(赤)、オフ(無光)を表示する。検出機器(1)は、試料処理装置(2)の存在を確認するために、光学センサ、近接センサ又は他のセンサを含む。有効期限及びテストの種類を確認するために、検出機器(1)内に位置するバーコードリーダで検出機器(1)の外面にあるバーコードが読み取られる。検出機器(1)は、セットアップの間にユーザーインターフェースとして機能し、指示プロンプト、エラー警告及びテスト結果を表示する外部タッチスクリーン(60)を含む。
【0066】
図6aを参照して、検出機器(1)はエンクロージャ(67)を含み、エンクロージャ(67)内では、容器ラック(3)が展開され、バキュテナー(12)が押し下げられた状態の試料処理装置(2)が位置する。ユーザーが試料処理装置(2)を妨げるのを防止するとともに周囲光から光学系を保護するために、ドア(61)は検査の間にエンクロージャ(67)を閉じる(
図6b参照)。
【0067】
検出機器(1)は、エンクロージャ(67)内に位置する試料処理装置(2)と機械的にインターフェースする回転プラットフォーム(63)を駆動する回転アクチュエータ(62)を含む(
図6c及び
図6d参照)。回転アクチュエータ(62)は、上述した空気プランジャ(18)、バルブプランジャ(52)及び各流体プランジャ(5)のための連続的な作動ステップを可能にする所定の回転位置に回転アクチュエータ(63)及び試料処理装置(2)を回転させる。この目的のために、空気チャンバ(17)、バルブ区画(24)及び第1、第2、第3及び第4のチャンバ(19、21、22及び23)は、試料処理装置(2)が回転されたときに空気プランジャ(18)、バルブプランジャ(52)及び第1、第2、第3及び第4のチャンバ(19、21、22及び23)のそれぞれの流体プランジャ(5)が線形アクチュエータ(64)の下で整合されるように共通の直径を有するピッチ円を画定する。線形アクチュエータ(64)及び回転プラットフォーム(63)は、所定の回転位置のそれぞれで、流体プランジャ(5)、空気プランジャ(18)又はバルブプランジャ(52)を作動させるために協働できるように位置センサを含む。
【0068】
検出機器(1)のベース部には、抗体アレイ(27)の底面を撮像する蛍光光学系である光学モジュール(65)が配置されている。光学モジュール(65)のコンポーネントは、試料処理装置(2)が回転された場合に抗体アレイ(27)の全領域が撮像できるように直線ステージ(66)上に取り付けられる。
【0069】
図7a~
図7cは、操作に影響を及ぼすことなく試料の容積を減らすことができるように高さが異なる試料処理装置(2)の代替的な実施形態を示す。
図7aは
図3cに対応し、(例えば)10mlの全血を検査するためのバキュテナー(12)を用いる。
図7bは、(例えば)新生児の血液0.5ml又は脳脊髄液0.1mlを検査するのに好適な小容量の試料処理装置(2a)を示す。
図7cは、(例えば)10mlの尿を検査するのに好適な大容量の試料処理装置(2b)を示す。
【0070】
図8は、本発明の生物学的アッセイ装置で生物学的流体試料に対して生化学アッセイを行うために実施されるステップを概略的に示す。流体試薬及び必要容量を表1に示す。検査期間は通常3分~6時間の範囲である。
【0071】
【表1】
図9は、概して参照番号(90)によって示される、本発明の生化学アッセイ装置の代替的な実施形態の断面を示す。生化学アッセイ装置(90)は、試料処理装置(99)が内部に位置するエンクロージャを含む検出機器(91)を含む。ユーザーが試料処理装置(99)を妨げるのを防止するとともに周囲光から光学系を保護するために、ドア(94)は検査の間にエンクロージャを閉じる。試料処理装置(99)は、生物学的流体試料に対して生化学アッセイを行うために一連の線形作動を介して検出機器(91)により制御される。
【0072】
図9に示す実施形態の試料処理装置99を
図10に分解された状態で示す。試料処理装置99は、生物学的流体試料に対して生化学アッセイを行うために必要な流体試薬(例えば、機能化された要素、緩衝液及びラベル)を含む使い捨ての消耗品である。試料処理装置(99)は、ハウジング(101)と、ハウジング(101)のラック区画内で垂直方向に拘束可能な容器キャリア(103)とを含む。
【0073】
容器キャリア(103)は、共に容器ラックを形成する相互に離間した実質的に円筒状の4つのシリンジ容器(104)のための箱状カラーとして作用する。各シリンジ容器(104)は、接着剤又は機械的接続(例えば、ネジ止め、押し込み式又はスナップ式接続)により容器キャリア(103)内に取り付けられる。各シリンジ容器(104)は、その下端にシリンジエンドキャップ(164)を、その上端にノンリターンプランジャ(105)を備える。4つのシリンジ容器(104)は、希釈緩衝液のための第1のチャンバ、第1の洗浄緩衝液のための第2のチャンバ、アッセイ標識のための第3のチャンバ及び第2の洗浄緩衝液のための第4のチャンバをそれぞれ画定する。
【0074】
ハウジング(101)は、そのベース(107)を介してマニホールド(117)に連結されている。マニホールド(117)は、マニホールド(117)の床の下に密閉して取り付けられた抗体アレイ(127)に第1、第2、第3及び第4のチャンバを流体連結することが可能な流体回路を含む(
図11参照)。流体回路は、各シリンジ容器(104)に選択的に流体接続される使用時点までシリンジ容器(104)のチャンバからシールされる。ハウジング(101)は、空気プランジャ(222)によりシールされた空気チャンバ(221)と、アレイバルブのためのバルブ区画とをさらに画定する。空気チャンバ(221)及びバルブ区画は、ハウジング(101)の蓋の開口を介してそれぞれアクセス可能である。空気チャンバ(221)は、接着剤又はレーザー溶接によりベース(107)に取り付けられる。
【0075】
抗体アレイ(127)のアレイ入口部(280)は、アレイ入口部(280)の上流に位置するアレイバルブによって流体回路から通常隔離されている。抗体アレイ(127)は、アレイ入口部(280)とアレイ出口部(290)との間に連続的な流体経路を作り出すジグザグ状流路(240)を含む。流体はアレイ出口部(290)からマニホールド(117)の周辺領域の廃棄チャンバ(30)に放出される。抗体は流路(240)の壁に取り付けられている。
【0076】
検出機器(91)は、エンクロージャ内に位置する試料処理装置(99)と機械的にインターフェースする可動プラットフォーム(98)を含む。可動プラットフォーム(98)及び試料処理装置(99)は、空気プランジャ(222)、バルブプランジャ(147)及び各ノンリターンプランジャ(105)のための連続的な作動ステップを可能にする所定のx-y位置に動かされる。試料処理装置(99)が動かされると、空気プランジャ(222)、バルブプランジャ(147)及び第1、第2、第3及び第4のチャンバのそれぞれのノンリターンプランジャ(105)がアクチュエータフレーム(910)上の線形アクチュエータ(911)の下で整合される。線形アクチュエータ(911)及び可動プラットフォーム(98)は、所定のx-y位置のそれぞれで、ノンリターンプランジャ(105)、空気プランジャ(222)又はバルブプランジャ(147)を作動させるために協働できるように位置センサを含む。
【0077】
使用時点で、容器ラックは、非上方(展開)位置に押し下げられ、所定のx-y位置で行われる連続的な作動ステップは、
図1の実施形態について前述したものと同様である。非上方(展開)位置では、容器ラックはハウジング(101)によって拘束される。
【0078】
シリンジ容器(104)とマニホールド(117)内の流体回路との間の流体経路を開くために針(300)がシリンジエンドキャップ(164)を穿刺する。試料処理装置(99)には標準のバキュテナー(212)が搭載されている。生物学的流体試料を含むバキュテナー(212)は、バキュテナーポート(202)を介して試料処理装置(99)に挿入される。マニホールド(117)は、ユーザーがバキュテナー(212)をマニホールド(117)内の流体回路に直接接続することを防止するバキュテナーラッチ(187)と、バキュテナー(212)の隔壁を穿刺する一対の針(167)とを含む。一対の針(167)のうちの第1の針は空気チャンバ(221)と流体連通し、一対の針(167)のうちの第2の針は、希釈緩衝液を含む第1のチャンバと流体連通している。空気プランジャ(222)が作動されると、空気チャンバ(221)からの空気が一対の針のうちの第2の針(167)を介してバキュテナー(212)に押し込まれ、希釈緩衝液を含む第1のチャンバ内に生物学的流体試料が一対の針(167)のうちの第1の針を介して流し込まれる。
【0079】
アレイバルブは、バルブプランジャ(147)の変位を作動することによって開かれる。アレイバルブが開いた状態で、マニホールド(117)内の流体回路はチャンバを抗体アレイ(127)に選択的に連結できる。先ず、第1のチャンバ内のノンリターンプランジャ(105)を制御された速度で作動し、希釈された試料が流体回路内に移される。次いで、希釈された試料は、アレイバルブを介してアレイ入口部(280)を通って抗体アレイ(127)に送られる。流体は、アレイ出口部(290)を通って抗体アレイ(127)を出て、廃棄チャンバ(150)に放出される。
【0080】
次いで、第2のチャンバ内のノンリターンプランジャ(105)を制御された速度で作動し、第1の洗浄緩衝液が抗体アレイ(127)を越えて廃棄チャンバ(150)内に送られる。次いで、第3のチャンバ内のノンリターンプランジャ(105)を制御された速度で作動し、アッセイ標識が抗体アレイ(127)を越えて廃棄チャンバ(150)内に送られる。次いで、第4のチャンバ内のノンリターンプランジャ(105)を制御された速度で作動し、第2の洗浄緩衝液が抗体アレイ(127)を越えて廃棄チャンバ(150)内に送られる。空気圧を緩和するために、廃棄チャンバ(150)の上部にPTFEフリット(106)が含まれる。
【0081】
検出機器(91)のベース部には、抗体アレイ(127)の底面を撮像する蛍光光学系である光学モジュール(97)が位置する。光学モジュール(97)は外部スイッチ(95)を用いてオンに切り替えられ、プリンタ(93)、スキャナ(92)及びスクリーン(999)により機能が提供される。検出機器(91)は持ち運びのためにハンドル(96)をさらに備える。