(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ポンプを脱ガスするための構成及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20240313BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240313BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20240313BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20240313BHJP
B01J 3/03 20060101ALI20240313BHJP
D21C 9/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
B01D19/00 102
B01D19/00 Z
B01D53/26 100
B01J3/00 A
B01J3/02 E
B01J3/03 A
D21C9/00
(21)【出願番号】P 2021530847
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 FI2019050853
(87)【国際公開番号】W WO2020109667
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイガー、ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ペルトネン、カリ
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-085392(JP,A)
【文献】米国特許第05087171(US,A)
【文献】国際公開第1992/003611(WO,A1)
【文献】特開2001-316993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
B01D 53/26-53/28
B01J 3/00-3/08
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12;
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00,
F04D 1/00-13/16;17/00-19/02;
21/00-25/16;29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ処理装置
(5、7)において処理される、中濃度パルプの懸濁液から分離されたガス流を制御するための構成であって、
前記構成は、パルプの懸濁液をポンピングするための少なくとも第1のポンプ
(3)と第2のポンプ
(8、31、41)とを備え
、前記第2のポンプが、脱ガス・システムを備えた脱ガス遠心ポンプであり、前記脱ガス・システムが、
脱ガス・コンジット
(33、43)を備え、前記脱ガス・コンジット内には、前記第2のポンプの入口
(30、40)と前記脱ガス・コンジットとの間の圧力差を調整するために脱ガス弁
(34、44)が配置される、構成において、
前記脱ガス・システムが、超過圧力の下で機能
し、入口と出口とを有
し、前記脱ガス弁(34、44)の下流に配置され、前記脱ガス・コンジット(33、43)に接続される加圧脱ガス容器
(35、46)をさらに備え、前記容器の前記出口が、前記容器内の超過圧力を維持するための圧力制御弁
(38、47)に接続されたことを特徴とする、構成。
【請求項2】
前記加圧脱ガス容器が、水平方向に配設されたパイプ
(46)であり、前記パイプの前記入口が前記脱ガス・コンジット
(43)に接続され、前記パイプの前記出口は、前記圧力制御弁
(47)が配置された出口コンジット
(48)に接続されたことを特徴とする、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記脱ガス・システムが水分離器
(49)をさらに備え、前記水分離器は、前記出口コンジットに接続されており、上部にベント・コンジット
(52)を備えると共に、前記分離器内の水位を調整するための排水コンジット
(51)を備えた、加圧されていないチャンバであることを特徴とする、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
前記加圧脱ガス容器が、液面及び前記液面の上のガス空間と、ベント・コンジット
(36)とを有する加圧水分離器チャンバ
(35)であり、前記圧力制御弁
(38)が、前記チャンバ内の必要とされる超過圧力を維持するように構成され、前記チャンバが、前記チャンバ内の前記液面を調整するための弁を備えた排水コンジット
(37)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の構成。
【請求項5】
前記パイプ
(46)の直径が少なくとも50mm、好ましくは80mm超であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の構成。
【請求項6】
前記加圧脱ガス容器
(35、46)の容積が0.01~1.0m
3、好ましくは0.02~0.2m
3の範囲内であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の構成。
【請求項7】
前記加圧脱ガス容器
(35、46) が、0.1~4.0バール(g)の圧力において動作するように構成されたことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の構成。
【請求項8】
中濃度パルプの懸濁液から分離されたガス流を制御するための方法であって、前記懸濁液が、前記パルプの圧力を上げるために少なくとも第1のポンプ
(3)と第2のポンプ
(8、31、41)とによってポンピングされ、ガスが前記第2のポンプ内で前記パルプから分離され、分離されたガス流が脱ガス・コンジットに排出されるように、前記懸濁液がパルプ処理装置
(5、7)において処理され、前記第2のポンプの入口と前記脱ガス・コンジット
(33、43)との間の圧力差が決定され、前記圧力差の値が、前記脱ガス・コンジットに接続された脱ガス弁
(34、44)によって所与の範囲内に維持される、方法において、分離された前記ガスが、前記脱ガス弁
(34、44)の下流に配置され、前記脱ガス・コンジットに接続された加圧脱ガス容器
(35、46)に供給され、前記ガス流の体積を減少させるために、前記加圧脱ガス容器内で超過圧力が前記容器の下流に配置された圧力制御弁
(38、47)によって維持されることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記加圧脱ガス容器
(46)の後の別個のチャンバ
(49)内で水分離が実行されるように、前記ガス流から水が分離されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加圧脱ガス容器
(35)内で水分離が実行されるように、前記ガス流から水が分離されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記水分離中に液面
(50)が制御されることを特徴とする、請求項
9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記加圧脱ガス容器
(35、46)内の圧力が0.1~4.0バール(g)、好ましくは0.3~3バール(g)の範囲に調整されることを特徴とする、請求項8、9、10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記加圧脱ガス容器
(35、46)内の前記超過圧力と前記容器の容積とが、前記脱ガス弁
(38、47)に対する圧力変化を減衰させることを可能にすることを特徴とする、請求項8から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のポンプ内でガスがそこから分離される前記中濃度パルプが酸素脱リグニン化されることを特徴とする、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のポンプ内でガスがそこから分離される前記中濃度パルプが、ポンピング前に、オゾン又は過酸化物など、ガス状の漂白化学物質を用いて処理されることを特徴とする、請求項8から13までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ製造及び紙生産工場によってパルプの懸濁液をポンピングするために使用される中濃度(MC:Medium Consistency)ポンプの分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
中濃度(MC)ポンプはパルプ及び紙生産において広く使用されている。中濃度パルプは、水中のセルロース系繊維と反応副生成物との懸濁液であり、セルロースの質量含有率(濃度)は、6~16%の範囲内の濃度を有するとされているが、より一般的には、濃度範囲は8~12%である。中濃度パルプのためのポンプは、様々なパルプ及び製紙業利用においてパルプをポンピングし、搬送するために設計される。
【0003】
中濃度パルプの物理的性質により、空気又はガスが懸濁液中に閉じ込められ得、適切な脱ガスが実行されない限り、遠心ポンピングを破壊することがある。したがって、MCポンプには、1980年代初期に発明されたガス除去システムが装備される。パルプの流動化に加えて、脱ガスの必要の理解が、MCポンプを発明する際の重要な特徴であった。遠心ポンピング動作中に、MCパルプに加えられた遠心力が、閉じ込められたガスと水/パルプ懸濁液との間の分離を促進する。分離が起こるのは、ガス密度がMCパルプの他の構成要素よりも実質的に小さく、したがってガスは回転羽根車の中心に蓄積する傾向があるからである。蓄積されたガスがポンプから除去されない場合、追加の分離されたガスが蓄積し、ポンプの内側のガス容量が増加し、ポンプは効率とポンピング安定度とを劇的に緩める。好適な排出ガス流が維持されなければならない。MCポンプ脱ガスは、遠心ポンプのポンピング挙動と、ポンプ入口とポンプ脱ガス・ラインとの間の正圧差を生じさせることとに基づく。これは、十分な入口圧力、或いは外部又は内部真空ポンプのいずれかによって達成される。MCポンプがポンプ内に空気を蓄積し、したがってポンプ効果が低減するという知見は、今日いくつかのタイプのMCポンプにおいて使用されている現在の脱ガス・システムにつながる。
【0004】
一般に、MCポンプは、パルプ洗浄機(pulp washer)、漂白段又は貯蔵塔に供給するために使用される。いくつかの利用においては、たとえば、1つのMCポンプが十分に高い圧力を与えていない場合、直列の1つ又はいくつかのMCポンプを使用する必要がある。加圧された漂白段(たとえば、酸素脱リグニン(delignification)及びPO段)では、MCポンプは、必要とされるリアクタ・プロセス圧力を達成するために、パルプ・ライン上で十分に高い圧力を発生しなければならない。必要とされる圧力を達成するために、別の直列のポンプ(ブースター・ポンプ)が必要とされ得る。場合によっては、プロセス中に供給する蒸気又は化学物質(たとえば過酸化物)のために必要とされる圧力が十分に高くない場合、ブースターMCポンプの必要が生じ得る。この種の状態では、化学物質又は蒸気がブースター・ポンプの入口側に供給され得、次いで、ブースター・ポンプが、プロセス条件を満たすために必要とされる圧力を発生する。
【0005】
一般的な設備では、MCポンプの吸引側は貯蔵塔又は小さい供給タンクによって供給される。この利用においては、MCポンプ供給圧力は安定しており、供給圧力変化は遅い。さらに、MCポンプ供給パルプ中のガス含有量は正常動作中に大幅に変動しない。MCポンプから蓄積されたガスを除去する駆動力は、MCポンプ吸引と雰囲気との間、又はMCポンプ吸引とMCポンプの脱ガス・デバイスとの間の圧力差である。一般的な設備では、圧力差と脱ガス流の両方は比較的安定しており、したがって脱ガス・システム設計及び動作はよく知られており、それのパフォーマンスは十分に証明されている。
【0006】
ブースターMCポンプ利用においては、ポンプの入口圧力はかなり高く、約1~10バールであるが、通常は2~6バールである。多くの場合、ブースターMCポンプは脱ガス・システムなしに機能することができるが、状態が、ガス除去が必要とされるような状態である場合、MCポンプにはガス除去が装備される。脱ガスの使用が必要とされ得るのは、ポンプの上流のパルプへのガス状化学物質の追加のためである。脱ガスの別の理由は、気体反応生成物がリアクタ内で生成され、パルプとともに、リアクタの下流に配置されたブースター・ポンプに入ることである。この種の状態は、たとえば、パルプを第2の酸素リアクタ内に供給するためにブースターMCポンプが必要とされる場合、2ベッセル酸素脱リグニン段において一般的である。
【0007】
図1は、2段酸素脱リグニン・システムの簡略化されたフロー・シートを提示する。本システムは、供給MCポンプ3と、酸素と蒸気とがライン12を通してその中に供給されるミキサ4と、第1のリアクタ5と、第2のリアクタ7へのコンジット6とを備える。リアクタ間のコンジット6は、第2の(ブースター)MCポンプ8と、第2の酸素ミキサ9とを備える。パルプは、ドロップ・レッグ(drop leg)2中に下降し、化学物質もその中に供給され得るポンプ3によってさらに搬送される。第1のリアクタ内に供給される酸素用量の主要部分はリアクタ内で消費されるが、残留酸素の一部の量と気体反応生成物とはブースターMCポンプ8に入る。ライン13を通る酸素と蒸気とがパルプ内に追加される。ライン14を通して、ブースター・ポンプ8の前にも、蒸気が追加され得る。MCポンプ揚程(head)要件は利用可能な蒸気圧又は反応体圧力にとって非常に高くなり得、したがって揚程生成は2つのポンプ、ポンプ3とポンプ8との間で分割され、第2のポンプはブースター・ポンプとして追加される。ポンプ3とポンプ8の両方は、それぞれ脱ガス・コンジット10及び11が装備された脱ガスMCポンプである。酸素脱リグニン化(delignified)パルプはライン15を通して第2のリアクタ7から排出される。
【0008】
リアクタ内の酸素消費は、変化するプロセス条件により、或いは酸素の過量投与があることにより、又はブースター・ポンプの前に蒸気の追加が配置されることにより、変動する場合がある。いずれの場合も、ブースター・ポンプの入口のガス含有量は推定することが極めて困難であり、それは広い範囲内で変動し、それにより脱ガスの制御が困難になる。したがって、脱ガス・コンジットの脱ガス弁を通して繊維漏出が時々あり、脱ガスが不十分である場合、ポンピング問題及び不安定なプロセス条件も起こる。MCポンプの脱ガスを通るオフガスの量が十分に高くない場合、ブースターMCポンプ内のガス含有量が増加し、それがポンプの揚程生成を低減し、ポンピング動作を妨害する。ガス含有量がポンプの入口で変動する場合、ポンプの揚程生成は変動し始める。MCポンプの入口側におけるガス蓄積は揚程生成を低減するが、キャビテーション(cavitation)とポンプの振動とをも引き起こす。ブースターMCポンプ設備では、圧力差と脱ガス流範囲の両方が大きく、動作条件は急速に変化し得る。したがって、これらの利用においては、脱ガス・システム動作は容易に不安定になる。
【0009】
MCポンプ内で、空気又はガスは、パルプから分離され、次いで、ポンプの入口側と脱ガス・チャンバとの間に一定の圧力差を生成することによって除去される。一般に、ブースターMCポンプ20の脱ガス・システム(
図2a)は、ポンプ20の入口21と、ポンプの脱ガス・チャンバに接続された脱ガス・コンジット22とにおける圧力測定からなる。パルプはコンジット23を通してパルプから除去される。脱ガス・コンジット22(ガス排出コンジット)は脱ガス弁24を備える。ポンプの入口と脱ガス(ガス排出)との間の圧力の差は圧力計によって測定される。差は設定値と比較され、脱ガス弁は、差圧を所望のレベルに維持するように圧力差インジケータ・コントローラ(PDIC:Pressure Differential Indicator Controller)によって制御される。脱ガス・コンジットの出口は周囲空気又は換気システム(図示せず)に接続される。
【0010】
図2bは、脱ガス・コンジットが、サイレンサとしても動作する水分離容器に接続された、知られているシステムを示す。水分離器25は換気システム又は雰囲気へのコンジット26を有する。分離されたガスから水がその中で除去される水分離器には、水分離器容器25内の液面を調整するための排水接続27も装備される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既存のブースターMCポンプ利用の経験は、ブースターMCポンプ脱ガス・システムが安定させられ得るように、変動するプロセス条件の下で機能することが可能である制御システム及び方法を提供する必要があることを示している。
【0012】
上記で説明したように、オフガス量は、ポンプの入口側とポンプの脱ガス・コンジットとにおける圧力測定から開口のための指示を得る、脱ガス弁によって制御される。主に、測定間の測定された圧力差が低い場合は、ポンプ内に多くのガスがある。圧力差が高い場合は、ポンプ内にガスが入って来ていない。したがって、これらの圧力測定に基づいて、ポンプ内のガス含有量を大まかに推定し、脱ガス弁が異なる圧力状態の下でどのように動作するべきであるかに関する構成を作成することが可能である。ポンプの入口側における状態は極めて急速に変化し得るので、脱ガス弁も速く動作しているべきである。一方、脱ガス弁の速すぎる動作は、ガスとともにパルプ繊維の高い漏出量と、オフガス処理における異なる種類の問題とに容易につながる。脱ガス弁が遅すぎる場合、ポンプ内のガス含有量が増加しすぎ、その結果、プロセスに対して揚程損失並びに圧力及び流れ変動が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも第1のポンプと第2のポンプとを備えるパルプ処理装置において処理される、中濃度パルプの懸濁液から分離されるガス流を制御するための構成に関する。第2のポンプは、脱ガス遠心ポンプであり、ブースター・ポンプとして機能する。第2のポンプは、一般に、脱ガス(ガス排出)コンジットを備えた脱ガス・システムを備え、脱ガス・コンジット内には、ポンプの入口と脱ガス・コンジットとの間の圧力差を調整するために脱ガス弁が配置される。脱ガス・コンジットは、超過圧力の下で機能する、入口と出口とを有する加圧脱ガス容器に接続され、容器の出口は、容器内の超過圧力を維持するための圧力制御弁に接続される。脱ガス・コンジットは容器の入口に接続される。加圧脱ガス容器は、水平方向に配置され、十分な直径と長さとを有するパイプであり得る。容器は、さらに、出口コンジットによって、液面及び液面の上のガス空間と、チャンバ内の液面を調整するための排水コンジットとを有する、別個の加圧されていない水分離チャンバに接続され得る。水分離器チャンバは、分離されたガスのための出口を提供するためのベント・コンジットをさらに備える。加圧脱ガス容器内の必要とされる超過圧力を維持するために、加圧脱ガス容器と水分離チャンバとの間の出口コンジット内に圧力制御弁が設けられる。加圧脱ガス容器は、50mmよりも大きい、好ましくは80mmよりも大きい直径を有するパイプである。パイプ長さとパイプ直径との比は、好ましくは20対100である。
【0014】
加圧脱ガス容器がパイプであるとき、入口ライン(脱ガス・コンジット)の少なくとも一部と出口ラインの少なくとも一部とが垂直方向に延びる。好ましくは、入口ラインの脱ガス弁は、出口ラインの圧力制御弁よりも高い高さに配置される。パイプ様の加圧脱ガス容器は、両方の弁、すなわち圧力制御弁と脱ガス弁よりも低い高さに配置される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、加圧脱ガス容器は、液面及び液面の上のガス空間と、排水コンジットとを有する加圧水分離器チャンバであり得る。排水コンジットは、チャンバ内、すなわち加圧脱ガス容器内の液面を調整するための弁を備える。ベント・コンジットは、容器内の必要とされる超過圧力を維持するための圧力制御弁を備える。加圧水分離器は、両方の弁、すなわち圧力制御弁と脱ガス弁よりも低い高さに配置される。
【0016】
加圧脱ガス容器の排水コンジットは、ポンプ、好ましくは自吸式(self-priming)ポンプを備え得る。自吸式ポンプは、脱ガス・コンジットの弁と容器の排水弁との間のあり得る妨害物を除去することが可能である。
【0017】
第1のポンプはまた、一般に、中濃度パルプのための脱ガス遠心ポンプである。
【0018】
中濃度パルプの懸濁液から分離されたガス流を制御するための新規の方法では、パルプ懸濁液は、少なくとも第1のポンプと第2のポンプとを備えるパルプ処理装置において処理される。パルプは、第1のポンプによってポンピングされ、次いでパルプの圧力を上げるために第2のポンプによってポンピングされる。第2のポンプ内でパルプ懸濁液から分離されたガスは脱ガス・コンジットを通して排出される。第2のポンプは、高い入口圧力、2~6バールで機能している。第2のポンプの入口と脱ガス・コンジットとの間の圧力差が決定される。脱ガス・コンジットに接続された脱ガス弁は、圧力差の値を所与の範囲内に維持するために、圧力差に応じて動作させられる。ガスは、脱ガス・コンジットから、超過圧力の下で機能する加圧脱ガス容器に導かれる。容器の下側部分には液体、一般に水があり、液面の上にはガス空間がある。加圧脱ガス容器が水分離チャンバとしても機能するとき、ベント・コンジットは、容器内の所望の超過圧力を維持するための弁を備える。加圧脱ガス容器が、水分離器チャンバの前に配置されたパイプである場合、容器とチャンバとの間の出口コンジットは、容器内の所望の超過圧力を維持するための弁を備える。容器内の超過圧力及び容器の容積は、脱ガス弁に対する急速な圧力変化を減衰させることを可能にする。
【0019】
本方法において使用される第1のポンプはまた、一般に、中濃度パルプのための脱ガス遠心ポンプである。
【0020】
知られているブースターMCポンプ利用においては、オフガスは、水分離器に導かれ、そこから雰囲気又は換気システムに導かれ、背圧は大気圧に近く、それにより脱ガス弁に対する高い圧力差がもたらされる。知られているシステムは急速な変化に十分に反応することができない。新規の脱ガス・システムでは、オフガスは、超過圧力の下で機能している加圧脱ガス容器に導かれる。容器内の圧力は、MCポンプの入口のプロセス圧力に関係する値に調整される。十分な直径と長さとを有するパイプ、又は水分離チャンバであり得る、脱ガス容器内の圧力は、0.1~4.0バール(g)、好ましくは0.3~3バール(g)の範囲に好ましくは調整される。ブースターMCポンプの入口側(吸引側)の圧力は一般に2~5バール(g)である。ブースターMCポンプの入口圧力が約5バール(g)である場合、水分離チャンバ内の圧力は約3.5バール(g)である。
【0021】
パイプ又は水分離チャンバであり得る加圧脱ガス容器の全容量は十分に大きいことが不可欠である。全容量は、一般に0.01~1.0m3、好ましくは0.02~0.2m3の範囲内である。加圧脱ガス容器のガス容量及び圧力は、ガス容量と圧力の両方が制御され得るように、容器の所望の減衰効果に依存する。圧力は、パイプ又は水分離チャンバであり得る加圧脱ガス容器の出口コンジット内の弁によって制御される。水分離器が脱ガス容器として使用される場合、ガス容量は排水コンジット内の液面制御(LIC:Liquid Level Control)回路を用いて制御される。脱ガス容器がパイプであり、それが、水分離器への圧力制御弁をもつ出口コンジットを有する場合、水分離器内の水位はオーバーフロー・パイプを用いて調整され得る。圧力及びガスの変動が減衰させられ得、脱ガス弁を通した繊維漏出が防がれるように、加圧脱ガス容器、すなわちパイプ又は水分離器の全容量は十分に大きくなければならない。
【0022】
オフガス背圧が、より高い圧力の下で機能する新規のシステムにおいて制御されるとき、オフガスの体積流量はより小さくなり、それにより、オフガス流がパルプ繊維を持っていく可能性が低減される。ガス体積流量はより小さいが、圧力差もより低いが、脱ガス弁の開口は、一般に、知られているシステムと同じ範囲内にある。これは、ポンプの脱ガス配管内及び脱ガス弁内のオフガス速度がより小さいことを意味する。脱ガス・システム中のより小さいオフガス速度は、それにより、排出されるガス流中にパルプ繊維が同伴される危険が低減されるので、好ましい。MCポンプの入口側の圧力又はガス容量に変化がある場合、加圧脱ガス容器は、脱ガス弁に対する圧力差を安定に保つことを可能にする。脱ガス容器の減衰効果は、容積と、水位及び機器に設置されたオフガス弁によって制御され得る容器内の背圧とに関係する。
【0023】
超過圧力の下で機能する新規の加圧脱ガス容器は、使用中の脱ガス弁と、脱ガス弁の開口を制御する十分な圧力測定又は圧力差測定とがある場合、すべての既存のMCブースター・ポンプ利用とともに使用され得る。加圧脱ガス容器は、好ましくは、MCポンプの近傍に設置される。
【0024】
新規の方法及び構成は、一般に、パルプが加圧条件でガス状の化学物質を用いて処理される、パルプ処理プロセスにおいて使用される。一般的なプロセスは、酸素脱リグニンと、オゾン又は過酸化物を用いた漂白とである。酸素脱リグニンは、混合ポイントにおいて1~20、好ましくは6~12バール(絶対圧)の圧力範囲内で加圧されて行われるようなアルカリ段を指す。酸素段は、1つの、2つの又はさらにはいくつかのステップを含むことができ、それにより、各反応ステップは、化学混合及び反応容器、又はチューブによって達成される反応保持を含む。プロセスが2つのリアクタ内で実行される場合、第2の(ブースター)ポンプは、一般に、パルプの圧力を増加させるためのリアクタ間のパルプ・ライン内に配置される。
【0025】
本発明による実施例によって、及び付随する概略図を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】新規の方法及び構成が適用され得る接続における酸素脱リグニン・プロセスの概略図である。
【
図2a】ブースターMCポンプの知られている脱ガス構成の概略図である。
【
図2b】ブースターMCポンプの知られている脱ガス構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図3は新規の方法の実施例を示す。ライン30内の6~16%の濃度を有するパルプは、一般に、
図1に示されているように、パルプがその中で酸素脱リグニン・リアクタ5から排出される、パルプ処理リアクタから排出される。ライン30内のパルプは、一般に、脱ガスMCポンプ31によってライン32を通して第2のリアクタ(
図1のリアクタ8)に供給される。ポンプ31は、パルプの圧力を上げるためのブースター・ポンプとして機能する。
【0028】
MCポンプ31において、空気又はガスは、パルプから分離され、次いで、ポンプの入口側と脱ガス・チャンバとの間に一定の圧力差を生成することによってポンプから脱ガス・コンジット33に排出される。一般に、ブースターMCポンプ31の脱ガス・システムは、ポンプの入口30と、ポンプの脱ガス・チャンバに接続された脱ガス・コンジット33とにおける圧力測定からなる。パルプは、コンジット32を通してポンプから除去される。脱ガス・コンジット33(ガス排出コンジット)は脱ガス弁34を備える。ポンプの入口と脱ガス(ガス排出)との間の圧力における差は圧力計によって測定される。差は設定値と比較され、脱ガス弁は、差圧を所望のレベルに維持するために圧力差インジケータ・コントローラ(PDIC)などのコントローラによって制御される。
【0029】
脱ガス・コンジット33は、水分離チャンバでもある加圧脱ガス容器35に接続される。分離されたガスから水がその中で除去される水分離器チャンバには、水分離器容器35内の液面を調整するための排水コンジット37も装備される。水分離器チャンバ35は、換気システム又は雰囲気に接続されたベント・コンジット36を有する。本発明によれば、水分離容器は超過圧力の下で機能している。ベント・コンジットは、水分離チャンバ内の所望の超過圧力を維持するように調整される弁38を備える。圧力は、脱ガス弁34に対する不測の変化を制御し、弱めるために十分に高くなるように調整される。圧力設定点は、水分離チャンバ内の圧力が、0.1~2.0バール(g)、好ましくは0.3~1バール(g)の範囲内になるように調整される。水分離チャンバは、弁34及び38よりも低い高さに配置される。
【0030】
分離されたガスから水がその中で除去される水分離器チャンバには、水分離器容器35内の液面を調整するための排水コンジット37も装備される。水分離器チャンバ内には、チャンバが加圧され得、ガス流がチャンバの上部に向けられ、さらにベント・コンジットに向けられ得るように、液面がなければならない。ガス容量は、排水コンジット37内の液面制御(LIC)回路を用いて制御される。ガス容量はまた、いくつかの制限内で調整される。
【0031】
ブースター・ポンプに供給されたパルプは、変動する量の空気又は他のガスを含んでいることがあり、空気又は他のガスは、ポンプ内で分離され、ガスが好適な量でポンプから排出されない場合、ポンプへ蓄積する傾向がある。水分離容器の与圧は、脱ガス弁34からのオフガスの体積流量を減少させ、それにより、オフガス流がパルプ繊維を持っていく可能性が低くなる。脱ガス弁の開口は、一般に、対応する大気システム中と同じ範囲内にあるが、ガス体積流量はより小さく、圧力差もより低い。これは、ポンプの脱ガス・コンジット33内及び脱ガス弁34内のオフガス速度がより小さいことを意味する。
【0032】
図4は新規の方法の別の実施例を示す。ライン40内の6~16%の濃度を有するパルプは、一般に、
図1に示されているように、パルプがその中で酸素脱リグニン・リアクタ5から排出される、パルプ処理リアクタから排出される。ライン40内のパルプは、脱ガスMCポンプ41によってライン42を通して第2のリアクタ(
図1のリアクタ7)に供給される。ポンプ41は、パルプの圧力を上げるためのブースター・ポンプとして機能する。
【0033】
MCポンプ41内で、空気又はガスは、パルプから分離され、次いで、ポンプ41の入口側と脱ガス・チャンバとの間に一定の圧力差を生成することによってポンプから脱ガス・コンジット43に排出される。一般に、ブースターMCポンプ41の脱ガス・システムは、ポンプの入口40と、ポンプ41の脱ガス・チャンバに接続された脱ガス・コンジット43とにおける圧力測定からなる。パルプは、コンジット42を通してポンプから除去される。脱ガス・コンジット43(ガス排出コンジット)は脱ガス弁44を備える。ポンプの入口と脱ガス(ガス排出)との間の圧力における差は圧力計によって測定される。差は設定値と比較され、脱ガス弁は、差圧を所望のレベルに維持するように圧力差インジケータ・コントローラ(PDIC)45などのコントローラによって制御される。
【0034】
脱ガス・コンジット43は加圧脱ガス容器46に接続される。容器は、水平方向に配置され、十分な直径と長さとを有するパイプ46である。圧力は、容器46の出口コンジット48内の圧力制御弁47によって制御される。容器内の超過圧力及び容器の容積は、脱ガス弁44内の急速な圧力変化を減衰させることを可能にする。圧力制御弁47は、容器46内の所望の超過圧力を維持するように調整される。圧力は、脱ガス弁44に対する不測の変化を制御し、弱めるために十分に高くなるように調整される。圧力設定点は、水分離チャンバ内の圧力が0.1~2.0バール(g)、好ましくは0.3~1バール(g)の範囲内にあるように調整される。
【0035】
加圧脱ガス容器46は、さらに、液面50及び液面の上のガス空間と、チャンバ内の液面を調整するための排水コンジット51とを有する別個の加圧されていない水分離チャンバ49に、コンジット48を通して接続される。水分離器チャンバは、分離されたガスのための出口を提供するためのベント・コンジット52をさらに備える。
【0036】
図4では、脱ガス・コンジット43の少なくとも一部と出口コンジット48の少なくとも一部とが垂直方向に延びる。好ましくは、脱ガス・コンジットの脱ガス弁44は、出口ラインの圧力制御弁47よりも高い高さに配置される。脱ガス容器46は、弁44及び47よりも低い高さに配置される。
【0037】
この新規の構成は、パルプ処理システムにおけるブースターMCポンプの安定した動作を可能にする。
【0038】
本明細書で本発明の少なくとも1つの例示的な実施例を開示したが、改変、代用及び代替が当業者に明らかであり得、本開示の範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解されたい。本開示は、例示的な実施例の任意の適応又は変形形態をカバーするものである。さらに、本開示では、用語「備える/含む(comprise)」又は「備える/含む(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、用語「一(a)」又は「一/1つの(one)」は複数を除外せず、用語「又は(or)」は、いずれか又は両方を意味する。さらに、説明した特性又はステップはまた、本開示又はコンテキストが別段に示唆しない限り、他の特性又はステップと組み合わせて、及び任意の順序で使用され得る。