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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】結晶性二酸化ケイ素の封鎖
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240313BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20240313BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240313BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240313BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C03C10/14 ZNA
C01B33/12 B
A61K47/04
A61K47/10
A61K9/14
A61K47/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021544602
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020052286
(87)【国際公開番号】W WO2020157193
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】19154567.2
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19172386.5
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170654
【氏名又は名称】クヴァルツヴェルケ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツィレス、イェルク ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ケラーマン、マックス
(72)【発明者】
【氏名】パエス-マレッツ、パウル
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0127322(US,A1)
【文献】国際公開第2016/031823(WO,A1)
【文献】特開2006-307229(JP,A)
【文献】特公昭50-018003(JP,B1)
【文献】FUBINI B et al.,Scand J Work Environ Health ,1995年,21(2),p.9-14,WWW.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8929680
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C03C 1/00-14/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/62
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性二酸化ケイ素の粒子を、多価アルコール、カオリン、アルミニウムアルコラート、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質0.05重量%~1.00重量%と一緒に粉砕する工程を含み、前記結晶性二酸化ケイ素のX線回折で測定される結晶質量比率(crystalline mass proportion)が70%以上である、結晶性二酸化ケイ素の粒子の表面改変処理方法。
【請求項2】
前記結晶性二酸化ケイ素の粒子が、粉砕後に0.2μm~90μmの範囲内のd50粒径を有する、及び/又は粉砕後に1μm~300μmの範囲内のd90粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結晶性二酸化ケイ素の粒子が、粉砕後に0.3μm~10μmの範囲内のd50粒径を有する、及び/又は粉砕後に1μm~15μmの範囲内のd90粒径を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多価アルコールが、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにそれらの混合物及びコポリマーからなる群より選択される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多価アルコールのモル質量が90g/モル~50,000g/モルの範囲内である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記物質が、カオリン、アルミニウムアルコラート、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶性二酸化ケイ素が、石英、クリストバライト、又はトリジマイトである、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記表面改変処理が、前記表面改変処理を行わない結晶性二酸化ケイ素の粒子と比べて、結晶性二酸化ケイ素の粒子の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させる、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
結晶性二酸化ケイ素粒子と、多価アルコール、アルミニウムアルコラート、カオリン、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質0.05重量%~1.00重量%とを含み、前記結晶性二酸化ケイ素のX線回折で測定される結晶質量比率(crystalline mass proportion)が70%以上である、結晶性二酸化ケイ素粒子の製剤。
【請求項10】
二酸化ケイ素粒子を97重量%以上含む、請求項に記載の結晶性二酸化ケイ素粒子の製剤。
【請求項11】
前記結晶性二酸化ケイ素粒子が、0.2μm~90μmの範囲内のd50粒径を有する、請求項9又は請求項10に記載の結晶性二酸化ケイ素粒子の製剤。
【請求項12】
前記結晶性二酸化ケイ素粒子が、0.3μm~10μmの範囲内のd50粒径を有する、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の結晶性二酸化ケイ素粒子の製剤。
【請求項13】
前記物質が、カオリン、アルミニウムアルコラート、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の結晶性二酸化ケイ素粒子の製剤。
【請求項14】
結晶性二酸化ケイ素粒子の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を低下させるための多価アルコールの使用であって、前記結晶性二酸化ケイ素のX線回折で測定される結晶質量比率(crystalline mass proportion)が70%以上である、使用
【請求項15】
結晶性二酸化ケイ素粒子の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させるためのカオリンの使用であって、前記結晶性二酸化ケイ素のX線回折で測定される結晶質量比率(crystalline mass proportion)が70%以上である、使用
【請求項16】
結晶性二酸化ケイ素粒子の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させるためのアルミニウムアルコラートの使用であって、前記結晶性二酸化ケイ素のX線回折で測定される結晶質量比率(crystalline mass proportion)が70%以上である、使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性二酸化ケイ素を処理する方法、及びこのようにして得られた結晶性二酸化ケイ素粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
結節性肺線維症である珪肺(silicosis)は肺胞呼吸可能画分が長期かつ集中的に結晶性SiOを吸入することによって引き起こされ得、慢性的な曝露にあって、肺腫瘍の生成を導きうる。したがって、石英及びクリストバライトのA画分は、国際がん研究機関(IARC)によってクラス1のヒト発がん物質として評価されている。しかしながら、特定のSiO種に起因する実際の危険は本質的に、それらの起源、並びにそれらの化学的、熱的及び機械的加工、並びにそれぞれの工業的曝露状態に依存する(IARC (1997), Silica, some silicates, coal dust and para-aramid fibrils. Lyon: IARC, pp. 41-240. ISBN 9 283 21268 1)。
【0003】
SiOマトリクスの化学的及び鉱物学的な構成が同じであるので、表面改変材料は、劇的に異なった毒性ポテンシャルを有しうる(Fubini (1998), Surface chemistry and quartz hazard. Ann Occup Hyg; 42(8): 521-30, and (1998a) Health effects of silica. In "The Surface Properties of Silica". New York: Wiley, pp. 415-464. ISBN 978 0 4719 5332 6)。
【0004】
職業上及び消費者の安全性に従って、結晶性二酸化ケイ素表面を選択的に改変して、表面の記載された望ましくない生物学的活性の不活性化をもたらしつつ、水性溶液による湿潤性の良好さ等の技術的に重要な特性は保持することが望ましい。したがって、表面改変SiO粉の使用は、当局によって定義される職業曝露の限界の遵守に加えて、結晶性SiOを処理又は生成する産業部門における珪肺症からの防御のための危険管理の追加の手段を提示し得る。
【0005】
SiO面上の反応性シラノール基は、病理学的効果の非常に重大な誘因因子として、Schlipk[oe]ter及びBrockhaus(1961)により記載されている。従って、その不活性化は、SiOの加工における危険性の減少につながり得る。
【0006】
特開2005-263566号公報には、シリカダストをポリアルキレングリコールで処理することによってシリカダストの固化を防止する方法が記載されている。記載されたシリカダストは、特に小さい粒径を有する非晶質材料である。
【0007】
前記文献では、ポリビニルピリジンN-オキシド及びアルミニウム塩、例えば乳酸アルミニウムを、石英の表面改変について、ひいては珪肺症の予防について、繰り返し試験した。しかしながら、このような非共有結合物質について十分なin vivo有効性を示すことは、今日まで不可能であった(Weller (1975) Long-term test on rhesus monkeys for the PVNO therapy of anthracosilicosis. Inhaled Part; 4(1): 379-87, 1975; Zhao et al. (1983) Long-term follow-up observations of the therapeutic effect of PVNO on human silicosis. Zentralbl Bakteriol Mikrobiol Hyg B; 178(3): 259-62; Prugger et al. (1984) Polyvinylpyridine N-oxide (Bay 3504, P-204, PVNO) in the treatment of human silicosis. Wien Klin Wochenschr; 96(23): 848-53; Begin et al. (1986) Aluminum lactate treatment alters the lung biological activity of quartz. Exp Lung Res; 10: 385-99; Goldstein and Rendall (1987) The prophylactic use of polyvinylpyridine-N-oxide (PVNO) in baboons exposed to quartz dust. Environ Res; 42(2): 469-81; Dubois et al. (1988) Aluminum inhalation reduces silicosis in a sheep model. Am Rev Respir Dis; 137(5): 1172-9; Dufresne et al. (1994) Influence of aluminum treatments on pulmonary retention of quartz in sheep silicosis. Exp Lung Res; 20(2): 157-68; Begin et al. (1995) Further information on aluminum inhalation in silicosis. Occup Environ Med; 52(11): 778-80)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、望ましくない生物学的効果を生み出す潜在能力がより低い粉体となるよう結晶性SiO粉を改変するためのより効果的な解決策が、依然として必要とされている。
【0009】
本発明の目的は、このような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、結晶性二酸化ケイ素を、多価アルコール、カオリン、アルミニウムアルコラート、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質0.05~1.00重量%と一緒に粉砕する工程を含む、結晶性二酸化ケイ素の処理方法によって達成される。
【0011】
従って、本発明によれば、結晶性二酸化ケイ素は、多価アルコール、アルミニウムアルコラート又はカオリンと一緒に粉砕される。これは、多価アルコール、アルミニウムアルコラート及び/又はカオリンと結晶性二酸化ケイ素及びその新たに破壊された/生成されたばかりの表面との密接な混合及び即時の反応に役立つ。
【0012】
この工程では粉砕工程による結晶性二酸化ケイ素の粒径の実際の変化はあまり重要ではないが、反応性表面を生成するための破壊は重要である。
【0013】
結晶性二酸化ケイ素粉の好適な粒径は、粉砕後のd50粒径で、0.2~90μm、より好ましくは0.3~10μmの範囲内にある。
【0014】
d50は、50体積%が所与のD50値よりも大きく、50体積%がD50値よりも小さい粒径を意味する。このような値はレーザー回折法で求めることができる。
【0015】
典型的には、このような粉砕された二酸化ケイ素材料のd90値はd50値の約2倍~3倍であり、d95値は約5倍の高さである。文献が粒径の上限として1μmを記載している場合、これは、d50値が最大で0.3μmのオーダーであることを意味し、おそらくさらに小さい。このような材料の通常の値は以下の通りである。
【0016】
【数1】
【0017】
0.5μm以下の範囲のd50粒径を有する材料は、機械的プロセスではそれ以上有効に粉砕することができない。
【0018】
好ましくは、本発明により得られる生成物は1μm以上、好ましくは2μm以上のd90を有する。例えば、粉砕後のd90値は、1~30μm、好ましくは1~15μmの範囲であってもよい。
【0019】
本発明で使用される「結晶性二酸化ケイ素」は、結晶質量比率(crystalline mass proportion)が少なくとも70%である二酸化ケイ素を意味する。前記結晶比率(crystalline proportion)はX線回折で測定する。好ましくは、結晶比率は少なくとも75質量%である。
【0020】
二酸化ケイ素の結晶比率の測定は、実験の部に記載された方法によって行うことができる。
【0021】
特に好ましい二酸化ケイ素には、石英、クリストバライト又はトリジマイト、特に粉体の形態のものが含まれる。
【0022】
グリセリン及びポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールは特に、前記多価アルコールとして好適である。これらの物質又はコポリマーの混合物も使用することができる。
【0023】
グリセリン又はポリエチレングリコールの使用が好ましい。
【0024】
適切なポリエチレングリコールとしては、特に、PEG200、PEG300、PEG500、PEG1500、PEG35000、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0025】
好ましくは、前記多価アルコールは92~50,000g/モルの範囲内のモル質量を有する。
【0026】
カオリンはその主成分がカオリナイトであり、10μm未満の粒径(d50)を有する小板状アルモシリケートである白岩である。2μm未満のd50を有するカオリンが好ましい。
【0027】
特に、アルミニウムトリイソプロパノレート(アルミニウムトリスイソプロポキシド)は、適切なアルミニウムアルコラートである。
【0028】
驚くべきことに、結晶性二酸化ケイ素粉の細胞毒性的及び炎症誘発的能力は、本発明による方法によって減少させることができることが示された。
【0029】
細胞毒性的及び炎症誘発的能力は、本出願の実験の部分に記載される方法によって測定され得る。この方法は、試料及びFraunhofer Institut fur Toxikologie und Experimentelle Medizin ITEM (ハノーバー, ドイツ)による標準物質について実施された。
【0030】
本発明はまた、結晶性二酸化ケイ素と、0.05~1.00重量%の多価アルコール、アルミニウムアルコラート、カオリン及びそれらの混合物からなる群より選択される物質と、を含む、結晶性二酸化ケイ素の製剤に関する。
【0031】
本発明によるこのような製剤は、X線蛍光法によって測定した値で、少なくとも97重量%の二酸化ケイ素、好ましくは少なくとも98重量%の二酸化ケイ素、又は99重量%以上の二酸化ケイ素を含む。
【0032】
この二酸化ケイ素の結晶化度は、X線回折法で測定した値で70重量%以上である。
【0033】
本発明による結晶性二酸化ケイ素の製剤はまた、d50として測定して0.2~90μmの範囲内、より好ましくは0.3~10μmの範囲内の好ましいd50粒径を有する。
【0034】
本発明はさらに、結晶性二酸化ケイ素の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させるための多価アルコール、アルミニウムアルコラート及び/又はカオリンの使用、並びに本発明による方法によって得ることができる結晶性二酸化ケイ素の製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】標準材料による膜損傷の誘導を測定するためのLDH放出を示す。
図2】標準と比較した、種々の石英粉試料による膜損傷の誘導を測定するためのLDH放出を示す。
図3】Hprt1遺伝子を参照遺伝子として、ラットの一次肺胞マクロファージにおける各種石英粉試料によるCxcl2遺伝子発現誘導を測定するための、Cxcl2 RTqPCR(Δ-CT法)を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
材料
陰性対照(試料:1):D-MEM細胞培養培地+10% FCS
非粒子陰性/ビヒクル対照として、Dulbecco's Minimum Essential Medium(D-MEM)を、文献(Ziemann et al, 2017, and Ziemann C, Reamon-Buettner SM, Tillmann T et al. (2014b) The SILICOAT project: In vitro and in vivo toxicity screening of quartz varieties from traditional ceramics industry and approaches for an effective quartz surface coating. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol; 387 (Suppl 1): p. 23)に従って、高グルコース(4.5g/l)、Life Technologies GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)のGlutaMaxTM及びピルビン酸ナトリウム(110mg/l)と共に使用した。
【0037】
粒子状陰性対照(試料:2):アルミオキシド(Al
石英で誘導される効果からの全般的な微粒子効果(general particulate effects)を区切ることができるようにするために、酸化アルミニウム(Al;「酸化アルミニウム粉末、<10mm、不純物金属に基づく純度(trace metal basis)99.5%」;Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ミュンヘン)を粒子状陰性対照として一緒に用いた。in vitro研究では、モデル系において、Alには有害な生物学的活性がほとんどないことが示されていた(Ziemann et al., 2009; Ziemann et al., 2014; Ziemann et al., 2017)。
【0038】
陽性対照(石英の効果;試料:3):石英DQ12(DQ12)
石英による効果の陽性対照として、ヨーロッパにおける実験毒性学のための容認された陽性標準(Robock (1973), Standard quartz DQ12 < 5 μm for experimental pneumoconiosis research projects in the Federal Republic of Germany. Ann Occup Hyg; 16: 63-6; Clouter et al. (2001) Inflammatory effects of respirable quartz collected in workplaces versus standard DQ12 quartz: particle surface correlates. Toxicol Sci; 63: 90-8; Creutzenberg et al. (2008) Toxicity of a quartz with occluded surfaces in a 90-day intratracheal instillation study in rats. Inhal Toxicol; 20: 995-1008)を表す、デレントルプ(D[oe]rentrup)であるQuartz DQ12(α-石英87%、非晶質SiO13%;質量平均幾何学的径:2.99±1.53μm;ベルグバウフォルシュン、エッセン、ドイツ)を使用した。DQ12は使用されたモデル系(Monfort et al., 2008; Ziemann et al., 2009, 2014 and 2017)においてDNAと膜損傷を再現性よく誘導し、ラットの肺に炎症反応を引き起こすことができる。
【0039】
石英による効果のクエンチング:乳酸アルミニウム(AL)
石英による生物学的効果を、石英によって媒介されない効果と区別することができるように、各石英粉試料を乳酸アルミニウム(アルミニウム100μM;Sigma-Aldrich Chemie GmbH、ミュンヘン)の有無下で試験した。石英による生物学的影響に対するALの不活性化作用は、ラット由来の一次肺胞マクロファージ(AM)で繰り返し確認できた(Monfort et al., 2008; Ziemann et al., 2009; Ziemann et al., 2014; Ziemann et al., 2017)。
【0040】
陽性対照(膜損傷): Triton X-100
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出に関する実験のために、陽性対照(高対照(high control))及び計算基準(100%細胞毒性)としてTriton X-100で細胞を処理した。この非イオン性界面活性剤で細胞を処理することによって、細胞膜は完全に損傷を受け、存在する通常細胞内に局在する乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)酵素がすべて放出される。
【0041】
【表1】
【0042】
製品群の単位平均粒径d50は2μmであった。
【0043】
無菌試験及びエンドトキシン含量試験
まず、二酸化結晶シリコンについては、それに対応する汚染がin vitro検査で非特異的効果をもたらす可能性があることから、無菌性及び内毒含有量について検討した。特に、炎症誘発性を試験するためのエンドポイントは、アーチファクトの影響を受ける可能性がある。
【0044】
無菌性を試験するために、試料を、広範囲の細菌及び真菌の増殖をサポートするチオグリコール酸培地中、34~35℃で14日間インキュベートした。Staphylococcus aureusを植え付けた培養を陽性対照とした。14日後に目視検査(濁度、形態学的真菌増殖)により評価を行った。
【0045】
加えて、エンドトキシンもまたin vitro実験のアーチファクトとして免疫応答を生成しうるので、独立した実験室(Lonza、ヴェルヴィエ、ベルギー)によって、エンドトキシン含有量を、3段階で希釈して「Kinetic Chromogenic LAL Assay」の方法D(European Pharmacopoeiaの2.6.14節を参照のこと)によって決定した。
【0046】
処理液
AMの前培養物をZiemann et al., 2017に従って調製し、試験材料及び参照材料を、超音波による解凝集後に、二倍濃縮粒子懸濁液として慎重に添加した。LDH放出及びCxcl2遺伝子発現の感受性の最適範囲を解明するために、それぞれの粒子を3つの異なった濃度(25、50及び75μg/cm2)で添加した。予備実験の後、異なる試料間の識別のための充分な応答を確実にすべく、前記範囲を75μm/cmに設定した。
【0047】
すべての試験材料及び参照材料を、乳酸アルミニウム(AL)の存在下及び非存在下で試験した。
【0048】
細胞系
石英に関連するin vitro細胞モデルとしてはラット肺由来の一次肺胞マクロファージ(AM)を採用した。ラット由来の培養AMは石英及びクリストバライトの効果のスクリーニングのための非常に感度の高いin vitroモデル系であり、これは多くの例で示されていよう(例えば Ziemann et al., 2009; Ziemann et al., 2014; Ziemann et al., 2017)。
【0049】
AMの回収及び培養並びに粒子懸濁液の添加及びさらなる培養は、Ziemann et al、2017の説明に従って行った。
【0050】
方法:
X線回折による結晶分画の決定
二酸化ケイ素の結晶分率の測定は、「SOP No. A04 R[oe]ntgendiffraktometrische Quarzfeinstaubbestim-mung gem[ae]B BGIA 8522 - Bestimmung von Cristobalit und Tridymit im A-Staub sowie Analyse kristalliner Kiesels[ae]uren in Materialproben; Dr. M. Kirchner, IGF Analytik Dr. H.-H. Fricke, IGF Analytik T. Faak; IGF Analytik; 04/2014」及び「ISO STANDARD 24095; First edition 2009-12-15; Workplace air-Guidance for the measurement of respirable crystalline silica」と同様に行われた。
【0051】
無機充填剤中の結晶相の同定及び定量は、銅X線管を用いてBragg Brentano geometryを備えたBruker AXS社のD4 Endeavor型X線回折計を用いて、Quarzwerke GmbHの中央実験室で行われる。
【0052】
試料は粉末をプレスしてなるペレット(pressed powder pellets)(これはHerzog社の自動試料調製装置を用いてスチールリング中にプレスされるか、又はスライドガラスを用いて試料ホルダー中に手動でコートされたかのいずれかであった)として測定された。
【0053】
ディフラクトグラムの定性的評価は、ICDD構造データベースPDF-2(1998年リリース)を使用して、Bruker AXS社のソフトウェアDIFFRAC.EVAバージョン4を使用して行った。
【0054】
定量分析は、Rietveld法(Bruker AXS社のTOPAS 5)、添加法(DIN 32633に従う)、又は較正(Bruker AXS社のDIFFRAC.DQUANTバージョン1)によって行った。
【0055】
乳酸脱水素酵素(LDH)放出
LDH放出
ラットの一次肺胞マクロファージを試験材料及び参照材料と共にインキュベートした後、インキュベーション上清中のLDH活性を比色法によって測定した。
【0056】
細胞培養上清において増加した酵素活性が検出されることは、反応性石英粉との直接的な石英-細胞膜相互作用によって誘導され得る、細胞膜に対する損傷があることを示す。
【0057】
容易に測定でき、信頼性があることに加えて、このエンドポイントは肺洗浄におけるIn vitro及び初期In vivoエンドポイントの両方として用いることができ、したがって、In vitro及びIn vivoで生成されたデータ間の相関を可能にするという利点を提供する。
【0058】
Roche Applied Science (マンハイム、ドイツ)社の「細胞毒性検出キット(LDH)」を使用して、製造業者の指示書に従ってLDH活性を決定した。
【0059】
データは、それぞれ3連で分析された、3つの独立した培養物の平均±SDを表す。
【0060】
最後に、Triton X-100処理によって完全に溶解された細胞は、細胞毒性パーセントを計算するための陽性対照として供された。処理された試料からの全ての測定値は最終的にTriton X-100で処理された細胞の値を基準とした値である。
【0061】
Cxcl2遺伝子発現
Cxcl2 RTqPCR(Δ-CT法)
異なる表面改変を有する石英粉試料の生物学的活性を評価するために、炎症誘発性「C-X-Cモチーフケモカインリガンド2」(Cxcl2)遺伝子の遺伝子発現をRT-qPCRにより測定することを、さらなるエンドポイントとして選択した。
【0062】
炎症誘発性タンパク質Cxcl2は、活性化マクロファージによって産生され、多形核好中球(PMN)に対する誘引作用を有する。PMNの数及びパーセンテージは、重要なin vivoエンドポイントである。例えば、石英に曝露された動物の場合、肺洗浄液中のPMNの計数によって、肺中における石英の有害な生物学的活性の程度を高度に明らかにする方法で推定することができる。これは既にEUのプロジェクト(SILICOAT)で示されている。石英依存性Cxcl2(MIP-2)応答については、Driscoll et al. (1996) Alpha-quartz-induced chemokine expression by rat lung epithelial cells: effects of in vivo and in vitro particle exposure. Am J Pathol. 149(5): 1627-37も参照のこと。
【0063】
24時間の初期増殖期間の後、AMを試験材料及び参照材料と共に4時間インキュベートした。その後、Cxcl2及びHprt1遺伝子発現をRT-qPCR法によって測定し算出した。データは、条件当たり3回の技術的反復の手段から生じる。評価は、線形性及び効率も試験した比較CT法(Schmittgen TD, Livak KJ. (2008) Analyzing real-time PCR data by the comparative C(T) method. Nat Protoc. 3:1101-1108)) に従って行った。
【0064】
プライマーに関する情報を以下の表に列挙する。
【0065】
【表2】
【0066】
統計処理
LDH放出の場合の結果は、3連又は2連で順次測定された3つの培養物からの平均±関連標準偏差(SD)としてグラフで表される。
【0067】
統計解析には、SigmaStat3.1(登録商標)ソフトウェア(Systat Software Inc.、ポイントリッチモンド、アメリカ合衆国)を使用した。結果の統計的評価は、スチューデントt検定を用いて行った。対応無しの両側t検定(two-sided unpaired t-test)を、粒子状陰性対照に対しての統計的有意差の決定、並びに、AL処理培養物とAL未処理培養物との間の有意差及び基準石英37797と表面改変石英粉試料との間の有意差の評価の両方に適用した。誤差確率5%未満(p<0.05)で、結果を統計的に有意と評価した。
【0068】
結果及び議論
最初に、送達された12個の石英粉試料すべてについて、無菌性及びエンドトキシン含量を試験した。これは対応する汚染が石英粉にあるとin vitro試験において人工生物学的効果をもたらす可能性があるためである。
【0069】
自社で実施した無菌試験及びエンドトキシン試験によれば、試験した石英粉試料のいずれも、細菌、真菌又はエンドトキシンによる汚染を示さなかった。したがって、対応する汚染物質に基づく人為的な生物学的効果はほぼ排除される。
【0070】
パイロット実験において、一方では基準石英(37797;粉砕媒体なしで粉砕されたばかりの石英粉)の生物学的活性をin vitroモデル系(AM)において特徴解析し、さらなる測定のための最適試験濃度を決定した。
【0071】
基準石英粉37797、38361(DQ12QW)及びDQ12(Fraunhofer ITEM)は陽性対照として含まれ、Al(75μg/cm2)は粒子状陰性対照として含まれた。
【0072】
石英粉試料37797及び38361に関して、75μg/cm2の濃度が全ての実験において求められるべきであることが明らかになったが、それはこの濃度においてのみ、粒子状陰性対照(2.88[2^-CT×10^2])と比較しての、37797(36.43[2^-CT×10^2])によるCxcl2遺伝子発現の有意な増大を見出すころが出来たからである。該増大は次いでALの存在(2.77[2^-CT×10^2])によって完全に阻害され得、これはこの作用が石英に特異的なものであること(quartz specificity of the effect)を示唆した。
【0073】
最適化された試験濃度で、粉砕/表面改変において相異なる合計12種の石英粉の細胞毒性的及び炎症誘発的能力について、比較in vitroスクリーニングを行った。LDH放出及びCxcl2遺伝子発現を、個々の方法の一定の制限に関わらず明確な陳述ができるように評価した。
【0074】
さらに、粒子状陰性対照Alと比較した有意性試験と、AL処理と未処理の石英粉試料間の有意差の試験を、効果の実際の石英依存性に関する情報を得るために行った。
【0075】
乳酸脱水素酵素(LDH)放出
AMを75μ/cm2の試験物質及び標準物質と4時間インキュベートした後、エンドポイントであるLDH放出は非常に明瞭な画像をもたらした。陰性対照(細胞培養培地)及び粒子状陰性対照(Al)は5.3±0.10%及び4.6±0.29%という低い細胞毒性値を有し、これは細胞の良好な活力を示したが、「活性」試料(DQ12 33797、38423及び38361)についてはすべて、粒子状陰性対照(P≦0.001;図2参照)に比べて、インキュベーション上清において有意に高いLDH活性が検出できた。陽性対照(DQ12)及び試料38361(DQ12 QW-陽性ブランク)は、細胞毒性が61.6±0.27%及び48.7±2.95%で、最も重篤な膜損傷を誘導した。試料38423(エアジェットミルでオートジェニックに(autogenically)粉砕されたばかりの石英)も、予想されたように、30.1±6.25%という高い細胞毒性を示した。主測定(図2)で16.0±0.42%の細胞毒性を有する基準石英粉37797(ボールミルで粉砕されたばかりの石英)は、活性濃度範囲を決定するための最初の測定(図1)(39.4±0.38%)よりも明らかに活性が低く、これはエイジング効果を示すものでありうる。しかしながら、残存する膜損傷効果の強度は、表面改変試料との明確な区別を可能にした。「活性」石英粉試料の膜損傷効果は、細胞をALで並行処理することにより、ほぼ完全に抑制することができた。
【0076】
試料37935(処理剤:ポリグリコール35000S)は、粒子状陰性対照Al及び陰性対照(粒子なし)以上の細胞毒性を示さなかった。38174(処理剤:グリセリン)も負の効果を示さず、これに38193(処理剤: Alトリス-イソプロポキシド)及び38272(処理剤:カオリンKBE-1)が続いた。
【0077】
Cxcl2遺伝子発現
石英粉で処理した培養物のCxcl2遺伝子発現をさらなるエンドポイントとして測定した。
【0078】
純粋なCxcl2遺伝子発現データを考慮すると、定義上「活性」であった石英粉試料全て(DQ12、37797、38423及び38361)が、Cxcl2遺伝子発現の明確な誘導を示した(図3)。特に、基準石英37797(処理剤なしでボールミルで粉砕したばかりの石英)では、粒子状陰性対照Al(2.88[2^-CT×10^2])と比べて、Cxcl2遺伝子発現が36.43[2^-CT×10^2]と非常に有意に増大し、これはALによってほぼ完全に阻害された(2.77[2^-CT×10^2])。非粒子状陰性対照の示した遺伝子発現は3.43[2^-CT×10^2]であった。試料38361のCxcl2遺伝子発現がDQ12と比べて明らかに弱いという結果は、試料のエイジングによって説明されよう。試料38361は、両方の細胞毒性実験において既にDQ12と比較して応答がより低かった(図1及び図2)。Cxcl2遺伝子発現において、この効果は、さらに程度が強調されて見える。
【0079】
このように、Cxcl2遺伝子発現のデータによれば、表面改変石英粉を非常に良好に差異化することが可能であった。陽性対照37797とは対照的に、試料37935(処理剤:ポリグリコール35000S)では2.68[2^-CT×10^2]、試料38174(処理剤:グリセリン)では3.65[2^-CT×10^2]、試料38193(処理剤:Alトリス-イソプロポキシド)では2.22[2^-CT×10^2]、試料38272(処理剤:カオリンKBE-1)では1.95[2^-CT×10^2]、試料38328(処理剤:3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物)では2.54[2^-CT×10^2]、とCxcl2遺伝子発現の誘導が非常に低く、すなわち炎症誘発能力が低かった。対照的に、試料38132(処理剤:テトラエチルシリケート)では26.39[2^-CT×10^2]、試料38157(処理剤:シリカゾル)では18.02[2^-CT×10^2]、試料38287(ε-カプロラクタム)では10.45[2^-CT×10^2]、とCxcl2遺伝子発現の有意な増加が明らかであり、これはすべての場合においてALによって有意に阻害することが出来、したがって、石英によるメカニズムに基づくものであるようであった。
【0080】
結論
両方のin vitroエンドポイント(一次効果としてのLDH細胞毒性及び二次効果としてのCxcl2遺伝子発現)を考慮すれば、ポリグリコール(試料37935)又はグリセリン(試料38174)を用いた結晶性SiOの処理は、同じ良好なクエンチ活性(quenching activity)を示した。従って、ラットの肺胞マクロファージに対するかかる改変結晶性SiO粒子の負の効果は、もはやin vitroにおいて検出できなかった。すなわち、上述の表面改変は、陰性対照(培地及びAl)と同じ大きさの効果を以って、粒状SiOの細胞毒性的及び炎症誘発的能力の最高度の低減を仲介した。また、陰性の意味で活性であった(すなわち、生物学的に有害な効果を生じる)SiO表面の部位の良好な「封鎖能力(sequestering potential)」が、アルミニウム化合物であるAlトリス-イソプロポキシド(試料38913)及びカオリンKBE-1(試料38272)によって示された。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
項1:結晶性二酸化ケイ素を、多価アルコール、カオリン、アルミニウムアルコラート、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質0.05重量%~1.00重量%と一緒に粉砕する工程を含む、結晶性二酸化ケイ素を処理するための方法。
項2:前記結晶性二酸化ケイ素が、粉砕後に、0.2μm~90μmの範囲内、より好ましくは0.3μm~10μmの範囲内のd50粒径を有する、及び/又は粉砕後に、1μm~300μmの範囲内、好ましくは1μm~15μmの範囲内のd90粒径を有する、項1に記載の方法。
項3:前記多価アルコールが、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにそれらの混合物及びコポリマーからなる群より選択される、項1又は項2に記載の方法。
項4:前記多価アルコールのモル質量が90g/モル~50,000g/モルの範囲内である、項1~項3のいずれか一項に記載の方法。
項5:前記結晶性二酸化ケイ素の結晶比率(crystalline proportion)が70%以上である、項1~項4のいずれか一項に記載の方法。
項6:前記結晶性二酸化ケイ素が、石英、クリストバライト、又はトリジマイトである、項1~項5のいずれか一項に記載の方法。
項7:前記処理が、結晶性二酸化ケイ素の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させる、項1~項6のいずれか一項に記載の方法。
項8:結晶性二酸化ケイ素と、多価アルコール、アルミニウムアルコラート、カオリン、及びそれらの混合物からなる群より選択される物質0.05重量%~1.00重量%とを含む、結晶性二酸化ケイ素の製剤。
項9:二酸化ケイ素を97重量%以上含む、項8に記載の結晶性二酸化ケイ素の製剤。
項10:結晶比率が70%以上である二酸化ケイ素を含む、項8又は項9に記載の結晶性二酸化ケイ素の製剤。
項11:前記結晶性二酸化ケイ素が、0.2μm~90μmの範囲内、より好ましくは0.3μm~10μmの範囲内のd50粒径を有する、項8、項9又は項10に記載の結晶性二酸化ケイ素の製剤。
項12:結晶性二酸化ケイ素の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を低下させるための多価アルコールの使用。
項13:結晶性二酸化ケイ素の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させるためのカオリンの使用。
項14:結晶性二酸化ケイ素の細胞毒性的及び炎症誘発的能力を減少させるためのアルミニウムアルコラートの使用。
項15:項1~項7のいずれか一項に記載の方法によって得られる結晶性二酸化ケイ素の製剤。
図1
図2
図3
【配列表】
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