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特許7453998有機金属化合物を含む絶縁体を有するマグネットワイヤ
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  • 特許-有機金属化合物を含む絶縁体を有するマグネットワイヤ 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】有機金属化合物を含む絶縁体を有するマグネットワイヤ
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20240313BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01B7/02 A
H01F5/06 Q
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021576727
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 US2020036940
(87)【国際公開番号】W WO2020263569
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】16/449,744
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598077037
【氏名又は名称】エセックス フルカワ マグネット ワイヤ ユーエスエイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】スコット テッド ジョリー
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03577346(US,A)
【文献】特開2007-246572(JP,A)
【文献】特開昭57-002361(JP,A)
【文献】特開2014-049397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01F 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットワイヤであって、
導体と、
前記導体の周りに形成されたポリマーエナメル絶縁体の少なくとも1つの層であって、前記ポリマーエナメル絶縁体は、ベースポリマー材料中に分散されたフィラーを備える、前記導体の周りに形成されたポリマーエナメル絶縁体の少なくとも1つの層と、を備え、
ここで、前記フィラーは、遷移金属から形成された有機金属化合物を備え、前記有機金属化合物は、カルバメート塩、チオカルバメート塩、チオホスフェート塩または金属酸化物酸のアミン塩のうちの1つを含み、
ここで、前記フィラーは、前記ポリマーエナメル絶縁体の5.0重量パーセント未満を構成する、
マグネットワイヤ。
【請求項2】
前記有機金属化合物は、完全可溶性化合物である、請求項1に記載のマグネットワイヤ。
【請求項3】
前記有機金属化合物は、金属酸化物酸のアミン塩を含み、前記金属酸化物酸は、モリブデン酸、タングステン酸またはクロム酸のうちの1つを含む、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項4】
前記ベースポリマー材料は、ポリイミドまたはポリアミドイミドのうちの1つを含む、請求項1に記載のマグネットワイヤ。
【請求項5】
前記ポリマーエナメル絶縁体の少なくとも1つの層は、ポリマーエナメル絶縁体の複数の層を構成する、請求項1に記載のマグネットワイヤ。
【請求項6】
前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、前記ベースポリマー材料の電圧よりも少なくとも5パーセント高い部分放電開始電圧を有する、請求項1に記載のマグネットワイヤ。
【請求項7】
マグネットワイヤであって、
導体と、
前記導体の周りに形成された充填されたポリマーエナメル絶縁体であって、前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、ベースポリマー材料と遷移金属から形成された完全可溶性有機金属化合物とを備える、前記導体の周りに形成された充填されたポリマーエナメル絶縁体と、を備え、
ここで、前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、前記ベースポリマー材料の電圧よりも少なくとも5パーセント高い部分放電開始電圧を有する、
マグネットワイヤ。
【請求項8】
前記有機金属化合物は、金属酸化物酸のアミン塩を含む、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項9】
前記金属酸化物酸は、モリブデン酸、タングステン酸またはクロム酸のうちの1つを含む、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項10】
前記有機金属化合物は、カルバメート塩、チオカルバメート塩またはチオホスフェート塩のうちの1つを含む、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項11】
前記有機金属化合物は、前記ポリマーエナメル絶縁体の5.0重量パーセント未満を構成する、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項12】
前記ベースポリマー材料は、ポリイミドまたはポリアミドイミドのうちの1つを含む、請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項13】
前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、第1の絶縁層を備え、
前記導体の周りに形成された第2の絶縁層をさらに備える、
請求項に記載のマグネットワイヤ。
【請求項14】
マグネットワイヤであって、
導体と、
前記導体の周りに形成された充填されたポリマーエナメル絶縁体であって、前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、遷移金属を備える完全可溶性有機金属化合物で充填されたポリイミドを備える、前記導体の周りに形成された充填されたポリマーエナメル絶縁体と、を備え、
ここで、前記充填されたポリマーエナメル絶縁体は、前記ポリイミドよりも少なくとも5パーセント高い部分放電開始電圧を有する、
マグネットワイヤ。
【請求項15】
前記有機金属化合物は、モリブデン酸、タングステン酸またはクロム酸のうちの1つのアミン塩を含む、請求項14に記載のマグネットワイヤ。
【請求項16】
前記有機金属化合物は、前記充填されたポリマーエナメル絶縁体の5重量パーセント未満を構成する、請求項14に記載のマグネットワイヤ。
【請求項17】
前記有機金属化合物は、カルバメート塩、チオカルバメート塩またはチオホスフェート塩のうちの1つを含む、請求項14に記載のマグネットワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年6月24日に出願された「Magnet Wire with Insulation Including an Organometallic Compound」と題された米国特許出願第16/449,744号の優先権を主張し、参照によりその内容の全体を本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本開示の実施形態は、概して、マグネットワイヤに関し、より具体的には、有機金属フィラーを含むポリマーエナメルから形成された絶縁体を含むマグネットワイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
巻線または磁気巻線とも呼ばれるマグネットワイヤは、インバータ駆動モーター、モータースタータージェネレータ、変圧器等の、多種の電気機械およびデバイスで利用される。マグネットワイヤは、典型的に、中心導体の周囲に形成されたポリマーエナメル絶縁体を含む。エナメル絶縁体は、マグネットワイヤにワニスを塗布し、オーブン内でワニスを硬化させて溶媒を除去することによって形成され、それにより、薄いエナメル層を形成する。このプロセスは、目的のエナメルのビルドまたは厚さが達成されるまで繰り返される。エナメル層を形成するために利用されるポリマー材料は、特定の最高動作温度での使用を意図される。加えて、電気デバイスは、ワイヤの絶縁体を破壊または劣化させ得る比較的高い電圧条件に供され得る。例えば、インバータは、特定のタイプのモーターに入力される可変周波数を生成し得、可変周波数は、モーターの早期巻線不良を引き起こす急峻な波形を示し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤ絶縁体の劣化の結果としての早期不良を減らすための試みがなされてきた。これらの試みは、電気機械およびデバイスの取扱いおよび製造中におけるワイヤおよび絶縁体への損傷を最小限にすることならびに必要に応じてより短いリード長を使用することを含んでいた。さらに、リアクトルコイルまたはインバータドライブとモーターとの間のフィルターは、インバータドライブ/モーターの組み合わせによって生成される電圧スパイクおよび高周波を低減することによって、巻線の寿命を延ばし得る。しかしながら、このようなコイルは高価であり、システムの全体的なコストを増加させる。絶縁体の量を増やすと、電気デバイスの巻線の寿命が向上し得るが、このオプションは高価であり、デバイス内の銅の隙間の量を減らし、それによってモーターの効率が低下する。加えて、特定の数のエナメル層に達すると、層間剥離が発生し得る。それゆえ、電気デバイス内に存在するより高い温度および/または電圧に長期間耐えるように設計された絶縁体を有する改良されたマグネットワイヤについての好機が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
詳細な説明は、添付の図を参照して示される。図では、参照番号の左端の数字は、参照番号が最初に表示される図を識別する。異なる図で同じ参照番号を使用している場合は、同様または同一の事柄を提示する。しかしながら、種々の実施形態は、図に示されているもの以外の要素および/または構成要素を利用し得る。また、図面は、本明細書に記載の例示的な実施形態を説明するために提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0006】
図1A】本開示の種々の実施形態に従って形成され得る例示的なマグネットワイヤ構造の断面図である。
図1B】本開示の種々の実施形態に従って形成され得る例示的なマグネットワイヤ構造の断面図である。
図2A】本開示の種々の実施形態に従って形成され得る例示的なマグネットワイヤ構造の断面図である。
図2B】本開示の種々の実施形態に従って形成され得る例示的なマグネットワイヤ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の特定の実施形態は、従来のマグネットワイヤと比較して向上したコロナ耐性を有するポリマーエナメル絶縁体を含むマグネットワイヤに関する。本開示の他の実施形態は、向上したコロナ耐性を有するポリマーエナメル絶縁体を含むマグネットワイヤを製造する方法に関する。エナメル絶縁体を形成するために、必要に応じて多種多様な適切なポリマー材料を利用し得る。例えば、特定の実施形態では、ポリマーエナメル絶縁体は、ポリイミドを含み得る。本開示の一態様によれば、フィラー材料は、ポリマーエナメル絶縁体を形成する前に、ベースポリマー材料または樹脂に添加され得る。加えて、フィラーは、1つ以上の有機金属化合物を含み得る。フィラーの添加は、マグネットワイヤ上に充填されたポリマーエナメルから形成された1つ以上のポリマーエナメル層のコロナ耐性を向上し得る。結果として、マグネットワイヤおよび/またはマグネットワイヤを組み込んだ電気デバイス(例えば、モーターなど)の寿命は、部分放電および/または他の悪条件の下で増加または延長され得る。
【0008】
様々な実施形態において、多種多様な適切な有機金属化合物または材料をフィラーとして利用し得る。さらに、特定の実施形態において、有機金属化合物は、完全可溶性化合物であり得る。言い換えると、有機金属化合物が溶媒に混合または懸濁されたポリマーベース材料と組み合わされるとき、有機金属化合物は完全に溶解または液化される。特定の実施形態では、有機金属化合物は、金属酸化物酸のアミン塩を含み得る。例えば、有機金属化合物は、モリブデン酸、タングステン酸またはクロム酸のアミン塩を含み得る。他の実施形態では、有機金属化合物は、カルバメート、チオカルバメートまたはチオホスフェートを含み得る。他の適切な有機金属化合物を利用し得る。
【0009】
加えて、特定の実施形態では、単一のタイプの有機金属化合物または材料をフィラーとして利用し得る。他の実施形態では、2つ以上の異なる有機金属化合物の組み合わせをフィラーとして利用し得る。2つ以上の有機金属化合物が利用される場合、多種多様な適切な配合または混合比が、様々な成分の化合物のために利用され得る。例えば、2つ以上の成分の化合物は、多種多様な適切な重量比で配合され得る。
【0010】
フィラー材料はまた、任意の適切な比でベースポリマー材料に添加され得る。例えば、特定の実施形態では、充填されたポリマーエナメル絶縁層中のフィラーの総量は、約1重量パーセント(1.0%)から約10重量パーセント(10%)の間であり得る。他の実施形態では、フィラーの総量は、約3重量パーセント(3.0%)から約5重量パーセント(5.0%)の間であり得る。他の様々な実施形態では、フィラーの総量は、約1、2、3、4、5、6、7、7.5、8、9または10重量パーセント、上記の値の任意の2つの間の範囲に含まれる量または上記の値のうちの1つによって最小端または最大端のいずれかに制限される範囲に含まれる量であり得る。例えば、フィラーの総量は、充填されたポリマーエナメル絶縁体の5重量パーセント(5.0%)未満であり得る。
【0011】
本開示の実施形態は、本開示の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下により完全に説明されよう。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施され得、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底しており、完全なものであり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0012】
ここで図面を参照すると、図1Aは、エナメル絶縁体でコーティングされた導体110を含み得る、例示的な円形マグネットワイヤ100の断面端面図を示す。任意の適切な数のエナメル層を必要に応じて利用し得る。示されるように、ベースコート120およびトップコート130などの複数のエナメル絶縁層は、導体110の周りに形成され得る。他の実施形態では、エナメル絶縁の単層を利用し得る。さらに他の実施形態では、2層を超えるエナメル絶縁体を利用し得る。さらに、1つ以上のエナメル層は、適切なフィラーを含み得、フィラーは、少なくとも1つの有機金属化合物または材料を含み得る。
【0013】
同様に、図1Bは、例示的な長方形マグネットワイヤ150の断面端面図を示し、これは、エナメル絶縁体でコーティングされた導体160を含み得る。任意の適切な数のエナメル層を必要に応じて利用し得る。示されるように、ベースコート170およびトップコート180などの複数のエナメル絶縁層は、導体160の周りに形成され得る。他の実施形態では、エナメル絶縁の単層を利用し得る。さらに他の実施形態では、2層を超えるエナメル絶縁体を利用し得る。さらに、1つ以上のエナメル層は、適切なフィラーを含み得、フィラーは、少なくとも1つの有機金属化合物または材料を含み得る。図1Aの円形ワイヤ100を、以下で詳しく説明する。しかしながら、図1Bの長方形ワイヤ150の様々な構成要素は、図1Aの円形ワイヤ100について説明したものと同様であり得ることが理解されよう。
【0014】
導体110は、多種多様な適切な材料または材料の組み合わせから形成され得る。例えば、導体110は、銅、アルミニウム、アニールされた銅、無酸素銅、銀メッキ銅、ニッケルメッキ銅、銅クラッドアルミニウム(「CCA」)、銀、金、導電性合金、バイメタルまたは他の適切な導電性材料から形成され得る。加えて、導体110は、図示の円環状または円形の断面形状等の任意の適切な断面形状で形成され得る。他の実施形態では、導体110は、(図1Bに示されるような)長方形、正方形、楕円形、卵様楕円形または任意の他の適切な断面形状を有し得る。長方形のような特定の断面形状に所望されるように、導体は、丸みを帯びた、鋭い、滑らかな、湾曲した、角度がついた、切頭状のまたは他の形状の角を有し得る。導体110はまた、任意の適切なゲージ、直径、高さ、幅、断面積等のような任意の適切な寸法で形成され得る。
【0015】
図示のベースコート120およびトップコート130などの、任意の数のエナメル層は、導体110の周りに形成され得る。エナメル層は、通常、ポリマーワニスを導体110に塗布し、次いで、導体110を適切なエナメルオーブンまたは炉で焼き付けすることによって形成される。ポリマーワニスは、通常、1つ以上の溶媒に懸濁された熱硬化性ポリマー材料または樹脂を含む。熱硬化性または熱硬化されたポリマーは、軟質の固体または粘性の液体(例えば、粉末等)から不溶性のまたは架橋された樹脂に不可逆的に硬化し得る材料である。熱硬化性ポリマーは、通常、溶融プロセスによってポリマーが分解または劣化するため、押し出しを介する塗布のために溶融することができない。したがって、熱硬化性ポリマーを溶媒に懸濁してワニスを形成し、これを塗布および硬化してエナメルフィルム層を形成し得る。ワニスを塗布した後、焼き付けまたは他の適切な硬化の結果として溶媒が除去され、それによって固体のポリマーエナメル層が残る。必要に応じて、エナメルの複数の層を導体110に塗布して、所望のエナメルの厚さまたはビルド(例えば、導体および任意の下層の厚さを差し引くことによって得られるエナメルの厚さ)を達成し得る。各エナメル層は、同様のプロセスを利用して形成され得る。言い換えると、第1のエナメル層は、例えば、適切なワニスを塗布し、導体をエナメルオーブンに通すことによって形成され得る。続いて、第2のエナメル層は、適切なワニスを塗布し、導体を同じエナメルオーブンまたは異なるエナメルオーブンのいずれかに通すことによって、形成され得る。実際、エナメルオーブンは、オーブンを通るワイヤの複数の通過を容易にするように構成され得る。種々の実施形態で望まれるように、1つ以上のエナメルオーブンに加えてまたはその代替として、他の硬化装置を利用し得る。例えば、1つ以上の適切な赤外光、紫外線、電子ビーム、および/または他の硬化システムを利用し得る。
【0016】
必要に応じて、ベースコート120およびトップコート130などのエナメルの各層は、任意の適切な数の副層で形成され得る。例えば、ベースコート120は、単一のエナメル層、あるいは、所望のビルドまたは厚さが達成されるまで形成される複数のエナメル層または副層を含み得る。同様に、トップコート130は、1つ以上の副層を含み得る。エナメルの各層および/または総エナメルビルドは、約0.0002、0.0005、0.007、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.012、0.015、0.017、または0.020インチの厚さ、前述の値の任意の2つの間の範囲に含まれる厚さ、および/または前述の値の1つによって最小端または最大端のいずれかに制限される範囲に含まれる厚さ等の任意の所望の厚さを有し得る。
【0017】
エナメル層を形成するために、必要に応じて、多種多様な異なるタイプのポリマー材料を利用し得る。適切な熱硬化性材料の例には、ポリイミド、ポリアミドイミド、アミドイミド、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリケトンなどが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、少なくとも1つのエナメル層は、ポリイミド(「PI」)を含み得る。必要に応じて、複数のポリイミド層を形成し得る。例えば、ベースコート120およびトップコート130の両方は、PI層として形成され得る。他の実施形態では、1つ以上のPI層は、他のタイプの材料から形成されたエナメル層と組み合わせられ得る。例えば、ベースコート120は、PIから形成され得、一方、トップコート130は、別のポリマー材料またはポリマー材料の配合を含む。加えて、本開示の一態様によれば、および以下でより詳細に説明されるように、1つ以上のエナメル層(例えば、PIエナメル層など)は、適切なフィラーを含み得る。
【0018】
特定の実施形態では、ベースコート120は、充填されたエナメル(例えば、充填されたPIエナメルなど)の1つ以上の層を含み得、充填されていないエナメル(例えば、ポリアミドイミドエナメル、充填されていないPIエナメルなど)を含むトップコート130は、ベースコート120の上方に形成され得る。他の実施形態では、トップコート130は、充填された層として形成され得る。必要に応じて、ベースコート120とトップコート130との間の任意の適切なビルドまたは厚さの比を利用し得る。特定の実施形態では、ベースコート120とトップコート130との間の厚さまたはビルド比は、約95/5から約85/15の間であり得る。言い換えると、トップコート130の厚さまたはビルドは、組み合わされたエナメル絶縁体の全体の厚さまたはビルドの約5.0パーセントから約15.0パーセントを構成し得る。他の実施形態では、トップコート130は、組み合わされたエナメル絶縁体の全体の厚さまたはビルドの約2、3、5、7、10、12、15、20または25パーセントを構成し得る。
【0019】
別個のベースコート120およびトップコート130が図1Aに示されているが、他の実施形態では、ワイヤは、トップコート130なしで形成され得る。ワイヤの周りに形成されるエナメルは、すべて同様の構造を有するポリマーエナメル材料の1つ以上の層を含み得る。例えば、充填されたPI層などの1つ以上の充填されたエナメル層は、導体110の周りに形成され得る。実際、ポリマーベース材料にフィラーとして添加される有機金属化合物の混和性のために、トップコート130は、必要に応じて使用される。
【0020】
図2Aは、例示的な3コート円形マグネットワイヤ200の断面端面図を示す。図2Aに示す実施形態は、ポリマーベースコート220によって囲まれた導体210、ベースコート220上に配置された第1のポリマー層230および第1のポリマー層230上に配置された第2のポリマー層240を含む。同様に、図2Bは、例示的な3コート長方形マグネットワイヤ250の断面端面図を示す。ワイヤ250は、ポリマーベースコート270によって囲まれた導体260、ベースコート270上に配置された第1のポリマー層280および第1のポリマー層280上に配置された第2のポリマー層290を含む。図2Aの円形ワイヤ200を、以下により詳細に説明する。しかしながら、図2Bの長方形ワイヤ250の様々な構成要素は、図2Aの円形ワイヤ200について説明したものと同様であり得ることが理解されよう。
【0021】
図2Aのワイヤ200に関して、導体210は、図1Aを参照して上記で説明された導体110と同様であり得る。加えて、多種多様な適切なポリマーを利用して、様々なエナメルの層220、230、240を形成し得る。適切な熱硬化性材料の例は、ポリイミド、ポリアミドイミド、アミドイミド、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリサルファイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリケトンなどを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、少なくとも1つのエナメル層は、ポリイミド(「PI」)を含み得る。加えて、ベースコート220、第1のポリマー層230および第2のポリマー層240の各々は、任意の所望の数の副層を含み得る。特定の実施形態では、複数のPI層を形成し得る。例えば、3つの層220、230、240はすべて、PIから形成され得る。
【0022】
他の実施形態では、1つ以上のPI層は、他のタイプの材料から形成されたエナメル層と組み合わせられ得る。例えば、ベースコート220は、PAIまたは導体210と導体の周りに形成された絶縁体との間の強化された接着を促進する別のポリマー材料から形成され得る。次に、第1のポリマー層230は、任意の適切な数の充填されたPI層から形成され得る。次に、第2のポリマー層240は、充填されたPI層の上方にトップコートとして形成され得る。例えば、第2のポリマー層240は、図1Aを参照して上述したトップコート130と同様の充填されていないトップコートとして形成され得る。
【0023】
別の例として、ベースコート220および第1のポリマー層230は、PI層として形成され得る。例えば、ベースコート220は、導体210への強化された接着を促進するPIから形成され得る。特定の実施形態において、ベースコート220は、第1のポリマー層230中で使用されるPIとは異なる配合を有するPIから形成され得る。例えば、ベースコート220は、二無水物成分(例えば、ピロメトライト二無水物またはPMDA)を、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(「BAPP」)を有するジアミン成分と反応させることによって形成されるPIを含み得る。第1のポリマー層230は、二無水物成分を4,4’-オキシジアニリン(「ODA」)と反応させることによって形成されたPIを含み得る。次に、第2のポリマー層240は、充填されたPI層の上方にトップコートとして形成され得る。例えば、第2のポリマー層240は、図1Aを参照して上述したトップコート130と同様のトップコートとして形成され得る。
【0024】
実際、エナメルの多種多様な適切な組み合わせは、任意の適切な材料および/または材料の組み合わせから、必要に応じて形成され得る。加えて、図1Aのワイヤ100と同様に、図2Aのワイヤ200は、適切なフィラーを含む少なくとも1つの層を含み得る。特定の実施形態では、1つ以上の充填された層は、導体210の周囲(例えば、導体210の直接の周囲、1つ以上のベース層の周囲など)に形成され得る。次に、必要に応じて、充填されていないトップコート(例えば、充填されていない第2のポリマー層240)など、1つ以上の充填されていない層または自己潤滑層は、1つ以上の充填されたPI層の周りに形成され得る。例えば、PIの充填されていない層またはPAIの充填されていない層は、1つ以上の充填されたPI層の上方に形成され得る。充填されていない層は、充填されたPI層中のフィラーとして利用される研磨材料に関連する工具摩耗を減少させるのに役立ち得る。他の実施形態では、トップコートは、充填された層として形成され得る。
【0025】
図1Aから2Bのワイヤ100、150、200、250を引き続き参照すると、特定の実施形態において、1つ以上の適切な接着促進剤を組み込み得る。例えば、接着促進剤を利用して、導体とベースコートとの間のより大きな接着を支援または促進し得る。別の例として、接着促進剤を利用して、エナメルの2つの異なる層の間のより大きな接着を支援または促進し得る。多種多様な適切な接着促進剤を必要に応じて利用し得る。他の実施形態では、1つ以上の適切な表面改質処理を、導体および/または任意の数のエナメル層上で利用して、その後に形成されるエナメル層との接着を促進し得る。適切な表面改質処理の例には、プラズマ処理、紫外線(「UV」)処理、コロナ放電処理、および/またはガス火炎処理が含まれるが、これらに限定されない。表面処理は、導体またはエナメル層の形状を変更し得、および/または導体またはエナメル層の表面に、その後に形成されるエナメルまたは他の層の結合を強化または促進する官能基を形成し得る。特定の実施形態において、変化した形状はまた、後続のエナメル層を形成するために利用されるワニスの湿潤性を増強または向上させ得、処理された層の表面張力を変化させ得る。結果として、表面処理は層間剥離を減らし得る。
【0026】
特定の実施形態において望まれるように、1つ以上の他の絶縁層は、複数のエナメル層に加えて、マグネットワイヤ100、150、200、250に組み込まれ得る。例えば、1つ以上の押し出された熱可塑性層(例えば、押し出されたオーバーコート等)、半導体性層、テープ絶縁層(例えば、ポリマーテープ等)および/またはコンフォーマルコーティング(例えば、パリレンコーティング等)は、マグネットワイヤ100、150、200、250に組み込まれ得る。必要に応じて、他の多種多様な絶縁体構成および/または層の組み合せを利用し得る。加えて、全体的な絶縁システムは、任意の適切な材料および/または材料の組み合わせから形成された任意の数の適切な副層を含み得る。
【0027】
本開示の一態様によれば、1つ以上のエナメル層(例えば、1つ以上のPI層など)は、適切なフィラーを含み得る。例えば、マグネットワイヤ100、150、200、250などのマグネットワイヤに組み込まれた1つ以上のPIエナメル層は、適切なフィラーを含み得る。加えて、フィラーは、1つ以上の有機金属化合物を含み得る。フィラーの添加は、マグネットワイヤ上に充填されたポリマーエナメルから形成された1つ以上のポリマーエナメル層のコロナ耐性を向上させ得る。結果として、マグネットワイヤおよび/またはマグネットワイヤを組み込んだ電気デバイス(例えば、モーターなど)の寿命は、部分放電および/または他の悪条件の下で増加または延長され得る。
【0028】
様々な実施形態において、多種多様な適切な有機金属化合物または材料は、フィラーとして利用され得る。特定の実施形態において、有機金属化合物は、有機分子の炭素原子と金属との間に少なくとも1つの化学結合を含有する化合物であり得る。アルカリ、アルカリ土類金属、遷移金属および/または半金属を含む、多種多様な金属は、必要に応じて有機金属化合物内に含まれ得る。加えて、特定の実施形態において、有機金属化合物は、完全可溶性化合物であり得る。言い換えると、有機金属化合物が溶媒に混合または懸濁されたポリマーベース材料と組み合わされるとき、有機金属化合物は、完全に溶解または液化される。特定の実施形態において、有機金属化合物は、均質な溶液が形成されるように、ポリマーベース材料および溶媒中で完全に混和性であり得る。
【0029】
特定の実施形態において、有機金属化合物は、金属酸化物酸のアミン塩を含み得る。例えば、有機金属化合物は、モリブデン酸、タングステン酸またはクロム酸などの遷移金属酸化物酸のアミン塩を含み得る。アミン塩は、有機アミン(例えば、NHなど)を金属酸化物酸と組み合わせることによって形成され得る。例えば、アミン塩は、アルキルアミンまたは芳香族アミンを金属酸化物酸と組み合わせることによって形成され得る。他の実施形態において、有機金属化合物は、カルバメート、チオカルバメート、および/またはチオホスフェート塩を含み得る。さらに他の実施形態では、有機金属化合物は、メタロセン(例えば、フェロセン、ジルコノセンなど)、金属カルボキシレート(例えば、オレイン酸亜鉛、2-エチルヘキサノエートコバルトなど)および/または金属アルコキシド(例えば、チタンイソプロポキシド、スズアルコキシドなど)を含み得る。他の適切な有機金属化合物および/または有機金属化合物の組み合わせを利用し得る。
【0030】
フィラー材料は、任意の適切な比でベースポリマー材料に添加され得る。例えば、特定の実施形態では、充填されたポリマーエナメル絶縁層中のフィラーの総量は、エナメル中の溶解ポリマーに基づいて、約1重量パーセント(1.0%)から約10重量パーセント(10%)の間であり得る。他の実施形態では、フィラーの総量は、約3重量パーセント(3.0%)から約5重量パーセント(5.0%)の間であり得る。他の様々な実施形態では、フィラーの総量は、約1、2、3、4、5、6、7、7.5、8、9または10重量パーセント、上記の値の任意の2つの間の範囲に含まれる量または上記の値のうちの1つによって最小または最大のいずれかの端に制限される範囲に含まれる量であり得る。例えば、フィラーの総量は、充填されたポリマー断熱材の約5重量パーセント(5.0%)未満であり得る。
【0031】
加えて、特定の実施形態では、単一のタイプの有機金属化合物または材料をフィラーとして利用し得る。他の実施形態では、2つ以上の異なる有機金属化合物の組み合わせをフィラーとして利用し得る。2つ以上の有機金属化合物が利用される場合、多種多様な適切な配合または混合比は、様々な成分の化合物のために利用され得る。例えば、2つ以上の成分の化合物は、多種多様な適切な重量比で配合され得る。様々な実施形態において、第1の成分(例えば、第1の有機金属化合物)と第2の成分(例えば、第2の有機金属化合物)との比は、約80/20、75/25、70/30、67/33、65/35、60/40、55/45、50/50、45/55、40/60、35/65、33/67、30/70、25/75、20/80またはその他の適切な比であり得る。
【0032】
フィラーの成分は、ベースポリマー材料に添加される前に、液体の形態でまたは可溶性の固体として存在し得る。加えて、多種多様な適切な方法および/または技術を利用して、ベースポリマーにフィラーを添加し得る。特定の実施形態において、フィラーは、溶媒の存在下でポリマーワニス(例えば、PIワニス)に配合され得る。他の実施形態では、フィラーは、必要に応じて別の物質(例えば、PIペースト、別のポリマー材料から形成されたペーストなど)に添加され、次いでポリマーワニスに添加され得る。言い換えると、フィラーは、より高い濃度で最初のベース材料に添加され得、最終配合物の最終的な「レットダウン」で減少し得る。
【0033】
フィラーがポリマー材料に添加されると、ポリマー材料は、任意の適切な方法で導体に適用され得る。例えば、未硬化のポリマー絶縁体は、マルチパスコーティングおよびワイピングダイを使用してマグネットワイヤに適用され、その後、高温で硬化され得る(例えば、エナメルオーブンでの硬化)。任意の所望の数の充填されたポリマー層は、マグネットワイヤに組み込まれ得るかまたはその上に形成され得る。様々な実施形態において、これらの充填されたポリマー層は、導体の周囲に直接または1つ以上のベース層の上方に形成され得る。さらに、特定の実施形態では、1つ以上の層(例えば、トップコート、押し出し層など)が、充填されたポリマー層の上方に形成され得る。
【0034】
1つ以上の充填エナメル層を含むマグネットワイヤ100、150、200、250は、従来のマグネットワイヤエナメルと比較して向上したコロナ耐性を示し得る。フィラーとして利用される有機金属化合物は、ポリマーエナメル層内にコロナ放電を分散または拡散するように機能し得る。言い換えると、有機金属化合物は、コロナ放電またはコロナ現象がポリマーエナメル層内の特定の点に集中する可能性を減らし得る。結果として、フィラーとして1つ以上の有機金属化合物を添加すると、マグネットワイヤ絶縁体の電気的性能が向上し得る。例えば、部分放電開始電圧(「PDIV」)および/または他の電気的性能パラメータは、向上し得る。
【0035】
特定の実施形態では、充填されたエナメル層が硬化されるとき(例えば、エナメルオーブンで硬化されるなど)、ポリマー材料とフィラーとして利用される有機金属化合物との間で架橋が起こり得る。この架橋は、充填されたポリマーエナメル層の密度を低下させ得、エナメル層内の自由体積を増加させ得る。結果として、ポリマーエナメル層の誘電率は、1つ以上の有機金属化合物を組み込んだ結果として低下し得る。このより低い誘電率は、ポリマーエナメル層のPDIVおよび/または他の電気的性能パラメータを強化または向上し得る。
【0036】
PIの1つ以上の充填された層など、有機金属材料で充填された1つ以上のエナメル層を含有する絶縁体で形成されたマグネットワイヤは、充填されていないエナメル絶縁体を含むマグネットワイヤと比較して向上したPDIV性能を示し得る。特定の実施形態では、ベースポリマー材料(例えば、PIなど)への有機金属フィラーの添加は、ベースポリマー材料(例えば、充填されていない)のみから形成された絶縁体と比較して、エナメル絶縁体のPDIV性能を少なくとも約5.0%向上させ得る。他の実施形態では、有機金属フィラーの添加は、PDIV性能を少なくとも約3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、7.5%、8.0%、9.0%、10.0%、11.0%、12.0%、12.5%、13.0%、14.0%もしくは15.0%、または上記の任意の2つの値の範囲に含まれる量(たとえば、約5%から約15%)の分、向上させ得る。シリカ酸化物、酸化チタンなどの従来のマグネットワイヤエナメル金属フィラーは、マグネットワイヤ絶縁体のコロナ放電パラメータを向上させ得ることに留意されたい。しかしながら、これらの従来のフィラーがPDIVの性能を向上させることは知られていない。有機金属フィラーの添加によってPDIVの性能は向上するが、マグネットワイヤの最終的なPDIVの性能は、使用するベースポリマー材料の種類および/または絶縁体の厚さなど、他のさまざまな要因に依存し得る。したがって、有機金属材料で満たされた1つ以上のエナメル層を含む絶縁体を有するマグネットワイヤは、多種多様な適切なPDIVパラメータを満たし得る。
【0037】
特定の実施形態では、1つ以上の充填されたエナメル層の使用によって、耐熱クラス240以上のマグネットワイヤが提供され得る。様々な実施形態において、1つ以上の充填されたエナメル層の使用によって、240の耐熱クラス、260の耐熱クラス、280の耐熱クラスまたはそれ以上を有するマグネットワイヤが提供され得る。
【0038】
特定の実施形態では、単一の充填されたエナメル層は、導体の周りに形成され得る。単一の充填されたエナメル層は、単一の有機金属化合物からまたは2つ以上の有機金属化合物の適切な配合から形成されたフィラーを含み得る。他の実施形態では、複数の充填されたエナメル層は、導体の周りに形成され得る。特定の実施形態では、複数の充填されたエナメル層の各々は、同様の構造を含み得る。例えば、複数の層の各々は、単一の有機金属化合物または2つ以上の有機金属化合物の配合から形成されたフィラーを含み得る。加えて、フィラーは、同様の充填率で複数の層の各々に添加され得る。他の実施形態では、少なくとも2つの充填されたエナメル層は、異なる構造で形成され得る。例えば、2つの充填されたエナメル層は、フィラー材料の異なる充填率を含み得る(例えば、第1の層は、約3.0パーセントの充填率を有し、第2の層は、約5.0パーセントの充填率を有するなど)。別の例として、2つの充填されたエナメル層は、異なる有機金属フィラー材料および/または材料の組み合わせを利用し得る。さらに別の例として、2つの充填されたエナメル層は、2つ以上の有機金属材料の異なる配合比を含み得る。実際、必要に応じて、多種多様な適切な層構造を形成し得る。
【0039】
図1A~2Bを参照して上記で説明したマグネットワイヤ100、150、200、250は、例としてのみ提供されている。様々な実施形態において必要に応じて、図示されたマグネットワイヤ100、150、200、250に対して多種多様な代替案を作成し得る。例えば、1つ以上のエナメル層に加えて、多種多様な異なるタイプの絶縁層は、マグネットワイヤ100、150、200、250に組み込まれ得る。別の例として、マグネットワイヤ100、150、200、250および/または1つ以上の絶縁層の断面形状を変更し得る。実際、本開示は、多種多様な適切なマグネットワイヤ構造を想定している。これらの構造には、任意の数の層および/または副層を有する絶縁システムが含まれ得る。
【実施例
【0040】
(実施例)
以下の実施例は、例示的かつ非限定的なものとして意図されており、本発明の特定の実施形態を表す。別段明記されていない限り、実施例で説明されているワイヤサンプルはすべて、「重い」エナメルの長方形のワイヤとして準備された。言い換えると、ワイヤーエナメルは、マルチパスコーティングとワイピングダイとを使用して、長方形の銅線に適用された。実施例の「重い」エナメルビルドは、約9.6ミル(0.245mm)の公称絶縁ビルドを有し、27層のエナメルをワイヤに適用することによって形成される。加えて、有機金属フィラーを、形成されたポリマーエナメル絶縁体の約4重量%で、実施例のポリイミドに添加した。
【0041】
表1に示す最初の実施例では、1つ以上の有機金属化合物をフィラー材料としてPIエナメルに添加した場合の効果を比較する。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すように、PIエナメルが充填されていないワイヤは、約1550ボルトのピークPDIVを有すると測定された。比較した各例は、向上したPDIV性能を示した。充填された実施例のうちの3つは、導体の周りに形成された充填されたエナメルの27の連続した層で形成された。もう1つの例は、導体の周りに形成された充填エナメルの2つの内側の層で形成された。次に、充填されていないPIエナメルの追加の25層は、2つの内側の層の上方に形成された。したがって、いくつかの充填された層を使用すると、PDIVの性能が向上することが示された。
【0044】
条件語、とりわけ、「し得る(can)」、「し得た(could)」、「し得た(might)」または「し得る(may)」等は、特に明記しない限り、または使用される文脈内で別の方法で理解されない限り、概して、特定の特徴、要素、および/または操作を、特定の実施形態が含み得たものであり、一方で、他の実施形態はそれらを含まないことを伝えることを意図する。したがって、そのような条件付き言語は、概して、機能、要素および/または操作が何らかの形で1つ以上の実施形態に必要とされること、または1つ以上の実施形態がユーザ入力またはプロンプトの有無に関わらず、これらの特徴、要素、および/または操作を含むかもしくは特定の実施形態で実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味することを意図しない。
【0045】
本明細書に示される開示の多くの修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利点を有することが明らかであろう。それゆえ、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、改変および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的ではない。
図1A
図1B
図2A
図2B