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特許7454023ポリチオール組成物、光学材料用重合性組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ポリチオール組成物、光学材料用重合性組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 321/14 20060101AFI20240313BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240313BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240313BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20240313BHJP
   C07D 339/08 20060101ALI20240313BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C07C321/14
C08G18/38 076
C08G18/28 080
C07C265/14
C07D339/08
G02B1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022157198
(22)【出願日】2022-09-30
(65)【公開番号】P2023156222
(43)【公開日】2023-10-24
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】202210386836.4
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522386758
【氏名又は名称】益豊新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(72)【発明者】
【氏名】許 倩倩
(72)【発明者】
【氏名】梁 万根
(72)【発明者】
【氏名】張 超
(72)【発明者】
【氏名】崔 衛華
(72)【発明者】
【氏名】孫 志利
(72)【発明者】
【氏名】費 瀟瑶
(72)【発明者】
【氏名】卞 文
(72)【発明者】
【氏名】楊 后奇
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-071625(JP,A)
【文献】特開2010-083773(JP,A)
【文献】国際公開第2001/073482(WO,A1)
【文献】特開2005-023294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物とを含有するポリチオール組成物であって、式(1)で表されるチオール化合物が、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物の総質量の0.005%~6%を占める、ことを特徴とするポリチオール組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記式(1)で表されるチオール化合物が、前記式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物の総質量の0.01%~4%を占める、ことを特徴とする請求項1に記載のポリチオール組成物。
【請求項3】
前記式(1)で表されるチオール化合物が、前記式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物の総質量の0.05%~2%を占める、ことを特徴とする請求項2に記載のポリチオール組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリチオール組成物、ポリイソシアネート化合物、触媒、紫外線吸収剤および離型剤を含む、ことを特徴とする光学材料用重合性組成物。
【請求項5】
前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の質量比が1:2~0.5であり、触媒の使用量が前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量に対して、0.01%~2%であり、紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量の0.01%~2%であり、離型剤の使用量は、前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量の0.01%~2%である、ことを特徴とする請求項4に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項6】
前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の質量比が1:1.8~0.7であり、触媒の使用量が前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量に対して、0.05%~1.5%であり、紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量の0.05%~1%であり、離型剤の使用量は、前記ポリチオール組成物とポリイソシアネート化合物の総質量の0.05%~1%である、ことを特徴とする請求項5に記載の光学材料用重合性組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の光学材料用重合性組成物を硬化させて光学材料を製造する工程において、重合反応初期の粘度が60mPa・s以下であることを特徴とする光学材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学樹脂の技術分野に属し、特にポリチオール組成物、光学材料用重合性組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は、軽量、強靭で染色が容易であることから、近年、各種光学材料の作製に多用されている。眼鏡レンズの分野では、低比重、高透明性、低黄変、高耐熱性、高強度、高屈折率、高アッベ数が求められる。高屈折率はレンズを薄くすることができ、高アッベ数はレンズの色収差を減らすことができる。
【0003】
上記の優れた性能を有するポリチオウレタン系光学樹脂材料は、近年の重要な開発方向とされ、この種の樹脂材料は主にポリチオール化合物とイソシアネート化合物を原料として調製される。光学樹脂レンズの調製プロセスと性能指標は、その開発動向及びその川下の用途に大きな制約と影響を与える。予備重合(重合の初期段階)は、光学樹脂レンズの製造において非常に重要な工程であり、この工程が適切に管理されていないと、材料の吹き出しなどの製造異常を引き起こすだけでなく、製品に材料の筋などの現象が発生し、完成品の合格率が下がり、良品の割合の減少につながる。樹脂レンズの重要な性能指標であるアッベ数は、光の偏光や集光に影響を与え、数値が高いほどレンズの歪み率が低くなり、光の透過率が良くなる。しかし、アッベ数が大きくなるとレンズの屈折率が低下し、高屈折率と高アッベ数の両立は困難である。屈折率とアッベ数のバランスをどう取るかも喫緊の課題である。
【発明の概要】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、ポリチオール組成物、光学材料用重合性組成物、およびそれらの製造方法を提供する。ポリチオール組成物に式(1)で表されるチオール化合物を導入し、特定量のポリチオール組成物成分を添加することによって、ポリチオール組成物とイソシアネート化合物の予備重合反応における反応の活性に影響を与え、重合反応速度を効果的に低下させ、重合反応の初期段階の粘度を有効に制御し、次の工程の操作時間を延長することができる。同時に、屈折率とアッベ数を効果的にバランスさせることができる。
【0005】
本発明が採用する技術的な解決策は以下の通りである。
下記式(1)で表されるチオール化合物および式(2)で表される化合物を含有するポリチオール組成物であって、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物の総質量に対して、式(1)で表されるチオール化合物の比率は、0.005%~6%であり、好ましくは0.01%~4%、より好ましくは0.05%~2%である。その比率が低い場合は予備重合系の粘度を制御できず、また、比率が高い場合は系の粘度が小さくなりすぎ、反応時間が長くなり、生産効率に影響を与えまる。また、比率が低くても高くても、合成樹脂のアッベ数は減少する。なお、式(1)で表されるチオール化合物は、メルカプトエチルチオメチル-1,4-ジチアン、式(2)で表される化合物は、2,3-ジチオ(2-メルカプト)-1-プロパンチオールである。
【化1】
【化2】
【0006】
ポリチオール組成物、イソシアネート化合物、触媒、紫外線吸収剤及び離型剤を含む光学材料用重合性組成物。
【0007】
ポリチオール組成物とイソシアネート化合物との質量比は1:2~0.5、好ましくは1:1.8~0.7、より好ましくは1:1.5~0.9であり、触媒の使用量はポリチオール組成物とイソシアネート化合物の総質量の0.01%~2%であり、好ましくは0.05%~1.5%、より好ましくは0.08%~1%であり、紫外線吸収剤の使用量は、ポリチオール組成物とイソシアネート化合物の総質量の0.01%~2%、好ましくは0.05%~1%、より好ましくは0.08%~1%であり、離型剤の使用量は、ポリチオール組成物およびイソシアネート化合物の総質量の0.01%~2%、好ましくは0.05%~1%、より好ましくは0.08%~1%である。
【0008】
前記イソシアネート化合物は、好ましくは、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、m-フェニレンビス(ジメチルメチレン)ジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルチオフェン、2,5-ジイソシアナトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジイソシアネート-1,4-ジチアン、チオジヘキシルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)アダマンタン、ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1、5-ナフタレンジイソシアネート、ジエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、トルエンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートから選択される1種または複数種である。より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートから選択される1種または複数種である。さらにより好ましくは、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートから選択される1種である。
【0009】
前記触媒は、好ましくは、ジブチルスズジクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、およびトリフェニルアンチモンジクロリドの1つから選択される。より好ましくは、ジブチルスズジクロリド、オクチルスズトリクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリドから選択される1種である。さらにより好ましくは、ジブチルスズジクロリド、オクチルスズトリクロリドから選択される1種である。
【0010】
前記紫外線吸収剤は、好ましくは、UV326、UV329、UV531、UV-9、およびUV-541から選択される1種である。より好ましくは、UV326、UV329、UV-541から選択される1種であり、さらにより好ましくは、UV326、UV329から選択される1種である。
【0011】
前記剥離剤は、好ましくは、イソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、オクチルホスフェート、イソデシルホスフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、ノニルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート、ポリホスフェートから選択される1種である。より好ましくは、ジブチルホスフェート、オクチルホスフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、ノニルフェノールポリオキシエチレンエーテルホスフェート、ポリホスフェートから選択される1種である。さらにより好ましくは、ジブチルホスフェート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、ポリホスフェートから選択される1種である。
【0012】
光学材料の製造方法であって、上記光学材料用重合性組成物を硬化させて光学材料が得られる。その製造工程において、重合反応初期の粘度が60mpa・s以下の場合、この粘度は1.5時間以上維持することができる。
【0013】
重合反応の初期の粘度が50mpa・s以下の場合、この粘度は2.5時間以上維持できる。重合反応の初期の粘度が45mpa・s以下の場合、この粘度は3時間以上維持できる。反応性が低いほど反応速度は小さく、粘度が低く、反応時間は長くなる。一方、反応性が高いほど反応速度は大きく、粘度が高く、反応時間は短くなる。重合反応の初期の粘度を制御することにより、操作可能な時間を延長することができる。同時に、生産効率を確保し、材料の吹き出しの発生、材料の筋やその他の現象を効果的に回避することができる。よって、製品の歩留まりと良品率を向上させることができる。
【0014】
単一のポリチオール化合物と比較して、本発明のポリチオール組成物は、式(1)で表される単官能チオール化合物を導入することで、単位体積当たりの反応性基の濃度が低下し、重合反応時の反応性基間反応の確率が低下するため、重合反応速度が有効に低下し、重合反応開始時の粘度が有効に制御されて操作可能時間が長くなり反応の操作がさらに容易になる。ポリチオール組成物中に、分子規則性が良好で、体積が小さく、密度が高く、構造が安定な式(1)で表される環状チオール化合物を導入することで、化合物のアッベ数を効果的に増加させることができる。
【0015】
本発明の技術的な解決策を利用して、反応性、反応速度を効果的に制御し、予備重合系の粘度を制御し、次のプロセスの操作可能な時間を延長し、高アッベ数と高屈折率を併せ持つ、また同時に優れた性能を有する光学材料が得られる。本発明の技術的解決策によって得られる光学材料は、高屈折率を確保しながら効果的にアッベ数を増加させることができ、同時に、高いガラス転移温度および高い衝撃強度などの優れた性能を有し、顧客のニーズに応え、大きな社会的および経済的価値をもたらす。
【0016】
本発明は、特定量のポリチオール組成物を添加することにより、ポリチオール組成物とイソシアネート化合物の重合反応における反応の活性に影響を与えることができ、本発明によって製造された光学材料は、重合反応初期(予備重合)の粘度を制御し、操作可能時間を延長させ反応の操作がさらに容易になる。それと同時に、調製された光学材料は、優れた光学性能、高屈折率、高アッベ数、高ガラス転移温度、優れた機械的特性などを備えている。本発明の光学材料は、光学眼鏡、光学レンズ、光学フィルター、LEDパッケージ材料、高反射コーティング層、光電子デバイスおよび他の多くの分野で使用することができ、顧客のニーズに応え、大きな社会的および経済的価値をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、当業者が本発明をさらに理解できるように、特定の実施形態と併せて以下にさらに説明されるが、本発明の内容を限定するものではない。本発明に記載された原理に基づくすべての技術は、本発明の範囲に属する。
【0018】
粘度 :デジタル粘度計 (NDJ-5S) を使用して測定する。
屈折率 :多波長アッベ屈折計 (DR-M4) を使用して20℃で検出する。
アッベ数 :多波長アッベ屈折計 (DR-M4) を使用して測定する。
ガラス転移温度:DSC-3示差走査熱量計を使用して測定する。昇温速度は10℃/分。
式(1)で表されるチオール化合物は、メルカプトエチルチオメチル-1,4-ジチアン、式(2)で表される化合物は、2,3-ジチオ(2-メルカプト)-1-プロパンチオールである。
【0019】
(実施例1)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)1gのジブチルスズジクロリド、0.08gのUV326、0.09gのジブチルホスフェート、52gのヘキサメチレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、15℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0020】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の0.05%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0021】
(3)工程(2)で均一に混合した後、20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ、80℃で28時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0022】
(実施例2)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)0.08gのジブチルスズジクロリド、0.1gのUV329、0.1gのポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、52gのイソホロンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、20℃で1.5時間撹拌し均一に混合する。
【0023】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の1%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0024】
(3)工程(2)で均一に混合した後、20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ100℃で24時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0025】
(実施例3)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)0.09gのジブチルスズジクロリド、0.09gのUV326、0.08gのオクチルホスフェート、52gのノルボルナンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、18℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0026】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の2%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0027】
(3)工程(2)で均一に混合した後、20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ120℃で20時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0028】
(実施例4)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)0.05gのオクチルスズトリクロリド、1gのUV-541、2gのポリホスフェート、52gのm-キシリレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、15℃で1.5時間撹拌し均一に混合する。
【0029】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の0.01%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0030】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ90℃で26時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0031】
(実施例5)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)1.5gのジフェニルゲルマニウムジクロリド、0.05gのUV-329、0.01gのジブチルホスフェート、52gのヘキサメチレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、16℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0032】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の4%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0033】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ110℃で22時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0034】
(実施例6)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)2gのジブチルスズジクロリド、0.01gのUV-326、1gのポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート、52gのイソホロンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、18℃で1.5時間撹拌し均一に混合する。
【0035】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の0.005%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0036】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ120℃で18時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0037】
(実施例7)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)0.01gのオクチルスズトリクロリド、2gのUV-329、0.05gのオクチルホスフェート、52gのノルボルナンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、20℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0038】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の6%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0039】
(3)工程(2)で均一に混合した後、20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ100℃で25時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0040】
(比較例1)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)1gのジブチルスズジクロリド、0.08gのUV-326、0.09gのジブチルホスフェート、52gのヘキサメチレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、15℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0041】
(2)式(2)で表される化合物48gを反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0042】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ80℃で28時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0043】
(比較例2)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)0.08gのジブチルスズジクロリド、0.1gのUV-326、0.1gのジブチルホスフェート、52gのヘキサメチレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、15℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0044】
(2)48gのポリチオール組成物(ポリチオール組成物は、式(1)で表されるチオール化合物と式(2)で表される化合物を含み、式(1)で表されるチオール化合物は、ポリチオール組成物の総質量の10%を占める)を反応フラスコに加え、均一に混合する。
【0045】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ120℃で20時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0046】
(比較例3)
光学材料の作製方法であって、具体的な手順は次のとおりである。
(1)1gのジブチルスズジクロリド、0.08gのUV-326、0.09gのジブチルホスフェート、52gのヘキサメチレンジイソシアネートを反応フラスコに分量通り入れ、15℃で1時間撹拌し均一に混合する。
【0047】
(2)48gの混合物を反応フラスコに加える。この混合物は、式(3)で表される化合物と4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチオオクタンを含み、式(3)で表される化合物の割合は、混合物の総質量の1.5%であり、混合物は均一である。式(3)の化合物の構造は以下のとおりである。
【化3】
式(3)中、R1はCHSCHCHSHを表し、R2は水素を表す。
【0048】
(3)20分間真空脱泡して混合物を得る。混合物の粘度を測定し、混合物を一定時間内にガラス製モジュールに注入し、ガラス製モジュールをオーブンに入れ80℃で28時間加熱硬化させ、硬化したレンズを脱型すれば光学材料製品が得られる。
【0049】
実施例1~7及び比較例1~3で製造された光学樹脂レンズの性能試験結果は下記の表の通りである。
【表1】
【0050】
表に示されるように、実施例1~7で調製された光学材料のアッベ数は32.9以上であり、比較例1~3で調製された光学材料のアッベ数よりも著しく大きく、実施例1~7で製造された光学材料のガラス転移温度86.1以上であり、比較例1~3で製造された光学材料のガラス転移温度より著しく高い。式(1)で表される化合物は、アッベ数およびガラス軟化温度の上昇に影響を与える。比較例1では、式(1)で示されるチオール化合物の添加量が0であり、重合反応初期の粘度が比較的に高く、操作時間が比較的に短くなり、吹き出し等の製造異常が発生しやすく、製品に材料の筋などの現象が発生する。比較例(2)では、式(1)で表されるチオール化合物の添加量は多すぎ、重合反応初期の粘度が小さく、生産効率に影響する。表に示したチオール化合物は、反応速度に影響を与え、それによって、重合反応初期の粘度を制御し、操作可能な時間を適切に延長することができ、生産効率が保証され、材料の吹き出しや材料の筋の問題を回避することができる。
【0051】
本発明は、ポリチオール組成物の成分を特定量添加することにより、ポリチオール組成物とイソシアネート化合物の重合反応における反応の活性に影響を与えることができ、本発明によって製造された光学材料は、重合反応の初期(予備重合)の粘度が制御され、同時に、調製された光学材料は、高屈折率、高アッベ数、高ガラス転移温度、および優れた機械的特性と光学特性を備えている。本発明の光学材料は、光学眼鏡、光学レンズ、光学フィルター、LEDパッケージ材料、高反射コーティング層、光電子デバイスおよび他の多くの分野で使用することができ、顧客のニーズに応え、大きな社会的および経済的価値をもたらす。