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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】鋼の電気支援酸洗
(51)【国際特許分類】
   C25F 1/06 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
C25F1/06 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022530240
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2019060108
(87)【国際公開番号】W WO2021105738
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルトソフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル,パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ティシエ,マリー-クリスティーヌ
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-325000(JP,A)
【文献】特開平05-295600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0075456(US,A1)
【文献】特開平10-259500(JP,A)
【文献】国際公開第02/086199(WO,A2)
【文献】国際公開第02/050344(WO,A1)
【文献】特開昭62-044599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G1/00-5/06
C25F1/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(9)の酸洗プロセスであって、
- 前記金属ストリップを、1から100℃の間の温度の少なくとも酸洗浴(7)に通過させるステップと、
- 前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに対して、前記金属ストリップの単位表面あたり1×10から1×10A.m-2の電流密度を有する交流電流を印加するステップであり、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに印加される、アノード周期およびカソード周期を有する前記交流電流が、1.1から2.7のカソード/アノードパルス長比を有する、ステップと
を含み、
前記交流電流は、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに少なくとも5秒間印加され、
前記酸洗の酸が塩酸(HCl)である、酸洗プロセス。
【請求項2】
前記金属ストリップが鋼製である、請求項1に記載の酸洗プロセス。
【請求項3】
前記金属ストリップが、10m.分-1から450m.分-1の間に含まれる速度で浴を通過する、請求項1または2に記載の酸洗プロセス。
【請求項4】
前記酸洗浴が、少なくとも40℃の温度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項5】
前記酸洗浴が、少なくとも30g.L-1の酸洗い酸または酸洗い塩濃度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項6】
前記酸洗浴が、少なくとも60g.L-1の酸洗い酸または酸洗い塩濃度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項7】
前記電流密度が、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに対して、前記金属ストリップの単位表面あたり少なくとも1×10A.m-2である、請求項1から6のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項8】
前記交流電流が、0.5から100Hzの間の周波数を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項9】
前記交流電流が、少なくとも15Hzの周波数を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【請求項10】
前記交流電流が、多くとも50Hzの周波数を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の酸洗プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの酸洗ラインの効率を改善することを可能にする方法に関する。これは、少なくとも1つの酸洗浴を通して移動する金属ストリップに交流電流を印加することによって行われる。
【背景技術】
【0002】
ホットストリップミルでは、金属表面は、1200℃(再加熱炉内)から700℃近く(コイリングステーション)の高温で湿った空気と接触している。これらの状態は、図1に示されるように、金属ストリップ2上にスケール層1を形成するのに好ましい。製鋼の場合、図2に示されるように、前記スケール層は、主に酸化鉄から構成され、鋼片3は、FeO(ウスタイト)、Fe(マグネタイト)、およびFe(ヘマタイト)から構成されるスケール層4で覆われている。スケールの厚さは、図2に棒で示されるように、ホットストリップミルの条件に応じて、典型的には4から20μmの範囲で変化し得る。熱間圧延動作後に、スケールを除去して、冷間圧延、アニーリング、または熱間ディップコーティング(hot-dip coating)などのプロセスステップに都合の良い金属表面を提供するべきである。通常、このスケールは、酸洗入口ラインでスケールブレーカーによって破壊され、次いで、金属ストリップの冷間圧延および/またはコーティングの前に酸洗タンク内で除去される。
【0003】
一般に、図3に示されるように、酸洗ライン5での酸洗プロセス中に、金属ストリップは、少なくとも1つの酸洗い酸(pickling acid)または1つの酸洗い塩(pickling salt)から生成された酸洗浴(7、7a、7b、7c)を含むいくつかの酸洗タンク(6、6a、6b、6c)を通過する。連続的な酸洗浴は、必ずしも同じプロセスパラメータまたは同じ組成を有するわけではない。さらに、それらの酸洗液の性質および濃度は様々であり得る。
【0004】
米国特許第5472579号の特許には、熱間圧延鋼ストリップが少なくとも酸洗タンクに連続的に供給され、電流が前記鋼ストリップを通過する、酸洗方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5472579号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、先の方法および装置を使用することによっては、満足のいく表面品質を達成するのに必要な酸洗時間が最適ではない。結果として、より効率的な酸洗方法が必要である。
【0007】
本発明の目的は、前述の問題を解決する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することによって達成される。この方法はまた、請求項2から11のいずれかの特徴を含み得る。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、非限定的な例の様々な実施形態および試みについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】鋼片上にスケール層が存在することを示す図である。
図2】ベース鋼の鉄スケールの画像である。
図3】酸洗ライン5の実施形態を呈する図である。
図4】本発明の実施形態である酸洗タンク8を呈する図である。
図5】特許請求されているプロセスを使用する酸洗ライン5の別の実施形態を呈する図である。
図6】酸洗時間に対する電流タイプの影響を呈するグラフである。
図7】酸洗時間に対する浴温度の影響を呈する図である。
図8】酸洗時間に対する浴の酸濃度の影響を呈する図である。
図9】酸洗時間に対する電流密度の影響を呈する図である。
図10】異なる条件での酸洗時間に対する電流周波数の影響を呈する図である。
図11】異なる条件での酸洗時間に対する電流周波数の影響を呈する図である。
図12】異なる条件での酸洗時間に対する電流周波数の影響を呈する図である。
図13】酸洗時間に対するアノード周期とカソード周期の電流比の影響を呈する図である。
図14】酸洗時間に対するアノード周期とカソード周期の電流比の影響を呈する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4に示されるように、本発明は、金属ストリップ9の酸洗プロセスであって、
- 前記金属ストリップを、1から100℃の間の温度の少なくとも酸洗浴7に通過させるステップと、
- 前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに対して、前記金属ストリップの単位表面あたり1×10から1×10A.m-2の電流密度を有する交流電流を印加するステップであり、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに印加される、アノード周期およびカソード周期を有する前記交流電流が、0.1および5.0のカソード/アノードパルス長比を有する、ステップと
を含む、酸洗プロセスに関する。
【0013】
この特許請求されている酸洗プロセスは、優先的には、熱間圧延動作の下流で、さらにより優先的には、スケール破壊動作の下流で行われる。特許請求されている酸洗プロセスは、優先的には、冷間圧延動作の上流および/または熱間ディップコーティングプロセスなどのコーティング動作の上流で行われる。
【0014】
酸洗浴は、図4に示されるように、酸洗タンク6に含まれている。前記酸洗タンクは、好ましくは、以下のうちの少なくとも1つから作製されており、それによって、酸洗条件におけるその寿命を延ばすことができる:原材料のレンガ、花崗岩もしくはエボナイトのレンガ、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、および/またはポリプロピレンホモポリマー(PPHP)。タンクは、好ましくは、浴を通してストリップを移動させることができる手段、例えば、搬送ロール10を備えている。図4に示されるように、浴には、4つの搬送ロール10を備えることができ、一対はタンクの入口側11にあり、もう一対はタンクの出口側12にある。各対について、一方は、前記酸洗浴に完全に浸漬されており、もう一方は、前記酸洗浴に浸漬されていない。酸洗ラインはまた、好ましくは、酸再生プラント(ARP)などの酸洗溶液を添加および/または再生するための手段を備えているが、これは図3には図示されていない。一般に、新鮮な/再生された酸洗液は、最後の酸洗タンクに添加され、次いで、最後のタンクから最初のタンクにカスケード式に繋がって、そこで、使用済みの酸洗液が再生ステーションに(これが存在する場合または貯蔵タンクに)排出される。酸の流れはポンプによって調整される。
【0015】
酸洗浴は、当業者によって知られている任意の酸洗浴であり得る。好ましくは、酸洗浴は、10から360g.L-1の間の濃度の少なくとも1つの酸洗い酸および/または酸洗い塩を含む。さらにより好ましくは、酸洗浴7は、少なくとも酸洗い酸または酸洗い塩を含む。酸洗い酸または塩は、優先的には、以下のうちの1つである:塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カリウム(KSO)、または硝酸。酸洗と、したがって物質の除去とを理由に、酸洗浴はまた、酸洗動作から生じる溶解金属などの不所望な材料(鋼中の、鉄イオン、他の典型的な合金元素、または不純物、例えば、Mn、Si、Al、Cr、Ni、Co、Ti、V、Nb、Mo、Cu、C、S、P、B、N・・・)も含み得て、同様に、タンクの壁または回路において、シリカとして、アルミナとして、ファヤライト(FeSiO)、FeAl、Mn含有スピネル(MnSiO、MnAl・・・)などの混合相として堆積する低溶解性の酸化物の固体粒子も含み得る。さらに、作業条件を理由に、酸洗浴はまた、酸洗浴における鋼の溶解を制限することによって鋼の表面を保護する過剰酸洗抑制剤も含み得る。
【0016】
前記交流電流は、前記金属ストリップの単位表面あたり10から10A.m-2の電流密度を有する。これは、ストリップ(および/またはスケールの)のスポットが、スケール層の除去を補助する酸洗浴7を通過する際に、先に定義されているように、交流電流を受けることを意味する。例えば、交流電流は、少なくとも3秒間、前記スポットに印加される。
【0017】
交流電流は、任意の可能な手段によって印加される。交流電流は、正方形、三角形、正弦、複合などの任意の波形であり得る。好ましくは、図4に示されるように、交流電流は、アノード13aおよびカソード13bを交互に形成して金属ストリップに面した一連の電極13を使用して、印加される。交互になったアノードおよびカソードは、好ましくは、前記電極に正または負の電流を印加することによって作製される。好ましくは、両方のストリップ面が電極に面している。電極は、酸洗浴に浸漬されており、好ましくは、移動する金属ストリップから1から30cmの間の距離に配置されている。さらにより好ましくは、電極は、移動する金属ストリップから1から10cmの間の距離に配置されている。
【0018】
例えば、図5に示されるように、4つの酸洗タンク(6、6a、6b、6c)を備える酸洗ラインでは、金属ストリップは、最初の3つのタンク内で、化学的酸洗プロセスを受け得て、第4のタンク内で、特許請求されている酸洗プロセスを受け得る。別の可能性は、特許請求されているプロセスを酸洗ラインのすべての浴に適用することである。さらに、ライン構成における酸洗タンクの数は、1から6で変化してもよく、特許請求されている酸洗プロセスは、これらの酸洗タンクのうちの少なくとも1つにおいて、これらのすべてに実施され得る。
【0019】
直流電流と比較した交流電流の酸洗時間への有利な影響は図6において観察することができ、この図では、すべての実験が、100g.L-1の濃度のHCl酸を有する浴中で実施される。酸洗時間は、様々な電流密度について、約5μmのスケール層を有する鋼サンプルに印加される電流タイプ(直流または交流)に応じてプロットされる。AC実験は、50Hzの振動電流において、等しいカソード/アノードパルス長、すなわち、1:1の比で実施される。他のすべてのパラメータが等しい場合、交流電流では、酸洗時間が平均33%短くなることが観察され得る。さらに、酸洗時間の利益は、電流密度の増加とともに増加し、10A.m-2で、交流電流は、直流電流に比べて約40%の酸洗時間の利益をもたらす。結果として、特許請求されている酸洗プロセスの効率は、直流電流を使用する電気支援酸洗と比較して改善される。
【0020】
好ましくは、前記金属ストリップは鋼製である。
【0021】
好ましくは、前記交流電流は、0.5から100Hzの間の周波数を有する。
【0022】
好ましくは、前記金属ストリップは、10m.分-1から450m.分-1の間に含まれる速度で浴を通過する。
【0023】
好ましくは、前記交流電流は、スケール溶解効率を増加させることを可能にする前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに少なくとも5秒間印加される。好ましくは、前記交流電流は、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに最大600秒間印加される。さらにより好ましくは、前記交流電流は、満足のいくスケール溶解速度を達成しながら電力消費の低減を可能にする前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに最大300秒間印加される。
【0024】
好ましくは、酸洗浴7は、1つだけの酸洗い酸または1つだけの酸洗い塩を含む。これによって、酸洗い酸と酸洗い塩との相互作用を抑制することが可能になり、したがって、より安定した酸洗浴を得ることが可能になる。
【0025】
好ましくは、前記酸洗浴は、10から360g.L-1の間の濃度の塩酸を含む。好ましくは、前記酸洗浴は、10から360g.L-1の間の濃度の硫酸を含む。
【0026】
酸洗効率に対する選択されたプロセスパラメータの影響を評価するために、いくつかの実験を実施した。試験は、同じ表面状態を有する鋼サンプル:厚さ5μmの酸化鉄層(スケール)で覆われた鋼において実施した。選択されたプロセスパラメータに応じて、それらの酸洗時間を記録した。次いで、それらの明度を、(C)Konica-Minoltaの分光光度計CM-2600dによって評価した。酸洗時間は、60から75の間に含まれる明度に達するのに必要な時間に対応し、これは、いずれの理論に縛られるものではないが、すべて(またはほぼすべて)の酸化物層が除去されたことを示す。酸洗時間が短いほど、酸洗効率が良好になる。酸洗前のスケールで覆われている表面の明度は約30単位であり、スケールなしの金属鋼の明度は、典型的には、生成物の化学的性質および表面の形態(粗さ)に応じて、60単位から75単位の間の範囲にあることに留意されたい。したがって、酸洗における明度の増加は、スケールの除去にリンクしている。
【0027】
好ましくは、前記酸洗浴は、少なくとも40℃の温度を有する。それによって、39.5℃未満の酸洗浴の温度と比較して、酸洗効率が改善される。図7には、異なる温度および電流密度で、100g.L-1のHCl濃度を有する浴中で実施された実験について、酸洗時間が浴温度に応じてプロットされている。AC電流の発振周波数は50Hzであり、カソード/アノードパルス長比は1:1である。他のすべてのパラメータが等しい場合、酸洗浴の温度が高いほど、酸洗時間が短くなることが観察され得る。
【0028】
好ましくは、前記酸洗浴は、少なくとも30g.L-1、さらにより優先的には少なくとも60g.L-1の酸洗い酸または酸洗い塩濃度を有する。そのように下限を上昇させると、酸洗効率が改善される。図8には、1:1のカソード/アノードパルス長比を有する電流密度0.5×10A.m-2および発振周波数50HzのAC電流を用いて実施された実験条件について、酸洗時間が40℃の酸洗浴の酸濃度に応じてプロットされている。他のすべてのパラメータが等しい場合、酸洗い酸濃度が高いほど、酸洗時間が短くなることが観察され得る。
【0029】
好ましくは、前記電流密度は、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに対して、前記金属ストリップの単位表面あたり少なくとも1×10A.m-2、さらにより好ましくは少なくとも1×10A.m-2である。それによって、より低い電流密度と比較して、酸洗効率を増加させることが可能になる。図9には、100g.L-1のHCl濃度を有する浴について、酸洗時間が、周波数50Hzおよびカソード/アノードパルス長比1:1で金属ストリップに印加される電流密度に応じてプロットされている。他のすべてのパラメータが等しい場合、電流密度が高いほど、酸洗時間が短くなることが観察され得る。
【0030】
好ましくは、前記交流電流は、少なくとも15Hzの周波数を有する。明らかに、そのような下限によって、より低い周波数と比較して、酸洗効率を増加させることが可能になる。好ましくは、前記交流電流は、最大50Hzの周波数を有する。明らかに、そのような上限によって、より高い周波数と比較して、酸洗効率を増加させることが可能になる。図10から12には、様々な酸洗い酸および電流密度について、酸洗時間が、100g.L-1の酸濃度を有する40℃の酸洗浴中で金属ストリップに適用される電流周波数(これらの条件では、カソード/アノードパルス長比は1:1)に応じてプロットされている。
【0031】
【表1】
【0032】
いずれの理論に縛られるものではないが、周波数の下限を15Hzに上昇させ、周波数の上限を50Hzに低下させることが好ましいと観察され得る。
【0033】
好ましくは、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに印加される、アノード周期およびカソード周期を有する前記交流電流は、0.3および4.0のカソード/アノードパルス長比を有する。さらにより好ましくは、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに印加される、アノード周期およびカソード周期を有する前記交流電流は、1.1および2.7のカソード/アノードパルス長比を有する。最適なのは、前記少なくとも1つの酸洗浴を通過する前記金属ストリップに印加される、アノード周期およびカソード周期を有する前記交流電流が、1.5および2.4のカソード/アノードパルス長比を有することである。図13および14には、酸濃度100g.L-1および電流密度0.5A.cm-2の40℃の酸洗浴について、酸洗時間が、金属ストリップに適用される交流電流周期比に応じてプロットされている。明らかに、他のすべてのパラメータが等しい場合、交流電流周期比が特許請求されている範囲内にあると、酸洗効率が改善されることが観察され得る。
【0034】
本発明を、現在、実用的かつ好ましいと思われる実施形態に関して、先に説明した。しかしながら、本発明は、明細書に開示されている実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲および明細書全体から読み取ることができる本発明の要旨または趣旨から逸脱しない範囲内で適切に修正することができることを理解するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14