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特許7454064燃料電池スタック用のキット、および燃料電池スタックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】燃料電池スタック用のキット、および燃料電池スタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2495 20160101AFI20240313BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20240313BHJP
   H01M 8/2485 20160101ALI20240313BHJP
   H01M 8/2404 20160101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M8/2495
H01M8/2484
H01M8/2485
H01M8/2404
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022553015
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2021053269
(87)【国際公開番号】W WO2021175553
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】102020106091.2
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】クルイ,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】グレツァー,マルクス
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-039773(JP,A)
【文献】特開平02-226669(JP,A)
【文献】特開昭61-049382(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018208981(DE,A1)
【文献】特表2021-526718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(1)用のキットであって、
- 互いに積層方向に積層可能な同一設計の第1の複数のユニットセル(2)であって、それぞれ、1つまたは複数の媒体チャネルと、カソード、アノード、および前記カソードと前記アノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、を有する、第1の複数のユニットセル(2)と、
- 前記第1の複数のユニットセル(2)に横方向に接続可能であり、積層方向に平行に延在する第1の媒体ダクト(3)であって、前記第1の複数のユニットセル(2)の前記媒体チャネルを媒体が出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、第1の使用可能な流れ断面を有する、第1の媒体ダクト(3)と、
- 第2の複数の同一のユニットセル(2)と、
- 互いに上下に積層された前記第1および第2の複数のユニットセル(2)に横方向に接続可能であり、積層方向に平行に延在する第2の媒体ダクト(4)であって、前記第1および第2の複数のユニットセル(2)の媒体チャネルを媒体が出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、前記第1の使用可能な流れ断面とは異なる第2の使用可能な流れ断面を有する、第2の媒体ダクト(4)と、
を備えた、キット。
【請求項2】
前記第1の媒体ダクト(3)の前記第1の使用可能な流れ断面が、前記第2の媒体ダクト(4)の前記第2の使用可能な流れ断面よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のキット。
【請求項3】
複数の第1の媒体ダクト(3)と、複数の第2の媒体ダクト(4)と、が設けられ、
前記第1の媒体ダクト(3)が、第1の燃料供給ダクト(31)と、第1の燃料排出ダクト(32)と、第1のカソードガス供給ダクト(33)と、第1のカソードガス排出ダクト(34)と、第1の冷却剤供給ダクト(35)と、第1の冷却剤排出ダクト(36)と、から形成され、
前記第2の媒体ダクト(4)が、第2の燃料供給ダクト(41)と、第2の燃料排出ダクト(42)と、第2のカソードガス供給ダクト(43)と、第2のカソードガス排出ダクト(44)と、第2の冷却剤供給ダクト(45)と、第2の冷却剤排出ダクト(46)と、から形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記第1の燃料供給ダクト(31)および前記第2の燃料供給ダクト(41)は、積層された前記ユニットセル(2)の第1の短辺(5)に接続可能であり、
前記第1の燃料排出ダクト(32)および前記第2の燃料排出ダクト(42)は、積層された前記ユニットセル(2)の第2の短辺(6)に接続可能であることを特徴とする請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記第1のカソードガス供給ダクト(33)および前記第2のカソードガス供給ダクト(43)は、積層された前記ユニットセル(2)の第1の長辺(7)に接続可能であり、
前記第1のカソードガス排出ダクト(34)および前記第2のカソードガス排出ダクト(44)は、積層された前記ユニットセル(2)の第2の長辺(8)に接続可能であることを特徴とする請求項3または4に記載のキット。
【請求項6】
前記第1の冷却剤供給ダクト(35)および前記第2の冷却剤供給ダクト(45)は、積層された前記ユニットセル(2)の第1の長辺(7)に接続可能であり、
前記第1の冷却剤排出ダクト(36)および前記第2の冷却剤排出ダクト(46)は、積層された前記ユニットセル(2)の第2の長辺(8)に接続可能であることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記燃料供給ダクト(31,41)および/または前記燃料排出ダクト(32,42)の第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率が、前記カソードガス供給ダクト(33,43)および/または前記カソードガス排出ダクト(34,44)の第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率とは異なることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記カソードガス供給ダクト(33,43)、および/または前記カソードガス排出ダクト(34,44)、および/または前記冷却剤供給ダクト(35,45)、および/または前記冷却剤排出ダクト(36,46)の使用可能な流れ断面の形状が長方形であり、前記燃料供給ダクト(31,41)、および/または前記燃料排出ダクト(32,42)の使用可能な流れ断面が、少なくとも部分的に円形セグメントを形成することを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
燃料電池装置用の燃料電池スタック(1)の製造方法であって、
- 所望の性能に応じて、積層方向に沿って同一設計の所定の数の積層可能なユニットセル(2)を積層することであって、それぞれ、1つ以上の媒体チャネルと、カソード、アノード、および前記カソードと前記アノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、有する、ユニットセル(2)を積層し、
- 前記同一設計の積層されたユニットセル(2)の前記所定の数の関数としての使用可能な流れ断面をそれぞれ有する、長方形のカソードガス供給ダクト(33,43)の形態の媒体ダクト(4)と、長方形のカソードガス排出ダクト(34,44)の形態の媒体ダクト(4)と、長方形の冷却剤供給ダクト(35,45)の形態の媒体ダクト(4)と、長方形の冷却剤排出ダクト(36,46)の形態の媒体ダクト(4)と、円形セグメント形状の燃料供給ダクト(31,41)の形態の媒体ダクト(4)と、円形セグメント形状の燃料排出ダクト(32,42)の形態の媒体ダクト(4)と、を提供または選択し、
- 前記媒体ダクト(4)の各々を、前記同一設計の積層されたユニットセル(2)の積層方向に対して横方向に取り付ける、
ステップを備えた、製造方法。
【請求項10】
前記積層可能な同一設計のユニットセル(2)が、互いに平行に配置された、積層方向に延在する一対の収容スロット(9)を有し、前記媒体ダクト()の各々の自由端が、それぞれ収容スロット(9)に収容され、
前記収容スロット(9)の少なくとも1つが、前記自由端の少なくとも1つに配置されたラッチ部材(11)を収容する、ラッチ着座部(10)を有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック及び燃料電池装置の燃料電池スタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池デバイスは、電気エネルギーを生成するために、燃料と酸素を化学反応させて水を生成するように使用される。この目的のために、燃料電池は、プロトン伝導性膜と、その膜の両側に配置された電極の組み合わせである、いわゆる膜電極アセンブリをコアコンポーネントとして含む。さらに、ガス拡散層(GDL)は、膜電極アセンブリの両側の、各電極における膜とは反対側を向く側に配置することができる。複数の燃料セルを組み合わせて燃料電池スタックを形成する燃料電池装置の動作中、燃料、特に水素(H)または水素含有ガス混合物がアノードに供給され、そこでHのHへの電気化学的酸化が生じて電子eを放出する。アノードチャンバからカソードチャンバへのプロトンHの(水と結合したまたは無水の)輸送が、反応チャンバを互いに気密に分離し、それらを電気的に絶縁する膜を介して生じる。アノードで供給された電子は、電線を介してカソードに供給される。酸素または酸素含有ガス混合物がカソードに供給されるため、電子が吸収されている間にOのO2-への還元が生じる。同時に、カソードチャンバ内の酸素陰イオンは、膜を横切って輸送されたプロトンと反応して水を形成する。この水は、燃料電池装置を動作させるのに必要な水分レベルに達するまで、燃料セルおよび燃料電池スタックから排出されなければならない。
【0003】
燃料電池デバイスは、自動車、商用車、または建築設備などの多種多様なシステムで使用され、媒体チャネルおよび膜電極アセンブリを備えた分配プレートによって形成される個々のユニットセルのそれぞれに、多くの異なる要件が課せられる。冷却媒体は、一般に、燃料電池スタックの適切な温度制御のために、バイポーラプレートを一緒に形成することができる各2つの隣接する分配プレートの間にも流れる。3つの媒体、すなわち燃料、カソードガス、および冷却剤は、ユニットセルのそれぞれの活性領域に互いに別々に供給され、そこで供給および除去が、所謂媒体ダクトを介して行われる。セルの活性領域への、または活性領域からの各媒体のこうした供給および除去は、燃料電池スタックの積層方向に対して垂直である。
【0004】
このような媒体ダクトまたは「外部ヘッダ」は、例えば、特許文献1に見ることができ、このガイドは、媒体を横方向に案内するために、すなわち、積層方向に対して垂直に、活性領域へと案内するために、上下に積み重ねられた複数の同一の燃料電池に横方向に取り付けられる。横方向の流れ断面を調整するように構成された媒体ダクトにはピエゾ素子が割り当てられており、媒体の供給または排出を柔軟に最適化することができる。
【0005】
特許文献2はまた、媒体ポートに挿入可能な要素を有する燃料電池スタックを記載しており、その要素は、ユニットセルへの媒体の適切な分配を提供する形状を有する。供給開口部内のこれらの挿入物は、ユニットセルに供給され、またはユニットセルから排出される媒体の圧力分布を均等化するのに役立つ。
【0006】
特許文献3はまた、媒体に均一な圧力分布を提供するように調整可能な要素が挿入可能な媒体ポートを有する燃料電池スタックを記載している。この圧力分布は、個々の要素を動かして媒体ダクトの断面を狭めることによって、可変的に調整することができる。
【0007】
特許文献4は、媒体が横方向に、したがってスタックの方向に対して横方向に流出入することを可能にする、関連する「ヘッダ」も有する燃料電池スタックを記載している。
【0008】
外部ヘッダを取り付ける利点は、媒体ポートが不要なため、バイポーラプレートのサイズを小さくできることである。したがって、燃料電池スタックに横方向に取り付けられる外部媒体ダクトをより安価な材料から製造することができるので、バイポーラプレートにとって高価な材料を節約することができる。さらに、燃料電池で最もコストのかかる部分は、発電に使用される活性領域である。したがって、同一設計のユニットセルを製造する努力がなされている。したがって、異なる数のユニットセルを積層することにより、異なる電力クラスを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第10 2017 210 263号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2014 220 682号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0244353号明細書
【文献】米国特許第8227132号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、燃料電池スタック用のキット、および燃料電池装置用の燃料電池スタックの製造方法を提供することであり、それにより、燃料電池スタックを異なる性能条件に容易に適合させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有するキットおよび請求項9の特徴を有する方法によって達成される。本発明の適切な改善点を有する有利な実施形態を従属項に特定する。
【0012】
特に、本発明によるキットは、互いに積層方向に積層可能な同一設計の第1の複数のユニットセルであって、それぞれ、1つまたは複数の媒体チャネルと、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、を有する、第1の複数のユニットセルを備える。さらに、キットは、第1の複数のユニットセルに横方向に接続可能であり、積層方向に平行に延在する第1の媒体ダクトであって、第1の複数のユニットセルの媒体チャネルを出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、第1の使用可能な流れ断面を有する、第1の媒体ダクトを備える。さらに、キットは、同一設計の第2の複数のユニットセルと、互いに上下に積層された第1および第2の、2つの複数のユニットセルに横方向に接続可能であり、積層方向に平行に延在する第2の媒体ダクトであって、それらの2つの複数のユニットセルの媒体チャネルを出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、第1の使用可能な流れ断面とは異なる第2の使用可能な流れ断面を有する、第2の媒体ダクトと、を含む。
【0013】
外部「ヘッダ」、すなわち横方向に取り付け可能な媒体ダクトにさまざまな形状を使用することは、スタックへの媒体供給を各電力クラスで妥協することなく最適な寸法にできることを意味する。燃料電池装置の電力クラスが高くなると媒体の消費量が多くなるため、より高い電力クラスの場合には、好ましくは拡大された流路断面を有する外部媒体ダクトを積層されたユニットセルに取り付けることにより、各媒体の供給および/または媒体の排出が最適化される。
【0014】
最適な媒体の供給のために、第1の媒体ダクトの第1の使用可能な流れ断面が、第2の媒体ダクトの第2の使用可能な流れ断面よりも小さい場合、有利である。
【0015】
積層された同一のユニットセルの数に応じて、各媒体の供給および各媒体の排出を適合させることができるようにするために、複数の第1の媒体ダクトおよび複数の第2の媒体ダクトが存在すると有利であることが立証された。これに関連して、第1の媒体ダクトは、例えば、第1の燃料供給ダクトと第1の燃料排出ダクト、第1のカソードガス供給ダクトと第1のカソードガス排出ダクト、および第1の冷却剤供給ダクトと第1の冷却剤排出ダクトから形成される。そしてまた、第2の媒体ダクトは、好ましくは、第2の燃料供給ダクトおよび第2の燃料排出ダクトによって形成される。第2の媒体ダクトは、第2のカソードガス供給ダクトおよび第2のカソードガス排出ダクト、ならびに第2の冷却剤供給ダクトおよび第2の冷却剤排出ダクトをさらに含みうる。それにより、すべての第2の媒体ダクトは、好ましくは第1の媒体ダクトの場合よりも大きな使用可能な第2の流れ断面を有する。
【0016】
積層されたユニットセルの活性領域への最適化された供給は、例えば、第1の燃料供給部および第2の燃料供給部が、積層されたユニットセルの第1の短辺に接続可能であり、第1の燃料排出部および第2の燃料排出部が、積層されたユニットセルの第2の短辺に接続可能である点においてもたらされる。したがって、例えば、長方形のユニットセルには、ユニットセルのそれぞれのプレートの縁部まで延在する媒体チャネルが設けられ、燃料は、第1の短辺から活性領域を横切ってユニットセルの第2の短辺まで導かれる。
【0017】
燃料とカソードガスとの間にクロスフロー原理を誘発するために、第1のカソードガス供給ダクトおよび第2のカソードガス供給ダクトが、積層されたユニットセルの第1の長辺に接続可能であり、第1のカソードガス排出ダクトおよび第2のカソードガス排出ダクトが、積層されたユニットセルの第2の長辺に接続可能である場合に、有利であることが判明した。この場合、カソードガスのダクトは、カソードガス供給ダクトおよびカソードガス排出ダクトが2つの対向する長辺で互いにオフセットされるように、方向転換(redirection)される。
【0018】
カソードガス供給ダクトについて論じたように、冷却剤供給部はまた、第1の冷却剤供給ダクトおよび第2の冷却剤供給ダクトが積層されたユニットセルの第1の長辺に接続可能であり、第1の冷却剤排出ダクトおよび第2の冷却剤排出ダクトが積層されたユニットセルの第2の長辺に接続可能であるという選択肢を含む。ここでも、第1の長辺にある冷却剤供給ダクトが、第2の長辺にある冷却剤排出ダクトの反対側に配置されるが、そこからオフセットされて、冷却剤が方向転換されるという選択肢がある。
【0019】
例えば、燃料供給のために必要とされるのと同じように、冷却剤のルート設定またはカソードガスのルート設定に使用可能な流れ断面が、積層可能な同一のユニットセルの数の関数として変化する必要はないことが多い。したがって、これに関連して、燃料供給ダクトおよび/または燃料排出ダクトの第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率が、カソードガス供給ダクトおよび/またはカソードガス排出ダクトの第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率と異なる場合に有利であることが判明した。それにより、設置スペースも節約することができる。
【0020】
第1の複数のユニットセルのみから形成された燃料電池スタックと、第1の複数のユニットセルおよび第2の複数のユニットセルから形成された燃料電池スタックとの両方を、所与の設置空間条件に適合させることができるようにするために、カソードガス供給ダクト、および/またはカソードガス排出ダクト、および/または冷却剤供給ダクト、および/または冷却剤排出ダクトの使用可能な流れ断面の形状が長方形であり、燃料供給ダクト、および/または燃料排出ダクトの使用可能な流れ断面が、少なくとも部分的に、好ましくは排他的に円形セグメントを形成する場合に、有利であることが判明した。
【0021】
しかしながら、ここで媒体ダクトの成形および積層されたユニットセル上の媒体ダクトの配置は、限定的に理解されるべきではないことに留意されたい。したがって、媒体ダクトの異なる形状および/または積層されたユニットセル上の異なる配置もあり得る。
【0022】
燃料電池装置用の燃料電池スタックの製造方法が、少なくとも以下のステップ:
- 所望の性能の関数として、積層方向に沿って同一設計の所定の数の積層可能なユニットセルを積層することであって、それぞれ、1つ以上の媒体チャネルと、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、を有するユニットセルを積層し、
- 同一設計の積層されたユニットセルの所定の数の関数としての使用可能な流れ断面を有する少なくとも1つの媒体ダクトを提供または選択し、
- 少なくとも1つの媒体ダクトを、積層された同一のユニットセルの積層方向に対して横方向に取り付ける、
ステップを備える。
【0023】
この方法の利点は、燃料電池スタックが、所望の性能に適合するように簡単な方法で製造できることであり、媒体ダクトの流れ断面は、積層された同一のユニットセルの数に適合される。
【0024】
このように、使用されるユニットセルは、さまざまな媒体ダクトを使用することにより、スタックサイズに最適な媒体の供給を確保するために、手付かずのままにすることができる。積層されたユニットセルの異なる数により、燃料電池スタックの異なる電力クラスを実装することができる。
【0025】
各媒体ダクトを燃料電池スタックの固定された所定の位置に固定できるようにするために、積層可能な同一のユニットセルが、平行に配置された、積層方向に走る一対の収容スロットを有する場合、有利であることが判明しており、ここで、少なくとも1つの媒体ダクトの自由端は各収容スロットに収容され、収容スロットの少なくとも1つは、自由端の少なくとも1つに配置されたラッチ部材を特に形状適合するように収容する、ラッチ着座部を有する。
【0026】
ラッチ着座部およびラッチ部材によって形成されるラッチ装置を使用することにより、特にラッチ着座部とラッチ部材との間に横方向と積層方向の両方に有効な形状適合(form fit)がある場合、同一設計の複数の積層されたユニットセルに関する媒体ダクトの位置を決定することができる。1つの特定の実施形態では、ラッチ着座部およびラッチ部材の両方がドーム形状に形成される。
【0027】
本明細書中において上述した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図の説明で以下に述べた、および/または単に図に示した特徴および特徴の組み合わせは、特定されたそれぞれの組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、または単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく使用することができる。したがって、実施形態はまた、図に明示的に示したり説明したりしていないが、それらの特徴の別個の組み合わせにより、説明された実施形態から生じ、生成可能である本発明に含まれ、開示されていると見なされるべきである。
【0028】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、特許請求の範囲、以下の好ましい実施形態の説明、および図面に基づいてもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】斜視図において、積層方向(z方向)に積層された第1の複数の同一のユニットセルを備えた、第1の燃料電池スタックを概略的に示す図である。
図2】斜視図において、積層方向に積層された第1の複数のユニットセルと、第2の複数の同一のユニットセルとを備えた、第2の燃料電池スタックを概略的に示す図である。
図3】積層方向に垂直な、図1の燃料電池スタックの概略断面図である。
図4】積層方向に垂直な、図2の燃料電池スタックの概略断面図である。
図5図1による燃料電池スタックおよび図2による燃料電池スタックを形成するためのキットを示す図である。
図6図1または2による燃料電池スタックの詳細な斜視図である。
図7】媒体ダクトの自由端を収容するための収容スロットの1つの詳細な図である。
図8】媒体ダクトの自由端が挿入された収容スロットの別の詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
示されている図の寸法、相対的な比率、および縮尺は指定されておらず、変更される可能性があることに留意されたい。
【0031】
図1および3は、積層方向(z方向)に互いの上に積層された第1の複数の同一のユニットセル2を備えた第1の燃料電池スタック1を示し、ユニットセルはそれぞれ、1つまたは複数の媒体チャネルと、カソード、アノード、およびカソードとアノードの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、を有する。
【0032】
燃料電池スタック1は、第1の複数のユニットセル2に横方向に接続され、積層方向に平行に延在する複数の第1の媒体ダクト3を備え、それぞれ、第1の複数のユニットセル2の媒体チャネルを媒体が出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための第1の使用可能な流れ断面を有する。
【0033】
第1の媒体ダクト3は、積層されたユニットセル2の第1の短辺5に取り付けられた第1の燃料供給ダクト31と、積層されたユニットセル2の第2の短辺6に接続されるとともに、第1の短辺の反対側に位置する第1の燃料排出ダクト32と、に細分される。
【0034】
さらに、積層されたユニットセル2の第1の長辺7に接続された第1のカソードガス供給ダクト33と、第1の長辺7の反対側に位置する、積層されたユニットセル2の第2の長辺8に接続された第1のカソードガス排出ダクト34と、が設けられている。第1のカソードガス供給ダクト33および第1のカソードガス排出ダクト34は、ユニットセル2の活性方向において空気が方向転換(deflection)されるように、長辺7,8で互いにオフセットしている。
【0035】
さらに、第1の媒体ダクト3は、積層されたユニットセル2の第1の長辺7にも取り付けられた第1の冷却剤供給ダクト35を備え、第1の媒体ダクト3は、積層されたユニットセル2の第2の長辺8にも取り付けられるとともに、第1の冷却剤供給ダクト35からオフセットして配置された第1の冷却剤排出ダクト36を追加的に備える。
【0036】
図2および4は、第2の複数の同一のユニットセル2を備えた第2の燃料電池スタック1を示す。この第2の複数のユニットセル2は、図1および3に示される第1の複数の同一のユニットセル2の上に積層される。この燃料電池スタック1は、複数のユニットセル2に横方向に接続されるとともに積層方向に平行に延在する複数の第2の媒体ダクト4も有し、それらの2つの複数のユニットセル2の媒体チャネルを出入りするように積層方向に対して媒体を実質的に横方向に導くために、第1の使用可能な流れ断面とは異なる第2の使用可能な流れ断面を有する。
【0037】
ここでも、合計6つの第2の媒体ダクト4が設けられ、第2の媒体ダクト4は、第2の燃料供給ダクト41、第2の燃料排出ダクト42、第2のカソードガス供給ダクト43、第2のカソードガス排出ダクト44、ならびに、第2の冷却剤供給ダクト45および第2の冷却剤排出ダクト46から形成される。これらの第2の媒体ダクト4はすべて、第1の媒体ダクト3と同様の方法で、積層された2つの複数のユニットセル2に取り付けられる。
【0038】
図3および4に示される2つの断面図から分かるように、カソードガス供給ダクト33,43、カソードガス排出ダクト34,44、ならびに冷却剤供給ダクト35,45、および冷却剤排出ダクト36,46の有用な流れ断面は、長方形である。燃料供給ダクト31,41および燃料排出ダクト32,42の使用可能な流れ断面は、円形セグメント形状である。
【0039】
図5は、上で説明した2つの燃料電池スタック1のためのキットを示しており、積層方向に互いの上に積層された第1の複数の同一のユニットセル2を備え、ユニットセルはそれぞれ、1つ以上の媒体チャネルと、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、を有する。キットはさらに、第1の複数のユニットセル2に横方向に接続可能で、積層方向に平行に延在する合計6つの第1の媒体ダクト3を備え、第1の媒体ダクトは、第1の複数のユニットセル2の媒体チャネルを媒体が出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、第1の使用可能な流れ断面を有する。
【0040】
第1の媒体ダクト3は、積層ユニットセル2の第1の短辺5に取り付けられた第1の燃料供給部31と、第1の短辺に対向する積層ユニットセル2の第2の短辺6に接続された第1の燃料排出部32とに細分される。
【0041】
さらに、(明確にするために詳細には示されていない)第1のカソードガス供給ダクト33が設けられ、これは積層されたユニットセル2の第1の長辺7に接続されており、同様に、(明確にするために詳細には示されていない)第1のカソードガス排出ダクト34が設けられ、これは第1の長辺7とは反対側の積層されたユニットセル2の第2の長辺8に接続される。第1のカソードガス供給ダクト33および第1のカソードガス排出ダクト34は、ユニットセル2の活性領域において空気が方向転換を受けるように、長辺7,8で互いにオフセットされている。
【0042】
さらに、第1の媒体ダクト3は、(明確にするために詳細には示されていない)第1の冷却剤供給ダクト35を備え、これも積層されたユニットセル2の第1の長辺7に接続されており、第1の媒体ダクト3は、さらに(明確にするために詳細には示されていない)第1の冷却剤排出ダクト36を備え、これも積層されたユニットセル2の第2の長辺8に取り付けられるとともに第1の冷却剤供給ダクト35からオフセットして配置される。
【0043】
キットはさらに、第2の複数の同一のユニットセル2を備える。さらに、キットは、2つの積層された複数のユニットセル2に横方向に接続可能で、積層方向に平行に延在する第2の媒体ダクト4を備え、第2の媒体ダクトは、それらの2つの複数のユニットセル2のユニットセル2の媒体チャネルを媒体が出入りするように積層方向に対して実質的に横方向に媒体を導くための、第1の使用可能な流れ断面とは異なる第2の使用可能な流れ断面を有する。
【0044】
ここでも、合計6つの第2の媒体ダクト4がキットに提供され、第2の媒体ダクト4は、第2の燃料供給ダクト41、第2の燃料排出ダクト42、(明確にするために詳細には示されていない)第2のカソードガス供給ダクト43、(明確にするために詳細には示されていない)第2のカソードガス排出ダクト44、ならびに、(明確にするために詳細には示されていない)第2の冷却剤供給ダクト45、および(明確にするために詳細には示されていない)第2の冷却剤排出ダクト46から形成される。これらの第2の媒体ダクト4のすべては、第1の媒体ダクト3と同様の方法で、積層された2つの複数のユニットセル2に取り付け可能である。
【0045】
冷却剤供給ダクトと燃料供給ダクトの両方、またはカソードガス供給ダクトについて、流路断面を、スタック内に存在するユニットセル2の数と同程度に変化させる必要はないので、燃料供給ダクト31,41および/または燃料排出ダクト32,42の第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率が、カソードガス供給ダクト33,43および/またはカソードガス排出ダクト34,44の第1の使用可能な流れ断面と第2の使用可能な流れ断面との比率と異なる場合に有利であることが分かった。
【0046】
燃料電池装置用の図1~4による燃料電池スタック1は、以下のステップ:
- 所望の性能に応じて、積層方向に沿って同一設計の所定数の積層可能なユニットセル2を積層することであって、それぞれ、好ましくはプレート縁部まで延在する1つ以上の媒体チャネルと、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間に配置された膜を備えた膜電極アセンブリと、有する、ユニットセル2を積層し、
- 同一設計の積層されたユニットセル2の所定の数の関数としての使用可能な流れ断面を有する少なくとも1つの媒体ダクト4を提供または選択し、
- 少なくとも1つの媒体ダクト4を、積層された同一のユニットセル2の積層方向に対して横方向に取り付ける、
ステップによって製造することができる。
【0047】
図6および図7から、設計が同一である積層可能なユニットセル2はそれぞれ、平行に配置されるとともに積層方向に延在する一対の収容スロット9を有し、各収容スロット9は、少なくとも1つの媒体ダクト3の自由端を収容することが分かる。ユニットセル2のスタックへの接続が改善されるように、媒体ダクト3,4が付勢下で収容スロット9に挿入されると有利である。加えて、2つの描かれた矢印によって示される力が作用するため、媒体の圧力が媒体ダクト3,4を固定させることができる。この理由から、媒体ダクト3,4は、好ましくは弾性的に適合(compliant)している。
【0048】
図7は、収容スロット9の少なくとも1つ、特に両方がそれぞれ少なくとも1つのラッチ着座部10を有し、そこに、少なくとも1つの自由端、好ましくは両方の自由端に配置されたラッチ部材11が収容される。ラッチ着座部10およびラッチ部材11によって実現されるラッチ装置は、横方向および積層方向の両方に作用する形状適合(form-fit)によって形成され、それにより、既存のラッチ装置により、同一設計のユニットセル2のスタックに対する媒体ダクト3,4の位置が固定される。
【符号の説明】
【0049】
1…燃料電池スタック
2…ユニットセル
3…第1の媒体ダクト
4…第2の媒体ダクト
5…第1の短辺
6…第2の短辺
7…第1の長辺
8…第2の長辺
9…収容スロット
10…ラッチ着座部
11…ラッチ部材
31…第1の燃料供給ダクト
32…第1の燃料排出ダクト
33…第1のカソードガス供給ダクト
34…第1のカソードガス排出ダクト
35…第1の冷却剤供給ダクト
36…第1の冷却剤排出ダクト
41…第2の燃料供給ダクト
42…第2の燃料排出ダクト
43…第2のカソードガス供給ダクト
44…第2のカソードガス排出ダクト
45…第2の冷却剤供給ダクト
46…第2の冷却剤排出ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8