(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240313BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240313BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M50/213
A62C3/16 C
(21)【出願番号】P 2022558080
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 KR2020019257
(87)【国際公開番号】W WO2021194059
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0036266
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522375589
【氏名又は名称】ジーエフアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GFI CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】20-42,Hwanggeum 3-ro 39beon-gil,Yangchon-eup Gimpo-si Gyeonggi-do 10048,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホン
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-507903(JP,A)
【文献】国際公開第2010/098067(WO,A1)
【文献】特開2009-113434(JP,A)
【文献】特開昭57-193646(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0026648(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
A62C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極11が一方の側面から突出し、負電極12が他方の側面に扁平に形成された円筒形二次電池10と、
複数の前記円筒形二次電池10を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケース20と、
消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース20内の一定の空間に配置される消火フィルム30と、を含
み、
前記消火フィルム30は、
常温で液相で存在し、30~300℃の温度で気相に相変化する消火薬剤であるコアと、高分子樹脂、沈殿剤および凝固剤を含有し、50~2000nmの厚さでコアを包むシェルとで構成される消火用マイクロカプセルと、
前記消火用マイクロカプセルが分散され、フィルム形態で成形可能な高分子組成物とで構成される
ことを特徴とする消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項2】
前記消火フィルム30は、円筒形二次電池10の正電極11を貫通して一方の側面上に保持され、当該正電極11および一方の側面の間の空間に配置されるように、Oリング(O-Ring)形状を有する
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項3】
前記消火フィルム30は、ケース20内に位置する複数の円筒形二次電池10の正電極11を同時に通過させるための第1貫通ホール31が形成され、複数の正電極11および一方の側面の間の空間と円筒形二次電池10間の空間をカバーする
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項4】
正電極11が一方の側面から突出し、負電極12が他方の側面に扁平に形成された円筒形二次電池10と、
複数の前記円筒形二次電池10を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケース20と、
消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース20内の一定の空間に配置される消火フィルム30と、を含
み、
前記消火フィルム30は、ケース20内に位置する複数の円筒形二次電池10の負電極12を同時に外部に露出させるための第2貫通ホール32が形成され、円筒形二次電池10間の空間をカバーする
ことを特徴とする消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項5】
正電極11が一方の側面から突出し、負電極12が他方の側面に扁平に形成された円筒形二次電池10と、
複数の前記円筒形二次電池10を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケース20と、
消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース20内の一定の空間に配置される消火フィルム30と、を含
み、
前記消火フィルム30は、複数の円筒形二次電池10間の長さ方向に沿う空間に隔壁の形態で配置され、
複数の前記消火フィルム30は、横および縦方向に隔壁の形態で配置されて、格子形状を形成する
ことを特徴とする消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項6】
正電極11が一方の側面から突出し、負電極12が他方の側面に扁平に形成された円筒形二次電池10と、
複数の前記円筒形二次電池10を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケース20と、
消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース20内の一定の空間に配置される消火フィルム30と、を含
み、
前記消火フィルム30は、個別的に円筒形二次電池10の長さ方向に沿う外周縁を取り囲むように配置される
ことを特徴とする消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項7】
前記高分子組成物は、ポリプロピレン、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリル系モノマー、2-エチルヘキシルアクリレート(2eha)、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、セルロース、ポリビスフェノールA炭酸、(メタ)エポキシポリマー、エポキシモノマー、Poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbornene)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、テトラフルオロエチレン、ビニルC1~C10アルキレート(CH2CH-OC(O)R、RはC1~C10アルキル)、ビニルC1~C10アルキルエテール、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、C1~C10アルキルアクリレート、メタクリル酸、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、C1~C10アルキルメタクリレートおよびシリコーンゴムからなる群から選ばれた1種以上である
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項8】
前記沈殿剤は、酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸銅、チオシアン酸ナトリウムからなる群から選ばれた1つ以上を含む
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項9】
前記凝固剤は、水酸化亜鉛および水酸化鉄からなる群から選ばれた1つ以上を含む
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項10】
前記高分子組成物は、粉末状の断熱材成分を含有する
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【請求項11】
前記消火フィルム30の一面には、両面テープがラミネートされるか、粘着剤がコートされる
請求項1に記載の消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパックに関し、より具体的には、複数の円筒形二次電池の配列時に形成された極小な空間に簡単に設置できながらも、電池の性能や配列に何も影響を与えずに、電池の異常発熱や火災の発生時に初期に能動的に鎮圧できる消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度の非水電解液を用いた高出力二次電池が商用化されるに伴い、携帯用機器だけでなく、大電力を必要とする電気自動車などのような中大型機器に使用できるように関連分野の研究開発が活発に行われている。
【0003】
このような二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減少させることができるという長所だけでなく、エネルギーの使用による副産物が全く発生しないという点から、環境にやさしく、エネルギー効率性の向上のための新しい電力源として注目されている。
【0004】
現在広く使用される二次電池の種類には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などがあり、電気自動車のように高い出力電圧を要求する機器に適用するために、複数の二次電池を連結してバッテリーパックを構成することがある。
【0005】
上述したバッテリーパックには、主に円筒形二次電池がセル単位で使用されているが、このようなバッテリーパック内の円筒形二次電池において電極部分の短絡や過放電などに起因して電圧が急速に上昇すると、電池が発火することがあり、過充電されると、充電状態によって正極および負極が熱的に不安定になり、急激な発熱反応に起因して火災を発生させることがある。
【0006】
しかしながら、バッテリーパック自体に別途の保護回路や消火手段を設置することは、二次電池が密集して活用空間が殆どないパック構造を考慮すると、非常に難しいだけでなく、バッテリーパックの小型化や製造コストを節減しようとする現在のトレンドにも合わない理由から、バッテリーパック内の極小な空間に簡単に設置して、二次電池の異常発熱や火災の発生時に初期に能動的に対応できる効果的な方案を設けることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許公開第10-2009-0026648号公報
【文献】韓国特許公開第10-2015-0003779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、複数の円筒形二次電池の配列時に形成された極小な空間に簡単に設置できながらも、電池の性能や配列に何も影響を与えずに、電池の異常発熱や火災の発生時に初期に能動的に鎮圧できる消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックを提供するのにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、正電極が一方の側面から突出し、負電極が他側面に扁平に形成された円筒形二次電池と、複数の前記円筒形二次電池を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケースと、消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース内の一定の空間に配置される消火フィルムと、を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記消火フィルムは、常温で液相で存在し、30~300℃の温度で気相に相変化する消火薬剤であるコアと、高分子樹脂、沈殿剤および凝固剤を含有し、50~2000nmの厚さでコアを包むシェルとで構成される消火用マイクロカプセルと、前記消火用マイクロカプセルが分散され、フィルム形態で成形可能な高分子組成物とで構成されることを特徴とする。
【0011】
また、前記消火フィルムは、円筒形二次電池の正電極を貫通して、一方の側面上に保持され、当該正電極および一方の側面の間の空間に配置されるように、Oリング(O-Ring)形状を有するか、ケース内に位置する複数の円筒形二次電池の正電極を同時に通過させるための第1貫通ホールが形成され、複数の正電極および一方の側面の間の空間と円筒形二次電池間の空間をカバーしたり、ケース内に位置する複数の円筒形二次電池の負電極を同時に外部に露出させるための第2貫通ホールが形成され、円筒形二次電池間の空間をカバーすることを特徴とする。
【0012】
または、前記消火フィルムは、複数の円筒形二次電池間の長さ方向に沿う空間に隔壁の形態で配置されるか、横および縦方向に隔壁の形態で配置されて格子形状を形成するか、個別的に円筒形二次電池の長さ方向に沿う外周縁を取り囲むように配置されることを特徴とする。
【0013】
一方、前記高分子組成物は、ポリプロピレン、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリル系モノマー、2-エチルヘキシルアクリレート(2eha)、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、セルロース、ポリビスフェノールA炭酸、(メタ)エポキシポリマー、エポキシモノマー、Poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbornene)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、テトラフルオロエチレン、ビニルC1~C10アルキレート(CH2CH-OC(O)R、RはC1~C10アルキル)、ビニルC1~C10アルキルエテール、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、C1~C10アルキルアクリレート、メタクリル酸、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、C1~C10アルキルメタクリレートおよびシリーコンゴムからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0014】
また、前記沈殿剤は、酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸銅、チオシアン酸ナトリウムからなる群から選ばれた一つ以上を含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記凝固剤は、水酸化亜鉛および水酸化鉄からなる群から選ばれた1つ以上を含むことを特徴とする。
【0016】
さらに、前記高分子組成物は、粉末状の断熱材成分を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックは、下記のような効果を奏することができる。
1.消火機能を有する消火フィルムをバッテリーパック内に配置される極小な空間、例えば、複数の円筒形二次電池間の空間、ケースおよび二次電池の間の空間などに簡単に設置することができる。
2.消火フィルムの設置のために円筒形二次電池の配列や従来のケース構造を変更する必要がないので、既製器に直ちに適用することができる。
3.バッテリーパック内の円筒形二次電池の異常発熱や火災の発生時に初期に直ちに反応して、発熱温度を下げたり、火災を鎮圧することができる
4.比較的低コストの消火フィルムを別途の空間を設けることなく、バッテリーパックに適用するだけで、発熱や火災の問題を解決できるので、経済的かつ安定的であり、小型化および軽量化が可能なバッテリーパックを製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックを概略的に示す図である。
【
図2】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックのうち、Oリング構造の消火フィルムが適用された状態を示す図である。
【
図3】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックのうち、正電極カバーシート構造の消火フィルムが適用された状態を示す図である。
【
図4】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックのうち、負電極カバーシート構造の消火フィルムが適用された状態を示す図である。
【
図5】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックのうち、隔壁構造の消火フィルムが適用された状態を示す図である。
【
図6】本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックのうち、電池ラッピング構造の消火フィルムが適用された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定せず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念に沿って解釈される。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえる。
【0020】
以下、図面を参照して本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックを説明する。
【0021】
図1は、本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックを概略的に示す図である。
【0022】
本発明は、基本的に、円筒形二次電池10と、ケース20と、消火フィルム30とを含んで構成される。
【0023】
より具体的に、本発明は、正電極11が一方の側面から突出し、負電極12が他側面に扁平に形成された円筒形二次電池10と、複数の円筒形二次電池10を横および縦方向に収容しながら一定の空間を形成するためのケース20と、消火用マイクロカプセルを含有し、フレキシブルなフィルム形態でケース20内の一定の空間に配置される消火フィルム30と、を含む。
【0024】
前記円筒形二次電池10は、外部の電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変えて貯蔵しておき、必要なときに電気を作り出すものであって、何度も充電することができ、現在広く使用されている二次電池としては、鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池(NiCd)、ニッケル-金属水素電池(Ni-MH)、リチウムイオン電池(Li-ion)、リチウムイオンポリマー電池(Li-ion polymer)などが挙げられるが、従来公知のように、胴体を円筒形にして一方の側面の中央部に突出した正電極が設けられ、他方の側面に平坦な形状の負電極が設けられる構造を有し、サイズによって18650(産業標準)、21700などに区分され得る。
【0025】
前記ケース20は、複数の円筒形二次電池10を収容してバッテリーパックを構成し、図示してはいないが、円筒形二次電池10の正電極11および負電極12にそれぞれ電気的に接続されるバスバー(Bus Bar)と、バスバーを介して伝達される電源を外部に出力するための端子とを含んでもよいし、単に外部にあるバスバーや端子と円筒形二次電池10を接続するための孔が形成された構造を有してもよく、下部に円筒形二次電池10を配置した後、上部と結合させる分離した構造を有してもよく、その他、複数の円筒形二次電池10を介して供給される電源を外部に出力するように、多様な形状変形が可能なものと解釈されることが好ましい。
【0026】
前記消火フィルム30は、常温で液相で存在し、30~300℃の温度で気相に相変化する消火薬剤であるコアと、高分子樹脂/沈殿剤/凝固剤を含有し、50~2000nmの厚さでコアを包むシェルとで構成される消火用マイクロカプセルを高分子組成物に分散させた後、フィルム形態で成形した後、円筒形二次電池10およびケース20により形成された空間に配置される。
【0027】
ここで、前記消火用マイクロカプセルは、内部のコアを外部のシェルが包んでいる形態であるコア-シェル形態を有し、コアは、消火薬剤であり、シェルは、高分子樹脂からなるが、消火薬剤は、消火用マイクロカプセルの80~97重量%を占めるように含有される。
【0028】
このような消火薬剤としては、1,1,1,2,2-Pentafluoroethane(CF3CF2H、HFC-125)、1,1,1,2,3,3,3-Heptafluoropropane(CF3CHFCF3)、Chlorotetrafluoroethane(CHClFCF3)、フッ素化合物系ケトン化合物、dodecafluoro-2-methylpentan-3-one(FK-5-1-12、CF3CF2C(O)CF(CF3)2))、1-chloro-1,2,2,2-tetrafluoroethane(C2HClF4)、2-chloro-1,1,1,2-tetrafluoroethane(CHClFCF3、HCFC-124)、デカフルオロシクロヘキサノン(ペルフルオロシクロヘキサノン)、CF3CF2C(O)CF(CF3)2(-1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-トリフルオロメチル-ブタン-3-オン)、(CF3)2CFC(O)CF(CF3)2(-1,1,1,2,4,5,5,5,6,6,6,-オクタフルオロ-2,4,-ビス(トリフルオロメチル)ペンタン-3-オン)、CF3CF2C(O)CF2CF2CF3、CF3C(O)CF(CF3)2、1,1,1,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8,-ヘキサドデカフルオロオクタン-2-オン(CF3CF2CF2CF2CF2CF2C(O)CF3)、1,1,1,3,4,4,4,-ヘプタフルオロ-3-トリフルオロメチルブタン-2-オン(CF3C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5,-オクタフルオロ-2-トリフルオロメチルペンタン-3-オン(HCF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,6,-ウンデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン-3-オン(CF3CF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1-クロロ-、1,1,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-トリフルオロメチル-ブタン-2-オン((CF3)2CFC(O)CF2CL)、1,1,1,2,2,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロヘキサン-3-オン(CF3CF2C(O)CF2CF2CF3)、1,1,1,5,5,5,-ヘキサフルオロペンタン-2-4-ジオン(CF3C(O)CH2C(O)CF3)、1,1,1,2,5,6,6,6-オクタフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン-3,4-ジオン((CF3)2CFC(O)C(O)C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,2,3,3,5,5,6,6,7,7,7,-テトラデカフルオロヘプタン-4-オン(CF3CF2CF2C(O)CF2CF2CF3)、1,1,1,3,3,4,4,4-オクタフルオロブタン-2-オン(CF3C(O)CF2CF3)、1,1,2,2,4,5,5,5-オクタフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-3-オン(CF3OCF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,7,7,7,-トリデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘプタン-3-オン(CF3CF2CF2CF2C(O)CF(CF3)2)などが使用できる。
【0029】
また、前記消火薬剤は、ペルフルオロブタン(FC-3-1-10)、ハイドロクロロフルオロカーボン混和剤(HCFC-123、HCFC-22、HCFC-124)、クロロテトラフルオロエタン(HCFC-124)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、トリフルオロメタン(HFC-23)、ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa)、トリフルオロヨード(FIC-13I1)、不燃性/不活性気体混合ガス(例えば、N2、Ar、CO2)およびドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(FK-5-1-12)などが使用できる。
【0030】
前述したような消火薬剤は、間接的に周辺の熱エネルギーを減少させて火災が発生しないように抑制したり、直接的に火を消すように機能する。
【0031】
前記消火用マイクロカプセルのシェルは、消火薬剤の外部を包んでいて、カプセル化した内部空間に消火薬剤が保管されるように機能し、常温で外部環境により消火薬剤が大気中に漏れ出るのを防止するように、耐候性と気密性を保障する。
【0032】
このようなシェルは、火災と認知される100~300℃で軟化すると同時に、消火薬剤の相変化に伴って膨張して破裂することによって、当該消火薬剤を外部に噴射させ、記述された火災温度の範囲で反応するために、好ましくは、50~2000nmの厚さを有する。
【0033】
また、シェルを形成する高分子樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリレート共重合体樹脂、スチレン-メタクリレート共重合体樹脂、ゼラチンまたはその誘導体、ポリビニルアルコール、フェノールホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂などが使用できる。
【0034】
また、高分子樹脂に酢酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸銅、チオシアン酸ナトリウムなどのような沈殿剤や、硫酸アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄、塩化鉄などのような凝固剤を含ませることによって、製造時に、マイクロカプセルの選別率や硬化速度を調節することができる。
【0035】
前述したような構成を通じて多量の消火用マイクロカプセルがシェルの耐久性および気密性によって反応(破裂、漏出)せずに、特定の温度(例えば、100℃以上)で同時多発的に反応して爆発することで、気体化した消火薬剤を噴出することによって、消火薬剤が火災発火点に直接作用して、燃焼の4要素である燃料(可燃物)、酸素(空気)、熱(発火源)および連鎖反応中の熱(発火源)との連鎖反応を遮断して、高エネルギーの火災を鎮圧する。
【0036】
前記高分子組成物は、ポリプロピレン、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリル系モノマー、2-エチルヘキシルアクリレート(2eha)、ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、セルロース、ポリビスフェノールA炭酸、(メタ)エポキシポリマー、エポキシモノマー、Poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbornene)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、テトラフルオロエチレン、ビニルC1~C10アルキレート(CH2CH-OC(O)R、RはC1~C10アルキル)、ビニルC1~C10アルキルエテール、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、アクリル酸、アクリロニトリル、アクリルアミド、C1~C10アルキルアクリレート、メタクリル酸、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、C1~C10アルキルメタクリレートおよびシリーコンゴムからなる群から選ばれた1種以上でありうる。
【0037】
ここで、高分子組成物は、低表面エネルギーの表面に付着する物性を有する1価アルコールの単官能アクリル酸エステルをさらに含んでもよいが、このような種類のアクリル酸エステルとしては、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、およびオクタデシルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレートなどからなる群から選ばれた1種以上でありうる。
【0038】
前述したような消火用マイクロカプセルと高分子組成物を混合して適用された消火フィルム30は、厚さの調節が容易であると共に、組成物の選択に応じてべたつきのないタイプや若干の粘性を有するタイプで製作することができ、円筒形二次電池10やケース20に消火フィルム30を強固に固定させるために、消火フィルム30の一面に両面テープをラミネートしたり、粘着剤をコートすることもできる。
【0039】
前記高分子組成物は、粉末状の断熱材成分を含有できるが、これは、消火フィルムに断熱機能を付与することによって、円筒形二次電池10で発生した熱や火災が他の電池に転移する状況を最大限防止するためのものであり、断熱材成分としては、ガラスウール、バーミキュライト、アスベスト、ロックウール 、パーライト、ケイ酸質、アルミナ質、マグネシア質、炭素質などが挙げられる。
【0040】
以下では、前記ケース20および円筒形二次電池10を通じて形成される一定の空間に消火フィルム30の構造を適用して、
図1のAに該当する部分を拡大した
図2~
図6を参照して詳細に説明する。
【0041】
1.Oリング(O-Ring)構造(
図2参照)
-円筒形二次電池10の正電極11を貫通して、一方の側面上に保持され、当該正電極11および一方の側面の間の空間に配置される形状を有する。
-中央に形成されたスルーホールに正電極11が貫通し、リング形状のフィルム部位が二次電池10の一方の側面ごとに個別的に位置する。
-円筒形二次電池10の正電極11の上面にバスバーなど二次電池10から供給される電源を外部に出力するのに使用される導電性部材と、二次電池10の一方の側面間の空間に消火フィルムが位置することによって、別途の空間を確保する必要なく、最小の消火フィルムを使用して二次電池10の一方の側面および導電性部材の間の絶縁性を付与すると同時に、特定の温度以上で二次電池10が発熱したり、火災が発生するとき、即時鎮圧を可能にする。
【0042】
2.正電極カバーシート構造(
図3参照)
-ケース20内に位置する複数の円筒形二次電池10の正電極11を同時に通過させるための第1貫通ホール31が形成され、複数の正電極11および一方の側面の間の空間と円筒形二次電池10間の空間をカバーする。
-二次電池に一対一で設置されるOリング構造とは異なって、施工上の便宜性のために、シート形態で複数の円筒形二次電池10を一括的にカバーすることができる。
-Oリング構造と同様に、二次電池10の一方の側面および導電性部材間の絶縁性を付与するために、正電極11および一方の側面の間の空間に位置する。
【0043】
3.負電極カバーシート構造(
図4参照)
-ケース20内に位置する複数の円筒形二次電池10の負電極12を同時に外部に露出させるための第2貫通ホール32が形成され、円筒形二次電池10間の空間をカバーする。
-通常負電極12が電池の円筒直径とほぼ同じ直径を有する点を考慮して、シート状のフィルムに形成される第2貫通ホール32も、電池が全体的に通過する程度のサイズを有することが一般的であり、二次電池10から供給される電源を外部に出力するために、負電極12を導電性部材に接続し、フィルムが全体的にケースの底面に位置するようにして、二次電池10の発熱または火災の発生時に消火機能を提供する。
【0044】
4.隔壁構造(
図5参照)
-複数の円筒形二次電池10間の長さ方向に沿う空間に隔壁の形態で配置される
-消火フィルム30の厚さを薄く形成できる点を勘案して、二次電池10間ごとに挟む方式でフィルム設置が可能である。
-この際、複数の消火フィルム30を横および縦方向に隔壁の形態で配置させて、格子形状を有するようにして、多くの空間上にフィルムを位置させることによって、消火性能を最大化することができる。
【0045】
5.電池ラッピング構造(
図6参照)
-個別的に円筒形二次電池10の長さ方向に沿う外周縁を取り囲むように配置される。
-電池ごとに消火フィルムを包むようにし、消火フィルム自体に接着性があるので、別にフィルムに接着剤を塗ることなく、これを容易に付着させることができる。
【0046】
前述した消火フィルムのOリング、正電極カバーシート、負電極カバーシート、隔壁、および電池ラッピング構造は、ケース20内に配列される二次電池10の空間によって選択的または総合的に状況に合わせて多様に適用可能である。
【0047】
以上では、添付の図面を参照して本発明を説明するに際して、特定の形状および方向を中心に説明したが、本発明は、当業者により多様な変形および変更が可能であり、このような変形および変更は、本発明の権利範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のような本発明による消火用マイクロカプセルを含有する消火フィルムを備えたバッテリーパックは、下記のような効果を奏することができる。
1.消火機能を有する消火フィルムをバッテリーパック内に配置される極小な空間、例えば、複数の円筒形二次電池間の空間、ケースおよび二次電池の間の空間などに簡単に設置することができる。
2.消火フィルムの設置のために円筒形二次電池の配列や従来のケース構造を変更する必要がないので、既製器に直ちに適用することができる。
3.バッテリーパック内の円筒形二次電池の異常発熱や火災の発生時に初期に直ちに反応して、発熱温度を下げたり、火災を鎮圧することができる
4.比較的低コストの消火フィルムを別途の空間を設けることなく、バッテリーパックに適用するだけで、発熱や火災の問題を解決できるので、経済的かつ安定的であり、小型化および軽量化が可能なバッテリーパックを製作することができる。