(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
G01D5/20 110F
(21)【出願番号】P 2022568361
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045686
(87)【国際公開番号】W WO2022124414
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2020205914
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 康平
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-292066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0331541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20,5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータのステータに対する回転角を検出するレゾルバであって、
前記ロータ
および前記ステータに配置されるシート状の励磁コイルおよび検出コイルのいずれか一方において、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を伝達する正弦コイルおよび余弦コイルと、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか他方において、前記正弦コイルおよび前記余弦コイルに対向配置される対向コイ
ルと、を備え、
前記レゾルバの軸方向視において前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々と前記対向コイ
ルとが重なり合う部分の面積が、前記ロータの回転に伴い正弦波状に変化し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において半径方向の幅を偏角に対して正弦波状に変化させる形状を有し、さらに磁極対の一方を生成するための往路コイルと前記磁極対の他方を生成するための復路コイルとを有し、
前記往路コイルおよび前記復路コイルの各々が、互いに重ならないように同一平面上に配置され、
前記往路コイルおよび前記復路コイルが、半径方向に隙間なく互いに隣接するように配置される
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
前記対向コイルが、前記ロータの回転軸と同軸の円環状に形成される
ことを特徴とする、請求項1記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において、以下の式1および式2で表される曲線で囲まれた領域に対応する形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のレゾルバ。
【数1】
【請求項4】
ロータのステータに対する回転角を検出するレゾルバであって、
前記ロータ
および前記ステータに配置されるシート状の励磁コイルおよび検出コイルのいずれか一方において、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を伝達する正弦コイルおよび余弦コイルと、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか他方において、前記正弦コイルおよび前記余弦コイルに対向配置される対向コイ
ルと、を備え、
前記レゾルバの軸方向視において前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々と前記対向コイ
ルとが重なり合う部分の面積が、前記ロータの回転に伴い正弦波状に変化し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において半径方向の幅を偏角に対して正弦波状に変化させる形状を有し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において、以下の式1および式2で表される曲線で囲まれた領域に対応する形状に形成される
ことを特徴とするレゾルバ。
【数2】
【請求項5】
前記対向コイルが、前記ロータの回転軸と同軸の円環状に形成される
ことを特徴とする、請求項4に記載のレゾルバ。
【請求項6】
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、磁極対の一方を生成するための往路コイルと前記磁極対の他方を生成するための復路コイルとを有し、
前記往路コイルおよび前記復路コイルの各々が、互いに重ならないように同一平面上に配置され、
前記往路コイルおよび前記復路コイルが、半径方向に隙間なく互いに隣接するように配置される
ことを特徴とする、請求項4または5に記載のレゾルバ。
【請求項7】
ロータのステータに対する回転角を検出するレゾルバであって、
前記ロータおよび前記ステータのいずれか一方に配置されるシート状の励磁コイルおよび検出コイルと、
前記ロータおよび前記ステータのいずれか他方に配置され
て前記励磁コイルおよび前記検出コイルと軸方向に対向する導体と、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか一方において、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を伝達する正弦コイルおよび余弦コイルと、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか他方
である
他方コイルと、を備え、
前記レゾルバの軸方向視において前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々と前記導体とが重なり合う部分の面積が、前記ロータの回転に伴い正弦波状に変化し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において半径方向の幅を偏角に対して正弦波状に変化させる形状を有し、さらに磁極対の一方を生成するための往路コイルと前記磁極対の他方を生成するための復路コイルとを有し、
前記往路コイルおよび前記復路コイルの各々が、互いに重ならないように同一平面上に配置され、
前記往路コイルおよび前記復路コイルが、半径方向に隙間なく互いに隣接するように配置される
ことを特徴とするレゾルバ。
【請求項8】
ロータのステータに対する回転角を検出するレゾルバであって、
前記ロータおよび前記ステータのいずれか一方に配置されるシート状の励磁コイルおよび検出コイルと、
前記ロータおよび前記ステータのいずれか他方に配置され
て前記励磁コイルおよび前記検出コイルと軸方向に対向する導体と、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか一方において、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を伝達する正弦コイルおよび余弦コイルと、
前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか他方
である
他方コイルと、を備え、
前記レゾルバの軸方向視において前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々と
前記導体とが重なり合う部分の面積が、前記ロータの回転に伴い正弦波状に変化し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において半径方向の幅を偏角に対して正弦波状に変化させる形状を有し、
前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々が、前記ロータの回転軸を基準とする極座標平面において、以下の式1および式2で表される曲線で囲まれた領域に対応する形状に形成される
ことを特徴とするレゾルバ。
【数3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに対するロータの回転角を検出するレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータに対するロータの回転角を検出するレゾルバにおいて、電気角で90度の位相差を持つ二相のシートコイルを周方向に隣接配置した構造が知られている。例えば、単相の励磁コイルに対向配置される二相の検出コイル(sin相コイルパターン,cos相コイルパターン)を同一平面上に配置した構造のレゾルバが知られている。このような構造により、励磁コイルに対する二相の検出コイルの距離がほぼ同一となり、角度検出精度が改善されうる(日本特許第5342963号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二相の検出コイルを隣接配置した場合、ロータを回転させたときに各々の検出コイルに誘起される電圧の大きさが急変し、信号波形の形状が歪(いびつ)になることがある。このような課題に対し、ロータの回転角に応じてコイルの巻数を変化させることで、誘起される電圧の大きさを徐々に変化させる手法が存在する。しかしながら、コイルの巻数は自然数の単位で変化させることしかできないため、検出コイルに誘起される電圧が階段状に変化することになり、信号波形を滑らかに整えることは難しい。また、コイルの巻数を増加させることで構造が複雑化し、レゾルバの小型化や軽量化が困難となる。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で良好な信号波形を実現できるようにしたレゾルバを提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のレゾルバは、ロータのステータに対する回転角を検出するレゾルバであって、前記ロータまたは前記ステータに配置されるシート状の励磁コイルおよび検出コイルのいずれか一方において、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号を伝達する正弦コイルおよび余弦コイルと、前記励磁コイルおよび前記検出コイルのいずれか他方において、前記正弦コイルおよび前記余弦コイルに対向配置される対向コイルまたは導体と、を備える。また、前記レゾルバの軸方向視において前記正弦コイルおよび前記余弦コイルの各々と前記対向コイルまたは前記導体とが重なり合う部分の面積が、前記ロータの回転に伴い正弦波状に変化する。
【発明の効果】
【0007】
開示のレゾルバによれば、簡素な構成で良好な信号波形を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施例としてのレゾルバの構造を示す模式図である。
【
図2】励磁コイルの構造を例示する模式的な回路図である。
【
図3】検出コイルの構造を例示する模式的な回路図である。
【
図4】(A)は励磁コイルの形状を極座標で表現したグラフであり、(B)は検出コイルの形状を極座標で表現したグラフである。
【
図5】励磁コイルの形状を数式で説明するためのグラフである。
【
図6】(A)~(D)は励磁コイルの具体例を説明するための模式図である。
【
図7】(A)は変形例としての励磁コイルの構造を説明するための模式図であり、(B)はその励磁コイルの形状を極座標で表現したグラフである。
【
図8】(A)は変形例としての励磁コイルの構造を説明するための模式図であり、(B)はその励磁コイルの形状を極座標で表現したグラフである。
【
図9】変形例としてのレゾルバの構造を示す模式図である。
【
図10】(A)は変形例としての励磁コイルの構造を示す模式的な回路図であり、(B)は変形例としての検出コイルの構造を示す模式的な回路図である。
【
図11】第一実施例としてのレゾルバの構造を示す模式図である。
【
図12】(A)は導体の構造を示す模式図であり、(B)は検出コイルの構造を示す模式的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.第一実施例]
[A.構成]
(ア).概要
図1は第一実施例としてのレゾルバ1の構造を示す模式図である。このレゾルバ1は二相励磁単相出力型のレゾルバ1であって、振幅変調された交流信号を入力し、それを用いて位相変調された信号から回転角を検出する変調波レゾルバである。レゾルバ1は、ロータ2(回転子)とステータ3(固定子)と制御装置4とを備える。ロータ2は、ステータ3に対して回転可能に軸支される円盤状の部材である。また、ステータ3は、図示しないケーシングに対して固定される円盤状の部材である。ロータ2,ステータ3の各々には、シート状に形成された複数のシートコイルが設けられる。
【0010】
制御装置4は、ロータ2のステータ3に対する回転角を演算して出力するものである。制御装置4には、シートコイルに供給される交流信号を生成する信号生成回路5と、シートコイルから返送される出力信号に基づき、回転角に対応する角度情報を出力する信号処理回路6とが内蔵される。信号生成回路5で生成された交流信号は、電磁誘導によりステータ3側からロータ2側へと伝達された後、ロータ2側からステータ3側へと返送されて信号処理回路6へと入力される。信号処理回路6に入力された信号に基づき、ロータ2のステータ3に対する回転角が把握される。
【0011】
図1に示すレゾルバ1のロータ2およびステータ3には、第一コイル群10と第二コイル群20とが設けられる。第一コイル群10は、軸倍角がnXの励磁コイルおよび検出コイルを含むコイル群である。言い換えれば、第一コイル群10の励磁コイルおよび検出コイルは多極コイルであり、磁極対(N極およびS極)がn個形成される。これに対して、第二コイル群20は、軸倍角が1Xの励磁コイルおよび検出コイルを含むコイル群である。第二コイル群20の励磁コイルおよび検出コイルにおける磁極対(N極およびS極)の数は、各々のコイルが存在する平面上で1個ずつである。
【0012】
第一コイル群10を介して信号処理回路6に返送される信号と、第二コイル群20を介して信号処理回路6に返送される信号とを併用することで、ロータ2のステータ3に対する回転角(絶対角)を特定しつつ、角度分解能を上昇させることができる。なお、レゾルバ1のコイルを流れる電流は交流であることから、ここでいう磁極対の極性(N極,S極)は交流の周波数に応じた頻度で反転する。したがって、磁極対の極性は常に固定されている訳ではない。言い換えれば、ある瞬間にN極として機能する部位とS極として機能する部位とが存在し、各々の部位の極性が時間経過とともに変動する。
【0013】
(イ).第一コイル群
第一コイル群10には、第一正弦励磁コイル11,第一余弦励磁コイル12,第一検出コイル13,第一送信アンテナコイル14,第一受信アンテナコイル15が含まれる。これらのコイル11~15のうち、少なくとも第一正弦励磁コイル11,第一余弦励磁コイル12,第一検出コイル13の軸倍角がnXに設定される。
図1に示すように、第一正弦励磁コイル11,第一余弦励磁コイル12,第一受信アンテナコイル15は、ステータ3側に設けられる。また、第一検出コイル13,第一送信アンテナコイル14は、ロータ2側に設けられる。
【0014】
第一正弦励磁コイル11および第一余弦励磁コイル12は、ロータ2側の第一検出コイル13に対して、ロータ角に応じた電圧を誘起させるためのシート状のコイルである。これらを区別する必要がない場合には、これらをまとめて第一励磁コイル11,12と呼称しても差し支えない。第一励磁コイル11,12の各々には、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号が入力される。この交流信号は、信号生成回路5で生成された後に、第一正弦励磁コイル11,第一余弦励磁コイル12の各々に供給される。交流信号の具体例としては、例えば数十キロヘルツ~数メガヘルツの高周波信号の振幅を周期的に増減するように変調させた変調波が挙げられる。
【0015】
第一検出コイル13(検出コイル)は、ロータ2およびステータ3の対向面において、第一正弦励磁コイル11,第一余弦励磁コイル12に対してロータ2の軸方向に対向する位置に配置されるシート状のコイルである。第一検出コイル13には、第一正弦励磁コイル11および第一余弦励磁コイル12を励磁することで発生した磁束の鎖交によって電圧が誘起される。第一検出コイル13に生じた誘起電圧や励磁電流(交流信号)は、第一送信アンテナコイル14にも作用する。
【0016】
第一送信アンテナコイル14は、第一検出コイル13に生じた交流信号をステータ3側へと返送するための巻線(コイル)であり、ロータ2に設けられる。第一送信アンテナコイル14は、その両端が第一検出コイル13の両端に接続されて閉回路を形成する。また、第一送信アンテナコイル14は、例えば第一検出コイル13の内側において、ロータ2の回転軸Cの周囲を螺旋状に旋回するように導体を配索した形状に形成される。
【0017】
第一受信アンテナコイル15は、ステータ3に設けられ、第一送信アンテナコイル14に対してロータ2の軸方向に対向する位置に配置される。また、第一受信アンテナコイル15は、例えば第一正弦励磁コイル11や第一余弦励磁コイル12の内側において、ロータ2の回転軸Cの周囲を螺旋状に旋回するように導体を配索した形状に形成される。第一受信アンテナコイル15に伝達された交流信号は信号処理回路6へと入力され、ロータ2のステータ3に対する回転角の演算に用いられる。
【0018】
(ウ).第二コイル群
第二コイル群20には、第二正弦励磁コイル21,第二余弦励磁コイル22,第二検出コイル23,第二送信アンテナコイル24,第二受信アンテナコイル25が含まれる。これらのコイル21~25のうち、少なくとも第二正弦励磁コイル21,第二余弦励磁コイル22,第二検出コイル23の軸倍角が1Xに設定される。
図1に示すように、第二正弦励磁コイル21,第二余弦励磁コイル22,第二受信アンテナコイル25は、ステータ3側に設けられる。また、第二検出コイル23,第二送信アンテナコイル24は、ロータ2側に設けられる。
【0019】
第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22(励磁コイル)は、ロータ2側の第二検出コイル23に対して、ロータ角に応じた電圧を誘起させるためのシート状のコイルである。これらを区別する必要がない場合には、これらをまとめて第二励磁コイル21,22と呼称しても差し支えない。第二励磁コイル21,22の各々には、電気角の位相が互いに90度相違する交流信号(信号生成回路5で生成された交流信号)が入力される。第二励磁コイル21,22のレイアウトは、ロータ2の回転軸Cを中心とした半径がr1の外円と半径がr2の内円とに挟まれた円環領域において、四回の回転対称をなす花弁形状に準えることができる。
【0020】
図2に示すように、第二正弦励磁コイル21は、磁極対(N極およびS極)の一方を生成するための往路コイル21A(
図2中のsin+)と磁極対の他方を生成するための復路コイル21B(
図2中のsin-)とを繋いだ形状に形成される。往路コイル21Aは、復路コイル21Bとは逆向きの磁束を生成するように機能する。例えば、
図2中で往路コイル21Aに時計回りの電流が流れている瞬間には、復路コイル21Bに反時計回りの電流が流れるように、これらのコイル21A,21Bが接続されている。往路コイル21Aおよび復路コイル21Bは、互いに重ならないように同一平面上に配置される。
【0021】
第二検出コイル23(検出コイル,対向コイル)は、ロータ2およびステータ3の対向面において、第二正弦励磁コイル21,第二余弦励磁コイル22に対してロータ2の軸方向に対向する位置に配置されるシート状のコイルである。第二検出コイル23には、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22を励磁することで発生した磁束の鎖交によって電圧が誘起される。第二検出コイル23に生じた誘起電圧や励磁電流(交流信号)は、第二送信アンテナコイル24にも作用する。第二検出コイル23の全体形状は、ロータ2の回転軸Cと同軸の円環状とされる。
【0022】
また、第二検出コイル23は、往路コイル23Aと復路コイル23Bとを繋いだ形状に形成される 。これらの形状は、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bの各々の磁束を受けて誘起電圧を生成できるように、二分割された円環領域の各々に対応する形状に形成される。往路コイル23Aの巻き方向は、復路コイル23Bの巻き方向とは逆方向に設定される。
図3に例示する往路コイル23Aおよび復路コイル23Bは、半径がr
1の外円と半径がr
2の内円とに挟まれた円環領域(ドーナツ型)を二分割した半円環領域に対応する形状に形成されている。
【0023】
ここで、レゾルバ1の軸方向視において、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22と第二検出コイル23とが重なり合う部分の面積Sについて詳述する。この面積Sは、ロータ2の回転に伴い正弦波状に変化するように、第二正弦励磁コイル21,第二余弦励磁コイル22,第二検出コイル23の各形状が設定される。言い換えると、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、重なり合う部分の面積Sが偏角θに対して正弦波状に変化するように、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22と第二検出コイル23との重畳状態が設定される。なお、ここでいう「正弦波状」とは、偏角θに対する面積Sの関係をグラフで表現したときに、そのグラフが正弦波の一部分に対応する形状になることを意味し、「余弦波状」と呼んでも差し支えない。
【0024】
第二正弦励磁コイル21と第二検出コイル23とが重なり合う部分の具体例としては、往路コイル21Aと往路コイル23Aとの重畳部分や、往路コイル21Aと復路コイル23Bとの重畳部分、復路コイル21Bと往路コイル23Aとの重畳部分、復路コイル21Bと復路コイル23Bとの重畳部分が挙げられる。同様に、第二余弦励磁コイル22と第二検出コイル23とが重なり合う部分の具体例としては、往路コイル22Aと往路コイル23Aとの重畳部分や、往路コイル22Aと復路コイル23Bとの重畳部分、復路コイル22Bと往路コイル23Aとの重畳部分、復路コイル22Bと復路コイル23Bとの重畳部分が挙げられる。これら各々の重畳部分の面積Sが、ロータ2の回転に伴って正弦波状に変化する。
【0025】
また、往路コイル21Aおよび復路コイル21Bの各々は、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、半径方向の幅f(θ)を偏角θに対して正弦波状に変化させる形状に形成される。例えば、往路コイル21Aの形状は、
図4(A)に示す極座標グラフにおいて、0≦θ≦πの範囲内に位置する「sin+領域」に対応する形状に形成される。また、復路コイル21Bの形状は、π≦θ≦2πの範囲内に位置する「sin-領域」に対応する形状に形成される。「sin-領域」は、
図4(A)中の「sin+領域」を水平方向にπ分移動させたものと同一であり、これらは実質的に同一形状である。
【0026】
ここで、
図5を用いて「sin+領域」の形状について詳述する。
図5に示す「sin+」領域の上端辺に相当する曲線は、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、以下の式1で表される。また、下端辺に相当する曲線は、以下の式2で表される。さらに、「sin+」領域の半径方向の幅f(θ)は、式1と式2との差分として表現することができ、以下の式3で表される。また、第二検出コイル23の形状は、以下の式4で表される。面積Sは、式3と式4との重なる面積であって式5に示す畳込積分で表される。第二正弦励磁コイル21と第二検出コイル23とが重なり合う部分の面積Sは、正弦波状(余弦波状)に変化する。
【0027】
【0028】
式1~式5中のr1は、第二正弦励磁コイル21の外接円(中心が回転軸Cである円のうち、第二正弦励磁コイル21の外側で第二正弦励磁コイル21に接触する円)の半径であって、第二正弦励磁コイル21の外径に相当する寸法である。また、式1~式5中のr2は、第二正弦励磁コイル21の内接円(中心が回転軸Cである円のうち、第二正弦励磁コイル21の内側で第二正弦励磁コイル21に接触する円)の半径であって、第二正弦励磁コイル21の内径に相当する寸法である。
【0029】
第二余弦励磁コイル22についても同様である。
図2に示すように、第二余弦励磁コイル22は、往路コイル22A(
図2中のcos-)と復路コイル22B(
図2中のcos+)とを繋いだ形状に形成される。往路コイル22Aは、復路コイル22Bとは逆向きの磁束を生成するように機能する。また、往路コイル22Aおよび復路コイル22Bは、互いに重ならないように同一平面上に配置される。さらに、往路コイル22Aおよび復路コイル22Bの各々は、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、半径方向の幅Wを偏角θに対して正弦波状に変化させる形状に形成されるとともに、第二検出コイル23と重なり合う部分の面積Sについても正弦波状に変化する形状に形成される。
【0030】
例えば、往路コイル22Aの形状は、
図4(A)に示す極座標グラフにおいて、π/2≦θ≦3π/2の範囲内に位置する「cos-領域」に対応する形状に形成される。また、復路コイル22Bの形状は、3π/2≦θ≦5π/2の範囲内に位置する「cos+領域」に対応する形状に形成される。「cos-領域」は、
図4(A)中の「sin+領域」を水平方向に
π/2分移動させたものと同一であり、これらは実質的に同一形状である。
【0031】
また、第一実施例のレゾルバ1は、
図2に示すように、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bが、半径方向に隙間なく互いに隣接するように配置されている。例えば、第二正弦励磁コイル21の往路コイル21Aと第二余弦励磁コイル22の復路コイル22Bとの隣接箇所における半径方向の隙間は、絶縁が確保でき、かつ製造上可能な範囲で近接させてある。また、第二余弦励磁コイル22の復路コイル22Bと第二正弦励磁コイル21の復路コイル21Bとの隣接箇所における半径方向の隙間も、絶縁が確保でき、かつ製造上可能な範囲で近接させてある。
【0032】
同様に、第二正弦励磁コイル21の復路コイル21Bと第二余弦励磁コイル22の往路コイル22Aとの隣接箇所にも実質的に隙間がなく、第二余弦励磁コイル22の往路コイル22Aと第二正弦励磁コイル21の往路コイル21Aとの隣接箇所にも実質的に隙間がない。このように、第二励磁コイル21,22の隙間をなくすことで、隙間がある場合と比較して磁束が生成される領域の面積が大きくなり、第二検出コイル23への信号伝達効率が改善される。
【0033】
なお、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bの隣接箇所における半径方向の隙間に関して、磁束が生成される領域の面積を最大化するには、隙間寸法をできるだけ小さく設定することが考えられる。一方、導体のパターン形成精度や施工精度などを考慮して、所定の隙間寸法を確保することも重要である。
【0034】
往路コイル23Aの形状は、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、0≦θ≦πの範囲で r
2≦r≦r
1の範囲をカバーする四角形に対応するように形成される。あるいは、その四角形よりもやや大きな四角形に対応する形状に形成される。例えば、
図4(B)に示す極座標グラフにおいて、0≦θ≦πの範囲でr
2-a≦r≦r
1+a(aは所定値)の範囲をカバーする四角形に対応するように、往路コイル23Aの形状が設定される。同様に、復路コイル23Bの形状は、
図4(B)に示す極座標グラフにおいて、π≦θ≦2πの範囲でr
2-a≦r≦r
1+aの範囲をカバーする四角形に対応する形状に形成される。
【0035】
第二送信アンテナコイル24は、第二検出コイル23に生じた交流信号をステータ3側へと返送するための巻線(コイル)であり、ロータ2に設けられる。第二送信アンテナコイル24は、その両端が第二検出コイル23の両端に接続されて閉回路を形成する。また、第二送信アンテナコイル24は、例えば第二検出コイル23の内側において、ロータ2の回転軸Cの周囲を螺旋状に旋回するように導体を配索した形状に形成される。
【0036】
[B.作用,効果]
(1)上記のレゾルバ1では、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22の各々と第二検出コイル23とが重なり合う部分の面積Sが、ロータ2の回転に伴い正弦波状に変化するように形成される。このようなコイル設定により、第二励磁コイル21,22から第二検出コイル23への信号伝達を担う磁束の面積を連続的に(スムーズに)変動させることができ、第二検出コイル23に生じる交流信号の波形を滑らかな曲線状にすることができる。したがって、簡素な構成で良好な信号波形を実現することができる。
【0037】
(2)上記のレゾルバ1では、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22の各々が、ロータ2の回転軸Cを基準とする極座標平面において、半径方向の幅Wを偏角θに対して正弦波状に変化させる形状を有している。このような形状の設定により、第二検出コイル23との重畳部分の面積Sが正弦波状に変化する構造を容易に実現することができる。また、第二検出コイル23の形状が簡素なものであっても、面積Sを正弦波状に変化させることができる。例えば、
図4(B)に示すように、半径方向の幅が一定以上の第二検出コイル23を用いることで、面積Sを正弦波状に変化させることができ、良好な信号波形を実現することができる。
【0038】
(3)上記のレゾルバ1では、第二検出コイル23がロータの回転軸と同軸の円環状に形成されている。このような第二検出コイル23を用いることで、シンプルな形状で良好な信号波形を実現して性能を確保することができる。また、第二検出コイル23の構造が簡素であることから、レゾルバ1の製造にかかるコストや手間を削減することができる。
【0039】
(4)上記の第二正弦励磁コイル21では、往路コイル21Aおよび復路コイル21Bの各々が、互いに重ならないように同一平面上に配置されている。また、第二余弦励磁コイル22についても、往路コイル22Aおよび復路コイル22Bの各々が、互いに重ならないように同一平面上に配置されている。このような構造により、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bの各々について、第二検出コイル23までの距離を同一にすることができ、信号強度を揃えることができる。したがって、簡素な構成で良好な信号波形を実現することができる。また、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bを同一層に形成することができ、第二正弦励磁コイル21の構造を簡素化(軽薄化)することができる。
【0040】
(5)上記のレゾルバ1では、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bが、半径方向に隙間なく互いに隣接するように配置されている。このように、第二励磁コイル21,22の隙間がないレイアウトを採用することで、隙間がある場合と比較して磁束が生成される領域の面積を大きくすることができ、第二検出コイル23への信号伝達効率を改善することができる。また、隙間の寸法を一定の値に揃えることで、往路コイル21A,22Aおよび復路コイル21B,22Bの各々で磁束が生成される領域の面積を最大化しつつ、信号の乱れを抑えることができ、簡素な構成で良好な信号波形を実現することができる。
【0041】
(6)上記のレゾルバ1では、第二正弦励磁コイル21(往路コイル21A,復路コイル21B)および第二余弦励磁コイル22(往路コイル22A,復路コイル22B)の各々が、式1,式2で表される曲線で囲まれた領域に対応する形状に形成される。このような構成により、半径方向の幅Wが正弦波状に変化する形状であって、隣接するコイルとの境界線が滑らかな曲線状となる形状を容易に形成することができる。したがって、簡素な構成で良好な信号波形を実現することができる。
【0042】
[C.変形例]
上記の第一実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、公知技術に含まれる各種構成と適宜組み合わせることができる。
【0043】
上記の実施例では、第二励磁コイル21,22のコイルパターンを
図2に示すような花弁形状にしたものを例示したが、具体的なコイルパターンはこれに限定されない。
図6(A)~(D)は、式1,式2中の外径r
1と内径r
2との比率を変化させたときのコイルパターンを示す模式図である。いずれのコイルパターンにおいても、第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22の各々は、半径方向の幅Wを偏角θに対して正弦波状に変化させる形状である。したがって、第二検出コイル23に生じる交流信号の波形を滑らかな曲線状に変化させることができ、良好な信号波形を形成することができる。
【0044】
図7(A)は、第二励磁コイル21,22の内側が完全な円形になるようにしたコイルパターンを示す模式図であり、
図7(B)は各コイル形状を極座標で表現したグラフである。
図7(B)に示す領域は、半径方向の幅Wが偏角θに対して正弦波状に変化する形状に形成されている。また、
図7(B)に示す領域の下端辺に相当する線のうち、0≦θ≦
π/2の範囲は直線状であり、
π/2≦θ≦πの範囲は正弦波状である。さらに、
図7(B)に示す領域の上端辺に相当する線のうち、0≦θ≦
π/2の範囲は正弦波状であり、
π/2≦θ≦πの範囲は0≦θ≦
π/2の範囲とは異なる波形状(二つの正弦波を合成した波形状)である。
【0045】
このようなコイルパターンにおいても、良好な信号波形を形成することができる。ただし、
図7(B)に示す領域を囲む上端辺,下端辺に相当する線は、θ=
π/2で尖った形状(変曲点)になり、コイルパターンがやや歪(いびつ)になる。また、ロータ2側とステータ3側とで回転軸がずれた場合には、変曲点がノイズ発生の原因となりうる。このような点を踏まえると、
図7(A)に示すようなコイルパターンよりも、
図2,
図6(A)~(D)に示すようなコイルパターンが好ましい。
【0046】
図8(B)は、第二励磁コイル21,22のコイル形状を極座標で直線(破線)と正弦波とを合成した形状にした場合を例示するグラフであり、
図8(A)はそのコイルパターンを示す模式図である。
図8(B)に示す領域は、半径方向の幅Wが偏角θに対して正弦波状に変化する形状に形成されている。したがって、このようなコイルパターンにおいても、良好な信号波形を形成することができる。ただし、
図8(A)に示すコイルパターンでは、各コイルの間に隙間ができてしまい、第二検出コイル23への信号伝達効率がやや低下してしまう。このような点を踏まえると、
図8(A)に示すようなコイルパターンよりも、
図2,
図6(A)~(D)に示すようなコイルパターンが好ましい。
【0047】
また、上記の実施例では二相励磁単相出力型のレゾルバ1を例示したが、
図9に示すような単相励磁二相出力型のレゾルバ31に同様の構造を適用してもよい。このレゾルバ31には、ロータ32とステータ33と制御装置34とが設けられる。制御装置34には、信号生成回路35と信号処理回路36とが内蔵される。また、レゾルバ31のロータ32およびステータ33には、第一コイル群40と第二コイル群50とが設けられる。
【0048】
第一コイル群40には、第一正弦検出コイル41,第一余弦検出コイル42,第一励磁コイル43,第一受信アンテナコイル44,第一送信アンテナコイル45が含まれる。同様に、第二コイル群50には、第二正弦検出コイル51,第二余弦検出コイル52,第二励磁コイル53,第二受信アンテナコイル54,第二送信アンテナコイル55が含まれる。これらのコイル群40,50に含まれるコイルのうち、第一正弦検出コイル41,第一余弦検出コイル42,第一励磁コイル43の軸倍角はnXに設定され、第二正弦検出コイル51,第二余弦検出コイル52,第二励磁コイル53の軸倍角は1Xに設定される。
【0049】
第一励磁コイル43,第一受信アンテナコイル44,第二励磁コイル53,第二受信アンテナコイル54は、ロータ32側に設けられる。一方、第一正弦検出コイル41,第一余弦検出コイル42,第一送信アンテナコイル45,第二正弦検出コイル51,第二余弦検出コイル52,第二送信アンテナコイル55は、ステータ33側に設けられる。信号生成回路35で生成された交流信号は、第一送信アンテナコイル45および第二送信アンテナコイル55に伝達された後に、第一受信アンテナコイル44および第二受信アンテナコイル54へと伝達される。
【0050】
この交流信号を受けて第一励磁コイル43および第二励磁コイル53が励磁される。その後、第一正弦検出コイル41,第一余弦検出コイル42,第二正弦検出コイル51,第二余弦検出コイル52がステータ3に対するロータ2の回転角に応じた交流信号を出力し、その信号が信号処理回路36に伝達される。信号処理回路36は、二系統のコイルを経由して得られる交流信号を併用してロータ2のステータ3に対する回転角を算出し、その角度情報を出力する。このようなレゾルバ31において、第二正弦検出コイル51および第二余弦検出コイル52の各々を、半径方向の幅を偏角に対して正弦波状に変化させる形状に形成してもよい。このような構成は、上記の実施例と同様の作用,効果をもたらすものとなる。
【0051】
また、上記の実施例では、ロータ2側の第二検出コイル23が円環状に形成されるとともに、ステータ3側の第二励磁コイル21,22が花弁形状に形成されたレゾルバ1を例示したが、これらの形状を逆にしてもよい。例えば、
図10(A)に示すように、ステータ3側の励磁コイル21′を円環領域内に配置してもよい。この励磁コイル21′は、往路コイル21A′と復路コイル21B′とを繋いだ形状に形成される。これらの形状は、二分割された円環領域の各々に対応する形状に形成される。
【0052】
一方、これに対向配置されるロータ2側の第二検出コイル23′の形状は、
図10(B)に示すように花弁形状に形成する。
図10(B)中の第二検出コイル23′は、往路コイル23A′と復路コイル23B′とを繋いだ形状に形成される 。このような構造においても、レゾルバ1の軸方向視において、第二励磁コイル21′と第二検出コイル23′との重畳部分の面積Sがロータ2の回転に伴い正弦波状に変化する。したがって、上記の実施例と同様の作用,効果を獲得することができ、簡素な構成で良好な信号波形を実現できる。
【0053】
なお、上記の実施例や変形例では、円環形状の領域と花弁形状の領域との重畳部分の面積Sがロータ2の回転に伴い正弦波状に変化するものを説明したが、重畳部分を形成するための励磁コイルおよび検出コイルの具体的な形状は円環形状や花弁形状に限定されない。例えば、上記の実施例における第二検出コイル23の内径側を小さくしたり、外径側を大きくしたりしても、重畳部分の面積は変化せず、良好な信号波形を実現しうる。したがって、内径側の輪郭形状を半径r2の内円よりも小さな多角形にしてもよいし、外径側の輪郭形状を半径r1の外円よりも大きな多角形にしてもよい。少なくとも第二励磁コイル21,22と第二検出コイル23との重畳部分の面積Sを、ロータ2の回転に付随して正弦波状に変化するように設定することで、上記の実施例と同様の作用,効果を獲得することができる。
【0054】
[2.第二実施例]
図11は第二実施例としてのレゾルバ71の構造を示す模式図である。このレゾルバ71は単相励磁二相出力型のレゾルバ71であって、交流信号を入力するとともに振幅変調された信号から回転角を検出するインダクティブ型レゾルバ(インダクティブセンサ)である。レゾルバ71は、ロータ72(回転子)とステータ73(固定子)と制御装置74とを備える。ロータ72は、ステータ73に対して回転可能に軸支される円盤状の部材である。ステータ73は、図示しないケーシングに対して固定される円盤状の部材である。ステータ73には、励磁コイル81,86や検出コイル82,83,87,88が設けられる。一方、ロータ72にはコイルが設けられず、薄膜状の導体84,89が設けられる。
【0055】
制御装置74は、ロータ72のステータ73に対する回転角を演算して出力するものである。制御装置74には、励磁コイル81,86に供給される交流信号を生成する信号生成回路75と、検出コイル82,83,87,88から返送される信号に基づき、回転角に対応する角度情報を出力する信号処理回路76とが内蔵される。信号生成回路75で生成された交流信号は、励磁コイル81,86に伝達され、ステータ73に所定の磁場が形成される。これを受けて、ロータ72の導体84,89の内部には渦電流が流れ、ステータ73の磁場を打ち消す磁場(反磁界)が生成され、磁場を遮蔽する。そしてロータ72の導体84,89の位置は回転角に応じて変化する。そのため、ステータ73側の検出コイル82,83,87,88には、回転角に応じて振幅変調された信号が返送される。この信号は信号処理回路76へと入力される。
【0056】
図11に示すレゾルバ71のロータ72およびステータ73には、第一コイル群80と第二コイル群85とが設けられる。第一コイル群80は、軸倍角がnXの励磁コイルおよび検出コイルを含むコイル群である。これに対して、第二コイル群85は、軸倍角が1Xの励磁コイルおよび検出コイルを含むコイル群である。第一コイル群80および第二コイル群85は、径方向に互いに異なる位置に設けられる。
【0057】
励磁コイル81,86(第一励磁コイル81,第二励磁コイル86)は、第一励磁コイル81,第二励磁コイル86の間に軸方向の磁界を生じさせるコイルである。ステータ73と軸方向に対向するロータ72側の導体84,89(第一導体84,第二導体89)は励磁コイル81,86の磁界を受け、内部に渦電流を生じて励磁コイル81,86の磁界を打ち消す反磁界を生じる。このため導体84,89は励磁コイル81,86の磁界の一部を遮蔽する。励磁コイル81,86には、例えば所定振幅の交流信号が入力される。励磁コイル81,86に入力される交流信号の振幅は、制御装置74の指示により変更可能とされる。ここで、励磁コイル81,86に入力される交流信号の電圧値を「sinωct」と表現する。ωctは交流信号の角速度である。
【0058】
検出コイル82,83,87,88は、励磁コイル81,86の磁界を検出する。軸方向に対向するロータ72側の導体84,89はロータ72の回転に伴って周方向に移動するため、導体84,89が励磁コイル81,86の磁界を遮蔽する部分はロータ角に応じて変化する。したがって、検出コイル82,83,87,88が検出する磁界もロータ角に応じて変化する。
【0059】
第一コイル群80の検出コイル82,83には、第一正弦検出コイル82と第一余弦検出コイル83とが含まれる。同様に、第二コイル群85の検出コイル87,88には、第二正弦検出コイル87と第二余弦検出コイル88とが含まれる。第一正弦検出コイル82および第二正弦検出コイル87はロータ角の正弦を検出し、第一余弦検出コイル83および第二余弦検出コイル88はロータ角の余弦を検出する。
【0060】
ここで、ロータ角をθとおけば、軸倍角がnXである第一正弦検出コイル82で得られる交流信号の電圧値は「sin(nθ)・sinωct」と表現され、第一余弦検出コイル83で得られる交流信号の電圧値は「cos(nθ)・sinωct」と表現される。同様に、軸倍角が1Xである第二正弦検出コイル87で得られる交流信号の電圧値は「sinθ・sinωct」と表現され、第二余弦検出コイル88で得られる交流信号の電圧値は「cosθ・sinωct」と表現される。このように、ロータ角の変化に応じて検出コイル82,83,87,88の各々で得られる変調波の振幅が変化するため、これらの振幅に基づいてロータ角θを特定可能である。検出コイル82,83,87,88の各々で検出された信号は、制御装置74に入力される。
【0061】
導体84,89は、ロータ72の回転角に応じて、励磁コイル81,86で生じた磁場の影響を受ける面積が変化する形状に形成される。具体的には、円環を周方向に多分割するとともに、その多分割された円盤片を周方向に沿って交互に削除したような形状(一つ飛ばしで円盤片を取り除くことによって、残った円盤片も一つ飛ばしで配置される形状)に形成される。
図12(A)に示す第二導体89の形状は、軸倍角が1Xである第二コイル群85における導体の形状例である。第二導体89は、円環を周方向に2等分してなる半円環形状に形成される。軸倍角がnXである第一コイル群80における導体の形状は、円環を周方向に2n等分したのち、それらの円環片を周方向に交互に取り除いたような形状とされる。なお、各導体84,89の形状は、
図12(A)に示すような「塗りつぶし状」でなくてもよく、例えば「外周のみを囲った閉じた環形状」であってもよい。
【0062】
図12(B)は、第二正弦検出コイル87および第二余弦検出コイル88の構造を示す模式的な回路図である。第二正弦検出コイル87は、磁極対(N極およびS極)の一方を生成するための往路コイル87A〔
図12(B)中のsin+〕と磁極対の他方を生成するための復路コイル87B〔
図12(B)中のsin-〕とを繋いだ形状に形成される。往路コイル87Aは、復路コイル87Bとは逆向きの磁束を生成するように機能する。また、往路コイル87Aおよび復路コイル87Bは、互いに重ならないように同一平面上に配置される。第二余弦検出コイル88も、同様の往路コイル88Aおよび復路コイル88Bを有する。第二正弦検出コイル87および第二余弦検出コイル88のレイアウトは、第一実施例における第二正弦励磁コイル21および第二余弦励磁コイル22のレイアウトに対応する。
【0063】
また、レゾルバ71の軸方向視において、第二正弦検出コイル87および第二余弦検出コイル88と導体89とが重なり合う部分の面積をSとおく。第二実施例では、面積Sがロータ72の回転に伴い正弦波状に変化するように、第二正弦検出コイル87,第二余弦検出コイル88,導体89の各形状が設定される。言い換えると、ロータ72の回転軸Cを基準とする極座標平面において、重なり合う部分の面積Sが偏角θに対して正弦波状に変化するように、第二正弦検出コイル87および第二余弦検出コイル88と導体89との重畳状態が設定される。
【0064】
このようなコイル設定により、導体89から検出コイル87,88への信号伝達を担う磁束の面積を連続的に(スムーズに)変動させることができ、検出コイル87,88に生じる交流信号の波形を滑らかな曲線状にすることができる。したがって、簡素な構成で良好な信号波形を実現することができ、上述の実施形態と同様の効果を獲得することができる。なお、第二正弦検出コイル87および第二余弦検出コイル88のコイル形状の設定に際し、
図6(A)~(D),
図7,
図8に示すようなコイル形状を適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,71 レゾルバ
2,72 ロータ
3,73 ステータ
4,74 制御装置
5,75 信号生成回路
6,76 信号処理回路
20 第二コイル群
21 第二正弦励磁コイル(励磁コイル,正弦コイル)
21A 往路コイル
21B 復路コイル
22 第二余弦励磁コイル(励磁コイル,余弦コイル)
22A 往路コイル
22B 復路コイル
23 第二検出コイル(検出コイル,対向コイル)
23A 往路コイル
23B 復路コイル
24 第二送信アンテナコイル
25 第二受信アンテナコイル
85 第二コイル群
86 励磁コイル
87 正弦検出コイル
87A 往路コイル
87B 復路コイル
88 余弦検出コイル
88A 往路コイル
88B 復路コイル
89 導体
C 回転軸
W 幅
θ 偏角