(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】ガスタービン設備、及びガスタービンの制御方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/057 20060101AFI20240313BHJP
F23R 3/34 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
F02C7/057
F23R3/34
(21)【出願番号】P 2022580595
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2022004264
(87)【国際公開番号】W WO2022172853
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021021754
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】林 明典
(72)【発明者】
【氏名】武石 裕行
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】柚木 啓太
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088107(WO,A1)
【文献】特開2004-003752(JP,A)
【文献】特開2009-085221(JP,A)
【文献】米国特許第5950417(US,A)
【文献】特開2009-052548(JP,A)
【文献】特開2019-015179(JP,A)
【文献】特開昭50-070756(JP,A)
【文献】特開平05-126335(JP,A)
【文献】特開2000-130750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/057
F23R 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計と、制御装置と、を備え、
前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングに吸い込まれる空気の流量である吸気量を調節する吸気調節器と、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成され、
前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成され、
前記制御装置は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気量が少なくなるよう、前記吸気調節器の動作を制御する吸気制御器を有する、
ガスタービン設備。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン設備において、
前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計をさらに備え、
前記吸気制御器は、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気調節器の動作を制御する、
ガスタービン設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン設備において、
前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機ケーシング内に戻すことが可能な空気戻しラインと、前記空気戻しライン中を流れる前記圧縮空気である戻し空気の流量を調節可能な戻し空気調節弁と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記戻し空気調節弁の動作を制御する戻し空気制御器と、前記吸気制御器による前記吸気調節器の制御と前記戻し空気制御器による前記戻し空気調節弁の制御とを協調させる協調制御器と、を有し、
前記協調制御器は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気制御器に、前記戻し空気の流量が多くなるよう前記戻し空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項4】
請求項2に記載のガスタービン設備において、
前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機ケーシング内に戻すことが可能な空気戻しラインと、前記空気戻しライン中を流れる前記圧縮空気である戻し空気の流量を調節可能な戻し空気調節弁と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記戻し空気調節弁の動作を制御する戻し空気制御器と、前記吸気制御器による前記吸気調節器の制御と前記戻し空気制御器による前記戻し空気調節弁の制御とを協調させる協調制御器と、を有し、
前記協調制御器は、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気制御器に前記吸気調節器を制御させると共に、前記戻し空気制御器に前記戻し空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項5】
請求項4に記載のガスタービン設備において、
前記協調制御器は、前記排気ガス中のNOx濃度が前記予め定められた値未満になるよう、前記吸気制御器に前記吸気調節器を制御させた後、第一の場合、第二の場合、及び第三の場合のうちいずれか一の場合に、前記戻し空気制御器に、前記戻し空気調節弁により、前記戻し空気が多くなるよう、前記戻し空気の流量を調節させ、
前記第一の場合は、前記排気ガス中の未燃分濃度が前記未燃分濃度範囲内に収まっていない場合であり、
前記第二の場合は、前記排気ガス中の未燃分濃度をより低下させるという要求を受け付けている場合であり、
前記第三の場合は、前記吸気調節器の動作だけでは、燃空比が予め定めた分大きくならない場合である、
ガスタービン設備。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のガスタービン設備において、
前記協調制御器は、前記吸気調節器による前記吸気量の調節での燃空比の変化量と前記戻し空気調節弁による前記戻し空気の流量の調節での燃空比の変化量との比が、予め定められた比になるよう、前記吸気制御器に前記吸気調節器を制御させると共に、前記戻し空気制御器に前記戻し空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービン設備において、
前記開口から前記燃焼室内に導入する前記希釈空気の流量を調節する希釈空気調節弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記希釈空気調節弁の動作を制御する希釈空気制御器と、前記吸気制御器による前記吸気調節器の制御と前記希釈空気制御器による前記希釈空気調節弁の制御とを協調させる協調制御器と、を有し、
前記協調制御器は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器に、前記希釈空気の流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービン設備において、
前記協調制御器は、前記リーン燃焼領域の燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、前記吸気制御器による前記吸気調節器の制御で前記吸気量を少なくさせつつ、前記希釈空気制御器による前記希釈空気調節弁の制御で前記希釈空気の流量を多くさせる、
ガスタービン設備。
【請求項9】
請求項3から6のいずれか一項に記載のガスタービン設備において、
前記開口から前記燃焼室内に導入する前記希釈空気の流量を調節する希釈空気調節弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記希釈空気調節弁の動作を制御する希釈空気制御器を有し、
前記協調制御器は、前記吸気制御器による前記吸気調節器の制御と、前記戻し空気制御器による前記戻し空気調節弁の制御と、前記希釈空気制御器による前記希釈空気調節弁の制御とを協調させ、
前記協調制御器は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器に、前記希釈空気の流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項10】
請求項9に記載のガスタービン設備において、
前記協調制御器は、前記吸気制御器、前記戻し空気制御器及び前記希釈空気制御器に、前記リーン燃焼領域の燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、前記吸気調節器により前記吸気量を少なくさせ、前記戻し空気調節弁により前記戻し空気の流量を多くさせつつ、前記希釈空気調節弁により前記希釈空気の流量を多くさせる、
ガスタービン設備。
【請求項11】
ガスタービンと、空気戻しラインと、戻し空気調節弁と、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計と、制御装置と、を備え、
前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成され、
前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成され、
前記空気戻しラインは、前記圧縮機から吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機内に戻せるよう構成され、
前記戻し空気調節弁は、前記空気戻しライン中を流れる前記圧縮空気である戻し空気の流量を調節できるよう構成され、
前記制御装置は、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気の流量が多くなるよう、前記戻し空気調節弁を制御する戻し空気制御器を有する、
ガスタービン設備。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービン設備において、
前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計をさらに備え、
前記戻し空気制御器は、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記戻し空気調節弁の動作を制御する、
ガスタービン設備。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のガスタービン設備において、
前記開口から前記燃焼室に導入する前記希釈空気の流量を調節する希釈空気調節弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記希釈空気調節弁の動作を制御する希釈空気制御器と、前記戻し空気制御器による前記戻し空気調節弁の制御と前記希釈空気制御器による前記希釈空気調節弁の制御とを協調させる協調制御器と、を有し、
前記協調制御器は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器に、前記希釈空気の流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁を制御させる、
ガスタービン設備。
【請求項14】
請求項13に記載のガスタービン設備において、
前記協調制御器は、前記リーン燃焼領域の燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、前記戻し空気制御器による前記戻し空気調節弁の制御で前記戻し空気の流量を多くさせつつ、前記希釈空気制御器による前記希釈空気調節弁の制御で前記希釈空気の流量を多くさせる、
ガスタービン設備。
【請求項15】
ガスタービンと、希釈空気調節弁と、制御装置と、を備え、
前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成され、
前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成され、
前記希釈空気調節弁は、前記開口から前記燃焼室に導入する前記希釈空気の流量を調節可能な弁であり、
前記制御装置は、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気の流量が増加するよう、前記希釈空気調節弁を制御する希釈空気制御器を有する、
ガスタービン設備。
【請求項16】
請求項15に記載のガスタービン設備において、
前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計をさらに備え、
前記希釈空気制御器は、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記希釈空気調節弁を制御する、
ガスタービン設備。
【請求項17】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている、
ガスタービンの制御方法において、
前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、
前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシングに吸い込まれる空気の流量である吸気量を少なくなする吸気制御工程と、
を実行する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項18】
請求項17に記載のガスタービンの制御方法において、
前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度検知工程S3をさらに実行し、
前記吸気制御工程では、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気量を制御する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のガスタービンの制御方法において、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気制御工程と共に、前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を戻し空気として、前記圧縮機ケーシング内に戻す流量を多くする戻し空気制御工程と、
をさらに実行する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載のガスタービンの制御方法において、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気制御工程と共に、前記希釈空気の流量を多くする希釈空気制御工程をさらに実行する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項21】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている、
ガスタービンの制御方法において、
前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、
前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を戻し空気として、前記圧縮機ケーシング内に戻す流量を多くする戻し空気制御工程と、
を実行する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項22】
請求項21に記載のガスタービンの制御方法において、
前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度検知工程をさらに実行し、
前記戻し空気制御工程では、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記戻し空気の流量を制御する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のガスタービンの制御方法において、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気制御工程と共に、前記希釈空気の流量を多くする希釈空気制御工程をさらに実行する、
ガスタービンの制御方法。
【請求項24】
空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有し、
前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有し、
前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有し、
前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている、
ガスタービンの制御方法において、
前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、
前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、
前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気の流量を多くする希釈空気制御工程と、
を実行する、
ガスタービンの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン設備、及びガスタービンの制御方法に関する。
本願は、2021年2月15日に、日本国に出願された特願2021-021754号に基づき優先権を主張し、この内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスにより駆動するタービンと、を備えている。
【0003】
このようなガスタービンでは、燃料の燃焼により、NOxが生成される。このNOxの排出量は、法律等により規制されている。このため、NOxの排出量を低減する技術が望まれる。
【0004】
例えば、以下の特許文献1には、圧縮機が空気を吸い込む前に、この空気を加熱することで、NOxの排出量を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ガスタービンの燃料として、アンモニアを用いることが注目されている。
【0007】
そこで、本開示は、ガスタービンの燃料としてアンモニアを用いる場合に、NOxの排出量を低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービン設備は、
ガスタービンと、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計と、制御装置と、を備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングに吸い込まれる空気の流量である吸気量を調節する吸気調節器と、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成されている。前記制御装置は、前記NOx濃度計で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気量が少なくなるよう、前記吸気調節器の動作を制御する吸気制御器を有する。
【0009】
NOxの発生量は、燃料の燃焼領域における燃空比に応じて変化する。本態様の燃焼器は、燃焼室内に、リッチ燃焼領域と、リーン燃焼領域とが形成される燃焼器である。よって、本態様の燃焼器は、RQL(Rich burn quick Quench Lean burn)方式を採用する燃焼器である。また、本態様の燃焼器は、アンモニアを燃料にする。このような燃焼器では、ガスタービンを定格負荷運転から部分負荷運転に移行している過程、及び、ガスタービンが部分負荷運転しているとき等(以下、部分負荷運転時)では、燃焼室に流入する全燃焼用空気に対する燃焼室に噴射される全燃料流量の比である燃焼室燃空比が定格負荷運転時よりも小さくなる。ところで、燃焼器でのNOxの発生量は、RQL方式を採用する燃焼器に限らず、燃料の燃焼領域における燃空比に応じて変化する。RQL方式を採用し、アンモニアを燃料とする燃焼器では、部分負荷運転時に、リッチ燃焼領域及びリーン燃焼領域での燃空比がともに小さくなり、燃焼器から排出される燃焼器の燃焼ガス中のNOx濃度が高まる。
【0010】
本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、吸気制御器が、吸気量が少なくなるよう、吸気調節器の動作を制御する。本態様のRQL方式を採用する燃焼器15では、吸気量が少なると、リッチ燃焼領域及びリーン燃焼領域での燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0011】
前記目的を達成するための他の態様としてのガスタービン設備は、
ガスタービンと、空気戻しラインと、戻し空気調節弁と、前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計と、制御装置と、を備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成されている。前記空気戻しラインは、前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機ケーシング内に戻せるよう構成されている。前記戻し空気調節弁は、前記空気戻しライン中を流れる前記圧縮空気である戻し空気の流量を調節できるよう構成されている。前記制御装置は、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気の流量が多くなるよう、前記戻し空気調節弁を制御する戻し空気制御器を有する。
【0012】
本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、戻し空気制御器が、戻し空気の流量が多くなるよう、戻し空気調節弁の動作を制御する。本態様のRQL方式を採用する燃焼器では、戻し空気の流量が多くなると、リッチ燃焼領域及びリーン燃焼領域での燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0013】
前記目的を達成するためのさらに他の態様としてのガスタービン設備は、
ガスタービンと、希釈空気調節弁と、制御装置と、を備える。前記ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。前記燃焼器は、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、が形成されるよう構成されている。前記希釈空気調節弁は、前記開口から前記燃焼室に導入する前記希釈空気の流量を調節可能な弁である。前記制御装置は、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気の流量が増加するよう、前記希釈空気調節弁を制御する希釈空気制御器を有する。
【0014】
本態様では、希釈空気制御器による希釈空気調節弁の制御で、RQL方式を採用する燃焼器における燃焼室内に流入する希釈空気の流量が多くなると、燃焼器本体から燃焼室内に噴射される主燃焼用空気の流量が少なくなる。このため、本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、リーン燃焼領域の燃空比が小さくなり、リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0015】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシングに吸い込まれる空気の流量である吸気量を少なくなする吸気制御工程と、を実行する。
【0016】
前記目的を達成するための他の態様としてのガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシングから吐出された圧縮空気の一部を戻し空気として、前記圧縮機ケーシング内に戻す流量を多くする戻し空気制御工程と、を実行する。
【0017】
前記目的を達成するためのさらに他の態様としてのガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、を有する。前記圧縮機は、軸線を中心として回転可能な圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有する。前記燃焼器は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室を形成する燃焼室形成器と、前記燃焼室内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気を噴射可能な燃焼器本体と、を有する。前記燃焼室形成器には、前記燃焼室形成器外から前記燃焼室内に前記圧縮空気の一部である希釈空気を導入可能な開口が形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体から前記燃焼室内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気を噴射すると共に、前記開口から前記燃焼室内に前記希釈空気を導入して、前記燃焼室内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体からの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域と、前記リッチ燃焼領域からのガスが前記開口からの前記希釈空気により希釈され、前記希釈空気により希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域と、を形成する燃焼工程と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービンから排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程と、前記NOx濃度検知工程で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気の流量を多くする希釈空気制御工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様では、ガスタービンの燃料としてアンモニアを用いる場合に、NOxの排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示に係る第一実施形態におけるガスタービン設備の模式的構成図である。
【
図2】本開示に係る第一実施形態における燃焼器の模式的断面図である。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】本開示に係る第一実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図5】本開示に係る第一実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【
図6】本開示に係る第二実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】本開示に係る第二実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図8】本開示に係る第二実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【
図9】本開示に係る第三実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図10】本開示に係る第三実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図11】本開示に係る第三実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【
図12】本開示に係る第四実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図13】本開示に係る第四実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図14】本開示に係る第四実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【
図15】本開示に係る第五実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図16】本開示に係る第五実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図17】本開示に係る第五実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【
図18】本開示に係る第六実施形態における制御装置の機能ブロック図である。
【
図19】本開示に係る第六実施形態におけるガスタービンの制御方法における手順を示すフローチャートである。
【
図20】本開示に係る第六実施形態における各種運転形態における燃空比とNOx濃度及び未燃分濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係るガスタービン設備の各種実施形態及び各種変形例について、図面を用いて説明する。
【0021】
「第一実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第一実施形態について、
図1~
図5を用いて説明する。
【0022】
本実施形態のガスタービン設備は、
図1に示すように、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOx分を分解する脱硝装置28と、脱硝装置28から流出した排気ガスを外部に排気する煙突29と、ガスタービン10に燃料を供給する燃料供給設備20と、制御装置50と、を備える。
【0023】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機14と、圧縮機14で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器15と、高温高圧の燃焼ガスにより駆動するタービン16と、吸気ダクト12と、中間ケーシング13と、希釈空気調節装置17と、を備える。
【0024】
圧縮機14は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ14rと、この圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、この圧縮機ケーシング14cの吸込み口に設けられている吸気調節器(以下、IGV(inlet guide vane)とする)14vと、を有する。IGV14vは、制御装置50からの指示に従い圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の流量である吸気量を調節する。吸気ダクト12は、圧縮機ケーシング14cの吸込み口に接続されている。
【0025】
タービン16は、燃焼器15からの燃焼ガスにより、ロータ軸線Arを中心として回転するタービンロータ16rと、このタービンロータ16rを覆うタービンケーシング16cと、を有する。タービンロータ16rと圧縮機ロータ14rとは、同一のロータ軸線Arを中心として回転可能に相互に連結されて、ガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機のロータが接続されている。
【0026】
中間ケーシング13は、ロータ軸線Arが延びている方向で、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとの間に配置され、圧縮機ケーシング14cとタービンケーシング16cとを連結する。この中間ケーシング13内には、圧縮機14から吐出された圧縮空気が流入する。
【0027】
燃焼器15は、中間ケーシング13に固定されている。この燃焼器15は、内部に燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、燃焼室15s内に燃料としてのアンモニア及び圧縮空気を噴射する燃焼器本体15bと、を備える。燃焼室形成器15cは、圧縮機14からの圧縮空気が流入する中間ケーシング13内に配置されている。燃焼室15s内では、燃料が圧縮空気内で燃焼する。燃料の燃焼で生成された燃焼ガスは、燃焼室15sを流れて、タービン16に送られる。
【0028】
図2に示すように、燃焼室形成器15cには、燃焼室形成器15c外から燃焼室15s内に圧縮機14からの圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。この燃焼器15は、燃焼室15s内に、リッチ燃焼領域RAと、クエンチ領域QAと、リーン燃焼領域LAとが形成されるよう構成されている。リッチ燃焼領域RAは、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で燃焼器本体15bからの燃料Fを燃焼させる領域である。クエンチ領域QAは、開口15oからの希釈空気Alが導入されてリッチ燃焼領域RAからのガスを希釈する領域である。リーン燃焼領域LAは、クエンチ領域QAからのガス中に含まれる燃料を燃空比が理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させる領域である。よって、この燃焼器15は、RQL(Rich burnquick Quench Lean burn)方式を採用する燃焼器である。なお、リーン燃焼領域LAは、リッチ燃焼領域RAからのガスが開口15oからの希釈空気Alにより希釈され、希釈空気Alにより希釈された後のガス中に含まれる燃料を、燃空比が理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させる領域と、定義することも可能である。
【0029】
リーン燃焼領域LAからのガスは、タービン16に送られる。クエンチ領域QAは、このリーン燃焼領域LAに対して燃焼室15s内のガス流れの上流側に位置している。また、リッチ燃焼領域RAは、クエンチ領域QAに対して燃焼室15s内のガス流れの上流側に位置している。燃焼器本体15bは、燃焼室15s内のリッチ燃焼領域RAに、燃料Fとしてのアンモニア及び圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射する。
【0030】
希釈空気調節装置17は、中間ケーシング13内に配置されている。希釈空気調節装置17は、希釈空気調節弁17vと、希釈空気ライン17pと、を有する。希釈空気ライン17pは、希釈空気調節弁17vと燃焼室形成器15cの開口15oとを接続する。希釈空気調節弁17vは、希釈空気ライン17p及び燃焼室形成器15cの開口15oを介して、燃焼室15s内に導入する希釈空気Alの流量を調節する。この希釈空気Alは、圧縮機14から中間ケーシング13内に流入した圧縮空気の一部である。希釈空気調節弁17vは、弁ケーシング17vcと、弁ケーシング17vc内をスライドする弁体vbと、を有する。弁体vbには、開口が形成されている。弁ケーシング17vcに対して、弁体vbがスライドすることで、弁ケーシング17vc内の流路面積が変化し、希釈空気Alの流量が調節される。
【0031】
図1に示すように、圧縮空気戻し装置18は、空気戻しライン18pと、戻し空気調節弁18vとを有する。空気戻しライン18pは、中間ケーシング13と吸気ダクト12とを接続し、圧縮機14からの吐出された圧縮空気の一部を戻し空気Abとして、圧縮機14に戻すことが可能である。戻し空気調節弁18vは、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量を調節する。
【0032】
脱硝装置28には、アンモニアが供給される。この脱硝装置28は、このアンモニアを用いて、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水蒸気とに分解する。
【0033】
燃料供給設備20は、アンモニアタンク21と、液体アンモニアライン22と、アンモニアポンプ23と、燃料調節弁24と、気化器25と、気体アンモニアライン26と、を有する。
【0034】
アンモニアタンク21には、液体アンモニアが貯留される。液体アンモニアライン22は、アンモニアタンク21と気化器25とを接続する。この液体アンモニアライン22には、アンモニアタンク21からの液体アンモニアを昇圧するアンモニアポンプ23と、液体アンモニアライン22を流れる液体アンモニアの流量を調節する燃料調節弁24と、が設けられている。気化器25は、液体アンモニアと加熱媒体とを熱交換させて、液体アンモニアを加熱し気化させる熱交換器である。気体アンモニアライン26は、気化器25と燃焼器15とを接続する。この気体アンモニアライン26は、気化器25からの気体アンモニアを燃料として、燃焼器15に導く。
【0035】
ガスタービン設備は、さらに、NOx濃度計58と、未燃分濃度計59と、を備える。
NOx濃度計58は、ガスタービン10から排気され脱硝装置28に流入する前の排気ガス中に含まれるNOxの濃度を検知する。未燃分濃度計59は、ガスタービン10から排気され脱硝装置28に流入する前の排気ガス中に含まれる未燃分であるアンモニアの濃度を検知する。
【0036】
制御装置50は、
図3に示すように、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、吸気制御器53と、を有する。燃料流量演算器51は、外部から負荷要求PWrを受け付け、この負荷要求PWrに応じた燃料流量を求め、これを出力する。燃料制御器52は、液体燃料ラインを流れる燃料の流量が燃料流量演算器51で求められた燃料流量になるよう、燃料調節弁24を制御する。吸気制御器53は、燃料流量演算器51が求めた燃料流量、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、IGV14vを制御する。
【0037】
以上で説明した制御装置50は、コンピュータである。この制御装置50は、ハードウェア的には、各種演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUのワークエリアになるメモリ等の主記憶装置と、ハードディスクドライブ装置等の補助記憶装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、表示装置と、を有する。燃料流量演算器51、燃料制御器52、吸気制御器53等の制御装置50における各機能部は、例えば、補助記憶装置に記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、機能する。
【0038】
ここで、
図5を参照して、本実施形態のように、RQL方式を採用する燃焼器15における燃空比と、NOx濃度及び未燃分濃度と、の関係について説明する。
【0039】
NOx濃度は、燃空比が理論空燃比Rtの近傍で最大になる。NOx濃度が最大になる燃空比(以下、最大NOx濃度燃空比)Rmaxを含む燃空比の領域(以下、中燃空比領域)RRmでは、後述の他の燃空比の領域RRa,RRbよりも、NOx濃度が高い。中燃空比領域RRmは、最大NOx濃度燃空比Rmaxから燃空比が所定分だけ小さい燃空比までの領域と、最大NOx濃度燃空比Rmaxから燃空比が所定分だけ大きい燃空比までの領域と、を合わせた領域である。この中燃空比領域RRmでは、燃空比が、最大NOx濃度燃空比Rmaxから燃空比が小さくなるに連れて、NOx濃度が急激に小さくなる。また、この中燃空比領域RRmでは、最大NOx濃度燃空比Rmaxから燃空比が大きくなるに連れて、NOx濃度が急激に小さくなる。
【0040】
燃空比が中燃空比領域RRmよりも小さい小燃空比領域RRaでは、NOx濃度が極めて低く、且つ、この小燃空比領域RRa内で燃空比が変化しても、NOx濃度はほとんど変化しない。また、燃空比が中燃空比領域RRmよりも大きい大燃空比領域RRbでも、NOx濃度が極めて低く、且つ、この大燃空比領域RRb内で燃空比が変化しても、NOx濃度はほとんど変化しない。
【0041】
一方、中燃空比領域RRmでは、未燃分濃度が極めて低く、この中燃空比領域RRmで燃空比が変化しても、未燃分濃度はほとんど変化しない。小燃空比領域RRaでは、燃空比が小さくなるに連れて未燃分濃度が次第に大きくなる。また、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1では、未燃分濃度が極めて低く、この領域RRb1で燃空比が変化しても、未燃分濃度はほとんど変化しない。大燃空比領域RRb中で燃空比が大きい領域RRb2では、燃空比が大きくなるに連れて、未燃分濃度が急激に高くなる。
【0042】
ガスタービンを定格負荷運転している定格負荷運転時、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rrrは、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置する。このため、この定格負荷運転時、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度及び未燃分濃度は、極めて低い。また、定格負荷運転時、リーン燃焼領域LAでの燃空比Rrlは、少燃空比領域RRa中で燃空比が大きい領域RRa1内に位置する。このため、この定格負荷運転時、このリーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度及び未燃分濃度は、極めて低い。なお、燃焼室15s内に流入する全燃焼用空気(主燃焼用空気Am+希釈空気Al)の流量と燃焼室15s内に噴射される燃料の流量との比である燃空比(以下、燃焼室燃空比)は、リッチ燃焼領域RAでの燃空比とリーン燃焼領域LAでの燃空比との間の値である。
【0043】
ガスタービン10を定格負荷運転から部分負荷運転に移行している過程、及び、ガスタービン10が部分負荷運転しているとき等(以下、部分負荷運転時)では、燃焼器15に供給される燃料流量が少なくなり、燃焼室燃空比が定格負荷運転時よりも小さくなる。この関係で、部分負荷運転時、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprは、定格負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rrrより小さくなり、中燃空比領域RRm内に位置する。このため、この部分負荷運転時、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度は、定格負荷運転時よりも高くなる。また、この部分負荷運転時、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度は、定格負荷運転時と同様、極めて低い。
【0044】
以上のように、単に部分負荷運転しているときには、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度が高くなり、ガスタービン10から排気される排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値よりも高くなる場合がある。
【0045】
そこで、本実施形態では、部分負荷運転時におけるNOx濃度を低下させるために、本実施形態では、吸気制御器53による吸気量の制御を行う。
【0046】
次に、
図4に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0047】
まず、燃焼工程S1が実行される。この燃焼工程S1では、燃焼器本体15bから主燃焼用空気Am及び燃料Fとしてのアンモニアが燃焼室15s内に噴出される。さらに、開口15oから燃焼室15s内のクエンチ領域QAに希釈空気Alが導入させる。この結果、この燃焼工程S1では、前述したように、燃焼室15s内に、リッチ燃焼領域RAと、クエンチ領域QAと、リーン燃焼領域LAとが、形成される。
【0048】
この燃焼工程S1の実行中、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。NOx濃度検知工程S2では、NOx濃度計58により排気ガス中のNOx濃度が検知される。また、未燃分濃度検知工程S3では、未燃分濃度計59により排気ガス中の未燃分濃度が検知される。
【0049】
吸気制御工程S4では、吸気制御器53が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の流量である吸気量が少なくなることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、IGV14vの動作を制御する。具体的に、吸気制御工程S4では、例えば、まず、吸気制御器53が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。そして、吸気制御器53は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の流量である吸気量が予め定められた分だけ少なることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、IGV14vの動作を制御する。また、吸気制御器53は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が増加中であると判断すると、予め定められた関係を用いて、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じた吸気量(又はIGV開度)を定めてもよい。ここで、予め定められた関係とは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度と、NOx濃度が予め定められた値未満になり(且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まる)吸気量(又はIGV開度)との関係である。
【0050】
ここで、予め定められた未燃分濃度範囲は、NOx濃度に応じて定まる上限未燃分濃度と下限未燃分濃度との間の範囲である。ガスタービン10から排気される排気ガス中の未燃分は、本実施形態ではアンモニアである。脱硝装置28は、前述したように、アンモニアを用いて、ガスタービン10からの排気ガス中に含まれるNOxを窒素と水蒸気とに分解する。このため、排気ガス中に未燃分としてのアンモニアが含まれていると、この排気ガス中のアンモニアをNOxの分解反応に利用でき、脱硝装置28に供給するアンモニアの量を抑えることができる。そこで、本実施形態では、排気ガス中の未燃分がNOx濃度に応じて予め定められた未燃分濃度範囲内に収めるよう、IGV14vの動作を制御する。
【0051】
以上のIGV14vの動作制御により、IGV14v開度が小さくなり、圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる空気の量である吸気量が少なくなる。
【0052】
負荷が一定で、吸気量が予め定められた分だけ少なくなると、燃焼室燃空比は予め定められた分だけ大きくなる。この結果、
図5に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rirは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に吸気量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Rilは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rplより予め定められた分だけ大きくなり、小燃空比領域RRa中で燃空比が大きい領域RRa1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に吸気量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0053】
よって、本実施形態では、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0054】
「第二実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第二実施形態について、
図6~
図8を用いて説明する。
【0055】
本実施形態のガスタービン設備は、第一実施形態と同様、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、脱硝装置28と、煙突29と、燃料供給設備20と、制御装置50aと、を備える。但し、
図6に示すように、本実施形態の制御装置50aは、第一実施形態の制御装置50と異なる。
【0056】
本実施形態の制御装置50aは、第一実施形態の制御装置50と同様、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、を有する。本実施形態の制御装置50aは、さらに、戻し空気制御器54と、第一実施形態の吸気制御器53と異なる吸気制御器53aと、を有する。
【0057】
本実施形態の吸気制御器53aは、第一実施形態の吸気制御器53と同様、燃料流量演算器51からの燃料流量に応じて、IGV14vを制御する。但し、本実施形態の吸気制御器53aは、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、IGV14vを制御しない。この替わりに、戻し空気制御器54は、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、戻し空気調節弁18vの動作を制御する。
【0058】
次に、
図7に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0059】
まず、第一実施形態と同様に、燃焼工程S1が実行される。さらに、この燃焼工程S1の実行中、第一実施形態と同様に、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。
【0060】
戻し空気制御工程S5では、戻し空気制御器54が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、戻し空気調節弁18vの動作を制御する。具体的に、戻し空気制御工程S5では、例えば、まず、戻し空気制御器54が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。そして、戻し空気制御器54は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、戻し空気調節弁18vの動作を制御する。この戻し空気調節弁18vの動作制御により、戻し空気調節弁18vの弁開度が大きくなり、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなる。また、戻し空気制御器54は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が増加中であると判断すると、予め定められた関係を用いて、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じた戻し空気量(又は戻し空気調節弁の開度)を定めてもよい。ここで、予め定められた関係とは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度と、NOx濃度が予め定められた値未満になり(且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まる)戻し空気量(又は戻し空気調節弁の開度)との関係である。
【0061】
負荷一定で、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなると、第一実施形態において、吸気量を少なくした場合と同様に、燃焼室燃空比は予め定められた分だけ大きくなる。この結果、
図8に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rbrは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に戻し空気Abの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Rblは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rplより予め定められた分だけ大きくなり、小燃空比領域RRa中で燃空比が大きい領域RRa1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に戻し空気Abの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0062】
よって、本実施形態では、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0063】
「第三実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第三実施形態について、
図9~
図11を用いて説明する。
【0064】
本実施形態のガスタービン設備は、第一実施形態と同様、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、脱硝装置28と、煙突29と、燃料供給設備20と、制御装置50bと、を備える。但し、
図9に示すように、本実施形態の制御装置50bは、第一実施形態の制御装置50と異なる。
【0065】
本実施形態の制御装置50bは、第一実施形態の制御装置50と同様、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、を有する。本実施形態の制御装置50bは、さらに、希釈空気制御器55と、第一実施形態の吸気制御器53と異なる吸気制御器53aと、を有する。
【0066】
本実施形態の吸気制御器53aは、第一実施形態の吸気制御器53と同様、燃料流量演算器51からの燃料流量に応じて、IGV14vを制御する。但し、本実施形態の吸気制御器53aは、第二実施形態の吸気制御器53aと同様、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、IGV14vを制御しない。この替わりに、希釈空気制御器55は、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、希釈空気調節弁17vの動作を制御する。
【0067】
次に、
図10に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0068】
まず、第一実施形態と同様に、燃焼工程S1が実行される。さらに、この燃焼工程S1の実行中、第一実施形態と同様に、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。
【0069】
希釈空気制御工程S6では、希釈空気制御器55が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、燃焼室15s内に導入する希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、希釈空気調節弁17vの動作を制御する。具体的に、希釈空気制御工程S6では、例えば、まず、希釈空気制御器55が、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。そして、希釈空気制御器55は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、燃焼室15s内に導入する希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなることで、NOx濃度が予め定められた値未満になり且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、希釈空気調節弁17vの動作を制御する。この希釈空気調節弁17vの動作制御により、燃焼室15s内に流入する希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなる一方で、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が予め定められた分だけ少なくなる。また、希釈空気制御器55は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が増加中であると判断すると、予め定められた関係を用いて、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じた希釈空気量(又は希釈空気調節弁の開度)を定めてもよい。ここで、予め定められた関係とは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度と、NOx濃度が予め定められた値未満になり(且つ未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まる)希釈空気量(又は希釈空気調節弁の開度)との関係である。
【0070】
この希釈空気調節弁17vの以上の動作制御のみでは、燃焼室空燃比は変化しない。
【0071】
前述したように、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が予め定められた分だけ少なくなると、
図11に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rcrは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなっても、リーン燃焼領域LAの燃空比Rclは、前述の単なる部分負荷運転時におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rplと変わらない。これは、希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の空気の流量が予め定められた分だけ少なくなるからである。このため、部分負荷運転時に希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0072】
よって、本実施形態でも、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0073】
「第四実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第四実施形態について、
図12~
図14を用いて説明する。
【0074】
本実施形態のガスタービン設備は、第一実施形態と同様、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、脱硝装置28と、煙突29と、燃料供給設備20と、制御装置50cと、を備える。但し、
図12に示すように、本実施形態の制御装置50cは、第一実施形態の制御装置50と異なる。
【0075】
本実施形態の制御装置50cは、第一実施形態の制御装置50と同様、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、を有する。本実施形態の制御装置50cは、さらに、戻し空気制御器54cと、協調制御器56と、第一実施形態の吸気制御器53と異なる吸気制御器53cと、を有する。
【0076】
本実施形態の吸気制御器53cは、第一実施形態の吸気制御器53と同様、燃料流量演算器51からの燃料流量に応じて、IGV14vを制御する。また、本実施形態の吸気制御器53cは、協調制御器56からの指示に応じてIGV14vを制御する。戻し空気制御器54cは、協調制御器56からの指示に応じて、戻し空気調節弁18vを制御する。協調制御器56は、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、吸気制御器53cによるIGV14vの動作制御と戻し空気制御器54cによる戻し空気調節弁18vの動作制御とを協調させる。
【0077】
次に、
図13に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0078】
まず、第一実施形態と同様に、燃焼工程S1が実行される。さらに、この燃焼工程S1の実行中、第一実施形態と同様に、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。
【0079】
協調制御器56は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、吸気制御器53cにIGV14vを制御するよう指示する。具体的に、例えば、協調制御器56は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。そして、協調制御器56は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、吸気制御器53cにIGV14vを制御するよう指示する。このとき、協調制御器56は、吸気量が予め定められた分だけ少なることで、NOx濃度が予め定められた値未満になるよう、吸気制御器53cに指示する。吸気制御器53cは、この指示を受けると、吸気制御工程S4cにおいて、吸気量が予め定められた分だけ少なって、NOx濃度が予め定められた値未満になるよう、IGV14vの動作を制御する。このIGV14vの動作制御により、IGV14v開度が小さくなり、圧縮機ケーシング14c内に吸い込まれる吸気量が少なくなる。
【0080】
吸気量が予め定められた分だけ少なくなると、燃焼室燃空比は予め定められた分だけ大きくなる。この結果、
図14に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Rirは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に吸気量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Rilは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rplより予め定められた分だけ大きくなり、小燃空比領域RRa中で燃空比が大きい領域RRa1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に吸気量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、前述の単なる部分負荷運転時よりも、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を低くすることができる。
【0081】
協調制御器56は、吸気制御器53cによりIGV14vの動作制御された後、以下の第一の場合、第二の場合、及び第三の場合であるかを判断する。
第一の場合:排気ガス中の未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まっていない場合
第二の場合:オペレター等から排気ガス中の未燃分濃度をより低下さるという要求を受け付けている場合
第三の場合:IGV14vの動作だけでは、燃空比が予め定められた分大きくならない場合
【0082】
協調制御器56は、吸気制御器53cによりIGV14vの動作制御された後、第一の場合、又は第二の場合であると判断すると、戻し空気制御器54cに戻し空気調節弁18vを制御するよう指示する。
【0083】
協調制御器56は、第一の場合であると判断すると、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くすることで、未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、戻し空気制御器54cに指示する。戻し空気制御器54cは、この指示を受けると、戻し空気制御工程S5cにおいて、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、戻し空気調節弁18vを制御する。この戻し空気調節弁18vの動作制御により、戻し空気調節弁18vの弁開度が大きくなり、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなる。
【0084】
また、協調制御器56は、第二の場合であると判断すると、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、未燃分濃度がより低くなるよう、戻し空気制御器54cに指示する。戻し空気制御器54cは、この指示を受けると、戻し空気制御工程S5cにおいて、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、未燃分濃度がより低くなるよう、戻し空気調節弁18vを制御する。この戻し空気調節弁18vの動作制御により、戻し空気調節弁18vの弁開度が大きくなり、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなる。
【0085】
また、協調制御器56は、第三の場合であると判断すると、空気戻しライン18pを流れる戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなることで、燃空比が予め定められた分大きくなるよう、戻し空気制御器54cに指示する。戻し空気制御器54cは、この指示を受けると、未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、戻し空気調節弁18vを制御する。この戻し空気調節弁18vの動作制御により、戻し空気調節弁18vの弁開度が大きくなり、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなる。
【0086】
以上の戻し空気制御工程S5cの実行で、
図14に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Ribrは、前述の吸気制御工程S4cの実行後におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rirより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収める、又はリッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度をより低くすることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Riblは、前述の吸気制御工程S4cの実行後におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rilより予め定められた分だけ大きくなり、小燃空比領域RRa中で燃空比が大きい領域RRa1内に位置するようになる。
このため、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収める、又はリーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度をより低くすることができる。
【0087】
よって、本実施形態では、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収める、又はこの排気ガス中の未燃分濃度をより低くすることができる。
【0088】
ところで、吸気制御工程の実行でも、戻し空気制御工程の実行でも、以上で説明したように、燃空比を変えることができる。このため、吸気制御工程と戻し空気制御工程とのうち、いずれか一方を実行すれば、NOx濃度及び未燃分濃度を調節することができる。但し、戻し空気制御工程を実行すると、戻し空気の流量が増えるため、圧縮機14の負荷が高まる。このため、戻し空気制御工程を実行した場合、吸気制御工程を実行した場合よりも、ガスタービン効率が低くなる。言い換えると、戻し空気制御工程を実行する場合よりも、吸気制御工程を実行する方が、ガスタービン効率が高くなる。また、戻し空気制御工程を実行すると、高温の圧縮空気の一部が圧縮機14に戻る関係で、燃焼器15に流入する圧縮空気の温度が、吸気制御工程を実行した場合よりも、高くなる。この結果、戻し空気制御工程を実行すると、吸気制御工程を実行した場合よりも、燃料の燃焼性が高まり、未燃分濃度が低くなる。
【0089】
よって、ガスタービン効率を優先する場合には、吸気制御工程を実行することが好ましく、未燃分濃度の低下を優先する場合には、戻し空気制御工程を実行することが好ましい。
【0090】
そこで、本実施形態では、NOx濃度の低減を図りつつもガスタービン効率の低下を抑えるために、まず、吸気制御工程S4cを実行する。そして、この吸気制御工程S4c後に、前述の第一の場合又は第二の場合には、効果的に未燃分濃度を低下させるために、戻し空気制御工程S5cを実行する。
【0091】
以上のように、本実施形態では、吸気制御工程S4cの実行後に、戻し空気制御工程S5cを実行する。しかしながら、吸気制御工程S4cと戻し空気制御工程S5cとを並行して実行してもよい。この場合、協調制御器56は、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、吸気制御工程S4c及び戻し空気制御工程S5cの実行での燃空比の増加量を、NOx濃度に応じた予め定められた量に定める。次に、協調制御器56は、吸気制御工程S4cのみの実行での燃空比の増加量分と、戻し空気制御工程S5cのみの実行での燃空比の増加量との比を予め定められた比にする。そして、協調制御器56は、この比と、吸気制御工程S4c及び戻し空気制御工程S5cの実行での燃空比の増加量とから、各工程での燃空比の増加量を求める。最後に、協調制御器56は、吸気制御器53cに対して、吸気制御工程S4cの実行による燃空比の増加量を伝え、戻し空気制御器54cに対して、戻し空気制御工程S5cの実行による燃空比の増加量を伝える。すなわち、この場合、IGV14vによる吸気量の調節での燃空比の変化量と戻し空気調節弁18vによる戻し空気Abの流量の調節での燃空比の変化量との比が、予め定められた比になるよう、吸気制御器53cに吸気調節器を制御させると共に、戻し空気制御器54cに戻し空気調節弁18vを制御させる。
【0092】
以上にように、吸気制御工程S4cと戻し空気制御工程S5cとを並行して実行し、且つガスタービン効率を優先する場合、吸気制御工程S4cのみの実行での燃空比の増加量分を戻し空気制御工程S5cのみの実行での燃空比の増加量より多くなるよう、前述の予め定められた比を定めるとよい。また、未燃分濃度の低下を優先する場合には、戻し空気制御工程S5cのみの実行での燃空比の増加量を吸気制御工程S4cのみの実行での燃空比の増加量分より多くなるよう、前述の予め定められた比を定めるとよい。なお、この予め定められた比は、外部から協調制御器56に記憶され、協調制御器56は、この予め定められた比を用いて協調制御を行う。
【0093】
また、前述したように、吸気量の変化に対するNOx濃度及び未燃分濃度の変化感度と、戻し空気量の変化に対するNOx濃度及び未燃分濃度の変化感度とは、異なる。このため、吸気制御工程S4cと戻し空気制御工程S5cとを並行して実行する場合、例えば、IGV開度を大きくさせつつ、戻し空気調節弁18vの大きくさせ、且つこれらの動作量の比を適切に設定すれば、NOx濃度を一定に保ちつつ未燃分濃度を低下させることも可能である。このように、IGV14vの動作と戻し空気調節弁18vの動作とを協調制御することで、排気ガスのNOxと未燃分との存在比を変更することができ、排気ガスの性状を脱硝に有利な性状にすることができる。
【0094】
「第五実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第五実施形態について、
図15~
図17を用いて説明する。
【0095】
本実施形態のガスタービン設備は、第一実施形態と同様、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、脱硝装置28と、煙突29と、燃料供給設備20と、制御装置50dと、を備える。但し、
図15に示すように、本実施形態の制御装置50dは、第一実施形態の制御装置50と異なる。
【0096】
本実施形態の制御装置50dは、第一実施形態の制御装置50と同様、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、を有する。本実施形態の制御装置50dは、さらに、希釈空気制御器55dと、協調制御器56dと、第一実施形態の吸気制御器53と異なる吸気制御器53dと、を有する。
【0097】
本実施形態の吸気制御器53dは、第一実施形態の吸気制御器53と同様、燃料流量演算器51からの燃料流量に応じて、IGV14vを制御する。また、本実施形態の吸気制御器53dは、協調制御器56dからの指示に応じてIGV14vを制御する。希釈空気制御器55dは、協調制御器56dからの指示に応じて、希釈空気調節弁17vを制御する。協調制御器56dは、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、吸気制御器53dによるIGV14vの動作制御と希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの動作制御とを協調させる。
【0098】
次に、
図16に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0099】
まず、第一実施形態と同様に、燃焼工程S1が実行される。さらに、この燃焼工程S1の実行中、第一実施形態と同様に、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。
【0100】
協調制御器56dは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、吸気制御器53dにIGV14vを制御するよう指示すると共に、希釈空気制御器55dに希釈空気調節弁17vを制御するよう指示する。具体的に、例えば、協調制御器56dは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。
そして、協調制御器56dは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、吸気制御器53dにIGV14vを制御するよう指示すると共に、希釈空気制御器55dに希釈空気調節弁17vを制御するよう指示する。
【0101】
ここで、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったとき、仮に、吸気制御工程を実行せず、第三実施形態と同様に、希釈空気制御工程のみを実行したとする。この場合、前述したように、
図11を用いて前述したように、リーン燃焼領域LAの燃空比Rclは、前述の単なる部分負荷運転時におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rplと変わらない。
【0102】
そこで、本実施形態では、協調制御器56dは、NOx濃度が予め定められた値未満になり、且つ、リーン燃焼領域LAから流出するガス中の未燃分濃度が高くならず、未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの制御と、吸気制御器53dによるIGV14vの制御とを協調制御する。具体的に、協調制御器56dは、リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、吸気制御器53dによるIGV14vの制御で吸気量を少なくさせつつ、希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの制御で希釈空気Alの流量を多くさせる。
【0103】
以上のような協調制御器56dから、吸気制御器53d及び希釈空気制御器55dへの指示により、吸気制御器53d及び希釈空気制御器55dが動作し、吸気制御工程S4d及び希釈空気制御工程S6dが実行される。
【0104】
NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったとき、吸気制御工程S4d及び希釈空気制御工程S6dが実行されると、吸気量が予め定められた分だけ少なくなって、希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなる。この結果、
図17に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Ricrは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に吸気量及び希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Riclは、部分負荷運転時であっても、希釈空気制御工程S6dのみを実行した場合におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rclより予め定められた分だけ大きくなる。このため、部分負荷運転時に吸気量及び希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を低く抑えて、予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0105】
よって、本実施形態では、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0106】
以上のように、本実施形態の協調制御器56dは、吸気制御器53dによるIGV14vの動作制御と希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの動作制御とを協調させる。しかしながら、協調制御器56dは、戻し空気制御器54dによる戻し空気調節弁18vの動作制御と希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの動作制御とを協調させてもよい。
【0107】
この場合、協調制御器56dは、NOx濃度が予め定められた値未満になり、且つ、リーン燃焼領域LAから流出するガス中の未燃分濃度が高くならず、未燃分濃度が予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、吸気制御器53dによるIGV14vの動作制御と、希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの制御とを協調制御する。具体的に、協調制御器56dは、リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、戻し空気制御器54dによる戻し空気調節弁18vの制御で戻し空気Abの流量を多くさせつつ、希釈空気制御器55dによる希釈空気調節弁17vの制御で希釈空気Alの流量を多くさせる。
【0108】
「第六実施形態」
以下、本開示に係るガスタービン設備の第六実施形態について、
図18~
図20を用いて説明する。
【0109】
本実施形態のガスタービン設備は、第一実施形態と同様、ガスタービン10と、圧縮空気戻し装置18と、脱硝装置28と、煙突29と、燃料供給設備20と、制御装置50eと、を備える。但し、
図18に示すように、本実施形態の制御装置50eは、第一実施形態の制御装置50と異なる。
【0110】
本実施形態の制御装置50eは、第一実施形態の制御装置50と同様、燃料流量演算器51と、燃料制御器52と、を有する。本実施形態の制御装置50eは、さらに、戻し空気制御器54eと、希釈空気制御器55eと、協調制御器56eと、第一実施形態の吸気制御器53と異なる吸気制御器53eと、を有する。
【0111】
本実施形態の吸気制御器53eは、第一実施形態の吸気制御器53と同様、燃料流量演算器51からの燃料流量に応じて、IGV14vを制御する。また、本実施形態の吸気制御器53eは、協調制御器56eからの指示に応じてIGV14vを制御する。戻し空気制御器54eは、協調制御器56eからの指示に応じて、戻し空気調節弁18vを制御する。希釈空気制御器55eは、協調制御器56eからの指示に応じて、希釈空気調節弁17vを制御する。協調制御器56eは、NOx濃度計58が検知したNOx濃度、及び未燃分濃度計59が検知した未燃分濃度に応じて、吸気制御器53eによるIGV14vの動作制御と戻し空気制御器54eによる戻し空気調節弁18vの動作制御と希釈空気制御器55eによる希釈空気調節弁17vの動作制御とを協調させる。
【0112】
次に、
図19に示すフローチャートに従って、本実施形態におけるガスタービン10の制御方法の実行手順について説明する。
【0113】
まず、第一実施形態と同様に、燃焼工程S1が実行される。さらに、この燃焼工程S1の実行中、第一実施形態と同様に、NOx濃度検知工程S2及び未燃分濃度検知工程S3が実行される。
【0114】
協調制御器56eは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度に応じて、吸気制御器53eにIGV14vを制御するよう指示し、戻し空気制御器54eに戻し空気調節弁18vを制御するよう指示し、さらに、希釈空気制御器55eに希釈空気調節弁17vを制御するよう指示する。具体的に、例えば、協調制御器56eは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったか否かを判断する。そして、協調制御器56eは、NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったと判断すると、吸気制御器53eにIGV14vを制御するよう指示し、戻し空気制御器54eに戻し空気調節弁18vを制御するよう指示し、さらに、希釈空気制御器55eに希釈空気調節弁17vを制御するよう指示する。
【0115】
この結果、吸気制御器53eによる吸気制御工程S4e、戻し空気制御器54eによる戻し空気制御工程S5e、及び、希釈空気制御器55eによる希釈空気制御工程S6eが実行される。
【0116】
この場合、前述の第四実施形態と同様に、協調制御器56eは、吸気制御器53eによるIGV14vの制御と戻し空気制御器54eに戻し空気調節弁18vの制御とを協調制御する。よって、この場合でも、吸気制御工程S4eを実行した後に、戻し空気制御工程S5eを実行してもよいし、吸気制御工程S4eと戻し空気制御工程S5eとを並行して実行してもよい。また、この場合、協調制御器56eは、前述の第五実施形態と同様に、吸気制御器53eによるIGV14vの制御及び戻し空気制御器54eに戻し空気調節弁18vの制御に対して、希釈空気制御器55eによる希釈空気調節弁17vを協調制御する。
【0117】
NOx濃度計58で検知されたNOx濃度が予め定められた値以上になったとき、吸気制御工程S4e、戻し空気制御工程S5e及び希釈空気制御工程S6eが実行されると、吸気量が予め定められた分だけ少なり、戻し空気Abの流量が予め定められた分だけ多くなり、希釈空気Alの流量が予め定められた分だけ多くなる。この結果、
図20に示すように、リッチ燃焼領域RAでの燃空比Ribcrは、部分負荷運転時であっても、前述の単なる部分負荷運転時におけるリッチ燃焼領域RAでの燃空比Rprより予め定められた分だけ大きくなり、大燃空比領域RRb中で燃空比が小さい領域RRb1内に位置するようになる。このため、部分負荷運転時に、吸気量、戻し空気Abの流量、及び希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リッチ燃焼領域RAから流出したガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。また、リーン燃焼領域LAでの燃空比Ribclは、部分負荷運転時であっても、希釈空気制御工程のみを実行した場合におけるリーン燃焼領域LAでの燃空比Rclより予め定められた分だけ大きくなる。このため、部分負荷運転時に、吸気量、戻し空気Abの流量、及び希釈空気Alの流量を前述したように制御することで、部分負荷運転時であっても、リーン燃焼領域LAから流出したガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、リーン燃焼領域LAから流出したガス中の未燃分濃度を低く抑えて、予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0118】
よって、本実施形態では、部分負荷運転時においても、ガスタービン10から排気された排気ガス中のNOx濃度を極めて低く抑えることができる上に、この排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内に収めることができる。
【0119】
「変形例」
以上の各実施形態におけるNOx濃度計58は、ガスタービン10から排気され脱硝装置28に流入する前の排気ガス中に含まれるNOxの濃度を検知する。また、未燃分濃度計59は、ガスタービン10から排気され脱硝装置28に流入する前の排気ガス中に含まれる未燃分であるアンモニアの濃度を検知する。しかしながら、NOx濃度計58は、脱硝装置28から排気された排気ガス中に含まれるNOxの濃度を検知してもよい。また、未燃分濃度計59は、脱硝装置28から排気された排気ガス中に含まれる未燃分であるアンモニアの濃度を検知してもよい。
【0120】
以上の各実施形態における燃焼室形成器15cは、複数の開口15oを有してもよい。この場合、複数の開口15oのうち、少なくとも一の開口15oに希釈空気調節装置17が接続されていればよい。
【0121】
以上の各実施形態における希釈空気調節装置17は、希釈空気調節弁17vと、希釈空気ライン17pと、を有する。しかしながら、希釈空気調節装置17は、希釈空気ライン17pが無くてもよい。この場合、希釈空気調節弁17vの弁ケーシング17vcは、燃焼室形成器15cに直接接続される。
【0122】
以上の各実施形態におけるガスタービン設備は、いずれも、圧縮空気戻し装置18、及び希釈空気調節装置17を備える。しかしながら、以上の各実施形態のうち、戻し空気制御工程を実行しない実施形態におけるガスタービン設備では、圧縮空気戻し装置18を省略してもよい。また、以上の各実施形態のうち、希釈空気制御工程を実行しない実施形態におけるガスタービン設備では、希釈空気調節装置17を省略してもよい。
【0123】
以上、本開示の実施形態及び変形例について詳述したが、本開示は上記実施形態及び上記変形例に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0124】
「付記」
以上の実施形態におけるガスタービン設備は、例えば、以下のように把握される。
【0125】
(1)第一態様におけるガスタービン設備は、
ガスタービン10と、前記ガスタービン10から排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計58と、制御装置50,50c,50d,50eと、を備える。前記ガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記圧縮機14は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ14rと、前記圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、前記圧縮機ケーシング14cに吸い込まれる空気の流量である吸気量を調節する吸気調節器14vと、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。前記燃焼器15は、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、が形成されるよう構成されている。前記制御装置50,50c,50d,50eは、前記NOx濃度計58で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気量が少なくなるよう、前記吸気調節器14vの動作を制御する吸気制御器53,53c,53d,53eを有する。
【0126】
NOxの発生量は、燃料の燃焼領域における燃空比に応じて変化する。本態様の燃焼器15は、燃焼室15s内に、リッチ燃焼領域RAと、リーン燃焼領域LAとが形成される燃焼器である。よって、本態様の燃焼器15は、RQL(Rich burn quick Quench Leanburn)方式を採用する燃焼器である。また、本態様の燃焼器15は、アンモニアを燃料にする。このような燃焼器15では、ガスタービン10を定格負荷運転から部分負荷運転に移行している過程、及び、ガスタービン10が部分負荷運転しているとき等(以下、部分負荷運転時)では、燃焼室15sに流入する全燃焼用空気に対する燃焼室15sに噴射される全燃料流量の比である燃焼室燃空比が定格負荷運転時よりも小さくなる。ところで、燃焼器15でのNOxの発生量は、RQL方式を採用する燃焼器15に限らず、燃料の燃焼領域における燃空比に応じて変化する。RQL方式を採用し、アンモニアを燃料とする燃焼器15では、部分負荷運転時に、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに小さくなり、燃焼器15から排出される燃焼器15の燃焼ガス中のNOx濃度が高まる。
【0127】
本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、吸気制御器53,53c,53d,53eが、吸気量が少なくなるよう、吸気調節器14vの動作を制御する。本態様のRQL方式を採用する燃焼器15では、吸気量が少なると、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0128】
(2)第二態様におけるガスタービン設備は、
前記第一態様におけるガスタービン設備において、前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計59をさらに備え、前記吸気制御器53,53c,53d,53eは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気調節器14vの動作を制御する。
【0129】
燃焼器15での未燃分の残留量は、RQL方式を採用する燃焼器15に限らず、燃料の燃焼領域における燃空比に応じて変化する。RQL方式を採用し、アンモニアを燃料とする燃焼器15では、部分負荷運転時に、前述したように、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに小さくなり、燃焼器15から排出される燃焼器15の燃焼ガス中の未燃分濃度が高まる。
【0130】
本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、吸気制御器53,53c,53d,53eが、吸気量が少なくなるよう、吸気調節器14vの動作を制御する。本態様のRQL方式を採用する燃焼器15では、吸気量が少なると、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、未燃分の排出量を抑えることができ、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度にすることができる。すなわち、本態様では、NOx濃度を抑えつつも、未燃分の排出量を抑えることができ、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0131】
(3)第三態様におけるガスタービン設備は、
前記第一態様又は前記第二態様におけるガスタービン設備において、前記圧縮機ケーシング14cから吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機ケーシング14c内に戻すことが可能な空気戻しライン18pと、前記空気戻しライン18p中を流れる前記圧縮空気である戻し空気Abの流量を調節可能な戻し空気調節弁18vと、をさらに備える。前記制御装置50c,50d,50eは、前記戻し空気調節弁18vの動作を制御する戻し空気制御器54c,54d,54eと、前記吸気制御器53c,53d,53eによる前記吸気調節器14vの制御と前記戻し空気制御器54c,54d,54eによる前記戻し空気調節弁18vの制御とを協調させる協調制御器56,56d,56eと、を有する。前記協調制御器56,56d,56eは、前記NOx濃度計58で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気制御器54c,54d,54eに、前記戻し空気Abの流量が多くなるよう前記戻し空気調節弁18vを制御させる。
【0132】
戻し空気Abの流量が多くなると、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0133】
(4)第四態様におけるガスタービン設備は、
前記第二態様におけるガスタービン設備において、前記圧縮機ケーシング14cから吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機ケーシング14c内に戻すことが可能な空気戻しライン18pと、前記空気戻しライン18p中を流れる前記圧縮空気である戻し空気Abの流量を調節可能な戻し空気調節弁18vと、をさらに備える。前記制御装置50c,50d,50eは、前記戻し空気調節弁18vの動作を制御する戻し空気制御器54c,54d,54eと、前記吸気制御器53c,53d,53eによる前記吸気調節器14vの制御と前記戻し空気制御器54c,54d,54eによる前記戻し空気調節弁18vの制御とを協調させる協調制御器56,56d,56eと、を有する。前記協調制御器56,56d,56eは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気制御器53c,53d,53eに前記吸気調節器14vを制御させると共に、前記戻し空気制御器54c,54d,54eに前記戻し空気調節弁18vを制御させる。
【0134】
本態様では、NOx濃度を抑えつつも、未燃分の排出量を抑えることができ、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0135】
(5)第五態様におけるガスタービン設備は、
前記第四態様におけるガスタービン設備において、前記協調制御器56,56d,56eは、前記排気ガス中のNOx濃度が前記予め定められた値未満になるよう、前記吸気制御器53c,53d,53eに前記吸気調節器14vを制御させた後、第一の場合、第二の場合、及び第三の場合のうちいずれか一の場合に、前記戻し空気制御器54c,54d,54eに、前記戻し空気調節弁18vにより、前記戻し空気Abが多くなるよう、前記戻し空気Abの流量を調節させる。前記第一の場合は、前記排気ガス中の未燃分濃度が前記未燃分濃度範囲内に収まっていない場合である。前記第二の場合は、前記排気ガス中の未燃分濃度をより低下させるという要求を受け付けている場合である。前記第三の場合は、前記吸気調節器14vの動作だけでは、燃空比が予め定めた分大きくならない場合である。
【0136】
吸気制御器53c,53d,53eにより吸気調節器14vを制御しても、戻し空気制御器54c,54d,54eにより戻し空気調節弁18vを制御しても、各燃焼領域での燃空比を変えることができる。このため、吸気制御器53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御と、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御とのうち、いずれか一方の制御を実行すれば、NOx濃度及び未燃分濃度を調節することができる。但し、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御で、戻し空気Abの流量を多くすると、戻し空気Abの流量が増えるため、圧縮機14の負荷が高まる。このため、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行した場合、吸気制御器53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御を実行した場合よりも、ガスタービン効率が低くなる。また、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御で、戻し空気Abの流量を多くすると、燃焼器15に流入する圧縮空気の温度が、吸気制御器53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御を実行した場合よりも、高くなる。このため、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行すると、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行した場合よりも、燃料の燃焼性が高まり、未燃分濃度が低くなる。
【0137】
よって、ガスタービン効率を優先する場合には、吸気制御器53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御を実行することが好ましく、未燃分濃度の低下を優先する場合には、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行することが好ましい。
【0138】
そこで、本態様では、NOx濃度の低減を図りつつもガスタービン効率の低下を抑えるために、まず、吸気制御器53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御を実行する。そして、この制御後に、第一の場合又は第二の場合には、効果的に未燃分濃度を低下させるために、戻し空気制御器54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行する。
【0139】
(6)第六態様におけるガスタービン設備は、
前記第三態様又は前記第四態様におけるガスタービン設備において、前記協調制御器56,56d,56eは、前記吸気調節器14vによる前記吸気量の調節での燃空比の変化量と前記戻し空気調節弁18vによる前記戻し空気Abの流量の調節での燃空比の変化量との比が、予め定められた比になるよう、前記吸気制御器53c,53d,53eに前記吸気調節器14vを制御させると共に、前記戻し空気制御器54c,54d,54eに前記戻し空気調節弁18vを制御させる。
【0140】
前述したように、ガスタービン効率を優先する場合には、吸気制御器53,53a,53c,53d,53eによる吸気調節器14vの制御を実行することが好ましく、未燃分濃度の低下を優先する場合には、戻し空気制御器54,54c,54d,54eによる戻し空気調節弁18vの制御を実行することが好ましい。このため、本態様における予め定められた比を適宜設定することで、ガスタービン効率を優先することも、未燃分濃度の低下を優先することも可能になる。
【0141】
(7)第七態様におけるガスタービン設備は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン設備において、前記開口15oから前記燃焼室15sに導入する前記希釈空気Alの流量を調節する希釈空気調節弁17vをさらに備える。前記制御装置50d,50eは、前記希釈空気調節弁17vの動作を制御する希釈空気制御器55d,55eと、前記吸気制御器53d,53eによる前記吸気調節器14vの制御と前記希釈空気制御器55d,55eによる前記希釈空気調節弁17vの制御とを協調させる協調制御器56d,56eと、を有する。前記協調制御器56d,56eは、前記NOx濃度計58で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器55d,55eに、前記希釈空気Alの流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁17vを制御させる。
【0142】
本態様では、希釈空気制御器55d,55eによる希釈空気調節弁17vの制御で、RQL方式を採用する燃焼器15の燃焼室15s内に流入する希釈空気Alの流量が多くなると、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が少なくなる。このため、本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、リッチ燃焼領域RAの燃空比が大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0143】
(8)第八態様におけるガスタービン設備は、
前記第七態様におけるガスタービン設備において、前記協調制御器56d,56eは、前記リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域RAの燃空比が大きくなるよう、前記吸気制御器53d,53eによる前記吸気調節器14vの制御で前記吸気量を少なくさせつつ、前記希釈空気制御器55d,55eによる前記希釈空気調節弁17vの制御で前記希釈空気Alの流量を多くさせる。
【0144】
RQL方式を採用する燃焼器15では、リーン燃焼領域LAの燃空比が所定以上小さくなると、リーン燃焼領域LAでの未燃分が多くなる。本態様では、リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらないので、排気ガス中の未燃分濃度の増加を抑えることができる。
【0145】
(9)第九態様におけるガスタービン設備は、
前記第三態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン設備において、前記開口15oから前記燃焼室15sに導入する前記希釈空気Alの流量を調節する希釈空気調節弁17vをさらに備える。前記制御装置50eは、前記希釈空気調節弁17vの動作を制御する希釈空気制御器55eを有する。前記協調制御器56eは、前記吸気制御器53eによる前記吸気調節器14vの制御と、前記戻し空気制御器54eによる前記戻し空気調節弁18vの制御と、前記希釈空気制御器55eによる前記希釈空気調節弁17vの制御とを協調させる。前記協調制御器56eは、前記NOx濃度計58で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器55eに、前記希釈空気Alの流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁17vを制御させる。
【0146】
本態様では、希釈空気制御器55eによる希釈空気調節弁17vの制御で、RQL方式を採用する燃焼器15の燃焼室15s内に流入する希釈空気Alの流量が多くなると、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が少なくなる。このため、本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、リーン燃焼領域LAの燃空比が小さくなり、リッチ燃焼領域RAの燃空比が大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0147】
(10)第十態様におけるガスタービン設備は、
前記第九態様におけるガスタービン設備において、前記協調制御器56eは、前記吸気制御器53e、前記戻し空気制御器54e及び前記希釈空気制御器55eに、前記リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、前記吸気調節器14vにより前記吸気量を少なくさせ、前記戻し空気調節弁18vにより前記戻し空気Abの流量を多くさせつつ、前記希釈空気調節弁17vにより前記希釈空気Alの流量を多くさせる。
【0148】
(11)第十一態様におけるガスタービン設備は、
ガスタービン10と、空気戻しライン18pと、戻し空気調節弁18vと、前記ガスタービン10から排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度計58と、制御装置50a,50c,50d,50eと、を備える。前記ガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。前記燃焼器15は、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、が形成されるよう構成されている。前記空気戻しライン18pは、前記圧縮機14から吐出された圧縮空気の一部を前記圧縮機14内に戻せるよう構成されている。前記戻し空気調節弁18vは、前記空気戻しライン18p中を流れる前記圧縮空気である戻し空気Abの流量を調節できるよう構成されている。前記制御装置50a,50c,50d,50eは、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気Abの流量が多くなるよう、前記戻し空気調節弁18vを制御する戻し空気制御器54,54c,54d,54eを有する。
【0149】
本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、戻し空気制御器54,54c,54d,54eが、戻し空気Abの流量が多くなるよう、戻し空気調節弁18vの動作を制御する。本態様のRQL方式を採用する燃焼器15では、戻し空気Abの流量が多くなると、リッチ燃焼領域RA及びリーン燃焼領域LAでの燃空比がともに大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0150】
(12)第十二態様におけるガスタービン設備は、
前記第十一態様におけるガスタービン設備において、前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計59をさらに備える。前記戻し空気制御器54,54c,54d,54eは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記戻し空気調節弁18vの動作を制御する。
【0151】
本態様では、NOx濃度を抑えつつも、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0152】
(13)第十三態様におけるガスタービン設備は、
前記第十一態様又は前記第十二態様におけるガスタービン設備において、前記開口15oから前記燃焼室15sに導入する前記希釈空気Alの流量を調節する希釈空気調節弁17vをさらに備える。前記制御装置50d,50eは、前記希釈空気調節弁17vの動作を制御する希釈空気制御器55d,55eと、前記戻し空気制御器54d,54eによる前記戻し空気調節弁18vの制御と前記希釈空気制御器55d,55eによる前記希釈空気調節弁17vの制御とを協調させる協調制御器56d,56eと、を有する。前記協調制御器56d,56eは、前記NOx濃度計58で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気制御器55d,55eに、前記希釈空気Alの流量が多くなるよう、前記希釈空気調節弁17vを制御させる。
【0153】
本態様では、希釈空気制御器55d,55eによる希釈空気調節弁17vの制御で、RQL方式を採用する燃焼器15の燃焼室15s内に流入する希釈空気Alの流量が多くなると、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が少なくなる。このため、本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、リーン燃焼領域LAの燃空比が小さくなり、リッチ燃焼領域RAの燃空比が大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0154】
(14)第十四態様におけるガスタービン設備は、
前記第十三態様におけるガスタービン設備において、前記協調制御器56d,56eは、前記リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらず、前記リッチ燃焼領域の燃空比が大きくなるよう、前記戻し空気制御器54d,54eによる前記戻し空気調節弁18vの制御で前記戻し空気Abの流量を多くさせつつ、前記希釈空気制御器55d,55eによる前記希釈空気調節弁17vの制御で前記希釈空気Alの流量を多くさせる。
【0155】
RQL方式を採用する燃焼器15では、リーン燃焼領域LAの燃空比が所定以上小さくなると、リーン燃焼領域LAでの未燃分が多くなる。本態様では、リーン燃焼領域LAの燃空比が変わらないので、排気ガス中の未燃分濃度の増加を抑えることができる。
【0156】
(15)第十五態様におけるガスタービン設備は、
ガスタービン10と、希釈空気調節弁17vと、制御装置50b,50d,50eと、を備える。前記ガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料としてのアンモニアを燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記圧縮機14は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ14rと、前記圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記アンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。前記燃焼器15は、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、が形成されるよう構成されている。前記希釈空気調節弁17vは、前記開口15oから前記燃焼室15sに導入する前記希釈空気Alの流量を調節可能な弁である。前記制御装置50b,50d,50eは、前記タービンから排気される燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気Alの流量が増加するよう、前記希釈空気調節弁17vを制御する希釈空気制御器55,55d,55eを有する。
【0157】
本態様では、希釈空気制御器55,55d,55eによる希釈空気調節弁17vの制御で、RQL方式を採用する燃焼器15の燃焼室15s内に流入する希釈空気Alの流量が多くなると、燃焼器本体15bから燃焼室15s内に噴射される主燃焼用空気Amの流量が少なくなる。このため、本態様では、排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値以上になると、リーン燃焼領域LAの燃空比が小さくなり、リッチ燃焼領域RAの燃空比が大きくなる。この結果、本態様では、NOxの排出量を抑えることができる。
【0158】
(16)第十六態様におけるガスタービン設備は、
前記第十五態様におけるガスタービン設備において、前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度計59をさらに備える。前記希釈空気制御器55,55d,55eは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記排気ガス中の未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記希釈空気調節弁17vを制御する。
【0159】
本態様では、NOx濃度を抑えつつも、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0160】
以上の実施形態におけるガスタービンの制御方法は、例えば、以下のように把握される。
(17)第十七態様におけるガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記圧縮機14は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ14rと、前記圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービンに導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体15bから前記燃焼室15s内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気Amを噴射すると共に、前記開口15oから前記燃焼室15s内に前記希釈空気Alを導入して、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、を形成する燃焼工程S1と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービン10から排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程S2と、前記NOx濃度検知工程S2で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシング14cに吸い込まれる空気の流量である吸気量を少なくなする吸気制御工程S4,S4c,S4d,S5dと、を実行する。
【0161】
本態様では、第一態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【0162】
(18)第十八態様におけるガスタービンの制御方法は、
前記第十七態様におけるガスタービン10の制御方法において、前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度検知工程S3をさらに実行する。前記吸気制御工程S4,S4c,S4d,S5dでは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記吸気量を制御する。
【0163】
本態様では、第二態様におけるガスタービン設備と同様に、NOx濃度を抑えつつも、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0164】
(19)第十九態様におけるガスタービンの制御方法は、
前記第十七態様又は前記第十八態様におけるガスタービン10の制御方法において、前記NOx濃度検知工程S3で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気制御工程S4c,S4eと共に、前記圧縮機ケーシング14cから吐出された圧縮空気の一部を戻し空気Abとして、前記圧縮機ケーシング14c内に戻す流量を多くする戻し空気制御工程S5c,S5eと、をさらに実行する。
【0165】
本態様では、第三態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【0166】
(20)第二十態様におけるガスタービンの制御方法は、
前記第十七態様から前記第十九態様のうちのいずれか一態様におけるガスタービン10の制御方法において、前記NOx濃度検知工程S3で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記吸気制御工程S4eと共に、前記希釈空気Alの流量を多くする希釈空気制御工程S6eをさらに実行する。
【0167】
本態様では、第七態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【0168】
(21)第二十一態様におけるガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記圧縮機14は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ14rと、前記圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体15bから前記燃焼室15s内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気Amを噴射すると共に、前記開口15oから前記燃焼室15s内に前記希釈空気Alを導入して、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、を形成する燃焼工程S1と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービン10から排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程S2と、前記NOx濃度検知工程S2で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記圧縮機ケーシング14cから吐出された圧縮空気の一部を戻し空気Abとして、前記圧縮機ケーシング14c内に戻す流量を多くする戻し空気制御工程S5,S5c,S5eと、を実行する。
【0169】
本態様では、第十一態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【0170】
(22)第二十二態様におけるガスタービンの制御方法は、
前記第二十一態様におけるガスタービン10の制御方法において、前記排気ガス中の未燃分濃度を検知する未燃分濃度検知工程S3をさらに実行し、前記戻し空気制御工程S5,S5c,S5eでは、前記排気ガス中のNOx濃度が予め定められた値未満になり且つ前記未燃分濃度が前記NOx濃度に応じて定まる予め定められた未燃分濃度範囲内に収まるよう、前記戻し空気Abの流量を制御する。
【0171】
本態様では、第十二態様におけるガスタービン設備と同様に、NOx濃度を抑えつつも、排気ガス中の未燃分濃度を予め定められた未燃分濃度範囲内にすることができる。
【0172】
(23)第二十三態様におけるガスタービンの制御方法は、
前記第二十一態様又は前記第二十二態様におけるガスタービン10の制御方法において、前記NOx濃度検知工程S3で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記戻し空気制御工程S5eと共に、前記希釈空気Alの流量を多くする希釈空気制御工程S6eをさらに実行する。
【0173】
本態様では、第十三態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【0174】
(24)第二十四態様におけるガスタービンの制御方法は、以下のガスタービンに適用される。
このガスタービン10は、空気を圧縮して圧縮空気を生成できる圧縮機14と、前記圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成できる燃焼器15と、前記燃焼ガスにより駆動可能なタービン16と、を有する。前記圧縮機14は、軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ14rと、前記圧縮機ロータ14rを覆う圧縮機ケーシング14cと、を有する。前記燃焼器15は、前記燃料が燃焼し、且つ前記燃料の燃焼で生成された前記燃焼ガスを前記タービン16に導くことができる燃焼室15sを形成する燃焼室形成器15cと、前記燃焼室15s内に前記燃料としてのアンモニア及び前記圧縮空気の一部である主燃焼用空気Amを噴射可能な燃焼器本体15bと、を有する。前記燃焼室形成器15cには、前記燃焼室形成器15c外から前記燃焼室15s内に前記圧縮空気の一部である希釈空気Alを導入可能な開口15oが形成されている。
本態様の制御方法では、前記燃焼器本体15bから前記燃焼室15s内に前記燃料としての前記アンモニア及び前記主燃焼用空気Amを噴射すると共に、前記開口15oから前記燃焼室15s内に前記希釈空気Alを導入して、前記燃焼室15s内に、空気に対する燃料の比である燃空比が理論燃空比より大きな燃空比中で前記燃焼器本体15bからの燃料を燃焼させるリッチ燃焼領域RAと、前記リッチ燃焼領域RAからのガスが前記開口15oからの前記希釈空気Alにより希釈され、前記希釈空気Alにより希釈された後の前記ガス中に含まれる燃料を前記燃空比が前記理論燃空比より小さな燃空比中で燃焼させるリーン燃焼領域LAと、を形成する燃焼工程S1と、前記燃料の燃焼で生成され前記ガスタービン10から排気された燃焼ガスである排気ガス中のNOx濃度を検知するNOx濃度検知工程S2と、前記NOx濃度検知工程S2で検知された前記排気ガス中のNOx濃度に応じて、前記希釈空気Alの流量を多くする希釈空気制御工程S6,S6d,S6eと、を実行する。
【0175】
本態様では、第十五態様におけるガスタービン設備と同様に、NOxの排出量を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本開示の一態様では、ガスタービンの燃料としてアンモニアを用いる場合に、NOxの排出量を低減できる。
【符号の説明】
【0177】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
12:吸気ダクト
13:中間ケーシング
14:圧縮機
14r:圧縮機ロータ
14c:圧縮機ケーシング
14v:吸気調節器(又はIGV)
15:燃焼器
15b:燃焼器本体
15c:燃焼室形成器
15o:開口
15s:燃焼室
16:タービン
16r:タービンロータ
16c:タービンケーシング
17:希釈空気調節装置
17p:希釈空気ライン
17v:希釈空気調節弁
17vb:弁体
17vc:弁ケーシング
18:圧縮空気戻し装置
18p:空気戻しライン
18v:戻し空気調節弁
16:タービン
16r:タービンロータ
16c:タービンケーシング
20:燃料供給設備
21:アンモニアタンク
22:液体アンモニアライン
23:アンモニアポンプ
24:燃料調節弁
25:気化器
26:気体アンモニアライン
28:脱硝装置
29:煙突
50,50a,50b,50c,50d,50e:制御装置
51:燃料流量演算器
52:燃料制御器
53,53a,53c,53d,53e:吸気制御器
54,54c,54d,54e:戻し空気制御器
55,55d,55e:希釈空気制御器
56,56d,56e:協調制御器
58:NOx濃度計
59:未燃分濃度計
LA:リーン燃焼領域
RA:リッチ燃焼領域
QA:クエンチ領域
Ab:戻し空気
Al:希釈空気
Am:主燃焼用空気