(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】使い捨て可能なカセット調整システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
A61M1/28
A61M1/28 130
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090871
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2020573362の分割
【原出願日】2019-07-02
【審査請求日】2023-06-30
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マシュー デイビッド ウィルコックス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532234(JP,A)
【文献】特表2012-511345(JP,A)
【文献】特表平7-506520(JP,A)
【文献】特表2013-533793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用流体送達システムであって、
医療用流体送達機械であって、
ポンプ作動面積と、前記ポンプ作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する空気圧マニホールドと、
基準チャンバと、
正の空気圧源と前記ポンプ作動面積との間に位置する第1の空気圧弁と、
負の空気圧源と前記ポンプ作動面積との間に位置する第2の空気圧弁と、
前記ポンプ作動面積と前記基準チャンバとの間に位置する第3の空気圧弁と、
前記基準チャンバに空気圧的に接続されている換気弁と、
前記空気圧弁および前記換気弁と連動する制御ユニットと
を含む、医療用流体送達機械と、
使い捨て可能なカセットであって、
前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに、前記ポンプ作動面積と整合する流体ポンプチャンバと、
前記流体ポンプチャンバを覆うカセットシート体と
を含む、使い捨て可能なカセットと
を備え、前記制御ユニットは、調整ルーチンを実施するように前記複数の空気圧弁を動作させるように構成され、前記調整ルーチンは、
(i)前記換気弁を開放させて、前記基準チャンバを換気し、前記基準チャンバ内の圧力が約ゼロpsigになることをもたらすことと、
(ii)前記第3の空気圧弁を閉鎖させ、前記第2の空気圧弁を開放させることにより、前記負の空気圧源からの負圧が前記ポンプ作動面積に印加されることを可能にすることであって、これが、前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体が前記空気圧マニホールドの前記ポンプ作動面積内に引動されることをもたらす、ことと、
(iii)前記第2の空気圧弁を閉鎖させ、前記第1の空気圧弁を開放させることにより、前記正の空気圧源からの正圧が前記ポンプ作動面積に印加されることを可能にすることであって、これが、前記圧送ガスケットが前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体と共に前記使い捨て可能なカセットの前記流体ポンプチャンバ内に押動されることをもたらす、ことと、
(iv)前記第1の空気圧弁を閉鎖させ、前記第3の空気圧弁を開放させることにより、前記ポンプ作動面積内の前記正の空気圧が換気されることを可能にすることと、
(v)前記換気弁を開放したまま、前記第3の空気圧弁を閉鎖させることと
を含む、医療用流体送達システム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、(i)~(v)を実施する前または後に乾燥完全性試験を実施するようにさらに構成されている、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体との間の空気の漏出率を監視することによって、前記乾燥完全性試験を実施するように構成されている、請求項2に記載の医療用流体送達システム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記乾燥完全性試験が不合格であることを決定した後に、(i)~(v)を実施するように構成されている、請求項2に記載の医療用流体送達システム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記制御ユニットが緩慢流動条件を検出した後に、(i)~(v)を実施するように構成されている、請求項2に記載の医療用流体送達システム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、(iv)および(v)を実施する前に(ii)および(iii)を複数回繰り返すように構成されている、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項7】
前記調整ルーチンは、(a)前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体との間のシール内の間隙または空気ポケットを除去すること、または、(b)前記使い捨て可能なカセットを前記空気圧マニホールドと整合させることのうちの少なくとも1つのために前記制御ユニットによって実施される、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項8】
前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバに流体的に結合されている少なくとも1つの流体弁を含み、
前記制御ユニットは、(ii)の間に、前記少なくとも1つの流体弁を開放することにより、空気が前記使い捨て可能なカセット内に流入することを可能にし、負圧が前記使い捨て可能なカセット内に蓄積することを低減または排除するように構成されている、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項9】
前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバに流体的に結合されている少なくとも1つの流体弁を含み、
前記制御ユニットは、(iii)の間に、前記少なくとも1つの流体弁を閉鎖することにより、正圧が前記使い捨て可能なカセットの内側に蓄積することを可能にし、それにより、前記正圧が前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とに印加されるように構成されている、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項10】
前記空気圧マニホールドは、第2のポンプ作動面積と、前記第2のポンプ作動面積を覆う第2の圧送ガスケットとを含み、
前記医療用流体送達機械は、
第2の基準チャンバと、
前記正の空気圧源と前記第2のポンプ作動面積との間に位置する第2の第1の空気圧弁と、
前記負の空気圧源と前記第2のポンプ作動面積との間に位置する第2の第2の空気圧弁と、
前記第2のポンプ作動面積と前記第2の基準チャンバとの間に位置する第2の第3の空気圧弁と、
前記第2の基準チャンバに空気圧的に接続されている第2の換気弁と
をさらに含み、前記使い捨て可能なカセットは、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに、前記第2のポンプ作動面積と整合する第2の流体ポンプチャンバをさらに含み、前記カセットシート体は、前記第2の流体ポンプチャンバをさらに覆い、
前記制御ユニットは、
(i)の間に、前記第2の換気弁を開放させて、前記第2の基準チャンバを換気し、前記第2の基準チャンバ内の圧力が約ゼロpsigになることをもたらすことと、
(ii)の間に、前記第2の第3の空気圧弁を閉鎖させ、前記第2の第2の空気圧弁を開放させることにより、前記負圧が前記第2のポンプ作動面積に印加されることを可能にすることであって、これが、前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体が前記空気圧マニホールドの前記第2のポンプ作動面積内に引動されることをもたらす、ことと、
(iii)の間に、前記第2の第2の空気圧弁を閉鎖させ、前記第2の第1の空気圧弁を開放させることにより、前記正圧が前記第2のポンプ作動面積に印加されることを可能にすることであって、これが、前記第2の圧送ガスケットが前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体と共に前記使い捨て可能なカセットの前記第2の流体ポンプチャンバ内に押動されることをもたらす、ことと、
(iv)の間に、前記第2の第1の空気圧弁を閉鎖させ、前記第2の第3の空気圧弁を開放させることにより、前記第2のポンプ作動面積内の前記正の空気圧が換気されることを可能にすることと、
(v)の間に、前記第2の換気弁を開放したまま、前記第2の第3の空気圧弁を閉鎖させることと
によって前記調整ルーチンを実施するようにさらに構成されている、請求項1に記載の医療用流体送達システム。
【請求項11】
医療用流体送達システムであって、
医療用流体送達機械であって、
ポンプ作動面積と、前記ポンプ作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する空気圧マニホールドと、
負の空気圧源と、
正の空気圧源と、
制御ユニットと
を含む、医療用流体送達機械と、
使い捨て可能なカセットであって、
前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに、前記ポンプ作動面積と整合する流体ポンプチャンバと、
前記流体ポンプチャンバを覆うカセットシート体と
を含む、使い捨て可能なカセットと
を備え、前記制御ユニットは、
第1の時点で、前記負の空気圧源からの負圧下に前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと、
第2の時点で、前記正の空気圧源からの正圧下に前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと
を含む調整ルーチンを実施するように構成されている、医療用流体送達システム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記調整ルーチンの前または後に乾燥完全性試験を実施するようにさらに構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体との間の空気の漏出率を監視することによって、前記乾燥完全性試験を実施するように構成されている、請求項12に記載の医療用流体送達システム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記乾燥完全性試験が不合格であることを決定した後に、前記調整ルーチンを実施するように構成されている、請求項12に記載の医療用流体送達システム。
【請求項15】
前記制御ユニットは、前記制御ユニットが緩慢流動条件を検出した後に、前記調整ルーチンを実施するように構成されている、請求項12に記載の医療用流体送達システム。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記調整ルーチンを複数回繰り返すように構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項17】
前記調整ルーチンは、(a)前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体との間のシール内の間隙または空気ポケットを除去すること、または、(b)前記使い捨て可能なカセットを前記空気圧マニホールドと整合させることのうちの少なくとも1つのために前記制御ユニットによって実施される、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項18】
前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバに流体的に結合されている少なくとも1つの流体弁を含み、
前記制御ユニットは、前記少なくとも1つの流体弁を開放することにより、空気が前記使い捨て可能なカセット内に流入することを可能にし、負圧が前記使い捨て可能なカセット内に蓄積することを低減または排除するように構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項19】
前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバに流体的に結合されている少なくとも1つの流体弁を含み、
前記制御ユニットは、前記少なくとも1つの流体弁を閉鎖することにより、正圧が前記使い捨て可能なカセットの内側に蓄積することを可能にし、それにより、前記正圧が前記圧送ガスケットと前記流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とに印加されるように構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項20】
前記空気圧マニホールドは、第2のポンプ作動面積と、前記第2のポンプ作動面積を覆う第2の圧送ガスケットとを含み、
前記使い捨て可能なカセットは、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに、前記第2のポンプ作動面積と整合する第2の流体ポンプチャンバをさらに含み、前記カセットシート体は、前記第2の流体ポンプチャンバをさらに覆い、
前記制御ユニットは、
前記第1の時点で、前記負の空気圧源からの負圧下に前記第2の圧送ガスケットと前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと、
前記第2の時点で、前記正の空気圧源からの正圧下に前記第2の圧送ガスケットと前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと
によって前記調整ルーチンを実施するようにさらに構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【請求項21】
前記空気圧マニホールドは、第2のポンプ作動面積と、前記第2のポンプ作動面積を覆う第2の圧送ガスケットとを含み、
前記使い捨て可能なカセットは、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されるときに、前記第2のポンプ作動面積と整合する第2の流体ポンプチャンバをさらに含み、前記カセットシート体は、前記第2の流体ポンプチャンバをさらに覆い、
前記制御ユニットは、
前記第1の時点で、前記正の空気圧源からの正圧下に前記第2の圧送ガスケットと前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと、
前記第2の時点で、前記負の空気圧源からの負圧下に前記第2の圧送ガスケットと前記第2の流体ポンプチャンバを覆う前記カセットシート体とを置くことと
によって前記調整ルーチンを実施するようにさらに構成されている、請求項11に記載の医療用流体送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、「DISPOSABLE CASSETTE CONDITIONING SYSTEM AND METHOD」と題され、2018年7月3日に出願された、米国仮特許出願第62/693,696号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、医療用流体システムに関し、より具体的には、そのようなシステム、特に、血液透析または腹腔透析等、空気圧によって駆動される腹膜透析システムの試験および設定に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
腹膜透析システムにおいて、治療に先立って、「湿潤」完全性試験および「乾燥」完全性試験を含む、完全性試験を実施することが、公知である。「湿潤」完全性試験は、使い捨て可能なカセット内の多数の流体弁が、漏出しないこと、漏出が、カセット内の複数のポンプチャンバ間で生じないこと、漏出が、流体経路を横断して生じないこと、およびシステム異常の場合には、カセットに接続される流体ライン内の液体流動を停止させることが意図される、隔離オクルーダが、その手技を適切に実施していることを検証するように試みる。米国特許第5,350,357号に説明される、1つの公知の湿潤漏出試験では、使い捨て可能なカセットが、腹膜透析サイクラの中に装填され、溶液バッグが、接続される。試験は、以下のステップから成る。
【0004】
(i)流体弁振動板の負圧減衰試験が、実施される。
【0005】
(ii)流体弁振動板の正圧減衰試験が、実施される。
【0006】
(iii)正圧減衰試験が、第1のポンプチャンバに関して実施される一方、負圧減衰試験が、第2のポンプチャンバに関して実施される。
【0007】
(iv)負圧減衰試験が、第1のポンプチャンバに関して実施される一方、正圧減衰試験が、第2のポンプチャンバに関して実施され、その後、
【0008】
(v)両方のポンプチャンバが、測定される体積の流体で充填され、流体弁は全て、開放され、閉塞部は、閉鎖され、正圧が、ある周期時間にわたって両方のポンプチャンバに印加され、その後、各ポンプチャンバ内の流体の体積が、再び測定され、任意の流体が、閉塞部を横断して漏出しているかどうかを判定する。
【0009】
示されるように、溶液バッグが腹膜透析システムに接続された後、上記の試験手技が、実施される。カセットまたは管類の完全性に欠陥がある場合、溶液バッグの無菌性が、損なわれた状態になる。そのような場合では、使い捨て可能なカセットおよび溶液バッグは両方、破棄される必要がある。加えて、溶液バッグからの液体が、機械の作動システムの中に吸引され、機械の作動システムを機能不全にさせ得ることが可能性として考えられる。
【0010】
湿潤試験はまた、誤ったトリガを受けやすい。特に、湿潤試験において使用される冷たい溶液が、流体ライン全てを完全に挟着することが予期される、閉塞部が、管類ラインを適切に圧着またはシールしないときに試験が不合格となるため、毎年、誤った使い捨て可能な完全性試験の警報を引き起こす。溶液は、冷たいとき、設定された管類を、管類が、室内気のみの中に設置された場合になるであろうものより低い温度まで冷却する。より冷たい管類は、より閉塞しにくく、ある場合には、流体がオクルーダを越えて漏出し、試験を不合格にさせることを可能にする。いったん透析療法が、開始すると、管類を通して通過する流体は、約37℃まで温められ、オクルーダが十分に性能を発揮することを可能にする。
【0011】
「乾燥」完全性試験が、米国特許第6,302,653号(その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれ、依拠される)に手短に説明される。説明は、部分的に、1998年12月のBaxter製HomeChoice(登録商標)サイクラ内に実装される、「乾燥試験」に基づく。その試験は、4つのステップから成り、その第1のものは、溶液バッグが接続される前に生じた。次の3つのステップは、溶液バッグが接続されることを要求したが、流体がバッグから機械の中に引動されることは要求しなかった。「乾燥」試験は、流体が潜在的に機械の空気圧中に漏出する問題を排除した。試験は、バッグの滅菌性が、潜在的に、漏出に応じて損なわれないように防止せず、したがって、使い捨て可能なカセットの完全性が損なわれた場合、破棄されないように防止しなかった。
【0012】
Baxter製HomeChoice(登録商標)サイクラまたはBaxter製Amia(登録商標)サイクラのための乾燥完全性試験の1つの主要な部分が、カセットが機械もしくはサイクラに搭載されると、その圧送ガスケットと使い捨て可能なカセットのシート体との間の空気の漏出率を監視することを伴う。試験は、基本的に、圧送ガスケットおよびカセットシート体が適切に噛合されているかどうかを判定し、特に、(i)ガスケットまたはシート体のいずれか一方もしくは両方に変形または不完全性が存在する、および/または(ii)その間に不整合が存在するとき、多くの場合、不合格になり得る。
【0013】
故に、圧送ガスケットおよびカセットシート体がともにより良好にシールし、使い捨て可能なカセットのシート体と空気圧送アクチュエータのガスケットとの間の欠陥がある界面に起因する、乾燥完全性試験エラーの量を低減させることに役立つ必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第5,350,357号公報
【文献】米国特許第6,302,653号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(要約)
本明細書に説明される実施例は、腹膜透析(「PD」)治療を改良するためのシステムおよび方法を開示する。しかしながら、本システムおよび方法が、空気圧アクチュエータが使い捨て可能なカセットのシート体と噛合され、それにシールされる、膜ガスケットを含む、任意のタイプの医療用流体送達機械に適用可能であることを理解されたい。そのような医療用流体送達機械は、腹膜透析(「PD」)、血漿交換、血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)、血液濾過透析(「HDF」)、持続的腎代替療法(「CRRT」)、アフェレーシス療法、自己血輸血、敗血症のための血液濾過、および体外式模型人工肺(「ECMO」)治療のうちのいずれかであり得る。これらのモダリティは、集合的に、または概して個々に、本明細書において医療用流体送達システムと称され得る。
【0016】
一実施形態では、医療用流体送達機械またはPDサイクラは、処理部と、メモリとを有する、制御ユニットの制御下にある、電気的に作動される空気圧弁を含み、メモリは、空気圧弁を、それらが負および/または正圧を、圧送ガスケットが使い捨て可能なカセットのシート体と噛合された後にそれに印加させるように動作させるように構成される、ソフトウェアを記憶する。負および正圧は、圧送ガスケットとカセットシート体との間のシールを改良しようとする試みとして、乾燥完全性試験の前または後のいずれかに印加される。ガスケットおよびシートを同時にともにマッサージおよび移動させることは、ガスケットとシートとの間から空気ポケットを圧搾して出す、またはそれを取り囲んで出すことに役立つ。ガスケットおよびシートを同時にともにマッサージおよび移動させることはまた、ガスケットまたはシート体の一方がガスケットもしくはシート体の他方の不完全性に準拠することに役立つ。ガスケットおよびシートのマッサージおよび移動はまた、その間の不整合に役立つ。恩恵は全て、後続の乾燥完全性試験のエラー率を低減させることに役立つ。
【0017】
ある実施形態では、空気圧弁が、(i)加熱器への、またはそれからの流体流を制御し、(ii)排水部への流体流を制御し、(iii)患者への、およびそれからの流体流を制御し、(iv)第1の基準チャンバから通気孔への空気流を制御し、(v)第1の基準チャンバと第1のポンプチャンバとの間の空気流を制御し、(vi)負の空気圧貯蔵タンクと第1のポンプチャンバとの間の負の空気圧を制御し、(vii)正の空気圧貯蔵タンクと第1のポンプチャンバとの間の正の空気圧を制御し、(viii)第1のポンプチャンバと加熱器バッグまたは排水部との間の流体流を制御し、(ix)第1のポンプチャンバと患者または供給容器との間の流体流を制御し、(x)第2のポンプチャンバと患者または供給容器との間の流体流を制御し、(xi)第2のポンプチャンバと加熱器バッグまたは排水部との間の流体流を制御し、(xii)正の空気圧貯蔵タンクと第2のポンプチャンバとの間の正の空気圧を制御し、(xiii)負の空気圧貯蔵タンクと第2のポンプチャンバとの間の負の空気圧を制御し、(xiv)第2の基準チャンバと第2のポンプチャンバとの間の空気流を制御し、(xv)第2の基準チャンバから通気孔への空気流を制御し、(xvi)第1の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御し、(xvii)第2の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御し、(xviii)第3の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御し、(xix)第4の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御し、(xx)第5の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するために提供される。
【0018】
腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械の制御ユニットのソフトウェア内に記憶され、そのプロセッサによって実行される、圧送ガスケットおよびカセット調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第1のステップでは、制御ユニットは、他の18個の空気圧弁全てが、閉鎖される間、2個の空気圧換気弁を開放させる。本第1のステップは、ポンプチャンバ内の圧力を測定し、制御ユニットとの組み合わせにおいてボイルの法則を使用してポンプチャンバの中に引動される、またはそれから排出される医療用流体の体積を判定するために使用される、公知の容積チャンバである、基準チャンバを換気する。第1のステップの終了時における基準チャンバ内の圧力は、ゼロpsigまたはゼロpsigに近接する。
【0019】
腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械の制御ユニットのプロセッサのソフトウェア内に記憶され、そのプロセッサによって実行される、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第2のステップでは、制御ユニットは、(i)正の空気圧貯蔵タンクと第1および第2のポンプチャンバとの間の空気圧弁、および(ii)第1および第2のポンプチャンバと第1および第2の基準チャンバとの間の空気圧弁を除いては、全ての空気圧弁を開放させる。基準チャンバへの2つの空気圧換気弁は、基準チャンバ圧力が、依然として大気圧にあるように、依然として開放している。負の空気圧貯蔵タンクと第1および第2のポンプチャンバとの間の空気圧弁は、開放され、負圧が、ポンプチャンバに印加され、圧送ガスケットおよびカセットシート体を、機械またはサイクラの空気圧マニホールドによって画定されるポンプチャンバ半体の中にともに引動することを可能にする。流体弁は全て、一実装において、開放され、空気が、使い捨て可能なカセットの中に流入し、潜在的にカセットシート体の移動に抵抗し得る、負圧を、カセット内に蓄積しないように低減させる、または排除することを可能にする。圧送ガスケットおよびカセットシート体は、それによって、(i)例えば、ガスケットまたはシート体のいずれか一方もしくは両方の不完全性に起因する、圧送ガスケットとカセットシート体との間のシール内の小さい間隙または空気ポケットを除去することに役立ち、(ii)カセットを機械の空気圧マニホールドに整合させることに役立つように、ともに自由に移動および伸展し、調整する。
【0020】
腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械の制御ユニットのプロセッサのソフトウェア内に記憶され、そのプロセッサによって実行される、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第3のステップでは、制御ユニットは、(i)正の空気圧貯蔵タンクと第1および第2のポンプチャンバとの間の空気圧弁、および(ii)基準チャンバへの空気圧換気弁を除いては、基準チャンバ圧力が大気圧に維持されるように、全ての空気圧弁を閉鎖させる。正の空気圧貯蔵タンクと第1および第2のポンプチャンバとの間で開放される空気圧弁は、正圧がポンプチャンバに印加され、圧送ガスケットおよびカセットシート体を、使い捨て可能なカセットによって画定される、ポンプチャンバ半体の中にともに押動することを可能にする。流体弁は全て、一実装において、閉鎖され、正圧が、噛合されるガスケットおよびカセットシート体の両側面に印加され、(i)空気を圧搾し、圧送ガスケットとカセットシート体との間に常駐する小さい間隙または空気ポケットを外に出し、(ii)カセットを機械の空気圧マニホールドに整合させることに役立つように、正圧が使い捨て可能なカセットの内側に蓄積することを可能にする。
【0021】
調整アルゴリズムのためにソフトウェアを起動させる処理部を有する、制御ユニットは、種々の実施形態において、ステップ2および3を1回以上の回数繰り返すようにプログラムされ得る。また、ステップ2および3は、第1および第2のポンプチャンバを同一の様式で動作させるように説明されている。代替として、または加えて、一方のポンプチャンバにおけるガスケットおよびシート体は、負圧下に設置され得る一方、他方のポンプチャンバにおけるガスケットおよびシート体は、正圧下に設置される。
【0022】
腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械の制御ユニットのプロセッサのソフトウェア内に記憶され、そのプロセッサによって実行される、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第4のステップでは、制御ユニットは、(i)第1および第2のポンプチャンバと第1および第2の基準チャンバとの間の空気圧弁、ならびに(ii)基準チャンバへの空気圧換気弁を除いては、第3のステップにおいて蓄積された正圧が、大気に換気されるように、全ての空気圧弁を閉鎖させる。
【0023】
腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械の制御ユニットのプロセッサのソフトウェア内に記憶され、そのプロセッサによって実行される、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第5のステップでは、制御ユニットは、他の18個の空気圧弁全てが、閉鎖される間、2個の空気圧換気弁を開放させる。静置構成にある本弁は、第1のステップの構成と同一である。
【0024】
上記に述べられるように、ガスケットおよびカセットシート体の正および負圧調整は、乾燥完全性試験の前または後のいずれかに実施され得る。例えば、一事例では、調整ルーチンは、乾燥完全性試験の前に提供される。上記に説明される、第1から第5のステップが、実施される。その後、乾燥完全性試験が、実施される。
【0025】
別の実施例では、調整ルーチンは、乾燥完全性試験の不合格を被った後に提供される。制御ユニットは、乾燥完全性試験の不合格の後、腹膜透析サイクラ等の医療用流体送達機械が、患者または介護者に、乾燥完全性試験の不合格を認識する、「再開」ボタンを押下するようにプロンプトするようにプログラムされる。いったん「再開」が、押下されると、上記に説明される、第1から第5のステップが、実施される。その後、乾燥完全性試験が、再び実施される。本第2の実施例は、第1の実施例との組み合わせにおいて、または第1の実施例の代わりに実施されてもよい。
【0026】
調整ルーチンの恩恵は、乾燥完全性試験に役立つことに限定されない。第3の実施例では、調整ルーチンは、緩慢流動エラー(例えば、医療用流体は、より高い流率を試みているにもかかわらず、患者に、または患者から過度に緩徐に圧送される)の結果として実施される。制御ユニットは、緩慢流動エラーの後、腹膜透析サイクラ等の医療用流体送達機械が、患者または介護者に、緩慢流動エラーを認識する「再開」ボタンを押下するようにプロンプトするようにプログラムされる。いったん「再開」が、押下されると、上記に説明される、第1から第5のステップが、実施される。その後、治療が、願わくば、圧送ガスケットとカセットシート体との間により良好なシールを伴って再開する。本第3の実施例は、第1の実施例および/または第2の実施例のいずれか一方もしくは両方との組み合わせにおいて実施されてもよい。
【0027】
本開示の調整ルーチンによって補助され得る、他の試験、エラー、または警報は、圧送ガスケットおよびカセットシート体の作動を伴う、任意のものを含む。調整ルーチンがエラーまたは警報に応答して実施される状況のいずれかにおいて、「再開」ボタンの押下等、患者もしくは介護者の動作が、必要ではないことを理解されたい。例えば、治療が、患者が睡眠をとる間の夜間に実施される場合、患者を起こすのではなく、代わりに、上記に説明される調整ステップを自動的に実施することが、望ましくあり得る。
【0028】
本明細書の本開示に照らして、かつ本開示をいかようにも限定することなく、別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第1の側面では、医療用流体送達システムは、ポンプと、弁作動面積と、ポンプおよび弁作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する、空気圧マニホールドと、正の空気圧源と、負の空気圧源と、正および負の空気圧源とポンプおよび弁作動面積との間に位置する、複数の空気圧弁と、複数の空気圧弁と連動する、制御ユニットとを含む、医療用流体送達機械と、流体ポンプチャンバを含む使い捨て可能なカセットであって、使い捨て可能なカセットが空気圧マニホールドと噛合されると、流体ポンプチャンバは、ポンプ作動面積と整合し、使い捨て可能なカセットは、流体ポンプチャンバを覆うシート体を含む、使い捨て可能なカセットとを備え、制御ユニットは、圧送ガスケットとカセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去する試みとして噛合されながら、圧送ガスケットおよびカセットシート体を移動させる、調整ルーチンを実施するように空気圧弁を動作させるように構成される。
【0029】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第2の側面では、制御ユニットはさらに、完全性試験を実施し、圧送ガスケットおよびカセットシート体がともに適切にシールされているかどうかを判定するように構成され、調整ルーチンは、完全性試験に先立って実施される。
【0030】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第3の側面では、制御ユニットはさらに、完全性試験を実施し、圧送ガスケットおよびカセットシート体がともに適切にシールされているかどうかを判定するように構成され、調整ルーチンは、完全性試験の不合格の後に実施される。
【0031】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第3の側面と組み合わせられ得る、本開示の第4の側面では、制御ユニットはさらに、調整ルーチンが実施された後に、第2の完全性試験を実施するように構成される。
【0032】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第5の側面では、制御ユニットはさらに、緩慢流動条件を監視するように構成され、調整ルーチンは、緩慢流動条件の検出の後に実施される。
【0033】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第6の側面では、調整ルーチンの間に噛合されながら、圧送ガスケットおよびカセットシート体を移動させることは、(i)使い捨て可能なカセットの流体弁が開放している間、圧送ガスケットおよびカセットシート体に負の空気圧を印加することと、(ii)使い捨て可能なカセットの流体弁が閉鎖されている間、圧送ガスケットおよびカセットシート体に正の空気圧を印加することとを含む。
【0034】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第6の側面と組み合わせられ得る、本開示の第7の側面では、調整ルーチンは、(i)および(ii)を少なくとも1回繰り返すことを含む。
【0035】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第8の側面では、ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバは、第1のチャンバであり、空気圧マニホールドは、第2の流体ポンプチャンバと噛合する、第2のポンプ作動面積を含み、調整ルーチンは、(i)負の空気圧を第1および第2の噛合ポンプ作動および流体ポンプチャンバに同時に印加することと、(ii)正の空気圧を第1および第2の噛合ポンプ作動および流体ポンプチャンバに同時に印加することとを含む。
【0036】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第9の側面では、ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバは、第1のチャンバであり、空気圧マニホールドは、第2の流体ポンプチャンバと噛合する、第2のポンプ作動面積を含み、調整ルーチンは、負の空気圧を第1の噛合ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバに印加しながら、正の空気圧を第2の噛合ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバに印加することを含む。
【0037】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第10の側面では、圧送ガスケットおよびカセットシート体は、ポンプ作動面積に向かって予めドーム状にされる。
【0038】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第11の側面では、医療用流体送達システムは、ポンプ作動面積と、ポンプ作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する空気圧マニホールドを含む、医療用流体送達機械と、流体ポンプチャンバを含む使い捨て可能なカセットであって、使い捨て可能なカセットが空気圧マニホールドと噛合されると、流体ポンプチャンバは、ポンプ作動面積と整合し、使い捨て可能なカセットは、流体ポンプチャンバを覆うシート体を含む、使い捨て可能なカセットと、圧送ガスケットとカセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去するために2つの方向に噛合されながら、圧送ガスケットおよびカセットシート体を移動させる、調整ルーチンを実施するように構成されるものとを備え、調整ルーチンは、(i)使い捨て可能なカセットの配設試験に先立って、またはその結果に応答して、もしくは(ii)治療エラーまたは警告に応答して実施される。
【0039】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第11の側面と組み合わせられ得る、本開示の第12の側面では、使い捨て可能なカセット配設試験は、乾燥完全性試験を含む。
【0040】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第11の側面と組み合わせられ得る、本開示の第13の側面では、治療エラーまたは警報は、緩慢流動エラーを含む。
【0041】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第11の側面と組み合わせられ得る、本開示の第14の側面では、医療用流体送達機械は、調整ルーチンを、噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を2つの方向のうちの第1のものに空気圧によって引動することによって、かつ噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を2つの方向のうちの第2のものに空気圧によって押動することによって実施するように構成される。
【0042】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第14の側面と組み合わせられ得る、本開示の第15の側面では、使い捨て可能なカセットは、複数の流体ラインと流体連通し、流体ラインは、噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を空気圧によって引動するときに開放し、噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を空気圧によって押動するときに閉塞される。
【0043】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第11の側面と組み合わせられ得る、本開示の第16の側面では、圧送ガスケットは、少なくとも1つの開口を含み、少なくとも1つの開口は、負の空気圧が、開口を通して印加され、カセットシート体を圧送ガスケットに対して引動することを可能にするように位置付けられ、配列される。
【0044】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第11の側面と組み合わせられ得る、本開示の第17の側面では、医療用流体送達機械は、制御ユニットを含み、制御ユニットは、調整ルーチンを実施させるように構成される。
【0045】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面と組み合わせられ得る、本開示の第18の側面では、医療用流体送達機械のための方法であって、医療用流体送達機械は、使い捨て可能なカセットが医療用流体送達に搭載されると、使い捨て可能なカセットのシート体と噛合する、圧送ガスケットを含む、方法が提供され、本方法は、圧送ガスケットとカセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去する試みとして、圧送ガスケットおよびカセットシート体をともに移動させることによって噛合されると、圧送ガスケットおよびカセットシート体を調整することと、調整される圧送ガスケットおよびカセットシート体について完全性試験を実施し、カセットシート体が圧送ガスケットにシールされる程度を評価することとを含む。
【0046】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第18の側面と組み合わせられ得る、本開示の第19の側面では、調整することは、噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を少なくとも1回交互に移動させることを含む。
【0047】
別様に規定されない限り、本明細書に列挙される任意の他の側面との組み合わせにおいて第18の側面と組み合わせられ得る、本開示の第20の側面では、本方法は、(i)完全性試験の不合格、または(ii)医療用流体送達機械および使い捨て可能なカセットによって提供される、治療の間の緩慢流動エラーのうちの少なくとも1つに応じて、圧送ガスケットおよびカセットシート体を再び調整することを含む。
【0048】
本開示の第21の側面では、
図1-7に関連して開示される構造および機能性のいずれかが、
図1-7に関連して開示される他の構造および機能性のいずれかに含まれる、または組み合わせられてもよい。
【0049】
したがって、本開示および上記の側面に照らして、腹膜透析(「PD」)システムおよび方法等の、改良された医療用流体送達システムおよび方法を提供することが、本開示の利点である。
【0050】
圧送ガスケットと、乾燥完全性試験の不合格を低減させる、またはそれに応答することに役立つ、カセットシート体調整ルーチンとを有する、医療用流体送達システムおよび方法を提供することが、本開示の別の利点である。
【0051】
圧送ガスケットと、緩慢流動エラーを低減させる、またはそれに応答することに役立つ、カセットシート体調整ルーチンとを有する、医療用流体送達システムおよび方法を提供することが、本開示のさらなる利点である。
【0052】
圧送ガスケットと、起動させるために時間効率のよい、カセットシート体調整ルーチンとを有する、医療用流体送達システムおよび方法を提供することが、本開示のさらに別の利点である。
【0053】
本明細書に議論される利点は、本明細書に開示される実施形態のうちの1つまたはいくつかのものに見出され得るが、ことによると全てにおいてではない場合がある。付加的な特徴および利点が、本明細書に説明され、以下の発明を実施するための形態および図から明白となるであろう。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
医療用流体送達システムであって、
医療用流体送達機械であって、
ポンプと、弁作動面積と、前記ポンプおよび弁作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する空気圧マニホールドと、
正の空気圧源と、
負の空気圧源と、
前記正および負の空気圧源と前記ポンプおよび弁作動面積との間に位置する、複数の空気圧弁と、
前記複数の空気圧弁と連動する制御ユニットと
を含む、医療用流体送達機械と、
流体ポンプチャンバを含む使い捨て可能なカセットであって、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されると、前記流体ポンプチャンバは、前記ポンプ作動面積と整合し、前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバを覆うシート体を含む、使い捨て可能なカセットと
を備え、
前記制御ユニットは、前記圧送ガスケットと前記カセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去する試みとして噛合されながら、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体を移動させる、調整ルーチンを実施するように前記空気圧弁を動作させるように構成されている、医療用流体送達システム。
(項目2)
前記制御ユニットはさらに、完全性試験を実施し、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体がともに適切にシールされているかどうかを判定するように構成され、前記調整ルーチンは、前記完全性試験に先立って実施される、項目1に記載の医療用流体送達システム。
(項目3)
前記制御ユニットはさらに、完全性試験を実施し、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体がともに適切にシールされているかどうかを判定するように構成され、前記調整ルーチンは、前記完全性試験の不合格の後に実施される、項目1に記載の医療用流体送達システム。
(項目4)
前記制御ユニットはさらに、前記調整ルーチンが実施された後に、第2の完全性試験を実施するように構成されている、項目2または3に記載の医療用流体送達システム。
(項目5)
前記制御ユニットはさらに、緩慢流動条件を監視するように構成され、前記調整ルーチンは、前記緩慢流動条件の検出の後に実施される、項目1-4のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目6)
前記調整ルーチンの間に噛合されながら、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体を移動させることは、(i)前記使い捨て可能なカセットの流体弁が開放している間、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体に負の空気圧を印加することと、(ii)前記使い捨て可能なカセットの前記流体弁が閉鎖されている間、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体に正の空気圧を印加することとを含む、項目1-5のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目7)
前記調整ルーチンは、(i)および(ii)を少なくとも1回繰り返すことを含む、項目6に記載の医療用流体送達システム。
(項目8)
前記ポンプ作動面積および前記流体ポンプチャンバは、第1のチャンバであり、前記空気圧マニホールドは、第2の流体ポンプチャンバと噛合する第2のポンプ作動面積を含み、前記調整ルーチンは、(i)負の空気圧を前記第1および第2の噛合ポンプ作動および流体ポンプチャンバに同時に印加することと、(ii)正の空気圧を前記第1および第2の噛合ポンプ作動および流体ポンプチャンバに同時に印加することとを含む、項目1に記載の医療用流体送達システム。
(項目9)
前記ポンプ作動面積および前記流体ポンプチャンバは、第1のチャンバであり、前記空気圧マニホールドは、第2の流体ポンプチャンバと噛合する第2のポンプ作動面積を含み、前記調整ルーチンは、負の空気圧を前記第1の噛合ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバに印加しながら、正の空気圧を前記第2の噛合ポンプ作動面積および流体ポンプチャンバに印加することを含む、項目1に記載の医療用流体送達システム。
(項目10)
前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体は、前記ポンプ作動面積に向かって予めドーム状にされている、項目1-9のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目11)
医療用流体送達システムであって、
ポンプ作動面積と、前記ポンプ作動面積を覆う圧送ガスケットとを有する空気圧マニホールドを含む、医療用流体送達機械と、
流体ポンプチャンバを含む使い捨て可能なカセットであって、前記使い捨て可能なカセットが前記空気圧マニホールドと噛合されると、前記流体ポンプチャンバは、前記ポンプ作動面積と整合し、前記使い捨て可能なカセットは、前記流体ポンプチャンバを覆うシート体を含む、使い捨て可能なカセットと、
前記圧送ガスケットと前記カセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去するために2つの方向に噛合されながら、前記圧送ガスケットおよび前記カセットシート体を移動させる、調整ルーチンを実施するように構成されているものと
を備え、
前記調整ルーチンは、(i)使い捨て可能なカセットの配設試験に先立って、またはその結果に応答して、もしくは(ii)治療エラーまたは警告に応答して実施される、医療用流体送達システム。
(項目12)
前記使い捨て可能なカセット配設試験は、乾燥完全性試験を含む、項目11に記載の医療用流体送達システム。
(項目13)
前記治療エラーまたは警報は、緩慢流動エラーを含む、項目11または12に記載の医療用流体送達システム。
(項目14)
前記医療用流体送達機械は、調整ルーチンを、前記噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を前記2つの方向のうちの第1のものに空気圧によって引動することによって、かつ前記噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を前記2つの方向のうちの第2のものに空気圧によって押動することによって実施するように構成されている、項目11-13のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目15)
前記使い捨て可能なカセットは、複数の流体ラインと流体連通し、前記流体ラインは、前記噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を空気圧によって引動するときに開放し、前記噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を空気圧によって押動するときに閉塞される、項目14に記載の医療用流体送達システム。
(項目16)
前記圧送ガスケットは、少なくとも1つの開口を含み、前記少なくとも1つの開口は、負の空気圧が、前記開口を通して印加され、前記カセットシート体を前記圧送ガスケットに対して引動することを可能にするように位置付けられ、配列されている、項目11-15のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目17)
前記医療用流体送達機械は、制御ユニットを含み、前記制御ユニットは、前記調整ルーチンを実施させるように構成されている、項目11-16のいずれかに記載の医療用流体送達システム。
(項目18)
医療用流体送達機械のための方法であって、前記医療用流体送達機械は、使い捨て可能なカセットが前記医療用流体送達に搭載されると、前記使い捨て可能なカセットのシート体と噛合する、圧送ガスケットを含み、前記方法は、
前記圧送ガスケットと前記カセットシート体との間から小さい空気ポケットを除去する試みとして、前記圧送ガスケットおよびカセットシート体をともに移動させることによって噛合されると、前記圧送ガスケットおよびカセットシート体を調整することと、
前記調整される圧送ガスケットおよびカセットシート体について完全性試験を実施し、前記カセットシート体が前記圧送ガスケットにシールされる程度を評価することと
を含む、方法。
(項目19)
調整することは、前記噛合される圧送ガスケットおよびカセットシート体を少なくとも1回交互に移動させることを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
(i)前記完全性試験の不合格、または(ii)前記医療用流体送達機械および前記使い捨て可能なカセットによって提供される、治療の間の緩慢流動エラーのうちの少なくとも1つに応じて、前記圧送ガスケットおよびカセットシート体を再び調整することを含む、項目18または19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、本開示の調整ルーチンを採用するシステムの一実施形態の概略図である。
【0055】
【
図2】
図2は、本開示の調整ルーチンの一実施形態の第1のステップの概略図である。
【0056】
【
図3】
図3は、本開示の調整ルーチンの一実施形態の第2のステップの概略図である。
【0057】
【
図4】
図4は、本開示の調整ルーチンの一実施形態の第3のステップの概略図である。
【0058】
【
図5】
図5は、本開示の調整ルーチンの一実施形態の第4のステップの概略図である。
【0059】
【
図6】
図6は、本開示の調整ルーチンの一実施形態の第5のステップの概略図である。
【0060】
【
図7】
図7は、
図1のシステムを使用する、採用される、
図2-6の調整ルーチンからの結果のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(詳細な説明)
(システム概要)
ここで図面、特に
図1を参照すると、腹膜透析システム10等、医療用流体送達システムが、図示される。システム10が、腹膜透析(「PD」)の文脈において図示されているが、本明細書における教示は、機械が、限定ではないが、腹膜透析(「PD」)、血漿交換療法、血液透析(「HD」)、血液濾過(「HF」)、血液濾過透析(「HDF」)、持続的腎代替療法(「CRRT」)、アフェレーシス療法、自己血輸血、敗血症のための血液濾過、体外式模型人工肺(「ECMO」)の治療および医療送達を含む、使い捨て可能なカセットを含む使い捨て可能なセットとともに動作する、任意の医療用流体送達システムに適用可能である。これらのモダリティは、集合的に、または概して個々に、本明細書において医療用流体送達システムと称され得る。
【0062】
システム10は、PDサイクラ等の医療用流体送達機械20を含む。サイクラとともに動作する、1つの好適なサイクラおよび使い捨て可能なセットが、Baxter製Amia(登録商標)サイクラを説明する、米国特許第9,248,225号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれ、依拠される)に開示される。
図1は、使い捨て可能なセットに空気圧作動を提供するための一実施形態を図式的に図示する。特に、医療用流体送達機械20は、それぞれが、制御ユニット30の制御下で空気ポンプ27を介して所望の空気圧まで装填され得る、正の空気圧源24および負の空気圧源26を保持する、筐体22を含む。制御ユニット30は、1つ以上のプロセッサ32と、1つ以上のメモリ34と、ユーザインターフェース40のビデオ画面42に出力する、ビデオコントローラ36とを含む。ユーザインターフェース40はまた、制御ユニットの中に情報を入力するための、タッチスクリーンオーバーレイ(図示せず)および/または膜スイッチ等の1つ以上の電気機械式スイッチ(図示せず)を含んでもよい。
【0063】
正の空気圧源24および負の空気圧源26は、それぞれ、正および負の空気圧を空気圧マニホールド50に供給する。米国特許第9,248,225号の
図37により詳細に図示されるような空気圧マニホールド50は、概して、空気圧マニホールド50内のチャネルバー54によって示される、圧送チャンバまたは面積52と、複数の空気圧チャネルとを含み、または画定する。空気圧マニホールド50は、金属、例えば、アルミニウム、またはプラスチック、例えば、射出成型されたものから作製されてもよい。空気圧チャネル54は、圧送チャンバまたは面積52および複数の弁チャネルまたは面積56につながる。
【0064】
図示される実施形態では、複数の電気的に作動される空気圧弁58が、空気圧マニホールド50の裏側または内面側に搭載される。図示される実施形態では、正の空気圧ライン44が、正の空気圧源24から空気圧弁58のそれぞれにつながり、負の空気圧ライン46が、負の空気圧源24から空気圧弁のそれぞれにつながる。一実施形態では、医療用流体送達機械20とともに動作する、使い捨て可能なカセット100の各弁が、負圧下で開放され、正圧下で閉鎖され、したがって、各対応する空気圧弁58が、正圧および負圧の両方を供給される。代替実施形態では、使い捨て可能なカセットの弁は、例えば、減圧されると自動的に閉鎖し、負圧に応じて開放するように付勢されてもよい。ここで、対応する空気圧弁58は、負の空気圧を供給される必要があるのみであろう。使い捨て可能なカセット100のポンプチャンバは、負の空気圧を介して流体をカセットの中に引動し、正圧下で流体をカセットから押動する。したがって、ポンプチャンバのための対応する空気圧弁58は、一実施形態では、正および負の空気圧供給源の両方を有する。
【0065】
図1に図示されるように、基準チャンバ28aおよび28bが、2つのポンプチャンバのそれぞれに関して1つずつ、提供される。基準チャンバ28aおよび28bは、ポンプチャンバ内の圧力を測定し、制御ユニット30との組み合わせにおいて、ボイルの法則を使用してポンプチャンバの中に引動される、またはそれから排出される医療用流体の体積を判定するために使用される、公知の容積チャンバである。図示される実施形態では、正の空気圧ライン44が、第1の圧力センサ38aを具備し、負の空気圧ライン46が、第2の圧力センサ38bを具備し、第1の基準チャンバ28aが、第3の圧力センサ38cを具備する一方、第2の基準チャンバ28aが、第4の圧力センサ38dを具備する。圧力センサ38a-38dは、そこから延在する短い破線によって示されるように、制御ユニット30に出力する。空気ポンプ27、基準チャンバ28aおよび28b、制御ユニット30、ユーザインターフェース40、ならびに空気圧弁58から延在する破線が、制御ユニット30との電気制御および/または信号通信を示す。
【0066】
圧送ガスケット60が、空気圧マニホールド50の外側に取り付けられ、
図1においては、その説明を補助するために空気圧マニホールドから取り外された状態で図示される。圧送ガスケット60は、一実施形態では、シリコーンゴム等のゴムから作製される。圧送ガスケット60は、空気圧マニホールド50の圧送チャンバまたは面積52および弁チャネルもしくは面積56を被覆し、それらの面積において印加される負または正の空気圧に従って、それらの面積において移動する。負の空気圧は、個別の面積における圧送ガスケットを空気圧マニホールド50に向かってその中に引動する一方、正の空気圧は、個別の面積における圧送ガスケットを空気圧マニホールド50から外向きに押動する。図示される実施形態における圧送ガスケット60は、予めドーム状にされる圧送チャンバまたは面積62を含み、これは、ガスケットが、平坦な圧送チャンバもしくは面積と比較して同程度に多く伸展する必要なく、完全なポンプストロークを実施することに役立つ。圧送ガスケット60はまた、空気圧マニホールド50の対応する弁チャネルまたは面積56と動作する、弁面積66を含む。圧送ガスケット60はさらに、開口68、例えば、ポンプおよび弁面積毎に開口を含んでもよく、これは、マニホールド50からの負圧がガスケット60を通して延在することを可能にし、カセット100のシート体を圧送ガスケット60上に吸引することに役立つ。
【0067】
図示される実施形態における使い捨て可能なカセット100は、カセットシート体104およびカセットシート体106に対して両側でシールする、堅性の成型プラスチック部品102を含む。カセットシート体104およびカセットシート体106は、ポリ塩化ビニル(「PVC」)等の薄いポリマーフィルムから作製されてもよい。カセットシート体104およびカセットシート体106は、堅性プラスチック片102に溶媒接合される、ヒートシールされる、または超音波溶接される。図示される実施形態におけるカセットシート体104は、圧送ガスケット60の予めドーム状にされる圧送チャンバまたは面積62に噛合し、それと合致する、予めドーム状にされる流体ポンプ面積108を含む。カセットシート体104はさらに、圧送ガスケット60の弁面積66と噛合する、弁面積110を含む。使い捨て可能なカセットの堅性片102は、カセットシート体104の弁面積110とともに動作し、弁チャンバを通した流体流を可能にする、または禁止する、弁チャンバ、例えば、火山弁チャンバ(図示せず)を画定する。使い捨て可能なカセットの堅性片102はまた、カセットシート体104の予めドーム状にされる流体ポンプ面積108と動作し、流体を使い捨て可能なカセット100の中に引き込む、または流体をそれから排出する、流体ポンプチャンバ112を画定する。使い捨て可能なカセット100は、加熱器バッグライン、排水部ライン、患者ライン、および流体供給源ライン等の流体ライン(図示せず)に流体連通される、例えば、それに取り付けられる。
【0068】
(調整ルーチン)
医療用流体送達機械20が使い捨て可能なカセット100を空気圧によって作動させる治療の間、空気圧マニホールド50の圧送ガスケット60が、使い捨て可能なカセット100のカセットシート体104に噛合され、それを伴うものとして作用することが意図される。圧送ガスケット60またはカセットシート体104のいずれかの不完全性ならびに/もしくは圧送ガスケット60に対する使い捨て可能なカセット100の不整合に起因して、カセットシート体104と圧送ガスケット60との間のシールが、治療が実施されることを可能にするために十分に良好ではない場合がある。ある実施形態では、制御ユニット30は、乾燥完全性試験を実施しながら、例えば、漏出率の評価を介して、カセットシート体104と圧送ガスケット60との間のシールを評価する。乾燥完全性試験が、不合格となった場合、使い捨て可能なセット(ラインおよび加熱器バッグ)の残りに加えて、使い捨て可能なカセット100が、破棄される必要がある。カセットシート体104と圧送ガスケット60との間の不適切なシールに起因する、乾燥完全性試験の不合格率を低減させるために、以下の調整ルーチンが、開発されている。
【0069】
ここで
図2-6を参照すると、制御ユニット30のメモリ34内に記憶され、そのプロセッサ32によって動作される、調整ルーチンの一実施形態が、図示される。図は、オーバーレイされた、空気圧マニホールド50の圧送チャンバまたは面積52、圧送ガスケット60の予めドーム状にされる圧送チャンバまたは面積62、シート体104の予めドーム状にされる流体ポンプ面積108、および堅性片102の流体ポンプチャンバ112の表現を示す。図はまた、第1のポンプチャンバ52、62、108、112とともに動作する、第1の基準チャンバ28a、および第2のポンプチャンバ52、62、108、112とともに動作する、第2の基準チャンバ28bを示す。
【0070】
図2-6はまた、一実施形態において、電気的に作動される空気圧弁58が、以下、すなわち、(i)加熱器への、またはそれからの流体流を制御するためのHV_HP、(ii)排水部への流体流を制御するためのHV_DP、(iii)患者への、およびそれからの流体流を制御するためのHV_PP、(iv)第1の基準チャンバから通気孔への空気流を制御するためのV_nVnt1、(v)第1の基準チャンバと第1のポンプチャンバとの間の空気流を制御するためのV_FMS1、(vi)負の空気圧貯蔵タンクと第1のポンプチャンバとの間の負の空気圧を制御するためのV_Neg1、(vii)正の空気圧貯蔵タンクと第1のポンプチャンバとの間の正の空気圧を制御するためのV_Pos1、(viii)第1のポンプチャンバと加熱器バッグまたは排水部との間の流体流を制御するためのHV_C1T、(ix)第1のポンプチャンバと患者または供給容器との間の流体流を制御するためのHV_C1B、(x)第2のポンプチャンバと患者または供給容器との間の流体流を制御するためのHV_C2B、(xi)第2のポンプチャンバと加熱器バッグまたは排水部との間の流体流を制御するためのHV_C2T、(xii)正の空気圧貯蔵タンクと第2のポンプチャンバとの間の正の空気圧を制御するためのV_Pos2、(xiii)負の空気圧貯蔵タンクと第2のポンプチャンバとの間の負の空気圧を制御するためのV_Neg2、(xiv)第2の基準チャンバと第2のポンプチャンバとの間の空気流を制御するためのVFMS_2、(xv)第2の基準チャンバから通気孔への空気流を制御するためのV_nVnt2、(xvi)第1の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するためのHV_BP1、(xvii)第2の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するためのHV_BP2、(xviii)第3の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するためのHV_BP3、(xix)第4の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するためのHV_BP4、(xx)第5の供給容器とポンプチャンバとの間の流体流を制御するためのHV_BP5のように提供されることを図示する。
【0071】
図2は、腹膜透析サイクラ等、医療用流体送達機械20の制御ユニット30のメモリ34内に記憶され、そのプロセッサ32によって実行される、圧送ガスケットおよびカセット調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第1のステップを図示し、制御ユニット30は、他の18個の空気圧弁全てが、閉鎖される間、2つの空気圧換気弁V_nVnt1およびV_nVnt2を開放させる。本第1のステップは、基準チャンバ28aおよび28bを換気する。第1のステップの終了時における基準チャンバ28aおよび28b内の圧力は、ゼロpsigまたはゼロpsigに近接する。第1のステップは、弁の全てを静置状態に設定し、調整のために機械20および使い捨て可能なカセット100を準備する。
【0072】
図3は、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第2のステップを図示し、制御ユニット30は、(i)正の空気圧貯蔵タンク24と第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112との間の空気圧弁V_Pos1およびV_Pos2、ならびに(ii)第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112と第1および第2の基準チャンバ28aおよび28bとの間の空気圧弁V_FMS1およびV_FMS2を除いては、全ての空気圧弁58を開放させる。基準チャンバ28aおよび28bへの2つの空気圧換気弁V_nVnt1およびV_nVnt2は、基準チャンバ圧力が、依然として大気圧にあるように、依然として開放している。負の空気圧貯蔵タンク26と第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112との間の空気圧弁V_Neg1およびV_Neg2は、開放され、負圧が、ポンプチャンバ52、62、108、112に印加され、圧送ガスケット60およびカセットシート体104を、機械またはサイクラ20の空気圧マニホールド50によって画定されるポンプチャンバ半体52の中にともに引動することを可能にする。流体弁HV_BP1-HV_BP5、HV_HP、HV_DP、およびHV_PPは全て、一実装において、開放され、空気が、使い捨て可能なカセット100の中に流入し、潜在的にカセットシート体104の移動に抵抗し得る、負圧を、カセット100内に蓄積しないように低減させる、または排除することを可能にする。圧送ガスケット60およびカセットシート体104は、それによって、(i)例えば、ガスケット60またはシート体104のいずれか一方もしくは両方の不完全性に起因する、圧送ガスケット60とカセットシート体104との間のシール内の小さい間隙または空気ポケットを除去し、(ii)カセット100と空気圧マニホールド50との間の不整合を補正するように、ともに自由に移動および伸展し、調整する。
【0073】
図4は、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第3のステップを図示し、制御ユニット30は、(i)正の空気圧貯蔵タンク24と第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112との間の空気圧弁V_Pos1およびV_Pos2、ならびに(ii)基準チャンバ28aおよび28bへの空気圧換気弁V_nVnt1およびV_nVnt2を除いては、基準チャンバ圧力が大気圧に維持されるように、全ての空気圧弁58を閉鎖させる。正の空気圧貯蔵タンク24と第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112との間で開放される空気圧弁V_Pos1およびV_Pos2は、正圧がポンプチャンバに印加され、圧送ガスケット60およびカセットシート体104を、使い捨て可能なカセット100によって画定される、ポンプチャンバ半体112の中にともに押動することを可能にする。流体弁58は全て、一実装において、閉鎖され、正圧が、噛合されるガスケット60およびカセットシート体100の両側面に印加され、(i)空気を圧搾し、圧送ガスケットとカセットシート体との間に常駐する小さい間隙または空気ポケットを外に出し、(ii)カセット100と空気圧マニホールド50との間の不整合を補正するように、正圧が使い捨て可能なカセット100の内側に蓄積することを可能にする。
【0074】
調整ルーチンのために、メモリ34内にソフトウェアを起動させる処理部32を有する、制御ユニット30は、種々の実施形態において、ステップ2および3を1回以上の回数繰り返すようにプログラムされてもよい、もしくはそうでなくてもよい。また、ステップ2および3は、第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112を同様に動作させる(両方を同時に引動し、押動する)ように説明されている。代替として、または加えて、一方のポンプチャンバ52、62、108、112における圧送ガスケット60およびシート体104は、負圧下に設置され得る一方、他方のポンプチャンバ52、62、108、112におけるガスケットおよびシート体は、正圧下に設置される。
【0075】
図5は、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の第4のステップを図示し、制御ユニット30は、(i)第1および第2のポンプチャンバ52、62、108、112と第1および第2の基準チャンバ28aおよび28bとの間の空気圧弁V_FMS1およびV_FMS2、ならびに(ii)基準チャンバへの空気圧換気弁V_nVnt1およびV_nVnt2を除いては、第3のステップにおいて蓄積された正圧が、大気に換気されるように、全ての空気圧弁58を閉鎖させる。
【0076】
図6は、圧送ガスケットおよびカセットシート体調整アルゴリズムまたはルーチンのための一実施形態の4のステップを図示し、制御ユニット30は、他の18個の空気圧弁58全てが、閉鎖される間、2個の空気圧換気弁V_nVnt1およびV_nVnt2を開放させる。静置構成にある本弁は、第1のステップの構成と同一である。
【0077】
上記に述べられるように、圧送ガスケット60およびカセットシート体100の正および負圧調整は、乾燥完全性試験の前または後のいずれかに実施され得る。例えば、一事例では、
図2-6の調整ルーチンは、乾燥完全性試験の前に提供される。その後、乾燥完全性試験が、実施される。
【0078】
第2の実施例では、
図2-6の調整ルーチンは、乾燥完全性試験の不合格を被った後に提供される。ここで、制御ユニット60が、乾燥完全性試験の不合格の後、腹膜透析サイクラ等の医療用流体送達機械20が、患者または介護者に、ユーザインターフェース40において、乾燥完全性試験の不合格を認識する、「再開」ボタンを押下するようにプロンプトするようにプログラムされる。いったん「再開」が、押下されると、制御ユニット30は、上記に説明される、
図2-6の調整ルーチンを実施させる。その後、制御ユニット30は、乾燥完全性試験を再び実施させる。本第2の実施例は、第1の実施例との組み合わせにおいて、または第1の実施例の代わりに実施されてもよい。
【0079】
調整ルーチンの恩恵は、乾燥完全性試験に役立つことに限定されない。第3の実施例では、制御ユニット30は、
図2-6の調整ルーチンを、緩慢流動エラー(例えば、医療用流体は、より高い流率を試みているにもかかわらず、患者に、または患者から過度に緩徐に圧送される)の結果として実施させる。制御ユニット30は、緩慢流動エラーの後、腹膜透析サイクラ等の医療用流体送達機械20が、患者または介護者に、ユーザインターフェース40において、緩慢流動エラーを認識する「再開」ボタンを押下するようにプロンプトするようにプログラムされる。いったん「再開」が、押下されると、
図2-6のルーチンが、実施される。その後、治療が、願わくば、圧送ガスケット60とカセットシート体104との間により良好なシールを伴う機械20において再開する。本第3の実施例は、第1の実施例および/または第2の実施例のいずれか一方もしくは両方との組み合わせにおいて実施されてもよい。
【0080】
本開示の調整ルーチンによって補助され得る、他のエラーまたは警報は、圧送ガスケットおよびカセットシート体の作動を伴う、任意のものを含む。
図2-6の調整ルーチンがエラーまたは警報に応答して実施される状況のいずれかにおいて、ユーザインターフェース40における「再開」ボタンの押下等、患者もしくは介護者の動作が、必要ではないことを理解されたい。例えば、療法が、患者が睡眠をとる間、夜間に実施される場合、患者を起こすのではなく、代わりに、
図2-6の調整ステップを自動的に実施することが、望ましくあり得る。
【0081】
図7は、乾燥漏出完全性試験のキロパスカル(「Kpa」)の単位の流体漏出率によって測定されるような、圧送ガスケット60およびカセットシート体104のシール性能のプロットを図示し、0.15Kpaを上回る漏出率は、不合格と見なされる。「A」カセット試験の全てが、本開示のいかなる調整ルーチンも伴わずに実施された。「B」カセット試験の全てが、
図2-6の調整ルーチンの後に実施された。試験は、カセットシート体104の異なる格付けを使用して実施され、高リスクカセット100は、より多くの不完全性を有し、中リスクカセット100は、より少ない不完全性を有し、低リスクカセット100は、殆ど不完全性を有していない。図示されるように、高リスクの「A」カセットは、不合格を示す一方、高リスクの「B」カセットは全て、合格した。中リスクおよび低リスクの「A」カセットは、不合格を有していなかったが、しかしながら、中リスクおよび低リスクの「B」カセットはそれぞれ、全体として、「A」カセットより低い漏出率を有した。
【0082】
本明細書に説明される、本好ましい実施形態への種々の変更および修正が、当業者に明白となるであろうことを理解されたい。そのような変更および修正は、本主題の精神ならびに範囲から逸脱することなく、かつその意図される利点を減退させることなく成されることができる。したがって、そのような変更および修正が、添付の請求項によって網羅されることが意図される。例えば、
図2-6の調整ルーチンは、正圧の前に負圧を印加するように説明するが、逆のものもまた、代替として、印加され得る。再び、複数の引動および引動サイクル、または複数の押動および引動サイクルが存在してもよい。ポンプチャンバ52、62、108、112は、同時に同様に、同時に異なるように、異なる時間に同様に(例えば、第1のポンプチャンバを引動し、次いで、第2のポンプチャンバを引動し、次いで、第1のポンプチャンバを押動し、次いで、第2のポンプチャンバを押動する)、または異なる時間に異なるように(例えば、第1のポンプチャンバを引動し、次いで、第2のポンプチャンバを押動し、次いで、第1のポンプチャンバを押動し、次いで、第2のポンプチャンバを引動する)作動されてもよい。また、異なる調整ルーチン作動の任意のものが、組み合わせられ、全体的調整ルーチンを形成し得る。