(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】医療の支援装置
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240313BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2023114271
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523265711
【氏名又は名称】医療法人社団梅華会
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 比俊
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114999676(CN,A)
【文献】国際公開第2020/004556(WO,A1)
【文献】特開2023-098761(JP,A)
【文献】特表2022-537759(JP,A)
【文献】渡辺 大,「NPUにおけるMLモデル保護技術に関する一考察」,2023年暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2023) [online] SCIS2023 The 40th Symposium on Cryptography and Information Security,電子情報通信学会情報セキュリティ研究専門委員会(ISEC研),2023年01月23日,pp.1-6
【文献】中田 敦,「GPT-3の正体 文章生成AIの魔力」,日経コンピュータ,日本,日経BP,2020年10月01日,pp.50-56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
500GB以上のテキストによる事前学習が行われた大規模言語モデルに対し、患者の状態を示すテキスト及び患者の治療に活用される助言の組合せを学習データとした、当該助言の生成に係る機械学習を行う機械学習部と、
患者の状態を示すテキスト(第1テキスト)を取得する取得部と、
前記大規模言語モデルに前記第1テキストを入力し、前記大規模言語モデルに前記患者の治療に活用される助言を生成させる生成部と、
を備え
、
前記機械学習部は、臨床試験の被験者のカルテと当該臨床試験に求められる被験者数との組合せを学習データとした機械学習を行い、
前記取得部は、複数の前記カルテのテキスト(第6テキスト)を取得し、
前記生成部は、前記第6テキストを入力し、前記被験者数を示す助言を生成させる、前記カルテに係る前記臨床試験に求められる被験者数を示す助言を生成させる、
医療の支援装置。
【請求項2】
前記患者が装着するウェアラブルデバイスから取得された検査値をテキスト(第2テキスト)に変換する変換部をさらに備え、
前記機械学習部は、検査値を示すテキストと前記検査値から想定される疾病を示す助言の組合せを学習データとした機械学習を行い、
前記取得部は、前記第2テキストを取得し、
前記生成部は、前記第2テキストを入力し、前記検査値から想定される疾病を示す助言を生成させる、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記患者に係る検査画像を画像認識する画像認識部をさらに備え、
前記画像認識部は、画像認識の結果を示す第3テキストを生成し、
前記機械学習部は、検査画像に対する画像認識の結果を示すテキストと前記検査画像から想定される疾病を示す助言との組合せを学習データとした機械学習を行い、
前記取得部は、前記第3テキストを取得し、
前記生成部は、前記第3テキストを入力し、前記検査画像から想定される疾病を示す助言を生成させる、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項4】
音声合成によって前記助言を発話する発話部をさらに備え、
前記取得部は、前記患者が発話した患者音声を音声認識して得られた第4テキストを取得し、
前記生成部は、前記第4テキストを入力する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項5】
前記機械学習部は、救急隊員からの報告と当該報告から想定される疾病への対応に適した搬送先を示す助言との組合せを学習データとした機械学習を行い、
前記取得部は、前記患者を搬送する救急隊員により報告されたテキスト(第5テキスト)を取得し、
前記生成部は、前記第5テキストを入力し、前記搬送に係る疾病に適した搬送先を示す助言を生成させる、
請求項1に記載の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療の支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者において、問診票、カルテ、検査値、検査画像等によって例示される患者の状態を示す各種情報が患者の治療に活用されている。医療従事者の負担を低減すべく、これら各種情報を人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成する技術が求められている。
【0003】
患者の治療に活用される情報を患者の状態を示す情報から生成することに関し、特許文献1は、データベースに基づいて医療情報を処理する人工知能エンジンを含む医療情報処理システムであって、医用画像を含む医療情報を受け付ける受付部と、前記データベースに基づいて、前記医用画像を予め設定された2以上のカテゴリのいずれかに分類する第1分類処理部と、前記医療情報に基づいて、前記2以上のカテゴリのいずれかを選択する選択処理部と、前記第1分類処理部により特定されたカテゴリと前記選択処理部により選択されたカテゴリとが一致しない場合、前記医用画像を特異カテゴリに分類する第2分類処理部とを備える医療情報処理システムを開示している。特許文献1の技術は、医用画像を用いた人工知能の学習等の処理を効果的に行い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、医用画像を用いた人工知能の学習等の処理を効果的に行い得るにとどまり、問診票、カルテ、検査値、検査画像等によって例示される画像に限定されない幅広い情報を最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成する点において、さらなる改良の余地がある。
【0006】
本発明は係る事情にかんがみてなされたものであり、その目的は、患者の状態を示す幅広い情報を最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、患者の状態を示す情報をテキストの態様で取得し、当該テキストを機械学習が予め行われた大規模言語モデルにおいて処理することによって、上記の目的を達成できることを見いだした。そして、本発明者らは、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明は、500GB以上のテキストによる事前学習が行われた大規模言語モデルに対し、患者の状態を示すテキスト及び患者の治療に活用される助言の組合せを学習データとした、当該助言の生成に係る機械学習を行う機械学習部と、患者の状態を示すテキスト(第1テキスト)を取得する取得部と、前記大規模言語モデルに前記第1テキストを入力し、前記大規模言語モデルに前記患者の治療に活用される助言を生成させる生成部と、を備える、医療の支援装置を提供する。
【0009】
本発明は、取得部により、患者の状態を示す情報をテキストの態様で取得できる。しかしながら、自然言語で記述された問診票及びカルテ、検査値のテキスト等の各種テキスト情報は、記載スタイルがそれぞれ異なる。そのため、例えば、Mircosoft Azure(登録商標)のLUIS(Language Understanding)等の自然言語解析処理を行う人工知能によってこれら各種のテキスト情報を構造化すると、記載スタイルごとに異なる各種構造化情報が得られると考えられる。そのような各種構造化情報を扱う装置は、各種構造化情報に合わせた多種類の人工知能を用いる複雑な構成となることが懸念される。
【0010】
ところで、大量のテキストデータで事前訓練された言語モデルである大規模言語モデルは、入力として与えられた自然言語に対して、適切な応答を出力として生成し得ることが知られている。本発明は、500GB(ギガバイト)以上のテキストによる事前学習が行われた大規模言語モデルを用いる。言語モデルは、学習データ量が増大すると、その性能が「壊れたニューラルスケーリング則」(Broken Neural Scaling Laws、BNSL)に沿って増大し、BNSLにおいてセグメント間を遷移するときに創発的能力を獲得すると考えられる。そのため、当該大規模言語モデルは、事前学習に用いられたテキスト量に応じて獲得される、テキストの意味の特定に係る創発的能力を得ている。しかしながら、大規模言語モデルは、このような創発的能力を得ていても、患者の状態を示すテキストが入力された場合に患者の治療に活用される適切な助言を生成するか不明である。
【0011】
医療分野では、不適切な助言が患者の健康・生命にかかわり得る。そこで、本発明は、このような大規模言語モデルに対し、患者の状態を示すテキスト及び患者の治療に活用される助言の組合せを学習データとした当該助言の生成に係る機械学習を行う。これにより、本発明は、取得されたテキストを入力し、当該大規模言語モデルに患者の治療に活用される適切な助言を生成させることができる。よって、本発明は、患者の状態を示す幅広い情報のテキストを上述の大規模言語モデルという最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、患者の状態を示す幅広い情報を最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態のシステムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の支援装置1で実行される支援処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
【0015】
<システムS>
図1は、本実施形態のシステムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成を示すブロック図である。以下、本実施形態のシステムSのハードウェア構成及びソフトウェア構成の好ましい態様の一例が
図1を用いて説明される。
【0016】
システムSは、患者の状態を示す幅広い情報を最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成する医療の支援装置1と、ネットワークNを介して支援装置1と通信可能に構成された端末Tとを含んで構成される。
【0017】
〔支援装置1〕
医療の支援装置1は、制御部11、記憶部12、及び通信部13等を備える。支援装置1の種類は、特に限定されない。該種類として、例えば、サーバ、クラウドサーバ等が挙げられる。
【0018】
支援装置1は、ウェアラブルデバイスにおいて測定された検査値、X線画像・CT画像等の検査画像、救急隊員からの報告、臨床試験におけるカルテ等の患者の状態を示す幅広い情報をテキストの態様で取得し、取得されたテキストをChatGPT等の大規模言語モデルによって処理するよう構成される。そして、支援装置1は、当該大規模言語モデルにおいて、想定される疾病、救急搬送に係る疾病に適した搬送先、臨床試験に求められる被験者数等の助言を生成する。
【0019】
支援装置1は、500GB以上のテキストによる事前学習が行われた大規模言語モデルに機械学習を行わせる処理と、当該機械学習が行われた大規模言語モデルに助言を生成させる処理とを実行できるよう構成されている。これらの処理の実行は、例えば、大規模言語モデルの利用に係るAPIを介して実現される。以下は、支援装置1のより詳細な構成例である。
【0020】
[制御部11]
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)等を備える。
【0021】
制御部11は、必要に応じて記憶部12及び/又は通信部13と協働する。そして、制御部11は、支援装置1で実行される本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素である、機械学習部111、取得部112、変換部113、画像認識部114、音声認識部115、生成部116、発話部117等を実現する。本実施形態のプログラムのソフトウェア構成要素それぞれが提供する機能は、後述する支援処理の好ましい流れの説明において示される。
【0022】
[記憶部12]
記憶部12は、データ及び/又はファイルが記憶される装置であって、ハードディスク、半導体メモリ、記録媒体、及びメモリカード等によってデータを非一時的に格納するストレージ部を有する。
【0023】
記憶部12は、ネットワークNを介してNAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)、クラウドストレージ、ファイルサーバ及び/又は分散ファイルシステム等の記憶装置又は記憶システムとの接続を可能にする仕組みを有してもよい。
【0024】
記憶部12には、マイクロコンピューターで実行されるプログラム、画像認識用ニューラルネットワーク、音声認識用データ、音声合成用データ、問診票、ウェアラブルデバイスにおいて測定された検査値、X線画像・CT画像等の検査画像、救急隊員からの報告、臨床試験におけるカルテ等の患者の状態を示す幅広い情報が格納されている。
【0025】
(大規模言語モデル)
本実施形態における大規模言語モデル(Large Language Model、LLM)は、自然言語処理において用いられる確率モデルの一種であり、与えられた単語・文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測するためのモデルである。
【0026】
大規模言語モデルは、外部のクラウドサーバ等に格納され、大規模言語モデルの利用に係るAPI(Application Programming Interface)を介して実行される態様でもよく、記憶部12に格納された態様でもよい。大規模言語モデルがAPIを介して実行される態様であることにより、支援装置1は、大規模言語モデルを記憶部12に格納する構成より単純で費用対効果等に優れた構成となる。大規模言語モデルが記憶部12に格納された態様であることにより、支援装置1は、クラウドサーバ等の外部装置と逐一通信することなく、大規模言語モデルに係る処理を実行できる。これにより、支援装置1は、通信に係る処理遅延、情報セキュリティ上のリスク等を低減することができる。
【0027】
大規模言語モデルは、少なくとも500GB(ギガバイト)以上の大量のテキストで学習が行われている。このようなモデルとして、例えば、OpenAI(登録商標)のChatGPT、GPT-3.5、GPT-4、Meta AI(登録商標)のLLaMa等が挙げられる。言語モデルは、学習データ量が増大すると、その性能が壊れたニューラルスケーリング則(BNSL)に沿って増大し、BNSLにおいてセグメント間を遷移するときに創発的能力を獲得すると考えられる。そのため、本実施形態の大規模言語モデルは、事前学習に用いられたテキスト量に応じて獲得される、テキストの意味の特定に係る創発的能力を得ている。
【0028】
大規模言語モデルは、少なくとも100億以上の多数のパラメータを有するモデルであることが好ましい。これにより、大規模言語モデルは、大量のテキストから得られる創発的能力を十分に反映した処理を実行できる。
【0029】
(画像認識用ニューラルネットワーク)
後述の検査画像関連学習データによって大規模言語モデルの機械学習が行われる場合、記憶部12には、検査画像を入力とし、検査画像に対する所見のテキストを出力とする画像認識用ニューラルネットワークが格納されることが好ましい。これにより、支援装置1は、画像認識用ニューラルネットワークという最低限の種類の人工知能を大規模言語モデルの人工知能に追加するだけで、患者の状態を示すテキストだけでなく、患者の状態を示す検査画像からも患者の治療に活用される助言を生成し、提供できる。
【0030】
画像認識用ニューラルネットワークは、検査画像と当該検査画像に対する所見のテキストとを関連付けた学習データによる事前学習が行われている。所見のテキストは、特に限定されず、当該検査画像の読み取りに習熟した医療従事者から提供された所見のテキスト等で良い。これにより、支援装置1は、検査画像から当該検査画像に対する所見のテキストを生成し、大規模言語モデルへの入力とできる。
【0031】
(音声認識用データ)
記憶部12には、音声データから当該音声に対応するテキストを認識するために用いられる音声認識用データが格納されることが好ましい。これにより、支援装置1は、患者の状態を示す音声に対する音声認識を行い、当該音声認識によって得られたテキストを大規模言語モデルへの入力とできる。
【0032】
(音声合成用データ)
記憶部12には、テキストから当該テキストを読み上げた音声を合成するために用いられる音声合成用データが格納されることが好ましい。これにより、支援装置1は、大規模言語モデルによって生成された助言を音声の態様で提供できる。
【0033】
(問診票)
記憶部12には、問診票が記憶されることが好ましい。これにより、支援装置1は、問診票に係る状態の患者の治療に活用される助言を生成し、当該助言を患者及び/又は医療従事者等に提供できる。問診票は、他の医療機関とのデータ交換を容易にすべく、MML(Medical Markup Language)を用いて記載された電子問診票であることが好ましい。
【0034】
問診票には、患者の住所、氏名、性別及び年齢等、患者が訴えた症状である主訴(発熱、鼻水、下痢の有無等)、患者が過去に罹患したが治癒した疾病である既往症、問診票に係る医療措置の年月日等が記載される。問診票に主訴が記載されることにより、支援装置1は、主訴に対応する疾病、治療方法、生活習慣の改善策等を含む助言を生成し、当該助言を患者及び/又は医療従事者等に提供できる。
【0035】
(カルテ)
記憶部12には、新しい医薬品・治療法の効果及び安全性を確認するために行われる臨床試験におけるカルテが記憶されることが好ましい。これにより、支援装置1は、カルテに基づいて検討された被験者数を示す助言を生成し、当該助言を臨床試験に係る医療従事者等に提供できる。
【0036】
カルテには、例えば、(1)患者の住所、氏名、性別及び年齢、(2)患者の病名及び主要症状、(3)患者に対する治療方法、並びに、(4)カルテに係る医療措置の年月日等が記載される。カルテは、他の医療機関とのデータ交換を容易にすべく、MML(Medical Markup Language)を用いて記載された電子カルテであることが好ましい。
【0037】
カルテには、(3)患者に対する治療方法として、検査の履歴である検歴データが含まれることが好ましい。検査は、例えば、検体を用いて行われる検体検査、検査画像(医用画像)を生成する検査、生理計測、遺伝子データ等を含む。
【0038】
検体検査は、例えば、肝機能の指標として利用されるAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)・ALT(アラニンアミノ基転移酵素)、栄養状態の評価に用いられるAlbumin(アルブミン)、腎臓中の糸球体のろ過機能の評価に用いられるCreatinine(クレアチニン)、尿路結石、尿路感染症等の疾病の指標として用いられる尿潜血等を測定する検査を含む。
【0039】
検査画像は、例えば、X線撮影装置、コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、磁気共鳴映像撮影装置(MRI装置)、ポジトロン断層撮影装置(PET装置)、単一光子放射断層撮影装置(SPECT装置)、超音波検査装置等において撮像された医用画像を含む。これら各種の医用画像が検査画像に含まれることの効果は、後に、機械学習ステップの項において詳述される。
【0040】
生理計測は、例えば、ウェアラブルデバイスによる脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等の計測を含む。これら各種の計測が生理計測に含まれることの効果は、後に、機械学習ステップの項において詳述される。
【0041】
遺伝子データは、例えば、遺伝子に係る塩基配列の情報等を含む。これにより、支援装置1は、遺伝子パターンと疾病との関係を踏まえて、患者の治療に活用される助言を生成し、当該助言を患者及び/又は医療従事者等に提供できる。
【0042】
カルテには、(3)患者に対する治療方法として、患者に係る標準診療計画(クリニカルパス、Clinical Pathway)が含まれることが好ましい。これにより、支援装置1は、クリニカルパスを踏まえて、患者の治療に活用される助言を生成し、当該助言を患者及び/又は医療従事者等に提供できる。
【0043】
カルテには、(3)患者に対する治療方法として、患者に係る保険診療での医療報酬(レセプト、Receipt)が含まれることが好ましい。これにより、支援装置1は、レセプトを踏まえて、患者の治療に活用される助言を生成し、当該助言を患者及び/又は医療従事者等に提供できる。
【0044】
[通信部13]
通信部13は、支援装置1をネットワークNに接続してブロックチェーンB及び端末T等と通信可能にするものであれば特に限定されない。通信部13として、例えば、携帯電話ネットワークに対応した無線装置、無線LANに接続可能なデバイス、及びイーサネット規格に対応したネットワークカード等が挙げられる。
【0045】
〔ネットワークN〕
ネットワークNの種類は、支援装置1と端末T等とを互いに通信可能にするものであれば特に限定されない。ネットワークNの種類は、例えば、インターネット、携帯電話ネットワーク、無線LAN等である。
【0046】
〔端末T〕
端末Tは、特に限定されない。端末Tは、患者又は医療従事者等のユーザが利用する端末(ユーザ端末)と、患者の状態を示す情報(データ)を提供する端末(データ端末)とを含む。
【0047】
ユーザ端末は、例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等を含む。ユーザ端末は、支援装置1において生成された助言を受信し、表示する処理等を実行可能である。
【0048】
データ端末は、ユーザ端末と同様の端末のほか、脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等の1以上を測定可能なウェアラブルデバイス、検査装置において測定された検査値・撮影された検査画像を提供可能な端末、救急隊員の端末、医療機関の端末、医療データベースに格納された情報を提供可能な端末等を含む。データ端末は、患者の状態を示す情報を支援装置1に提供する処理等を実行可能である。
【0049】
なかでも、データ端末は、スマートウォッチ等によって例示される、リストバンド型のウェアラブルデバイスを含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、常時装用可能な当該ウェアラブルデバイスから、脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等の1以上に係る検査値を取得できる。よって、支援装置1は、日常の検査値(生体データ)及びその変動(例えば、朝起きたときの血圧の変化等)に基づいた、より有益な助言を提供できる。また、これにより、支援装置1は、問診中の患者が装用するウェアラブルデバイスから、脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等の1以上に係る検査値を取得できる。よって、支援装置1は、問診中の検査値(生体データ)に基づいた、より有益な助言を提供できる。
【0050】
〔支援処理のメインフローチャート〕
図2は、本実施形態の支援装置1で実行される支援処理の好ましい流れの一例を示すメインフローチャートである。
図3は、
図2から続く図である。
図4は、
図3から続く図である。
図5は、
図4から続く図である。以下は、
図2から
図5を用いた、本実施形態の支援装置1で実行される支援処理の好ましい流れの一例である。
【0051】
[機械学習ステップ]
まず、制御部11は、記憶部12等と協働して機械学習部111を実行する。そして、制御部11は、機械学習部111により、上述の大規模言語モデルに対し、患者の状態を示すテキスト及び患者の治療に活用される助言の組合せを学習データとした、当該助言の生成に係る機械学習を行う(機械学習ステップ)。
【0052】
機械学習ステップを実行することにより、支援装置1は、当該大規模言語モデルを、取得されたテキストが入力されたときに患者の治療に活用される適切な助言を生成させるようにファインチューニングすることができる。これにより、支援装置1は、患者の状態を示す幅広い情報のテキストを上述の大規模言語モデルという最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成できる。
【0053】
機械学習ステップにおける機械学習は、上述の学習データを用いた教師あり学習(例えば、次の単語を予測するタスク)、教師なし学習(例えば、単語のベクトル表現を学習するタスク)等の学習が挙げられる。また、機械学習ステップにおけるファインチューニングは、学習された言語モデルを評価し、必要に応じてモデルが持つ重み等のパラメータを調整する手順、ニューラルネットワークの隠れ層の数、ユニットの数、学習率、正則化の強さ等によって例示されるハイパーパラメータの値を適切に調整することで、モデルの性能を向上させる手順等の調整を含む。
【0054】
(学習データ)
学習データは、例えば、ウェアラブルデバイスからの検査値に基づいて予想される疾病及び/又は当該検査値の患者が健康を維持するために求められる生活習慣を示す助言を生成することに係る学習データ(検査値関連学習データ)、検査画像の画像認識結果のテキストに基づいて検査画像から予想される疾病及び/又は当該検査画像の患者が健康を維持するために求められる生活習慣を示す助言を生成することに係る学習データ(検査画像関連学習データ)、救急隊員からの報告に基づいて当該報告から想定される疾病への対応に適した搬送先を示す助言を生成することに係る学習データ(救急搬送先関連学習データ)、臨床試験の被験者のカルテに基づいて当該臨床試験に求められる被験者数を示す助言を生成することに係る学習データ(臨床試験関連学習データ)、健康状態に影響を及ぼすニュースに係る学習データ(ニュース学習データ)等を含む。
【0055】
本実施形態の支援装置1は、人工知能として大規模言語モデルを用いるため、自然言語で記載された多様かつ大量の情報を学習データとして利用できる。これにより、大規模言語モデルは、多様かつ大量の情報による機械学習を反映した、有益な助言を生成する言語モデルとなる。よって、本実施形態の支援装置1は、人工知能の種類を最小限に抑えているにも関わらず、上述の各種の学習データによる機械学習が行われた大規模言語モデルにより、患者の治療に活用される有益な助言を生成できる。
【0056】
検査値関連学習データは、ウェアラブルデバイスにおいて測定可能な1種類以上の検査値(例えば、脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等)のテキストと、当該検査値に基づいて予想される疾病及び/又は当該検査値の患者が健康を維持するために求められる生活習慣を示す助言とを関連付けたデータである。検査値関連学習データは、医療データベースに大量に蓄積された検査値の情報(医療ビッグデータ)を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、より有益な助言を生成するよう、大規模言語モデルに対する機械学習を行える。
【0057】
検査値関連学習データが脈拍に係る検査値関連学習データを含むことにより、大規模言語モデルは、徐脈を示す検査値から、動脈硬化、甲状腺障害、薬の副作用等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。また、これにより、大規模言語モデルは、頻脈を示す検査値から、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、肺塞栓症、肺気腫、更年期障害、甲状腺機能亢進症等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。また、これにより、大規模言語モデルは、不整脈を示す検査値から、冠動脈疾患、心臓弁障害、心不全、先天性心疾患等の心臓疾患、甲状腺異常、肺の異常、薬の副作用、ストレス・睡眠不足・過労・喫煙・アルコール/カフェイン飲料の過剰摂取、肥満等の生活習慣の問題等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0058】
検査値関連学習データが体温に係る検査値関連学習データを含むことにより、大規模言語モデルは、低体温を示す検査値から、基礎代謝の低下、自律神経の乱れ等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。また、これにより、大規模言語モデルは、発熱を示す検査値から、風邪、インフルエンザ、COVID-19感染症等の各種感染症、アレルギー、続発性免疫不全症候群、慢性腎盂腎炎、熱中症、腸穿孔、急性前立腺炎、心筋梗塞、不安定狭心症等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0059】
検査値関連学習データが血圧に係る検査値関連学習データを含むことにより、大規模言語モデルは、高血圧を示す検査値から、本態性高血圧のほか、腎実質の異常、腎血管の異常、内分泌系の異常、血管の異常、脳・中枢神経性の異常(脳幹部血管圧迫等)、遺伝性の異常、薬剤誘発性の異常等の二次性高血圧を引き起こす各種疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。また、これにより、大規模言語モデルは、低血圧を示す検査値から、本態性低血圧のほか、出血、心臓病、胃腸疾患による栄養不良、内分泌異常、悪性新生物等の二次性低血圧を引き起こす各種疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0060】
検査値関連学習データが血糖値に係る検査値関連学習データを含むことにより、大規模言語モデルは、高血糖を示す検査値から、糖尿病等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。また、これにより、大規模言語モデルは、低血糖を示す検査値から、血糖降下剤等の薬剤誘発性の異常、慢性腎臓病等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0061】
検査画像関連学習データは、X線撮影装置、コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、磁気共鳴映像撮影装置(MRI装置)、ポジトロン断層撮影装置(PET装置)、単一光子放射断層撮影装置(SPECT装置)、超音波検査装置等において撮像可能な1種類以上の検査画像に対する画像認識処理により生成されたテキストと、当該検査画像に基づいて予想される疾病及び/又は当該検査値の患者が健康を維持するために求められる生活習慣を示す助言とを関連付けたデータである。検査画像関連学習データは、医療データベースに大量に蓄積された検査画像及び所見の情報(医療ビッグデータ)を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、より有益な助言を生成するよう、大規模言語モデルに対する機械学習を行える。
【0062】
検査画像関連学習データがX線撮像装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、骨折、骨粗鬆症等の骨に係る疾患、歯に係る疾患、肺癌、肺炎、結核、胸水、気胸等の肺病変、消化管に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0063】
検査画像関連学習データがX線を用いたCT装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、肺胞蛋白症、腺癌、細気管支肺胞上皮癌、肺水腫、肺出血、肺炎等の肺の疾患、大動脈瘤、大動脈解離等の血管の疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0064】
検査画像関連学習データがMRI装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、脳血管疾患(脳卒中、脳腫瘍等)、脳奇形、脳の外傷、脳の変形型疾患等の脳に係る疾患、頚・胸・腰部における脊椎・脊髄疾患(椎間板ヘルニア、頚椎症、脊柱管狭窄症、脊椎腫瘍等)等の脊椎・脊髄に係る疾患、四肢における骨肉腫、転移性骨腫瘍、腱板断裂(肩)、大腿骨頭壊死、前十字靭帯断裂、骨挫傷(膝)等の四肢に係る疾患、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん等の内臓に係る疾患、前立腺がん等の前立腺に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0065】
検査画像関連学習データがPET装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、脳機能に係る疾患、がん等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0066】
検査画像関連学習データがSPECT装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、脳血管障害、心臓病、がん等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0067】
検査画像関連学習データが超音波検査装置に係る検査画像を含むことにより、大規模言語モデルは、心弁膜症、心肥大、心臓内血栓、心膜炎、心筋梗塞等の心臓疾患、脂肪肝、肝嚢胞、肝血管腫、肝炎、肝硬変、肝がん、転移性肝がん等の肝臓疾患、胆石、総胆管結石、胆のうポリープ、胆のう炎、胆のうがん、胆管がん等の胆のう・胆管に係る疾患、腎結石、尿管結石、腎嚢胞、水腎症、腎臓がん、尿管がん等の腎臓・尿管に係る疾患、脾腫、脾のう胞、転移性脾腫瘍等の脾臓疾患、膵炎、膵のう胞、膵がん等の膵臓疾患、胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞、腸炎、虫垂炎、胃がん、大腸がん等の消化管疾患、膀胱炎、膀胱結石、膀胱がん等の膀胱疾患、子宮筋腫、子宮がん、卵巣のう腫、卵巣がん等の子宮・卵巣に係る疾患、前立腺肥大、前立腺がん等の前立腺疾患、大動脈血栓症、腹部大動脈瘤、大動脈解離等の腹部大動脈に係る疾患、動脈硬化症、静脈瘤、静脈血栓症等の血管に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0068】
救急搬送先関連学習データは、救急隊員から提供された搬送対象(患者)の状態を示す報告のテキストと、当該報告に基づいて予想される疾病及び当該疾病への対応に適した搬送先を示す助言とを関連付けたデータである。救急搬送先関連学習データが学習データに含まれることにより、支援装置1は、報告のテキストから各種疾病を予想し、当該疾病への対応に適した搬送先を示す助言を生成できる。
【0069】
臨床試験関連学習データは、臨床試験の被験者のカルテのテキストと当該臨床試験に求められる被験者数を示す助言とを関連付けたデータである。当該データは、例えば、二重盲検法等のデータを扱うべく、投与された薬品が偽薬であるか否かの情報等を含む。臨床試験関連学習データが学習データに含まれることにより、支援装置1は、カルテのテキストから臨床試験の妥当性を予想し、当該臨床試験に求められる被験者数を示す助言を生成できる。臨床試験関連学習データは、医療データベースに大量に蓄積された臨床試験に係るカルテの情報(医療ビッグデータ)を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、より高い精度で算出された被験者数が含まれた助言を生成するよう、大規模言語モデルに対する機械学習を行える。また、支援装置1は、既存の薬品と臨床試験対象の薬品との化学的な類似(例えば、光学異性体の関係にある等)を踏まえて被験者数が含まれた助言を生成するよう、大規模言語モデルに対する機械学習を行える。
【0070】
機械学習ステップは、健康状態に影響を及ぼすニュースであることを示すテキストと、最近・現在の気象情報、感染症の感染情報等によって例示される健康状態に影響を及ぼす各種のニュースに係るテキストとを関連付けた学習データ(ニュース学習データ)に係る機械学習を1日の決まった時間等に実行する手順を含むことが好ましい。寒暖差が大きくなると疾病リスクが高まることが知られている。また、季節性インフルエンザ等の感染症の感染状況は、当該感染症に係る疾病リスクに影響を及ぼす。このように、各種のニュースは、患者の疾病を分析する上で、重要な情報となり得る。
【0071】
よって、機械学習ステップがニュース学習データに係る機械学習を1日の決まった時間等に実行する手順を含むことにより、支援装置1は、健康状態に影響を及ぼすニュースを踏まえた助言を生成し、提供できる。このような助言の生成の例として、例えば、気圧が低いとのニュースを機械学習しており、かつ、血圧が低い場合において、メニエール病の可能性が高いことを示す助言を生成することが挙げられる。
【0072】
支援処理は、問診票の取得に関する一連の処理(ステップS1からステップS2)を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、患者の状態を示す幅広い情報のうち、患者への問診によって得られた問診票に基づいて、患者の治療に活用される情報を生成できる。なお、問診票は、患者自身が書いた内容又は医療従事者が患者への問診を通じて書いた内容、若しくは、これら両方の内容を含むものでよい。
【0073】
[ステップS1:問診票を取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、取得部112を実行する。そして、制御部11は、取得部112により、問診票を取得するか判別する処理を実行する(ステップS1、問診票取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS2に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS3に移す。
【0074】
[ステップS2:問診票のテキストを取得]
制御部11は、取得部112により、ステップS1で取得すると判別された問診票のテキストを取得する処理を実行する(ステップS2、問診票取得実行ステップ)。制御部11は、取得された問診票のテキストを記憶部12に格納し、処理をステップS3に移す。問診票取得実行ステップは、例えば、医療データベースから問診票のテキストを取得する手順、手書きの問診票に対する文字認識によって得られたテキストを取得する手順、患者等が問診票のテキストを入力した端末Tから問診票のテキストを取得する手順等を含む。
【0075】
問診票取得実行ステップは、音声合成及び音声認識を用いた音声を介した対話によって患者に対する問診を行い、当該患者からの応答に基づいて問診票を作成する手順を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、合成音声によって表現される、いわゆるバーチャル医師による問診を患者に提供できる。このとき、支援装置1は、当該音声に対応する人物の映像(アバター)をさらに提供することが好ましい。これにより、支援装置1は、コンピュータグラフィックス(CG)と合成音声とによって表現される、より実在感のあるバーチャル医師を提供し、患者を安心させることができる。
【0076】
支援処理は、検査値の取得に関する一連の処理(ステップS3からステップS5)を含むことが好ましい。これにより、支援装置1は、患者の状態を示す幅広い情報のうち、ウェアラブルデバイス等から取得された検査値に基づいて、患者の治療に活用される情報を生成できる。
【0077】
[ステップS3:検査値を取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、変換部113を実行する。そして、制御部11は、変換部113により、ウェアラブルデバイスである端末Tから検査値を取得するか判別する処理を実行する(ステップS3、検査値取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS4に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS5に移す。検査値取得判別ステップは、所定のタイミングであれば取得すると判別する手順、ウェアラブルデバイスである端末Tから検査値が送信されたときに取得すると判別する手順等を含む。
【0078】
[ステップS4:検査値を取得]
制御部11は、変換部113により、ステップS3で取得すると判別された検査値をウェアラブルデバイスである端末Tから取得する処理を実行する(ステップS4、検査値取得実行ステップ)。制御部11は、処理をステップS5に移す。検査値取得実行ステップは、例えば、ウェアラブルデバイスである端末Tから、脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図のいずれか1以上を取得する手順等を含む。
【0079】
検査値取得実行ステップは、例えば、ウェアラブルデバイスにおいて測定された脈拍、体温、血圧、血糖値、歩行歩数、心電図等の1以上の検査値を当該ウェアラブルデバイスである端末Tから取得する手順を含む。これにより、支援装置1は、患者が普段から身に着けているウェアラブルデバイスから、患者の疾病を特定するにおいて有益な情報となる日常における生体データを検査値として取得できる。また、これにより、支援装置1は、問診中の患者が装用するウェアラブルデバイスから、患者の疾病を特定するにおいて有益な情報となる日常における生体データを検査値として取得できる。
【0080】
検査値取得実行ステップは、取得された検査値の時系列情報を記憶部12に格納することが好ましい。これにより、支援装置1は、当該時系列情報を大規模言語モデルに入力することにより、当該時系列情報を用いた助言の生成を行える。また、これにより、支援装置1は、当該時系列情報を医療従事者・医学者等に提供し、疾病の分析・研究のための資料とすることができる。支援装置1は、当該時系列情報を提供するときに、気象情報等のニュースを付して提供することが好ましい。これにより、支援装置1は、ニュースが付されたより利用価値の高い資料を提供できる。
【0081】
検査値取得実行ステップは、取得された検査値及び/又はその時系列情報等を患者の地理的所在と関連付けて記憶部12に格納することが好ましい。これにより、支援装置1は、例えば、地域ごとの感染症の感染状況の生成等によって例示される、公衆衛生情報解析を行い、解析結果を提供できる。これにより、支援装置1は、感染症対策等を支援できる。
【0082】
検査値取得実行ステップは、取得された検査値及び/又はその時系列情報等を記憶部12の構成要素であるクラウドストレージ又はクラウドデータベースに格納することが好ましい。これにより、支援装置1は、支援装置1内部に構成された記憶装置だけでは格納・提供が困難な大量の検査値及び/又はその時系列情報を格納し、医療に有益な情報として提供できる。
【0083】
[ステップS5:検査値をテキストに変換]
制御部11は、変換部113により、ステップS4で取得された検査値をテキストの態様に変換する処理を実行する(ステップS5、変換ステップ)。制御部11は、変換された問診票のテキスト(第2テキスト)を記憶部12に格納し、処理をステップS6に移す。これにより、支援装置1は、検査値の分析を行う特別の人工知能を用いることなく、検査値をテキストとして大規模言語モデルに入力し、患者の治療に活用される助言を生成させることができる。
【0084】
[ステップS6:検査画像を取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、画像認識部114を実行する。そして、制御部11は、変換部113により、検査装置から検査画像を取得するか判別する処理を実行する(ステップS6、検査画像取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS7に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS9に移す。検査画像取得判別ステップは、検査装置から検査画像が送信されたときに取得すると判別する手順等を含む。
【0085】
[ステップS7:検査画像を取得]
制御部11は、画像認識部114により、ステップS6で取得すると判別された検査画像を検査装置から取得する処理を実行する(ステップS7、検査画像取得実行ステップ)。制御部11は、処理をステップS8に移す。
【0086】
検査画像取得実行ステップは、例えば、X線撮影装置、コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、磁気共鳴映像撮影装置(MRI装置)、ポジトロン断層撮影装置(PET装置)、単一光子放射断層撮影装置(SPECT装置)、超音波検査装置等の検査画像を生成可能な各種医療装置の1以上から検査画像を取得する手順等を含む。
【0087】
検査画像取得実行ステップがX線撮影装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、X線撮影装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、骨折、骨粗鬆症等の骨に係る疾患、歯に係る疾患、肺癌、肺炎、結核、胸水、気胸等の肺病変、消化管に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0088】
検査画像取得実行ステップがCT装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、CT装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、肺胞蛋白症、腺癌、細気管支肺胞上皮癌、肺水腫、肺出血、肺炎等の肺の疾患、大動脈瘤、大動脈解離等の血管の疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0089】
検査画像取得実行ステップがMRI装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、MRI装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、脳血管疾患(脳卒中、脳腫瘍等)、脳奇形、脳の外傷、脳の変形型疾患等の脳に係る疾患、頚・胸・腰部における脊椎・脊髄疾患(椎間板ヘルニア、頚椎症、脊柱管狭窄症、脊椎腫瘍等)等の脊椎・脊髄に係る疾患、四肢における骨肉腫、転移性骨腫瘍、腱板断裂(肩)、大腿骨頭壊死、前十字靭帯断裂、骨挫傷(膝)等の四肢に係る疾患、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん等の内臓に係る疾患、前立腺がん等の前立腺に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0090】
検査画像取得実行ステップがPET装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、PET装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、脳機能に係る疾患、がん等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0091】
検査画像取得実行ステップがSPECT装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、SPECT装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、脳血管障害、心臓病、がん等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0092】
検査画像取得実行ステップが超音波検査装置から検査画像を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、超音波検査装置によって得られた検査画像を画像認識して得られたテキストから、心弁膜症、心肥大、心臓内血栓、心膜炎、心筋梗塞等の心臓疾患、脂肪肝、肝嚢胞、肝血管腫、肝炎、肝硬変、肝がん、転移性肝がん等の肝臓疾患、胆石、総胆管結石、胆のうポリープ、胆のう炎、胆のうがん、胆管がん等の胆のう・胆管に係る疾患、腎結石、尿管結石、腎嚢胞、水腎症、腎臓がん、尿管がん等の腎臓・尿管に係る疾患、脾腫、脾のう胞、転移性脾腫瘍等の脾臓疾患、膵炎、膵のう胞、膵がん等の膵臓疾患、胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞、腸炎、虫垂炎、胃がん、大腸がん等の消化管疾患、膀胱炎、膀胱結石、膀胱がん等の膀胱疾患、子宮筋腫、子宮がん、卵巣のう腫、卵巣がん等の子宮・卵巣に係る疾患、前立腺肥大、前立腺がん等の前立腺疾患、大動脈血栓症、腹部大動脈瘤、大動脈解離等の腹部大動脈に係る疾患、動脈硬化症、静脈瘤、静脈血栓症等の血管に係る疾患等の疾病がある可能性を示す助言及び当該疾病の改善につながる生活習慣を示す助言等を生成できる。
【0093】
[ステップS8:検査画像を画像認識]
制御部11は、画像認識部114により、ステップS7で取得された検査画像を画像認識し、画像認識の結果を示すテキスト(第3テキスト)を生成する処理を実行する(ステップS8、画像認識ステップ)。制御部11は、第3テキストを記憶部12に格納し、処理をステップS9に移す。これにより、支援装置1は、画像認識を行う人工知能という最低限の種類の人工知能を大規模言語モデルに加えた構成で、患者の治療に活用される助言を生成させることができる。
【0094】
[ステップS9:音声を取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、音声認識部115を実行する。そして、制御部11は、変換部113により、端末T等から患者の音声(患者音声)を取得するか判別する処理を実行する(ステップS9、音声取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS10に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS11に移す。音声取得判別ステップは、患者が利用する端末Tから音声が提供されたと判別されたときに取得すると判別する手順等を含む。
【0095】
[ステップS10:音声を音声認識したテキストを取得]
制御部11は、音声認識部115により、ステップS9で取得すると判別された音声を端末T等から取得し、当該音声を音声認識したテキスト(第4テキスト)を取得する処理を実行する(ステップS10、音声取得実行ステップ)。制御部11は、第4テキストを記憶部12に格納し、処理をステップS11に移す。
【0096】
音声取得実行ステップは、医療従事者と映像通話を行う端末Tから音声を取得する手順、支援装置1と通信を行う端末Tから音声を取得する手順、医療現場に設けられたマイクロフォンにおいて集音された音声を取得する手順、医療従事者と音声通話を行う電話から音声を取得する手順等を含む。
【0097】
音声取得実行ステップが医療従事者と映像通話を行う端末Tから音声を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、例えば、医療従事者が遠方の患者をビデオ診察したときの会話に基づいて、当該患者の治療に活用される助言を生成し、医療従事者等に提供できる。これにより、支援装置1は、遠方の患者をビデオ診察する医療従事者を支援し、その負担を低減できる。
【0098】
音声取得実行ステップが支援装置1と通信を行う端末Tから音声を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、例えば、来院前の患者が発話した当該患者の主訴に基づいて、当該患者の治療に活用される助言を提供することができる。これにより、支援装置1は、来院前の患者を支援し、その負担を低減できる。
【0099】
音声取得実行ステップが医療現場に設けられたマイクロフォンにおいて集音された音声を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、例えば、医療従事者が患者に対して診察・検査・手術等の医療行為を行う現場の音声に基づいて、当該患者の治療に活用される助言を生成し、医療従事者等に提供できる。これにより、支援装置1は、医療行為を行う医療従事者を支援し、その負担を低減できる。
【0100】
音声取得実行ステップが医療従事者と音声通話を行う電話から音声を取得する手順を含むことにより、支援装置1は、例えば、来院前の患者と医療従事者とが電話で交わした会話に基づいて、当該患者の治療に活用される助言を生成し、医療従事者等に提供できる。これにより、支援装置1は、来院前の患者を支援し、その負担を低減できる。また、これにより、支援装置1は、来院前に予想された疾病等を示す助言を提供することで、医療行為を行う医療従事者を支援し、その負担を低減できる。
【0101】
[ステップS11:救急隊員からの報告を取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、取得部112を実行する。そして、制御部11は、取得部112により、端末T等を介して救急隊員からの報告を取得するか判別する処理を実行する(ステップS11、救急テキスト取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS12に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS13に移す。救急テキスト取得判別ステップは、救急隊員が利用する端末Tから報告が提供されたと判別されたときに取得すると判別する手順等を含む。
【0102】
[ステップS12:救急テキストを取得]
制御部11は、音声認識部115により、ステップS12で取得すると判別された報告に係るテキスト(救急テキスト、第5テキスト)を救急隊員が用いる端末T等から取得する処理を実行する(ステップS12、救急テキスト取得実行ステップ)。制御部11は、第5テキストを記憶部12に格納し、処理をステップS11に移す。これにより、支援装置1は、救急隊員により報告されたテキストである第5テキストを取得できる。
【0103】
救急テキスト取得実行ステップは、救急隊員が用いるタブレット端末等の端末Tから第5テキストを取得する手順、救急医療の現場に設けられたマイクロフォンにおいて集音された音声に対する音声認識によって得られた第5テキストを取得する手順等を含む。
【0104】
救急テキスト取得実行ステップにより、支援装置1は、救急隊員からの報告に基づいて、患者の搬送先を示す助言を生成し、救急隊員を支援できる。これにより、支援装置1は、専門的な知識を要する搬送先の剪定を支援することを介して、救急隊員の負担を低減できる。
【0105】
[ステップS13:カルテを取得するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、取得部112を実行する。そして、制御部11は、取得部112により、臨床試験の被験者のカルテを取得するか判別する処理を実行する(ステップS13、カルテ取得判別ステップ)。取得すると判別したならば、制御部11は、処理をステップS14に移す。取得すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS15に移す。カルテ取得判別ステップは、臨床試験において定められた所与のステージにおけるカルテが揃ったと判別されたときに取得すると判別する手順等を含む。
【0106】
[ステップS14:カルテのテキストを取得]
制御部11は、取得部112により、ステップS13で取得すると判別されたカルテのテキスト(第6テキスト)を取得する処理を実行する(ステップS14、カルテ取得実行ステップ)。制御部11は、第6テキストを記憶部12に格納し、処理をステップS14に移す。これにより、支援装置1は、臨床試験の被検者のカルテに係る第6テキストを取得できる。
【0107】
カルテ取得実行ステップは、例えば、医療データベースからカルテのテキストを取得する手順、手書きのカルテに対する文字認識によって得られたテキストを取得する手順、医療従事者がカルテのテキストを入力した端末Tからカルテのテキストを取得する手順等を含む。
【0108】
[ステップS15:助言を生成するか判別]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、取得部112を実行する。そして、制御部11は、取得部112により、ステップS2の問診票のテキスト、ステップS5の第2テキスト、ステップS8の第3テキスト、ステップS10の第4テキスト、ステップS12の第5テキスト、ステップS14の第6テキスト等の患者の状態を示すテキスト(第1テキスト)を取得し、当該テキストに係る患者の治療に活用される助言を生成するか判別する処理を実行する(ステップS15、生成判別ステップ)。生成すると判別したならば、制御部11は、取得部112により、ステップS2の問診票のテキスト、ステップS5の第2テキスト、ステップS8の第3テキスト、ステップS10の第4テキスト、ステップS12の第5テキスト、ステップS14の第6テキスト等の患者の状態を示すテキスト(第1テキスト)を記憶部12から取得し、処理をステップS16に移す。生成すると判別しなかったならば、制御部11は、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS17の処理を繰り返す。
【0109】
[ステップS16:助言を生成]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、生成部116を実行する。そして、制御部11は、生成部116により、ステップS15で取得されたテキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに当該テキストに係る患者の治療に活用される助言を生成させる処理を実行する(ステップS16、生成ステップ)。制御部11は、生成された助言を記憶部12に格納し、処理をステップS17に移す。
【0110】
ステップS15で取得されたテキストがステップS2の問診票のテキストを含む場合、生成ステップは、問診票に基づいて患者の治療に活用される助言を生成するよう指示するプロンプトが付された問診票のテキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに当該問診票のテキストに係る患者の治療に活用される助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0111】
ステップS15で取得されたテキストがステップS5の第2テキストを含む場合、生成ステップは、検査値に基づいて患者の疾病を示す助言を生成するよう指示するプロンプトが付された第2テキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに当該検査値から想定される疾病を示す助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0112】
ステップS15で取得されたテキストがステップS8の第3テキストを含む場合、生成ステップは、検査画像の画像認識結果に基づいて患者の疾病を示す助言を生成するよう指示するプロンプトが付された第3テキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに当該検査画像から想定される疾病を示す助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0113】
ステップS15で取得されたテキストがステップS10の第4テキストを含む場合、生成ステップは、患者及び/又は医療従事者の発言に基づいて患者の疾病を示す助言を生成するよう指示するプロンプトが付された第4テキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに当該第4テキストから想定される疾病を示す助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0114】
ステップS15で取得されたテキストがステップS12の第5テキストを含む場合、生成ステップは、救急隊員からの報告に基づいて患者の搬送先を示す助言を生成するよう指示するプロンプトが付された第5テキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに第5テキストに係る報告から想定される患者の疾病(搬送に係る疾病)に適した搬送先を示す助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0115】
ステップS15で取得されたテキストがステップS14の第6テキストを含む場合、生成ステップは、臨床試験の被検者のカルテに基づいて臨床試験に求められる被験者数を示す助言を生成するよう指示するプロンプトが付された第6テキストを大規模言語モデルに入力し、この大規模言語モデルに第6テキストに基づいて判断される臨床試験に求められる被験者数を示す助言を生成させる手順を含むことが好ましい。
【0116】
ステップS15で取得されたテキストは、複数種類のテキストを含むことが好ましい。これにより、生成ステップは、それら複数種類のテキストを大規模言語モデルに入力し、複数種類のテキスト間における共起事象を踏まえた助言を生成できる。共起事象を踏まえた助言の生成は、例えば、問診票における「熱っぽい」との主訴と、ウェアラブルデバイスから取得された感染症の疑いを示す検査値から、主訴から想定される疾病のうち、検査値とも矛盾しない発熱を引き起こす感染症の可能性を示す助言を生成すること等を指す。共起事象を引き起こすテキストの種類の組合せは、問診票のテキストと検査値のテキストとの組合せに限定されず、例えば、問診票と検査画像の双方に矛盾しない疾病を絞り込める問診票のテキストと検査画像のテキストとの組合せ、検査値と検査画像の双方に矛盾しない疾病を絞り込める検査値のテキストと検査画像のテキストとの組合せ、問診票と救急隊員からの報告の双方に矛盾しない疾病を絞り込める問診票のテキストと報告のテキストとの組合せ、等があり得る。
【0117】
大規模言語モデルは、与えられたテキストに対し後続する単語を確率的に予測し、確率が最大となる単語を出力することを繰り返し、それらの単語を繋いでいくことでテキストを生成する。したがって、複数種類のテキストを大規模言語モデルに入力することで、大規模言語モデルは、複数種類のテキストそれぞれを踏まえて確率が最大となる単語を決定できる。これにより、大規模言語モデルは、複数種類のテキスト間における共起事象を踏まえた助言を生成できる。よって、支援装置1は、共起事象を踏まえたより有益な助言を生成し、医療従事者及び/又は患者に提供できる。
【0118】
上述のように、本実施形態の支援装置1は、患者の状態を示す各種情報をテキストとして取得し、取得されたテキストを大規模言語モデルに入力し、当該大規模言語モデルに患者の治療に活用される適切な助言を生成させることができる。よって、支援装置1は、患者の状態を示す幅広い情報のテキストを上述の大規模言語モデルという最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成できる。
【0119】
[ステップS17:助言を提供]
制御部11は、記憶部12及び通信部13と協働して、発話部117を実行する。そして、制御部11は、取得部112により、ステップS16で生成された助言を端末T等に提供する処理を実行する(ステップS17、発話ステップ)。制御部11は、処理をステップS1に移し、ステップS1からステップS17の処理を繰り返す。発話ステップは、助言をテキストの態様で端末T等に提供してもよく、音声合成ニューラルネットワーク等を用いて助言から音声合成された音声を端末T等に提供してもよい。テキストの態様で助言を提供することにより、支援装置1は、ネットワークNの帯域幅の消費を抑えつつ、助言を提供できる。音声の態様で助言を提供することにより、支援装置1は、端末T等のテキストを表示する装置の利用が困難な病状の患者に助言を提供できる。
【0120】
<使用例>
以下は、本実施形態の支援装置1の使用例である。
【0121】
〔問診票に対する助言〕
医療従事者は、患者に対する問診を行い、端末Tを介して問診のテキストを支援装置1に提供する。支援装置1は、問診のテキスト(問診票のテキスト)を受信する。支援装置1は、問診票のテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該問診票が示す状態の患者の治療に活用される助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を医療従事者等に提供し、診察、必要な検査の検討等の助けとする。
【0122】
〔検査値に対する助言〕
患者は、スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスを装着し、当該ウェアラブルデバイスによって測定された当該患者の生体データを示す検査値を支援装置1に提供する。支援装置1は、検査値を受信する。支援装置1は、検査値のテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該検査値が示す状態の患者の疾病を示す助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を医療従事者等に提供し、診察、必要な検査の検討等の助けとする。
【0123】
〔検査画像に対する助言〕
医療従事者は、患者に対する検査を行い、端末Tを介して当該検査によって得られた検査画像を支援装置1に提供する。支援装置1は、検査画像を受信する。支援装置1は、検査画像に対する画像認識によって得られたテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該検査画像が示す状態の患者の疾病を示す助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を医療従事者等に提供し、診察、必要な検査の検討等の助けとする。
【0124】
〔ビデオ診察に対する助言〕
医療従事者は、遠方に住む患者とビデオ通話を行い、端末Tを介して当該ビデオ通話の音声及び/又は映像等の音声データを支援装置1に提供する。支援装置1は、音声データを受信する。支援装置1は、音声データに対する音声認識によって得られたテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該音声データが示す状態の患者の疾病を示す助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を医療従事者等に提供し、診察、必要な検査の検討等の助けとする。
【0125】
〔救急医療に対する助言〕
救急隊員は、端末Tを介して患者に関する報告を支援装置1に提供する。支援装置1は、報告を受信する。支援装置1は、報告のテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該報告に係る患者の疾病に応じた適切な搬送先、疾病に応じた応急処置等を示す助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を救急隊員等に提供し、搬送先の検討、応急処置の実施等の助けとする。また、支援装置1は、患者の問診票、カルテ等の患者の病歴に係る情報を報告のテキストに加えてプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、患者の病歴に係る情報及び当該報告に係る患者の疾病に応じた適切な搬送先、疾病に応じた応急処置等を示す助言を大規模言語モデルに生成させることもできる。
【0126】
〔臨床試験に対する助言〕
臨床試験に係る医療従事者は、端末Tを介して被検者に関するカルテを支援装置1に提供する。支援装置1は、カルテを受信する。支援装置1は、カルテのテキストをプロンプトとともに大規模言語モデルに入力し、当該カルテに基づいて検討された被験者数を示す助言を大規模言語モデルに生成させる。支援装置1は、生成された助言を臨床試験に係る医療従事者等に提供し、被験者数の検討等の助けとする。
【0127】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
S システム
1 支援装置
11 制御部
111 機械学習部
112 取得部
113 変換部
114 画像認識部
115 音声認識部
116 生成部
117 発話部
12 記憶部
13 通信部
N ネットワーク
T 端末
【要約】
【課題】患者の状態を示す幅広い情報を最低限の種類の人工知能によって処理し、患者の治療に活用される情報を生成すること。
【解決手段】本発明の医療の支援装置1は、500GB以上のテキストによる事前学習が行われた大規模言語モデルに対し、患者の状態を示すテキスト及び患者の治療に活用される助言の組合せを学習データとした、当該助言の生成に係る機械学習を行う機械学習部111と、患者の状態を示すテキストを取得する取得部112と、上述の大規模言語モデルにテキストを入力し、当該大規模言語モデルに患者の治療に活用される助言を生成させる生成部116と、を備える。
【選択図】
図1