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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】旅客搭乗橋
(51)【国際特許分類】
   B64F 1/305 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
B64F1/305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023505180
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2022002180
(87)【国際公開番号】W WO2022190667
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2021037872
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021110573
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明上 武史
(72)【発明者】
【氏名】土橋 秀章
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-058499(JP,U)
【文献】特開昭63-043900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターミナルビルに接続されたロタンダと、
基端が前記ロタンダに接続されて先端が昇降するように上下方向に揺動可能に構成されるとともに長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、
前記トンネル部の先端に設けられ、先端部が航空機に装着されるキャブと、
前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行する走行装置と、
前記キャブの先端部の高さの基準値を記憶部に記憶する基準値記憶手段と、
前記キャブの先端部の高さを検出する高さ検出手段と、
前記昇降装置の昇降操作が行われる昇降操作手段と、
前記昇降装置の昇降動作を制御する制御装置と、
前記走行装置の走行操作が行われる走行操作手段と、を備え、
前記基準値記憶手段は、
前記走行操作手段による走行操作が行われたときに、その走行操作による前記走行装置の走行動作の開始時点において前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さを前記基準値として前記記憶部に記憶するよう構成され
前記制御装置は、
前記走行装置の走行中において、前記昇降操作手段による昇降操作が行われていないときに、前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さが、前記記憶部に記憶されている前記基準値に追従するよう前記昇降装置を昇降動作させる追従制御を行うよう構成された、
客搭乗橋。
【請求項2】
前記基準値記憶手段は、
前記走行装置の走行中において、前記昇降操作手段による昇降操作が行われたときに、前記記憶部に記憶されている前記基準値を、前記昇降操作による前記昇降装置の昇降動作が終了した時点において前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さに更新するよう構成された、
請求項1に記載の旅客搭乗橋。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記高さ検出手段から検出される前記キャブの先端部の高さと前記基準値との差が所定範囲を超えた場合に前記追従制御を行うよう構成された、
請求項1または2に記載の旅客搭乗橋。
【請求項4】
前記キャブと前記航空機との距離を計測する計測手段をさらに備え、
前記制御装置は、
前記走行装置の走行中において、前記計測手段で計測される前記キャブと前記航空機との距離が所定距離以内となるまでは、前記昇降操作手段による昇降操作を禁止するよう構成された、
請求項1~のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項5】
前記昇降装置の昇降量を検出する昇降量検出手段と、
前記トンネル部の長さを検出するトンネル長さ検出手段と、
前記トンネル部に対する前記キャブの先端部の回転角度を検出するキャブ回転角度検出手段と、
をさらに備え、
前記高さ検出手段は、
前記昇降量検出手段により検出される前記昇降装置の昇降量と、前記トンネル長さ検出手段により検出される前記トンネル部の長さと、前記キャブ回転角度検出手段により検出される前記キャブの先端部の回転角度とに基づいて、前記キャブの先端部の高さを算出するよう構成された、
請求項1~のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【請求項6】
前記制御装置が前記追従制御を行っていることを知らせる報知手段をさらに備えた、
請求項1~のいずれかに記載の旅客搭乗橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅客搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
空港のターミナルビルと航空機との間の乗客の歩行通路になる設備として、旅客搭乗橋が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続されて水平回転自在に支持されたロタンダと、基端がロタンダに接続されて複数のトンネルが入れ子式に嵌合されて伸縮自在に構成されたトンネル部と、トンネル部の先端に回転自在に設けられ航空機の乗降部(ドア)に装着されるキャブと、トンネル部の先端寄りに支持脚として設けられたドライブコラムとを備えている。ドライブコラムには、伸縮自在に構成された一対の支柱部によってトンネル部を支持して上下移動させる昇降装置と、昇降装置の下部に設けられ一対の走行車輪を有する走行装置とを備えている。
【0004】
また、キャブ内には操作盤が設けられており、この操作盤には、オペレータが昇降装置及び走行装置等を駆動操作する操作装置と、任意の情報を表示する表示装置とが備えられている。
【0005】
オペレータが操作装置を操作して昇降装置を昇降させることによって、トンネル部はロタンダを基点として上下方向に揺動運動することができる。また、オペレータが操作装置を操作して走行装置を走行させることによって、トンネル部は前後方向(長手方向)の伸縮運動および/またはロタンダを基点とした水平方向の揺動運動をすることができる。このようなオペレータの操作によって、トンネル部を移動させて、トンネル部の前方端に配されたキャブを航空機の乗降部に装着することができる。
【0006】
また、特許文献1には、搭乗橋を装着時の姿勢から格納位置に戻す際に、次に入港してくる航空機の機種に合わせて、搭乗橋のトンネル高さの修正制御を行い、修正された格納姿勢で搭乗橋の格納を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5813892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7は、従来の旅客搭乗橋において、昇降装置を昇降させずに走行装置を走行させてキャブを待機位置から航空機の方へ移動させた場合のキャブの先端部の地面からの高さの変化の一例を示す概念図である。図7において、「5A,5B,5C」は、キャブが待機位置にあるときから走行装置10が矢印a、bに示す方向へ走行した場合のトンネル部のロタンダに接続された基端部5Sからキャブの先端部6A(キャブの床の先端または同先端のバンパー)までを結んだ直線を示しており、3つの「LA」は、昇降装置8の長さが一定であること、すなわち、昇降装置8を昇降させていないことを示している。
【0009】
旅客搭乗橋は、トンネル部が水平状態ではなく傾斜した状態で、キャブが航空機に装着される場合が多い。図7に示すように、トンネル部の基端部5Sよりもキャブの先端部6Aが低くなるようにトンネル部が傾斜した状態で、キャブを待機位置から航空機の方へ移動させると、トンネル部が伸長するにつれて、キャブの先端部6Aの地面からの高さがHC1→HC2→HC3と高くなるように変化する。一方、図7の例とは逆に、トンネル部の基端部5Sよりもキャブの先端部6Aが高くなるようにトンネル部が傾斜した状態の場合には、トンネル部が伸長するにつれて、キャブの先端部6Aの高さが低くなるように変化する。
【0010】
よって、オペレータは、走行装置の走行中に、キャブの先端部6Aの高さを航空機の所定の装着位置(航空機の乗降部の下方の所定位置)に合わせるように昇降装置8の昇降操作を行うが、トンネル部が伸長するにつれて、キャブの先端部6Aの高さが変動するので、高さ合わせが難しく、昇降装置8の上昇操作と下降操作とを無駄に繰り返すことがある。また、オペレータから見て近くのキャブの先端部6Aよりも、遠方の航空機の乗降部の下方の装着位置の方が高い位置に見えるという錯覚があり、その錯覚によっても昇降装置8の上昇操作と下降操作とを無駄に繰り返すことがある。
【0011】
また、例えば待機位置において航空機の機種情報が入力されると、昇降装置8の昇降量を、航空機の機種に応じた所定の昇降量に自動で設定する機能を有する旅客搭乗橋の場合には、昇降装置8を昇降操作しないで、キャブを旅客搭乗橋に近付けるとキャブの先端部6Aの高さは航空機の所定の装着位置にほぼ近付く。しかしながら、前述のように、トンネル部が伸長するにつれて、キャブの先端部6Aの高さが変動するので、オペレータの錯誤により、昇降装置8の上昇操作と下降操作とを無駄に繰り返すことがある。特許文献1の場合も同様のことが言える。
【0012】
また、操作盤に設けられた表示装置には、キャブの先端部6Aの高さ数値が常時表示されるようになっている場合があり、このような場合、オペレータは表示された高さ数値が自分の想定を超えて変動していると、実際にはオペレータ自身が錯覚しているにも関わらず、自分の感覚(想定)が正しいと誤認識し、昇降装置8の上昇操作と下降操作とを無駄に繰り返すことがある。
【0013】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、キャブを航空機へ装着する際に、オペレータの余計な昇降操作を低減し、装着時間の短縮を図ることが可能になる旅客搭乗橋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る旅客搭乗橋は、ターミナルビルに接続されたロタンダと、基端が前記ロタンダに接続されて先端が昇降するように上下方向に揺動可能に構成されるとともに長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部と、前記トンネル部の先端に設けられ、先端部が航空機に装着されるキャブと、前記トンネル部または前記キャブに取り付けられ、前記トンネル部または前記キャブを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置の下方に取り付けられて地面を走行する走行装置と、前記キャブの先端部の高さの基準値を記憶部に記憶する基準値記憶手段と、前記キャブの先端部の高さを検出する高さ検出手段と、前記昇降装置の昇降操作が行われる昇降操作手段と、前記昇降装置の昇降動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記走行装置の走行中において、前記昇降操作手段による昇降操作が行われていないときに、前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さが、前記記憶部に記憶されている前記基準値に追従するよう前記昇降装置を昇降動作させる追従制御を行うよう構成されている。
【0015】
この構成によれば、キャブを航空機へ装着する際に、昇降操作が行われていないときには走行中のキャブの先端部の高さはほぼ一定に保たれるため、不慣れなオペレータの錯覚を防ぎ、錯覚に起因するオペレータの余計な昇降操作を低減し、装着時間の短縮を図ることが可能になる。
【0016】
前記走行装置の走行操作が行われる走行操作手段を備え、前記基準値記憶手段は、前記走行操作手段による走行操作が行われたときに、その走行操作による前記走行装置の走行動作の開始時点において前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さを前記基準値として前記記憶部に記憶するよう構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、走行装置の走行動作の開始時点におけるキャブの先端部の高さが基準値に設定されるため、不慣れなオペレータでも走行操作を行うだけで走行開始時のキャブの先端部の高さをほぼ維持したまま走行させることができ、錯覚に起因するオペレータの余計な昇降操作を低減することができる。
【0018】
前記基準値記憶手段は、前記走行装置の走行中において、前記昇降操作手段による昇降操作が行われたときに、その昇降操作による前記昇降装置の昇降動作が終了した時点において前記高さ検出手段により検出される前記キャブの先端部の高さを前記基準値として前記記憶部に記憶するよう構成されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、走行装置の走行中に昇降操作が行われると基準値が更新されるため、例えばベテランオペレータが走行操作と昇降操作を同時に行いたい場合でも効率よく操作できる。
【0020】
前記制御装置は、前記高さ検出手段から検出される前記キャブの先端部の高さと前記基準値との差が所定範囲を超えた場合に前記追従制御を行うよう構成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、昇降装置の頻繁な昇降動作を抑え、追従制御を滑らかに行うことができる。
【0022】
前記キャブと前記航空機との距離を計測する計測手段をさらに備え、前記制御装置は、前記走行装置の走行中において、前記計測手段で計測される前記キャブと前記航空機との距離が所定距離以内となるまでは、前記昇降操作手段による昇降操作を禁止するよう構成されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、例えば待機位置にて、キャブの先端部の高さが装着対象の航空機の機種に応じた平均的な装着高さとなるよう昇降装置を操作しておいて、航空機に向けて走行させる場合、キャブが航空機にある程度(所定距離以内に)接近するまでオペレータの不要な昇降操作を禁止できるため、キャブの装着を効率よく行うことができる。
【0024】
前記昇降装置の昇降量を検出する昇降量検出手段と、前記トンネル部の長さを検出するトンネル長さ検出手段と、前記トンネル部に対する前記キャブの先端部の回転角度を検出するキャブ回転角度検出手段と、をさらに備え、前記高さ検出手段は、前記昇降量検出手段により検出される前記昇降装置の昇降量と、前記トンネル長さ検出手段により検出される前記トンネル部の長さと、前記キャブ回転角度検出手段により検出される前記キャブの先端部の回転角度とに基づいて、前記キャブの先端部の高さを算出するよう構成されていてもよい。
【0025】
前記制御装置が前記追従制御を行っていることを知らせる報知手段をさらに備えていてもよい。この構成によれば、制御装置が追従制御を行っていることをオペレータに知らせることにより、オペレータが不要な昇降操作を行うのを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上に説明した構成を有し、キャブを航空機へ装着する際に、オペレータの余計な昇降操作を低減し、装着時間の短縮を図ることが可能になる旅客搭乗橋を提供することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。
図2図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。
図3図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。
図4図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。
図5図5は、操作盤等の一例を示す図である。
図6図6(A)、(B)は、高さ追従モードを実施する際の高さ追従モードに関する動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、従来の旅客搭乗橋において、昇降装置を昇降させずに走行装置を走行させてキャブを待機位置から航空機の方へ移動させた場合のキャブの先端部の地面からの高さの変化の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0030】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る旅客搭乗橋の一例を示す概略平面図である。また、図2は、旅客搭乗橋を側方から視た概略図である。図3は、キャブを航空機に装着した状態の一例を示す側面図である。図4は、航空機に装着されるキャブ先端部分を正面(航空機側)から視た図である。図5は、操作盤等の一例を示す図である。
【0031】
この旅客搭乗橋1は、空港のターミナルビル2の乗降口に接続された水平回転自在なロタンダ(基部円形室)4と、基端がロタンダ4に俯仰自在に接続されて長手方向に伸縮自在に構成されたトンネル部5と、トンネル部5の先端に正逆回転自在に設けられたキャブ(先端部円形室)6と、ドライブコラム7とを備えている。
【0032】
ロタンダ4は、支柱70によって回転軸(鉛直軸線)CL1の回りに正逆回転自在に支持されている。
【0033】
トンネル部5は、乗客の歩行通路を形成し、筒状体からなる複数のトンネル5a,5bが入れ子式に嵌合されて長手方向に伸縮自在に構成されている。なお、ここでは、2つのトンネル5a,5bによって構成されたトンネル部5が例示されているが、トンネル部5は2つ以上の複数のトンネルによって構成されていればよい。また、トンネル部5の基端部は、ロタンダ4に、水平回転軸CL4(図2)の回りに揺動自在(上下に揺動自在)に接続されることにより、ロタンダ4に俯仰自在に接続されている。
【0034】
また、トンネル部5の先端寄り部分(最も先端側のトンネル5b)には、支持脚としてドライブコラム7が取り付けられている。なお、ドライブコラム7は、キャブ6に取り付けられていてもよい。
【0035】
ドライブコラム7には、キャブ6及びトンネル部5を上下移動(昇降)させる昇降装置8が設けられている。昇降装置8は、例えば、2つの柱が入れ子式に嵌合されて伸縮可能に構成された一対の支柱部を有し、この一対の支柱部によってトンネル部を支持している。この一対の支柱部の伸縮によって昇降装置8はトンネル部5を昇降(上下移動)させることができる。これにより、キャブ6及びトンネル部5は、ロタンダ4を基点として上下方向に揺動運動することができる。
【0036】
また、ドライブコラム7には、昇降装置8の下方に、個々に独立して正逆回転駆動可能である2つの走行車輪9(右側走行車輪9R及び左側走行車輪9L)を有する走行装置10が設けられている。走行装置10は、2つの走行車輪9の正回転駆動によって前進走行(矢印F方向への走行)が可能であり、2つの走行車輪9の逆回転駆動によって後進走行(矢印B方向への走行)が可能に構成されている。また、走行装置10は、舵角がトンネル部5の伸縮方向(長手方向)に対して、-90度~+90度の範囲内で変更可能なように、回転軸CL2の回りに正逆回転が自在に構成され、走行方向を変更可能である。例えば、2つの走行車輪9を互いに逆方向に回転させることにより、その場において走行方向(走行車輪9の向き)を変更することもできる。走行装置10(走行車輪9)がエプロン上を走行することにより、トンネル部5をロタンダ4のまわりに回転させるとともにトンネル部5を伸縮させることができる。
【0037】
キャブ6は、トンネル部5の先端に設けられており、図示しない回転装置によってキャブ6の床面に垂直な回転軸CL3の回りに正逆回転可能に構成されている。
【0038】
また、図3図4に示すように、航空機3に装着されるキャブ6の床61の先端にはバンパー62が設けられ、このバンパー62の左右方向に並んで、キャブ6と航空機3との間の距離を計測する計測手段としての距離センサ23(例えばレーザー距離計)が複数(この例では2つ)取り付けられている。なお、距離センサ23の設置位置は、適宜変更可能であり、例えば、キャブ6の床61の上に配置されていてもよい。
【0039】
また、キャブ6の先端部には、クロージャ63が設けられている。クロージャ63は、前後方向に展開及び収縮可能な蛇腹部を備え、キャブ6を航空機3に装着して、蛇腹部を前方へ展開することにより、蛇腹部の前端部を航空機3の乗降部(ドア3a)の周囲に当接できる。
【0040】
また、キャブ6の側壁には、レベル検知装置64が配置されている。レベル検知装置64は、キャブ6を航空機3に装着した後、乗客の乗降や荷物の積み下ろし等によって航空機3が上下動した場合に、キャブ6に対する航空機3の相対的な上下の移動量を検出する機器である。
【0041】
レベル検知装置64は、例えば、ホイル64Aと、ホイル64Aが前進する際の接触リミットスイッチ(図示せず)等で構成されている。この接触リミットスイッチは、航空機3の機体表面へのホイル64Aの圧力が最適となるように予め調整されていて、ホイル64Aが前進移動する場合に、接触リミットスイッチがオンすることで、この前進移動を所望の移動量で停止できる。これにより、レベル検知装置64は、航空機3の機体表面にホイル64Aを最適な圧力で押すことが可能となり、航空機3が上下動する場合、レベル検知装置64のホイル64Aが回転する。そして、このホイル64Aの回転方向及び回転角度に基づいて、キャブ6に対する航空機3の相対的な上下の移動量(以下、「航空機3の上下の移動量」ともいう)を検出する検出手段を備えている。そして、レベル検知装置64は、検出手段により検出される航空機3の上下の移動量が所定量以上になると、上記検出される航空機3の上下の移動量を制御装置50へ出力する。制御装置50は、キャブ6が航空機3の上下動に追従移動するようにドライブコラム7の昇降装置8を制御する。
【0042】
さらに、図5に示すように、旅客搭乗橋1には、ロタンダ4の回転角度φr(図1)を検出するロタンダ用角度センサ24と、トンネル部5に対するキャブ6の回転角度φc(図1)を検出するキャブ用角度センサ25と、トンネル部5に対する走行装置10の回転角度(走行方向を示す角度)φw(図1)を検出する走行用角度センサ26と、昇降装置8の昇降量を検出する昇降センサ27と、距離計等で構成されトンネル部5の長さを検出するトンネル長さセンサ28とが、適宜な位置に設けられている。
【0043】
そして、キャブ6の内部には、図5に示すような操作盤31が設けられている。操作盤31には、昇降装置8によるトンネル部5及びキャブ6の昇降や、キャブ6の回転等を操作するための各種操作スイッチ33の他、走行装置10を操作するための操作レバー32及び表示装置34が設けられている。操作レバー32は、多方向の自由度をもったレバー状入力装置(ジョイスティック)によって構成されている。操作レバー32及び各種操作スイッチ33によって操作装置30が構成されている。操作レバー32が走行操作手段であり、いずれかの操作スイッチ33が昇降操作手段である。なお、操作装置30の構成は、適宜変更可能である。
【0044】
また、制御装置50は、操作盤31と相互に電気回路で接続され、操作装置30の操作に基づく動作指令等の情報が入力されるとともに、各センサ23~28の出力信号等が入力されて、旅客搭乗橋1の動作を制御するとともに、表示装置34に表示される情報等を出力する。
【0045】
なお、制御装置50には、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部とを有している。記憶部には、旅客搭乗橋1を動作させるための制御プログラム及び当該動作に必要な情報が予め記憶されており、演算処理部が制御プログラムを実行することにより、制御装置50は、旅客搭乗橋1の各部の動作(走行装置10、昇降装置8及びキャブ6の回転装置等の動作)の制御等を行うとともに、高さ検出手段51及び基準値記憶手段52等として機能する。なお、旅客搭乗橋1の動作中に記憶される情報も記憶部に記憶される。制御装置50は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、インターネットやLANを経由して互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。制御装置50は、例えば、キャブ6または最も先端側のトンネル5b等に設けられている。
【0046】
なお、制御装置50は、図1に示すようなXY直交座標を用いて、旅客搭乗橋1の各部の位置(座標)を把握している。図1における「Ed」はトンネル部5の中心線を示し、前述のロタンダ4の回転角度φrは、平面視において、X軸に対して反時計回りに計算されるトンネル部5の中心線Edがなす角度である。また、キャブ6の回転角度φcは、トンネル部5の中心線Edに対してキャブ6のなす角度であり、走行装置10の回転角度φwは、平面視において、トンネル部5の中心線Edに対して走行装置10のなす角度であると言える。ここでは、ロタンダ4の中心点(回転軸CL1の位置)を原点(0,0)にして、図1に示すようにX軸、Y軸を決めているが、X軸、Y軸は任意に決めることができる。
【0047】
制御装置50は、リアルタイムで、旅客搭乗橋1の各部の位置(座標)、及び、キャブ6の先端部6Aの高さHC(図2)を算出し、表示装置34に表示させることができる。キャブ6の先端部6Aの高さHCは、キャブ6の先端部6Aの所定ポイントの高さである。
【0048】
次に、旅客搭乗橋1の動作の一例について説明する。この旅客搭乗橋1の動作は、オペレータによる操作装置30の操作に基づく制御装置50の制御によって実現される。
【0049】
航空機3がエプロンに到着していないときには、旅客搭乗橋1は図1の二点鎖線で示される所定の待機位置で待機している。
【0050】
航空機3の正規の停止位置は、航空機3の機軸が機体誘導ラインAL上で、かつ、機体誘導ラインALの延伸方向において定められた所定の位置である。航空機3は、正規の停止位置を目標にして停止されるが、実際の停止位置が正確に正規の停止位置になるとは限らない。なお、機体誘導ラインALは、エプロンの地面上に描かれている。
【0051】
まず、全ての動作がオペレータの操作装置30の操作に基づいて行われる完全マニュアルモードの場合について説明する。旅客搭乗橋1を航空機3に装着する場合、図1に二点鎖線で示された待機位置で待機している旅客搭乗橋1のキャブ6に乗り込んだオペレータは、操作盤31の操作装置30を操作して、旅客搭乗橋1を図1に実線で示された位置まで移動させてキャブ6を航空機3に装着する。
【0052】
この際、オペレータは、まず、例えば航空機3の乗降部であるドア3aから任意の距離(例えば、1mほど)だけ前方の位置を目標位置とする。そして、キャブ6が目標位置に到達するように走行装置10を前進走行させるとともに、目標位置においてキャブ6の先端部分のバンパー62が航空機3のドア3aと対向するように昇降装置8およびキャブ6の回転装置を操作する。次に、オペレータは、キャブ6がドア3aに向かって直進するように走行装置10を前進走行させてキャブ6を航空機3に装着する。なお、キャブ6が航空機3に装着された状態には、キャブ6の先端部分のバンパー62が航空機3に接触した状態の場合もあるし、バンパー62と航空機3との間に歩行に支障がない程度の若干の隙間が設けられている状態の場合もある。
【0053】
キャブ6を航空機3に装着した後、オペレータは操作装置30を操作して、レベル検知装置64を作動させるとともにクロージャ63を展開させる。ここで、レベル検知装置64の作動とクロージャ63の展開とはどちらが先に行われてもよい。以上は、基本的な装着動作の一例であり、オペレータ等によっては必ずしも前述のようにしてキャブ6が装着されるとは限らない。
【0054】
次に、旅客搭乗橋1を航空機3から離脱させて待機位置へ戻す場合には、オペレータは、レベル検知装置64の作動を終了させるとともにクロージャ63を収縮させてから、キャブ6がドア3a部分から離脱して前述の目標位置付近となるまで、走行装置10をまっすぐに後進走行させる。その後、旅客搭乗橋1が待機位置となるように走行装置10を後進走行させて待機位置へ戻す。
【0055】
本実施形態の旅客搭乗橋1は、前述のように全ての動作がオペレータの操作装置30の操作に基づいて行われる完全マニュアルモードの他に、高さ追従モードを有している。この高さ追従モードでは、制御装置50は、キャブ6の先端部6Aの高さの基準値(基準の高さ)を記憶部に設けられた基準値記憶領域に記憶し、キャブ6の先端部6Aの高さHC(図2)が上記基準値に追従するように昇降装置8を昇降動作させる追従制御を行う。キャブ6の先端部6Aの高さHCは、キャブ6の床61の先端またはバンパー62の所定ポイントの地面EPからの高さ(距離)である。
【0056】
操作装置30には、例えば、高さ追従モードをオン(設定)・オフ(解除)するための高さ追従モードボタンが設けられている。ここでは、高さ追従モードボタンは、押されるたびに、オン操作とオフ操作とが切り替えられるものとする。図6(A)、(B)は、高さ追従モードを実施する際の高さ追従モードに関する動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
旅客搭乗橋1(キャブ6)が待機位置にあるときに、オペレータが、高さ追従モードボタンを押して高さ追従モードのオン操作を行うと、その操作信号は制御装置50に入力される(ステップS1でYes)。すると、制御装置50は、ステップS2で、高さ追従モードをオンにする。
【0058】
次に、オペレータが、操作装置30に走行装置10を走行させる走行操作を行うと、その操作信号は制御装置50に入力される(ステップS3でYes)。すると、制御装置50は、ステップS4で、走行装置10の走行動作の開始時点(すなわち、走行開始時点)のキャブ6の先端部6Aの高さHCを求め(高さ検出手段51の機能)、その高さHCを基準値に設定して基準値記憶領域に記憶する(基準値記憶手段52の機能)。そして、その後の走行装置10の走行によってトンネル部5の長さが変動しても、キャブ6の先端部6Aの高さHCが基準値に追従するように昇降装置8を昇降動作させる追従制御を行う。
【0059】
また、走行装置10の走行中に、オペレータが、操作装置30に昇降装置8を昇降動作させる昇降操作を行うと、その操作信号は制御装置50に入力される(ステップS5でYes)。すると、制御装置50は、ステップS6で、昇降装置8の昇降動作が終了した時点(すなわち、昇降終了時点)のキャブ6の先端部6Aの高さHCを求め(高さ検出手段51の機能)、その高さHCを新しい基準値に設定して基準値記憶領域に記憶する(基準値記憶手段52の機能)ことで、基準値が更新される。そして、その後の走行装置10の走行によってトンネル部5の長さが変動しても、キャブ6の先端部6Aの高さHCが、更新された新しい基準値に追従するように昇降装置8を昇降動作させる追従制御を行う。このように、走行装置10の走行中に昇降操作が行われると基準値が更新されることにより、例えばベテランオペレータが走行操作と昇降操作を同時に行いたい場合でも効率よく操作できる。
【0060】
一方、高さ追従モードをオンにしているときに、オペレータが、高さ追従モードボタンを押して高さ追従モードのオフ操作を行うと、その操作信号は制御装置50に入力され(ステップS11でYes)、制御装置50は、ステップS12で、高さ追従モードをオフ(解除)する。オペレータは、例えば、キャブ6が航空機3に近づいたとき、あるいはキャブ6を航空機3に装着した後、高さ追従モードのオフ操作を行う。
【0061】
上記において、制御装置50は、高さ追従モードを実施している間(高さ追従モードがオンの間)、その旨を示すメッセージ、例えば「高さ自動追従中」や「高さ追従機能ON中」等のメッセージを表示装置34(報知手段)に表示させるようにしてもよい。これにより、オペレータが不要な昇降操作を行うのを未然に防ぐことができる。
【0062】
上記の例では、高さ追従モードボタンの操作によって高さ追従モードの設定および解除がなされるようにしたが、操作装置30に高さ追従モードボタンを別途備えることなく、旅客搭乗橋1を動作させるときの通常の操作に用いられない他の機能を有するボタン(例えばリセットボタン)をオペレータが押しながら走行操作することにより、当該ボタンが押されている間のみ高さ追従モードが実施されるようにしてもよい。
【0063】
また、上記の例では、高さ追従モードがオンのときに走行装置10の走行中において、制御装置50は、キャブ6の先端部6Aの高さを常時、基準値に追従させるように昇降装置8を昇降動作させるようにしたが、予め閾値t(例えばt=10mm)を設定しておいて、キャブ6の先端部6Aの高さが基準値±tの範囲の範囲外となった場合に(キャブ6の先端部6Aの高さと基準値との差が所定範囲を超えた場合に)、キャブ6の先端部6Aの高さを基準値に追従させるように昇降装置8を昇降動作させるようにしてもよい。これにより、昇降装置8の頻繁な昇降動作を抑え、追従制御を滑らかに行うことができる。
【0064】
ここで、制御装置50がキャブ6の先端部6Aの高さを算出する方法について、主に図2を参照して説明する。なお、図1では、トンネル部5が水平状態(図2の傾斜角度α=0の状態)で、キャブ6の先端部分が航空機3の方を向いた状態が示されている。一方、図2では、トンネル部5が傾斜角度αにて傾斜した状態で、キャブ6の先端部6Aがトンネル部5の伸長方向と同方向を向いた状態(キャブ回転角度φc=0の場合)が示されている。なお、図2において、キャブ6の中心位置P1から先端部6Aまでの距離LB(所定値)と、キャブ6の中心位置P1からトンネル部5の先端までの距離LC(所定値)と、トンネル部5の先端からドライブコラム7の取付位置までの距離LD(所定値)と、ロタンダ4の中心点からトンネル部5との接続部(水平回転軸CL4の位置)までの距離LR(所定値)と、上記接続部の高さHR(所定値)と、走行車輪9の半径(所定値)とは、予め制御装置50に記憶されている。
【0065】
旅客搭乗橋1は、トンネル部5の伸縮方向と昇降装置8の伸縮方向(昇降方向)とが直交するように、トンネル部5に昇降装置8が取り付けられている。図2に示すように、キャブ6の先端部6Aの高さHCは、次式で示される。
HC=HR-Hx
=HR-(LF+LC+LB)sinα
よって、角度αが求まれば、先端部6Aの高さHCを算出できる。
また、図2より、α=β-γである。よって、角度βと角度γが求まれば、角度αを算出できる。
【0066】
角度γは、次式で算出できる。
γ=tan-1(La/LE)
ここで、距離LEはトンネル長さセンサ28の検出値LFから距離LD(所定値)を減算して算出できる。また、昇降センサ27により検出される昇降量から距離LAを算出し、この距離LAに走行車輪9の直径(所定値)を加算した値を、距離Laとして算出する。この距離Laには、理論上の誤差が含まれる場合があるが、実務上、問題ない。このようにして算出される距離La,LEを用いて、角度γが求まる。
【0067】
また、sinβ=HR/Lxであるので、角度βは、次式で算出できる。
β=sin-1(HR/Lx)
ここで、(La/Lx)=sinγであるので、
Lx=La/sinγ
となり、Lxが求まる。よって、角度βが求まる。
よって、角度α(=β-γ)を算出でき、先端部6Aの高さHCを算出できる。
【0068】
上記では理解しやすくするため、キャブ用角度センサ25により検出されるキャブ回転角度φc(図1)が0の場合について説明したが、キャブ回転角度φc(例えば、-90°<φc<90°)を考慮すれば、
HC=HR-Hx=HR-(LF+LC+LBcosφc)sinα
として算出することができる。
【0069】
すなわち、制御装置50は、昇降センサ27により検出される昇降装置8の昇降量と、トンネル長さセンサ28により検出されるトンネル部5の長さLFと、キャブ用角度センサ25により検出されるキャブ回転角度φcとを変数とする所定の演算式を用いて、キャブ6の先端部6Aの高さHCを算出する。
【0070】
なお、図2において、直線100は歩行通路となる床面を示し、この例では、2つのトンネル5a、5b間の床面に段差がない場合を示しているが、2つのトンネル5a、5b間の床面に段差がある場合には、その段差に応じた分だけ値が小さくなるように、キャブ6の先端部6Aの高さHCを算出するようにすればよい。
【0071】
なお、キャブ6の先端部6Aの高さHCは、キャブ6の下部にレーザー距離計等のセンサを設けて直接計測し、その計測値を制御装置50が取得するようしてもよい。
【0072】
本実施形態では、キャブ6を航空機3へ装着する際に、高さ追従モードが設定されている場合、昇降操作が行われていないときには走行中のキャブ6の先端部6Aの高さはほぼ一定に保たれるため、不慣れなオペレータの錯覚を防ぎ、錯覚に起因するオペレータの余計な昇降操作を低減し、装着時間の短縮を図ることが可能になる。
【0073】
また、走行装置10の走行動作の開始時点におけるキャブ6の先端部6Aの高さが基準値に設定されるため、不慣れなオペレータでも走行操作を行うだけで走行開始時のキャブ6の先端部6Aの高さをほぼ維持したまま走行させることができ、錯覚に起因するオペレータの余計な昇降操作を低減することができる。
【0074】
なお、本実施形態において、高さ追従モードが設定されている場合に、制御装置50は、走行装置10の走行中において、距離センサ23により検出されるキャブ6と航空機3との間の距離が所定距離(例えば1m)以下になるまで、オペレータによる昇降装置8の昇降操作を禁止(または無効)するようにしてもよい。これにより、キャブ6が航空機3にある程度(所定距離以内に)接近するまでオペレータの不要な昇降操作を禁止できるため、キャブ6の装着を効率よく行うことができる。
【0075】
〔高さ追従モードの設定および解除要件の変形例〕
(1)制御装置50は高さ追従モードの設定を、次のようにして行うようにしてもよい。制御装置50は、予め航空機の複数の機種に応じたキャブ装着時のキャブ6の先端部6Aの高さを、記憶部に設けられた機種対応情報記憶領域に記憶している。そして、待機位置において、オペレータが操作装置30を操作して装着対象の航空機の機種情報を入力し、高さ追従プリセットボタンを押す。オペレータによる機種情報の入力は、例えば、表示装置34に複数の機種名を表示し、その中からオペレータが1つの機種を選択することにより、行われるようにしてもよい。そして、高さ追従プリセットボタンが押されると、制御装置50は、高さ追従モードを設定するとともに、機種対応情報記憶領域に記憶されている、入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時のキャブ6の先端部6Aの高さとなるように昇降装置8を昇降動作させる。この後、走行装置10の走行が開始されるまでに、オペレータが昇降装置8の昇降操作を行わなければ、走行装置10の走行が開始されたときに、制御装置50は、上記入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時のキャブ6の先端部6Aの高さを基準値に設定する。また、機種対応情報記憶領域に、航空機の複数の機種に応じたキャブ装着時のキャブ6の回転角度を記憶しておいて、上記高さ追従プリセットボタンが押されると、制御装置50は、機種対応情報記憶領域に記憶されている、入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時のキャブ6の回転角度となるようにキャブ6の回転装置(図示せず)を回転動作させるようにしてもよい。
【0076】
(2)制御装置50は高さ追従モードの設定を、次のようにして行うようにしてもよい。制御装置50は、予め航空機の複数の機種に応じたキャブ装着時のキャブ6の先端部6Aの高さを機種対応情報記憶領域に記憶している。そして、待機位置において、制御装置50は、VDGS(Visual Docking Guidance System)またはFIDS(Flight Information Display System)等の外部装置から装着対象の航空機の機種情報を入力(受信)する。これにより、制御装置50は、高さ追従モードを設定するとともに、機種対応情報記憶領域に記憶されている、入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時のキャブ6の先端部6Aの高さを基準値に設定する。そして、オペレータの操作装置30の操作により走行装置10の走行が開始されると、この走行開始と同時に、制御装置50は、キャブ6の先端部6Aの高さが基準値となるように昇降装置8を昇降動作させた後、追従制御を行う。
【0077】
(3)制御装置50は高さ追従モードの解除(終了)を、次の(a),(b),(c)のいずれかの場合に行うようにしてもよい。
【0078】
(a) 距離センサ23により検出されるキャブ6と航空機3との間の距離が所定距離(例えば1m)以下になると、高さ追従モードを解除する。
【0079】
(b) オペレータによりレベル検知装置64を作動させる操作が行われると、高さ追従モードを終了する。または、オペレータによりレベル検知装置64を作動させる操作が行われた後、レベル検知装置64の航空機との接触を検知する接触リミットスイッチがオンすると、高さ追従モードを解除する。
【0080】
(c) オペレータが制御装置50の電源をオフにすることにより、高さ追従モードが解除される。これにより、旅客搭乗橋1を航空機3から離脱させるまでに、オペレータが制御装置50の電源をオフにしておけば、次に、旅客搭乗橋1を航空機3から離脱させるために、制御装置50の電源がオンされたときには、高さ追従モードが解除されている。
【0081】
なお、本実施形態において、高さ追従モードを設定しない場合に、制御装置50が、「トンネルが〇〇m伸びれば、キャブ先端高さが△△m上昇(下降)する」、「走行開始時からキャブ先端高さが□□m上昇中(下降中)」などの数値データ(〇〇m,△△m,□□m)を含むメッセージを表示装置34に表示させることにより、オペレータの錯覚による不要な昇降操作を低減させるようにしてもよい。
【0082】
また、本実施形態において、高さ追従モードを設定しない場合に、昇降プリセット機能を設けてもよい。この場合、制御装置50は、予め航空機の複数の機種に応じたキャブ装着時の昇降装置8の昇降量を、機種対応情報記憶領域に記憶している。そして、待機位置において、オペレータが操作装置30を操作して装着対象の航空機の機種情報を入力し、操作装置30に設けられた昇降プリセットボタンを押す。オペレータによる機種情報の入力は、例えば、表示装置34に複数の機種名を表示し、その中からオペレータが1つの機種を選択することにより、行われるようにしてもよい。なお、オペレータによる機種情報の入力に代えて、制御装置50は、昇降プリセットボタンが押されると、VDGSまたはFIDS等の外部装置から装着対象の航空機の機種情報を入力(受信)するようにしてもよい。
【0083】
そして、昇降プリセットボタンが押されると、制御装置50は、機種対応情報記憶領域に記憶されている、入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時の所定の昇降量となるように昇降装置8を昇降動作させる。この後、制御装置50は、距離センサ23により検出されるキャブ6と航空機3との間の距離が所定距離(例えば1m)以下になるまで、オペレータによる昇降装置8の昇降操作を禁止(または無効)する。これにより、キャブ6が航空機3にある程度(所定距離以内に)接近するまでオペレータの不要な昇降操作を禁止できるため、キャブ6の装着を効率よく行うことができる。
【0084】
また、この場合においても、機種対応情報記憶領域に、航空機の複数の機種に応じたキャブ装着時のキャブ6の回転角度を記憶しておいて、上記昇降プリセットボタンが押されると、制御装置50は、機種対応情報記憶領域に記憶されている、入力された機種(機種情報)に応じたキャブ装着時のキャブ6の回転角度となるようにキャブ6の回転装置(図示せず)を回転動作させるようにしてもよい。
【0085】
なお、以上に述べた説明において、キャブ6と航空機3との間の距離(キャブ6と航空機3との距離)を計測する計測手段として、距離センサ23を例示したがこれに限らない。例えば、制御装置50の記憶部に、予め機種に応じた航空機3の正規の停止位置におけるドア3aの想定位置座標を記憶しておく。そして、制御装置50は、装着対象の航空機の機種情報(機種)に応じた航空機3のドア3aの想定位置座標と、制御装置50自身がリアルタイムで算出するキャブ6の位置座標とに基づいて、キャブ6と航空機3との間の距離を計測(算出)するようにしてもよい。つまり、制御装置50が上記計測手段として機能するよう構成してもよい。
【0086】
なお、本実施形態では、トンネル部5に対してキャブ6全体が回転するよう構成されているが、航空機3に装着されるキャブ6の先端部6A及びクロージャ63等を含むキャブ6の先端部分のみが回転軸CL3を中心として回転するよう構成されてあってもよい。いずれの構成の場合も、トンネル部5に対してキャブ6の先端部6Aが回転し、キャブ回転角度φcは、図1において、トンネル部5の中心線Edに対して回転軸CL3と先端部6Aの所定ポイントとを結ぶ直線がなす角度であり、トンネル部5に対するキャブ6の先端部6Aの回転角度であると言える。
【0087】
また、本実施形態では、ロタンダ4がトンネル部5とともに回転するように構成されているが、ロタンダ4が固定された状態で、トンネル部5が回転軸CL1を中心としてロタンダ4のまわりに回転するよう構成されてあってもよい。いずれの構成の場合も、トンネル部5が回転軸CL1を中心として回転し、回転角度φr(図1)は、ロタンダ4を通る所定の鉛直軸線(回転軸CL1)まわりのトンネル部5の回転角度であると言える。
【0088】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、キャブを航空機へ装着する際に、オペレータの余計な昇降操作を低減し、装着時間の短縮を図ることが可能になる旅客搭乗橋等として有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 旅客搭乗橋
3 航空機
3a ドア
4 ロタンダ
5 トンネル部
6 キャブ
8 昇降装置
10 走行装置
23 距離センサ
25 キャブ用角度センサ
27 昇降センサ
28 トンネル長さセンサ
50 制御装置
51 高さ検出手段
52 基準値記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7