(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-12
(45)【発行日】2024-03-21
(54)【発明の名称】抗体薬物複合体、その中間体、製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240313BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240313BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240313BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2023534207
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2020133872
(87)【国際公開番号】W WO2022116141
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510157476
【氏名又は名称】シャンハイ フダン-チャンジャン バイオ-ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ、チンソン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、イーチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、トン
(72)【発明者】
【氏名】パオ、ピン
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ペイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、チュン
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503784(JP,A)
【文献】特表2017-537893(JP,A)
【文献】国際公開第2019/034176(WO,A1)
【文献】特表2017-510548(JP,A)
【文献】特表2018-515137(JP,A)
【文献】特表2014-526895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61P 1/00- 43/00
C07K 16/28
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が式Iで表される通りである、抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【化1】
(ただし、Abは、HER3抗体又はHER3抗体の変異体であり、
前記HER3抗体の変異体はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
mは2~8であり、
Dは、細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤であり、
前記細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤は、
【化2】
であり、R
2
及びR
5
は、それぞれ独立してH、C
1
~C
6
アルキル又はハロゲンであり
、R
3
及びR
6
は、それぞれ独立してH、C
1
~C
6
アルキル又はハロゲンであり、R
4
及びR
7
は、それぞれ独立してC
1
~C
6
アルキルであり、
R
1は、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキル、
又は1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキル
であり、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、
L
1は
、フェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基
、イソロイシン残基、ロイシン残基
、プロリン残基
、及びバリン残基の1つ又は複数であり、pは、
2であり、
L
2は、
【化3】
であり、ここで、nは、独立して1~12であり、c末端はカルボニルを介してL
1に連結され、f末端はL
3のd末端に連結され、
前記L
3は、
【化4】
であり、ここで、b末端は前記Abに連結され、d末端は前記L
2のf末端に連結される。)
【請求項2】
Abが、HER3抗体である場合、前記HER3抗体はHER3抗体Aであり、前記HER3抗体Aにおける軽鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号1に示される通りであり、重鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される通りであ
る、請求項1に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物
【請求項3】
前記L
3のb末端と前記抗体上のスルフヒドリルとは、チオエーテル結合の形態で連結され、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、C
1~C
4アルキルであり、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、C
1~C
4アルキルであり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、
及び/又は、前記R
4及びR
7が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、C
1~C
4アルキルであり、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つであり、
及び/又は、前記R
1-1及びR
1-2がそれぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つであり、
及び/又は、前記R
1-3が、C
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、C
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記mは、4~8の整数又は非整数であり、
及び/又は、前記pは、2であり、
及び/又は、前記nは、8~12であり、
及び/又は、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3が、独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、C
1~C
4アルキルであることを特徴とする、請求項2に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項4】
前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示
されるアミノ酸配列にE233P、L234V及びL235Aの部位突然変異又はL234F、L235E及びP331Sの部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
2及びR
5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素であり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
3及びR
6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、フッ素であり、
及び/又は、前記R
4及びR
7が、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、
及び/又は、前記R
1が、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記-NR
1-1R
1-2は、-N(CH
3)
2であり、
及び/又は、前記R
1が、1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化5】
であり、
及び/又は、前記R
1が、1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化6】
であり、
及び/又は、mは、7.49、7.56、7.59、7.60、7.63、7.65、7.67、7.72、7.78、7.81、7.82又は7.83であり、
及び/又は、前記(L
1)
pは、
【化7】
であり、ここで、g末端はカルボニルを通じて前記L2のc末端に連結され、
及び/又は、前記nは、8、9、10、11又は12であり、
及び/又は、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3が、独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルは、メチルであることを特徴とする、請求項3に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項5】
R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルはメチルであり、
及び/又は、R
3及びR
6は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルはメチルであり、
及び/又は、R
4及びR
7は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルである場合、前記C
1~C
6アルキルはエチルである、
請求項4に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項6】
R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、
及び/又は、R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、
及び/又は、R
4及びR
7は、エチルであり、
及び/又は、前記R
1は、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキル、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルキル又はC
3~C
10シクロアルキルであ
る、請求項2に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項7】
前記Dは、
【化8】
であることを特徴とする、請求項6に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項8】
前記抗体薬物複合体は、下記のいずれか1つのスキームであることを特徴とする、請求項2~7のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
(スキーム1:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり
、
スキーム2:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
Dは、
【化9】
であり、前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり
、
スキーム3:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
Dは、
【化10】
であり、前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、
前記mは、7~8であり
、
前記L
1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基であり、
スキーム4:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、 前記Dは、
【化11】
であり
、
スキーム5:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
前記Dは、
【化12】
であり、
前記mは、7~8であり
、
前記L
1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である。)
【請求項9】
前記抗体薬物複合体は、下記のいずれか1つのスキームであることを特徴とする、請求項2~7のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
(スキーム1-1:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前
記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V及びL235Aの部位突然変異、又はL234F、L235E及びP331Sの部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
Dは、
【化13】
であり
、
スキーム2-1:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V及びL235Aの部位突然変異、又はL234F、L235E及びP331Sの部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、
Dは、
【化14】
であり
、
スキーム3-1:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、前
記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V及びL235Aの部位突然変異、又はL234F、L235E及びP331Sの部位突然変異を有するアミノ酸配列であり
Dは、
【化15】
であり、
前記mは、7~8であり
、
前記L
1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である。)
【請求項10】
前記抗体薬物複合体は、下記の式で表されるいずれか1つの化合物であることを特徴とする、請求項2に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物
。
【化16】
【化17】
【化18】
又は
【化19】
(ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、mは、7.49、7.56、7.59、7.60、7.63、7.65、7.67、7.72、7.78、7.81又は7.83である。)
【請求項11】
前記抗体薬物複合体は、下記のいずれか1つのスキームであることを特徴とする、請求項10に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
(スキームA
:
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
又は
【化24】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗
体Aの変異体において軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択され、
スキームB
:
【化25】
又は
【化26】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、mは、7.56、7.59、7.63、7.67、7.72、7.81又は7.83であり、前記HER3抗体Aの変異体において軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択され、
スキームC
:
【化27】
【化28】
又は
【化29】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体において軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択される。)
【請求項12】
前記抗体薬物複合体は、下記の式で表されるいずれか1つの化合物であって
、
【化30】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.63であり、
【化31】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は
、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、7.59であり、
【化32】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、7.67であり、
【化33】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.81であり、
【化34】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、7.63であり、
【化35】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、7.82であり、
【化36】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.56であり、
【化37】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.83であり、
【化38】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.49であり、
【化39】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.60であり、
【化40】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.78であり、
【化41】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.65であり、
【化42】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.83であり、又は
【化43】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、7.82であることを特徴とする、請求項2に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物。
【請求項13】
式IIで表される化合物とAb-水素とを下記に示されるカップリング反応を実行させるステップを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体の製造方法。
【化44】
【請求項14】
物質X及び医薬補助剤を含む、医薬組成物であって、前記物質Xは、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、医薬組成物。
【請求項15】
HER3タンパク質阻害剤の製造における、物質X又は請求項14に記載の医薬組成物の使用であって、前記物質Xは、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、使用。
【請求項16】
腫瘍を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、物質X又は請求項14に記載の医薬組成物の使用であって、前記物質Xは、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である、使用。
【請求項17】
前記腫瘍は、HER3陽性腫瘍であり、前記HER3陽性腫瘍は、肺癌、卵巣癌、結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌及び胃癌の1つ又は複数である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前立腺癌細胞は、22Rv1細胞及び/又はLNCaP細胞であり、
及び/又は、結腸直腸癌細胞は、SW620細胞であり、
及び/又は、肺癌細胞は、NCI-H820細胞及び/又はHCC827細胞であり、
及び/又は、卵巣癌細胞は、OVCAR-8細胞であり、
及び/又は、乳癌細胞は、SK-BR-3細胞である、
請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ医学の分野に関し、特に抗体薬物複合体、その中間体、製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
HERファミリーは、構造的に類似し、機能的に関連する4つのRTKsから構成され、それぞれHER1(EGFR)、HER2、HER3及びHER4であり、受容体間の二量体化は、HERファミリーがその機能とシグナル伝達活性を発揮するための基本条件である。受容体の二量体化後、細胞内で高度に保存されたキナーゼ残基の架橋とリン酸化を誘導し、その後下流のタンパク質を動員して活性化し、シグナル伝達カスケードを引き起こし、細胞増殖、生存、遊走、発生、転移などの過程を調節する。HER3はニューレグリン(Neuregulin、NRG)に結合できるが、固有のチロシンキナーゼ活性が欠如しているため、他の受容体とヘテロ二量体を形成することによってのみその機能を発揮することができる。一方、HER2はチロシンキナーゼ活性を持っているが、それに結合する対応するリガンドがない。HER2の細胞外領域の構造は天然の開いた構造になっており、これによりHER2はリガンド活性化なしに他の受容体と二量体化することができるため、HER2はHER3の好ましい二量体化パートナーである。
【0003】
HER2とHER3はヘテロ二量体を形成し、PI3K/AKT経路を直接に活性化することができ、PI3K/AKT経路は、腫瘍細胞の増殖を促進する最も重要なシグナル伝達経路であり、遺伝子発現、細胞代謝、細胞骨格の再構成等を調節する過程に関与するため、HER2-HER3ヘテロ二量体は、HERファミリーの中で最も強いシグナル伝達能力を持つ二量体であると考えられている。PI3K/AKT経路を直接的に又は間接的に阻害する薬物は、HER3転写を増加させ、PI3K/AKTの負のフィードバック調節を通じてHER3発現を上方調節及び活性化させ、下流経路が再活性化され、その結果、抗HER2及び抗EGFR標的治療に対する薬剤耐性に関連する薬剤耐性が生じることが研究により表明された。更に、HER3の主要なリガンドであるNRG1は、パラクリン経路及びオートクリン経路を介してHER3のシグナル伝達などに関与し、それによってHER3経路の活性化を誘導し、HERファミリー標的治療に対する薬剤耐性にも関与している可能性がある。また、HER3は、EGFRなどのHERファミリーの他のメンバー、及びMET、IGF-1Rなどの非HERファミリーのメンバーと二量体を形成し、腫瘍の発生、発達に関与することもできる。HER3が他の標的とヘテロ二量体を形成して最も強力なPI3K/AKTを送達できること、チロシンキナーゼ活性の欠如により、HER3の治療薬物には主にHER3の3つの細胞外ドメインを標的として抗体薬を開発している。現在、複数のモノクローナル抗体医薬品又は二重特異性抗体医薬品が臨床研究段階にあるが、既存のデータでは、臨床有効性データが十分に有意ではなく、今後の開発の可能性は小さいことを示している。
【0004】
抗体-小分子薬物複合体(Antibody-drug conjugate、ADC)は、新世代の抗体標的治療薬であり、主に癌腫瘍の治療に使用される。ADC医薬品は、低分子細胞傷害性薬剤(Drug)、抗体(Antibody)、及び抗体と細胞傷害性薬剤をつなぐリンカー(Linker)の3つの部分で構成されており、低分子細胞傷害性薬剤は化学結合により抗体タンパク質に結合している。ADC薬物は抗体を使用して小分子薬を特異的に認識し、癌特異抗原を発現する癌細胞標的に誘導し、エンドサイトーシスを通じて癌細胞に侵入する。リンカー部分は、細胞内の低pH値環境又はリソソームプロテアーゼの作用下で破壊され、小分子の細胞毒性薬物を放出し、正常組織細胞に損傷を与えることなく癌細胞を特異的に殺傷する効果を達成できる。従って、ADC薬物は抗体の標的特異性及び癌細胞に対する小分子毒素の高い毒性の特徴を組み合わせ、薬物の有効な治療用量範囲(Therapeutic window)を大幅に拡大する。臨床研究では、ADC薬物は有効性が高く、血液中で比較的安定し、循環系及び健康な組織に対する低分子細胞傷害性薬剤(化学薬品)の毒性を効果的に軽減できることが証明されており、現在、抗癌薬物の国際研究開発における研究ホットスポットとなっている。
【0005】
抗体薬物のFc末端には、主にFcγ受容体即ちFcγR、Fc新生児受容体即ちFcRn及びC型レクチン受容体などの様々な受容体が含まれている。FcγR受容体には多くのサブタイプがあり、異なるFcγRは主に細胞性免疫と体液性免疫を連結する重要な因子である、ADCC、ADCP及びCDCなどの異なるエフェクター機能を媒介する。モノクローナル抗体医薬品では、FcγRによって媒介されるエフェクター機能が一部の治療用抗体の有効性において重要な役割を果たしているが、ADC薬物では、FcγRがADC薬物のFcに結合することで、関連する細胞の内在化、輸送及び活性分子の放出を媒介し、深刻な毒性事象を引き起こす可能性がある。例えば、FcγRIIa(即ち、CD32a)は、DM1系ADC薬物を媒介し、血小板減少症などの毒性事象の発生を引き起こす可能性があるため、ADC薬物のFcγRIIaへの結合を減少させることで、ADC薬物によるFcγRIIa細胞の死滅を減少させ、それによってFcγRIIaによって媒介される毒性事象の発生が減少させることができる。
【0006】
HER3を標的としたモノクローナル抗体医薬品開発の臨床効果は不十分であるため、当該標的に基づいてより有効性の高い抗体薬物複合体の研究開発又はFcγRIIaへの結合を減少させることができる抗体薬物複合体を開発することは、臨床的に大きな価値があると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の抗体薬物複合体の種類が単一である欠点を克服するために、抗体薬物複合体、その中間体、製造方法及び使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により提供される抗体薬物複合体は、良好なターゲティングを有し、HER3を陽性発現する腫瘍細胞に対して良好な阻害効果を有し、更に良好な創薬可能性、高い安全性を有する。当該抗体薬物複合体は、HER3に対して阻害効果を有し、またSK-BR-3及びSW620細胞に対して阻害効果を有し、且つ22Rv1、LNCaP、NCI-H820、OVCAR-8及びHCC827細胞の少なくとも1つに対して良好な阻害効果を有する。
【0009】
本発明は、以下の技術的解決手段を通じて上記の技術的問題を解決する。
【0010】
本発明は、構造が式Iで表される通りである、抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物を提供する。
【0011】
【0012】
ただし、Abは、HER3抗体又はHER3抗体の変異体であり、
mは2~8であり、
Dは、細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤であり、
R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル、C3~C10シクロアルキル、C6~C14アリール又は5~14員ヘテロアリールであり、前記5~14員ヘテロアリールのヘテロ原子は、N、O及びSから選択される1つ又は複数であり、ヘテロ原子の数は、1、2、3又は4であり、前記R1-1、R1-2及びR1-3は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、
L1は、独立してフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、グルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、システイン残基、グルタミン酸残基、ヒスチジン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、リジン残基、メチオニン残基、プロリン残基、セリン残基、スレオニン残基、トリプトファン残基、チロシン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、pは、2~4であり、
【0013】
L
2は、
【化2】
であり、ここで、nは、独立して1~12であり、c末端はカルボニルを介してL
1に連結され、f末端は前記L
3のd末端に連結され、
【0014】
L
3は、
【化3】
であり、ここで、b末端は前記Abに連結され、d末端は前記L
2のf末端に連結される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体において、特定の基は以下の定義を有し、言及されていない群の定義は、上記の方案のいずれかに記載される通りである(以下、本段落の内容を「本発明の好ましい実施形態において」と言う)。
【0016】
前記HER3抗体はHER3抗体Aであり、前記HER3抗体Aにおける軽鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号1に示される通りであり、重鎖のアミノ酸配列は配列表の配列番号2に示される通りである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、前記HER3抗体の変異体はHER3抗体Aの変異体である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、前記HER3抗体の変異体はHER3抗体と比べて、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%以上の相同性を有している。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、前記HER3抗体Aの変異体、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列である。例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、前記の複数は好ましくは2つ又は3つである。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、前記L3のb末端は、好ましくは前記抗体のスルフヒドリルと、チオエーテル結合の形態で連結されている。
【0022】
【化4】
を例として、
【化5】
と前記抗体のシステイン残基との連結形態は
【化6】
である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、Dが細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤である場合、前記細胞毒性薬トポイソメラーゼ阻害剤は
【化7】
【0024】
であり、R2及びR5は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R3及びR6は、それぞれ独立してH、C1~C6アルキル又はハロゲンであり、R4及びR7は、それぞれ独立してC1~C6アルキルである。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、前記R2及びR5が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、前記R2及びR5が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくはフッ素である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、前記R3及びR6が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、前記R3及びR6が、それぞれ独立してハロゲンである場合、前記ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくはフッ素である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記R4及びR7が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、R2及びR5は、それぞれ独立してC1~C6アルキルである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、R3及びR6は、それぞれ独立してハロゲンである。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、R4及びR7は、エチルである。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、Dは、
【化8】
である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、前記Dが、
【化9】
である場合、前記抗体薬物複合体は、
【化10】
又は
【化11】
であってもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-1及びR1-2が、それぞれ独立してC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記-NR1-1R1-2は、好ましくは-N(CH3)2である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、前記R
1が、1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つの-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化12】
である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはエチルである。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1が、複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである場合、前記複数は、2つ又は3つである。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-3が、C1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、前記R
1が、1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルである場合、前記1つのR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルは、
【化13】
である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1がC1~C6アルキルである場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、前記mは、整数(例えば、2、3、4、5、6、7又は8)又は非整数であり、好ましくは4~8であり、より好ましくは6~8であり、更に好ましくは7~8であり、また、更に好ましくは7.4~7.85であり、例えば、7.49、7.56、7.59、7.60、7.63、7.65、7.67、7.72、7.78、7.81、7.82又は7.83である。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、前記L1好ましくはフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、プロリン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、より好ましくはフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、より好ましくはバリン残基及び/又はアラニン残基であり、前記複数は、好ましくは2つ又は3つであり、前記pは、好ましくは2である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、前記(L
1)
pは、より好ましくは
【化14】
であり、ここで、g末端はカルボニルを通じて前記L
2のc末端に連結される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、前記nは、好ましくは8~12であり、例えば、8、9、10、11及び12であり、また例えば、8又は12である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1-1、R1-2及びR1-3が、独立してC1~C6アルキルであることが好ましい場合、前記C1~C6アルキルは、好ましくはC1~C4アルキルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、最も好ましくはメチルである。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、前記R1は、好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル又はC3~C10シクロアルキルであり、R1は、更に好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、より好ましくは1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、又は、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルであり、最も好ましくは、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキルである。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、前記式Iで表される化合物は、下記のいずれか1つのスキームに記載された通りである。
【0052】
スキーム1:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、
【0053】
Dは、
【化15】
であり、R
2及びR
5は、それぞれ独立してH、C
1~C
6アルキル又はハロゲンであり、R
3及びR
6は、それぞれ独立してH、C
1~C
6アルキル又はハロゲンであり、R
4及びR
7は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、Dは、好ましくは
【化16】
であり、
【0054】
R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、C1~C6アルキル又はC3~C10シクロアルキルであり、前記R1-1、R1-2及びR1-3は、それぞれ独立してC1~C6アルキルであり、
【0055】
L1は、独立してフェニルアラニン残基、アラニン残基、グリシン残基、イソロイシン残基、ロイシン残基、プロリン残基及びバリン残基の1つ又は複数であり、
【0056】
スキーム2:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、
【0057】
Dは、
【化17】
であり、前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、Dは、好ましくは
【化18】
であり、
【0058】
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
【0059】
スキーム3:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、
【0060】
Dは、
【化19】
であり、前記R
2及びR
5は、それぞれ独立してC
1~C
6アルキルであり、前記R
3及びR
6は、それぞれ独立してハロゲンであり、Dは、好ましくは
【化20】
であり、
【0061】
前記mは、7~8であり、
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
前記L1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基であり、
【0062】
スキーム4:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、具有L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、
【0063】
【0064】
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
【0065】
スキーム5:
前記Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記HER3抗体Aの変異体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列にE233P、L234V、L234F、L235A、L235E又はP331Sの1つ又は複数の部位突然変異を有するアミノ酸配列であり、例えば、E233P、L234V及びL235Aの部位突然変異(即ち配列表の配列番号3)を有し、又は、具有L234F、L235E及びP331Sの部位突然変異(即ち配列表の配列番号4)を有し、
【0066】
【0067】
前記mは、7~8であり、
前記R1は、1つ又は複数の-NR1-1R1-2により置換されたC1~C6アルキル、1つ又は複数のR1-3S(O)2-により置換されたC1~C6アルキル、又は、C1~C6アルキルであり、
前記L1は、独立してバリン残基及び/又はアラニン残基である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは
【化23】
【化24】
又は
【化25】
である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、前記L
2は、好ましくは
【化26】
である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体における抗体は、好ましくはHER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1に示される通りであり、重鎖は、配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択され、Dは、
【化27】
【0071】
であり、L
1は、バリン残基及び/又はアラニン残基であり、pは、2であり、(L
1)pは、好ましくは
【化28】
【0072】
であり、R
1は、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキル、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキル又はC
1~C
6アルキルであり、好ましくは、1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキル、又は、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルであり、より好ましくは、1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルであり、前記R
1-1、R
1-2及びR
1-3は、独立してC
1~C
4アルキルであり、好ましくはメチルであり、前記1つ又は複数の-NR
1-1R
1-2により置換されたC
1~C
6アルキルは、好ましくは
【化29】
【0073】
であり、前記1つ又は複数のR
1-3S(O)
2-により置換されたC
1~C
6アルキルは、好ましくは
【化30】
【0074】
【0075】
【0076】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つの化合物である。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、mは、7.49、7.56、7.59、7.60、7.63、7.65、7.67、7.72、7.78、7.81又は7.83であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つの化合物である。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0088】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つの化合物である。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、mは、7.56、7.59、7.63、7.67、7.72、7.81又は7.83であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0093】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つの化合物である。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
ただし、Abは、HER3抗体A又はHER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列から選択される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、前記抗体薬物複合体は、好ましくは下記の式で表されるいずれか1つの化合物である。
【0101】
【化49】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.56であり、
【0102】
【化50】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.67であり、
【0103】
【0104】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.72であり、
【0105】
【0106】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.63であり、
【0107】
【0108】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.59であり、
【0109】
【化54】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.67であり、
【0110】
【化55】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.81であり、
【0111】
【化56】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.63であり、
【0112】
【化57】
、Abは、HER3抗体Aの変異体であり、前記HER3抗体Aの変異体における軽鎖は、好ましくは配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の軽鎖であり、重鎖は、好ましくは配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列の重鎖であり、mは、好ましくは7.82であり、
【0113】
【化58】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.56であり、
【0114】
【化59】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.83であり、
【0115】
【化60】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.49であり、
【0116】
【化61】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.60であり、
【0117】
【化62】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.78であり、
【0118】
【化63】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.65であり、
【0119】
【化64】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.83であり、又は
【0120】
【化65】
、Abは、HER3抗体Aであり、mは、好ましくは7.82である。
【0121】
本発明はまた、抗体を提供し、前記抗体における軽鎖のアミノ酸配列は、好ましくは配列表の配列番号1に示される通りであり、前記抗体における重鎖のアミノ酸配列は、配列表の配列番号3又は配列番号4に示される通りである。
【0122】
本発明はまた、式IIで表される化合物とAb-水素を下記に示されるカップリング反応を実行させるステップを含む、抗体薬物複合体の製造方法を提供する。
【0123】
【0124】
ただし、前記L1、L2、L3、R1、p及びAbの定義は上記で記載された通りである。
【0125】
本発明において、前記カップリング反応の条件及び操作は、当技術分野におけるカップリング反応の通常の条件及び操作であってもよい。
【0126】
本発明はまた、上記の物質X及び医薬補助剤を含む、医薬組成物を提供し、前記物質Xは、上記抗体薬物複合体、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の溶媒和物である。
【0127】
前記医薬組成物において、前記物質Xの使用量は、治療有効量であってもよい。
【0128】
本発明はまた、HER3タンパク質阻害剤の製造における上記の物質X又は上記の医薬組成物の使用を提供する。
【0129】
本発明はまた、腫瘍を治療及び/又は予防するための医薬の製造における、上記の物質X又は上記の医薬組成物の使用を提供し、前記腫瘍は、好ましくはHER3陽性腫瘍である。
【0130】
前記使用において、前記HER3陽性腫瘍は、好ましくはHER3陽性肺癌、卵巣癌、結直腸癌、乳癌、前立腺癌及び胃癌の1つ又は複数である。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態において、前記前立腺癌において、前立腺癌細胞は22Rv1細胞である。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態において、前記前立腺癌において、前立腺癌細胞はLNCaP細胞である。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態において、前記結腸直腸癌において、結腸直腸癌細胞はSW620細胞である。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態において、前記肺癌において、肺癌細胞はNCI-H820細胞である。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態において、前記卵巣癌において、卵巣癌細胞はOVCAR-8細胞である。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態において、前記肺癌において、肺癌細胞はHCC827細胞である。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態において、前記乳癌において、乳癌細胞はSK-BR-3細胞である。
【0138】
別途に説明しない限り、本発明の明細書及び請求の範囲で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0139】
前記の医薬賦形剤は、医薬製造分野で広く使用されている賦形剤であってもよい。賦形剤は主に、安全、安定及び機能的な医薬組成物を提供するために使用され、更に対象に投与後に有効成分が所望の速度で溶解できるようにさせる方法、又は対象が組成物の投与を受けた後、有効成分の効果的な吸収が促進されるようにする方法を提供することができる。前記医薬賦形剤は、不活性充填剤であってもよく、又は特定の機能、例えば、当該組成物の全体的なpHを安定化させるか又は組成物の有効成分の分解を防ぐ機能を提供する。前記医薬賦形剤には、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、可溶化剤、安定剤、賦形剤及び界面活性剤、着色剤、矯味剤及び甘味料の1つ又は複数が含まれる。
【0140】
用語「薬学的に許容される」とは、一般に無毒で、安全で、また患者への使用に適した塩、溶媒、助剤などを指す。前記「患者」は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0141】
用語「薬学に許容される塩」とは、本発明の化合物と比較的に無毒の、薬学的に許容される酸又は塩基で製造された塩を指す。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される塩基とこれらの化合物の中性形態とを接触させることで塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される酸とこれらの化合物の中性形態とを接触させることで酸付加塩を得ることができる。前記薬学的に許容される酸は、無機酸を含み、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、リン酸、亜リン酸、硫酸などが含まれるが、これらに限定されない。前記薬学的に許容される酸は、有機酸を含み、前記有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、イソニコチン酸、酸性クエン酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、糖酸、ギ酸、エタンスルホン酸、パモ酸(即ち、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、アミノ酸(グルタミン酸、アルギニンなど)などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物に比較的酸性及び比較的塩基性の官能基が含まれる場合、塩基付加塩又は酸付加塩に転換させることができる。具体的には、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)、又は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, ed., Wiley-VCH, 2002)を参照することができる。
【0142】
用語「溶媒和物」とは、本発明の化合物を化学量論的又は非化学量論的量の溶媒と結合させることによって形成される物質を指す。溶媒和物中の溶媒分子は、規則的又は非規則的配置で存在することができる。前記溶媒は、水、メタノール、エタノールなどを含むが、これらに限定されない。
【0143】
天然又は天然配列のHER3は、自然から分離されることができるか、或いは組換えDNA技術、化学合成、又は上記及び同様の技術の組み合わせによって製造することができる。
【0144】
ここで、抗体は最も広い意味で解釈され、それは当該免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識領域を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂肪、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる。具体的には、所望の生物学的活性を有する限り、完全なのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体及び抗体フラグメントが含まれる。本発明の抗体の変異体とは、天然ポリペプチドと同等の生物学的活性が保持されているという条件で、アミノ酸配列の突然変異体、及び天然ポリペプチドの共有結合誘導体を指す。アミノ酸配列突然変異体と天然アミノ酸配列との違いは、一般に、天然アミノ酸配列中の1つ又は複数のアミノ酸が置換されるか、又はポリペプチド配列での1つ又は複数のアミノ酸が欠失及び/又は挿入されることである。欠失突然変異体には、天然ポリペプチドフラグメントと、N末端及び/又はC末端切断型突然変異体が含まれる。一般に、アミノ酸配列突然変異体は、天然の配列と比較して、少なくとも70%(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%)の相同性を有する。
【0145】
モノクローナル抗体又は単一の抗体とは、当該抗体が実質的に均質な抗体の群に由来することを指し、即ち、存在する可能性のある少量の天然突然変異又は抗体の発現及び製造中に生成される異性体を除いて、当該群を構成する各抗体は完全に同様である。モノクローナル抗体は、単一の抗原に対して高い特異性を持つ。一方、ポリクローナル抗体には異なる决定基を標的とする異なる抗体が含まれており、各モノクローナル抗体は抗原の1つの决定基のみを標的とする。
【0146】
本発明において、モノクローナル抗体には、特にキメラ抗体及びそのフラグメントも含まれ、即ち、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一部は特定の種類、特定のタイプ又は特定のサブタイプに由来し、残りの部分は別の種類、別のタイプ又は別のサブタイプに由来する。
【0147】
本発明の抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はこれらの技術の組み合わせ、或いはこの分野で既知の他の技術など、当該分野で既知の技術を用いて製造することができる。
【0148】
用語「抗体薬物複合体比」(drug-antibody ratio、即ちDAR)についての説明する。L-Dは抗体上の結合点との反応性基であり、Lはリンカーであり、DはLに連結された抗体に更に結合する細胞傷害性薬剤であり、本発明においてDはDxdであり、各抗体がDに最終的に結合するDARの数をmで表され、又はmはDと結合した単一の抗体の数を表すこともできる。いくつかの実施形態において、mは、実際には、2~8、4~8又は6~8の間に位置する平均値であり、又はmは、2、3、4、5、6、7又は8のいずれか1つの整数であり、1つの実施形態において、mは、2、4、6、又は8の平均値であり、他の実施形態において、mは、2、3、4、5、6、7又は8の平均値である。
【0149】
リンカーとは、抗体と薬物との間を直接的又は間接的連結する部分を指す。リンカーのmAbへの結合は、表面リジン、酸化炭水化物への還元カップリング、及び鎖間ジスルフィド結合によって放出されるシステイン残基の還元など、様々な方法で実現できる。様々なADC結合系は当技術分野で周知であり、ヒドラゾン、ジスルフィド及びペプチドベースの結合を含む。
【0150】
用語「治療」又はほかの類似の同義語が、例え癌等に適用される場合、患者の体内の癌細胞の数を減らすか、又は除去すること、又は癌の症状を軽減するための過程またはプロセスを指す。癌又は他の増殖性障害における「治療」は、必ずしも癌細胞又は他の障害が実際に解消されること、細胞又は障害の数が実際に減少すること、又は、癌又は他の障害の症状が実際に減少することを意味するわけではない。通常、成功の可能性が低くても、がんの治療法が実行されるが、患者の病歴と推定生存期間を考慮すると、全体的に有益な行動方針をもたらすと考えられる。
【0151】
用語「予防」とは、疾患又は障害を獲得又は発症するリスクを低減することを指す。
【0152】
用語「シクロアルキル」とは、単環式シクロアルキル及び多環式シクロアルキルを含む、3~20個の炭素原子を有する飽和環式炭化水素原子団(例えば、C3~C6シクロアルキル)を指す。シクロアルキルは3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~10個の炭素原子を含み、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。シクロアルキルの実例にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシルなどが含まれが、これらに限定されない。
【0153】
用語「アルキル」とは、特定の数の炭素原子数を含む直鎖又は分岐鎖アルキルを指す。アルキルの実例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル及び類似したアルキルが含まれる。
【0154】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0155】
用語「ヘテロアリール」とは、1、2、3又は4つの独立してN、O及びSから選択される、ヘテロ原子を含むアリール(又は芳香環)を指し、フリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、キノリニル、イソキノリルなどの単環式、二環式又は三環式芳香族系であってもよい。
【0156】
用語「アリール」とは、任意の安定な単環式又は二環式炭素環を指し、その中ではのすべての環はいずれも芳香族である。上記アリール単位の実例はフェニル、又はナフチルを含む。
【0157】
前記好ましい条件は、当技術分野の通常の知識を違反しない限り、任意に組み合わせて、本発明の各々の好ましい実施例を得ることができる。
【0158】
特に説明しない限り、本発明における室温は20~30℃を指す。
【0159】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【発明の効果】
【0160】
本発明の積極的な進歩効果は:
1.本発明により提供されるHER3抗体を含む抗体薬物複合体は、良好なターゲティングを有し、HER3などを発現する各種腫瘍細胞に対して良好な阻害効果を有する。
【0161】
2.体内研究は、本発明の抗体薬物複合体は、より優れた体外細胞毒性、体内抗腫瘍活性を有することを示している。
【0162】
3.本発明の抗体薬物複合体は良好な溶解性、良好な創薬可能性を有し、カップリング製造過程において沈殿などの異常現象がなく、抗体薬物複合体の製造に非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【
図1】抗体の軽鎖、重鎖の発現ベクターの構築を示し、その中でAb-Lは、抗体の軽鎖であり、Ab-Hは抗体の重鎖である。
【発明を実施するための形態】
【0164】
以下、実施例の形態によって更に本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれる。
【0165】
略語の説明:
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
CHO チャイニーズハムスター卵巣細胞
HTRF 均質時間分解蛍光法
PB リン酸緩衝液
EDTA エチレンジアミン四酢酸
TECP トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン
DMSO ジメチルスルホキシド
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
HATU 2-(7-アザベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
v/v V/V、体積比
UV 紫外線可視光
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
BSA ウシ血清アルブミン
rpm 回/分(一分間に回転する回転数)
FBS ウシ胎児血清
【0166】
実施例1:HER3抗体の製造
本発明では、親和性が高く、HER3を特異的に標的とするモノクローナル抗体FDA026を選択し、その軽鎖のアミノ酸配列は配列番号1に示される通りであり、その重鎖のアミノ酸配列は配列番号2に示される通りであった。FDA026の軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列は、全遺伝子合成(Suzhou Genewiz)によって取得した。EcoR I及びHind III(TAKARAから購入)の二重酵素切断によってそれぞれpV81担体にそれぞれ構築し(
図1)、ライゲーションによってTrans1-T1コンピテントセルに形質転換させ(Beijing TransGen Biotechから購入、商品番号:CD501-03)、PCR同定のためにクローンを選択して検査し、配列確認し、培養・増幅した陽性クローンを血漿から抽出して、抗体軽鎖の真核生物発現血漿FDA026-L/pV81及び抗体重鎖の真核生物発現血漿FDA026-H/pV81を得、これら2つの血漿をXbaI(Takaraから購入、商品番号:1093S)で酵素切断して線状化させ、軽鎖、重鎖の真核生物発現血漿の比は1.5/1であり、電気ショックにより懸濁増殖適応のCHO細胞(ATCCから購入)に形質転換し、電気ショック後の細胞を2000~5000細胞/ウェルで96ウェルプレートに連結し、3週間培養した後、HTRF法(均質時間分解蛍光法)によって発現量を測定し、その中から発現量が上位10位の細胞プールを選択して増幅した後、凍結保存した。細胞を125mlの振盪フラスコ(30mlの培養体積)で復蘇させ、37℃、5.0%のCO
2、130rpmで振盪培養し、3日後に1000mlの振盪フラスコ(300mlの培養体積)に拡張し、37℃、5.0%のCO
2、130rpmで振盪培養し、4日目から1日おきに初期培養体積の5~8%のフィード培地の追加を開始し、10~12日間培養した後に培養を終了し、回収液を9500rpmで15分間遠心分離して、細胞沈殿を除去し、上清を収集し、更に0.22μm濾膜で濾過し、処理された試料をMabSelectアフィニティークロマトグラフィーカラム(GEから購入)で精製して抗体FDA026を得た。
【0167】
上記と同様な製造方法でFc突然変異(即ちE233P、L234V、L235A)を有するHER3抗体FDA028を製造し、その軽鎖のアミノ酸は配列番号1に示される通りである、その重鎖の配列は配列番号3に示される通りであり;Fc突然変異(即ちL234F、L235E、P331S)を有するHER3抗体FDA029を製造し、その軽鎖アミノ酸は配列番号1に示される通りであり、その重鎖の配列は配列番号4に示される通りである。
【0168】
FDA026、FDA028及びFDA029の軽鎖の配列は下記の通りである:
【0169】
配列番号1:
DIEMTQSPDS LAVSLGERAT INCRSSQSVL YSSSNRNYLA WYQQNPGQPP 50
KLLIYWASTR ESGVPDRFSG SGSGTDFTLT ISSLQAEDVA VYYCQQYYST 100
PRTFGQGTKV EIKRTVAAPS VFIFPPSDEQ LKSGTASVVC LLNNFYPREA 150
KVQWKVDNAL QSGNSQESVT EQDSKDSTYS LSSTLTLSKA DYEKHKVYAC 200
EVTHQGLSSP VTKSFNRGEC 220
【0170】
FDA026の重鎖の配列は下記の通りである:
【0171】
配列番号2:
QVQLQQWGAG LLKPSETLSL TCAVYGGSFS GYYWSWIRQP PGKGLEWIGE 50
INHSGSTNYN PSLKSRVTIS VETSKNQFSL KLSSVTAADT AVYYCARDKW 100
TWYFDLWGRG TLVTVSSAST KGPSVFPLAP SSKSTSGGTA ALGCLVKDYF 150
PEPVTVSWNS GALTSGVHTF PAVLQSSGLY SLSSVVTVPS SSLGTQTYIC 200
NVNHKPSNTK VDKRVEPKSC DKTHTCPPCP APELLGGPSV FLFPPKPKDT 250
LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQYNSTY 300
RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA PIEKTISKAK GQPREPQVYT 350
LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDS 400
DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE ALHNHYTQKS LSLSPGK 447
【0172】
FDA028の重鎖の配列は下記の通りである:
【0173】
配列番号3 FDA028の重鎖
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNYNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPPVAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0174】
FDA029の重鎖の配列は下記の通りである:
【0175】
配列番号4 FDA029の重鎖
QVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNYNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPASIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0176】
h:リンカー-薬物複合体の合成
実施例2-1:LE12の合成
【化67】
【0177】
中間体2の合成:
(S)-2-アジドプロピオン酸(10g、86.9mmol)及び4-アミノベンジルアルコール(21.40g、173.8mmol)を300mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(体積比2:1)に溶解させ、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(21.49g、86.9mmol)を加え、室温で5時間反応させた後、溶媒を減圧蒸発させ、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:酢酸エチル=1:1(v/v)]で精製して中間体2(16.3g、収率:85%)を得、ESI-MS m / z:221(M + H)であった。
【0178】
中間体3の合成:
中間体2(15g、68.2mmol)及びビス(p-ニトロフェニル)カーボネート(22.82g、75.02mmol)を混合して200mLの無水N、N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、25mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。液体クロマトグラフィー-質量分析で原料の反応完了をモニターした後、メチルアミン塩酸塩(6.91g、102.3mmol)を加え、室温で1時間反応を続けた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、200mLの水、200mLの酢酸エチルを加え、溶液を分離した後有機相を収集し、有機相を乾燥させた後に濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1(v/v)]で精製して中間体3(18.9g、収率:100%)を得、ESI-MS m / z:278( M + H)であった。
【0179】
中間体5の合成:
中間体3(10g、36.1mmol)及びパラホルムアルデヒド(1.63g、54.2mmol)を混合して150mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(6.28g、57.76mmol)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ中間体4の粗溶液を得、サンプリングしてメタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングし、反応終了後、反応液を濾過し、濾液にヒドロキシ酢酸tert-ブチル(9.54g、72.2mmol)及びトリエチルアミン(10mL、72.2mmol)を加え、室温で2時間反応を続けた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[石油エーテル:酢酸エチル=3:1(v/v)]で精製して中間体5(11.2g、収率:74%)を得、ESI-MS m / z:422( M + H)であった。
【0180】
中間体6の合成:
中間体5(10g、23.8mmol)を80mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、80mLの水を加えた後、トリス(2-カルボキシエチルホスフィン)塩酸塩(13.6g、47.6mmol)を加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、酢酸エチルを加えて抽出した後、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸発して溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体6(8.1g、収率:86%)を得、ESI-MS m/z:396(M+H)であった。
【0181】
中間体8の合成:
中間体6(5g、12.7mmol)を60mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0182】
上記のステップで得られた粗生成物を50mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、Fmoc-バリンヒドロキシスクシンイミドエステル(8.3g、19.1mmol)、トリエチルアミン(5mL)を加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体8(5.4g、収率:64%)を得、ESI-MS m/ z:661(M+H)であった。
【0183】
中間体9の合成:
中間体8(1g、1.5mmol)及びExatecanメシル酸塩(0.568g、1mmol)を30mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(1.14g、3.0mmol)、2mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒のを除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体9(0.94g、収率:87%)を得、ESI-MS m/ z:1078(M+H)であった。
【0184】
化合物LE12の合成:
中間体9(1g、0.929mmol)を20mLの無水DMFに溶解させ、0.5mLの1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エンを加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステル(428.5mg、1.39mmol)を直接に加え、室温で1時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=8:1(v/v)]で精製して表題化合物(0.7g、収率:73%)を得、ESI-MS m/z:1035(M+H)であった。
【0185】
【0186】
中間体14の合成
市販の中間体12(267mg、0.8mmol)及びパラホルムアルデヒド(50mg、1.6mmol)を混合して20mlの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(0.3ml、3.4mmol)をゆっくりと加え、添加完了後室温で2時間反応させた。その後、サンプリングし、メタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングし、反応終了後に反応溶液を濾過し、濾液にグリコール酸tert-ブチル(211mg、1.6mmol)及び0.5mlのペンピジン(Pempidine)を加え、室温で約2時間反応を続け、反応終了後、減圧下で蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体14(260mg、収率:68%)を得、ESI-MS m/z:479(M+H)であった。
【0187】
中間体15の合成
中間体14(238mg、0.50mmol)を6mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、0.3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0188】
中間体16の合成
上記のステップで得られた粗生成物及びExatecanメシル酸塩(170mg、0.30mmol)を5mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(341mg、0.90mmol)、0.60mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体16(210mg、収率:83%)を得、ESI-MS m/ z:840(M+H)であった。
【0189】
中間体17の合成
中間体16(100mg、0.12mmol)を15mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、3mLの水を加えた後、1mol/Lのトリエチルホスフィン水溶液0.3mLを加え、室温で4時間反応させた。反応の終了をモニタリングした後、反応溶液を減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、残りの水溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて、pHを中性に調節し、ジクロロメタンを加えて抽出し、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体17(69mg、収率:71%)を得、ESI-MS m/z:814(M+H)であった。
【0190】
化合物LE13の合成
前ステップの合成法で得られた中間体17(120mg、0.15mmol)及び市販の原料MC-V(102mg、0.33mmol)を40mLのジクロロメタンに混合し、縮合剤2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(82mg、0.33mmol)を加え、室温で一晩反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して化合物LE13(116mg、収率:70%)を得、ESI-MS m/z:1106.5(M+H)であった。
【0191】
【0192】
中間体19の合成
市販の中間体18(300mg、0.8mmol)とパラホルムアルデヒド(50mg、1.6mmol)を混合して20mlの無水ジクロロメタンに溶解させ、トリメチルクロロシラン(0.3ml、3.4mmol)をゆっくりと加え、室温で2時間反応させ、サンプリングし、メタノールを加えてクエンチングさせた後、液体質量分析法で反応をモニタリングした。反応終了後、反応溶液を濾過し、濾液にグリコール酸tert-ブチル(211mg、1.6mmol)及びトリエチルアミン(0.22m、1.6mmol)を加え、室温で約2時間反応を続け、反応終了後、減圧蒸留して溶媒の大部分を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体19(349mg、収率:85%)を得た。ESI-MS m/z:514(M+H),1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.13 (s, 1H), 7.56 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.35 (s, 2H), 5.14 (s, 2H), 4.91 (s, 2H), 4.25 (q, J = 7.1 Hz, 1H), 3.99 (d, J = 42.5 Hz, 2H), 3.85 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 3.40 (dd, J = 18.5, 7.6 Hz, 2H), 2.89 (d, J = 48.6 Hz, 3H), 1.65 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.46 (s, 9H)。
【0193】
中間体20の合成
中間体19(257mg、0.50mmol)を6mLのジクロロメタン及びメタノールの混合溶媒(v/v=2:1)に溶解させ、0.3mLのトリフルオロ酢酸をゆっくりと加え、室温で30分間反応させた。反応終了後、同じ体積の水及び酢酸エチルを加え、有機相を乾燥させた後、濃縮し、得られた粗生成物を直接に次のステップに使用した。
【0194】
得られた粗生成物及びExatecanメシル酸塩(170mg、0.30mmol)を5mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドに混合し、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(341mg、0.90mmol)、0.06mLのトリエチルアミンを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=20:1(v/v)]で精製して中間体20(212mg、収率:81%)を得た。ESI-MS m/ z:875(M+H)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.27 (d, J = 34.7 Hz, 1H), 7.63-7.35 (m, 5H), 7.21-7.10 (m, 1H), 5.71-5.48 (m, 2H), 5.24-4.95 (m, 3H), 4.95-4.72 (m, 4H), 4.45 (s, 1H), 4.33-3.97 (m, 3H), 3.75 (s, 2H), 3.39-2.99 (m, 4H), 2.76 (d, J = 15.3 Hz, 3H), 2.43-2.15 (m, 5H), 2.04 (s, 1H), 1.94-1.75 (m, 2H), 1.62 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.11-0.89 (m, 3H)。
【0195】
中間体21の合成
中間体20(77mg、0.09mmol)を12mLの無水テトラヒドロフランに溶解させ、3mLの水を加えた後、1mol/Lのトリエチルホスフィン水溶液を0.3mL加え、室温で4時間反応させた。反応終了後、減圧蒸留してテトラヒドロフランを除去し、残りの水溶液に炭酸水素ナトリウムを加えて、pHを中性に調節し、ジクロロメタンを加えて抽出し、得られた有機相を乾燥させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して中間体21(53mg、収率:69%)を得た。ESI-MS m/z:849(M+H)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.52 (s, 1H), 7.79 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 7.67-7.55 (m, 2H), 7.47-7.21 (m, 3H), 6.51 (s, 1H), 5.60 (s, 1H), 5.52-5.32 (m, 2H), 5.30-5.11 (m, 2H), 5.11-4.94 (m, 2H), 4.94-4.74 (m, 2H), 4.02 (s, 2H), 3.81-3.66 (m, 2H), 3.60-3.35 (m, 4H), 3.24-3.08 (m, 2H), 2.94 (d, J = 30.8 Hz, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.28-2.04 (m,2H), 2.00-1.73 (m, 2H), 1.22 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.96-0.70 (m, 3H)。
【0196】
化合物LE14の合成
中間体21(134mg、0.16mmol)及び市販の原料MC-V(102mg、0.33mmol)を40mLのジクロロメタンに混合し、縮合剤2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン(82mg、0.33mmol)を加え、室温で一晩反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=10:1(v/v)]で精製して化合物LE14(137mg、収率:75%)を得た。ESI-MS m/z:1141.4(M+H)。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.97 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.27-8.09 (m, 1H), 7.88-7.70 (m, 2H), 7.63-7.51 (m, 2H), 7.28 (s, 3H), 6.99 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.59 (s, 1H), 5.50-5.32 (m, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.98 (s, 2H), 4.85 (d, J = 17.3 Hz, 2H), 4.43-4.33 (m, 1H), 4.21-4.12 (m, 1H), 4.03 (s, 2H), 3.74-3.64 (m, 2H), 3.20-3.03 (m, 3H), 3.02-2.84 (m, 4H), 2.36 (s, 3H), 2.23-2.09 (m, 4H), 2.01-1.90 (m, 1H), 1.90-1.78 (m, 2H), 1.55-1.39 (m, 4H), 1.30 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.23-1.11 (m, 2H), 0.93-0.77 (m, 9H)。
【0197】
実施例2-4:化合物LE15-LE20の合成
【化70】
【0198】
中間体VIは、Fmoc-L-バリン-L-アラニンを出発原料として、実施例2-1の中間体3の合成方法のステップa及びbを参照し、ステップbのメチルアミン塩酸塩を対応する市販のアミノ化合物に置き換えることにより製造された。後続のステップは中間体VIから出発し、実施例2-1のステップc、d、f及びhと同様な方法に従って、中間体9と似ている中間体IXを得、次に実施例6のステップi及びjと同様な方法に従って処理し、アミノ保護基を除去し、その後、異なる市販のマレイミドと縮合することにより最終生成物を得た。使用したアミノ化合物及びマレイミドの構造は表1に示された通りである。化合物LE15:灰白色の固体、ESI-MS m/z:1121.2(M+H);化合物LE16:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1167.1(M+H);化合物LE17:黄色固体、ESI-MS m/z:1132.3(M+H);化合物LE18:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1305.4(M+H);化合物LE19:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1307.4(M+H);化合物LE20:淡黄色固体、ESI-MS m/z:1337.6(M+H)。
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
実施例2-5:化合物LE21与LE22の合成
【化76】
【0206】
化合物DXD-1の合成
市販のExatecanメシル酸塩(0.568g、1mmol)及び市販の2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)酢酸(CAS:105459-05-0、0.38g、2mmol)を混合して20mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、縮合剤HATU(0.76g、2mmol)及び1mLのピリジンを加えて、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧蒸発させ、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー[ジクロロメタン:メタノール=50:1(v/v)]で精製して表題化合物DXD-1(0.55g、収率:90%)を得た。ESI-MS m/z:608.1(M+H)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.73 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.05 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 5.80-5.62 (m, 2H), 5.41-5.14 (m, 4H), 4.29-4.15 (m, 2H), 4.08-4.03 (m, 1H), 3.27-3.07 (m, 2H), 2.45 (s, 3H), 2.38-2.28 (m, 2H), 1.96-1.81 (m, 2H), 1.04 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.80 (s, 9H), 0.11 (s, 3H), 0.03 (s, 3H).
【0207】
中間体Vの製造
中間体Vは、実施例2-1の化合物4の製造方法を参照し、ステップbのメチルアミン塩酸塩を、対応する市販のアミノ化合物で置き換えることにより得られた。
【0208】
LE21-LE22の合成
中間体VとDXD-1を反応させ、10%のトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン溶液処理により中間体Xを得、次に、中間体Xを実施例2-1の化合物5の後続ステップe、g、i及びjを参照して反応させ:中間体Xを還元してアミノ化合物を得、得られたアミノ化合物とFmoc-バリンヒドロキシスクシンイミドエステルを縮合させ、得られた生成物のFmoc保護基を除去し、得られたアミノ生成物を更に6-(マレイミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステルと反応させて最終生成物を得た。化合物LE21:黄色固体、ESI-MS m / z:1141.2(M + H);化合物LE22:黄色固体、ESI-MS m / z:1106.6(M + H)。
【0209】
【0210】
実施例2-6:化合物LS13の合成
実施例2-4のLE15の合成方法を参照して、SN-38(7-エチル-10-ヒドロキシカンプトテシン)を中間体VII(R1はメチルスルホニルエチルである)と反応させた後、脱保護し、縮合などのステップで、化合物LS13を得た:1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.92 (d, J = 22.4 Hz, 1H), 8.14 (s, 1H), 8.08 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.70-7.50 (m, 3H), 7.47 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.20 (s, 1H), 6.98 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.61 (s, 2H), 5.48-5.35 (m, 2H), 5.27 (s, 2H), 5.10 (d, J = 20.6 Hz, 2H), 4.36 (s, 1H), 4.21-4.07 (m, 1H), 3.84 (s, 2H), 3.48 (s, 2H), 3.21-2.92 (m, 6H), 2.25-2.04 (m, 2H), 2.04-1.78 (m, 3H), 1.55-1.36 (m, 4H), 1.36-1.10 (m, 9H), 0.95-0.71 (m, 10H)。
【0211】
【0212】
実施例2-7:化合物GGFG-Dxdの合成
化合物GGFG-Dxdは、WO2015146132A1で報告された既知の合成方法を参照して製造された。ESI-MS m/z:1034.5(M+H),1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.61 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 8.50 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.28 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.05 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 7.99 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.25-7.16 (m, 5H), 6.98 (s, 2H), 6.51 (s, 1H), 5.59 (dt, J = 7.4, 4.1 Hz, 1H), 5.41 (s, 2H), 5.20 (s, 2H), 4.64 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 4.53-4.40 (m, 1H), 4.02 (s, 2H), 3.74-3.37 (m, 8H), 3.18-3.00 (m, 2H), 3.04-2.97 (m, 1H), 2.77 (dd, J = 13.5, 9.4 Hz, 1H), 2.38 (s, 3H), 2.19 (dd, J = 14.9, 8.5 Hz, 2H), 2.11-2.05 (m, 2H), 1.86 (dd, J = 14.0, 6.7 Hz, 2H), 1.45 (s, 4H), 1.20-1.14 (m, 2H), 0.87 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。
【0213】
【0214】
実施例3:抗体薬物複合体の製造
実施例1の方法に従って製造したHER3の抗体FDA026及びFDA028及びFDA029をそれぞれG25脱塩カラムを用いて、50mMのPB/1.0mMのEDTA緩衝液(pH7.0)に置換し、12当量のTECPを加え、37℃で2時間撹拌し、抗体鎖間のジスルフィド結合を完全に開き、リン酸を用いて還元された抗体溶液のpHを6.0に調節し、水浴温度を25℃に下げ、カップリング反応を準備した。上記の実施例2の方法に従って製造したリンカー-薬物複合体LE12-LE22、LS13及びGGFG-DxdをそれぞれDMSOに溶解させ、中から12当量のリンカー-薬物複合体を吸引し、還元後の抗体溶液に一滴ずつ滴下し、DMSOを補充して、その最終濃度を10%(v/v)にし、25℃で0.5時間攪拌して反応させ、反応の終了後、0.22umメンブレンで試料を濾過した。タンジェンシャルフロー限外濾過システムで精製し、非結合小分子を除去し、緩衝液は50mMのPB/1.0mMのEDTA溶液(pH6.0)であり、精製後、最終濃度6%のショ糖を加え、-20℃の冷蔵庫で保存した。UV法で280nm及び370nmでの吸光度値をそれぞれ測定し、DAR値を計算し、結果を下記の表2に示される通りである。
【0215】
本実施例と同様な操作ステップでカップリング反応を実行し、試料はいずれも最も高いDAR(即ちオーバーカップリング)で製造し、各カップリング反応が発生する時の沈殿生成状況を観察し、各カップリング反応完了後のポリマー比率及び回収率を算出し、得られた結果は表2に示される通りである。
【0216】
【0217】
実際の研究では、リンカー-薬物複合体のGGFG-Dxdが他の抗体とカップリングする場合に沈殿が生じ、ポリマー比率が高く、普遍性がないことを発見した。一方、本技術的解決策におけるリンカー-薬物複合体を異なる抗体とカップリングを試し、沈殿は生じず、且つポリマー比率も正常な範囲にあったことから、本発明で提供されたリンカー-薬物複合体は、より良好な理化学的性質を有していることを表した。
【0218】
効果例1:抗体薬物複合体と抗原との結合能力評価
競合ELISA法を使用してFDA026抗体とリンカー-薬物複合体LE12-LE22とのカップリング前後のHer3抗原に対する結合能力に変化があるか否かを評価し、具体的方法は下記の通りである。100ng/mlのHER3抗原(Sino Biologicalから購入し、商品番号:10201-H8H)を親水性ELISAプレートストリップに100μL/ウェルでコーティングし、3%のBSAで室温で2時間静置してブロックした。33ng/mlのビオチンで標識されたFDA026抗体(DAR-2.82)をそれぞれ一連の最終濃度(100000、10000、1000、400、160、64、3.2及び0.16ng/ml)のFDA026抗体及び実施例3で製造された抗体薬物複合体と1:1で事前混合し、次にHer3抗原でコーティングされたELISAプレートに加え、室温条件で200rpmで1時間水平に振とうし、Pierce(商標) High Sensitivity Streptavidin-HRP、Pre-Diluted酵素結合抗体(Thermo、商品番号:21134)(希釈比1:500)を100μl/ウェルで加え、Sigma社のTMB発色液(Sigma、商品番号:T0440)で25分間発色させた後1mol/LのH2SO4で停止させた。マイクロプレートリーダーの参照波長は650nmで、450nmで吸光度の読み取り値を測定した結果は(表3に示される通りである):FDA026抗体とリンカー-薬物複合体とのカップリング前後の、HER3抗原に対する結合活性に差異がないことを示した。同じ方法を使用して、それぞれ抗体FDA028及びFDA029とリンカー-薬物複合体とのカップリング前後のHer3抗原に対する結合能力に変化があるか否かを評価した結果は(表3に示される通りである):抗体FDA028とFDA029とリンカー-薬物複合体とのカップリング前後の、HER3抗原に対する結合活性に差異がないことを示した。
【0219】
【0220】
効果実施例2:抗体薬物複合体の体外殺傷活性評価
SK-BR-3(ATCC)細胞を体外活性検出に使用する細胞株として選択し、96ウェル細胞培養プレートに2000細胞/ウェルで播種し、20~24時間培養した。実施例3の方法に従って製造した抗体薬物複合体を10%のFBSを含むL15細胞培地で1000、166.7、55.6、18.6、6.17、2.06、0.69、0.23、0.08、0.008及び0nMの11個の濃度勾配の試験品溶液に調製し、希釈した試験品溶液100μl/ウェルを取り、細胞を接種した培養プレートに加え、37℃、5%のCO2インキュベータに入れて144時間培養した後、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay Reagent(50μl/ウェル)を加え、500rpmで室温で10分間振とうして均一に混合し、SpectraMaxLマイクロプレートリーダーで(OD570nm、2s間隔で読み取る)データを読み取り、IC50結果を算出し、結果は表4に示される通りである。
【0221】
上記と同様の方法を使用して、ATCCから購入した22Rv1、LNCaP、SW620、NCI-H820、OVCAR-8及びHCC827の複数の腫瘍細胞に対する各抗体薬物複合体の細胞毒死滅活性を測定し、結果は表4に示される通りである。表4の結果により、本発明で提供される抗体薬物複合体はSK-BR-3、22Rv1、LNCaP、SW620、NCI-H820、OVCAR-8及びHCC827などの細胞のいずれに対しても優れた体外死滅活性を有していることが分かる。
【0222】
【0223】
効果実施例3:抗体薬物複合体における抗体Fc末端突然変異がCD32a受容体を発現する細胞の結合活性及び細胞毒性に及ぼす影響
効果実施例3-1:抗体薬物複合体における抗体Fc末端突然変異がCD32a受容体を発現する細胞の結合活性に及ぼす影響
HTRF法で製造したADCのCD32a発現細胞への結合能力を分析し、HEK293細胞(ATCC)を37℃の水浴中に入れて素早く振とうして細胞を蘇生させ、遠心分離して上清を除去し、更に1.1mLの1× Tag-lite bufferを加えて再懸濁し、10μL/ウェルの細胞で384ウェルプレートに播種し、次に、細胞のウェルに加え、事前に製造したFDA026-LE14、FDA028-LE14及びFDA029-LE14などの抗体薬物複合体試料を勾配希釈濃度(100000、3333.33、1111.11、370.37、123.46、41.15、13.72、4.57及び1.52nM)で5μL/ウェルで384ウェルプレートに加え、最後に上記ウェルプレートにそれぞれ5μLのd2標識免疫グロブリンIgG-d2 conjugateを加え、当該IgG-d2 conjugateはCD32aと結合することができ、室温で暗所で3時間培養すると、FRETシグナルが生成する。上記ADC試料をウェルプレートに加えた後、ADC試料は標識されたIgGと競合してCD32aに結合し、そのFRETシグナルを低下させる。SpectraMax Paradigmマイクロプレートリーダーでデータを読み取り、340nmを励起波長とし、616nmを参照波長とし、665nmを特性発光波長として吸光度を測定し、そのIC50値を計算し、その結果は表5に示される通りである。各抗体薬物複合体とCD32の結合能力は表5に示される通りであり、Fc末端アミノ酸により修飾されたFDA028-LE14及びFDA029-LE14とCD32の結合能力は、未修飾のFDA026-LE14の結合能力(~10%)と比較して弱いことから、Fc末端アミノ酸により修飾された抗体薬物複合体とCD32aの結合が弱いことを示している。
【0224】
【0225】
効果実施例3-2:抗体薬物複合体における抗体Fc末端突然変異がCD32a受容体を発現する細胞の細胞毒性に及ぼす影響
FcγRIIaを陽性発現するK562(ATCC)細胞(注:当該細胞はHer3抗原を発現しない)をin vitro活性検出用の細胞株として選択し、96ウェル細胞培養プレートに5000細胞/ウェルで播種し、16~20時間培養した。上記で製造した抗体薬物複合体FDA026-LE14、FDA028-LE14及びFDA029-LE14を、10%のFBSを含むL15細胞培地で1000、166.7、55.6、18.6、6.17、2.06、0.69、0.23、0.08、0.008及び0nMの合計11個の濃度勾配の試験品溶液に製造し、希釈した試験溶液100μl/ウェルを取り、細胞を接種した培養プレートに加え、37℃、5%のCO2インキュベータで144時間培養した後、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay Reagent(50μl/ウェル)を加え、500rpmで、室温で10分間振とうして、10分間均一に混合させ、SpectraMaxLマイクロプレートリーダー(OD570nm、2s間隔で読み取る)でデータを読み取り、IC50の算出結果は表5に示される通りであり、結果は:Fcにより修飾されていないFDA026-LE14薬物複合体はK562細胞に対していずれも所定の死滅効果を有しているが、Fcにより修飾されたADC薬物FDA028-LE14及びFDA029-LE14はK562細胞に対する死滅効果は有意に低下することを示している。
【0226】
上記K562細胞株と同様の実験方法を使用して、4日間分化させたHSC細胞(stem cell社から購入し、商品番号:70008.1)を選択し、6日間投与して細胞毒性活性検出を実行し、抗体薬物複合体で6日間処理した後、HSC細胞の表面抗原の存在量(即ちbinding ratio、CD32a 7.4;Her3抗原0.8;CD34 69.0)をフロー分析して、そのCD32の発現が高く、Her3抗原がほとんど発現しないことが示され、その活性結果は表6に示される通りであり、Fcにより修飾されていないFDA026-LE14薬物複合体はHSC細胞に対していずれも所定の死滅効果を有しているが、Fcにより修飾されたADC薬物FDA028-LE14及びFDA029-LE14はHSC細胞に対する死滅効果は有意に低下することを示している。
【0227】
【0228】
効果実施例4:in vitro血漿安定性試験
本実施例では、ヒト血漿における実施例3の方法に従って製造された抗体薬物複合体の安定性を評価した。具体的には、本実施例では、実施例3の抗体薬物複合体の一部をヒト血漿に加え、37℃の水浴に1、3、7、14、21、28日間置き、内部標準(イキシノテカンを内部標準物質とする)を入れて抽出し、高速液体クロマトグラフィーにより遊離薬物の放出量を検出し、結果は表7に示される通りである。
【0229】
【0230】
血漿安定性の結果は、新しい技術を用いて得られたADCの安定性がFDA026-1402に劣らず、一部はより優れていることを示し、同時に上記の活性試験の結果も、一部の新たに得られたADCの活性がFDA026-1402より優れていることを証明している。
【0231】
効果実施例5:リンカー-薬物複合体のin vitro酵素切断実験
リンカー-薬物複合体(LE14及びGGFG-Dxd)及びカテプシンBを3つの異なるpH(5.0、6.0、7.0)緩衝液で共培養し、異なる時点でサンプリングして高速液体クロマトグラフィー-質量分析計に入れ、外部標準法(DXDを外部標準とする)により薬物の放出率を確定した。試験結果(表8に示される通りである)は、GGFG-Dxdが使用されるpH範囲においてより遅い消化速度を有する一方で、本発明のLE14は、pH5.0~pH7.0の範囲において迅速に酵素切断できることを示した。
【0232】
【0233】
効果実施例6:FDA026-LS13のin vitro酵素切断実験
実験細胞株としてSK-BR-3細胞株を選択し、試料をカテプシンB系(100mMの酢酸ナトリウム-酢酸緩衝液、4mMのジチオスレイトール、pH5.0)で、37℃で4時間培養後、得られた試料を培地で異なる濃度に希釈して、SN-38濃度70nM~0.003nMで8個の濃度(1.5~10倍希釈)に設定し、細胞株の殺傷(阻害)能力の変化を144時間観察し、CellTiter-Glo(登録商標) LuminescentCellViabilityAssay化学発光染色を使用して、蛍光データを読み取り、IC50数値を計算した。
【0234】
以上のカテプシンB反応系で37℃で4時間培養した酵素切断試料を適量のエタノールで沈殿させて、タンパク質を除去し、高速液体クロマトグラフィーで放出された小分子化合物を検出し、同量のSN-38を基準として、4時間の放出率を測定した結果、99%の放出率を達した。
【0235】
試験結果(表9に示される通りである)は、酵素切断後のFDA026-LS13の細胞毒性活性は等量のSN-38とほぼ同じであることを示し、また、FDA026-LS13がカテプシンBの作用下でSN-38をほぼ完全に放出して効果的に機能したが、FDA026-LS13のリソソームへのエンドサイトーシスにより予測できない変化を引き起こし、SN-38が効果的に機能できない可能性があることを示した。
【0236】
【0237】
効果実施例7:SW620ヒト結腸直腸癌モデルにおけるFDA026-LE14の抗腫瘍活性試験
6~8週齢のメスBalb/c nudeマウスを選択し、100ulのPBS溶液に溶解させた5×106ヒト結腸直腸癌細胞(SW620)を首の右側と背中に皮下注射し、腫瘍が平均体積150~200mm3に成長した後、腫瘍の大きさ及びマウスの体重に応じて無作為に8つの群に分け、各群に6匹の動物とし、それぞれブランク対照群、100mg/kgのイリノテカン塩酸塩群、及び抗体薬物複合体FDA026-1402、FDA028-LE14及びFDA026-LE14をそれぞれ5.0mg/kg及び10.0mg/kgの2つの投与量に分けた群であり、週に1回腹腔内投与した。週2回実験動物の体重と腫瘍の体積を測量し、実験中の動物の生存状態を観察した。結果は表9に示される通りであり、イリノテカン塩酸塩(100mg/kg)治療群は投与終了後の第14日(即ち観察してから46日目、以下同様である)の平均腫瘍体積は1120.09mm3であり、ブランク対照群マウスは投与終了後の平均腫瘍体は2074.5mm3であった。試験薬物5.0mg/kgのFDA026-1402治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は260.87mm3であり、10mg/kgのFDA026-1402治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は0.00mm3であった。試験薬物5.0mg/kgのFDA026-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は13.79mm3であり、10mg/kgのFDA026-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は0.00mm3であった。試験薬物5.0mg/kgのFDA028-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は9.86mm3であり、10mg/kgのFDA028-LE14治療群は投与終了後の第14日の平均腫瘍体積は0.00mm3であった。実験結果は、FDA026-LE14及びA028-LE14がいずれも比較的良好な体内抗腫瘍活性を持っていることを示し、同時にすべての実験マウスは死亡状況がなく、体重減少がなく、FDA026-LE14が非常に良い安全性を持っていることを示した。
【0238】
【0239】
注:0h群は、ブランク対照群であり;02群は、5mg/kgのFDA026-LE14群であり;03群は、10mg/kgのFDA026-LE14群であり;04群は、5mg/kgのFDA026-1402群であり;05群は、10mg/kgのFDA026-1402群であり;06群は、5mg/kgのFDA028-LE14群であり;07群は、10mg/kgのFDA028-LE14群であり;08群は、100mg/kgのイリノテカン塩酸塩群である。
【配列表】