(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】腹腔鏡可撓性吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20240314BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61B17/94
(21)【出願番号】P 2021561801
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 US2019055373
(87)【国際公開番号】W WO2020214204
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-07-11
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523132789
【氏名又は名称】プラットフォーム イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノヴェル、ロバート、エフ.
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03426759(US,A)
【文献】米国特許第06168577(US,B1)
【文献】国際公開第2009/131912(WO,A1)
【文献】特表2005-501667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡手術のための手術装置であって、
内側剛性カニューレの遠位端から前記内側剛性カニューレの近位端まで延伸する第1の通路を有する、細長い実質的に内側の剛性カニューレと、
前記内側剛性カニューレの前記近位端に接続された把手と、
非導電性の外側可撓性カニューレであって、それを貫通して延伸する第2の通路を有し、前記内側剛性カニューレの少なくとも一部は前記外側可撓性カニューレの前記第2の通路内に置かれ、かつ前記第2の通路内で並進可能であり、前記外側可撓性カニューレの内面と前記内側剛性カニューレの外面との間に隙間が存在してそれらの間での流体流を可能にし、前記外側可撓性カニューレはトロカール内に手術部位に向けて配置される、外側可撓性カニューレと、
前記外側可撓性カニューレの近位端に固定接続され、前記内側剛性カニューレの前記外面に、前記外側可撓性カニューレの前記内面を締め付け、解放可能に密閉させるように機能可能な機構を有するクランプ装置であって、前記外側可撓性カニューレの一部が前記内側剛性カニューレの前記遠位端を超えて延伸した状態で、前記内側剛性カニューレの前記外面に対する前記外側可撓性カニューレの前記内面との間の密閉を保証し、かつ形成することに対応して、前記外側可撓性カニューレの前記一部の所定の形状を確立するように機能可能である、クランプ装置と
を備える装置。
【請求項2】
前記内側剛性カニューレの前記第1の通路に連結された真空供給源をさらに備える、請求項1に記載の手術装置。
【請求項3】
前記内側剛性カニューレの前記第1の通路に連結された流体供給源をさらに備える、請求項1または2に記載の手術装置。
【請求項4】
前記外側可撓性カニューレは曲線形状記憶を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の手術装置。
【請求項5】
所定の曲線形状を有する前記外側可撓性カニューレは、前記内側剛性カニューレを受け入れるように弾性的に変形可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の手術装置。
【請求項6】
前記クランプ装置は、前記外側可撓性カニューレの一部が前記内側剛性カニューレの前記遠位端を超えて延伸して、前記外側可撓性カニューレのその一部に所定の曲線形状を形成させるように、前記内側剛性カニューレに前記外側可撓性カニューレを密閉させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の手術装置。
【請求項7】
前記クランプ装置が、前記外側可撓性カニューレの遠位端が前記内側剛性カニューレの前記遠位端を超えて延伸する点において前記内側剛性カニューレに前記外側可撓性カニューレを密閉させることに対応して、前記外側可撓性カニューレは、所定の、前から存在する湾曲形状を形成し、湾曲の度合いは、前記内側剛性カニューレの前記遠位端を超えて延伸する前記外側可撓性カニューレの前記一部の程度に基づく、請求項1から6のいずれか一項に記載の手術装置。
【請求項8】
前記外側可撓性カニューレは、前記内側剛性カニューレに沿って自由に並進する、請求項1から7のいずれか一項に記載の手術装置。
【請求項9】
前記内側剛性カニューレは、前記外側可撓性カニューレと実質的に同一に延伸し、前記外側可撓性カニューレは、前記内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に移動可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年4月18日に出願された米国特許出願第16/388244号に関連し、同出願の利益の優先権を主張し、本明細書において全文が記載されたものとして、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書によって引用される。
[発明の背景]
【0002】
本発明の実施形態は一般に、手術装置に関し、より詳細には、腹腔鏡検査手技において使用される吸引装置に関する。
【背景技術】
【0003】
腹腔鏡手術は最小限に侵襲的な手術であり、鍵穴手術と呼ばれることがあり、手術は体の他の箇所の小さい切開部を介して行われる。腹腔鏡手術中、長い光ファイバケーブルシステムにより、より遠隔であるが容易にアクセスされる場所からケーブルを位置付けすることによって、患部(手術部位)を見ることが可能になる。腹腔鏡手術では、より小さい切開部に起因して、痛みおよび出血が低減される結果となり、回復時間は短い。
【0004】
複数の異なる種類の腹腔鏡手術があるが、それぞれの場合において、処置中の箇所を見る外科医の能力は、流体および破片がない状態を維持しなければならない。処置箇所を容易にするために、生理食塩水がその領域に導入され、次いで吸引によって除去される場合がある。
【0005】
多くの手術器械は、吸引を使用して、たとえば、組織および流体などの物質を手術部位から除去する。組織、骨、および/または他の人体物質を、削る、切る、切除する、研削する、および/または除去するために使用される多くの手術器械は周知であり、吸引機能を含む。そのような手術器械は、切断窓を有する細長い外側チューブ内で回転される細長い内側チューブに配置された回転刃などの切断面を含み得る。内側チューブおよび外側チューブは一緒に、手術用切断器械または器械一式を形成する。一般に、細長い外側チューブは、外側チューブの遠位端の側面に配置された開口部または切断窓を画定する遠位端を含み、開口部または切断窓によって破片が除去され得る。
【0006】
この種類の吸引装置は典型的に、処置箇所へと挿入されて流体を導入または除去する、直線状の剛性のチューブからなる。しかしながら、手術部位の陥凹部に流体が捕捉され、まっすぐのチューブによっては容易にアクセスできない流体のくぼみまたは箇所を残す。流体のこれらのくぼみは、しばしばスポンジによって除去される必要があり、スポンジはそれ自体が次に除去されなければならない。したがって、外科的処置部位内でうまく動かして流体を導入し、除去して、手術部位を見ることおよび処置することを助けることができる、可撓性であり、かつ操縦可能な吸引装置を導入する必要性が存在する。従来技術のこれらおよび他の欠陥は、本発明の1つまたは複数の実施形態によって対処される。
【0007】
本発明の追加の利点および新規の特徴は、部分的には以下の記載において記述されることになり、部分的には以下の明細書を検討すれば当業者には明らかになるか、または本発明の実践によって知ることができる。本発明の利点は、特に添付の請求項中で指摘される手段、組み合わせ、組み立て、および方法を用いて実現され、獲得され得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置では、外側可撓性カニューレに内側剛性カニューレを収納する。外側可撓性カニューレの遠位端を内側剛性カニューレの遠位端を超えて並進させると、外側可撓性カニューレは、前から存在する曲線形状に戻る。この湾曲した延長部はその後、正確かつ効果的な流体引き戻しのために、近位の把手によって手術部位内の陥凹部に対して位置付けすることができる。
【0009】
本発明の可撓性吸引/潅注装置の一実施形態は、細長い実質的に内側の剛性カニューレを含み、当該カニューレは、その遠位端からその近位端まで延伸する第1の通路(内腔)を有する。把手は、内側剛性カニューレの近位端に接続されており、その配置および操作を助ける。本発明は、外側可撓性カニューレをさらに含み、当該カニューレは、それを貫通して延伸する第2の通路(内腔)を有する。内側剛性カニューレの少なくとも一部は、外側可撓性カニューレの通路内に置かれる。別の言い方をすれば、内側剛性カニューレは、外側可撓性カニューレの内腔の内部にある。外側可撓性カニューレの内面と内側剛性カニューレの外側面との間に隙間または空間が存在する。この空間により、外側可撓性カニューレが、内側剛性カニューレに沿って長手方向に/内側剛性カニューレの周りを径方向に並進することが可能になり、それらの間での流体流を可能にする。最後に、本発明は、内側剛性カニューレの近位端に近位である内側剛性カニューレの外面に、外側可撓性カニューレの内面を解放可能に密閉させるように機能可能なクランプ装置を含む。内側剛性カニューレの外面に対して外側可撓性カニューレを密閉すると、内側剛性カニューレと関連付けられた第1の通路に適用される吸引または同様の流体力が、外側可撓性カニューレの遠位端で実現されることになる。
【0010】
本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の他の特徴は、内側剛性カニューレの第1の通路に連結された真空供給源および/または流体供給源を含む。そうすることによって、吸引または潅注は、外側可撓性カニューレの遠位端を介して手術部位に導入され得る。
【0011】
腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の外側可撓性カニューレは、一実施形態において、曲線形状記憶を保有する。曲線形状または形状記憶を有する外側可撓性カニューレは、それが内側剛性カニューレを収納するにしたがい、内側剛性カニューレを受け入れるように弾性的に変形可能である。次いで、内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸する外側可撓性カニューレの一部に対応して、外側可撓性カニューレのその一部は、その元の曲線または湾曲形状に戻る。
【0012】
クランプ装置が解放され、外側可撓性カニューレの内側面と内側剛性カニューレの外側面との間の密閉が解除されると、外側可撓性カニューレは内側剛性カニューレに沿って自由に並進可能となる。本発明の別の実施形態によれば、内側カニューレは、外側カニューレと実質的に同一に延伸し、外側カニューレは、内側カニューレに対して長手方向にかつ径方向に動き可能である。さらに、外側可撓性カニューレは非導電性であり、それによって、任意の望ましくないまたはランダムな放電から内側剛性カニューレを絶縁する。
【0013】
本発明の別の実施形態において、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置を使用する、腹腔鏡手術中の局所的流体注入または除去のための方法は、装置の遠位端を手術部位に近位に位置付けする段階を含む。上に記載されるように、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、細長い実質的に内側の剛性カニューレを含み、当該カニューレは、その遠位端からその近位端まで延伸する第1の通路または内腔を有する。装置は、外側可撓性カニューレをさらに含み、当該カニューレは、それを貫通して延伸する第2の通路または内腔を有する。内側剛性カニューレの少なくとも一部は、外側可撓性カニューレの第2の通路(内腔)内に置かれる。さらに、外側可撓性カニューレの内面と内側剛性カニューレの外側面との間に、それらの間での流体流を可能にするように機能可能な隙間または空間が存在する。
【0014】
局所的流体注入および除去のための方法は、外側可撓性カニューレの遠位端が内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸するように、外側可撓性カニューレを内側剛性カニューレに沿って摺動(並進)させる段階によって続行する。内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸する外側可撓性カニューレの遠位端に対応して、プロセスは、内側剛性カニューレの近位端に近位である内側剛性カニューレの外面に、外側可撓性カニューレの内面を解放可能に密閉させる段階によって続行する。そして、手術部位における流体を除去または潅注するために、内側剛性カニューレの第1の通路の近位端に流体力が適用され、流体力は外側可撓性カニューレの遠位端で実現される。
【0015】
外側可撓性カニューレの一部が、内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸する場合、外側可撓性物のその一部は元の曲線形状に戻る。この形状は、手術部位における到達するのが困難な陥凹部に到達することにおいて助けとなる。上に記載される方法は、内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸する可撓性外側カニューレの一部を、その前から存在する湾曲状態に復元する段階を含む。内側剛性カニューレが、外側カニューレと実質的に同一に延伸する一方、外側可撓性カニューレが、内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に動き可能であることを思い出されたい。
【0016】
外側可撓性カニューレが前から存在する湾曲形状を保有する一方で、本発明の方法論では、内側剛性カニューレおよび外側可撓性カニューレが同一に延伸する場合、内側剛性カニューレに一致するように、外側可撓性カニューレを弾性的に変形させる。そして、内側剛性カニューレの近位端に流体力を適用すると、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、手術部位から流体を除去する(吸引力を適用することによって)、および/または流体を手術部位に注入する(潅注力の適用の際に)。
【0017】
本開示において、および以下の詳細な説明において記載される特徴および利点は、包括的ではない。多くの追加の特徴および利点が、本明細書の図面、明細書、および特許請求の範囲を考慮すると、当業者に明らかとなろう。さらに、明細書において使用される言葉は、主として可読性および教授の目的で選択されており、発明の主題を正確に描写するためにも、または限界を定めるためにも選択されていない場合があり、そのような発明の主題を特定するためには、特許請求の範囲への参照が必要であることに留意されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
1つまたは複数の実施形態の以下の記載が参照され、添付の図面と併せて解釈されることにより、本発明の前述のおよび他の特徴および目的、ならびにそれらを獲得する仕方がより明らかとなり、本発明自体が最もよく理解されるであろう。
【0019】
【
図1】外側可撓性カニューレが後退された、本発明の一実施形態による腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置を示す。
【0020】
【
図2】外側可撓性カニューレが内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸された、本発明の一実施形態による腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置を示す。
【0021】
【
図3】本発明の一実施形態による腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置およびその関連付けられたクランプ装置の切り欠き図を示す。
【0022】
【
図4】本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置がそれによって流体を取り込むことができる側面開口部を有する、外側可撓性カニューレの遠位端の一実施形態の斜視図を示す。
【0023】
【
図5】本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置がそれによって流体を取り込むことができる単一の開口部を遠位端に有する外側可撓性カニューレの別の実施形態の斜視図を示す。
【0024】
【
図6】内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸され、それにより外側可撓性カニューレが曲線形状を示す、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の外側可撓性カニューレの側面図を示す。
【0025】
【
図7】本発明の一実施形態による腹腔鏡可撓性吸引/潅注システムの高水準図である。
【0026】
【
図8】本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置のための方法論の一実施形態のためのフローチャートである。
【0027】
図面は、例示目的のためだけに本発明の実施形態を描写する。以下の考察から、本明細書において例示される構造および方法の代替の実施形態が、本明細書に記載される本発明の原理から逸脱することなく用いられてもよいことが、当業者には容易に認識されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
手術部位内の位置の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、離散的で局所的な、流体の吸い出しおよび潅注を提供する。本発明により、手術要員に手術部位を迅速にかつ効率的に吸い出し、潅注する能力を与える、可撓性曲線カニューレが腹腔鏡手術環境に導入される。内側剛性カニューレは外側可撓性カニューレによって周囲を囲まれている。組み合わされた剛性/可撓性カニューレは、腹腔鏡トロカールを介して手術部位内に位置付けされる。手術部位に近位になると、内側剛性カニューレは部分的に引っ込んで、外側可撓性カニューレがその平常の曲線形状に戻ることを可能にする。外側可撓性カニューレの近位端におけるクランプは、内側カニューレと外側カニューレとの間の流体密閉を提供し、内側剛性カニューレを通って伝達される流体力(吸引または潅注)が、外側可撓性カニューレの遠位端で表現されるようになる。
【0029】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、ある程度の詳しさをもって説明および例示されてきたが、本開示は例としてのみ行われていること、ならびに部分の組み合わせおよび配置における数多くの変更が、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、当業者によって用いられ得ることが理解される。
【0030】
添付の図面を参照した以下の記載は、特許請求の範囲およびその均等物によって定義されるように、本発明の例示的な実施形態を包括的に理解することを助けるために提供される。これは、その理解を助けるための様々な具体的な詳細を含むが、これらは単に例示的であると考えられるべきである。したがって、当業者には、本明細書に記載される実施形態の様々な変更および修正が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行われ得ることが認識されるであろう。また、周知の機能および構造の記載は明確さおよび簡潔のために省略される。
【0031】
以下の記載および特許請求の範囲において使用される用語および単語は、文献的な意味に限定されないが、単に、本発明の明確で首尾一貫した理解を可能にするために、本発明者によって使用される。したがって、本発明の例示的な実施形態の以下の記載は、例示目的のためだけに提供され、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義されるように本発明を限定する目的ではないことが当業者には明らかであるべきである。
【0032】
「実質的に」という用語によって、説明される特徴、パラメータ、または値は厳密に達成される必要はないこと、しかし、たとえば、公差、測定誤差、測定精度の限界、および当業者に公知の他の因子を含む、ふれまたはばらつきが、特徴が提供することが意図されている効果を排除しない量で生じる場合があることが意味される。
【0033】
全体を通して、同様の数字は、同様の要素を指す。図面において、ある特定の線、層、コンポーネント、要素、または特徴のサイズは、明確さのために誇張されている場合がある。
【0034】
本明細書で使用される術語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであり、本発明を限定することは意図されていない。本明細書で用いられるように、文脈において明確に別段の指示がない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことが意図される。したがって、たとえば、「acomponentsurface(コンポーネント表面)」への言及は、そのような表面のうちの1つまたは複数を含む。
【0035】
本明細書で用いられるように、「一実施形態」または「ある実施形態」への任意の言及は、その実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書における様々な箇所における語句「一実施形態において」が現れても、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0036】
本明細書で用いられるように、「含む」(comprises)、「含む」(comprising)、「含む」(includes)、「含む」(including)、「有する」(has)、「有する」(having)という用語、または他の任意の変化形は、非排他的な包含を扱うことが意図される。たとえば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または器具は、それらの要素のみに必ずしも限定されないが、明白に列挙されない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または器具に本来備わる他の要素を含んでもよい。さらに、その逆が明白に述べられない限り、「または」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはを指すものではない。たとえば、条件AまたはBは、以下、Aは真である(または存在する)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽である(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、およびAとBの両方は真である(または存在する)のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0037】
別段に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義されるものなどの用語は、本明細書および関連する技術分野の文脈におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書において明白にそのように定義されていない限り、理想化された、または過度に形式的な意味において解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。周知の機能または構造は、簡潔および/または明確さのために詳細に記載されない場合がある。
【0038】
要素が別の要素の「上に」ある、に「取り付けられた」、に「接続された」、と「連結された」、「接触している」、「組み付けられた」などと呼ばれる場合、それは、直接的に別の要素の上にあり、に取り付けられており、に接続されており、と連結されており、もしくは接触していることであり得、または介在する要素が存在する場合もあることも理解されるであろう。それに対して、要素が別の要素に、たとえば、「直接上に」ある、に「直接取り付けられた」、に「直接接続された」、と「直接連結された」、または「直接接触している」と呼ばれる場合、介在する要素は存在しない。別の特徴に「隣接して」配置されたある構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重なるか、またはその下になる部分を有する場合があることも当業者によって認識されるであろう。
【0039】
たとえば、「下に」、「下方に」、「より低い」、「上方に」、および「上に」などの、空間的関係を示す用語は、図面において例示されるような、ある要素または特徴の、別の要素または特徴に対する関係を説明するための説明のしやすさのために、本明細書において使用される場合がある。空間的関係を示す用語は、図面に描写される向きに加えて、使用または操作中の装置の種々の向きを包含することを意図するものであることが理解されるであろう。たとえば、図面における装置が逆向きである場合、他の要素または特徴の「下に」または「真下に」と記載される要素は、その場合、他の要素または特徴の「上方に」向けられることになる。したがって、「下に」という例示的な用語は、「上方に」および「下に」の両方の向きを包含し得る。装置は別のように向けられる場合があり(90度または他の向きに回転された)、本明細書で使用される空間的関係を示す記述子は、それに応じて解釈される。同様に、「上方向に」、「下方向に」、「垂直の」、および「水平の」などの用語は、具体的に別段の指示がない限り、説明の目的でのみ本明細書で使用される。
【0040】
記載に含まれるのは、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置と関連付けられた方法論の例を描写するフローチャートである。フローチャート図のブロックは、特定の機能を実施するための手段の組み合わせ、および特定の機能を実施するためのステップの組み合わせを支援することが理解されるべきである。フローチャート図の各ブロック、およびフローチャート図中のブロックの組み合わせは、特定の機能もしくはステップを実施する特殊目的のハードウェアシステム、または特殊目的のハードウェアシステムとコンピュータ命令の組み合わせによって、実行され得ることも理解されるであろう。
【0041】
本開示を読めば、当業者は、本明細書において開示される原理によって、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置およびその関連付けられた方法論のために、さらに追加の代替的な構造および機能設計が企図されることを認識するであろう。したがって、実施形態および応用が例示され、記載されている一方で、開示される実施形態は、本明細書で開示される厳密な構造およびコンポーネントに限定されないことが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲において定義される趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に明らかとなるであろう様々な修正および変形は、本明細書で開示される方法および器具の配置、実施、および詳細において行われ得る。
【0042】
図1は、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の一実施形態を示す。内側剛性カニューレ101は外側可撓性カニューレ102内に挿入されている。外側可撓性カニューレ102は、外側可撓性カニューレの内面120と内側剛性カニューレの外側面130との間に隙間(空間)110が存在するような寸法にされている。したがって、外側可撓性カニューレ102は、内側剛性カニューレ101の長手方向長さに沿って自由に並進することができ、それらの間での流体流を可能にする。一実施形態において、既存の吸引/ハイドロディセクション先端部を含んでもよい内側剛性カニューレ101は、流体力を適用することができる第1の通路を含む。外側可撓性カニューレ102の近位端140は、クランプ装置145に固定連結されている。外側カニューレと内側カニューレとの間の望ましい位置的関係が選択されると、クランプ装置145は、内側剛性カニューレ101に外側可撓性カニューレ102を密閉させ、外側可撓性カニューレ102の内面120と内側剛性カニューレ101の外側面130との間の流体流を止め、それによって、流体力は、内側剛性カニューレ101の遠位端150に、かつ、外側可撓性カニューレ102が内側剛性カニューレ102の遠位端150を超えて延伸する程度まで外側可撓性カニューレ102の遠位端160に、方向づけられる。
【0043】
図1において示されるように、外側可撓性カニューレ102の遠位端160および内側剛性カニューレ101の遠位端150は共存している。この構成において、クランプ装置145が内側剛性カニューレ101に外側可撓性カニューレ102を密閉させると、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、従来の腹腔鏡吸引/潅注装置として動作する。腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、手術部位内に位置付けされて、より良好な可視化を外科医に提供することができる。
【0044】
図2をさらに参照すると、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の内側剛性カニューレ101が引っ込められて210、外側可撓性カニューレ102が、それに固有のまたは所定の曲線形状220に戻ることを可能にすることが示される。外側可撓性カニューレ102の遠位端160が望ましい湾曲の程度に達すると、クランプ装置145はもう一度係合され、流体力が第1の通路に適用される。ここで外側可撓性カニューレ102の内側面120と内側カニューレ101の外側面130との間に密閉が存在するため、外側可撓性カニューレ102と関連付けられた第2の通路の遠位端に流体力が伝達される。外側可撓性カニューレ102の湾曲した遠位端160により、手術スタッフは、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置を解剖学的構造の周辺で凹形の箇所へと位置付けすることができる。遠位端160により、作業部位での他のロボット器械類との衝突を回避し、可視化およびまとまりのある作業環境を提供することを助けることもできる。標準的な腹腔鏡器械を動かして剛性吸引/潅注装置を手術部位へと受け入れる代わりに、本発明では、必要とされる遠隔の箇所に外側可撓性カニューレ102の遠位端160を配して、部位を吸い出す/潅注することができる。本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置のそのような可撓性、および同時的な使用により、手術チームはより効率的に作業することができる。たとえば、外科医は通常、標準的な腹腔鏡装置を手術部位で作動させる。その相互作用の結果は、外科医の可視化を覆い隠す破片を必然的に形成する。可視化を回復するために、外科医は通常、これらの器具を引き抜き、それらを剛性のチューブに固定された腹腔鏡吸引またはハイドロディセクション先端部と取り替える。しかしながら、チューブの遠位端の剛性の性質は効果的ではないことが多い。本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は手術用器具を手術部位にとどまらせながら、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は可視化を回復することができる。
【0045】
腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の外側可撓性カニューレ102は、一実施形態において、固有の曲線特性を保有する。内側剛性カニューレ101が外側可撓性カニューレ102の通路へと挿入されると、外側可撓性カニューレ102は弾性的に変形される。内側剛性カニューレ101が除去210されると、外側可撓性カニューレ102は、その平常の湾曲した形状220を取り戻す。
図2において描写されるように、内側剛性カニューレは引っ込められており210、外側可撓性カニューレ102が、約45度の遠位端の偏向230と一致した形状に戻ることを可能にする。一実施形態において、外側可撓性カニューレ102の遠位端160は、その位置付けを助けるための基準マーカ240を含み得る。内側剛性カニューレ101がさらに引っ込められる210にしたがって、外側可撓性カニューレ102は湾曲し続ける。本発明の一実施形態において、外側可撓性カニューレ102の遠位端160は、内側剛性カニューレの遠位端に対して90度の偏向を達成することができる。外側可撓性カニューレ102の湾曲した性質は、成形型、温度硬化、または湾曲作用を達成するための他の任意の製造プロセスによって、装置チューブの遠位端150を弾性的に事前曲げすることによって達成することができる。
【0046】
図3は、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の切り欠き側面図を示す。クランプ装置145は、外側可撓性カニューレ102の近位端310に固定接続されている。内側剛性カニューレ101は、それを通る第1の通路320を有し、外側可撓性カニューレ102と関連付けられた第2の通路330内に位置付けされる。開放され、クランプ固定をゆるめた位置において、内側剛性カニューレ101は、外側可撓性カニューレ102の第2の通路330内で自由に並進される。クランプ装置に連結されたレバーは、クランプ装置145を外側可撓性カニューレ102の円周の周囲に締め付けて、外側可撓性カニューレ102の内側面120と内側剛性カニューレ101の外側面130との間に密閉を形成する。流体密閉が正しい位置にあると、内側剛性カニューレの通路を通る流体力の適用は、外側可撓性カニューレの遠位端に伝達される。
【0047】
外側可撓性カニューレ102の遠位端160は、補強通路420、上部孔またはポート孔410(
図4および
図5に示される)を有して、吸引解放を可能にすることができ、かつ内側剛性カニューレの先端部に適用される場合、流体を分散させることができる。本発明の外側可撓性カニューレ102は、一実施形態において、医療グレードのチューブから形成される。医療用チューブは、流体管理および排液のために、ならびに麻酔および呼吸設備、IV、カテーテル、せん動ポンプ、および生物学的製剤実験設備とともに、使用される。本発明とともに使用するために適切な医療用チューブを構築するために使用される幅広い範囲の材料がある。当業者によって認識されるように、外側可撓性カニューレにおいて使用される材料の種類は、耐摩耗性、硬度、可撓性、および耐久性などの重要な性能特性を決定する。外側可撓性カニューレの最小曲げ半径は、外側可撓性カニューレが、内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸される場合、または内側剛性カニューレをおおって位置付けされる場合、ねじれることも恒久的に変形することもないように選択される。さらに、外側可撓性カニューレの圧力定格および真空定格は、その構築において使用される材料のグレードおよび仕様の選択において考慮される。外側可撓性カニューレの構築において使用するために適切な材料は、エチレンプロピレン(EP)、フルオロ-エラストマー(FKM)、イソブチレンイソプレンブチル(IIR)、イソプレン(IR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリクロロプレン(CR)、ポリウレタン(PU)、シリコーンゴム、およびスチレン-ブタジエン(SBR)などを含み得る。
【0048】
本発明の外側可撓性カニューレの別の特徴は、その絶縁特性である。腹腔鏡手術中、様々な設備および手術装置の存在により、手術部位で放電される電気アークが生じ得る。外科医が活動性の出血を制御しているか、または電気焼灼器で切開を行っている場合、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、電気焼灼器に対してより近くで活発に使用することができるため、当該装置を使用して、より良好な可視化、より良好な結果を提供し、より安全な手技をもたらすことができる。実際、焼灼装置はそのような技術を用いて手術部位での出血を制御する。そのような放電は、制御されない場合、有害であり得る。装置が正しい位置に置かれないと、従来技術において現在使用されている金属製吸引/ハイドロディセクション先端部は、電気焼灼器の近くで使用される場合、アーク放電を引き起こすことになり、金属の導電性のために、漂遊エネルギが内臓または隣接する組織を損傷するおそれがある。本発明の外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレを絶縁し、いかなるアーク放電の危険も実質的に低減するか、または排除さえする。
【0049】
本発明の別の実施形態において、外側可撓性カニューレの遠位端は、可撓性チューブの通路に沿って、かつ剛性装置の外形に沿って配される1つまたは複数のコードまたはケーブルによって湾曲されるように構成され得る。本発明のこの実施形態において、かつ
図6において示されるように、ケーブルまたはコード610は、外側可撓性カニューレ102の遠位端160において、それが内側剛性カニューレの吸引/ハイドロディセクション先端部を超えて延伸された後、作動される。コードは、チューブの可撓性部分のセクタを圧縮状態にする。可撓性チューブの一四分円弧またはセクタが圧縮状態にあり、剛性装置によって支持されていないため、剛性装置を超えて延伸するチューブの一部は偏向することになる。他の実施形態において、複数のコードを使用して、偏向の量および方向を制御することができる。
【0050】
本発明はまた、装置の遠位端に沿って長手方向に1つの側面に配された磁性材料を含み得、磁性材料は、チューブを湾曲させる電磁エネルギを適用することによって作動され得、これは、磁性材料が側面を引き寄せ、収縮させて遠位端を湾曲させるためである。外側可撓性カニューレが湾曲することを可能にし、制御する他の特徴が企図され、本発明の範囲内であると考えられるべきである。
【0051】
図7は、本発明の一実施形態による腹腔鏡可撓性吸引/潅注システム700の高水準図を示す。本明細書に記載される腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、トロカールへと挿入される。トロカールは、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置を含む、把持器、剪刀、吻合器などの、後に続く他の器械の配置のためのポータルとして機能する。トロカールは、大きい切開部を開けることによって従来より行われていた手術(「観血」手術)を行うためのカメラおよび腹腔鏡下手動器械の導入の手段として使用される。腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の内側剛性カニューレの遠位端に連結されているのは、選択可能弁710である。弁は、吸引720または真空供給源および流体供給源730を接続する。周知であり、本明細書で論じられるように、腹腔鏡手術では、手術部位の破片および流体を除去して可視化を助ける必要がある。逆の言い方をすれば、従来の切断器具の代替物としてハイドロディセクション(切断器具として高圧流体を使用する)も、外科医によって使用することができる。
図7に示されるシステムの他のコンポーネントは、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の利用を助けるためのレギュレータおよび手動/足踏み制御部を含み得る。
【0052】
図8は、本発明と一貫した、腹腔鏡手術において可撓性吸引/潅注装置を使用するための1つの方法論を描写するフローチャートを示す。実践において、本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は、すべてがトロカールを介して手術部位に近位に導入される、他の腹腔鏡器具と併せて使用される。これらの実施方法論は、当分野内で公知であり、本明細書に照らせば、本発明の文脈内でのそれらの応用は、当業者に容易に明らかとなるであろう。トロカールへの導入に先立って、先の図面において示されるように、外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレの遠位先端部を覆って配される。次いで、装置は完全に据えられ、先端部上にクランプ装置によってロック固定される(密閉される)。この点において、内側剛性カニューレの遠位端および外側可撓性カニューレは実質的に共存している。次いで、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の先端部は、腹腔鏡手術トロカールの内腔を通して手術部位の近位に、たとえば、腹腔鏡手術を受けている患者の腹腔に挿入される。装置は、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の近位端上の把手740によって、腹腔鏡手技が行われることを容易にするために吸引または潅注が適用される必要がある、患者の内部にある遠位端である、位置に方向づけられる810。
【0053】
本発明の装置は、この構成において、手技の間使用されている構造物または別の装置の周辺の箇所に、吸引または潅注を適用する必要があるときまで、後退位置「直線状」において使用することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置の使用のための方法論は、近位端にあるクランプ装置をロック解除し、内側剛性カニューレを後退させることによって開始される805。実際上、内側剛性カニューレを後退させることにより、可撓性カニューレの遠位端が内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸するように、外側可撓性カニューレは内側剛性カニューレに沿って摺動される820。その時点で、内側剛性カニューレの近位端において、外側可撓性カニューレは内側剛性カニューレにクランプ固定される(解放可能に密閉される)840。外側可撓性カニューレの一部は、内側剛性カニューレによってもはや弾性的に変形されておらず、内側剛性カニューレから離れており、その曲線形状に戻る。
【0055】
その後、外側可撓性カニューレの先端部は、別の方法では直線状の非可撓性の構成では到達できない手術部位における箇所に、解剖学的構造の周辺に位置付けされて、効果的な流体の吸い出しを容易にする。一旦位置付けされると、外側可撓性カニューレへの流体力(吸引)が、内側剛性カニューレを介して適用される860。吸い出しが完了すると、流体力は除去され、次いで、装置はロック解除され、位置変更され、プロセスが終了する895。代替的には、内側剛性カニューレが延伸されて、外側可撓性カニューレと再び共存して、その後、剛性の切除、引き戻し、吸引、または潅注のために直線状で使用することができる。プロセスは、湾曲した遠位端の機能の恩恵を達成するために、必要に応じて、手技中、任意の時間で実施され得る。
【0056】
本発明は、ある程度の詳しさをもって説明および例示されてきたが、本開示は例としてのみ行われていること、ならびに部分の組み合わせおよび配置における数多くの変更が、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、当業者によって用いられ得ることが理解される。
【0057】
本発明の腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置および関連付けられる方法論により、外科医およびそのスタッフは、他の腹腔鏡器械の除去および位置変更をすることなく、手術部位におけるくぼんだ、陥凹部、および到達が困難な領域から、流体および破片を効果的に除去することができる。単にクランプ固定をゆるめ、内側剛性カニューレに対する外側可撓性カニューレとの間の関係を位置変更することによって、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は湾曲したカニューレを導入し、当該カニューレによって吸引または潅注が適用され得る。完了すると、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置は再構成され、さらに手術部位における異なる場所に適用され得る。本発明は、手術部位の可視化を大幅に増大させ、危険性を低減しながら腹腔鏡手技をより効率的にする。
【0058】
一実施形態において、本発明の腹腔鏡手術装置の特徴は、
・内側剛性カニューレの遠位端から内側剛性カニューレの近位端まで延伸する第1の通路を有する、細長い実質的に内側の剛性カニューレと、
・内側剛性カニューレの近位端に接続された把手と、
・外側可撓性カニューレであって、それを貫通して延伸する第2の通路を有し、内側剛性カニューレの少なくとも一部は外側可撓性カニューレの第2の通路内に置かれ、外側可撓性カニューレの内面と内側剛性カニューレの外側面との間に隙間が存在してそれらの間での流体流を可能にする、外側可撓性カニューレと、
・内側剛性カニューレの近位端に近位である内側剛性カニューレの外側面に、外側可撓性カニューレの内面を解放可能に密閉させるように機能可能なクランプ装置と
を含み得る。
【0059】
そのような装置の他の態様は、
・内側剛性カニューレの第1の通路に連結された真空供給源と、
・内側剛性カニューレの第1の通路に連結された流体供給源と
を含み得、
・外側可撓性カニューレは曲線形状記憶を含み、
・曲線形状を有する外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレを受け入れるように弾性的に変形可能であり、
・外側可撓性カニューレの一部が内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸することに対応して、外側可撓性カニューレのその一部は元の曲線形状に戻り、
・外側可撓性カニューレが内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸することに対応して、外側可撓性カニューレは前から存在する湾曲形状に戻り、
・外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレに沿って自由に並進し、
・内側剛性カニューレは、外側可撓性カニューレと実質的に同一に延伸し、外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に動き可能であり、
・外側可撓性カニューレは非導電性である。
【0060】
本発明の一態様は、腹腔鏡手術中の局所的流体注入または除去のための手術装置を使用する方法である。そのような方法の一バージョンは、
・手術部位に近位に手術装置を位置付けするステップであって、手術装置は、内側剛性カニューレの遠位端から内側剛性カニューレの近位端まで延伸する第1の通路を有する、細長い実質的に内側の剛性カニューレと、外側可撓性カニューレであって、それを貫通して延伸する第2の通路を有し、内側剛性カニューレの少なくとも一部は外側可撓性カニューレの第2の通路内に置かれ、外側可撓性カニューレの内面と内側剛性カニューレの外側面との間に、それらの間での流体流を可能にするように機能可能な隙間が存在する、外側可撓性カニューレとを含む、ステップと、
・外側可撓性カニューレの遠位端が内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸するように、外側可撓性カニューレを内側剛性カニューレに沿って摺動させるステップと、
・内側剛性カニューレの近位端に近位である内側剛性カニューレの外側面に、外側可撓性カニューレの内面を解放可能に密閉させるステップと、
・第1の通路に流体力を適用するステップと
を含み得る。
【0061】
そのような方法論の追加の特徴は、
・外側可撓性カニューレの一部が内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸することに対応して、外側可撓性物のその一部は元の曲線形状に戻り、
・内側剛性カニューレの遠位端を超えて延伸する外側可撓性カニューレの一部を、前から存在する湾曲状態に復元する段階と、
・外側可撓性カニューレと実質的に同一に延伸した内側剛性カニューレを位置付けする段階であって、外側可撓性カニューレは、内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に動き可能である、段階と、
・内側剛性カニューレに一致するように、外側可撓性カニューレを弾性的に変形させる段階と、
・外側可撓性カニューレを、内側剛性カニューレに沿って自由に並進させる段階と
を含み得、
・流体力は手術部位から流体を除去し、
・流体力は手術部位に流体を注入する。
【0062】
本発明の原理が、腹腔鏡可撓性吸引/潅注装置およびその関連付けられた方法論と併せて上に述べられてきたが、前述の説明は例としてのみ行われており、本発明の範囲に対する限定としてではないことが明確に理解されるべきである。特に、前述の開示の教示により、当業者に対して他の修正が示唆されるであろうことが認識される。そのような修正は、それ自体すでに公知であり、かつ、すでに本明細書に記載された特徴の代わりに、またはそれに加えて使用され得る、他の特徴を包含する場合がある。本出願において、特許請求の範囲が、特徴の特定の組み合わせに対して作成されてきたが、本明細書における本開示の範囲はまた、明示的にまたは暗黙的に開示される、任意の新規な特徴もしくは特徴の任意の新規な組み合わせ、または当業者に明白であろうそれらの任意の一般化もしくは修正を含むことが理解されるべきであり、これは、そのようなものが、任意の請求項において本明細書で特許請求されるのと同じ発明に関するかどうか、ならびにそれが、本発明が直面するものと同じ技術的問題のうちの任意のまたはすべてを緩和するかどうかに関わらない。出願人は、本出願、またはそれから派生する任意のさらなる出願の手続処理の間、そのような特徴および/またはそのような特徴の組み合わせに対する新たな請求項を作成する権利をここに留保する。
(項目1)
手術装置であって、
内側剛性カニューレの遠位端から上記内側剛性カニューレの近位端まで延伸する第1の通路を有する、細長い実質的に内側の剛性カニューレと、
上記内側剛性カニューレの上記近位端に接続された把手と、
外側可撓性カニューレであって、それを貫通して延伸する第2の通路を有し、上記内側剛性カニューレの少なくとも一部は上記外側可撓性カニューレの上記第2の通路内に置かれ、上記外側可撓性カニューレの内面と上記内側剛性カニューレの外面との間に隙間が存在してそれらの間での流体流を可能にする、外側可撓性カニューレと、
上記内側剛性カニューレの上記近位端に近位である上記内側剛性カニューレの上記外面に、上記外側可撓性カニューレの上記内面を解放可能に密閉させるように機能可能なクランプ装置と
を備える装置。
(項目2)
上記内側剛性カニューレの上記第1の通路に連結された真空供給源をさらに含む、項目1に記載の手術装置。
(項目3)
上記内側剛性カニューレの上記第1の通路に連結された流体供給源をさらに備える、項目1に記載の手術装置。
(項目4)
上記外側可撓性カニューレは曲線形状記憶を含む、項目1に記載の手術装置。
(項目5)
曲線形状を有する上記外側可撓性カニューレは、上記内側剛性カニューレを受け入れるように弾性的に変形可能である、項目1に記載の手術装置。
(項目6)
上記外側可撓性カニューレの一部が上記内側剛性カニューレの上記遠位端を超えて延伸することに対応して、上記外側可撓性カニューレのその一部は元の曲線形状に戻る、項目1に記載の手術装置。
(項目7)
上記外側可撓性カニューレが上記内側剛性カニューレの上記遠位端を超えて延伸することに対応して、上記外側可撓性カニューレは前から存在する湾曲形状に戻る、項目1に記載の手術装置。
(項目8)
上記外側可撓性カニューレは、上記内側剛性カニューレに沿って自由に並進する、項目1に記載の手術装置。
(項目9)
上記内側剛性カニューレは、上記外側可撓性カニューレと実質的に同一に延伸し、上記外側可撓性カニューレは、上記内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に移動可能である、項目1に記載の手術装置。
(項目10)
上記外側可撓性カニューレは非導電性である、項目1に記載の手術装置。
(項目11)
腹腔鏡手術中の局所的流体注入または除去のための手術装置を使用する方法であって、
手術部位に近位に上記手術装置を位置付けする段階であって、上記手術装置は、内側剛性カニューレの遠位端から上記内側剛性カニューレの近位端まで延伸する第1の通路を有する、細長い実質的に内側の剛性カニューレと、外側可撓性カニューレであって、それを貫通して延伸する第2の通路を有し、上記内側剛性カニューレの少なくとも一部は上記外側可撓性カニューレの上記第2の通路内に置かれ、上記外側可撓性カニューレの内面と上記内側剛性カニューレの外側面との間に、それらの間での流体流を可能にするように機能可能な隙間が存在する、外側可撓性カニューレとを含む、段階と、
上記外側可撓性カニューレの遠位端が上記内側剛性カニューレの上記遠位端を超えて延伸するように、外側可撓性カニューレを上記内側剛性カニューレに沿って摺動させる段階と、
上記内側剛性カニューレの上記近位端に近位である上記内側剛性カニューレの上記外側面に、上記外側可撓性カニューレの上記内面を解放可能に密閉させる段階と、
上記第1の通路に流体力を適用する段階と
を備える方法。
(項目12)
上記外側可撓性カニューレの一部が上記内側剛性カニューレの上記遠位端を超えて延伸することに対応して、上記外側可撓性カニューレのその一部は元の曲線形状に戻る、項目11に記載の手術装置を使用する方法。
(項目13)
上記内側剛性カニューレの上記遠位端を超えて延伸する上記外側可撓性カニューレの上記一部を、前から存在する湾曲状態に復元する段階をさらに備える、項目12に記載の手術装置を使用する方法。
(項目14)
上記外側可撓性カニューレと実質的に同一に延伸した上記内側剛性カニューレを位置付けする段階であって、上記外側可撓性カニューレは、上記内側剛性カニューレに対して長手方向にかつ径方向に移動可能である、段階をさらに含む、項目11に記載の手術装置を使用する方法。
(項目15)
上記内側剛性カニューレに一致するように、上記外側可撓性カニューレを弾性的に変形させる段階をさらに備える、項目11に記載の手術装置を使用する方法。
(項目16)
上記外側可撓性カニューレを、上記内側剛性カニューレに沿って自由に並進させる段階をさらに備える、項目11に記載の手術装置を使用する方法。
(項目17)
上記流体力は上記手術部位から流体を除去する、項目11に記載の手術装置を使用する方法。
(項目18)
上記流体力は上記手術部位に流体を注入する、項目11に記載の手術装置を使用する方法。