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特許7454117ヘッドレストとそれを用いた車両用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ヘッドレストとそれを用いた車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/879 20180101AFI20240314BHJP
   B60N 2/894 20180101ALI20240314BHJP
   B60N 2/803 20180101ALI20240314BHJP
【FI】
B60N2/879
B60N2/894
B60N2/803
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021188150
(22)【出願日】2021-11-18
(62)【分割の表示】P 2020072480の分割
【原出願日】2012-09-24
(65)【公開番号】P2022010402
(43)【公開日】2022-01-14
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2011208309
(32)【優先日】2011-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓也
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042791(WO,A1)
【文献】特開2010-201848(JP,A)
【文献】特開2010-194246(JP,A)
【文献】特開2008-296732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0211151(US,A1)
【文献】特開2010-228493(JP,A)
【文献】特開平10-226255(JP,A)
【文献】特表2008-544179(JP,A)
【文献】特開2007-029600(JP,A)
【文献】特開2004-245314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/879
B60N 2/894
B60N 2/803
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレスト(4)のクッション材(13)の内部に重錘(22)を設けるとともに、その重錘(22)を支持する弾性部材(21)を設け、
前記ヘッドレスト(4)は、シートバック(3)のシートバックフレーム(10)上端部に固設される左右一対の支持筒(11)に昇降及び固定可能に支持される左右一対のフレーム下部(15a)と、このフレーム下部(15a)の上端から前方に屈曲して上方に延びる左右一対のフレーム上部(15b)とを備えたヘッドレストフレーム(12)を有し、
前記重錘(22)の重心(G)は、側面視で前記ヘッドレストフレーム(12)の前端より後方に位置し、
前記重錘(22)の前端は、前記支持筒(11)の延長軸線(Y)よりも、側面視で前側に位置し、
前記重錘(22)を内部に収める前記弾性部材(21)は、前記重錘(22)から左右方向の荷重を受けるときのばね定数と、前後方向の荷重を受けるときのばね定数とが相違するように形成されることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレストにおいて、
前記フレーム上部(15b)は、前記フレーム下部(15a)の上端から前方に屈曲して斜め上方に延びることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項3】
請求項1または2記載のヘッドレストにおいて、
前記重錘(22)の重心(G)は、前記ヘッドレスト(4)の上下方向中心(S1)より上方にくるように配置されていることを特徴とすることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のヘッドレストにおいて、
前記ヘッドレストフレーム(12)の左右一対のフレーム上部(15b)は、それらの上端間を一体に連結する連結部(16)を有し、
車両の床(F)の法線方向を上下方向とするとき、前記連結部(16)の上端は前記重錘(22)の重心(G)より上に位置することを特徴とするヘッドレスト。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のヘッドレストにおいて、
前記ヘッドレストフレーム(12)の左右一対のフレーム上部(15b)は、上端に向かうに従い左右の間隔を狭めて前記重錘(22)に近づくように曲がっていることを特徴とするヘッドレスト。
【請求項6】
請求項1~の何れかに記載のヘッドレストを用いた車両用シートであって、
車両用シート(1)のシートクッション(2)が有するシートクッションフレーム(6)の後端部に、上方に突出する左右一対のブラケット(8)が連設され、
これらのブラケット(8)に、当該車両用シート(1)のシートバック(3)が有するシートバックフレーム(10)が、枢軸(9)を介してリクライニング可能に連結され、
車両用シート(1)の前面視で、前記弾性部材(21)および前記重錘(22)は、前記シートバックフレーム(10)の前記2つの支持筒(11)の延長軸線(Y)の間に配置されていることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床に設置されるシートクッション、このシートクッションの後端部に連結されるシートバック及び、このシートバックの上端部に装着されるヘッドレストを備え、前記シートバック及びヘッドレストよりなる振動系に重錘を付設してなる、車両用シート装置に好適に使用可能なヘッドレストとそれを用いた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるヘッドレストにおける重錘は、車両の走行中、ヘッドレストの前後方向及び/又は左右方向の振動を抑制する制振作用を発揮するものであって、かゝるヘッドレストは、下記特許文献1に開示されるように知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本 特開平10-226255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、かゝるヘッドレストは、複数のコイルスプリング、ブラケット、このブラケットに保持される重錘、並びに上記コイルスプリングを振動系のフレーム及びブラケットに接続する係止手段より構成されるので、部品点数が多く構造が複雑である。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、部品点数が少なく構造が簡単なヘッドレストとそれを用いた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ヘッドレストのクッション材の内部に重錘を設けるとともに、その重錘を支持する弾性部材を設け、前記ヘッドレストは、シートバックのシートバックフレーム上端部に固設される左右一対の支持筒に昇降及び固定可能に支持される左右一対のフレーム下部と、このフレーム下部の上端から前方に屈曲して上方に延びる左右一対のフレーム上部とを備えたヘッドレストフレームを有し、前記重錘の重心は、側面視で前記ヘッドレストフレームの前端より後方に位置し、前記重錘の前端は、前記支持筒の延長軸線よりも、側面視で前側に位置し、前記重錘を内部に収める前記弾性部材は、前記重錘から左右方向の荷重を受けるときのばね定数と、前後方向の荷重を受けるときのばね定数とが相違するように形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
なお、実施の形態のクッション部材13は本発明のクッション材に対応する。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記フレーム上部は、前記フレーム下部の上端から前方に屈曲して斜め上方に延びることを第2の特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、第1または第2の特徴に加えて、前記重錘の重心は、前記ヘッドレストの上下方向中心より上方にくるように配置されていることを第3の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は、第1~第3の特徴の何れかに加えて、前記ヘッドレストフレームの左右一対のフレーム上部は、それらの上端間を一体に連結する連結部を有し、車両の床の法線方向を上下方向とするとき、前記連結部の上端は前記重錘の重心より上に位置することを第4の特徴とする。
【0011】
さらにまた本発明は、第1~第4の特徴の何れかに加えて、前記ヘッドレストフレームの左右一対のフレーム上部は、上端に向かうに従い左右の間隔を狭めて前記重錘に近づくように曲がっていることを第5の特徴とする。
【0012】
さらにまた本発明は、第1~第の特徴の何れかのヘッドレストを用いた車両用シートであって、車両用シートのシートクッションが有するシートクッションフレームの後端部に、上方に突出する左右一対のブラケットが連設され、これらのブラケットに、当該車両用シートのシートバックが有するシートバックフレームが、枢軸を介してリクライニング可能に連結され、車両用シートの前面視で、前記弾性部材および前記重錘は、前記シートバックフレームの前記2つの支持筒の延長軸線の間に配置されていることを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の特徴によれば、部品点数が少なく構造が簡単であり、安価に製造できるヘッドレストおよびそのヘッドレストを用いた車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る車両用シート装置の側面図である。(実施の形態)
図2図2図1の2部の拡大図である。(実施形態)
図3図3図2の3-3線断面図である。(実施形態)
図4図4はダイナミックダンパを備えるヘッドレストの製造方法説明図である。(実施形態)
図5図5は本発明の第2実施形態を示す、図2との対応図である。(第1の参考形態)
図6図6図5の6-6線断面図である。(第1の参考形態)
図7図7は本発明の第3実施形態を示す、図2との対応図である。(第2の参考形態)
図8図8図7の8-8線断面図である。(第2の参考形態)
図9図9は本発明の第4実施形態を示す車両用シート装置の部分正面図である。(第3の参考形態)
図10図10は参考例の実施形態を示す、図2との対応図である。(第4の参考形態)
【符号の説明】
【0015】
1・・・・・・車両用シート
3・・・・・・シートバック
4・・・・・・ヘッドレスト
10・・・・・シートバックフレーム
11・・・・・支持筒
12・・・・・ヘッドレストフレーム
13・・・・・クッション材(クッション部材)
21・・・・・弾性部材
22・・・・・重錘
F・・・・・・車両の床
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、図1図4に示す本発明の第1実施形態より説明する。
【第1実施形態】
【0017】
図1において、車両用シート1は、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4とよりなっている。シートクッション2は、下部に複数の支持脚7、7を形成したシートクッションフレーム6を有しており、その支持脚7、7が車両の床Fに固着される。
【0018】
シートクッションフレーム6の後端部には上方に突出する左右一対のブラケット8が連設され、これらブラケット8に、シートバック3が有するシートバックフレーム10が枢軸9を介してリクライニング可能に連結される。
【0019】
またシートバックフレーム10の上端部には、左右一対の支持筒11、11が固設されており、これら支持筒11、11によってヘッドレスト4が昇降及び固定可能に支持される。
【0020】
図2及び図3に示すように、ヘッドレスト4は、ヘッドレストフレーム12と、それに支持される発泡ウレタン製のクッション部材13と、その表面を被覆する表皮14とより構成される。
【0021】
またそのヘッドレストフレーム12は、前記一対の支持筒11、11に支持される左右一対の杆部15、15と、これら杆部15、15の上端間を一体に連結する連結部16とよりなっており、正面視では門型をなしている。また左右の杆部15、15は、支持筒11、11に支持されて上方に延びるフレーム下部15aと、このフレーム下部15aの上端から前方に屈曲しつゝ上方に延びて連結部16に至るフレーム上部15bとで構成され、そのフレーム上部15b及び連結部16がクッション部材13に埋設されてクッション部材13を支持する。
【0022】
而して、シートバック3及びヘッドレスト4は、シートクッションフレーム6に枢軸9を介して連結される一連の振動系18を構成するもので、この振動系18の振動を抑えるべく、ダイナミックダンパ20がヘッドレスト4内に設けられる。
【0023】
上記ダイナミックダンパ20は、ヘッドレスト4のクッション部材13に周囲全体が覆われるように埋設される弾性部材21と、この弾性部材21に周囲全体が覆われるように埋設される重錘22とで構成されるもので、その弾性部材21は、クッション部材13よりも軟質のゴム又はエラストマ製であり、その断面の厚みは重錘22の断面の厚みおよび支持筒11の直径よりも薄い。重錘22は金属製である。また、ヘッドレストフレーム12のフレーム上部15bは、上端に向かうに従い左右の間隔を狭めて重錘22に近づくように曲がっている。
【0024】
このダイナミックダンパ20は、これをクッション部材13に埋設するに当たり、前記フレーム上部15bの後方に配置される。
【0025】
またダイナミックダンパ20は、その弾性部材21とヘッドレストフレーム12との間にクッション部材13の一部を介在させるように配置され、しかも弾性部材21および重錘22は、シートバックフレーム10の2つの支持筒11の延長軸線Yの間に配置される。
【0026】
さらにダイナミックダンパ20は、その重錘22の重心Gがヘッドレスト4の上下方向中心S1より上方にくるように、且つ連結部16の上端が該重心Gより上に位置するように配置され、該重心Gは側面視でヘッドレストフレーム12の前端より後方に位置する。
【0027】
さらにまたダイナミックダンパ20は、その重錘22が側面視で、前記支持筒11の延長軸線Y上にくるように配置され、重錘22の前端は、ヘッドレストフレーム12の左右一対のフレーム下部15aの上方に向かう延長線よりも側面視で前側に位置する。
【0028】
さらにまたダイナミックダンパ20は、その一部が前記ヘッドレストフレーム12の上端より上方へ突出するか、または弾性部材21および重錘22の上端が前記ヘッドレストフレーム12の上端よりも下側に配置される。
【0029】
次に、上記ダイナミックダンパ20の、ヘッドレスト4への埋設方法について図4により説明する。
【0030】
機台25の下面には、ヘッドレストフレーム12を除くヘッドレスト4の外形に対応するキャビティ26を形成する、上下開閉可能な成形型27a、27bが取り付けられており、そのキャビティ26の内面には、予めヘッドレスト4の表皮14を張設しておく。また成形台25の上面には、キャビティ26に開口する発泡材注入口28を有する支持板29が固定されており、この支持板29には、発泡材注入口28にノズル30aを臨ませる発泡材供給装置30を取り付ける。また支持板29上に設けられるブラケット37には、発泡材注入口28を通してキャビティ26内に配置されるヘッドレストフレーム12を支持させる。また支持板29上のフック31に係止した糸32にダイナミックダンパ20を接続し、これを発泡材注入口28を通してキャビティ26内の所定位置に吊るす。この場合のダイナミックダンパ20の重錘22は鉄製とし、その重錘22に吸引力を付与してダイナミックダンパ20を所定位置に安定させるマグネット33が下部の成形型27bに付設される。尚、上記成形型27a、27bは、マグネット33の重錘22への磁力作用を阻害しないように非磁性の合成樹脂製とする。
【0031】
而して、発泡材供給装置30からノズル30aを通してウレタン等の発泡材34をキャビティ26内面に密着した袋状の表皮14内に注入し、それを発泡させることにより、表皮14内に、ヘッドレストフレーム12及びダイナミックダンパ20を包むクッション部材13を形成することができる。こうして製造されたヘッドレスト4は、成形型27a、27bを上下に開くことにより、型外に取り出すことができる。
【0032】
次に、この第1実施形態の作用について説明する。
【0033】
車両の走行中、車両の床Fからシートクッション2及び枢軸9を経て前記振動系18に振動が伝達したとき、ダイナミックダンパ20において重錘22が弾性部材21の弾性振動を伴って共振振動して、前記振動系18の振動エネルギを代替吸収することになり、前記振動系18、即ちシートバック3及びヘッドレスト4を制振することができる。
【0034】
しかもダイナミックダンパ20は、ヘッドレスト4のクッション部材13内に埋設される、該クッション部材13よりも軟質のゴム材よりなる弾性部材21と、この弾性部材21に埋設される重錘22とで構成されるので、重錘22を埋設した弾性部材21をクッション部材13内に単に埋設するだけで、ヘッドレスト4にダイナミックダンパ20を簡単に取り付けることができる。即ち、従来のような複数のコイルスプリングや、スプリング係止手段、重錘を保持するブラケット等が不要となり、部品点数が少なく構造が簡単であり、ダイナミックダンパ20を備える車両用シート装置を安価に提供することができる。
【0035】
またダイナミックダンパ20は、ヘッドレストフレーム12のフレーム下部15aの上端から前方に屈曲しつゝ上方に延びるフレーム上部15bの後方に配置されるので、ヘッドレスト4のクッション部材13の前後方向の限られた肉厚の範囲にヘッドレストフレーム12とダイナミックダンパ20を効率良く配設することができ、ヘッドレスト4の大型化を回避することができる。
【0036】
さらにダイナミックダンパ20は、その弾性部材21とヘッドレストフレーム12との間にクッション部材13の一部を介在させるように配置されるので、弾性部材21のヘッドレストフレーム12への接触を防ぎ、ダイナミックダンパ20に良好な制振機能を発揮させることができる。
【0037】
さらにまたダイナミックダンパ20は、その重錘22の重心Gがヘッドレスト4の上下方向中心S1より上方にくるように配置されるので、重錘22の重心Gは、シートクッション2における振動系の支持点より実質上最大限離れた位置を占めることになり、したがって比較的小質量の重錘22をもってダイナミックダンパ20の制振機能を付与することができ、車両用シート装置の軽量化に寄与し得る。
【0038】
さらにまたダイナミックダンパ20は、その重錘22が側面視で、ヘッドレストフレーム12を昇降及び固定可能に支持する、シートバックフレーム10の支持筒11の延長軸線Y上にくるように配置されるので、ダイナミックダンパ20の制振作用をシートバックフレーム10に効率良く及ぼすことができ、振動系18を効果的に制振することができる。
【0039】
次に、図5及び図6に示す本発明の第2実施形態について説明する。
【第2実施形態】
【0040】
この第2実施形態では、ダイナミックダンパ20の重錘22は、図5及び図6に示すように、それの重心Gが、重錘22の前後方向、左右方向および上下方向の全てにおける中央の位置S2から離間した位置に配置される。具体的には、重錘22はその上半部の質量が下半部の質量より大となるように構成され、その側面視で逆台形に形成される。このようにすると、重錘22の重心Gは、重錘22の中央の位置S2から離間した上方位置を占めることになり、その分、重錘22の重心Gは、シートクッション2における振動系の支持点より遠ざかることになり、したがって比較的小質量の重錘22をもってダイナミックダンパ20の制振機能を付与することができ、車両用シート装置の軽量化に寄与し得る。
【0041】
また重錘22を内部に収める弾性部材21は、重錘22から左右方向の荷重を受けるときのばね定数と、前後方向の荷重を受けるときのばね定数とが相違するように形成される。このようにすると、ダイナミックダンパ20の固有振動数が、左右方向に加振されるときと、前後方向に加振されるときとで相違することになり、これら振動方向と固有振動数を、床Fからシートクッション2を介して振動系18に伝達される振動の方向と振動数に対応させることで、振動系18を効果的に制振することができる。
【0042】
弾性部材21の、重錘22から左右方向の荷重を受けるときのばね定数と、前後方向の荷重を受けるときのばね定数とを相違させるために、図示例では、弾性部材21は、左右方向の肉厚T1と前後方向の肉厚T2とが相違するように形成される。例えば、左右方向の肉厚T1は、前後方向の肉厚T2より大となるように形成される。このように、弾性部材21の肉厚を変化させることで、上記のようにばね定数に方向性を付与し得ることは、構造の簡素化に有効である。
【0043】
また弾性部材21の、重錘22から左右方向の荷重を受ける部分と、前後方向の荷重を受ける部分とを、それぞれヤング率の異なるゴム材で構成しても、同様の効果を得ることができる。
【0044】
その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、図5及び図6中、第1実施形態に対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0045】
次に、図7及び図8に示す本発明の第3実施形態について説明する。
【第3実施形態】
【0046】
この第3実施形態では、ヘッドレストフレーム12上端部の連結部16が、その中央部に窪み36を持つように形成される一方、ダイナミックダンパ20は、その一部が上記窪み36に入り込むように配置され、弾性部材21の一部がヘッドレストフレーム12に上下方向で重なる。その他の前記第1実施形態と同様であるので、図7及び図8中、実施形態に対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0047】
この第3実施形態によれば、ヘッドレストフレーム12上端部の連結部16にダイナミックダンパ20を充分に近接して配置することが可能となり、したがってヘッドレスト4のクッション部材13の前後方向の限られた肉厚の範囲にヘッドレストフレーム12とダイナミックダンパ20を効率良く配設することができ、ヘッドレスト4の小型化を図ることができる。
【0048】
次に、図9に示す本発明の第参考形態について説明する。
【第1参考形態】
【0049】
この第1参考形態では、シートバック3において、シートバックフレーム10に支持されるクッション部材13の左右両肩部に一対のダイナミックダンパ20を埋設したもので、各ダイナミックダンパ20は、前記第1実施形態と同様に弾性部材21と、それに埋設される重錘22とで構成される。その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、図9中、第1実施形態に対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0050】
この第参考形態によれば、シートバック3のクッション部材13の左右両肩部に埋設した一対のダイナミックダンパ20、20によって、シートバック3及びヘッドレスト4よりなる振動系18の振動を抑えることができる。しかも、一対に分けられたダイナミックダンパ20、20は、それぞれコンパクトになるから、ドライバの座り心地に影響しないようにシートバック3の両肩部にコンパクトに埋設することができる。
【0051】
なお、図10に示す第2参考形態について説明する。
【第2参考形態】
【0052】
この第参考形態では、ダイナミックダンパ20は、ヘッドレスト4のヘッドレストフレーム12を包んでそれに支持される弾性部材21と、この弾性部材21に埋設される重錘22とで構成される。その弾性部材21は、シートバック3のクッション部材38より軟質のゴム又はエラストマ製であり、ヘッドレスト4のクッション部材を兼用する。
【0053】
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、図10中、実施形態に対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0054】
この第参考形態によっても、弾性部材21の弾性振動を伴なう重錘22の共振振動により、シートバック3及びヘッドレスト4よりなる振動系18の振動を抑えることができる。その際、ヘッドレスト4のクッション部材を兼ねる弾性部材21の弾性振動は、重錘22周りの一部で生じるので、ドライバの頭部が接する外表部分では殆ど振動は生じない。しかもダイナミックダンパ20の弾性部材21がヘッドレスト4のクッション部材を兼用することで、その分、部品点数が削減され、構造の簡素化を図ることができる。
【0055】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10