(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】車両用音生成装置
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20240314BHJP
B60Q 5/00 20060101ALI20240314BHJP
B62J 3/00 20200101ALI20240314BHJP
【FI】
G10K15/04 302J
B60Q5/00 650A
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 640Z
B60Q5/00 630Z
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 610Z
B60Q5/00 610C
B62J3/00
(21)【出願番号】P 2019150988
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】服部 之総
(72)【発明者】
【氏名】光永 誠介
(72)【発明者】
【氏名】白石 秀宗
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝矢
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜一
(72)【発明者】
【氏名】中上 千恵子
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-032948(JP,A)
【文献】特開2017-181922(JP,A)
【文献】特開平05-053594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
B60Q 5/00
B62J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを動力源として走行する車両に搭載された車両用音生成装置であって、
前記電動モータのモータ回転数に応じた複数の周波数を設定し、前記複数の周波数の音を含む合成音を表す合成音信号を生成する音制御部と、
前記音制御部が生成した合成音信号に基づいて、前記合成音を出力する音出力部と、を備え、
前記音制御部は、前記電動モータのモータトルク値の増大に応じて、前記合成音の周波数範囲内において、高周波数帯の音の出力の増大量と比べて、低周波数帯の音の出力の増大量を大きく設定
するように、高周波数帯及び低周波数帯の音の出力を共に増大させる、車両用音生成装置。
【請求項2】
前記音制御部は、前記電動モータのモータトルク値の増大に応じて、前記低周波数帯に含まれる少なくとも1つの特定の周波数の音の出力の増大量を、高周波数帯に含まれる周波数の音の出力の増大量よりも大きくする、請求項1に記載の車両用音生成装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの特定の周波数の音の出力は、前記電動モータのモータトルク値の増大に応じて、前記車両内でドライバが認識できない出力レベルから前記ドライバが認識可能な出力レベルに増大される、請求項2に記載の車両用音生成装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの特定の周波数は、前記複数の周波数の他の少なくとも1つの周波数と和音の関係にある、請求項2又は3に記載の車両用音生成装置。
【請求項5】
前記音制御部は、前記電動モータのモータ回転数に比例するように前記複数の周波数の各々の周波数を設定し、
前記音制御部は、前記複数の周波数のうちのいずれかの周波数が所定の周波数閾値を超える場合、前記所定の周波数閾値を超える周波数の音の出力を低減する、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用音生成装置。
【請求項6】
前記複数の周波数は、少なくとも1つの不協和音周波数を含み、この不協和音周波数は、前記複数の周波数の他の周波数と不協和音の関係にあり、
前記音制御部は、前記電動モータのモータ回転数が所定の回転数閾値を超えたとき、前記不協和音周波数の音の出力を増大させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用音生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用音生成装置に係り、特に車両走行中に所定の音を出力する車両用音生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータによって駆動される電動車両(例えば、電動二輪車)において、モータ回転数に応じて所定の周波数の音をドライバに向けて出力する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電動車両では、モータ回転数が大きいほど、高い周波数の音が発生されるようになっている。詳しくは、特許文献1では、モータ回転数の高速域よりも低速域において、モータ回転数の変化に対する周波数の変化率が大きく設定されている。これにより、特許文献1では、ドライバに対して提供した音の周波数の変化により、車両の挙動(車速)をドライバに伝達するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、ドライバは、発生する音に基づいて、動力源である電動モータの変化、具体的には、車両の加速の力強さ(モータトルク)を認識することができなかった。このため、特許文献1の技術では、走行中に発生する音とドライバの行うアクセル操作との間に、ドライバが違和感を覚え易いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ドライバに車両の加速の力強さを容易に認識させて、正確なアクセル操作を促進することができる車両用音生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、電動モータを動力源として走行する車両に搭載された車両用音生成装置であって、電動モータのモータ回転数に応じた複数の周波数を設定し、複数の周波数の音を含む合成音を表す合成音信号を生成する音制御部と、音制御部が生成した合成音信号に基づいて、合成音を出力する音出力部と、を備え、音制御部は、電動モータのモータトルク値の増大に応じて、合成音の周波数範囲内において、高周波数帯の音の出力の増大量と比べて、低周波数帯の音の出力の増大量を大きく設定するように、高周波数帯及び低周波数帯の音の出力を共に増大させることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、ドライバが車両を加速させるためにアクセル操作を行ったとき、合成音の高音域の音よりも低音域の音の方が、音圧レベルの増加量が大きくなる。よって、本発明では、ドライバがアクセルを踏み込んだとき、そのフィードバックとして、低音側が増強された合成音が音出力部から出力される。そして、低音側が増強された合成音により、ドライバはアクセル操作に応じた車両の加速の力強さを容易に認識することが可能であり、ドライバによる正確なアクセル操作が促進される。
【0008】
また、本発明において好ましくは、音制御部は、電動モータのモータトルク値の増大に応じて、低周波数帯に含まれる少なくとも1つの特定の周波数の音の出力の増大量を、高周波数帯に含まれる周波数の音の出力の増大量よりも大きくする。
このように構成された本発明によれば、合成音の周波数範囲内において、相対的に低い周波数帯の少なくとも1つの特定の周波数についての音が、相対的に高い周波数帯の音よりも大きく増大されるので、合成音の低音域の音を増強することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、少なくとも1つの特定の周波数の音の出力は、電動モータのモータトルク値の増大に応じて、車両内でドライバが認識できない出力レベルからドライバが認識可能な出力レベルに増大される。
このように構成された本発明によれば、モータトルク値の増大に応じて、人間の可聴音圧レベルを考慮すると、低周波数帯に新たな周波数の音が実質的に加えられることになる。このため、本発明では、低周波数帯における音圧レベルが増大されると共に、低周波数帯において周波数密度がより高められた音が生成されるので、合成音の低音域の音を増強することができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、少なくとも1つの特定の周波数は、複数の周波数の他の少なくとも1つの周波数と和音の関係にある。
このように構成された本発明によれば、モータトルク値の増大時に出力される合成音が、比較的高い協和度を有し、まとまりのある複数の音(和音)として人間の耳に響く。これにより、ドライバは、アクセル操作時に違和感の少ない合成音をフィードバックとして受け取ることができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、音制御部は、電動モータのモータ回転数に比例するように複数の周波数の各々の周波数を設定し、音制御部は、複数の周波数のうちいずれかの周波数が所定の周波数閾値を超える場合、所定の周波数閾値を超える周波数の音の出力を低減する。
このように構成された本発明によれば、モータ回転数の増大とともに合成音を構成する音の周波数が増加することによってドライバは車両の加速を認識することができるが、周波数が高くなり過ぎた音は、人間の耳に耳障りとなる。そこで、本発明では、所定の周波数閾値を超える周波数の音は、その出力が低減される。すなわち、モータ回転数が増大していくと、最も高い周波数から低い周波数に向けて、特定の周波数の音の出力が順番に低減されていく。このとき、モータ回転数の増大に応じて、最も高い周波数の音の出力が低減されるにもかかわらず、ドライバの耳には、無限音階の錯覚と同様に、合成音の周波数が全体として増加し続けていくように聞こえる。このため、本発明では、ドライバは、耳障りな高周波音を聞くことなく、モータ回転数の増大とともに耳で感じる周波数増加により、車両の加速を認識することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、複数の周波数は、少なくとも1つの不協和音周波数を含み、この不協和音周波数は、複数の周波数の他の周波数と不協和音の関係にあり、音制御部は、電動モータのモータ回転数が所定の回転数閾値を超えたとき、不協和音周波数の音の出力を増大させる。
このように構成された本発明によれば、不協和音周波数の音が合成音の他の周波数の音と不協和音の関係にある。このため、不協和音周波数の音の出力が増大されると、この音と他の音との間のうねりが大きくなる。このとき、ドライバは、うねりの存在により合成音に違和感(例えば、合成音が調和していない)を感知することができる。よって、ドライバは、この違和感により、所定の回転数閾値よりも高いモータ回転領域で、車両が走行していることを認識することができる。一般に、電動車両では、モータ回転数が高い高回転領域では、モータトルクが小さくなる。よって、ドライバは、合成音の音質の変化(うねり)により、車両のさらなる加速を得るためには、より大きなアクセルの踏み込み量が必要であることを容易に認識可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用音生成装置によれば、ドライバに車両の加速の力強さを容易に認識させて、正確なアクセル操作を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態の車両用音生成装置の説明図である。
【
図2】本発明の実施形態の車両用音生成装置の構成図である。
【
図3】本発明の実施形態の音生成処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態のモータ回転数と音量との関係を示す第1音圧設定マップである。
【
図5】本発明の実施形態のモータトルク値と音量の増加量との関係を示す第2音圧設定マップである。
【
図6】2つの周波数の音(基本周波数と他の周波数)の間の協和度を示す公知のグラフである。
【
図7A】本発明の実施形態の車両用音生成装置における低モータトルク時におけるモータ回転数と合成音の各周波数の関係を示す説明図である。
【
図7B】本発明の実施形態の車両用音生成装置における高モータトルク時におけるモータ回転数と合成音の各周波数の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の車両用音生成装置の構成を説明する。
図1は車両用音生成装置の説明図、
図2は車両用音生成装置の構成図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の車両用音生成装置1は、車両2に搭載された音制御装置10と、車室内のドライバに対して所定の音を出力するスピーカ20と、車両2の状態を検出する各種センサ群30とを備えている。
【0017】
車両2は、駆動力としての電動モータ3を備えた電動車両(EV)である。車両2は、内燃機関(ガソリンエンジン等)を備えていないため、走行中にいわゆるエンジン音が生じない。電動モータ3は作動音を生じるが、モータ作動音は、エンジン音に比べて小さい。このため、車内のドライバは、モータ作動音をほとんど認識することができない。本実施形態では、ドライバが電動モータ3の作動状況を把握することができるように、車両用音生成装置1が、電動モータ3の作動状況に応じた音を発生するように構成されている。なお、本実施形態では、車両2は、内燃機関を備えていないが、これに限らず、車両2は、内燃機関と電動モータの両方を備えたハイブリッド車であってもよい。
【0018】
音制御装置10は、プロセッサ,各種プログラムを記憶するメモリ(記憶部14),データ入出力装置等を備えたコンピュータ装置である。音制御装置10は、車内通信回線を介して、他の車載装置と通信可能に接続されている。音制御装置10は、センサ群30からの車両情報に基づいて、プロセッサがプログラムを実行することにより、スピーカ20に対して、音信号を出力するように構成されている。その際、音制御装置10のプロセッサは、以下に説明するように、モータ回転数検出部11、モータトルク検出部12、制御部13として機能する。
【0019】
スピーカ20は、増幅器(アンプ)を備えた音出力部である。スピーカ20は、音制御装置10から音信号を受け取り、音信号を所定の増幅率で増幅して、音信号に基づく音を出力する。なお、スピーカ20は、車室内に設けられていなくてもよく、スピーカ20が発生する音をドライバが認識することができればよい。
【0020】
センサ群30は、電動モータ3のモータ回転数を検出するモータ回転数センサ31と、車両2の車速を検出する車速センサ32と、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ33と、電動モータ3を制御するECU34を含む。これらセンサ群30は、車内通信回線を通して、検出した車両情報を示す信号を送信する。音制御装置10は、車内通信回線を介して、センサ群30から各種の車両情報信号を受け取ることができる。
【0021】
車両情報信号は、モータ回転数信号SR、車速信号SV、アクセル開度信号SA、モータトルク値信号STを含む。音制御装置10(プロセッサ)は、モータ回転数検出部11として、モータ回転数信号SRからモータ回転数Rを読み取り、モータトルク検出部12として、モータトルク値信号STからモータトルク値Tを読み取る。モータトルク値Tは、電動モータ3への要求モータトルク値(又は、目標モータトルク値)である。
【0022】
ECU34は、音制御装置10と同様にプロセッサ,各種プログラムを記憶するメモリ,データ入出力装置等を備えたコンピュータ装置である。ECU34は、車内通信回線を介して、車速信号SV、アクセル開度信号SA、その他信号を受け取る。ECU34は、アクセル開度及び変速段等(又はアクセル開度及びその変化率(アクセルの踏み込み速さ)並びに変速段等)と目標加速度との関係を規定する加速度特性マップ(ECU34のメモリに記憶されている)を用いて、現在のアクセル開度等から、目標加速度を計算する。さらに、ECU34は、目標加速度を実現するための要求モータトルク値(又は、目標モータトルク値)を算出する。
【0023】
なお、本実施形態では、モータトルク値Tが、電動モータ3への要求モータトルク値であるが、これに限らず、電動モータ3が実際に出力している実モータトルク値であってもよい。しかしながら、実モータトルク値よりも要求モータトルク値を用いる方が、ドライバのアクセル操作に対して、より迅速に音出力をドライバに提供することができるので、運転の操作性の向上に対するより大きな貢献が期待できる。この点において、実モータトルク値よりも要求モータトルク値を用いる方が好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、音制御装置10は、ECU34からモータトルク値Tを受け取っているが、これに限らず、上述のように音制御装置10が、加速度特性マップ等を用いて、アクセル開度等からモータトルク値Tを計算してもよい。
【0025】
次に、
図3~
図5を参照して、本実施形態の車両用音生成装置の音生成処理について説明する。
図3は音生成処理のフローチャート、
図4はモータ回転数と音量との関係を示す第1音圧設定マップ、
図5はモータトルク値と音量の増加量との関係を示す第2音圧設定マップである。
【0026】
車両用音生成装置1は、音生成処理において、検出した車両情報に基づいて、複数の周波数の音の合成音(疑似モータ作動音)を生成し、この合成音をドライバに対してスピーカ20から出力するように構成されている。車両用音生成装置1は、
図3に示す音生成処理を所定時間毎(例えば、10ms毎)に繰り返し実行する。
【0027】
まず、音生成処理において、音制御装置10は、車内通信回線を介して、車両情報を取得する(ステップS1)。上述のように、音制御装置10(モータ回転数検出部11、モータトルク検出部12)は、少なくともモータ回転数Rとモータトルク値Tを取得する。
【0028】
次いで、音制御装置10(制御部13)は、周波数設定処理を行う(ステップS2)。周波数設定処理では、モータ回転数Rに基づいて、複数の周波数を設定する。具体的には、1次周波数(基本周波数)であるモータ回転数Rに対する、9つの周波数f1~f9が以下の式により設定される。
fk(Hz)=R(Hz)×nk (式1)
【0029】
ここで、k=1~9であり、nkはモータ回転数Rに対する次数である。具体的には、例えば、n1は1.6、n2は2、n3は2.24、n4は2.4、n5は2.67、n6は3.33、n7は4、n8は5.33、n9は8である。例えば、1.6次周波数f1は、モータ回転数Rの1.6倍の周波数(R(Hz)×1.6)である。なお、本実施形態では、基本周波数をモータ回転数Rとしているが、これに限らず、基本周波数をモータ回転数Rの増加と共に増加する関係にある周波数としてもよい(例えば、比例関係)。
【0030】
例えば、モータ回転数Rが50Hz(3000rpm)の場合、周波数f1は80Hz、周波数f2は100Hz、周波数f3は112Hz、周波数f4は120Hz、周波数f5は133Hz、周波数f6は167Hz、周波数f7は200Hz、周波数f8は267Hz、周波数f9は400Hzである。
【0031】
次いで、音制御装置10(制御部13)は、記憶部14に記憶されている第1音圧設定マップ(以下「マップM1」ともいう)に基づいて、各周波数の音圧レベルを設定する(ステップS3)。
図4に示すように、マップM1は、9つの次数n1~n9の周波数f1~f9の各々に対して設定されている。マップM1は、モータ回転数R(rpm)に対して、各周波数f1~f9の音S1~S9の音圧レベルp(dB(A))が規定されている。
【0032】
低次周波数(例えば、周波数f1~f5)についてのマップM1では、概ねモータ回転数Rの増加に応じて音圧レベルpも増加する。一方、高次周波数(例えば、周波数f8~f9)についてのマップM1では、モータ回転数Rの増加に応じて音圧レベルpが概ね低下する。なお、本実施形態では、ドライバは、40dB(A)よりも小さな音圧レベルの音をほとんど認識できず、目安として40dB(A)以上の音圧レベル(可聴音圧レベル)の音を認識することができる。したがって、マップM1によれば、例えば、周波数f9では、モータ回転数Rが約3000rpm以上で音圧レベルpが30dB(A)未満に設定されているので、高速回転時には、ドライバは、周波数f9の音S9を聞き取ることができない。よって、ドライバは、合成音SCに含まれる30dB(A)程度の周波数音を意識下で聞き取ることはできない。しかしながら、このような30dB(A)程度の周波数音も無意識下でドライバの車両操作に影響を与えることもあり得る。
【0033】
次いで、音制御装置10(制御部13)は、記憶部14内に記憶されている第2音圧設定マップ(「マップM2」ともいう)に基づいて、マップM1により設定された各周波数f1~f9の音圧レベルをさらに設定又は補正する(ステップS4)。
図5に示すように、マップM2は、次数n1~n9の周波数f1~f9の各々に対して設定されている。マップM2は、モータトルク値T(N・m)に対して、各周波数f1~f9における音圧レベルの補正量又は補正ゲイン(dB)が規定されている。なお、マップM2において、正のモータトルクは、電動モータ3が力行状態で作動していることを示し、負のモータトルクは、電動モータ3が回生状態で作動していることを示している。
【0034】
マップM2では、各周波数f1~f9において、正のモータトルク値の増加に応じて補正量(補正ゲイン)も概ね増加する。しかしながら、マップM2において、高次周波数(例えば、周波数f6~f9)よりも低次周波数(例えば、周波数f1~f5)の方が、概ね正のモータトルク値に対する補正量が大きく設定されている。例えば、モータトルク値Tが100(N・m)の場合、低次周波数では補正量が10dB以上であるが、高次周波数では補正量が10dB未満である。同様に、モータトルク値Tが200(N・m)の場合、低次周波数では補正量が約15dBであるが、高次周波数では補正量が10~13dB程度である。したがって、本実施形態では、モータ回転数Rにより音圧レベルが設定され、ドライバの加速要求(アクセル操作)があるときは、高音域の音Skよりも低音域の音Skを増強するように補正された合成音SCが生成される。すなわち、加速時は、低音側がブースト又は強調された力強い合成音SCが生成される。
【0035】
さらに、マップM2では、周波数f2~f8では、モータトルク値Tがゼロから増加しても、モータトルク値Tの増加量が所定量を超えるまでは、補正ゲインは増加しないように設定されている。これに対して、周波数f1及び周波数f9では、モータトルク値Tがゼロから増加すると、所定量の増加を待つことなく、モータトルク値Tの増加量にほぼ比例して、補正ゲインが増加するように設定されている。したがって、ドライバがアクセル操作により、車両2を加速させるとき、必ず最も低い周波数f1の音S1が強調されて出力される。すなわち、加速時は、少なくとも最も低い音域の音Sk(k=1)の立ち上がりが早く、その後に、より高い音域の音Sk(k=2~8)が追従する。
【0036】
次いで、音制御装置10(制御部13)は、周波数f1~f9の音S1~S9を合成した合成音信号SSを生成し、出力する(ステップS5)。各周波数f1~f9の単位振幅を有する正弦波信号は、設定された音圧レベルとなるように振幅が調整され、調整された正弦波信号を合成することにより、合成音信号SSが生成される。
【0037】
そして、スピーカ20は、合成音信号SSを受け取り、増幅処理を行って合成音SCとしてドライバに向けて出力する(ステップS6)。したがって、出力される合成音SCは、周波数f1~f9の音S1~S9の和となる。
SC=S1+S2+S3+S4+S5+S6+S7+S8+S9 (式2)
【0038】
次に、
図6を参照して、n次周波数の相互関係について説明する。
図6は、2つの周波数の音(基本周波数と他の周波数)の間の協和度を示す公知のグラフである。
図6では、人間の耳の構造に起因する2つの周波数(一方は基本周波数250Hz)の音の間の協和度が0~6の段階で示されている。協和度0(ゼロ)は、2つの音が協和している状態である。協和度6は、2つの音が協和していな状態である。協和度が高いほど、人間は2つの音の合成音を快く感じる。逆に、協和度が低いほど、人間は2つの音の合成音に違和感を覚える。
【0039】
2つの音が和音となる関係にある場合、協和度は相対的に高い。2つの音の協和度が高い状態には、完全協和音程と不完全協和音程の2つの状態がある。完全協和音程は、例えば、完全1度(2つの音の周波数比が1:1)、完全8度(周波数比1:2)、完全5度(周波数比2:3)、完全4度(周波数比3:4)を含む。完全協和音程では、2つの音は調和し、その合成音は人間の耳に心地よく響く。また、不完全協和音程は、例えば、長6度(周波数比3:5)、長3度(周波数比4:5)、短3度(5:6)、短6度(5:8)を含む。不完全協和音程では、2つの音の合成音は、完全協和音程ほどではないが、人間の耳に比較的心地よく響く。
【0040】
本実施形態では、9つの周波数のうち、周波数f3を除く8つの周波数は、他のいずれかの周波数と和音(完全協和音程又は不完全協和音程)の関係にある(ただし、完全1度を除く)。例示した和音に限定すると、周波数f1は、他の8つの周波数のうち3つの周波数と和音の関係がある。同様に、周波数f2は5つの周波数と和音の関係があり、周波数f4は3つの周波数と和音の関係があり、周波数f5は5つの周波数と和音の関係があり、周波数f6は4つの周波数と和音の関係があり、周波数f7は6つの周波数と和音の関係があり、周波数f8は3つの周波数と和音の関係があり、周波数f9は2つの周波数と和音の関係がある。
【0041】
一方、本実施形態では、周波数f3は、他の8つの周波数と和音の関係にない。すなわち、
図6に示すように、250Hzと300Hzの間に協和度が3以上となる協和度の低い周波数帯が存在する。周波数f3は、他の8つの周波数に対して、このように協和度の低い周波数帯に含まれるように選択されている。
【0042】
なお、周波数f2と周波数f7、周波数f5と周波数f8、周波数f7と周波数f9は、それぞれ完全8度(周波数比1:2)に該当する。周波数f1と周波数f4、周波数f5と周波数f7、周波数f8と周波数f9は、それぞれ完全5度(周波数比2:3)に該当する。周波数f2と周波数f5、周波数f7と周波数f8は、それぞれ完全4度(周波数比3:4)に該当する。
【0043】
また、周波数f1と周波数f5、周波数f2と周波数f6、周波数f4と周波数f7は、それぞれ長6度(周波数比3:5)に該当する。周波数f1と周波数f2、周波数f5と周波数f6は、それぞれ長3度(周波数比4:5)に該当する。周波数f2と周波数f4、周波数f6と周波数f7は、それぞれ短3度(5:6)に該当する。周波数f6と周波数f8は、短6度(5:8)に該当する。
【0044】
次に、
図7A,
図7Bを参照して、車両用音生成装置1が出力する合成音の概略的な特性を説明する。
図7Aは、低モータトルク時におけるモータ回転数と合成音の各周波数の関係を示す説明図である。
図7Bは、高モータトルク時におけるモータ回転数と合成音の各周波数の関係を示す説明図である。
【0045】
図7A,
図7Bを参照すると、各周波数f1~f9の音S1~S9が可聴音圧レベルで出力されるモータ回転数Rの範囲が理解できる(例えば、
図7Aにおいて、最も高い音S9は、モータ回転数Rが0~3750(rpm)において可聴音圧レベルで出力される)。可聴音圧レベルとは、ある音が出力されたときに、人間の耳がその音を聞き取ることが可能な音量又は音圧の範囲を意味している。なお、
図7A,
図7Bは、本実施形態の合成音SCの特性の理解を容易にするため簡略化されている。よって、
図7A,
図7Bでは、上述のマップM1,マップM2を用いた音S1~S9の生成範囲(モータ回転数Rの範囲)が必ずしも正確に反映されていない。
【0046】
図7A,
図7Bを参照すると、電動モータ3は、理想的には、0~12000(rpm)で作動する。このとき、周波数f1~f9は、モータ回転数Rに比例する。
図7A,
図7Bに示すように、低回転領域及び中回転領域(本実施形態では、約5000(rpm)未満)では、合成音SCに可聴音圧レベルの周波数f3の音S3が含まれず、高回転領域(約5000(rpm)以上)では、合成音SCに可聴音圧レベルの音S3が含まれる。
【0047】
上述のように、周波数f3と他の周波数は、和音の関係になく、むしろ不協和音の関係にある。したがって、合成音SCが周波数f3の音S3を含むと、音S3が他の音Sk(例えば、音S2)とうねりを起こす。これにより、合成音SCは、ドライバにとって違和感のある音に変化する。ドライバは、このような音質の変化により、モータ回転数Rが高回転領域にあることを認識することができる。なお、高回転領域では、電動モータ3の出力トルクが低下するので、ドライバは、所望の加速度を得るために低回転領域よりも大きなアクセル操作量が必要となる。
【0048】
このように構成するため、周波数f3についてのマップM1は、所定の回転数閾値である5000(rpm)以上のモータ回転数Rで、音圧レベルpが30dB(A)以上に設定されている。さらに、周波数f3についてのマップM2は、中程度のモータトルク値である70(N・m)以上のモータトルク値で、+10dB以上の補正ゲインが設定されている。これにより、本実施形態では、車両2の通常走行時には、合成音SCは、認識可能な音圧レベルの音S3を含まないが、好ましくは、車両2が加速時に高回転領域で作動するとき、合成音SCは、認識可能な音圧レベルの音S3を含む。
【0049】
また、本実施形態では、周波数f2は、周波数f3と最も協和度が低い周波数の1つである。そして、周波数f3についてのマップM1は、周波数f2についてのマップM1と類似しており、周波数f3についてのマップM2は、周波数f2についてのマップM2と正のモータトルク値の範囲で類似している。これにより、本実施形態では、周波数f3の音S3が、周波数f2の音S2と同程度の音圧レベルで出力されるように設定されている。したがって、本実施形態では、協和度が低い組合せの音S2と音S3によって生じるうねりがより強調される。
【0050】
また、モータ回転数Rが高くなるのに応じて、高周波数側の周波数f6~f9は、所定の周波数閾値(本実施形態では、500Hz)を超える。しかしながら、500Hzを超える音Skは、耳障りに聞こえる。したがって、本実施形態では、
図7A,
図7Bに示すように、周波数f6~f9が500Hzを超えると、これら周波数f6~f9の音S6~S9は、音圧レベルが低減される。すなわち、500Hzを超える周波数の音Skは、好ましくは可聴音圧レベル以下の音圧レベルに低減される。
【0051】
このように構成するため、周波数f6~f9についてのマップM1は、周波数f6~f9が500Hzを超える回転領域において、周波数増加に伴って音圧レベルpが徐々に低減するか、又は、音圧レベルpが低減された値(例えば、30dB(A)未満)に設定されている。また、周波数f6~f9についてのマップM2は、特に低モータトルク値の低い範囲において、補正ゲインが負の値又は小さな正の値に抑制されている。これにより、本実施形態では、音Skの周波数fkが所定の周波数閾値を超えると、音Sk(k=6~9)は、好ましくは、可聴音圧レベル以下の音圧レベルに低減されるように構成されている。
【0052】
なお、モータ回転数Rが増加していくと、人間の耳には、音S9,S8,S7,S6,S5がこの順番で聞こえなくなる。しかしながら、合成音SCが全体として低い音域の音から高い音域の音へ徐々に変化している状況で、例えば、最も高音の音S9が聞こえなくなっても、人間の耳の錯覚により、合成音SCは高い音域へ変化しているように感じる。この現象は、一般に無限音階として知られている現象を応用したものである。したがって、音S9~音S5が順番に聞こえなくなっても、モータ回転数Rの増加に応じて、全体として合成音SCは、高い音階へ変化しているように人間の耳には感じる。
【0053】
また、ドライバによるアクセルの踏み込み量が比較的小さく、モータトルク値Tが低いとき(すなわち、低トルク時。例えば、0<T<100)、
図7Aに示すように、周波数f2,f5を除く7つの周波数の音Skが可聴音圧レベルで生成され得る。一方、モータトルク値Tが高いとき(すなわち、高トルク時。例えば、200<T)、
図7Bに示すように、すべての周波数f1~f9の音Skが可聴音圧レベルで生成され得る。
【0054】
したがって、本実施形態では、高トルク時には、ドライバは、合成音SCの周波数範囲(f1~f9の範囲)の低周波数側に、音S2,S5が追加されたように感じる。すなわち、本実施形態では、低トルク時には、低周波数側において、3つの音S1,S3,S4が認識可能である。一方、高トルク時には、低周波数側において、5つの音S1~S5が認識可能となり、合成音SCにおいて高音域の音よりも低音域の音が強調される。これにより、人間の耳には、低トルク時よりも高トルク時の方が合成音SCはより力強い音として響く。
【0055】
また、人間の耳は、複数の周波数を含む音を聞いたとき、各周波数の音に加えて、2つの異なる周波数の差に相当する周波数の音も聞こえるように感じる。高トルク時には、周波数f2,f5の追加により、ある周波数範囲に存在する周波数の数が多くなる(すなわち、周波数密度が高くなる)。よって、高トルク時には、人間の耳には、周波数f2,f5以外のより低音の周波数も加わったように感じる。この効果も、高トルク時において、合成音SCがより力強い音であると、ドライバに感じさせることに役立つ。
【0056】
このように構成するため、周波数f2,f5についてのマップM1は、他の周波数についてのマップM1よりも、音圧レベルが相対的に低めに設定されている。また、周波数f2,f5についてのマップM2は、モータトルク値Tが高い範囲で補正ゲインが大きく設定されている。これにより、本実施形態では、音S2,S5は、低トルク時には可聴音圧レベル以下の音圧レベルに抑制されるが、高トルク時には可聴音圧レベル以上の音圧レベルで出力されるように構成されている。
【0057】
また、周波数f9の音S9は、マップM1によりモータ回転数Rが約1000~3000(rpm)の範囲で40dB(A)に設定されるが、他の回転数の範囲では、可聴音圧レベル以下の30dB(A)以下に設定される。しかし、マップM2により、高いモータトルク値Tでは、補正ゲインが加わる(例えば、200(N・m)で+10dB)。このため、ドライバが素早く加速するためにアクセルを大きく踏み込んだときには、モータ回転数Rが3000(rpm)以上のときにも、合成音SCに可能音圧レベルの音S9が含まれ得る。
【0058】
次に、本実施形態の車両用音生成装置1の作用について説明する。
本実施形態の車両用音生成装置1は、電動モータ3を動力源として走行する車両2に搭載されており、電動モータ3のモータ回転数Rに応じた複数の周波数f1~f9を設定し、複数の周波数f1~f9の音S1~S9を含む合成音SCを表す合成音信号SSを生成する音制御装置10(音制御部)と、音制御装置10が生成した合成音信号SSに基づいて、合成音SCを出力するスピーカ20(音出力部)と、を備え、音制御装置10は、電動モータ3のモータトルク値Tの増大に応じて、合成音SCの周波数範囲内(周波数f1~f9の範囲)において、高周波数帯(例えば、周波数f6~f9の範囲)の音の出力の増大量と比べて、低周波数帯(例えば、周波数f1~f5の範囲)の音の出力の増大量を大きく設定する。
【0059】
本実施形態では、高周波数帯についてのマップM2よりも、低周波数帯についてのマップM2の方が、正のモータトルク値Tにおける補正ゲインが相対的に大きく設定されている。これにより、ドライバが車両2を加速させるためにアクセル操作を行ったとき、合成音SCの高音域の音S6~S9よりも低音域の音S1~S5の方が、音圧レベルの増加量が大きくなる。よって、本実施形態では、ドライバがアクセルを踏み込んだとき、そのフィードバックとして、低音側が増強された合成音SCがスピーカ20から出力される。そして、低音側が増強された合成音SCにより、ドライバはアクセル操作に応じた車両2の加速の力強さを容易に認識することが可能であり、ドライバによる正確なアクセル操作が促進される。
【0060】
また、本実施形態では、音制御装置10は、電動モータ3のモータトルク値Tの増大に応じて、低周波数帯(例えば、周波数f1~f5の範囲)に含まれる少なくとも1つの特定の周波数(例えば、周波数f1~f5)の音の出力の増大量を、高周波数帯(例えば、周波数f6~f9)に含まれる音の出力の増大量よりも大きくする。
【0061】
この構成により、本実施形態では、合成音SCの周波数範囲内において、相対的に低い周波数帯の少なくとも1つの特定の周波数についての音が、相対的に高い周波数帯の音S6~S9よりも大きく増大されるので、合成音SCの低音域の音を増強することができる。
【0062】
また、本実施形態では、少なくとも1つの特定の周波数(例えば、周波数f2,f5)の音の出力は、電動モータ3のモータトルク値Tの増大に応じて、車両2内でドライバが認識できない出力レベルからドライバが認識可能な出力レベルに増大される。
【0063】
この構成により、本実施形態では、モータトルク値の増大に応じて、人間の可聴音圧レベルを考慮すると、低周波数帯に新たな周波数の音が実質的に加えられることになる。このため、本実施形態では、低周波数帯における音圧レベルが増大されると共に、低周波数帯において周波数密度がより高められた音が生成されるので、合成音SCの低音域の音を増強することができる。
【0064】
また、本実施形態では、少なくとも1つの特定の周波数(例えば、周波数f1,f2,f4,f5)は、前記複数の周波数の他の少なくとも1つの周波数と和音の関係にある。
【0065】
この構成により、本実施形態では、モータトルク値Tの増大時に出力される合成音SCが、比較的高い協和度を有し、まとまりのある複数の音(和音)として人間の耳に響く。これにより、ドライバは、アクセル操作時に違和感の少ない合成音をフィードバックとして受け取ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、音制御装置10は、電動モータ3のモータ回転数Rに比例するように複数の周波数の各々の周波数f1~f9を設定し、音制御装置10は、複数の周波数のうちいずれかの周波数(例えば、周波数f5~f9)が所定の周波数閾値(例えば、500Hz)を超える場合、所定の周波数閾値を超える周波数の音の出力を低減する。
【0067】
本実施形態では、モータ回転数Rの増大とともに合成音SCを構成する音の周波数f1~f9が増加することによってドライバは車両の加速を認識することができるが、周波数が高くなり過ぎた音は、人間の耳に耳障りとなる。そこで、本実施形態では、所定の周波数閾値を超える周波数の音は、その出力が低減される。すなわち、モータ回転数Rが増大していくと、最も高い周波数f9から低い周波数f5に向けて、特定の周波数の音S9,S8,S7,S6,S5の出力が順番に低減されていく。このとき、モータ回転数Rの増大に応じて、最も高い周波数の音の出力が低減されるにもかかわらず、ドライバの耳には、無限音階の錯覚と同様に、合成音SCの周波数が全体として増加し続けていくように聞こえる。このため、本実施形態では、ドライバは、耳障りな高周波音を聞くことなく、モータ回転数の増大とともに耳で感じる周波数増加により、車両の加速を認識することができる。
【0068】
また、本実施形態では、複数の周波数f1~f9は、少なくとも1つの不協和音周波数f3を含み、この不協和音周波数f3は、複数の周波数f1~f9の他の周波数と不協和音の関係にあり、音制御装置10は、電動モータ3のモータ回転数Rが所定の回転数閾値(例えば、5000(rpm))を超えたとき、不協和音周波数f3の音S3の出力を増大させる。
【0069】
この構成により、本実施形態では、不協和音周波数f3の音S3が合成音SCの他の周波数の音Skと不協和音の関係にある。このため、不協和音周波数f3の音S3の出力が増大されると、この音S3と他の音Skとの間のうねりが大きくなる。このとき、ドライバは、うねりの存在により合成音SCに違和感(例えば、合成音SCが調和していない)を感知することができる。よって、ドライバは、この違和感により、所定の回転数閾値よりも高いモータ回転領域で、車両2が走行していることを認識することができる。一般に、電動車両では、モータ回転数が高い高回転領域では、モータトルクが小さくなる。よって、ドライバは、合成音SCの音質の変化(うねり)により、車両2のさらなる加速を得るためには、より大きなアクセルの踏み込み量が必要であることを容易に認識可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 車両用音生成装置
2 車両
3 電動モータ
10 制御装置
11 モータ回転数検出部
12 モータトルク検出部
13 制御部
14 メモリ
20 スピーカ
30 センサ群
31 モータ回転数センサ
32 車速センサ
33 アクセル開度センサ
34 ECU
M1 第1音圧設定マップ
M2 第2音圧設定マップ