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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】洗浄料用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20240314BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240314BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240314BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/46
A61K8/73
A61K8/92
A61Q19/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020560009
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2019047644
(87)【国際公開番号】W WO2020116566
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018229980
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】池田 直哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 瞬
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116761(JP,A)
【文献】特開2013-163658(JP,A)
【文献】"Made for All" Gentle Body Wash, ID# 6050033,Mintel GNPD[online],2018年10月,[検索日2024.02.01],<URL:http://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル酸性アミノ酸又はその塩と、
両性界面活性剤と、
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸と、
多価アルコールと、
を含み、
前記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量が、0.1~20質量%であり、
前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、前記両性界面活性剤の含有量(B)との比(A/B)が、質量基準で、0.3~3の範囲であり、
前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)が、1~25質量%であり、
前記多価アルコールの含有量が、1~40質量%であり、
pHが5.3以下であり、
25℃における粘度は3,500mPa・s以上である、
洗浄料用組成物。
【請求項2】
前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)、前記両性界面活性剤の含有量(B)、及び前記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量(C)が、質量基準で、下記式1の関係を満たす、請求項1に記載の洗浄料用組成物。
(式1):((A)+(B))/(C)=2.5~20
【請求項3】
前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、前記両性界面活性剤の含有量(B)との合計が、5質量%以上である、請求項1又は2に記載の洗浄料用組成物。
【請求項4】
更に、ポリマーを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【請求項5】
更に、油剤を含有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の洗浄料組成物。
【請求項6】
前記油剤が、固形油または半固形油を含む、請求項5に記載の洗浄料用組成物。
【請求項7】
前記多価アルコールが、グリセリン又はソルビトールを含む、請求項1乃至のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【請求項8】
前記両性界面活性剤が、スルタイン型界面活性剤を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【請求項9】
洗顔用である、請求項1乃至のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【請求項10】
前記アシル酸性アミノ酸又はその塩が、アシルグルタミン酸又はその塩である、請求項1乃至のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のクリーム状の洗顔用洗浄料は、その成り立ちから、界面活性剤の結晶が分散した晶析型と、界面活性剤分子集合体または高分子の絡み合いにより増粘した増粘型に大別される。晶析型は、界面活性剤の配合濃度が高くなり、製品中の原料コストが高くなる傾向がある。増粘型は、ひも状ミセルと呼ばれる界面活性剤分子集合体と高分子の絡まりあいにより増粘させている為、界面活性剤の配合濃度を低く抑えることが可能で、複雑な晶析操作を必要としないといった利点がある。
【0003】
一方、界面活性剤としては、アシル酸性アミノ酸が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2004-155716号公報)には、皮膚に対してマイルドで、優れた起泡力、泡質を有し、且つ使用感に優れた皮膚洗浄料を提供するため、アシル酸性アミノ酸、スルホコハク酸型界面活性剤、およびHLB10以上の非イオン界面活性剤を含有するクリーム状皮膚洗浄料が開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2008-100921号公報)には、洗顔時に肌への過度な摩擦を防ぐような剤型であり、肌に不快なつっぱり感を与えずにさっぱりとした感触であり、また洗い上がり時の肌につるつる感を付与する洗浄料に関する技術として、特定の構造を有する増粘性高分子化合物と、アシルアミノ酸型界面活性剤1~30質量%と、アルキルアミノジカルボン酸型界面活性剤とを含有する洗顔料が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2003-160797号公報)には、特定のアニオン界面活性剤と特定の液状エステル油とを特定の割合で含有し、ポリエーテル変性シリコーンおよびカチオン化ポリマーの中から選ばれる1種または2種以上と、所定の2価アルコールとをそれぞれ所定含有量含み、防腐性成分を実質的に含まない洗浄料組成物が開示されている。
【0007】
特許文献4(特開2008-88077号公報)には、(A)N-長鎖アシル酸性アミノ酸及び/又はその塩、(B)カチオン界面活性剤、(C)水を含む透明ゲル状組成物であって、(A)成分と(B)成分の重量比が所定範囲であり、(A)成分の含有量が所定範囲である、ヘアコンディショナーが開示されている。
【発明の概要】
【0008】
洗浄料用組成物の中には、例えば洗顔フォーム等、チューブに充填された状態で供給されるものも存在する。チューブに充填される洗浄料用組成物は、使用時に、チューブから掌に押し出される。この際、掌から流れ落ちてしまわない程度の粘度を有していることが求められる。
【0009】
アシル酸性アミノ酸は、それ自体で良好な泡性能を有しているものの、これを用いた洗浄料用組成物では、良好な泡性能を損なうことなく、チューブに充填して使用することができる程度の粘度を得ることが困難であった。
【0010】
そこで、本発明の課題は、アシル酸性アミノ酸を用いた洗浄料用組成物であって、泡量や泡立てやすさ等の泡性能を損なうことなく、チューブに充填されて使用されるのに適切な粘度を有する、洗浄料用組成物を提供することにある。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1]アシル酸性アミノ酸又はその塩と、両性界面活性剤と、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸とを含み、pHが5.3以下である、洗浄料用組成物。
[2]前記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量が、0.1~20質量%である、[1]に記載の洗浄料用組成物。
[3]前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)、前記両性界面活性剤の含有量(B)、及び前記ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量(C)が、質量基準で、下記式1の関係を満たす、[1]又は[2]に記載の洗浄料用組成物。
(式1):((A)+(B))/(C)=2.5~20
[4]前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、前記両性界面活性剤の含有量(B)との比(A/B)が、質量基準で、0.3~3の範囲である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[5]前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、前記両性界面活性剤の含有量(B)との合計が、5質量%以上である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[6]前記アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)が、1~25質量%である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[7]更に、ポリマーを含む、[1]乃至[6]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[8]更に、油剤を含有する、[1]乃至[7]のいずれかに記載の洗浄料組成物。
[9]前記油剤が、固形油または半固形油を含む、[8]に記載の洗浄料用組成物。
[10]更に、多価アルコールを含む、[1]乃至[9]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[11]前記多価アルコールの含有量が、1~40質量%である、[10]に記載の洗浄料用組成物。
[12]前記多価アルコールが、グリセリン又はソルビトールを含む、[10]又は[11]に記載の洗浄料用組成物。
[13]前記両性界面活性剤が、スルタイン型界面活性剤を含む、[1]乃至[12]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[14]25℃における粘度は3,500mPa・s以上である、[1]乃至[13]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[15]洗顔用である、[1]乃至[14]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[16]ゲル状である、[1]乃至[15]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
[17]前記アシル酸性アミノ酸又はその塩が、アシルグルタミン酸又はその塩である、[1]乃至[16]のいずれかに記載の洗浄料用組成物。
【0012】
本発明によれば、アシル酸性アミノ酸を用いた洗浄料用組成物であって、泡量や泡立てやすさ等の泡性能を損なうことなく、チューブに充填されて使用されるのに適切な粘度を有する、洗浄料用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施態様に係る洗浄料用組成物は、アシル酸性アミノ酸又はその塩と、両性界面活性剤とを含み、pHが5.3以下である。また、洗浄料組成物は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含む。このような構成を採用することによって、泡性能を損なうことなく、チューブに充填されて使用されるのに適切な粘度を得ることができる。
【0014】
(アシル酸性アミノ酸又はその塩)
本願発明の組成物は、アシル酸性アミノ酸又はその塩を含む。アシル酸性アミノ酸又はその塩における「酸性アミノ酸」としては、特に限定されるものでは無いが、例えばグルタミン酸、及びアスパラギン酸等が挙げられ、好ましくはグルタミン酸である。
グルタミン酸等のアシル酸性アミノ酸又はその塩としては、L体、D体、及びDL体のいずれの光学異性体のものも使用することができる。
アシル酸性アミノ酸又はその塩における「アシル」としては、例えば、炭素数が10~26、好ましくは12~18のアシル基が挙げられ、具体的には、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘニル基、オレオイル基及びヤシ油脂肪酸アシル基等が挙げられ、好ましくはヤシ油脂肪酸アシル基である。
アシル酸性アミノ酸又はその塩における「塩」としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム及び亜鉛などの無機塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の有機アミン塩、並びにアルギニン及びリジン等の塩基性アミノ酸等の有機塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
好ましいアシル酸性アミノ酸又はその塩は、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジカリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸カリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ジナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ジカリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミンであり、これらは単独であっても併用であっても構わない。
【0015】
(両性界面活性剤)
本願発明の組成物は、両性界面活性剤を含む。両性界面活性剤としては、ラウリルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウラミドヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、パーム核脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、パーム核油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ウンデシル-N-カルボキシメチルイミダリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ビス(ステアリル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリン)クロル酢酸錯体、ココアンホ酢酸Na、ココアンホジ酢酸2Na、ココアンホプロピオン酸Na、ココベタイン、ラウロアンホ酢酸Na及びステアリルベタインからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
好ましい両性界面活性剤は、ラウロアンホ酢酸Na、ココアンホ酢酸Na、ラウラミドプロピルベタイン、及びスルホン酸基含有両性界面活性剤である。スルホン酸基含有両性界面活性剤としては、スルタイン型両性界面活性剤が好ましく挙げられる。スルタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、及びパーム核脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルタイン等が挙げられる。
より好ましい両性界面活性剤は、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタインである。
【0016】
(その他の界面活性剤)
本発明の組成物には、上記の活性剤に加えて、さらにアニオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を含むことができる。
アニオン界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその誘導体の塩、アルキルザルコシンおよびその誘導体の塩、N-アルキル-N-メチル-β-アラニン塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、長鎖脂肪酸エチルエステルスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸等が挙げられる。
本発明の組成物には、実質的にその他のアニオン界面活性剤を含まない態様とすることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミド、アルキルグリコシド誘導体、糖アルコールヒドロキシ脂肪族エーテル誘導体等を挙げることができる。
本発明の組成物には、実質的にノニオン界面活性剤を含まない態様とすることができる。
【0017】
本発明の組成物は、界面活性剤と高分子の絡まりあいにより増粘させ、界面活性剤の配合濃度を低く抑えることが可能で、複雑な晶析操作を必要としないといった利点があるため、組成物中の界面活性剤の合計量は、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは24質量%以下、さらに好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下とすることができる。ここで「界面活性剤の合計量」には、アシル酸性アミノ酸又はその塩、両性界面活性剤、および、含有する場合は、その他のアニオン界面活性剤、ならびにノニオン界面活性剤の全合計量を意味する。界面活性剤の合計量は、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上とすることができ、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~25質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0018】
本実施態様に係る組成物中のアシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、両性界面活性剤の含有量(B)との合計(A+B)は、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは24質量%以下、さらに好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下とすることができる。また、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上とすることができ、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~25質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0019】
アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)と、両性界面活性剤の含有量(B)との質量比(A/B)は、好ましくは0.3~3、より好ましくは0.5~3、更に好ましくは0.7~3である。
質量比(A/B)が0.3以上であれば、泡立て時の速泡性改善効果が得られ、3以下であれば泡密度の向上効果が得られる。
【0020】
組成物中におけるアシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)は、例えば1~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは5~15質量%、更に好ましくは5~12質量%である。
含有量(A)が1質量%以上であれば泡立て時に大きな泡が立ちやすいという泡質改善効果が得られ、25質量%以下であれば速泡性改善という効果が得られる。
【0021】
(pH調整剤)
本実施態様に係る組成物のpHは、5.3以下であればよいが、4~5.3であることがより好ましい。pHが5.3以下であることにより、粘度の高い組成物を得やすくなる。
pHは、例えば、pH調整剤を添加することにより、調整することができる。好ましいpH調整剤としては、例えば、クエン酸水溶液が挙げられる。
【0022】
(ヒドロキシプロピルデンプンリン酸)
本実施態様に係る組成物は、既述のように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含む。
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を加えると、組成物の増粘効果が得られる。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量(C)は、例えば、0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~8質量%である。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量が0.1質量%以上であれば保存安定性向上の効果が得られ、20質量%以下であれば処方粘度の経時変化の安定化という効果が得られる。
【0023】
好ましくは、アシル酸性アミノ酸又はその塩の含有量(A)、両性界面活性剤の含有量(B)、及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量(C)は、質量基準で、下記式1の関係を満たす。
(式1):((A)+(B))/(C)=2.5~20
((A)+(B))/(C)の値が2.5以上であれば豊富な泡量が得られ、20以下であれば使用性に優れた粘度付与の効果が得られる。15以下が好ましく、10以下が好ましい。
【0024】
(他のポリマー)
本実施態様に係る組成物は、他のポリマーを含んでいてもよい。他のポリマーとしては、例えば、アクリレーツコポリマー(アクリル酸アルキル(C1-4)、メタクリル酸アルキル(C1-4)、アクリル酸およびメタクリル酸の中の2種以上の成分からなる共重合体)、高重合ポリエチレングリコール(例えば、重合度5000~50000のポリエチレングリコール)、(アクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマー、ポリエチレングリコールジステアレート、セテアレス-60ミリスチルグリコール、グアーガム、キサンタンガム、デンプン、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ベントナイト及びヘクトライトなどが挙げられる。
好ましいポリマーとしては、アクリレーツコポリマー、高重合ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジステアレート及びセテアレス-60ミリスチルグリコールなどが挙げられる。
【0025】
他のポリマーの含有量は、例えば、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。また、例えば、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
【0026】
(油剤)
本実施態様に係る組成物は、好ましくは、油剤を含む。油剤としては、特に限定されず、公知の油剤を使用することができる。
油剤としては、固形油または半固形油を用いることが好ましい。
油剤としては、例えば、ワセリン、スクワラン、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ヤシ油、パーム油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ミツロウ、液状ラノリン、流動パラフィン、スクワレン、ミンク油、ヒマシ油、卵黄油、椿油、大豆油、アマニ油、アボカド油、ラノリン、紅花油、サンフラワー油、及びローズマリー油等の動植物由来油、動植物由来油、鉱物油、ジメチルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサン、及びアミノ変性シリコーン油、などが挙げられる。動植物由来油または鉱物油としては、例えば、直鎖型、エステル型、またはトリグリセリド型の炭化水素系のものを用いることができる。
好ましい油剤としては、ワセリン、スクワラン、ホホバ油、マカダミアナッツ油が挙げられる。
【0027】
油剤の含有量は、例えば、1~30質量%、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。
油剤の含有量が1質量%以上であれば感触改良という効果が得られ、30質量%以下であれば増粘効果が得られる。
【0028】
(多価アルコール)
本実施態様に係る組成物には、多価アルコールが含まれていてもよい。多価アルコールが含まれていることにより、チューブから液だれすることなく吐出しやすい粘度を有する組成物を調製しやすくなる。
多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、イソプレングリコール及びジグリセリンなどが挙げられる。
好ましい多価アルコールとしては、グリセリン及びソルビトールが挙げられる。
【0029】
多価アルコールの含有量は、例えば1~40質量%、好ましくは2~40質量%、より好ましくは3~30質量%、更に好ましくは3.5~25質量%である。
【0030】
(水)
本実施態様に係る組成物は、溶媒として、水を含むことが好ましい。水としては、一般に洗浄剤や洗浄料に使用される程度の純度であれば、特に限定されない。具体的には、イオン交換水、井戸水、天然水、地下水、市水、硬水、軟水等が使用できる。
【0031】
(その他成分)
本実施態様に係る組成物には、上述の成分の他に、通常の洗浄料用組成物に用いられる各種成分を、適宜配合することができる。その様な成分として、例えば、キレート剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、アミノ酸、生理活性成分、酸化防止剤、パール化剤、抗炎症剤、抗菌剤、スクラブ剤、及び制汗剤などが挙げられる。
【0032】
本実施態様に係る組成物は、倒立チューブに充填された状態でユーザに供給される。本実施態様に係る組成物は、倒立チューブから吐出しやすい粘度を有しており、洗顔フォーム等のゲル状の洗顔用組成物として好適に使用することができる。
本発明の組成物において、25℃における粘度は3,500mPa・s以上であり、好ましくは4,000mPa・s以上であり、より好ましくは5,000mPa・s以上であり、さらに好ましくは10,000mPa・s以上、300,000mPa・s以上である。なお、25℃における粘度は、B型回転粘度計にて、ローターNo.1またはNo.2を用い、回転数=6rpm、12rpmおよび60rpmでそれぞれ25℃で測定して得られた測定値として算出される。
【0033】
(製造方法)
本実施態様に係る組成物は、水、界面活性剤、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸及び油剤、必要に応じてその他の添加剤と混合することにより得ることができる。詳細には、加熱撹拌により、全ての成分を一様に混合した後、25℃まで降温し組成物を得ることが出来る。
【0034】
(実施例)
以下、本発明について、実施例を用いて説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されて解釈されるものではない。
【0035】
以下の検討例において、粘度測定は、次のような手法により行った。
(粘度測定)
得られた各組成物の粘度(mPa・s)を、原体粘度として測定した。粘度の測定には、(株)東洋精機製作所製B型粘度計を用いた。具体的には、ガラスバイアル容器にサンプルを充填し、25℃に設定した室内で十分に放置した後に測定した。測定可能な最大粘度に合わせて測定条件(ローターNo、回転数、測定時間)を適宜調整し、測定を実施した。
【0036】
調製した実施例および比較例の各洗浄剤組成物について、下記の通り、泡量および泡立てやすさを評価した。
【0037】
(泡量の測定)
方法:サンプル約1gを掌上に乗せ、一定水流の水道水を用いて泡立て、下記の評価基準により、泡量を評価した。
<評価基準>
A:泡立つ
B:やや泡立つ
C:ほとんど泡立たない
【0038】
(泡立てやすさ)
方法:サンプル約1gを掌上に乗せ、一定水流の水道水を用いて泡立て、下記の評価基準により、泡立てやすさを評価した。
<評価基準>
A:泡立て時に組成物が溶けやすい
B:泡立て時に組成物がやや溶けやすい
C:泡立て時に組成物が溶けにくい
【0039】
検討例1:洗顔フォーム処方における検討
表に示される組成で、各成分を混合し、実施例及び比較例に係る組成物を得た。
得られた組成物についての評価結果を合わせて示す。表に記載した数値は活性成分の固形分量を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
アシル酸性アミノ酸に代えて、アシル中性アミノ酸を使用した比較例5は、泡量、泡立てやすさの点で劣っていた。
両性界面活性剤に代えて、デシルグルコシド(ノニオン界面活性剤)を使用した比較例2は、十分な粘度が得られなかった。
ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含有する実施例に係る組成物は、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を欠く比較例1に比べて粘度が高く、使用性も良好であった。
pHが5.3を超える比較例3および4に係る組成物は、十分な粘度が得られなかった。これらの組成物は、倒立チューブに充填して使用しようとすると、キャップを開いた時点や、掌の上に組成物を移した際に液だれが起こりやすく、倒立チューブ用の組成物として適切な粘度を有しているとは言えなかった。
一方、pHが5.3以下である実施例に係る組成物は、比較例よりも高い粘度を有していた。また、いずれの実施例も、粘度が高すぎて倒立チューブから吐出出来ない、ということもなかった。
【0042】
【表2】
【0043】
多価アルコールとしてソルビトールを使用した実施例7は良好な粘度を示した。ソルビトールに代えて、多価アルコールとしてグリセリン、油剤としてワセリンを使用した実施例8も、良好な粘度を示した。
【0044】
【表3】
【0045】
両性界面活性剤として、スルタイン型の両性界面活性剤を使用した実施例1、9~11、13は、スルタイン型の両性界面活性剤を使用していない実施例12と比較して、高粘度となった。
【0046】
使用した主な成分の供給元、及びその商品名は以下の通りである。
【表4】