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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】衝突被害軽減ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240314BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
B60T7/12 C
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020098651
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191660
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】菊間 信浩
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136813(JP,A)
【文献】特開2019-205078(JP,A)
【文献】特開2006-205773(JP,A)
【文献】特開2020-087214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行速度を取得可能に構成される車速取得部と、
前記自車両の周辺に位置する他車両の情報を取得可能に構成される車両情報取得部と、
前記自車両の前方に位置し、かつ前記他車両に相当することがある前方物体が前記自車両と衝突する可能性がある場合に、前記自車両の自動ブレーキを作動させるAEB制御を実行するように構成されるAEB制御装置と、
前記車両情報取得部により取得される前記他車両の取得情報に基づいて、前記他車両によって前記自車両に対して行われる嫌がらせ運転の有無を判定可能に構成される嫌がらせ判定部と
前記前方物体を検出可能に構成される前方検出部と
を備える衝突被害軽減ブレーキシステムであって、
前記嫌がらせ判定部は、前記車両情報取得部により取得される前記他車両の取得情報に基づいて、前記他車両が、
前記自車両の前方に急に割り込む行為、
前記自車両の前方で急ブレーキを掛ける行為、
前記自車両の後方で前記自車両との車間距離を狭めた状態で前記自車両を追走する行為、
車両幅方向にて前記自車両との車間距離を狭める行為、
前照灯の点滅を繰り返した状態又は前照灯のハイビーム及びロービームの切替を繰り返した状態で前記自車両の後方を走行する行為、
前記自車両の前方で蛇行する行為、または
前記自車両の前方で繰り返しブレーキを掛ける行為
を行った場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成され、
前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングを、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングよりも早めるブレーキ前倒し制御を実行するように構成され
前記AEB制御装置は、前記前方検出部が前記前方物体を所定の物体認識時間にわたって検出した場合に、前記前方物体の存在を認識するように構成され、
前記ブレーキ前倒し制御は、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第2設定値を、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第1設定値よりも短くすることによって実行されるようになっている衝突被害軽減ブレーキシステム。
【請求項2】
前記車両情報取得部が、前記自車両の後方に位置する前記他車両との後方距離を取得可能とするように構成され、
前記嫌がらせ判定部は、前記車速取得部により取得された前記自車両の走行速度の取得値が所定の走行速度閾値以上であり、かつ前記車両情報取得部により取得された前記後方距離の取得値が所定の後方距離閾値以下である状態が継続する時間を算出した追走継続時間の算出値が所定の追走継続時間閾値以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている、請求項に記載の衝突被害軽減ブレーキシステム。
【請求項3】
前記車両情報取得部が、前記自車両の側方に位置する前記他車両との側方距離を取得可能とするように構成され、
前記嫌がらせ判定部は、前記車速取得部により取得された前記自車両の走行速度の取得値が所定の走行速度閾値以上であり、かつ前記車両情報取得部により取得された前記側方距離の取得値が所定の側方距離閾値以下である状態が継続する時間を算出した幅寄せ継続時間の算出値が所定の幅寄せ継続時間閾値以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている、請求項1又は2に記載の衝突被害軽減ブレーキシステム。
【請求項4】
前記車両情報取得部が、前記自車両の後方に位置する前記他車両の前照灯の情報を取得可能に構成され、
前記嫌がらせ判定部は、前記車速取得部により取得された前記自車両の走行速度の取得値が0km/hよりも大きくなりながら、所定のパッシング判定時間内にて、前記車両情報取得部により取得された前記前照灯の取得情報に基づいて算出される前記前照灯の点滅回数の算出値が所定の点滅回数閾値以上であるか、又は前記前照灯の取得情報に基づいて算出される前記前照灯におけるハイビーム及びロービームの切替回数の算出値が所定の切替回数閾値以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の衝突被害軽減ブレーキシステム。
【請求項5】
前記車両情報取得部が、前記自車両の前方に位置する前記他車両との前方距離を取得可能とするように構成され、
前記車両情報取得部が、前記自車両の前方に位置する前記他車両の移動軌跡の情報を取得可能に構成され、
前記嫌がらせ判定部は、前記車両情報取得部により取得された前記前方距離の取得値が所定の前方距離閾値以下であり、かつ前記車両情報取得部により取得された前記他車両の移動軌跡の取得情報に基づいて前記他車両の蛇行有りと判定した場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の衝突被害軽減ブレーキシステム。
【請求項6】
前記車両情報取得部が、前記自車両の前方に位置する前記他車両のブレーキの情報を取得可能に構成され、
前記嫌がらせ判定部は、前記車速取得部により取得された前記自車両の走行速度の取得値が0km/hよりも大きくなりながら、所定のブレーキ判定時間内にて、前記車両情報取得部により取得された前記ブレーキの取得情報に基づいて算出されるブレーキ回数の算出値が所定のブレーキ回数閾値以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の衝突被害軽減ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌がらせ運転を行う他車両との衝突被害を軽減するために自動ブレーキを作動させるように構成される衝突被害軽減ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、「あおり運転」と呼ばれることがある嫌がらせ運転が社会問題となっている。例えば、嫌がらせ運転としては、次の(a)~(g)のような行為が挙げられる。
(a)加害車両が被害車両の前方に急に割り込む行為(以下、嫌がらせ割り込み」という)
(b)加害車両が被害車両の前方で急ブレーキを掛ける行為(以下、「嫌がらせ急ブレーキ」という)
(c)加害車両が被害車両の後方で被害車両との車間距離を狭めた状態で被害車両を追走する行為(以下、「嫌がらせ追走」という)
(d)加害車両が車両幅方向にて被害車両との車間距離を狭める行為(以下、「嫌がらせ幅寄せ」という)
(e)加害車両が前照灯の点滅を繰り返した状態又は前照灯のハイビーム及びロービームの切替を繰り返した状態で被害車両の後方を走行する行為(以下、「嫌がらせパッシング」という)
(f)加害車両が被害車両の前方で蛇行する行為(以下、「嫌がらせ蛇行」という)
(g)加害車両が被害車両の前方で繰り返しブレーキを掛ける行為(以下、「嫌がらせ繰り返しブレーキ」という)
【0003】
車両において、嫌がらせ運転に対処し得る手段としては、車両の進行方向に位置する物体との衝突を回避できるように構成される衝突被害軽減ブレーキ(以下、必要に応じて「AEB」という)が挙げられる。例えば、AEBにおいては、車両等の遮蔽物の陰から車両の前方に物体が突然飛び出してきた状況で、この物体と衝突する可能性を判断する時間が長いと、物体との衝突を回避するために車両を制動する時間が十分に取れないという問題がある。
【0004】
このような問題に対処するために様々なAEB技術が提案されている。AEB技術の一例としては、自車両と移動物との衝突の可能性を判定する衝突判定装置を有し、この衝突判定装置によって自車両と移動物との衝突の可能性が高いと判定された場合に衝突を緩和させる衝突緩和装置であって、衝突判定装置が、撮像画像中に検出された移動物に自車両が衝突する否かを判定する衝突判定手段と、移動物が、この移動物の少なくとも一部が他の物標の陰に隠れた状態、又は他の物標の陰から現れた状態を表す遮蔽状態であるか否かを判定する遮蔽判定手段と、移動物が遮蔽状態である場合、移動物が遮蔽状態でない場合と比較して、衝突判定手段が衝突に関する判定を終結するまでの時間を短く設定する設定変更手段とを有し、衝突判定手段が、移動物の移動軌跡を演算することによって衝突判定を行うように構成されている、衝突緩和装置が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-213776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、嫌がらせ運転において、加害車両が遮蔽物の陰から被害車両の前方に突然飛び出す状況は極めて少なく、特に、嫌がらせ割り込み及び/又は嫌がらせ急ブレーキは、この状況には当てはまらない。そのため、上記AEB技術の一例のように、移動物が遮蔽状態である場合に、移動物が遮蔽状態でない場合と比較して、衝突判定手段が衝突に関する判定を終結するまでの時間を短く設定すると、嫌がらせ割り込み及び/又は嫌がらせ急ブレーキが行われた状況では、車両を制動するための時間が十分に取れず、その結果、嫌がらせ運転を行う他車両に対しての衝突被害軽減効果を十分に得られないおそれが依然としてある。
【0007】
また、上記AEB技術の一例のように、移動物の移動軌跡を演算することによって衝突判定を行う場合において、衝突判定を終結するまでの時間を短くすると、移動軌跡の演算時間が十分に取れないために正確な移動軌跡が演算できず、その結果、衝突判定の精度が低くなるおそれがある。この場合もまた、嫌がらせ運転を行う他車両に対しての衝突被害軽減効果を十分に得られないおそれが依然としてある。
【0008】
このような実情を鑑みると、衝突被害軽減ブレーキシステムにおいては、嫌がらせ運転を行う他車両に対する衝突被害軽減効果を高めることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、一態様に係る衝突被害軽減ブレーキシステムは、自車両の走行速度を取得可能に構成される車速取得部と、前記自車両の周辺に位置する他車両の情報を取得可能に構成される車両情報取得部と、前記自車両の前方に位置し、かつ前記他車両に相当することがある前方物体が前記自車両と衝突する可能性がある場合に、前記自車両の自動ブレーキを作動させるAEB制御を実行するように構成されるAEB制御装置と、前記車両情報取得部により取得される前記他車両の取得情報に基づいて、前記他車両によって前記自車両に対して行われる嫌がらせ運転の有無を判定可能に構成される嫌がらせ判定部と、前記前方物体を検出可能に構成される前方検出部とを備える衝突被害軽減ブレーキシステムであって、前記嫌がらせ判定部は、前記車両情報取得部により取得される前記他車両の取得情報に基づいて、前記他車両が、前記自車両の前方に急に割り込む行為、前記自車両の前方で急ブレーキを掛ける行為、前記自車両の後方で前記自車両との車間距離を狭めた状態で前記自車両を追走する行為、車両幅方向にて前記自車両との車間距離を狭める行為、前照灯の点滅を繰り返した状態又は前照灯のハイビーム及びロービームの切替を繰り返した状態で前記自車両の後方を走行する行為、前記自車両の前方で蛇行する行為、または前記自車両の前方で繰り返しブレーキを掛ける行為を行った場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成され、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングを、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングよりも早めるブレーキ前倒し制御を実行するように構成され、前記AEB制御装置は、前記前方検出部が前記前方物体を所定の物体認識時間にわたって検出した場合に、前記前方物体の存在を認識するように構成され、前記ブレーキ前倒し制御は、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第2設定値を、前記嫌がらせ判定部が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第1設定値よりも短くすることによって実行されるようになっている。
【発明の効果】
【0010】
一態様に係る衝突被害軽減ブレーキシステムにおいては、嫌がらせ運転を行う他車両に対する衝突被害軽減効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る衝突被害軽減ブレーキ(AEB)システムを含む車両のブロック図である。
図2図2は、嫌がらせ割り込み及び嫌がらせ急ブレーキを説明するための平面図である。
図3図3は、嫌がらせ追走を説明するための平面図である。
図4図4は、嫌がらせ幅寄せを説明するための平面図である。
図5図5は、嫌がらせパッシングを説明するための平面図である。
図6図6は、嫌がらせ蛇行を説明するための平面図である。
図7図7は、嫌がらせ繰り返しブレーキを説明するための平面図である。
図8図8は、一実施形態に係るAEB制御を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、一実施形態に係るAEBシステムの制御方法を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、一実施形態に係る嫌がらせ運転の判定のうち嫌がらせ追走の判定を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、一実施形態に係る嫌がらせ運転の判定のうち嫌がらせ幅寄せの判定を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、一実施形態に係る嫌がらせ運転の判定のうち嫌がらせパッシングの判定を説明するためのフローチャートである。
図13図13は、一実施形態に係る嫌がらせ運転の判定のうち嫌がらせ蛇行の判定を説明するためのフローチャートである。
図14図14は、一実施形態に係る嫌がらせ運転の判定のうち嫌がらせ繰り返しブレーキの判定を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係る衝突被害軽減ブレーキシステムを、それを搭載した車両と共に、以下に説明する。なお、本実施形態に係る衝突被害軽減ブレーキ(以下、必要に応じて「AEB」という)システムを搭載した車両は、自動車となっている。しかしながら、かかる車両は、自動車以外の車両とすることもできる。なお、本明細書において、左方は、車両が前方を向いた状態での左手側を意味し、かつ右方は、車両が前方を向いた状態での右手側を意味するものとする。
【0013】
「AEBシステム及び車両の概略」
図1図7を参照して、本実施形態に係るAEBシステム10及びそれを搭載した車両1の概略を説明する。すなわち、AEBシステム10及び車両1は概略的には次のように構成される。
【0014】
図1に示すように、AEBシステム10は、自車両1の走行速度を取得可能に構成される車速取得部11を有する。図1図7を参照すると、AEBシステム10は、自車両1の周辺に位置する他車両Aの情報を取得可能に構成される車両情報取得部12を有する。なお、自車両1は車両1自体を意味する一方で、他車両Aは車両1以外の車両Aを意味するものとする。
【0015】
AEBシステム10は、自車両1の前方に位置する前方物体Bが自車両1と衝突する可能性がある場合に、自車両1の自動ブレーキを作動させるAEB制御(衝突被害軽減ブレーキ制御)を実行するように構成されるAEBブレーキ制御装置(衝突被害軽減制御装置)13を有する。他車両Aが、この前方物体Bに相当することもあり得る。AEBシステム10は、車両情報取得部12により取得される他車両Aの取得情報に基づいて、他車両Aによって自車両1に対して行われる嫌がらせ運転の有無を判定可能に構成される嫌がらせ判定部14を有する。
【0016】
このようなAEBシステム10は、嫌がらせ判定部14が嫌がらせ運転有りと判定した場合における自動ブレーキの作動開始タイミングを、嫌がらせ判定部14が嫌がらせ運転無しと判定した場合における自動ブレーキの作動開始タイミングよりも早めるブレーキ前倒し制御を実行するように構成されている。
【0017】
さらに、本実施形態に係るAEBシステム10は、概略的には次のように構成することができる。図1及び図2に示すように、AEBシステム10は、前方物体Bを検出可能に構成される前方検出部40を有する。なお、図2においては、嫌がらせ割り込み及び嫌がらせ急ブレーキを行う他車両Aが前方物体Bに相当する。図2においては、仮想線により示される移動前の他車両Aが、片側矢印Xにより示すように自車両1の前方に移動する嫌がらせ割り込みを行い、さらに、実線により示される移動後の他車両Aが、自車両1の前方で急ブレーキを掛ける嫌がらせ急ブレーキを行っている。
【0018】
AEB制御装置13は、前方検出部40が前方物体Bを所定の物体認識時間にわたって検出した場合に、前方物体Bの存在を認識する物体認識を実行可能とするように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、嫌がらせ判定部14が嫌がらせ運転有りと判定した場合に設定される物体認識時間の第2設定値w2を、嫌がらせ判定部14が嫌がらせ運転無しと判定した場合に設定される物体認識時間の第1設定値w1よりも短くすることによって実行される。
【0019】
図3に示すように、車両情報取得部12は、自車両1の後方に位置する他車両Aとの後方距離を取得可能とするように構成される。嫌がらせ判定部14は、自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0以上であり、かつ車両情報取得部12により取得された後方距離の取得値fが所定の後方距離閾値f0以下である状態が継続する時間を算出した追走継続時間の算出値gが所定の追走継続時間閾値g0以上である場合に、嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。この場合、嫌がらせ運転のうち嫌がらせ追走が有るものと判定されることとなる。
【0020】
図4に示すように、車両情報取得部12は、自車両1の側方に位置する他車両Aとの側方距離を取得可能とするように構成されている。嫌がらせ判定部14は、自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0以上であり、かつ車両情報取得部12により取得された側方距離の取得値hが所定の側方距離閾値h0以下である状態が継続する時間を算出した幅寄せ継続時間の算出値iが所定の幅寄せ継続時間閾値i0以上である場合に、嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。この場合、嫌がらせ運転のうち嫌がらせ幅寄せが有るものと判定されることとなる。
【0021】
図5に示すように、車両情報取得部12が、自車両1の後方に位置する他車両Aの前照灯Cの情報を取得可能に構成されている。嫌がらせ判定部14は、自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きくなりながら、所定のパッシング判定時間j内にて、車両情報取得部12により取得された前照灯Cの取得情報に基づいて算出される前照灯Cの点滅回数の算出値kが所定の点滅回数閾値k0以上であるか、又は前照灯Cの取得情報に基づいて算出される前照灯Cにおけるハイビーム及びロービームの切替回数の算出値mが所定の切替回数閾値m0以上である場合に、嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。この場合、嫌がらせ運転のうち嫌がらせパッシングが有るものと判定されることとなる。
【0022】
図6に示すように、車両情報取得部12が、自車両1の前方に位置する他車両Aとの前方距離を取得可能とするように構成される。車両情報取得部12は、自車両1の前方に位置する他車両Aの移動軌跡の情報を取得可能に構成されている。嫌がらせ判定部14は、車両情報取得部12により取得された前方距離の取得値nが所定の前方距離閾値n0以下であり、かつ片側矢印Yにより示すように、車両情報取得部12により取得された他車両Aの移動軌跡の取得情報に基づいて他車両Aの蛇行有りと判定した場合に、嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。この場合、嫌がらせ運転のうち嫌がらせ蛇行が有るものと判定されることとなる。
【0023】
図7に示すように、車両情報取得部12が、自車両1の前方に位置する他車両Aのブレーキの情報を取得可能に構成されている。嫌がらせ判定部14は、自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きくなりながら、所定のブレーキ判定時間p内にて、車両情報取得部12により取得されたブレーキの取得情報に基づいて算出されるブレーキ回数の算出値qが所定のブレーキ回数閾値q0以上である場合に、嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。この場合、嫌がらせ運転のうち嫌がらせ繰り返しブレーキが有るものと判定されることとなる。
【0024】
「AEBシステム及び車両の詳細」
図1図7を参照すると、AEBシステム10及び車両1は、詳細には次のように構成することができる。図1に示すように、車両1は、この車両1を制動可能とするように構成されるブレーキ装置20を含む。AEBシステム10がブレーキ装置20を含むこともできる。
【0025】
ここで、本実施形態のように車両1が自動車である場合においては、車両1は、典型的には4つの車輪2を有する。ブレーキ装置20は、各車輪2を制動可能とするように構成されるブレーキ21を有する。ブレーキ装置20は、各ブレーキ21を作動させるべくこのブレーキ21にブレーキ液圧を付加することができるように構成されるブレーキアクチュエータ22を有する。図2に示すように、AEB制御装置13は、車両1が前方物体Bと衝突する可能性がある場合にAEB制御を実行すべく、このようなブレーキ装置20を直接的又は間接的に制御する。
【0026】
図1に示すように、車両1は、各車輪2の回転速度を検出可能とするように構成される車輪速度センサ30を有する。AEBシステム10が車輪速度センサ30を含むこともできる。
【0027】
図1図2図6、及び図7を参照すると、上述した前方検出部40は、自車両1から前方物体Bまでの前方距離を検出可能とする。前方検出部40は、AEB制御にて前方物体Bを検出するために用いることができる。
【0028】
図1図3、及び図5を参照すると、車両1は、自車両1の後方に位置する他車両Aを検出可能とするように構成される後方検出部50を有する。後方検出部50はまた、自車両1からその後方の他車両Aまでの後方距離を検出可能とする。
【0029】
図1及び図4を参照すると、車両1は、この車両1の左方及び右方に位置する他車両Aをそれぞれ検出可能とするように構成される2つの側方検出部60,70を有する。さらに、各側方検出部60,70は、車両1からその左方又は右方の他車両Aまでの側方距離を検出可能とする。
【0030】
すなわち、車両1は、この車両1の左方に位置する他車両Aを検出可能とするように構成される左方検出部60と、この車両1の右方に位置する他車両Aを検出可能とするように構成される右方検出部70とを有する。左方検出部60は、車両1からその左方の他車両Aまでの左方距離を検出可能とし、かつ右方検出部70は、車両1からその右方の他車両Aまでの右方距離を検出可能とする。
【0031】
AEBシステム10が、このような前方、後方、左方、及び右方検出部40,50,60,70を含むこともできる。前方、後方、左方、及び右方検出部40,50,60,70のそれぞれはカメラとなっている。特に、前方検出部40は、AEB制御にて前方物体Bを検出するために用いられるカメラ、又は全方位モニタ用のカメラとすることができる。後方、左方、及び右方検出部40,50,60,70のそれぞれは全方位モニタ用のカメラとすることができる。
【0032】
しかしながら、前方、後方、左方、及び右方検出部は、これらに限定されない。例えば、前方、後方、左方、又は右方検出部は、ミリ波レーダ、赤外線レーザーレーダ、ソナーセンサ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等とすることができる。さらに、前方、後方、左方、又は右方検出部は、カメラと、ミリ波レーダ、赤外線レーザーレーダ、又はソナーセンサとの組み合わせとすることもできる。
【0033】
AEBシステム10の車速取得部11、車両情報取得部12、AEB制御装置13、及び嫌がらせ判定部14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成することができる。ROMは、各種制御定数、各種マップ、各種制御を実行するためのプログラム等を記憶することができる。しかしながら、AEBシステムの車速取得部、車両情報取得部、AEB制御装置、及び嫌がらせ判定部は、これらに限定されない。また、嫌がらせ判定部が、車速取得部及び車両情報取得部のうち少なくとも1つを部分的又は全体的に含むこともできる。
【0034】
「車速取得部の詳細」
図1を参照すると、車速取得部11は、次のように構成することができる。車速取得部11は、各車輪速度センサ30により検出される車輪2の回転速度の検出値に基づいて車両1の走行速度を算出するように構成される。しかしながら、車速取得部は、車速センサ等とすることもできる。
【0035】
「車両情報取得部の詳細」
図1及び図3図7を参照すると、車両情報取得部12は、次のように構成することができる。図1及び図3を参照すると、車両情報取得部12は、後方検出部50が自車両1の後方に位置する他車両Aを検出した場合に、後方検出部50により得られる他車両Aとの後方距離の検出値に基づいて他車両Aとの後方距離を取得可能とする。車両情報取得部12は、後方距離の取得値fが所定の後方距離閾値f0以下である状態が継続する時間である追走継続時間を算出可能とする。
【0036】
図1及び図4を参照すると、車両情報取得部12は、各側方検出部60,70が自車両1の側方、すなわち、左方又は右方に位置する他車両Aを検出した場合に、その側方検出部60,70により得られる他車両Aとの側方距離の検出値に基づいて他車両Aとの側方距離を取得可能とする。車両情報取得部12は、側方距離の取得値hが所定の側方距離閾値h0以下である状態が継続する時間である幅寄せ継続時間を算出可能とする。
【0037】
図1及び図5を参照すると、車両情報取得部12は、後方検出部50が自車両1の後方に位置する他車両Aを検出した場合に、後方検出部50により得られる他車両Aの画像から他車両Aの前照灯Cの情報を取得可能とする。車両情報取得部12により得られる前照灯Cの取得情報は、前照灯Cの点灯及び消灯状態をそれぞれ認識したものとすることができる。この場合、車両情報取得部12は、前照灯Cの取得情報に基づいて、所定のパッシング判定時間j内における前照灯Cの点滅回数を算出可能とする。
【0038】
前照灯Cの取得情報はまた、前照灯Cのハイビーム及びロービーム状態をそれぞれ認識したものとすることもできる。この場合、車両情報取得部12は、前照灯Cの取得情報に基づいて、所定のパッシング判定時間j内における前照灯Cのハイビーム及びロービームの切替回数を算出可能とする。
【0039】
図1及び図6を参照すると、車両情報取得部12は、前方検出部40が前方物体Bである他車両Aを検出した場合に、前方検出部40により得られる他車両Aとの前方距離の検出値に基づいて他車両Aとの後方距離を取得可能とする。さらに、車両情報取得部12は、前方検出部40が前方物体Bである他車両Aを検出した場合に、前方検出部40により得られる他車両Aの画像から他車両Aの移動軌跡を取得可能とする。車両情報取得部12は、他車両Aの移動軌跡の取得情報に基づいて、所定の蛇行判定時間t内における他車両Aの左右振れ回数を算出可能に構成される。
【0040】
図1及び図7を参照すると、車両情報取得部12は、前方検出部40が前方物体Bである他車両Aを検出した場合に、前方検出部40により得られる他車両Aの画像から他車両AのブレーキランプDの情報を取得可能とする。車両情報取得部12により得られるブレーキランプDの取得情報は、ブレーキランプDの点灯及び消灯状態をそれぞれ認識したものとすることができる。車両情報取得部12は、ブレーキランプDの取得情報に基づいて、ブレーキ判定時間p内におけるブレーキランプDの点滅回数を算出する。さらに、車両情報取得部12は、ブレーキランプDの点滅回数の算出値kからブレーキ回数を算出する。
【0041】
「AEB制御装置の詳細」
図1及び図2を参照すると、AEB制御装置13は、次のように構成することができる。AEB制御装置13は、ブレーキ前倒し制御を実行することができる。AEB制御装置13は、上記物体認識により認識された前方物体Bが、自車両1との衝突を回避すべき衝突回避対象であるか否かを判定する回避判定を実行可能とする。AEB制御装置13は、回避判定部13bが前方物体Bを衝突回避対象として判定した場合に、前方物体Bの挙動から移動軌跡を予測する移動予測を実行可能とする。
【0042】
AEB制御装置13は、自車両1の走行速度の取得値e、予測される自車両1の進路軌跡の予測情報、移動予測部13cにより予測された前方物体Bの移動軌跡の予測情報等に基づいて、自車両1及び前方物体Bの衝突の可能性を判定する衝突判定を実行可能とする。AEB制御装置13は、衝突判定部13dが自車両1及び前方物体Bの衝突の可能性有りと判定した場合に、この衝突を回避するためにブレーキ装置20を直接的又は間接的に制御するブレーキ制御を実行可能とする。
【0043】
「嫌がらせ判定部の詳細」
図1及び図3図7を参照すると、嫌がらせ判定部14は、詳細には次のように構成することができる。嫌がらせ判定部14は、嫌がらせ判定有りと判定した結果を所定の嫌がらせ判定保持時間rの間に保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、この嫌がらせ判定保持時間rの間に実行される。
【0044】
図1及び図3を参照すると、嫌がらせ判定部14は、車速取得部11により取得される自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0以上であるか否かを判定する車速判定を実行可能とする。嫌がらせ判定部14は、車両情報取得部12により算出される追走継続時間の算出値gが所定の追走継続時間閾値g0以上であるか否かを判定する追走継続判定を実行可能とする。なお、上述のように、追走継続時間は、後方距離の取得値fが所定の後方距離閾値f0以下である状態が継続する時間である。嫌がらせ判定部14は、車速判定及び追走継続判定に基づいて、嫌がらせ追走の有無を判定することができる。
【0045】
嫌がらせ判定部14は、嫌がらせ追走有りと判定した結果を所定の追走判定保持時間r1の間にて保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、この追走判定保持時間r1の間に実行される。追走判定保持時間r1は、嫌がらせ判定保持時間rの1つである。
【0046】
走行速度閾値e0は、自車両1の渋滞又は徐行時の最大走行速度とすることができる。一例として、走行速度閾値e0は、約40km/hとすることができる。一例として、後方距離閾値f0は、約3m(メートル)とすることができる。一例として、追走継続時間閾値g0は、約3秒とすることができる。一例として、追走判定保持時間r1は、約10秒とすることができる。しかしながら、走行速度閾値、後方距離閾値、追走継続時間閾値、及び追走判定保持時間は、これらに限定されない。
【0047】
図1及び図4を参照すると、嫌がらせ判定部14は、車両情報取得部12により算出される幅寄せ継続時間の算出値iが所定の幅寄せ継続時間閾値i0以上であるか否かを判定する幅寄せ継続判定を実行可能とする。なお、幅寄せ継続時間は、側方距離の取得値hが所定の側方距離閾値h0以下である状態が継続する時間である。嫌がらせ判定部14は、車速判定及び幅寄せ継続判定に基づいて、嫌がらせ幅寄せの有無を判定することができる。
【0048】
嫌がらせ判定部14は、嫌がらせ幅寄せ有りと判定した結果を所定の幅寄せ判定保持時間r2の間にて保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、この幅寄せ判定保持時間r2の間に実行される。幅寄せ判定保持時間r2は、嫌がらせ判定保持時間rの1つである。
【0049】
一例として、側方距離閾値h0は、約0.5mとすることができる。一例として、幅寄せ継続時間閾値i0は、約3秒とすることができる。一例として、幅寄せ判定保持時間r2は、約10秒とすることができる。しかしながら、側方距離閾値、幅寄せ継続時間閾値、及び幅寄せ判定保持時間は、これらに限定されない。
【0050】
図1及び図5を参照すると、嫌がらせ判定部14は、自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きいか否かを判定する走行判定を実行可能とする。すなわち、走行判定は、車両1が走行しているか又は停止しているかを判定する。嫌がらせ判定部14は、所定のパッシング判定時間j内における前照灯Cの点滅回数の算出値kが所定の点滅回数閾値k0以上であるか否かを判定する点滅判定を実行可能とする。嫌がらせ判定部14は、所定のパッシング判定時間j内における前照灯Cにおけるハイビーム及びロービームの切替回数の算出値mが所定の切替回数閾値m0以上であるか否かを判定する切替判定を実行可能とする。嫌がらせ判定部14は、走行判定及び点滅又は切替判定に基づいて、嫌がらせパッシングの有無を判定することができる。
【0051】
嫌がらせ判定部14は、嫌がらせパッシング有りと判定した結果を所定のパッシング判定保持時間r3の間にて保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、このパッシング判定保持時間r3の間に実行される。パッシング判定保持時間r3は、嫌がらせ判定保持時間rの1つである。
【0052】
一例として、パッシング判定時間jは、約2秒とすることができる。一例として、点滅回数閾値k0は、5回とすることができる。一例として、切替回数閾値m0は、5回とすることができる。一例として、パッシング判定保持時間r3は、約60秒とすることができる。しかしながら、パッシング判定時間、点滅回数閾値、切替回数閾値、及びパッシング判定保持時間は、これらに限定されない。
【0053】
図1及び図6を参照すると、嫌がらせ判定部14は、前方距離の取得値nが所定の前方距離閾値n0以下であるか否かを判定する前方距離判定を実行可能とする。嫌がらせ判定部14は、車両情報取得部12により算出される所定の蛇行判定時間t内における他車両Aの左右振れ回数の算出値uが所定の左右振れ回数閾値u0以上であるか否かを判定する蛇行判定を実行可能とする。なお、蛇行判定は、所定の蛇行判定時間t内における他車両Aの左右振れ回数の算出値uが所定の左右振れ回数閾値u0以上である場合に、他車両Aの蛇行有りと判定する。嫌がらせ判定部14は、前方距離判定及び蛇行判定に基づいて、嫌がらせ蛇行の有無を判定することができる。
【0054】
嫌がらせ判定部14は、嫌がらせ蛇行有りと判定した結果を所定の蛇行判定保持時間r4の間にて保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、この蛇行判定保持時間r4の間に実行される。蛇行判定保持時間r4は、嫌がらせ判定保持時間rの1つである。
【0055】
一例として、前方距離閾値n0は、約10mとすることができる。一例として、蛇行判定時間tは、約3秒とすることができる。一例として、左右振れ回数閾値u0は、5回とすることができる。一例として、蛇行判定保持時間r4は、約60秒とすることができる。しかしながら、前方距離閾値、蛇行判定時間、左右振れ回数閾値、及び蛇行判定保持時間は、これらに限定されない。
【0056】
図1及び図7を参照すると、嫌がらせ判定部14は、車両情報取得部12により算出されるブレーキ判定時間p内におけるブレーキ回数の算出値qが所定のブレーキ回数閾値q0以上であるか否かを判定するブレーキ判定を実行可能とする。嫌がらせ判定部14は、走行判定及びブレーキ判定に基づいて、嫌がらせ繰り返しブレーキの有無を判定することができる。
【0057】
嫌がらせ判定部14は、嫌がらせ繰り返しブレーキ有りと判定した結果を所定の繰り返しブレーキ判定保持時間r5の間にて保持するように構成されている。ブレーキ前倒し制御は、この繰り返しブレーキ判定保持時間r5の間に実行される。繰り返しブレーキ判定保持時間r5は、嫌がらせ判定保持時間rの1つである。
【0058】
一例として、ブレーキ判定時間pは、約3秒とすることができる。一例として、ブレーキ回数閾値q0は、5回とすることができる。繰り返しブレーキ判定保持時間r5は、約60秒とすることができる。しかしながら、ブレーキ判定時間、ブレーキ回数閾値、及び繰り返し判定保持時間は、これらに限定されない。
【0059】
「AEB制御及びAEBブレーキシステムの制御方法」
図8及び図9を参照して、本実施形態に係るAEB制御及びAEBシステム10の制御方法について説明する。最初に、図8を参照して、AEB制御について説明する。前方物体Bを検出することを目的として、自車両1の前方を監視する(ステップS1)。前方物体Bが物体認識時間にわたって検出されたか否かを判定する(ステップS2)。
【0060】
前方物体Bが物体認識時間にわたって検出されなかった場合(NO)、自車両1の前方の監視を継続する(ステップS1)。前方物体Bが物体認識時間にわたって検出された場合(YES)、前方物体Bの存在を認識する(ステップS3)。認識された前方物体Bが衝突回避対象か否かを判定する(ステップS4)。
【0061】
認識された前方物体Bが衝突回避対象でなかった場合(NO)、自車両1の前方の監視を再開する(ステップS1)。認識された前方物体Bが衝突回避対象であった場合(YES)、衝突回避対象である前方物体Bの挙動から移動軌跡を予測する(ステップS5)。自車両1の走行速度の取得値e、予測された自車両1の進路軌跡の予測情報、予測された前方物体Bの移動軌跡の予測情報等に基づいて、自車両1及び前方物体Bの衝突の可能性を判定する(ステップS6)。
【0062】
衝突の可能性無しの場合(NO)、自車両1の前方の監視を再開する(ステップS1)。衝突の可能性有りの場合(YES)、衝突を回避するために自動ブレーキを作動させる(ステップS7)。
【0063】
次に、図9を参照して、AEBシステム10の制御方法について説明する。AEB制御の上記物体認識時間を第1設定値w1に設定する(ステップS11)。自車両1の走行速度を取得する(ステップS12)。自車両1の周辺に位置する他車両Aの情報を取得する(ステップS13)。他車両Aの取得情報に基づいて、嫌がらせ運転の有無を判定する(ステップS14)。
【0064】
嫌がらせ運転無しの場合(NO)、AEB制御の物体認識時間を第1設定値w1のままとする(ステップS11)。嫌がらせ運転有りの場合(YES)、嫌がらせ判定保持時間rの間、AEB制御の物体認識時間を第1設定値w1から早めた第2設定値w2に変更する(ステップS15)。嫌がらせ判定保持時間rの経過後、AEB制御の物体認識時間を第1設定値w1に再び設定する(ステップS11)。
【0065】
「各種嫌がらせ運転の判定」
図10図14を参照して、本実施形態に係るAEBシステム10の制御方法における各種嫌がらせ運転の判定について説明する。最初に、図10を参照して、嫌がらせ追走の判定について説明する。自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0以上か否かを判定する(ステップS21)。
【0066】
自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0未満である場合(NO)、嫌がらせ追走無しと判定する(ステップS22)。自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0以上である場合、後方距離の取得値fが後方距離閾値f0以下である状態が継続する時間である追走継続時間を算出する(ステップS23)。追走継続時間の算出値gが追走継続時間閾値g0以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0067】
追走継続時間の算出値gが追走継続時間閾値g0以上である場合(YES)、嫌がらせ追走有りと判定する(ステップS25)。追走継続時間の算出値gが追走継続時間閾値g0未満である場合(NO)、嫌がらせ追走無しと判定する(ステップS22)。
【0068】
図11を参照して、嫌がらせ幅寄せの判定について説明する。自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0以上であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0069】
自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0未満である場合(NO)、嫌がらせ幅寄せ無しと判定する(ステップS32)。自車両1の走行速度の取得値eが走行速度閾値e0以上である場合(YES)、側方距離の取得値hが所定の側方距離閾値h0以下である状態が継続する時間である幅寄せ継続時間を算出する(ステップS33)。幅寄せ継続時間の算出値iが幅寄せ継続時間閾値i0以上であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0070】
幅寄せ継続時間の算出値iが幅寄せ継続時間閾値i0以上である場合(YES)、嫌がらせ幅寄せ有りと判定する(ステップS35)。幅寄せ継続時間の算出値iが幅寄せ継続時間閾値i0未満である場合(NO)、嫌がらせ幅寄せ無しと判定する(ステップS32)。
【0071】
図12を参照して、嫌がらせパッシングの判定について説明する。自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きいか否かを判定する(ステップ41)。
【0072】
自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/h以下である場合(NO)、嫌がらせパッシング無しと判定する(ステップS42)。自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きい場合(YES)、パッシング判定時間j内における前照灯Cの点滅回数を算出する(ステップS43)。前照灯Cの点滅回数の算出値kが点滅回数閾値k0以上であるか否かを判定する(ステップS44)。
【0073】
前照灯Cの点滅回数の算出値kが点滅回数閾値k0以上である場合(YES)、嫌がらせパッシング有りと判定する(ステップS45)。前照灯Cの点滅回数の算出値kが点滅回数閾値k0未満である場合(NO)、パッシング判定時間j内における前照灯Cのハイビーム及びロービームの切替回数を算出する(ステップS46)。ハイビーム及びロービームの切替回数の算出値mが切替回数閾値m0以上であるか否かを判定する(ステップS47)。
【0074】
切替回数の算出値mが切替回数閾値m0以上である場合(YES)、嫌がらせパッシング有りと判定する(ステップS45)。切替回数の算出値mが切替回数閾値m0未満である場合(NO)、嫌がらせパッシング無しと判定する(ステップS42)。
【0075】
図13を参照して、嫌がらせ蛇行の判定について説明する。前方距離の取得値nが前方距離閾値n0以下であるか否かを判定する(ステップS51)。前方距離の取得値nが前方距離閾値n0よりも大きい場合(NO)、嫌がらせ蛇行無しと判定する(ステップS52)。前方距離の取得値nが前方距離閾値n0以下である場合(YES)、蛇行判定時間t内における他車両Aの左右振れ回数を算出する(ステップS53)。他車両Aの左右振れ回数の算出値uが左右振れ回数閾値u0以上であるか否かを判定する(ステップS54)。
【0076】
他車両Aの左右振れ回数の算出値uが左右振れ回数閾値u0以上である場合(YES)、嫌がらせ蛇行運転有りと判定する(ステップS55)。他車両Aの左右振れ回数の算出値uが左右振れ回数閾値u0未満である場合(NO)、嫌がらせ蛇行無しと判定する(ステップS52)。
【0077】
図14を参照して、嫌がらせ繰り返しブレーキの判定について説明する。自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きいか否かを判定する(ステップ61)。
【0078】
自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/h以下である場合(NO)、嫌がらせ繰り返しブレーキ無しと判定する(ステップS62)。自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きい場合(YES)、ブレーキ判定時間p内におけるブレーキ回数を算出する(ステップS63)。ブレーキ回数の算出値qがブレーキ回数閾値q0以上であるか否かを判定する(ステップS64)。
【0079】
ブレーキ回数の算出値qがブレーキ回数閾値q0以上である場合(YES)、嫌がらせ繰り返しブレーキ有りと判定する(ステップS65)。ブレーキ回数の算出値qがブレーキ回数閾値q0未満である場合(NO)、嫌がらせ繰り返しブレーキ無しと判定する(ステップS62)。
【0080】
嫌がらせ運転の判定にあたっては、嫌がらせ追走の判定、嫌がらせ幅寄せの判定、嫌がらせパッシングの判定、嫌がらせ蛇行の判定、及び嫌がらせ繰り返しブレーキのうち少なくとも2つの判定を所望の順番で行うことができる。また、嫌がらせ運転の判定にあたっては、嫌がらせ追走の判定、嫌がらせ幅寄せの判定、嫌がらせパッシングの判定、嫌がらせ蛇行の判定、及び嫌がらせ繰り返しブレーキのうち1つの判定のみを行うこともできる。
【0081】
以上、本実施形態に係るAEBシステム10は、自車両1の走行速度を取得可能に構成される車速取得部11と、前記自車両1の周辺に位置する他車両Aの情報を取得可能に構成される車両情報取得部12と、前記自車両1の前方に位置し、かつ前記他車両Aに相当することがある前方物体Bが、前記自車両1と衝突する可能性がある場合に前記自車両1の自動ブレーキを作動させるAEB制御を実行するように構成されるAEB制御装置13と、前記車両情報取得部12により取得される前記他車両Aの取得情報に基づいて、前記他車両Aによって前記自車両1に対して行われる嫌がらせ運転の有無を判定可能に構成される嫌がらせ判定部14とを備えるAEBブレーキシステム10であって、前記嫌がらせ判定部14が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングを、前記嫌がらせ判定部14が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合における前記自動ブレーキの作動開始タイミングよりも早めるブレーキ前倒し制御を実行するように構成されている。
【0082】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせ割り込み及び/又は嫌がらせ急ブレーキのような嫌がらせ運転が行われる場合であっても、嫌がらせ運転を把握した後、直ちに自動ブレーキの作動開始タイミングを早めることができる。よって、嫌がらせ運転を行う他車両Aに対する衝突被害軽減効果を高めることができる。
【0083】
本実施形態に係るAEBシステム10は、前記前方物体Bを検出可能に構成される前方検出部40を備え、前記AEB制御装置13は、前記前方検出部40が前記前方物体Bを所定の物体認識時間にわたって検出した場合に、前記前方物体Bの存在を認識するように構成され、前記ブレーキ前倒し制御は、前記嫌がらせ判定部14が前記嫌がらせ運転有りと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第2設定値w2を、前記嫌がらせ判定部14が前記嫌がらせ運転無しと判定した場合に設定される前記物体認識時間の第1設定値w1よりも短くすることによって実行されるようになっている。
【0084】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせ運転を把握した後、直ちに上記AEB制御の物体認識時間を短縮し、これによって、自動ブレーキの作動開始のタイミングを早めることができる。そのため、先行技術のように衝突回避対象の移動軌跡を予測する時間を短縮することを行わずとも、自動ブレーキの作動開始のタイミングを早めることができる。
【0085】
さらに、衝突回避対象である前方物体Bの移動軌跡を予測する時間を十分に確保することができるので、この移動軌跡の予測精度の低下を防止できる。そして、嫌がらせ運転が行われていると判定された場合においては、衝突回避対象が、この嫌がらせ運転を行っている他車両Aである可能性が極めて高い。そのため、嫌がらせ運転が行われている状況下において、安全かつ素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0086】
本実施形態に係るAEBシステム10においては、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の後方に位置する前記他車両Aとの後方距離を取得可能とするように構成され、前記嫌がらせ判定部14は、前記車速取得部11により取得された前記自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0以上であり、かつ前記車両情報取得部12により取得された前記後方距離の取得値fが所定の後方距離閾値f0以下である状態が継続する時間を算出した追走継続時間の算出値gが所定の追走継続時間閾値g0以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。
【0087】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせ追走を嫌がらせ運転として判定することができる。そのため、例えば、嫌がらせ追走を行っていた他車両Aが、自車両1を追い越した後に嫌がらせ割り込みを行って、さらに嫌がらせ急ブレーキを行った場合において、嫌がらせ追走の段階から早期に嫌がらせ運転を把握でき、その結果、より安全かつより素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0088】
その一方で、渋滞、徐行等のような低速走行状態では自車両1と後続の他車両Aとの車間距離が短くなる場合があるが、この場合を嫌がらせ追走と判定することは不適切である。これに対して、本実施形態に係るAEBシステム10においては、自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0よりも小さい場合には、自車両1と後続の他車両Aとの車間距離が短くとも、嫌がらせ追走は無いものと判定される。そのため、嫌がらせ追走を適切に把握することができる。
【0089】
本実施形態に係るAEBシステム10においては、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の側方に位置する前記他車両Aとの側方距離を取得可能とするように構成され、前記嫌がらせ判定部14は、前記車速取得部11により取得された前記自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0以上であり、かつ前記車両情報取得部12により取得された前記側方距離の取得値hが所定の側方距離閾値h0以下である状態が継続する時間を算出した幅寄せ継続時間の算出値iが所定の幅寄せ継続時間閾値i0以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。
【0090】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせ幅寄せを嫌がらせ運転として判定することができる。そのため、例えば、嫌がらせ幅寄せを行っていた他車両Aが、自車両1を追い越した後に嫌がらせ割り込みを行って、さらに嫌がらせ急ブレーキを行った場合において、嫌がらせ幅寄せの段階から早期に嫌がらせ運転を把握でき、その結果、より安全かつより素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0091】
その一方で、渋滞、徐行、狭い道での車両のすれ違い等のような低速走行状態で自車両1と側方の他車両Aとの車間距離が短くなる場合があるが、この場合を嫌がらせ幅寄せと判定することは不適切である。これに対して、本実施形態に係るAEBシステム10において10は、自車両1の走行速度の取得値eが所定の走行速度閾値e0よりも小さい場合には、自車両1と側方の他車両Aとの車間距離が短くとも、嫌がらせ幅寄せは無いものと判定される。そのため、嫌がらせ幅寄せを適切に把握することができる。
【0092】
本実施形態に係るAEBシステム10においては、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の後方に位置する前記他車両Aの前照灯Cの情報を取得可能に構成され、前記嫌がらせ判定部14は、前記車速取得部11により取得された前記自車両1の走行速度の取得値が約0(ゼロ)km/hよりも大きくなりながら、所定のパッシング判定時間j内にて、前記車両情報取得部12により取得された前記前照灯Cの取得情報に基づいて算出される前記前照灯Cの点滅回数の算出値kが所定の点滅回数閾値k0以上であるか、又は前記前照灯Cの取得情報に基づいて算出される前記前照灯Cにおけるハイビーム及びロービームの切替回数の算出値mが所定の切替回数閾値m0以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。
【0093】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせパッシングを嫌がらせ運転として判定することができる。そのため、例えば、嫌がらせパッシングを行っていた他車両Aが、自車両1を追い越した後に嫌がらせ割り込みを行って、さらに嫌がらせ急ブレーキを行った場合において、嫌がらせパッシングの段階から早期に嫌がらせ運転を把握でき、その結果、より安全かつより素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0094】
その一方で、自車両1が赤信号から青信号に変わったときに発進すること忘れたために、後続の他車両Aが前照灯Cの点滅又は前照灯Cのハイビーム及びロービームの切替を行う場合があるが、この場合を嫌がらせパッシングと判定することは不適切である。これに対して、本実施形態に係るAEBシステム10においては、自車両1が停止している場合には、後続の他車両Aが前照灯Cの点滅又は前照灯Cのハイビーム及びロービームの切替を行っても、嫌がらせパッシングは無いものと判定される。そのため、嫌がらせパッシングを適切に把握することができる。
【0095】
本実施形態に係るAEBシステム10においては、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の前方に位置する前記他車両Aとの前方距離を取得可能とするように構成され、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の前方に位置する前記他車両Aの移動軌跡の情報を取得可能に構成され、前記嫌がらせ判定部14は、前記車両情報取得部12により取得された前記前方距離の取得値nが所定の前方距離閾値n0以下であり、かつ前記車両情報取得部12により取得された前記他車両Aの移動軌跡の取得情報に基づいて前記他車両Aの蛇行有りと判定した場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。
【0096】
このようなAEBシステム10においては、他車両Aが自車両1の前方で蛇行する行為(嫌がらせ蛇行)もまた嫌がらせ運転として判定することができる。そのため、例えば、嫌がらせ蛇行を行っていた他車両Aが、さらに嫌がらせ急ブレーキを行った場合において、嫌がらせ蛇行の段階から早期に嫌がらせ運転を把握でき、その結果、より安全かつより素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0097】
本実施形態に係るAEBシステム10においては、前記車両情報取得部12が、前記自車両1の前方に位置する前記他車両Aのブレーキの情報を取得可能に構成され、前記嫌がらせ判定部14は、前記車速取得部11により取得された前記自車両1の走行速度の取得値eが約0(ゼロ)km/hよりも大きくなりながら、所定のブレーキ判定時間p内にて、前記車両情報取得部12により取得された前記ブレーキの取得情報に基づいて算出される前記ブレーキ回数の算出値qが所定のブレーキ回数閾値q0以上である場合に、前記嫌がらせ運転有りと判定するように構成されている。
【0098】
このようなAEBシステム10においては、嫌がらせ繰り返しブレーキを嫌がらせ運転として判定することができる。そのため、例えば、嫌がらせ繰り返しブレーキを行っていた他車両Aが、一旦自車両1の後方に移動してから、再び自車両1を追い越した後に嫌がらせ割り込みを行って、さらに嫌がらせ急ブレーキを行った場合において、嫌がらせ繰り返しブレーキの段階から早期に嫌がらせ運転を把握でき、その結果、より安全かつより素早く自動ブレーキを作動させることができる。
【0099】
その一方で、渋滞、徐行等のような低速走行状態では他車両Aが繰り返しブレーキを掛ける場合があるが、この場合を嫌がらせ繰り返しブレーキと判定することは不適切である。これに対して、本実施形態に係るAEBシステム10においては、自車両1が停止している場合には、他車両Aが繰り返しブレーキを掛けても、嫌がらせ繰り返しブレーキは無いものと判定される。そのため、嫌がらせ繰り返しブレーキを適切に把握することができる。
【0100】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0101】
1…車両、自車両、10…衝突被害軽減ブレーキシステム(AEBシステム)、11…車速取得部、12…車両情報取得部、13…AEB制御装置(衝突被害軽減ブレーキ制御装置)、14…嫌がらせ判定部、40…前方検出部
A…他車両、B…前方物体、C…前照灯
e…走行速度の取得値、e0…走行速度閾値
f…後方距離の取得値、f0…後方距離閾値、g…追走継続時間の算出値、g0…追走継続時間閾値
h…側方距離の取得値、h0…側方距離閾値、i…幅寄せ継続時間の算出値、i0…幅寄せ継続時間閾値
j…パッシング判定時間、k…点滅回数の算出値、k0…点滅回数閾値、m…切替回数の算出値、m0…切替回数閾値
n…前方距離の取得値、n0…前方距離閾値
p…ブレーキ判定時間、q…ブレーキ回数の算出値、q0…ブレーキ回数閾値
w1…物体認識時間の第1設定値、w2…物体認識時間の第2設定値
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