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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】圧電振動子及び圧電振動子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20240314BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023529464
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003222
(87)【国際公開番号】W WO2022269970
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2021104126
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】森田 祥司
(72)【発明者】
【氏名】松村 威哉
(72)【発明者】
【氏名】栗原 崇宏
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/140936(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190090(WO,A1)
【文献】特開2013-145964(JP,A)
【文献】特開2015-186095(JP,A)
【文献】特開2013-062712(JP,A)
【文献】特開2015-070386(JP,A)
【文献】特開2019-062259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H03H 3/007-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が導電性保持部材を介在して搭載された主面を有する基板と、
前記圧電振動素子を封止する封止空間を形成するように前記基板に接合された蓋部材と、
を備え、
前記基板は、
前記主面に設けられかつ前記圧電振動素子に電圧を供給する第1電極と、
前記主面の平面視において、前記圧電振動素子を囲んで設けられかつ前記第1電極の一部を覆うように設けられた絶縁枠と、
前記主面の平面視において、前記絶縁枠と前記第1電極との継ぎ目部を覆うように設けられた第2電極と、を有する、
圧電振動子。
【請求項2】
前記第1電極は、前記主面の平面視において、前記絶縁枠の内周縁の側から前記絶縁枠の外周縁の側に亘って前記絶縁枠と交差して設けられており、
前記継ぎ目部は、前記絶縁枠の前記内周縁の側の第1継ぎ目部を含み、
前記第2電極は、少なくとも、前記第1継ぎ目部に設けられている、
請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極との間を含む部分にめっき金属層が形成されている、
請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記めっき金属層は、前記第1電極と前記第2電極との互いに対向する面と密着している、
請求項3に記載の圧電振動子。
【請求項5】
圧電振動子の製造方法であって、
基板を準備する工程と、
導電性保持部材を介在して、圧電振動素子を前記基板の主面に搭載する工程と、
前記圧電振動素子を封止する封止空間を形成するように、蓋部材を前記基板に接合する工程と、
を含み、
前記基板を準備する工程は、
前記主面を有する基体を準備する準備工程と、
前記主面に第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記主面の平面視において、前記圧電振動素子が搭載される領域を囲んで設けられかつ前記第1電極の一部を覆う絶縁枠を形成する、絶縁枠形成工程と、
前記主面の平面視において、前記絶縁枠と前記第1電極との継ぎ目部を覆うように、第2電極を形成する、第2電極形成工程と、
前記第1電極及び前記第2電極に対してめっき処理を行う、めっき処理工程と、
を含む、
圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁枠形成工程は、前記主面の平面視において、前記第1電極が、前記絶縁枠の内周縁の側から前記絶縁枠の外周縁の側に亘って前記絶縁枠と交差するように、前記主面に前記絶縁枠を形成することを含み、
前記第2電極形成工程は、少なくとも、前記継ぎ目部に含まれた前記絶縁枠の内周縁の側の第1継ぎ目部に、前記第2電極を形成することを含む、
請求項5に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
前記めっき処理工程は、前記第1電極と前記第2電極との間を含む部分にめっき金属を成長させて、めっき金属層を形成することを含む、
請求項5又は6に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
前記めっき金属層を形成することは、前記第1電極と前記第2電極との互いに対向する面と密着する前記めっき金属層を形成する、
請求項7に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
前記第1電極形成工程及び前記第2電極形成工程のそれぞれにおいて、又は、前記第1電極形成工程及び前記第2電極形成工程が行われた後に、前記第1電極及び前記第2電極を焼成して、前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれの表面を覆うガラスフリット層を形成することが行われており、
前記めっき処理工程は、
前記ガラスフリット層が形成された後に行われる工程であり、
前記ガラスフリット層を除去して、前記第1電極と前記第2電極との間に第1空間を形成することと、
前記第1空間に前記めっき金属層を形成することと、を含む、
請求項8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
前記めっき金属層を形成することは、Niめっき層及びAuめっき層を形成することを含む、
請求項9に記載の圧電振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子及び圧電振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動素子を基板に搭載し、圧電振動素子を封止する封止空間を形成するように、蓋部材を基板に接合することを含む、圧電振動子の製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上記圧電振動子の製造方法において、基体の主面にガラス成分を含む電極材料を印刷して焼成することで電極を形成した後に、その電極上に絶縁枠を形成してから、電極に対してめっき処理を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5704231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成においては、電極を焼成することにより電極の表面にはガラスフリット層が形成される。ガラスフリット層は、電極の表面と絶縁枠の裏面との間に存在する。また、電極材料に含まれたガラス成分が析出する場合、電極の短手方向の中央部に析出したガラスが電極の短手方向の両端部に流れ込みやすい。その結果、電極の短手方向の両端部に対応するガラスフリット層の両端部の厚みは、電極の短手方向の中央部に対応するガラスフリット層の中央部の厚みよりも大きい。こうして、ガラスフリット層はめっき液によって除去されるため、絶縁枠と電極との間に形成された空間も同様に、電極の短手方向の両端部に対応する空間中央部の寸法は、電極の短手方向の中央部に対応する空間両端部の寸法よりも大きい。
【0006】
このような形状を有する空間をめっき金属層によって埋めるためには、めっき処理に必要以上に時間がかかってしまうことになり、他方で、めっき処理の時間が不十分であると、封止空間の密閉性が損なわれる場合がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて発明されたものであり、本発明の目的は、良好な密閉性及び生産性を得ることができる圧電振動子及び圧電振動子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る圧電振動子は、圧電振動素子と、圧電振動素子が導電性保持部材を介在して搭載された主面を有する基板と、圧電振動素子を封止する封止空間を形成するように基板に接合された蓋部材と、を備え、基板は、主面に設けられかつ圧電振動素子に電圧を供給する第1電極と、主面の平面視において、圧電振動素子を囲んで設けられかつ第1電極の一部を覆うように設けられた絶縁枠と、主面の平面視において、絶縁枠と第1電極との継ぎ目部を覆うように設けられた第2電極と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好な密閉性及び生産性を得ることができる圧電振動子及び圧電振動子の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る水晶振動子の構成を示す斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】本実施形態に係る水晶振動子の接続電極及び封止電極を説明するための拡大図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】本実施形態に係る水晶振動子の製造方法を説明するためのフローチャート図である。
図7図6のステップS10の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8図7のステップS14が行われた場合に係る接続電極及び封止電極の状態を示す図である。
図9図8のIX-IX線断面図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11】比較例に係る水晶振動子の封止状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を前記実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
<水晶振動子1の概要>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係る水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)1の構成を説明する。図1は、水晶振動子1の構成を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線断面図である。以下の説明では、図2に示す水晶振動子1の状態を「組立状態」と呼ぶことがある。
【0013】
本実施形態に係る水晶振動子1は、圧電振動子の一例である。水晶振動子1は、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)10と、蓋部材20と、基板30と、を備える。また、水晶振動子1は、絶縁層42と、接合部材43と、導電性保持部材45と、を備える。
【0014】
組立状態において、水晶振動素子10は、図2に示すように、水晶振動素子10の長手方向の一端側に設けられた導電性保持部材45を介して、基板30に搭載されている。蓋部材20は、絶縁層42及び接合部材43を介して、水晶振動素子10を覆うように基板30と接合されている。こうして、水晶振動素子10が、蓋部材20及び基板30によって構成される箱状容器の内部にある封止空間Sに封止されている。
【0015】
また、組立状態において、水晶振動子1の各構成、すなわち、水晶振動素子10、蓋部材20、及び基板30のそれぞれの長手方向、短手方向、及び厚み方向は、図1に示されているX軸方向、Z´軸方向、及びY´軸方向と一致している。
【0016】
<水晶振動子1の詳細>
次に、図1乃至図5を参照しつつ、水晶振動子1の各構成について詳細に説明する。図3は、水晶振動子1の接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bを説明するための拡大図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。図5は、図3のV-V線断面図である。なお、図1及び図2において、水晶振動素子10及び基板30の一部電極、の図示は省略されている。また、図1に示すように、後述する接続電極35aの第1端351a及び接続電極35bの第1端351bが設けられた基板30の2つの角部の構成は同じであるため、図3乃至図5は、両者を合わせて表示している。また、図8乃至図10も、同様の方法で表示している。
【0017】
[水晶振動素子10]
水晶振動素子10は、圧電振動素子の一例であり、板状をなしている。また、水晶振動素子10は、水晶片11と、水晶片11に設けられている複数の電極と、を備える。水晶振動素子10の複数の電極は、励振電極14a,14bと、接続電極15a,15bと、引出電極16a,16bと、を含む。
【0018】
水晶片11は、圧電片の一例であり、例えば、ATカットの水晶基板である。ATカットの水晶基板は、X軸及びZ’軸によって特定される面と平行な面が主面となり、Y’軸と平行な方向が厚みとなるように形成されている。ATカットの水晶片11を採用する水晶振動素子10は、厚みすべり振動モードを主要振動とする。なお、水晶片11のカット角度は限定されるものではなく、例えば、BTカット、GTカット又はSCカット等を適用することもできる。
【0019】
また、水晶片11は、板状部材である。図1及び図2に示す例では、水晶片11は、直方体をなしている。なお、水晶片11は、水晶片の形状は直方体に限定されないものではなく、例えば、中央部が厚くて周辺が薄いメサ構造であってもよい。また、水晶片11は、厚み方向の両側にある主面12a,12bと、複数の側面12cと、を有する。
【0020】
励振電極14a,14bは、電圧が印加されることで水晶片11を厚みすべり振動をさせるための電極である。励振電極14a,14bは、図1に示すように、主面12a,12bのそれぞれの中央に設けている。また、励振電極14a,14bは、同じ材料によって構成された金属膜である。本実施形態では、励振電極14a,14bは、例えば、アルミニウム、銀、銅、金等の金属や、これらの金属のうちの一種以上を含む電極材料によって構成された金属膜である。また、後述する水晶振動子1の他の電極は、励振電極14a,14bと同じ材料によって構成されている。
【0021】
接続電極15a,15bは、水晶振動素子10を基板30に電気的に接続するための端子である。接続電極15a,15bは、図1及び図2に示すように、主面12bの一方側の端部に、互いに間隔をあけて設けられている。
【0022】
引出電極16a,16bは、励振電極14a,14bを接続電極15a,15bに電気的に接続するための電極である。引出電極16a,16bは、図1及び図2に示すように、励振電極14a,14bを接続電極15a,15bのそれぞれに接続させるように、主面12a,12b及び側面12cに設けられている。
【0023】
[基板30]
基板30は、水晶振動素子10を搭載するための構成の一例であり、板状をなしている。基板30は、図1及び図2に示すように、基体31と、基体31に設けられた絶縁枠33と、基体31に設けられた複数の基板電極と、を有する。基板30の複数の基板電極は、接続電極35a,35b,35c,35dと、封止電極36a,36bと、外部電極37a,37b,37c,37dと、側面電極38a,38b,38c,38dと、を含む。それらの基板電極の表面には、めっき金属層34a,34bが設けられている。
【0024】
(基体31)
基体31は、絶縁材料、例えばセラミックによって構成されている。基体31は、板状部材である。また、基体31は、図1及び図2に示すように、厚み方向の両側にある主面32a,32bと、複数の側面32cと、を有する。主面32aは、組立状態において、封止空間Sに向かい、水晶振動素子10が導電性保持部材45を介在して搭載される主面である。主面32bは、図示しない外部の実装基板に向かう面である。
【0025】
また、主面32aは、図1に示すように、周縁部321と、周縁部321によって囲まれた中央部322と、を有する。周縁部321は、基板30と蓋部材20とを接合するための領域である。中央部322は、水晶振動素子10を搭載するための領域である。
【0026】
(接続電極35、外部電極37、側面電極38)
接続電極35a,35bは、第1電極の一例である。また、接続電極35a,35bは、水晶振動素子10の励振電極14a,14bに電圧を供給するための電極である。接続電極35a,35bは、主面32aに設けられている。組立状態において、接続電極35a,35bは、図2に示すように、導電性保持部材45a,45bを介して接続電極15a,15bと電気的に接続されている。こうして、接続電極35a,35bは、導電性保持部材45a,45b及び接続電極15a,15bを介して、励振電極14a,14bに電圧を供給することができる。
【0027】
また、接続電極35a,35bは、図1に示すように、周縁部321に設けられた第1端351a,351bと、中央部322に設けられた第2端352a,352bと、を有する。組立状態において、第1端351a,351bは、図3に示すように、絶縁枠33と接触する。第2端352a,352bは、図1及び図2に示すように、水晶振動素子10の接続電極15a,15bに対応する位置に設けられ、導電性保持部材45a,45bと接触する。
【0028】
接続電極35c,35dは、水晶振動素子10に電圧を供給するための電極ではなく、いわゆるダミー電極である。あるいは、接続電極35c,35dは、接地電圧を供給する電極であってもよい。接続電極35c,35dは、図1に示すように、周縁部321に設けられている。組立状態において、接続電極35c,35dは、絶縁枠33と接触する。
【0029】
外部電極37a,37b,37c,37dは、外部の実装基板と電気的に接続するための端子である。具体的には、外部電極37a,37bは、水晶振動素子10に電圧を供給するための電極である。外部電極37c,37dは、水晶振動素子10に電圧を供給するための電極ではなく、いわゆるダミー電極である。あるいは、外部電極37c,37dは、接地電圧を供給する電極であってもよい。また、外部電極37a,37b,37c,37dは、図1に示すように、主面32bの4つの角部に設けられている。
【0030】
側面電極38a,38b,38c,38dは、接続電極35a,35b,35c,35dを外部電極37a,37b,37c,37dに電気的に接続するための電極である。側面電極38a,38b,38c,38dは、図1に示すように、側面32cの4つの角部に設けられている。
【0031】
(絶縁枠33)
絶縁枠33は、蓋部材20と基板30とを接合するための接着剤、すなわち硬化される前の絶縁層42及び接合部材43の広がりを抑制するための構成である。絶縁枠33は、絶縁材料、例えばガラス材料によって構成されている。また、絶縁枠33は、図1に示すように、枠状部材である。主面32aの平面視において、絶縁枠33は、水晶振動素子10を囲んで設けられかつ接続電極35a,35bの一部及び接続電極35c,35dを覆うように、主面32aの周縁部321に設けられている。また、絶縁枠33と、絶縁枠33によって覆われた、接続電極35a,35bの一部及び接続電極35c,35dとの間に、めっき金属層34a,34bが介在している。
【0032】
主面32aの平面視において、図3に示すように、絶縁枠33と接続電極35a,35bとの間に継ぎ目部50a,50bが形成されている。継ぎ目部50a,50bは、第1継ぎ目部51a,51bと、第2継ぎ目部52a,52bと、を有する。
【0033】
より詳細に説明すると、絶縁枠33は、図1及び図3に示すように、内周縁331と、外周縁332と、を有する。主面32aの平面視において、絶縁枠33は、図3に示すように、内周縁331の側から外周縁332の側に亘って、接続電極35a,35bと交差するように設けられている。こうして、主面32aの平面視において、絶縁枠33の内周縁331と接続電極35a,35bとの交差箇所に第1継ぎ目部51a,51bが形成されており、絶縁枠33の外周縁332と接続電極35a,35bとの交差箇所に第2継ぎ目部52a,52bが形成されている。
【0034】
(封止電極36及びめっき金属層34)
封止電極36a,36bは、第2電極の一例である。また、封止電極36a,36bは、封止空間Sの密閉性を向上させるための電極である。封止電極36a,36bは、絶縁枠33と接続電極35a,35bとの継ぎ目部50a,50bを覆うように設けられている。図3に示す例では、封止電極36a,36bは、第1継ぎ目部51a,51bを覆うように設けられている。
【0035】
なお、封止電極36a,36bの配置位置は上述した内容に限定されるものではなく、例えば、第1継ぎ目部51a,51bに設けられることの代わりに、封止電極36a,36bは、第2継ぎ目部52a,52bを覆うように、第2継ぎ目部52a,52bに設けられてもよい。また、封止電極36a,36bは、第1継ぎ目部51a,51b及び第2継ぎ目部52a,52bとの両方に設けられてもよい。さらに、封止電極36a,36bは、継ぎ目部50a,50bの両端側に対応する継ぎ目部50a,50bの両端部に設けられてもよい。
【0036】
めっき金属層34a,34bは、ニッケル(Ni)成分及び金(Au)成分を含むめっき層である。具体的には、めっき金属層34a,34bは、各基板電極の表面上に直接形成されたNiめっき層と、Niめっき層上に形成されたAuめっき層と、を含む。
【0037】
また、めっき金属層34a,34bは、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの間を含む部分に形成されている。具体的には、めっき金属層34a,34bは、図3乃至図5に示すように、互いに対向している接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと封止電極36a,36bの第2裏面369a,369bとの間、封止電極36a,36bの第2表面368a,368b上、及び互いに対向している接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと絶縁枠33の裏面339との間に形成されている。
【0038】
言い換えれば、めっき金属層34a,34bは、図3乃至図5に示すように、接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと封止電極36a,36bの第2裏面369a,369bとの間に形成された第1めっき金属層341a,341bと、封止電極36a,36bの第2表面368a,368bに形成あれた第2めっき金属層342a,342bと、接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと絶縁枠33の裏面339との間に形成された絶縁枠側めっき金属層(後述するめっき金属層3411a,3411bの一部)と、を有する。
【0039】
第1めっき金属層341a,341bは、図4及び図5に示すように、第1表面358a,358b及び第2裏面369a,369bのそれぞれと密着している。また、第1めっき金属層341a,341bは、第1表面358a,358b及び第2裏面369a,369bのそれぞれの表面に形成された2つのNiめっき層と、2つのNiめっき層によって挟まれたAuめっき層と、を有する。
【0040】
第2めっき金属層342a,342bは、図5に示すように、第2表面368a,368b上に形成されている。また、第2めっき金属層342a,342bは、第2表面368a,368bの表面に直接形成されたNiめっき層と、そのNiめっき層上に形成されたAuめっき層と、を有する。
【0041】
絶縁枠側めっき金属層は、図5に示すように、第1表面358a,358b及び裏面339の中央部分と密着しているが、裏面339の両端側と密着していない。よって、絶縁枠側めっき金属層と絶縁枠33との間、具体的には、絶縁枠側めっき金属層の短手方向の両端側に絶縁枠側隙間S20が形成されている。また、絶縁枠側めっき金属層は、第1表面358a,358bの表面に直接に形成されたNiめっき層と、そのNiめっき層上に形成されたAuめっき層と、を有する。
【0042】
ここで、絶縁枠側めっき金属層と絶縁枠33との間の絶縁枠側隙間S20は、絶縁枠33の内周縁331側にある、接続電極35a,35bと絶縁枠33の間にある第1めっき金属層341a,341bによって塞がれている。こうして、第1めっき金属層341a,341bによれば、絶縁枠側隙間S20が存在しても、封止空間Sの密閉性に影響を与えることがない。言い換えれば、第1めっき金属層341a,341bによって、封止空間Sの密閉性が守られている。なお、絶縁枠側隙間S20は、基板30の製造工程において生じたものである。その絶縁枠側隙間S20の形成のメカニズムは、基板30の製造工程の説明に合わせて説明する。
【0043】
[導電性保持部材45]
導電性保持部材45は、水晶振動素子10の接続電極15a,15bと基板30の接続電極35a,35bとを電気的に接続するための接着材の硬化物である。また、導電性保持部材45は、例えば、導電性接着剤が熱硬化して形成されたものである。このように形成された導電性保持部材45によって、水晶振動素子10は、基板30に励振可能に保持されることができる。
【0044】
[蓋部材20]
蓋部材20は、図1及び図2に示すように、基板30と接合する側に開口が形成されている箱状をなしている。また、蓋部材20の材質は、例えば金属等の導電材料で構成される。組立状態において、蓋部材20は、図2に示すように、水晶振動素子10を封止するように、基板30の主面32aに接合されている。こうして、蓋部材20の内面と、基板30の主面32aの中央部322とは、水晶振動素子10を封止する封止空間Sを構成している。
【0045】
[絶縁層42及び接合部材43]
絶縁層42は、蓋部材20と基板30の電極とを絶縁させるための構成である。絶縁層42は、図1及び図2に示すように、周縁部321の、絶縁枠33の内周縁331の内側に設けられている。絶縁層42は、絶縁部材、例えば、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系またはイミド系の樹脂、又は金属酸化物によって形成されている。
【0046】
接合部材43は、蓋部材20と基板30とを接合するための構成である。接合部材43は、図2に示すように、絶縁枠33の上に、絶縁枠33と重なるように設けられている。接合部材43は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれか一種であってもよい。また、接合部材43は、例えば、エポキシ系、シリコン系、ウレタン系、又はイミド系の樹脂接着剤によって形成されている。
【0047】
また、組立状態において、図2に示すように、基板30の厚み方向において積層された絶縁層42及び接合部材43の合計高さは、絶縁枠33の高さ以下であることが好ましい。こうして、硬化される前の絶縁層42及び接合部材43の広がりを確実に抑制することができる。
【0048】
<水晶振動子1の製造>
続いて、図1乃至図10を参照しつつ、水晶振動子1の製造方法について説明する。図6は、水晶振動子1の製造方法を説明するためのフローチャート図である。図7は、図6のステップS10の詳細を説明するためのフローチャートである。図8は、図7のステップS14が行われた場合に係る接続電極及び封止電極の状態を示す図である。図9は、図8のIX-IX線断面図である。図10は、図8のX-X線断面図である。
【0049】
まず、基板30を準備する(S10)。
【0050】
ここで、図7を参照しつつ、ステップS10の詳細を説明する。
まず、基体31を準備する(S11)。
【0051】
ステップS11は、準備工程の一例である。具体的には、主面32a,32bを有する、セラミックによって構成された基体31を準備する。
【0052】
次に、基体31の主面32aに接続電極35a,35bを形成する(S12)。
【0053】
ステップS12は、第1電極形成工程の一例である。具体的には、主面32aに、ガラス成分を含む電極材料を印刷して焼成することで、接続電極35a,35bを形成する。また、ステップS12において、電極材料が焼成されることによって、電極材料に含まれたガラス成分が析出する。こうして、焼成された接続電極35a,35bは、図8及び図9に示すように、その表面を覆うように形成された第1ガラスフリット層350a,350bを有する。
【0054】
また、図9に示すように、接続電極35a,35bの短手方向の形状によって、電極材料に含まれたガラス成分が析出する場合、接続電極35a,35bの短手方向の中央部に析出したガラスは、接続電極35a,35bの短手方向の両端部に流れ込む。その結果、第1ガラスフリット層350a,350bは、接続電極35a,35bの表面に均一の厚みで形成されたものではない。図9に示すように、接続電極35a,35bの短手方向の両端部に対応する第1ガラスフリット層350a,350bの両端部の厚みは、接続電極35a,35bの短手方向の中央部に対応する第1ガラスフリット層350a,350bの中央部の厚みよりも大きい。
【0055】
なお、ステップS12において、その他の基板電極(封止電極36a,36bを除き)は、接続電極35a,35bと同様の電極材料及び同様の形成方法を用いて、主面32a、主面32b、及び各側面32cに形成されている。このため、それらの基板電極の製造の説明を省略する。
【0056】
続いて、基体31の主面32aに絶縁枠33を形成する(S13)。
【0057】
ステップS13は、絶縁枠形成工程の一例である。具体的には、主面32aの周縁部321の全周に亘って、ガラス材料を印刷して焼成することで、絶縁枠33を形成する。この場合、主面32aの平面視において、絶縁枠33は、図2に示すように、水晶振動素子10が搭載される領域を囲んで設けられているとともに、図8に示すように、接続電極35a,35bの表面にある第1ガラスフリット層350a,350bの一部を覆うように形成されている。こうして、第1ガラスフリット層350a,350bのその一部は、図10に示すように、接続電極35a,35b及び絶縁枠33によって挟まれるように形成されている。以下では、第1ガラスフリット層350a,350bのその一部を「絶縁枠側一部」と呼ぶことがある。
【0058】
また、主面32aの平面視において、絶縁枠33は、内周縁331の側から外周縁332の側に亘って、接続電極35a,35bと交差するように設けられている。こうして、図8に示すように、絶縁枠33の内周縁331と、接続電極35a,35bの表面にある第1ガラスフリット層350a,350bとの接続する位置に継ぎ目部50a,50bが形成される。
【0059】
次に、絶縁枠33と接続電極35a,35bとの継ぎ目部50a,50bに、封止電極36a,36bを形成する(S14)。
【0060】
ステップS14は、第2電極形成工程の一例である。具体的には、継ぎ目部50a,50bのうちの絶縁枠33の内周縁331側にある第1継ぎ目部51a,51bに、ガラス成分を含む電極材料を印刷して焼成することで、封止電極36a,36bを形成する。また、ステップS14において、ステップS12と同様に、電極材料が焼成されることによって、電極材料に含まれたガラス成分が析出する。こうして、焼成された封止電極36a,36bは、図8及び図10に示すように、その表面を覆うように形成された第2ガラスフリット層360a,360bを有する。
【0061】
また、この場合、封止電極36a,36bは、図8及び図9に示すように、接続電極35a,35bの表面にありかつ絶縁枠側33の内周縁331側にある、第1ガラスフリット層350a,350bの他の一部と、絶縁枠33の一部と覆うように形成されている。以下では、第1ガラスフリット層350a,350bのその他の一部を「封止電極側一部」と呼ぶことがある。
【0062】
こうして、封止電極36a,36bが形成された後に、接続電極35a,35bの表面にある第1ガラスフリット層350a,350bは、絶縁枠側一部が、図9に示すように、接続電極35a,35b及び絶縁枠33によって挟まれており、一方、封止電極側一部が、図10に示すように、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bによって挟まれている。
【0063】
その後、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bに対してめっき処理を行う(S15)。
【0064】
ステップS15は、めっき処理工程の一例である。また、ステップS15は、ステップS11乃至ステップS14が順次に行われた後に行われる工程である。具体的には、ステップS15において、Ni成分及びAu成分を含むめっき液を用いて、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bの間を含む部分にめっき金属を成長させて、めっき金属層34a,34bを形成する。
【0065】
より詳細に説明すると、ステップS15において、まず、めっき液と第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bとの化学反応を利用して、第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bを除去する。こうして、図3に示すように、第1ガラスフリット層350a,350bの封止電極側一部が除去されて、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの間にある第1空間S1を形成する。それとともに、図5に示すように、第1ガラスフリット層350a,350bの絶縁枠側一部が除去されて、接続電極35a,35bと絶縁枠33との間にある第2空間S2を形成する。ここで、第1空間S1及び第2空間S2は、互いに接続された空間であり、同じ形状を有する。
【0066】
そして、図4および図5に示すように、めっき液に含まれたNi成分及びAu成分は、第1空間S1及び第2空間S2に浸入すると、接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと、封止電極36a,36bの第2裏面369a,369bとのそれぞれに、めっき金属を成長させて、めっき金属層3411a,3411bと、めっき金属層3412a,3412bと、を形成する。
【0067】
ここで、図3乃至図5に示すように、接続電極35a,35bは第1空間S1から第2空間S2までに亘って形成されているため、接続電極35a,35bの第1表面358a,358bに形成されためっき金属層3411a,3411bも第1空間S1から第2空間S2までに亘って形成されている。一方、めっき金属層3412a,3412bは、図3及び図4に示すように、封止電極36a,36bの第2裏面369a,369bに形成されるものであるため、第1空間S1のみに形成されている。
【0068】
この場合、図4に示すように、めっき金属層の形成過程において、第1表面358a,358bに形成されるめっき金属層3411a,3411bは、第1方向D1にて成長し、一方、第2裏面369a,369bに形成されるめっき金属層3412a,3412bは、第1方向D1と逆方向である第2方向D2にて成長する。また、本実施形態に係るめっき処理は、めっき金属層3411a,3411bとめっき金属層3412a,3412bと接触するまでに行われる。言い換えれば、本実施形態に係るめっき処理時間tは、成膜が開始したときから、めっき金属層3411a,3411bがめっき金属層3412a,3412bと接触するまでにかかる時間である。めっき処理時間tが経過すると、めっき処理が終了する。
【0069】
また、めっき処理が終了したとき、第1空間S1は、図4に示すように、めっき金属層3411a,3411bの第1空間S1にある部分及びめっき金属層3412a,3412bによって構成された第1めっき金属層341a,341bによって充填される。一方、第2空間S2には、図5に示すように、めっき金属層3411a,3411bの第2空間S2にある部分のみが形成されているため、第2空間S2の両端側に絶縁枠側隙間S20が残っている。一方、絶縁枠側隙間S20の第1空間S1に向かう開口部、すなわち、絶縁枠側隙間S20の絶縁枠33の内周縁331側の開口部は、図3に示すように、第1空間S1に形成された第1めっき金属層341a,341b、具体的には、第1めっき金属層341a,341bのうちのめっき金属層3412a,3412bによって塞がれている。
【0070】
こうして、基板30の準備が完了する。なお、基板30のその他の基板電極は、上述しためっき処理と同様の方法によってめっき処理されているため、それらの基板電極のめっき処理の説明を省略する。
【0071】
図6の説明に戻る。次に、導電性保持部材45を介して、水晶振動素子10を基板30の主面32aに搭載する(S20)。
【0072】
ステップS20は、水晶振動素子10の接続電極15a,15bと基板30との間に導電性接着剤を設ける工程、及び導電性接着剤を硬化させて得られる導電性保持部材45a,45bによって、水晶振動素子10を基板30に接合する接合工程の一例である。具体的には、基板30の主面32aに設けられた接続電極35a,35bの上に導電性接着剤、すなわち、熱硬化される前の導電性保持部材45a,45bを設ける。次に、水晶振動素子10の接続電極15a,15bのそれぞれが導電性保持剤と接触するように、水晶振動素子10を導電性保持剤の上に載置する。続いて、導電性接着剤を熱硬化させる。こうして、導電性接着剤を熱硬化させて得られる導電性保持部材45a,45bによって、水晶振動素子10を基板30に接合する。
【0073】
その後、蓋部材20を基板30に接合する(S30)。
【0074】
具体的には、基板30の主面32aの周縁部321の、絶縁枠33の内周縁331側に部分に、接合部材43及び絶縁層42を設け、接合部材43及び絶縁層42を蓋部材20の開口部の上面と基板30の主面32aとの間に介在させる。そして、接合部材43及び絶縁層42を加熱することで、蓋部材20を基板30に接合する。こうして、水晶振動素子10が蓋部材20及び基板30によって構成された封止空間Sに封止される。
【0075】
このように、水晶振動子1の製造は完了する。
【0076】
なお、上記基板30の製造に係る説明では、接続電極35a,35b、絶縁枠33、及び封止電極36a,36bのそれぞれの焼成工程は、ステップS12、ステップS13、及びステップS14のそれぞれに行われていることとして説明したが、焼成工程は、上述した内容に限定されるものではない。例えば、ステップS12、ステップS13、及びステップS14において、接続電極35a,35b、絶縁枠33、及び封止電極36a,36bの印刷のみを行い、ステップS12、ステップS13、及びステップS14が行われた後にかつステップS15が行われる前に、印刷された、接続電極35a,35b、絶縁枠33、及び封止電極36a,36bを一緒に焼成してもよい。この場合、第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bは、焼成がされた後に形成される。
【0077】
<封止電極36の効果>
続いて、図3乃至図5及び図11を参照しつつ、図11に示された比較例の封止状態と比較しながら、本実施形態に係る封止電極36の効果を説明する。図11は、比較例に係る水晶振動子の封止状態を示す図である。
【0078】
ここで、まず、図11に示された比較例に係る基板90の構成について説明する。比較例に係る基板90と、本実施形態に係る基板30との違いは、比較例に係る基板90は、本実施形態に係る封止電極36a,36bを採用していないことである。基板90のほかの構成は、本実施形態に係る基板30と同じである。このため、基板90の製造工程において、基板90の接続電極95a,95bの表面958a,958bに形成されるガラスフリット層の形状は、第1ガラスフリット層350a,350bと同じである。すなわち、比較例に係るガラスフリット層は、本実施形態に係る第1ガラスフリット層350a,350bと同様に、接続電極95a,95bの短手方向の両端部に対応するガラスフリット層の厚みは、接続電極95a,95bの短手方向の中央部に対応するガラスフリット層の厚みよりも大きい。
【0079】
また、比較例に係る接続電極95a,95bに対してのめっき処理工程は、めっき液を用いて、ガラスフリット層を除去して、接続電極95a,95bと絶縁枠93との間に成膜空間S3を形成することと、成膜空間S3にめっき金属層94a,94bを形成することと、を含む。ここで、前述したように、ガラスフリット層の形状は、第1ガラスフリット層350a,350bと同じであるため、成膜空間S3も、本実施形態に係る第2空間S2と同じ形状を有する。こうして、例えば、本実施形態に係るめっき処理時間tと同様の時間を用いて、めっき金属層94a,94bを形成させると、図11に示すように、成膜空間S3におけるめっき金属層94a,94bの形成状態は、本実施形態に係るめっき金属層3411a,3411bの第2空間S2にある部分と同じである。すなわち、成膜空間S3は、めっき金属層94a,94bによって充填されておらず、成膜空間S3の両端側に隙間が残っている。その結果、封止空間Sの密閉性が低下してしまい、水晶振動子1の品質に影響を与えることがある。
【0080】
一方、比較例に係るめっき処理時間を本実施形態に係るめっき処理時間tよりも長くすれば、成膜空間S3を充填できるが、その時間は、本実施形態に係るめっき処理時間tの倍になる。その結果、比較例に係る基板の製造時間が長くなってしまい、生産効率が悪化する。
【0081】
これに対して、本実施形態では、封止電極36a,36bを採用することで、第1空間S1に第1めっき金属層341a,341bを形成するとき、接続電極35a,35bの第1表面358a,358bと、封止電極36a,36bの第2裏面369a,369bとのそれぞれに、めっき金属を成長させて、めっき金属層3411a,3411bとめっき金属層3412a,3412bとを同時に形成する。また、第1表面358a,358bに形成されるめっき金属層3411a,3411bは、図4に示すように、第1方向D1にて成長し、一方、第2裏面369a,369bに形成されるめっき金属層3412a,3412bは、第1方向D1と逆方向である第2方向D2にて成長する。こうして、めっき処理時間tを経過したとき、めっき金属層3411a,3411bとめっき金属層3412a,3412bとは接触して一体になって、第1空間S1を充填する第1めっき金属層341a,341bを形成する。
【0082】
また、この場合、前述したように、第2空間S2の両端側に絶縁枠側隙間S20が残っているが、その絶縁枠側隙間S20の絶縁枠33の内周縁331側の開口部は、図3に示すように、第1空間S1に形成された第1めっき金属層341a,341b、具体的には、第1めっき金属層341a,341bのうちのめっき金属層3412a,3412bによって塞がれている。その結果、封止空間Sと外部空間との連結は、第1めっき金属層341a,341bによって遮断されて、封止空間Sの密閉性の向上を実現している。
【0083】
また、前述したように、本実施形態に係るめっき処理時間tは、比較例に係るめっき処理時間の約半分である。このため、封止電極36a,36bを採用することによって、基板30の製造時間を短縮できる。よって、水晶振動子1の製造時間も短縮できる。その結果、基板30及び水晶振動子1の生産性を向上させることができる。
【0084】
以上のとおり、本実施形態に係る封止電極36a,36bによれば、良好な密閉性及び生産性を得ることができる水晶振動子1及び水晶振動子1の製造方法を提供する。
【0085】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。
本発明の一実施形態に係る水晶振動子1では、水晶振動素子10と、水晶振動素子10が導電性保持部材45を介在して搭載された主面32aを有する基板30と、水晶振動素子10を封止する封止空間Sを形成するように基板30に接合された蓋部材20と、を備え、基板30は、主面32aに設けられかつ水晶振動素子10に電圧を供給する第1電極の一例である接続電極35a,35bと、主面32aの平面視において、水晶振動素子10を囲んで設けられかつ接続電極35a,35bの一部を覆うように設けられた絶縁枠33と、主面32aの平面視において、絶縁枠33と接続電極35a,35bとの継ぎ目部50a,50bを覆うように設けられた第2電極の一例である封止電極36a,36bと、を有する。
上記構成によれば、良好な密閉性及び生産性を有する水晶振動子を提供することができる。
【0086】
また、上記構成において、接続電極35a,35bは、主面32aの平面視において、絶縁枠33の内周縁331の側から絶縁枠33の外周縁332の側に亘って絶縁枠33と交差して設けられており、継ぎ目部50a,50bは、絶縁枠33の内周縁331の側の第1継ぎ目部51a,51bを含み、封止電極36a,36bは、少なくとも、第1継ぎ目部51a,51bに設けられてもよい。
上記構成によれば、封止電極の構成を簡易化させることができるとともに、封止空間Sの密閉性を向上させることができる。
【0087】
また、上記構成において、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの間を含む部分にめっき金属層34a,34bが形成されてもよい。
上記構成によれば、良好な密閉性を有する水晶振動子を取得することができる。
【0088】
また、上記構成において、めっき金属層34a,34bは、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの互いに対向する面である第1表面358a,358b及び第2裏面369a,369bと密着してもよい。
上記構成によれば、封止空間Sの密閉性の向上を実現できる。
【0089】
本発明の他の実施形態に係る水晶振動子1の製造方法では、基板30を準備する工程(S10)と、導電性保持部材45を介在して、水晶振動素子10を基板30の主面32aに搭載する工程(S20)と、水晶振動素子10を封止する封止空間Sを形成するように、蓋部材を基板に接合する工程(S30)と、を含み、基板を準備する工程(S10)は、主面を有する基体を準備する準備工程(S11)と、主面に第1電極の一例である接続電極35a,35bを形成する、第1電極形成工程の一例である接続電極形成工程(S12)と、主面の平面視において、水晶振動素子10が搭載される領域を囲んで設けられかつ接続電極35a,35bの一部を覆う絶縁枠を形成する、絶縁枠形成工程(S13)と、主面の平面視において、絶縁枠33と接続電極35a,35bとの継ぎ目部を覆うように、第2電極の一例である封止電極36a,36bを形成する、第2電極形成工程の一例である封止電極形成工程(S14)と、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bに対してめっき処理を行う、めっき処理工程(S15)と、を含む。
上記方法によれば、良好な密閉性及び生産性を有する水晶振動子の製造方法を提供することができる。
【0090】
また、上記方法において、絶縁枠形成工程(S13)は、主面32aの平面視において、接続電極35a,35bが、絶縁枠33の内周縁331の側から絶縁枠33の外周縁332の側に亘って絶縁枠33と交差するように、主面32aに絶縁枠33を形成することを含み、封止電極形成工程(S14)は、少なくとも、継ぎ目部50a,50bに含まれた絶縁枠33の内周縁331の側の第1継ぎ目部51a,51bに、封止電極36a,36bを形成することを含んでもよい。
上記方法によれば、封止電極の形成を簡易化させることができるとともに、封止空間Sの密閉性を向上させることができる。
【0091】
また、上記方法において、めっき処理工程(S15)は、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの間を含む部分にめっき金属を成長させて、めっき金属層34a,34bを形成することを含んでもよい。
上記方法によれば、簡易な方法を用いて、良好な密閉性を有する水晶振動子を取得することができる。
【0092】
また、上記方法において、めっき金属層を形成することは、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの互いに対向する面と密着する第1めっき金属層341a,341bを形成してもよい。
上記方法によれば、良好な密閉性を有する封止空間Sを取得することができる。
【0093】
また、上記方法において、接続電極形成工程(S12)及び封止電極形成工程(S14)のそれぞれにおいて、又は、接続電極形成工程(S12)及び封止電極形成工程(S14)が行われた後に、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bを焼成して、接続電極35a,35b及び封止電極36a,36bのそれぞれの表面を覆う第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bを形成することが行われており、めっき処理工程(S15)は、第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bが形成された後に行われる工程であり、第1ガラスフリット層350a,350b及び第2ガラスフリット層360a,360bを除去して、接続電極35a,35bと封止電極36a,36bとの間に第1空間S1を形成することと、第1空間S1に第1めっき金属層341a,341bを形成することと、を含んでもよい。
上記方法によれば、接続電極と封止電極との隙間の形成を回避して、封止空間Sの密閉性を向上させることができる。
【0094】
また、上記方法において、第1めっき金属層341a,341bを形成することは、Niめっき層及びAuめっき層を形成することを含んでもよい。
上記方法によれば、良好な性能を有するめっき金属層を得ることができる。
【0095】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0096】
1…水晶振動子、10…水晶振動素子、11…水晶片、14a,14b…励振電極、15a,15b…接続電極、20…蓋部材、30…基板、31…基体、33…絶縁枠、34a,34b…めっき金属層、35a,35b…接続電極、36a,36b…封止電極、45a,45b…導電性保持部材、331…内周縁、50a,50b…継ぎ目部
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