(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】超音波振動装置およびホーン
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20240314BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
(21)【出願番号】P 2020052499
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年9月2日 日本機械学会 2019年度年次大会 講演論文集で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年9月11日 秋田大学で開催された日本機械学会 2019年度年次大会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 亮
(72)【発明者】
【氏名】森 英季
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 嗣
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-368036(JP,A)
【文献】特開2003-152012(JP,A)
【文献】特開2011-072990(JP,A)
【文献】特開平01-027549(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094558(WO,A1)
【文献】特開昭52-125048(JP,A)
【文献】特開昭51-072712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00- 3/04
H02N 2/00- 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端を有し所定方向の超音波振動を発生する振動子と、
軸方向の一端部が前記出力端に連結された固定端部を構成し、前記固定端部から前記軸方向の他端まで、前記所定方向に延びる中心軸線を有する
円柱形状又は多角柱形状に形成されたホーンと、を備え、
前記ホーン
は、前記円柱形状又は角柱形状の柱状部の外面に形成され軸方向の全長に亘って、又は前記軸方向の一部に亘って前記軸方向に延びる単一の切欠き、溝、あるいは凹所を有し、前記切欠き、溝、あるいは凹所は、前記中心軸線と対向する平坦な底面を有し、前記切欠き、溝、あるいは凹所の深さは前記ホーンの前記柱状部の半径よりも小さく形成され、
前記ホーンの前記切欠き、溝、あるいは凹所を含む部位において、前記中心軸線と直交する横断面および前記中心軸線を含む縦断面が前記中心軸線に対して非対称な断面形状を有している、超音波振動装置。
【請求項2】
出力端を有し所定方向の超音波振動を発生する振動子と、
軸方向の一端部が前記出力端に連結された固定端部を構成し、前記固定端部から前記軸方向の他端まで、前記所定方向に延びる中心軸線を有する
円柱形状又は多角柱形状に形成されたホーンと、を備え、
前記ホーンは、前記円柱形状又は角柱形状の柱状部の外面に形成され軸方向の全長に亘って、又は前記軸方向の一部に亘って前記軸方向に延びる単一の凸部を有し、前記凸部は、前記中心軸線と対向する平坦な先端面を有し、前記凸部の突出高さは前記ホーンの半径よりも小さく形成され、
前記ホーンの前記凸部を含む部位において、前記中心軸線と直交する横断面および前記中心軸線を含む縦断面が前記中心軸線に対して非対称な断面形状を有している、超音波振動装置。
【請求項3】
前記ホーンは、前記軸方向の一端から他端まで前記中心軸線と同軸に貫通形成された貫通孔を有している請求項1又は2に記載の超音波振動装置。
【請求項4】
前記振動子は、厚み方向に伸張する一対の圧電素子と、前記圧電素子に重ねて配置された一対の電極と、前記一対の圧電素子および前記一対の電極を間に挟持するように配置されたエンドリングおよびコーンと、を備え、
前記ホーンは前記コーンに連結されている請求項1から
3のいずれか1項に記載の超音波振動装置。
【請求項5】
前記振動子は、前記出力端を構成する基枠と前記基枠から延出した一対の支持枠とを有し、磁歪材料で形成された枠体と、前記支持枠の延出端の間に設けられた永久磁石と、前記一対の支持枠にそれぞれ捲回された第1コイルおよび第2コイルと、を備え、
前記ホーンは、前記基枠に連結されている請求項1から
3のいずれか1項に記載の超音波振動装置。
【請求項6】
超音波振動装置に用いるホーンであって、
軸方向の一端部が所定方向の超音波振動を発生する振動子の出力端に連結される固定端部を構成し、前記固定端部から前記軸方向の他端まで、前記所定方向に延びる中心軸線を有する円柱形状又は多角柱形状に形成され、
前記円柱形状又は多角柱形状の柱状部の外面に形成され軸方向の全長に亘って、又は前記軸方向の一部に亘って前記軸方向に延びる単一の切欠き、溝、あるいは凹所を有し、前記切欠き、溝、あるいは凹所は、前記中心軸線と対向する平坦な底面を有し、前記切欠き、溝、あるいは凹所の深さは前記柱状部の半径よりも小さく形成され、
前記切欠き、溝、あるいは凹所を含む部位において、前記中心軸線と直交する横断面および前記中心軸線を含む縦断面が前記中心軸線に対して非対称な断面形状を有している、ホーン。
【請求項7】
超音波振動装置に用いるホーンであって、
軸方向の一端部が所定方向の超音波振動を発生する振動子の出力端に連結される固定端部を構成し、前記固定端部から前記軸方向の他端まで、前記所定方向に延びる中心軸線を有する円柱形状又は多角柱形状に形成され、
前記円柱形状又は角柱形状の柱状部の外面に形成され軸方向の全長に亘って、又は前記軸方向の一部に亘って前記軸方向に延びる単一の凸部を有し、前記凸部は、前記中心軸線と対向する平坦な先端面を有し、前記凸部の突出高さは前記柱状部の半径よりも小さく形成され、
前記凸部を含む部位において、前記中心軸線と直交する横断面および前記中心軸線を含む縦断面が前記中心軸線に対して非対称な断面形状を有している、ホーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、超音波振動装置および超音波振動装置に用いるホーンに関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄機、超音波診断装置、魚群探知機、探傷機、顕微鏡、霧化器や超音波加工機等の超音波を応用する様々な装置に超音波振動装置が組み込まれている。超音波振動装置として、ランジュバン型振動子や磁歪振動子を用いた装置が多く用いられている。一般に、振動子から発生される超音波振動の振幅は微小であるため、振動子の振動振幅方向の振動変位を増幅する縦型のホーンが振動子の出力端に配置される。組み合わされる縦型のホーンは、振動子から出力端に向かって断面積が小さくなる段付き形状や、円錐(コーン)のように連続的なカーブを有する形状など、様々な形状のホーンが提案されている。
【0003】
ホーンの主な振動モードは、ホーンの長さ方向に振動する縦振動モード、ホーンの長さ方向に対して垂直方向に振動する横振動モード、そして、長さ方向の軸周りに回転振動するねじり振動モードが存在する。その中で、振動子の振動振幅方向の振動変位を増幅する縦型のホーンは、縦振動モードが卓越した構造にすることが望まれる。
ランジュバン型振動子あるいは磁歪型振動子に組み合わされるホーンにおいて、ホーンの中心線上で伸張するモード以外、例えば回転や先端を左右に振るようなモードが主共振に混入することは、極力避ける必要がある。そのため、ホーンの横断面は円を基準としており、中心軸を包含するホーンの縦断面で見ると軸対称が一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-196606号公報
【文献】特開2001-322173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在では、有限要素法などで形状や寸法をシミュレーションしながら、振動子を含めたホーン形状の最適化が図られている。しかし、従来から提唱されている設計指針を用いたホーンでは大幅な特性の改善は困難な状況になっている。
本発明の課題は、不要な振動モードを抑制しつつ振動振幅の増大を図ることが可能な超音波振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、超音波振動装置は、出力端を有し所定方向の超音波振動を発生する振動子と、前記出力端に連結され、前記所定方向に延びる中心軸線を有する柱状のホーンと、を備え、前記ホーンの少なくとも一部は、前記中心軸線に対して非対称な断面形状を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る超音波振動装置を示す斜視図。
【
図3】
図3(a)は、前記超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図3(b)は、
図3(a)の線A1-A1に沿った前記ホーンの横断面図、
図3(c)は、
図3(a)の線B1-B1に沿った前記ホーンの縦断面図。
【
図4】
図4は、前記ホーンの振動特性(周波数と変位量との関係)を示す図。
【
図5】
図5は、比較例に係るホーンの振動特性(周波数と変位量との関係)を示す図。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るホーンの振動振幅の時間変化を示す図。
【
図7】
図7は、前記比較例に係るホーンの振動振幅の時間変化を示す図。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るホーンの周波数と位相、ゲインとの関係を示す図。
【
図9】
図9は、前記比較例に係るホーンの周波数と位相、ゲインとの関係を示す図。
【
図10】
図10(a)は、第2実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図10(b)は、
図10(a)の線A2-A2に沿った前記ホーンの横断面図、
図10(c)は、
図10(a)の線B2-B2に沿った前記ホーンの縦断面図。
【
図11】
図11(a)は、第3実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図11(b)は、
図11(a)の線A3-A3に沿った前記ホーンの横断面図、
図11(c)は、
図11(a)の線B3-B3に沿った前記ホーンの縦断面図。
【
図12】
図12(a)は、第4実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図12(b)は、
図12(a)の線A4-A4に沿った前記ホーンの横断面図、
図12(c)は、
図12(a)の線B4-B4に沿った前記ホーンの縦断面図。
【
図13】
図13(a)は、第5実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図13(b)は、
図13(a)の線A4-A4に沿った前記ホーンの横断面図、
図13(c)は、
図13(a)の線B4-B4に沿った前記ホーンの縦断面図。
【
図14】
図14は、第6実施形態に係る超音波振動装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る超音波振動装置について詳細に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の大きさ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る超音波振動装置を示す斜視図、
図2は、前記超音波振動装置の断面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態によれば、超音波振動装置10は、ランジュバン型の振動子12と、振動子12の出力端に設けられた縦型のホーン40と、を備えている。振動子12は、複数枚、例えば、2枚のリング型の圧電素子14a、14bと、一組の電極16a、16b、16cと、これらの圧電素子14a、14bおよび電極16a、16b、16cを間に挟んだバックマス18およびコーン20と、を有している。電極16aは、圧電素子14aとバックマス18との間に挟まれ、電極16bは、2枚の圧電素子14a、14bの間に挟まれ、電極16cは、圧電素子14bとコーン20との間に挟まれている。
【0010】
金属ブロックで形成されたバックマス18は電極16aに重ねて配置されている。ほぼ切頭円錐形状に形成されたコーン20は、電極16cに重ねて配置されている。コーン20は、同軸的に設けられたボルト21を一体に有して形成されている。圧電素子14a、14b、電極16a、16b、16c、バックマス18、およびコーン20は、互いに同軸的に配置されている。ボルト21は、2枚の圧電素子14a、14b、一組の電極16a、16b、16c、およびバックマス18に挿通され、バックマス18から突出している。ボルト21の突出端にナット22が螺合されている。ナット22を締め込むことで、バックマス18とコーン20との間に圧電素子14a、14bおよび電極16a、16b16cが挟まれ、圧電素子14a、14bに圧縮荷重が印加されている。
一組の電極16a、16b、16cに交流電源30が接続されている。2枚の圧電素子14a、14bは、分極方向が対向するように配置されている。一組の電極16a、16b、16cに交流電圧を印加することにより、圧電素子14a、14bが伸縮を繰り返し、超音波振動が発生する。この超音波振動は、ホーン40により増幅される。
【0011】
図2に示すように、縦型のホーン40は、振動子12の出力端、ここでは、コーン20に連結され、振動子12と同軸的に配置されている。
ホーン40は、中心軸線C1を有する細長い柱状、例えば、円柱形状に形成されている。ホーン40の軸方向の一端部は、大径の固定端部44を構成している。ホーン40は、軸方向の一端、すなわち、固定端部44から軸方向に突出したねじ部46を一体に備えている。ねじ部46をコーン20のねじ孔にねじ込むことにより、ホーン40は、固定端部44がコーン20に固定され、振動子12と同軸的に設けられている。本実施形態において、ホーン40は、軸方向の一端から他端まで中心軸線C1と同軸に貫通形成された貫通孔42を有している。ホーン40の中心軸線C1は、振動子12の超音波振動方向に延びている。
【0012】
図3(a)は、超音波振動装置のホーンの平面図、
図3(b)は、
図3(a)の線A1-A1に沿ったホーンの横断面図、
図3(c)は、
図3(a)の線B1-B1に沿ったホーンの縦断面図である。
図1および
図3(a)に示すように、ホーン40は、ホーンの外周面の一部を切削加工するにより形成された切欠き50あるいは凹所を有している。本実施形態において、切欠き50は、ホーン40の長手方向のほぼ中央部に設けられ、かつ、ホーン40の長手方向に所定長さで形成されている。切欠き50はほぼ一定の深さに形成され、中心軸線C1と平行に対向する底面
50aを有している。
【0013】
図3(b)に示すように、切欠き50を設けることにより、ホーン40の少なくとも一部の横断面、ここでは、切欠き50の位置におけるホーン40の横断面(中心軸線C1と直交する断面)は、中心軸線C1の片側が平坦に削れた、すなわち、切欠き50を有する非円環形状であり、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
同様に、切欠き50を設けることにより、
図3(c)に示すように、ホーン40の縦断面の少なくとも一部、ここでは、切欠き50の位置の縦断面は、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
なお、切欠き50の深さ、長さ、幅、および形成位置は、図示の例に限らず、ホーン40の振動特性に応じて種々選択可能である。
【0014】
上記のように構成された超音波振動装置10において、振動子12から発振された超音波振動は、ホーン40により振幅が増幅され、ホーン40の延出端で最大の振動振幅が生じる。例えば、貫通孔42を通してホーン40の先端部を液剤で覆った状態で超音波振動を発生させると、表面波(キャピラリ)の作用により液剤を霧化することができる。あるいは、ホーン40の先端に工具を取付けた状態でホーン40に超音波振動を発生させると、この工具により磨き作業や穴あけ加工などを行うことができる。
【0015】
図4は、本実施形態に係るホーンの振動特性(周波数と変位量との関係)の解析結果を示す図、
図5は、比較例に係るホーンの振動特性(周波数と変位量との関係)の解析結果を示す図である。比較例としては、切欠きを持たない円筒形状のホーン、すなわち、横断面および縦断面が中心軸線C1に対して対称な断面形状を有するホーンを用いている。
図4および
図5に示すように、いずれのホーンにおいても、主共振周波数は40(kHz)近傍に現れ、この周波数で振動子を駆動することで超音波振動が発生する。主共振周波数における本実施形態のホーン40の先端部の振動振幅は、比較例に係るホーンの先端部の振動振幅に比較して、約2倍程度の振動振幅であり、大幅に増加していることが分かる。
【0016】
上記のような解析的に得られた現象を確認するため、実機を用いて振動振幅測定を行った。
図6は、本実施形態に係るホーンの振動振幅の測定結果を示す図、
図7は、前記比較例に係るホーンの振動振幅の測定結果を示す図である。
図6、
図7において、2点鎖線の波形はファンクションジェネレータによる出力信号を示し、一点鎖線の波形は圧電素子に対する印加電圧を示し、破線の波形は超音波振動装置の電流波形を示し、実線の波形は振動振幅波形を示している。図示のように、比較例に係るホーンに比較して、本実施形態に係るホーン40は、振動振幅が20%程度、増大していることが分かる。本実施形態に係るホーン40では、例えば、80Vppの電圧を印加した際の振動振幅が、比較例に比較して大幅に増大していることが分かる。
【0017】
図8は、実験的に導出した、本実施形態に係るホーンの周波数と位相、ゲインとの関係を示す図、
図9は、実験的に導出した、前記比較例に係るホーンの周波数と位相、ゲインとの関係を示す図である。
前述した
図4および
図5に示したように、本実施形態に係るホーン、および比較例に係るホーンのいずれも、0-100(kHz)の周波数帯で同様の周波数に共振ピークが表れている。また、
図9および
図10に示すように、本実施形態に係るホーンは、比較例に係るホーンの同様の周波数プロファイルとなっていることが分かる。
これらのことから、本実施形態に係るホーンは、不要な振動モードを生じることなく、縦振動モードおよび横振動モードを同時に励起させ、かつ、比較例に比較して、共振周波数帯域での振動振幅が大幅に増加することが分かる。
【0018】
以上のように構成された超音波振動装置10によれば、ホーン40の振幅方向の中心軸線C1に直交する横断面の少なくとも一部、あるいは中心軸線C1を包含する縦断面の少なくとも一部を非対称形状とすることで、従来の軸対称を基本とする断面形状のホーンでは改善できなかった縦振幅の増幅率を飛躍的に改善することができる。また、上記構成のホーンとすることにより、縦振動モードと横振動モードとが混在する混合モードを作り出し、より大きな振動変位を発生するホーンおよび超音波振動装置を得ることができる。
【0019】
次に、他の実施形態に係る超音波振動装置のホーンについて説明する。以下に述べる他の実施形態において、前述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付して、その説明を簡略化あるいは省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
(第2実施形態)
図10(a)は、第2実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図10(b)は、
図10(a)の線A2-A2に沿った前記ホーンの横断面図、
図10(c)は、
図10(a)の線B2-B2に沿った前記ホーンの縦断面図である。
図示のように、第2実施形態によれば、ホーン40は、貫通孔を持たない中実の円柱形状に形成されている。ホーン40は、ホーンの外周面の一部を切削加工するにより形成された矩形状の長溝52あるいは凹所を有している。長溝52は、ホーン40の長手方向のほぼ中央部に設けられ、かつ、中心軸線C1と平行な方向に所定長さ延在している。長溝52はほぼ一定の深さに形成され、中心軸線C1と平行に対向する平坦な矩形状の底面52aを有している。長溝52の深さは、ホーン40の半径よりも小さく形成されている。
【0020】
図10(b)に示すように、長溝52を設けることにより、ホーン40の少なくとも一部の横断面、ここでは、長溝52の位置におけるホーン40の横断面(中心軸線C1と直交する断面)は、中心軸線C1の片側が一部削られ、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
同様に、長溝52を設けることにより、
図10(c)に示すように、ホーン40の縦断面の少なくとも一部、ここでは、長溝52の位置の縦断面は、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
なお、長溝52の深さ、長さ、幅、および形成位置は、図示の例に限らず、ホーン40の振動特性に応じて種々選択可能である。また、長溝52の深さおよび幅は、全長に亘って一定の場合に限らず、場所により深さあるいは幅が変化した長溝としてもよい。
【0021】
(第3実施形態)
図11(a)は、第3実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図11(b)は、
図11(a)の線A3-A3に沿った前記ホーンの横断面図、
図11(c)は、
図11(a)の線B3-B3に沿った前記ホーンの縦断面図である。
図示のように、第3実施形態によれば、ホーン40は、ホーンの外周面の一部を切削加工するにより形成された矩形状の長溝54あるいは凹所を有している。長溝54は、ホーン40の長手方向の全長に亘って設けられ、かつ、中心軸線C1と平行に延在している。長溝54はほぼ一定の深さに形成され、中心軸線C1と平行に対向する平坦な矩形状の底面54aを有している。長溝54の深さは、ホーン40の半径よりも小さく形成されている。
【0022】
図11(b)に示すように、長溝54を設けることにより、ホーン40の横断面(中心軸線C1と直交する断面)は、中心軸線C1の片側が一部削られ、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
図11(c)に示すように、長溝54を設けることにより、ホーン40の縦断面の全体は、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
なお、長溝54の深さ、幅、および形成位置は、図示の例に限らず、ホーン40の振動特性に応じて種々選択可能である。また、長溝54の深さおよび幅は、ホーン40の全長に亘って一定の場合に限らず、場所により深さあるいは幅が変化した長溝としてもよい。
【0023】
(第4実施形態)
図12(a)は、第4実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図12(b)は、
図12(a)の線A4-A4に沿った前記ホーンの横断面図、
図12(c)は、
図12(a)の線B4-B4に沿った前記ホーンの縦断面図である。
図示のように、第4実施形態によれば、ホーン40は、ホーンの外周面の一部に形成された矩形状の凸部56あるいはリブを一体に有している。凸部56は、ホーン40の長手方向のほぼ中央部に設けられ、かつ、中心軸線C1と平行に所定長さ延在している。凸部56はほぼ一定の突出高さに形成され、中心軸線C1と平行に対向する平坦な先端面を有している。凸部56の突出高さは、ホーン40の半径よりも小さく形成されている。
【0024】
図12(b)に示すように、凸部56を設けることにより、ホーン40の少なくとも一部の横断面(中心軸線C1と直交する断面)、ここでは、凸部56の位置におけるホーン40の横断面は、中心軸線C1の片側が一部凸となり、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
図12(c)に示すように、ホーン40の縦断面の少なくとも一部、ここでは、凸部56の位置の縦断面は、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
なお、凸部56の高さ、長さ、幅、形状、および形成位置は、図示の例に限らず、ホーン40の振動特性に応じて種々選択可能である。凸部56の先端面は、平坦に限らず、湾曲した面としてもよい。すなわち、凸部56の高さは、一定の場合に限らず、部位により異なる突出高さに形成してもよい。
【0025】
(第5実施形態)
図13(a)は、第5実施形態に係る超音波振動装置のホーンを示す平面図、
図13(b)は、
図13(a)の線A5-A5に沿った前記ホーンの横断面図、
図13(c)は、
図13(a)の線B5-B5に沿った前記ホーンの縦断面図である。
ホーン40は、円柱形状に限らず、他の形状の柱状、例えば、角柱形状としてもよい。図示のように、第5実施形態によれば、ホーン40は、多角形、例えば、5角柱形状に形成されている。
図13(b)に示すように、ホーン40の各部位の横断面(中心軸線C1と直交する断面)は、5角形であり、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
図13(c)に示すように、5角柱形状とすることにより、ホーン40の縦断面は、ホーン40の全長に亘り、中心軸線C1に対して非対称な断面形状となっている。
角柱形状は、5角柱形状に限らず、3角柱形状、7角柱形状、その他の奇数角柱形状としてもよい。また、ホーン40の外面に、前述した凹所、溝、あるいは凸部を設けることも可能である。
【0026】
上述した第2から第5実施形態において、ホーン40の他の構成は、前述した第1実施形態に係るホーン40と同一である。そして、第2から第5実施形態のいずれにおいても、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる、すなわち、不要な振動モードを抑制しつつ振動振幅の増大を図ることが可能なホーンおよび超音波振動装置を提供することができる。
【0027】
(第6実施形態)
図14は、第6実施形態に係る超音波振動装置を示す斜視図である。
図示のように、本実施形態では、振動子として、磁歪型の振動子12を用いている。振動子12は、ニッケル、フェライト等の磁歪材料で形成された枠体60を有している。枠体60は、角柱形状の基枠60aと、基枠60aからほぼ垂直に延出した一対の角柱形状の支持枠60bと、を一体に有している。一対の支持枠体60bの延出端部の間に角柱形状の永久磁石62が配置され、基枠60aと隙間を置いてほぼ平行に対向している。一対の支持枠60bには、巻き方向が異なる第1コイルCAおよび第2コイルCBがそれぞれ巻装されている。第1コイルCAおよび第2コイルCBは、交流電源30に接続されている。
【0028】
基枠体60aは、振動子12の出力端を構成し、この基枠体60aに縦型のホーン40が連結されている。ホーン40としては、例えば、前述した第1実施形態におけるホーン40と同様に構成されたホーンを用いている。ホーン40は、基枠体60aのほぼ中央部に連結され、ホーン40の中心軸線C1は、振動子12の振動方向に一致している。
第1コイルCAおよび第2コイルCBに交流電圧を印加すると、基枠体60aの振動面(ホーン40が取り付けられている側面)に超音波振動が発生する。この超音波振動はホーン40により増幅され、ホーン40の先端部から出力される。
【0029】
上記のように、振動子として磁歪型の振動子12を用いた第6実施形態においても、前述した第1実施形態と同様に、不要な振動モードを抑制しつつ振動振幅の増大を図ることが可能なホーンおよび超音波振動装置を提供することができる。
【0030】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、ホーン40は、円柱形状に限定されることなく、他の柱状、例えば、角柱形状のホーンとしてもよい。ホーン40の切欠き、溝、あるいは、凹所は、矩形状に限定されることなく、円形、楕円形、その他、種々の形状を選択可能である。また、切欠き、溝、あるいは凹所の底面は、平坦に限らず、湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…超音波振動装置、12…振動子14a、14b…圧電素子、
18…バックマス、20…コーン、30…交流電源、40…ホーン、
50…切欠き、52、54…長溝、56…凸部、60…枠体