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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】サービス同一性検査装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 67/565 20220101AFI20240314BHJP
【FI】
H04L67/565
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023202288
(22)【出願日】2023-11-30
【審査請求日】2023-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523452861
【氏名又は名称】ビヨンドブロックチェーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】弁理士法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 賢爾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】呉 一憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恒男
(72)【発明者】
【氏名】鳥澤 周作
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-093314(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116069725(CN,A)
【文献】特開2005-259056(JP,A)
【文献】特開2019-079280(JP,A)
【文献】特開2006-351002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性を検査するサービス同一性検査装置において、
予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段と、
上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からメッセージダイジェストを生成するメッセージダイジェスト算出手段と、
対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記メッセージダイジェスト算出手段により生成された2つのメッセージダイジェストの間で比較を行い、当該対応する2つのサービスの同一性を検査する比較手段とを有することを特徴とするサービス同一性検査装置。
【請求項2】
上記メッセージダイジェストを記憶するメッセージダイジェスト記憶手段をさらに有する請求項1に記載のサービス同一性検査装置。
【請求項3】
上記メッセージダイジェスト記憶手段は、上記メッセージダイジェストをブロックチェーンプロトコルによって記憶する請求項2に記載のサービス同一性装置。
【請求項4】
上記サービス記述変換手段は、大規模言語モデルにより実現される請求項1記載のサービス同一性検査装置。
【請求項5】
上記メッセージダイジェスト算出手段はハッシュ関数である請求項1に記載のサービス同一性検査装置。
【請求項6】
上記メッセージダイジェストは上記メッセージダイジェスト記憶手段において固定長の識別子として用いられる請求項2に記載のサービス同一性管理装置
【請求項7】
上記比較手段は、上記メッセージダイジェスト算出手段によって新たに生成されたメッセージダイジェストと同一の値が上記メッセージダイジェスト記憶手段にすでに記憶されているかどうかに基づいて同一性を判断する請求項2に記載のサービス同一性管理装置。
【請求項8】
上記サービス記述変換手段は、乗り換え元ベンダの第1の記述言語で記述された上記乗り換え元ベンダのサービス記述を、乗り換え先ベンダの第2の記述言語で記述された上記乗り換え先ベンダのサービス記述に変換する請求項1記載のサービス同一性検査装置。
【請求項9】
サービスはホームオートメーションサービスである請求項1記載のサービス同一性検査装置。
【請求項10】
サービスはインターネット接続サービスである請求項1記載のサービス同一性検査装置。
【請求項11】
サービスは移動体通信接続サービスである請求項1記載のサービス同一性検査装置。
【請求項12】
通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性を検査するサービス同一性検査方法において、
サービス記述変換手段が、予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するステップと、
メッセージダイジェスト算出手段が、上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からメッセージダイジェストを生成するステップと、
比較手段が、対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記メッセージダイジェスト算出手段により生成された2つのダイジェストの間で比較を行い、当該対応する2つのサービスの同一性を検査するステップとを有することを特徴とするサービス同一性検査方法。
【請求項13】
通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性を検査するためのコンピュータプログラムにおいて、
プロセッサを、
予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段、および、
上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からメッセージダイジェストを生成するメッセージダイジェスト算出手段として機能させ、
対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記メッセージダイジェスト算出手段により生成された2つのメッセージダイジェストの間で比較を行い、当該対応する2つのサービスの同一性を検査できるようにすることを特徴とするサービス同一性検査用のコンピュータプログラム。
【請求項14】
通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性に関するデータを管理するサービス同一性管理装置において、
予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段と、
上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からダイジェストを生成する一方向性関数手段とを有し、
対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記一方向性関数手段により生成された2つのダイジェストを出力して、出力された2つのダイジェストを比較して当該対応する2つのサービスの同一性を検査可能にすることを特徴とするサービス同一性管理装置。
【請求項15】
通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性に関するデータを管理するサービス同一性管理装置において、
予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段と、
上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述から予め定められたデータ長の固定長データに生成する固定長データ生成手段とを有し、
対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記固定長データ生成手段により生成された2つの固定長データを出力して、出力された上記2つの固定長データを比較して当該対応する2つのサービスの同一性を検査可能にすることを特徴とするサービス同一性管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サービスの提供先を変更したときの乗り換え元のサービスと乗り換え先のサービスとの間の同一性を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット接続サービス、ホームオートメーションサービス、携帯電話等々のサービスを乗り換える際に顧客の真正なデータが引き継がれるかどうかは、ほとんどの場合において確認されておらず、業者への信用、または顧客自身による旧サービスからのエクスポートと新サービスへのインポートの信頼性に委ねられている。サービスの乗り換えをできるだけ自動化し、かつデータの真正性を検証可能にすることが望まれる。
【0003】
なお、ホームオートメーションにおいては、規格の相違を吸収するように通信アダプタを設けることが提案されているけれども(特開2015-119389号公報)、サービス自体の乗り換えに対処する提案は知られていない。
【0004】
上述の従来技術やその問題点は、この発明の背景の一部を説明するためにのみ説明している。この発明は上述の従来技術や問題点に限定されるものではない点に留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-119389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、以上の事情を考慮してなされたものであり、サービスの提供先を変更したときの乗り換え元のサービスと乗り換え先のサービスとの間の同一性を検査できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。ここでは、発明を詳細に説明するのに先だって、特許請求の範囲の記載について補充的に説明を行なっておく。
【0008】
すなわち、この発明の一側面によれば、通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性を検査するサービス同一性検査装置に:予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段と;上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からメッセージダイジェストを生成するメッセージダイジェスト算出手段と;対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記メッセージダイジェスト算出手段により生成された2つのメッセージダイジェストの間で比較を行い、当該対応する2つのサービスの同一性を検査する比較手段とを設けている。
【0009】
この構成においては、乗り換えの前後のサービス記述のメッセージダイジェストを比較してサービスの同一性を確認できる。
【0010】
この構成において、上記メッセージダイジェストを記憶するメッセージダイジェスト記憶手段をさらに設けて良い。
【0011】
この構成において、上記メッセージダイジェスト記憶手段は、上記メッセージダイジェストをブロックチェーンプロトコルによって記憶して良い。
【0012】
この構成において、上記サービス記述変換手段は、大規模言語モデルにより実現されて良い。
【0013】
この構成において、上記メッセージダイジェスト算出手段はハッシュ関数であって良い。
【0014】
この構成において、上記メッセージダイジェストは上記メッセージダイジェスト記憶手段において固定長の識別子として用いられて良い。
【0015】
この構成において、上記比較手段は、上記メッセージダイジェスト算出手段によって新たに生成されたメッセージダイジェストと同一の値が上記メッセージダイジェスト記憶手段にすでに記憶されているかどうかに基づいて同一性を判断して良い。
【0016】
この構成において、上記サービス記述変換手段は、乗り換え元のベンダの第1の記述言語で記述された上記乗り換え元ベンダのサービス記述を、乗り換え先ベンダの第2の記述言語で記述された乗り換え先ベンダのサービス記述に変換して良い。
【0017】
この構成において、サービスはホームオートメーションサービス、インターネット接続サービス、または、サービスは移動体通信接続サービスであって良い。
【0018】
また、この発明の他の側面によれば、通信ネットワークを介してユーザにサービスを提供する複数のサービスプロバイダの間でユーザがサービスを乗り換える際のサービスの同一性に関するデータを管理するサービス同一性管理装置に:予め定められた複数の記述言語のいずれかで記述されたサービス記述を予め定められた中間表現のサービス記述に変換するサービス記述変換手段と;上記サービス記述変換手段で変換された上記中間表現のサービス記述からダイジェストを生成する一方向性関数手段とを設け、対応する2つのサービスに対して上記サービス記述変換手段で生成された2つの中間表現のサービス記述から上記一方向性関数手段により生成された2つのダイジェストを出力して、出力された2つのダイジェストを比較して当該対応する2つのサービスの同一性を検査可能にするようにしている。
【0019】
この構成においても、乗り換えの前後のサービス記述のダイジェストを比較してサービスの同一性を確認できる。
【0020】
また、中間表現のサービス記述を、固定長のデータに変換して、その変換結果を比較して良い。
【0021】
なお、この発明は装置またはシステムとして実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、そのような発明の一部をソフトウェアとして構成することができることはもちろんである。またそのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品もこの発明の技術的な範囲に含まれることも当然である。
【0022】
この発明の上述の側面および他の側面は特許請求の範囲に記載され以下実施例を用いて詳述される。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、乗り換えの前後のサービスの同一性を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の実施例のサービス同一性検査システムの利用環境例を示す図である。
図2】この発明の実施例のサービス同一性検査システムの構成例を説明する図である。
図3】この発明の実施例のサービス同一性検査システムを構成する計算機リソースを説明する図である。
図4】この発明の実施例の動作例を説明する図である。
図5A】この発明の実施例の動作例を説明する図である。
図5B】この発明の実施例の動作例を説明する図である。
図5C】この発明の実施例の動作例を説明する図である。
図6A】この発明の実施例の乗り換え元のプロバイダにおけるサービス記述例を説明する図である。
図6B】この発明の実施例の同一性サービス部におけるサービス記述例を説明する図である。
図6C】この発明の実施例の乗り換え先のプロバイダにおけるサービス記述例を説明する図である。
図7】ブロックチェーンプロトコルを説明する図である。
図8】この発明の他の実施例のサービス同一性検査システムの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施例に従うサービス同一性検査システム100について説明する。
【0026】
[実施例1]
図1は、この発明の実施例1のサービス同一性検査システム100の利用環境を全体として示している。サービス同一性検査システム100は、たとえば、ホームオートメーションサービスに適用可能であるけれども、移動体通信サービス、インターネットサービス等に適用可能である。図1において、サービス同一性検査システム100が、IPネットワーク500に接続されている。IPネットワーク500には、ユーザ装置600およびサービスプロバイダシステム700が接続され、ユーザ装置600はサービスプロバイダシステム700からサービスの提供を受ける。サービス同一性検査システム100は、同一性サービス部200およびエビデンスサービス部300を有している。同一性サービス部200は、サービスプロバイダシステム700(700A)におけるサービス記述を他のサービスプロバイダシステム700(700B)におけるサービス記述に変換し、また、サービスプロバイダシステム700におけるサービス記述を、サービス同一性検査システム100に固有の中間表現のサービス記述に変換するものである。エビデンスサービス部300は、サービス同一性検査システム100に固有の中間表現のサービス記述に変換されたサービス記述からダイジェストを生成し、保管し、このダイジェストを用いてサービス記述の同一性を検査可能にするものである。
【0027】
図2は、実施例1のサービス同一性検査システム100の構成例を示しており、図2において、サービス同一性検査システム100は、同一性サービス部200およびエビデンスサービス部300を有し、同一性サービス部200は、大規模言語モデル210およびサービス記述データベース220を有し、サービス記述データベース220は、予め定められたプログラム言語で記述されたサービス記述およびサービス同一性検査システム100に固有の中間表現で記述されたサービス記述について大量のデータを保持して大規模言語モデル210を上述の予め定められた記述言語の間のサービス記述の変換(翻訳)、ならびに、上述の予め定められた記述言語のサービス記述の上述の中間表現のサービス記述への変換(翻訳)を行う変換部230を構成するようになっている。エビデンスサービス部300は、ダイジェスト生成部310、ダイジェスト記憶部320、および比較部330を有しており、ダイジェスト生成部310は、中間表現のサービス記述から固定長のメッセージダイジェスト(この実施例では単にダイジェストと呼ぶこともある)を生成するものであり、典型的には、暗号学的ハッシュ関数により生成される。ダイジェストは固定長であり、識別子として使用可能である。生成されたダイジェストはダイジェスト記憶部320に記憶される。ダイジェストは図7に示すようなブロックチェーンプロトコルで記憶され、抹消・改変・捏造から保護される。比較部330は、ダイジェスト記憶部320に記憶されたダイジェストの間の比較を行い、同一であるかどうかを決定する。
【0028】
大規模言語モデル(LLM)は、言語モデルを大規模な学習源を用いた機械学習により構築し、文章やプログラムコード等について、与えられた文脈に沿って、それに続くそれらしい出力を確率分布にもとづいて予想するものである。言語モデルは、長さがm個の単語列が与えられたとき、その単語列全体に対しての確率P(w,…,w)を与える。大規模言語モデルでは、文字列をより細かな構成要素(トークン)で区切った列と見なすことで、単語が区切られる英語等のみならず、日本語や、記号を含むプログラムコード等に対しても予測を行える。
【0029】
大規模言語モデルは、例えば入力層と、出力層と、複数の中間的な隠れ層とを有するニューラルネットワークを用い、これは大規模のコーパスで学習させて構築可能である。
【0030】
暗号学的ハッシュ関数の例としては、NIST(米国立標準技術研究所)が定めるSHA(Secure Hash Algorithm)シリーズがあり、SHA-2やSHA-3の256ビット出力の版を用いて良いけれども、これに限定されない。
【0031】
暗号学的ハッシュ関数は、実質的に一方向性関数であり、ダイジェストが公開されても、元のサービス記述(中間表現)が再現されないので、プライバシー保護、財産的情報の保護の面で問題が生じない。
【0032】
暗号学的ハッシュ関数は、異なる入力に対してメッセージダイジェストが同一にならない、すなわち、衝突が生じないように一様性が確保されていることが望まれる。
【0033】
比較部330は、新たに生成したメッセージダイジェストが、ダイジェスト記憶部320にすでに記憶されているかどうかを調べて良いけれども、これに限定されない。桁数の小さなハッシュ関数を用いてハッシュトリーを形成してトリーのリーフページにメッセージダイジェストを整理して記憶させ、突き合わせを高速に行って良いけれとも、これに限定されない。
【0034】
ダイジェスト記憶部320の各メッセージダイジェストに紐づけて、関連する補助的なデータ、例えばユーザのデータ、引継ぎ履歴等を記憶して良い。この関連するデータは、メッセージダイジェストと別に管理して非公表として良い(例えばアクセス管理して良い)。暗号学的ハッシュ関数は、実質的に衝突を回避することが期待される。異なるサービス記述のハッシュ値が衝突する(同一になる)稀有な場合を考慮して、同一のメッセージダイジェストについても、これに紐づけられた関連するデータを突き合わせて、さらに厳密な一致性を確保して良いけれども、これに限定されない。
【0035】
図7は、ブロックチェーンの概念的な例を示している。各ブロック(A、B、C)は、その中にデータのセットを含む。このデータは任意に設定できるけれども、伝統的にはトランザクションのリストである。各ブロックは、その前のブロックへの参照を有する。データ構造としてのブロックチェーンの際立った特徴の1つは、各ブロックに保持されているデータが改ざんされていないことを示す、暗号学的ハッシュ関数の出力による証拠が含まれていることである。ダイジェスト記憶部320は任意のエビデンスネットワーク(図5A図5C)に保持されて良い。このネットワークは、ブロックチェーンに限定されず、任意の改ざん検出・防止が可能な手法を採用して良い。
【0036】
図3は、サービス同一性検査システム100を構成するコンピュータの模式的構成例を示すけれども、これに限定されない。図3において、コンピュータ1000は、CPU(プロセッサ)1001、主メモリ1002、外部インターフェース1003、および外部記憶装置1004等を含んで構成されており、アプリケーション1005をこのコンピュータ1000にインストールすることにより、サービス同一性検査システム100の動作を実現できる。サービス同一性検査システム100は複数のコンピュータに分散的に構成されて良い。
【0037】
図4図5A図5Cは、サービス同一性検査システム100の動作例を示している。まず、通常の使用時の動作(Xで示す)を説明する(図5A)。通常の使用において、ユーザは、例えば、ホームオートメーションサービスに関連して住環境をプログラミングする。そのコード(サービス記述)はプロバイダシステム700(700A)が保管し、必要に応じて当該コードが呼び出されることによって住環境が自動で動作する(例:「おやすみ」コマンドで照明、テレビ、エアコン等が一気にシャットダウンする)。サービス記述(コード)が新規に入力されたり変更されたりすると(X1)、変換・正規化要求(X2)に基づいて同一性サービス部200を通して大規模言語モデル210の内部表現に変換・正規化され、ダイジェスト登録要求(X3)に基づいて、その暗号学的ダイジェストがエビデンスサービス部300においてダイジェスト記憶部320に登録される。
【0038】
ユーザは、プロバイダシステム700からサービス記述をバックアップしてその同一性を検証できる。この検証動作はYで示す(図5B)。まず、ユーザはプロバイダシステム700からサービス記述をバックアップする(Y1)。これはプロバイダシステム700のバックアップ要求を行って実現できる。ユーザは同一性サービス部200に同一性確認要求をバックアップしたサービス要求とともに送出し(Y2)、同一性サービス部200は、サービス記述を中間表現に変換してエビデンスサービス部300に送出して(Y3)、エビデンスサービス部300の比較部330が対応するダイジェストに基づいて同一性を検査し、同一性の有無をユーザに返す(Y4)。
【0039】
つぎに乗り換えおよびサービスの連続性の確認(Zで示す)について説明する(図5C)。ユーザは乗り換え元のプロバイダシステム700(700A)に乗り換えの通知を送出する(Z1)。乗り換え元のプロバイダシステム700(700A)は、同一性サービス部200に対して、保持しているサービス記述を伴って、乗り換え先のサービスプロバイダシステム700(700B)の記述言語に当該サービス記述を変換(翻訳)し、その変換結果を、乗り換え先のサービスプロバイダシステム700(700B)に転送するように、指示する(Z2)。同一性サービス部200は、乗り換え元のサービス記述を変換部230により乗り換え先のサービス記述に変換して、これを乗り換え先のプロバイダシステム700(700B)に供給し(Z3)、プロバイダシステム700(700B)はこれを保管して、以降、ユーザに、サービス記述に基づいてサービスを提供する。プロバイダシステム700(700B)は、さらに、サービス記述のバックアップをユーザに供給し(Z4)、ユーザはこのバックアップしたサービス記述とともに同一性確認要求(Z5)を同一性サービス部200に送出し、同一性サービス部200はこれを中間表現に変換してエビデンスサービス部300に送出し、エビデンスサービス部300がダイジェストを生成して、ダイジェスト間の比較を行い、同一性を検証し(Z6)、同一性の有無をユーザに返す(XZ7)。
【0040】
ユーザは同一性が確認されたら、以降、先に説明した通常動作(X)を繰り返す。
【0041】
図6Aは、乗り換え元プロバイダにおけるサービス記述の例(YAML)を示し、図6Bは、同一性サービス部200における中間表現のサービス記述例(XML)を示し、図6Cは、乗り換え先プロバイダにおけるサービス記述の例(JSON)を示す。もちろん、サービス記述や中間表現は特定の記述言語に限定されない。
【0042】
上述の実施例では、暗号学的ハッシュ関数を用いたけれど、一方向性関数を広く利用して良い。
【0043】
[実施例2]
つぎに、この発明を実施例2について説明する。図8は、実施例2の構成を示しており、この図において、図2と対応する箇所には対応する符号を付し、説明を省略する。この実施例においては、比較部330をエビデンスサービス部300から外して、ユーザ側または他のサービスで実現するようにしている。ユーザは携帯電話(スマートホン)等の携帯端末に比較部を実現して良い。
【0044】
[実施例3]
この発明では、中間表現のサービス記述を暗号学的ハッシュ関数等の実質的一方向性関数を用いているけれども、中間表現のサービス記述を、固定長のデータに変換して、その変換結果を比較して良い。中間表現のサービス記述の一部をカットして固定長データとしても良い。固定長データから、サービス記述の一部がそのまま読み取れる場合には、データ防護手段を用いて、個人情報や財産的な情報を外部の第3者のアクセスから保護することが好ましい。例えば、図2において、ダイジェスト生成部310を、中間表現のサービス記述を固定長データに変換する変換部として良い。
【0045】
以上の説明では、主に、ホームオートメーションのサービスの乗り換えを前提に説明したけれども、携帯電話のサービスの乗り換え、インターネットサービスプロバイダの乗り換え、家庭用ルータに関連するサービス、タスク自動化ツール(IFTTT、Zapier、商標)間の乗り換え、クラウドストレージサービスの乗り換え、電子プラットフォームの乗り換え、ホームセキュリティサービスの乗り換え、いわゆるメタバース系サービスの乗り換え(VRワールドの乗り換え)、IaaSにおける仮想マシンのホスティングサービスの乗り換え、FaaSのファンクションのホスティングサービスの乗り換えにも適用可能である。また、携帯電話やパーソナルコンピュータの乗り換え、その設定ファイル(.bashrc、.emacs)の乗り換え、マシンコードトランスレーションにも適用可能である。
【0046】
なお、携帯電話(移動体通信の移動局)の乗り換え(MNP)では、以下の手順がとられ、いずれの手順でもこの発明の同一性検査を行える。
【0047】
[ワンストップ方式]
1.顧客は移転先事業者のウェブサイトで契約を申し込む。
2.移転元事業者のウェブサイトに自動で遷移し、顧客のマイページなどにログイン後、解約の手続きに入る。
3.解約の確認が完了すると、再び移転先事業者のウェブサイトに遷移し、契約を進める。
4.契約が完了すると、自動でハンドオーバーが起きる。移転元事業者との契約は解約される。
5. 顧客はサービス同一性検査装置を利用してサービスの同一性を確認できる。
【0048】
[ツーストップ方式]
1.顧客は移転元事業者に移転を申請する。
2.移転元事業者から解約の説明を受け、「移転予約番号」を受領する。
3.移転先事業者に「移転予約番号」を伝えて新規契約を申請する。
4.移転先事業者にて新規契約処理が終わると、自動でハンドオーバーが起きる。
5.顧客はサービス同一性検査装置を利用してサービスの同一性を確認できる。
【0049】
サービスの同一性は機能要件の一致を表し、ユーザは例えば性能(処理速度、応答速度や価格やサポートなど)が向上するために事業者を移転することができるようになる。
【0050】
以上で、この発明の実施例の説明を終了する。なお、この発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例の構成要素は通信ネットワークにおいて分散して配置されて良い。
【符号の説明】
【0051】
100 サービス同一性検査システム
200 同一性サービス部
210 大規模言語モデル
220 サービス記述データベース
230 変換部
300 エビデンスサービス部
310 ダイジェスト生成部
320 ダイジェスト記憶部
330 比較部
500 IPネットワーク
600 ユーザ装置
700 サービスプロバイダシステム
【要約】
【課題】サービスの提供先を変更したときの乗り換え元のサービスと乗り換え先のサービスとの間の同一性を検査できるようにする。
【解決手段】サービス同一性検査システム100は、同一性サービス部200およびエビデンスサービス部300を有し、同一性サービス部200は、大規模言語モデル210を用い、サービスプロバイダに固有の記述言語によるサービス記述を中間表現のサービス記述に変換し、さらに、中間表現のサービス記述から固定長のメッセージダイジェストを生成する。同一性サービス部200は、乗り継ぎ元のサービス記述を乗り継ぎ先に固有の記述言語によるサービス記述に変換して乗り継ぎ先に提供して良い。エビデンスサービス部300は、乗り継ぎ後のサービス記述のメッセージダイジェストが、ダイジェスト記憶部320にあるかどうかを検査して乗り継ぎの前後のサービス記述の同一性を検証する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8