(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】炭鉱用多機能封止剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 8/514 20060101AFI20240314BHJP
E21F 5/06 20060101ALI20240314BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20240314BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
C09K8/514
E21F5/06
A62D1/00
A62C3/00 J
(21)【出願番号】P 2023541045
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2021076121
(87)【国際公開番号】W WO2022147888
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】202110010867.5
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】程 衛民
(72)【発明者】
【氏名】胡 相明
(72)【発明者】
【氏名】顔 丙瑞
(72)【発明者】
【氏名】趙 艶雲
(72)【発明者】
【氏名】薛 迪
(72)【発明者】
【氏名】呉 明躍
(72)【発明者】
【氏名】賀 正龍
(72)【発明者】
【氏名】白 光星
(72)【発明者】
【氏名】牟 宗磊
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101766877(CN,A)
【文献】特表2005-516140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K
E21F5/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロメ生物抽出液を含む炭鉱用封止剤の製造方法であって、
前記製造方法は、
工程(1):クロメを不透明なタンクに入れて淡水に3~4時間浸漬して取り出した後、流水で2~3回洗浄して乾燥タンクに入れ、90~100℃で50~60min乾燥させ、粉砕機に入れて3~5min破砕し、粒径が120メッシュ未満のクロメ粉末を選別し、
工程(2):
前記選別したクロメ粉末を反応容器に入れて水と混合し、クロメ懸濁液を得て、45~55℃まで昇温し、空気雰囲気下で撹拌し、五酸化二リンをゆっくりと加え、30min撹拌して反応させた後、複合酵素を加えて引き続き30min撹拌し、50~55h静置して反応させ、濾過してクロメ生物抽出液を得、
工程(3):工程(2)で得られたクロメ生物抽出液に尿素を加えて中和し、20min撹拌し、60℃まで昇温した後、窒素雰囲気下で撹拌し、質量分率0.5~2%の無機触媒及び質量分率1~3%のメラミンを順に添加し、十分に反応させて混合し、バイオベース封止相乗剤溶液を得、
工程(4):工程(3)で得られたバイオベースの封止相乗剤溶液
を冷却後、当該溶液を秤量してペンタエリスリトール、ポリリン酸アンモニウムと均一に撹拌して混合し、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用封止剤を得る
ことを含み、
前記工程(2)において、前記クロメ粉末と水との混合比率は、質量比1:35~1:45で
あり、前記五酸化二リンの添加量は、(質量比)五酸化二リン:水=1:13~1:42で
あり、前記複合酵素は、エンドグルカナーゼ、セロビアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、βグルコシダーゼのうちの1種又は複数種であり、添加量は、質量分率0.5~1.5%であり、
前記工程(3)において、前記無機触媒は、層状金属複合水酸化物であり、尿素の添加量(質量比)は、尿素:五酸化二リン=1:1~1:3で
あり、
前記工程(4)において、得られたバイオベース封止相乗剤溶液
を冷却後、当該溶液を100~105重量部秤量して3~5重量部のペンタエリスリトール、2~5重量部のポリリン酸アンモニウムと撹拌して混合する、
ことを特徴とする炭鉱用封止剤の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炭鉱用封止剤の製造方法により製造された炭鉱用封止剤
の炭鉱封止における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭鉱の防火、消火材料の技術分野に関し、炭鉱用多機能封止剤及びその製造方法に関し、具体的には、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中国のエネルギー分布は、「豊富な石炭、乏しい石油、少ない燃料ガス」という特徴を有し、近年、環境保護の意識が徐々に高まっており、新型エネルギーの開発及び利用は、徐々に発展していたが、コストや技術に制限され、中国のエネルギー消費の主体部分は、依然として石炭である。しかし、統計によれば,中国の半数を超える国有の重要な炭鉱は、自然発火の危険があり、そのうちの90%以上は、石炭の自然発火によるものである。石炭の自然発火を引き起こす原因は、主に石炭素層の酸化にあり、この反応は、全ての炭鉱事故においてその発生が最も隠蔽され、同時に坑道ガスの爆発を誘発し、有毒で有害なガスを発生させ、さらに石炭粉塵の爆発などの二次災害を引き起こし、消火過程においてしばしば誘発されるウォーター・ガス爆発を加え、坑内の生命や財産に非常に大きい安全脅威をもたらす。そのため、石炭の自然発火災害の予防と管理は、鉱区の経済発展及び社会の調和のとれた進歩を促進して、持続可能な発展に応えることに重要な意義がある。
【0003】
現在の坑道での生産の実際の使用過程において、泥漿、不活性ガス、発泡体、ポリウレタンなどをよく用いて石炭の表面の裂け目を封止するが、これらの封止材料は、それぞれ一定の限界がある。また、グラウト技術は、実際の使用では、液体が地面に沿って高い場所から低い場所へ流れるため、石炭体又は採掘跡表面を均一に覆うことが困難であり、さらに裂け目よりも高く採掘跡を封止することができない。不活性ガスを注入する方法は、採掘跡が外部に連通しやすく閉鎖空間を形成することが困難であるため、ガス全体が外へ漏れる状態となっており、濃度が徐々に低くなり、酸素ガスも徐々に入り、その防火、消火効果を悪くし、消火周期も長い。発泡体は、採掘跡で堆積して高い場所の裂け目を封止するが、水を失いやすく、破裂し、封止機能を失ってしまう。ポリウレタンの封止材料は、石炭素層の裂け目を効果的に封止し、酸素ガスを遮断することができるが、ポリウレタン自体は、有機可燃性材料であり、石炭素層の自然発火を抑制できないだけでなく、石炭素層が発火すると、当該有機封止剤も燃焼して炭化し、大量の熱を放出して炭鉱火災を促し、且つ大量の有毒ガスを放出して坑道労働者の生命安全に危害を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、炭鉱用多機能封止剤及び製造方法を提供し、当該炭鉱用多機能封止剤には、クロメ抽出液が含まれ、クロメ抽出液は、クロメ生物抽出液であることが好ましい。当該封止剤原材料は、豊富で入手しやすく、無毒無害であり、坑道内において石炭体の裂け目に対して2回の封止を実現するだけでなく、石炭の自然発火の全周期(低温、中温、高温を含む)に対しても、効率的な難燃作用を果たすことができる。本発明の採用する技術案は以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤であって、その製造方法は、以下の通りであり、
(1)クロメを不透明なタンクに入れて淡水に3~4時間浸漬して取り出した後、流水で2~3回洗浄して乾燥タンクに入れ、90~100℃で50~60min乾燥させ、粉砕機に入れて3~5min破砕し、粒径が120メッシュ未満のクロメ粉末を選別し、
(2)クロメ粉末を反応容器に入れて水と混合し、クロメ懸濁液を得て、45~55℃まで昇温し、空気雰囲気下で撹拌し、五酸化二リンをゆっくりと加え、30min撹拌して反応させた後、複合酵素を加えて引き続き30min撹拌し、50~55h静置して反応させ、濾過してクロメ生物抽出液を得、
(3)ステップ(2)で得られたクロメ生物抽出液に尿素を加えて中和し、20min撹拌し、60℃まで昇温した後、窒素雰囲気下で撹拌し、質量分率0.5~2%の無機触媒及び質量分率1~3%のメラミンを順に加え、十分に反応させて混合し、バイオベース封止相乗剤溶液を得、
(4)ステップ(3)で得られたバイオベース封止相乗剤溶液を冷却後、当該溶液を秤量してペンタエリスリトール、ポリリン酸アンモニウムと均一に撹拌して混合し、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤を得る。
【0006】
本生物抽出法で製造された封止剤は、天然生物を原料として直接製造し、材料の利用率がより高く、利用率が40%以上に達することができ、プロセスが簡単であり、効果が著しく、高い経済効果を有する。
【0007】
好ましくは、ステップ(2)に記載のクロメ粉末と水との混合比率は、質量比1:35~1:45であり、ステップ(2)に記載の五酸化二リンの添加量は、(質量比)五酸化二リン:水=1:13~1:42であり、ステップ(2)に記載の複合酵素は、エンドグルカナーゼ、セロビアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、βグルコシダーゼのうちの1種又は複数種であり、添加量は、質量分率0.5~1.5%である。
【0008】
好ましくは、ステップ(3)に記載の無機触媒は、層状金属複合水酸化物であり、本体層板の化学組成は、調整可能であり、層間のゲスト陰イオンの種類及び数は、調整可能であり、インターカレーション組立体の粒径寸法及び分布は、調節制御可能であり、ステップ(3)に記載の尿素の添加量は、(質量比)尿素:五酸化二リン=1:1~1:3である。
【0009】
好ましくは、ステップ(4)において、得られたバイオベース封止相乗剤溶液を冷却後、当該溶液を100~105重量部秤量して3~5重量部のペンタエリスリトール、2~5重量部のポリリン酸アンモニウムと均一に撹拌して混合する。
【0010】
本発明は、さらに上記製造方法によって得られた炭鉱用多機能封止剤及び炭鉱用多機能封止剤を含有する製剤を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤は、坑道内で石炭体の裂け目に対して2回の封止を実現することができ、石炭の自然発火の全周期で効率的な難燃性を実現する。水を失う前、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤は、自体の生物粘性により石炭岩面に付着して石炭と酸素との接触を遮断するとともに、無機触媒に豊富な水酸基と石炭の表面活性カルボキシル基は、水素結合作用により連結し、それにより、石炭の表面安定性を向上させる。水分が徐々に蒸発して乾燥すると、完全に水を失ったクロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤は、自己発泡膨張して石炭の表面に2次充填を実現し、酸は、アルコールとのエステル化過程でPO・などのラジカルを放出し、石炭と酸素との複合で生成されたラジカルを捕捉し、燃焼反応チェーンを切断し、続いて固体緻密炭素層に相変化して燃焼過程で生じた酸性ガスを吸着し、CO放出速度、熱放射を著しく低下させ、石炭の自然発火特性温度点を向上させる。その風漏れを塞くこと及び防火、消火の優位性は、主以下の点に反映される。
【0012】
(1)本発明に係るクロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤は、石炭素層の裂け目に対して複数回の効果的な封止を実現することができる。水を失う前、当該封止剤は、自体の生物粘着性により、流動過程において石炭の表面に効果的に付着し、石炭ブロックの裂け目に充填される。完全に水を失った封止剤は、1層の固体フィルムから液体に相変化し、自己発泡膨張して自体の体積の50倍以上の発泡体層となり、石炭素層の裂け目を2回充填して効果的な封止を実現する。
【0013】
(2)本発明に係るクロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤は、石炭酸化分解の各段階においていずれも良好な抑制作用を果たすことができる。低温段階において、封止剤は、長期間にわたって水分を保持して石炭体を浸潤し、水分の蒸発によって大量の熱を奪うとともに、封止剤は、水素結合によって石炭の表面の官能基と連結して石炭の活性官能基の安定性を強化させ、水分蒸発が完了後、五酸化二リンと尿素生成物、ポリリン酸アンモニウムと封止剤におけるアルコール系物質は、金属複合水酸化物の触媒下で溶融してエステル化してPO・などのラジカルを放出して燃焼反応チェーンを切断するとともに、メラミン、一部のポリリン酸アンモニウム及び金属複合水酸化物は、分解して大量の不活性ガス(例えば、NH3、CO2など)を放出し、石炭の周りの酸素ガスを希釈し、温度が300℃程度に上昇すると、膨張エステル化物は、固体の炭素層に炭化し、金属複合水酸化物も温度の作用でさらに分解して金属複合酸化物を生成し、両者が交差貫通して緻密な3次元ネットワーク構造を形成し、熱伝達を遮断する。この一連の過程は、当該封止剤が通常の封止剤よりも長い作用温度範囲及びより高い難燃性効率を有することを可能にする。
【0014】
(3)高温火源に対面する際、封止剤が急速に水を失い、分解して大量の不活性ガスを放出して一部の熱を奪うとともに、急速に膨張して緻密な多孔質炭素層を生成し、採掘跡で堆積することができ、高位の着火点を効果的に覆う。その内部の金属複合酸化物のアルカリ性の性質は、燃焼過程で生成された酸性ガスを吸着することができ、一定の煙抑制機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】封止剤の使用前後の微粉炭のDSC曲線である。
【
図2】封止剤の使用前後の微粉炭のTG/DTG曲線である。
【
図3】多孔質3次元封止炭素層のマクロ形態図(ただし、aは、炭素層の表層の形態、bは、炭素層の内部形態)である。
【
図4】多孔質3次元封止炭素層のマイクロ形態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが,本発明の利点及び特徴は説明に伴ってより明確になる。しかし、実施例は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば,本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の技術方案の細部及び形態を修正又は代替することができるが,これらの修正及び置換はいずれも本発明の保護範囲内に属することを理解すべきである。
【0017】
実施例1
クロメ(黒布、学名:Ecklonia cava ssp. Kurome、コンブ目コンブ科カジメ属に属する大型の褐藻の1分類群である。)を不透明なタンクに入れて淡水に3時間浸漬して取り出した後、流水で2回洗浄して乾燥タンクに入れ、90℃で50min乾燥させ、粉砕機に入れて5min破砕し、粒径が120メッシュ未満のクロメ粉末を選別する。25kgのクロメ粉末を秤量して反応容器に入れて1000kgの水と混合し、クロメ懸濁液を得、45℃まで昇温し、空気雰囲気下で撹拌し、懸濁液ph=5.5となるまで、五酸化二リンをゆっくりと加え、30min撹拌して反応させた後、カルボキシペプチダーゼ:βグルコシダーゼ=1:2である複合酵素10.25kgを加えて引き続き30min撹拌し、50h静置して反応させ、濾過してクロメ生物抽出液を得る。
【0018】
溶液が中性になるまで、上記クロメ生物抽出液に尿素を加えて、20min撹拌し、60℃まで昇温した後、窒素雰囲気下で撹拌し、0.5kgのMg-Al-CO3ハイドロタルサイト層及び10kgのメラミンを順に加え、十分に反応させて混合し、バイオベース封止相乗剤溶液を得る。溶液を冷却後、50kgのペンタエリスリトール、20kgのポリリン酸アンモニウムを秤量して均一に撹拌して混合し、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤を得る。
【0019】
鉄管を介してスラリーを搬送し、それを燃焼している石炭スタックに噴出し、又は採掘跡に注入する。スラリーにおけるMg-Al-CO3ハイドロタルサイト層板間に大量の水酸基があり、これらの-OHは、石炭における-COO-と水素結合に連結することができ、一部の-COO-官能基は、さらにハイドロタルサイトにおける金属イオンと錯体を形成することができ、それにより、石炭の表面C=O基の安定性を向上させるとともに、封止剤の保有する大量の水分が石炭の表面に被覆して石炭を酸素と遮断し、石炭体の温度が170℃程度まで上昇すると、五酸化二リンと尿素生成物、ポリリン酸アンモニウムと封止剤におけるアルコール系物質(ペンタエリスリトール、アルギン酸ナトリウム、フルクトース及びガラクツロン酸など)は、Mg-Al-CO3ハイドロタルサイトの触媒下で溶融してエステル化し、PO・を放出して石炭の表面の活性ラジカルを捕捉し、そのチェーン反応を遮断し、メラミンと一部のポリリン酸アンモニウムは、熱を受けて分解して大量の不活性ガスを放出し、溶融した封止剤を膨張させて自体の厚さの55倍の発泡体層を形成し、環境における酸素ガスを希釈する。温度が300℃を超えると、液体発泡体層が相変化して固体炭素層に炭化し、石炭ブロックの裂け目に充填され、燃焼時に酸素ガス及び熱を遮断し、石炭ブロックの裂け目に対する被覆率が55%以上に達した。Mg-Al-CO3ハイドロタルサイトが高温作用で脱水して金属複合酸化物を生成し、炭素鎖と交差貫通して3次元ネットワーク構造を形成し、炭素層の緻密度を高めて難燃性効率を大幅に向上させる。
【0020】
実施例2
クロメを不透明なタンクに入れて淡水に3時間浸漬して取り出した後、流水で2回洗浄して乾燥タンクに入れ、90℃で50min乾燥させ、粉砕機に入れて5min破砕し、粒径が120メッシュ未満のクロメ粉末を選別する。25kgのクロメ粉末を秤量して反応容器に入れて1000kgの水と混合して、クロメ懸濁液を得て、45℃まで昇温し、空気雰囲気下で撹拌し、懸濁液ph=6になるまで、五酸化二リンをゆっくりと加え、30min撹拌し反応させた後、カルボキシペプチダーゼ:セロビアーゼ:エンドグルカナーゼ=1:1:1の複合酵素を10.25kg加えて、引き続き30min撹拌し、50h静置し反応させ、濾過してクロメ生物抽出液を得る。
【0021】
溶液が中性になるまで、上記クロメ生物抽出液に尿素を加えて、20min撹拌し、60℃まで昇温した後、窒素雰囲気下で撹拌し、1kgのZn-Al-CO3ハイドロタルサイト層及び10kgのメラミンを順に加え、十分に反応させて混合し、バイオベース封止相乗剤溶液を得る。溶液を冷却後、40kgのペンタエリスリトール、10kgのポリリン酸アンモニウムを秤量して均一に撹拌して混合し、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤を得る。
【0022】
鉄管を介してスラリー及び圧縮空気を同時に炭鉱坑内に搬送して霧化ノズルを介して噴出し、燃焼している石炭スタック又は採掘跡に噴出する。封止剤スラリーにおけるZn-Al-CO3ハイドロタルサイト層板間に大量の水酸基があり、これらの-OHは、石炭における-COO-と水素結合により連結することができ、一部の-COO-官能基は、さらにハイドロタルサイトにおける金属イオンと錯体を形成することができ、それにより、石炭の表面C=O基の安定性を向上させることができる。なお、封止剤の保有する大量の水分が石炭の表面に被覆されて石炭を酸素と遮断し、石炭スタックの温度の作用で、スラリーにおける水分が徐々に蒸発して石炭の表面の熱を奪う。温度が180℃程度になると、五酸化二リンと尿素生成物、ポリリン酸アンモニウムと封止剤におけるアルコール系物質(ペンタエリスリトール、アルギン酸ナトリウム、フルクトース及びガラクツロン酸など)は、Zn-Al-CO3ハイドロタルサイトの触媒下で溶融してエステル化し、PO・を放出して石炭の表面の活性ラジカルを捕捉し、そのチェーン反応を遮断し、メラミンと一部のポリリン酸アンモニウムは、熱を受けて分解し、大量の不活性ガスを放出し、溶融した封止剤を膨張させて自体の厚さの52倍の発泡体層を形成し、環境における酸素ガスを希釈する。温度が250℃を超えると、液体発泡体層が相変化して固体炭素層に炭化し、石炭の表面を覆い、熱を遮断し、石炭ブロックの裂け目に対する被覆率が60%以上に達した。Zn-Al-CO3ハイドロタルサイトは、高温作用下で脱水して金属複合酸化物を生成し、炭素鎖と交差貫通して3次元ネットワーク構造を形成し、炭素層の緻密度を向上させて難燃性効率を大幅に向上させる。
【0023】
実施例3
クロメを不透明なタンクに入れて淡水に3時間浸漬して取り出した後、流水で2回洗浄して乾燥タンクに入れ、90℃で50min乾燥させ、粉砕機に入れて5min破砕し、粒径が120メッシュ未満のクロメ粉末を選別する。25kgのクロメ粉末を秤量して反応容器に入れて1000kgの水と混合し、クロメ懸濁液を得、45℃まで昇温し、空気雰囲気下で撹拌し、懸濁液ph=5.8になるまで、五酸化二リンをゆっくりと加え、30min撹拌して反応させた後、セロビアーゼ:エンドグルカナーゼ=1:1である複合酵素を10.25kg加え、30min撹拌し、50h静置して反応させ、濾過してクロメ生物抽出液を得る。
【0024】
溶液が中性になるまで、上記クロメ生物抽出液に尿素を加え、20min撹拌し、60℃まで昇温した後窒素雰囲気下で撹拌し、1kgのCa-Mg-Al-CO3ハイドロタルサイト層及び10kgのメラミンを順に加え、十分に反応させて混合し、バイオベース封止相乗剤溶液を得る。溶液を冷却後、40kgのペンタエリスリトール、10kgのポリリン酸アンモニウムを秤量して均一に撹拌して混合し、クロメ生物抽出液に基づく炭鉱用多機能封止剤を得る。
【0025】
鉄管を介してスラリーを搬送し、それを燃焼している石炭スタックに噴出し、又は採掘跡に注入する。スラリーにおけるCa-Mg-Al-CO3ハイドロタルサイト層板間に大量の水酸基があり、これらの-OHは、石炭における-COO-と水素結合により連結することができ、一部の-COO-官能基は、さらにハイドロタルサイトにおける金属イオンと錯体を形成することができ、それにより、石炭の表面のC=O基の安定性を向上させる。なお、封止剤の保有する大量の水分は、石炭の表面に被覆されて石炭を酸素と遮断し、石炭スタックの温度の作用下で、スラリーにおける水分が徐々に蒸発して石炭の表面の熱を奪う。温度が200℃程度になると、五酸化二リンと尿素生成物、ポリリン酸アンモニウムと封止剤におけるアルコール系物質(ペンタエリスリトール、アルギン酸ナトリウム、フルクトース及びガラクツロン酸など)は、Ca-Mg-Al-CO3ハイドロタルサイトの触媒下で溶融してエステル化し、PO・を放出し、石炭の表面の活性ラジカルを捕捉し、そのチェーン反応を遮断し、メラミンと一部のポリリン酸アンモニウムは、熱を受けて分解して大量の不活性ガスを放出し、それにより、溶融した封止剤が膨張して自体の厚さの50倍の発泡体層を形成し、環境における酸素ガスを希釈する。温度が250℃を超えると、液体発泡体層は、相変化して固体炭素層に炭化し、石炭ブロックの裂け目に充填され、燃焼時に酸素ガス及び熱を遮断し、石炭ブロックの裂け目に対する被覆率は、60%以上に達した。Ca-Mg-Al-CO3ハイドロタルサイトは、高温作用下で脱水して金属複合酸化物を生成し、炭素鎖と交差貫通して3次元ネットワーク構造を形成し、炭素層の緻密度を向上させ、難燃性効率を大幅に向上させる。
【0026】
試験例1:本発明に係る炭鉱用多機能封止剤の使用前後の微粉炭酸化過程におけるCO放出量は、表1に示され、具体的な試験条件及び方法は、以下の通りであり、
それぞれ純微粉炭、封止剤を質量分率10%含む阻害微粉炭及び従来のハロゲン塩阻害剤(CaCl2)を質量分率10%含む阻害微粉炭を製造する。プログラムによる昇温装置によりサンプルを1.0℃/minの速度で210℃まで昇温し、試験ごとに50gのサンプルを装置反応器に入れ、乾燥空気を50mL/minの速度で反応器に入れ、反応器が所定の初期温度に過熱された後、石炭のサンプル及び炉体の温度を記録し、40℃から、ガスクロマトグラフにより10℃間隔で分析反応器の出口の排気ガスにおけるCO含有量を分析した。
【0027】
【0028】
表1のデータからわかるように、封止剤で処理された石炭のサンプルは、低温段階のCO放出量は、明らかに従来のCaCl2で処理された石炭のサンプルよりも低く、阻害率の計算式E=(Cr-Ct)/Cr×100%(ただし、Eは、サンプルの阻害率であり、Crは、原炭のサンプルCOの放出量であり、単位がppmであり、Ctは、阻害処理された石炭のサンプルの、温度がtであるときのCO放出量であり、単位がppmである)によれば、計算により、70℃での炭鉱用多機能封止剤が処理した微粉炭の阻害率は、47%であり、従来のCaCl2の阻害率よりも15.8%高く、炭鉱用多機能封止剤が処理した微粉炭の100℃での阻害率は、53.5%であり、従来のCaCl2の阻害率よりも23.1%高い。当該炭鉱用多機能封止剤は、低温段階で優れた阻害効果を有し、且つ効果は、温度の上昇に伴って増加する。
【0029】
試験例2:本発明に係る炭鉱用多機能封止剤の使用前後の微粉炭のDSC曲線は、
図1に示す通りである。本発明に係る炭鉱用多機能封止剤の使用前後の微粉炭のTG/DTG曲線は、
図2に示す通りである。熱重量分析(TG)と示差走査熱量(DSC)測定に使用される機器は、同期熱分析器(Labsys Evo STA、SETARAM、フランス)であり、50mL/minの空気雰囲気下で30℃から10k/minの速度でサンプルを900℃まで昇温させた。
【0030】
結果分析:TG曲線からわかるように、処理された石炭のサンプルの酸素吸収重量増加段階が顕著になっておらず、これは、石炭と酸素との複合過程が抑制されることを表す。なお、DTG曲線は、サンプルの重量減少速度を反映し、処理された微粉炭が最大重量減少速度に達した温度点は、60℃遅れる一方、従来のハロゲン塩類の阻害剤が阻害の後期に触媒作用を生じて、最大重量減少速度の温度点を早める。DSC曲線からわかるように、多機能封止剤によって処理された石炭のサンプルの熱放出量が明らかに減少し、放熱時間も明らかに遅くなり、積分計算によれば、単位質量当たりに減少した放熱は、20%に達した。実験データは、当該封止剤が石炭の自然発火を抑制する効果が明らかであり、且つ難燃性寿命が長く、酸化の後期に依然として効果的な難燃作用を発揮することができることを示す。
【0031】
試験例3:多孔質3次元封止炭素層のマクロ形態図は、
図3に示す通りであり、ただし、aは、炭素層の表層の形態であり、bは、炭素層の内部形態である。マイクロ形態は、走査型電子顕微鏡で観察して得られ、乾燥した封止剤のサンプルを船形のアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉で500℃で30min過熱した後、取り出し、APREO走査型電子顕微鏡(FEI Company、USA)で2kVの電圧で走査し、観察した多孔質3次元封止炭素層のマイクロ形態図は、
図4に示す通りである。
【0032】
結果分析:当該多機能炭鉱用封止剤は、高温時に体積が拡大し、膨張炭素層を形成し、炭素層の外表面が連続して緻密であり、燃焼時に熱、火炎及び可燃性ガスを遮断することができ、その内部が交錯接続された網状の構造であり、且つ直径が約30~50μm程度であり、密閉された穴を有し、小孔内におけるガスは、熱を受けて分解したときに生成したアンモニアガス、二酸化炭素と空気との混合体であることが多く、それにより、伝熱効率を低下させ、燃焼の抑制を可能にする。