(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】植物栽培装置および植物栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240314BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20240314BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20240314BHJP
A01G 22/25 20180101ALI20240314BHJP
【FI】
A01G9/02 103G
A01G27/02 B
A01G27/00 502L
A01G22/25 Z
(21)【出願番号】P 2019198891
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018205481
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221982
【氏名又は名称】東北資材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】澤口 哲也
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-182243(JP,U)
【文献】特開2002-045043(JP,A)
【文献】特開昭51-114226(JP,A)
【文献】特開2003-088246(JP,A)
【文献】特開平11-032587(JP,A)
【文献】特開2000-083480(JP,A)
【文献】登録実用新案第3146549(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0201564(US,A1)
【文献】実開平02-020443(JP,U)
【文献】実開昭63-187829(JP,U)
【文献】特開2015-077128(JP,A)
【文献】実開昭48-050549(JP,U)
【文献】特開平11-098929(JP,A)
【文献】特開平06-343349(JP,A)
【文献】特開昭52-034235(JP,A)
【文献】実開昭51-116844(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02
A01G 27/02
A01G 27/00
A01G 22/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠体と、下箱体とを備え、
前記上枠体は、発泡樹脂製の四辺の枠板を有し、この枠板で囲まれた内部空間として上枠体栽培槽を構成し、長手方向の前記枠板の底部近傍においては、前記上枠体栽培槽側の一面から前記枠板の全長に亘って内方に係止片が延設されているとともに、四辺の枠板の下面部には上枠体嵌合段部が形成されており、
前記下箱体は、上面を欠いた発泡樹脂製の箱体であって、底板とともに四辺の側壁を有し、この側壁に囲まれた内部空間では、長手方向の側壁と略平行に立設された仕切り壁により、液肥を貯留可能な下箱体液肥槽と、培地を充填可能な下箱体栽培槽とに間仕切られており、
前記下箱体液肥槽の底部近傍には、前記下箱体の短手方向の側壁の底部近傍に、前記下箱体液肥槽と連通する下箱体貫通孔と、該下箱体貫通孔を開閉自在とする下箱体開閉栓が設けられ、
前記下箱体の仕切り壁の上面部には下箱体液肥供給部が設けられるとともに、前記下箱体の上面部には、前記上枠体嵌合段部と嵌合可能とされた下箱体嵌合部が設けられており、
前記下箱体開閉栓により前記下箱体貫通孔が封止された前記下箱体液肥槽に前記液肥が貯留され、前記下箱体栽培槽に前記培地が充填された前記下箱体の前記下箱体嵌合部と、
前記上枠体嵌合段部とにおいて、前記上枠体と前記下箱体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記係止片により封止された前記下箱体液肥槽から、前記仕切り壁の前記下箱体液肥供給部を通じて、
下箱体吸水体を用いて前記下箱体栽培槽へ前記液肥が供給可能とされてい
て、
前記下箱体吸水体は、前記下箱体液肥槽から前記下箱体液肥供給部を介して前記下箱体栽培槽にわたり配置されることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
上枠体と下箱体と中間枠体を備え、
前記上枠体は、発泡樹脂製の四辺の枠板を有し、この枠板で囲まれた内部空間として上枠体栽培槽を構成し、長手方向の前記枠板の底部近傍においては、前記上枠体栽培槽側の一面から前記枠板の全長に亘って内方に係止片が延設されているとともに、四辺の枠板の下面部には上枠体嵌合段部が形成されており、
前記下箱体は、上面を欠いた発泡樹脂製の箱体であって、底板とともに四辺の側壁を有し、この側壁に囲まれた内部空間では、長手方向の側壁と略平行に立設された仕切り壁により、液肥を貯留可能な下箱体液肥槽と、培地を充填可能な下箱体栽培槽とに間仕切られており、
前記下箱体液肥槽の底部近傍には、前記下箱体の短手方向の側壁の底部近傍に、前記下箱体液肥槽と連通する下箱体貫通孔と、該下箱体貫通孔を開閉自在とする下箱体開閉栓が設けられ、
前記下箱体の仕切り壁の上面部には下箱体液肥供給部が設けられるとともに、前記下箱体の上面部には、前記中間枠体と嵌合可能とされた下箱体嵌合部が設けられており、
前記中間枠体は、上面を欠いた発泡樹脂製の箱体であって、四辺の側壁を有し、この側壁に囲まれた内部空間では、長手方向の側壁と略平行に立設された仕切り壁により、液肥を貯留可能な中間枠体液肥槽と、
底板を欠いた中間枠体栽培槽とに間仕切られており、
前記中間枠体液肥槽の底部近傍には、前記中間枠体の短手方向の側壁の底部近傍に、前記中間枠体液肥槽と連通する中間枠体貫通孔と、該中間枠体貫通孔を開閉自在とする中間枠体開閉栓が設けられ、
前記中間枠体の仕切り壁の上面部には中間枠体液肥供給部が設けられるとともに、該中間枠体の上面部には、前記上枠体嵌合段部と嵌合可能とされた中間枠体嵌合部が設けられるとともに、該中間枠体の下面部には前記下箱体嵌合部と嵌合可能とされた中間枠体嵌合段部が設けられており、
前記下箱体開閉栓により前記下箱体貫通孔が封止された前記下箱体液肥槽に前記液肥が貯留され、前記下箱体栽培槽に前記培地が充填された前記下箱体の前記下箱体嵌合部と、前記中間枠体嵌合段部とにおいて、前記中間枠体と前記下箱体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記中間枠体開閉栓により前記中間枠体貫通孔が封止された前記中間枠体液肥槽に液肥が貯留され、前記中間枠体栽培槽に培地が充填された前記中間枠体の前記中間枠体嵌合部と、前記上枠体嵌合段部とにおいて、前記中間枠体と前記上枠体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記中間枠体液肥槽の底板により封止された前記下箱体液肥槽から、前記仕切り壁の前記下箱体液肥供給部を通じて、
下箱体吸水体を用いて前記下箱体栽培槽へ前記液肥が供給可能とされ、
前記係止片により封止された前記中間枠体液肥槽から、前記仕切り壁の前記中間枠体液肥供給部を通じて、
中間枠体吸水体を用いて前記中間枠体栽培槽へ前記液肥が供給可能とされてい
て、
前記下箱体吸水体は、前記下箱体液肥槽から前記下箱体液肥供給部を介して前記下箱体栽培槽にわたり配置され、
前記中間枠体吸水体は、前記中間枠体液肥槽から前記中間枠体液肥供給部を介して前記中間枠体栽培槽にわたり配置されることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
前記上枠体において、長手方向の一対の枠板に、その厚み方向に上枠体貫通孔が設けられており、この上枠体貫通孔に液肥供給用の配管が挿通されていることを特徴とする請求項1または2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記下箱体貫通孔に水位計測装置が挿通されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記中間枠体貫通孔に水位計測装置が挿通されていることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記下箱体貫通孔に連結パイプが挿通されており、該連結パイプを介して水平方向に別の下箱体が連結可能とされている請求項1から3のいずれか一項に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記中間枠体貫通孔に連結パイプが挿通されており、該連結パイプを介して水平方向に別の中間枠体が連結可能とされている請求項2または5に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記植物が根菜類であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の植物栽培装置。
【請求項9】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置を用いた植物栽培方法。
<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記下箱体液肥槽に液肥を供給し、前記下箱体栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記下箱体嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記上枠体嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記上枠体栽培槽に、培地を充填し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【請求項10】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置を用いた植物栽培方法。
<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記下箱体液肥槽に液肥を供給し、前記下箱体栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体液肥槽を封止するように、前記中間枠体液肥槽の底板を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記下箱体嵌合部と、前記中間枠体の下面部に設けられた前記中間枠体嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記中間枠体液肥槽に液肥を供給し、前記中間枠体栽培槽に培地を充填する工程;
<4>前記中間枠体液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記中間枠体の上面部に設けられた前記中間枠体嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記上枠体嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<5>前記上枠体の枠板で囲まれた前記上枠体栽培槽に、培地を充填し、前記下箱体液肥供給部および前記中間枠体液肥供給部を通じて、前記下箱体液肥槽および前記中間枠体液肥槽に貯留された液肥を前記上枠体栽培槽、前記中間枠体栽培槽および前記下箱体栽培槽に充填された培地に供給し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【請求項11】
前記植物が、根菜類であることを特徴とする請求項9または10に記載の植物栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置および植物栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国では食の安全・安心が強く叫ばれ、一般家庭においても有機農法や減農薬農法での家庭菜園作りが盛んに行われている。例えば、自宅の庭での家庭菜園のみならず、都市近郊の小面積の農地を借り、週末に畑仕事に取り組む活動や、集合住宅のベランダでプランターを用いた土耕(土壌)栽培などが行われている。
【0003】
庭や農地での土壌栽培では、土壌の深さに関して制限がないため、葉物野菜に限らず、根部や地下茎を可食部とする根菜類の栽培も可能である。しかしながら、庭や農地での土壌栽培では、地表面の高さを大きく変更することが難しいため、作業者が地面のレベルに合わせて、屈んで作業する必要があり、膝や腰への負担が大きいという問題があった。このことは、近年増加しつつある定年退職後に農業に取り組むシニア層が農作業を行う際に、大きな問題となっている。また、農業を生業とする専業および兼業農家においても、高齢化が進んでいるため問題となっている。
【0004】
一方、プランターを用いた土壌栽培では、設置高さを自在に変更できるため、作業者の膝や腰への負担を比較的小さくすることができ、葉物野菜や地上部に結実する野菜や果実などの植物の栽培を容易に行うことができるものの、プランターの寸法によって土壌深さが制限されるので、地下茎や塊根が可食部とされている芋類や、大根、ゴボウ等の根菜類や、その他の根部が長い植物を栽培することは難しいという問題があった。
【0005】
そのため、これらの課題を解決することができ、しかも簡便に栽培管理を行うことができる植物栽培装置および植物栽培方法の開発が求められている。このような背景から、従来より、複数の装置を上下方向に積載、連結することで、土壌の深さと作業高さを容易に変更可能な植物栽培装置が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、上面に複数の保水材収容凹部が形成され、下面には前記保水材収容凹部の底面から貫通する排水孔が形成されるとともに該排水孔と重ならない位置に脚用突部が複数設けられた発泡プラスチック製基体と、前記保水材収容凹部に充填された保水材とよりなり、前記基体上に栽培土が配置された植物栽培装置が提案されている。この植物栽培装置では、基体から分離可能な枠部材を基体上面周縁に1つ以上積載可能とされており、枠部材の底部には、栽培土を落下させないようにネット部材が取り付けられている。そのため、多様な大きさの植物の栽培が可能であり、栽培土を盛った状態で枠部材のみを移動させることができ、植物栽培装置の移動、造園作業が容易であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の植物栽培装置では、基体に枠部材を積載して土壌深さを深くしたとしても、枠部材の底部に取り付けられたネット部材が、物理的障壁となるため、ネット部材の目を通り抜け可能な細い根を持つ植物や、地下茎や根部が枠部材の深さの範囲に収容可能な植物については栽培可能であるが、大根やゴボウ等の根部の長い根菜類については、依然として栽培が難しいという問題があった。
【0009】
また、仮に、枠部材の底部に取り付けられネット部を取り外して使用したとしても、保水材収容部は最下層に位置する基体にのみ設けられており、必ずしも根圏の全体において好適な水分条件を整えることは容易ではないという問題があった。
【0010】
以上のように、従来においては、植物栽培装置および植物栽培方法のいずれの面においても簡易、簡便化および作業者の肉体的負担の軽減等について、依然として実際的に満足できるものでなかった。
【0011】
そこで、本発明は、簡便な構成でありながら、作業高さおよび土壌深さを変更可能であり、家庭用として保守が容易かつ低コストであり、植物の栽培管理も容易であって、作業者の膝や腰への肉体的負担を軽減することができ、根菜類の栽培も可能な新規の植物栽培装置および植物栽培方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の植物栽培装置および植物栽培方法は、以下のことを特徴としている。
【0013】
(1)本発明の植物栽培装置は、上枠体と、下箱体とを備え、 前記上枠体は、発泡樹脂製の四辺の枠板を有し、この枠板で囲まれた内部空間として栽培槽を構成し、長手方向の前記枠板の底部近傍においては、前記栽培槽側の一面から、前記枠板の全長に亘って係止片が延設されているとともに四辺の枠板の下面部に嵌合段部が形成されており、
前記下箱体は、上面を欠いた発泡樹脂製の箱体であって、底板とともに、四辺の側壁を有し、この側壁に囲まれた内部空間では、長手方向の側壁と略平行に立設された仕切り壁により、液肥を貯留可能な液肥槽と、培地を充填可能な栽培槽に間仕切られており、前記液肥槽の底部近傍には、前記下箱体の短手方向の側壁の底部近傍に、前記液肥槽と連通する下箱体貫通孔と、該下箱体貫通孔を開閉自在とする開閉栓が設けられ、前記仕切り壁の上面部には液肥供給部が設けられるとともに、前記下箱体の上面部には、隣接する前記上枠体の嵌合段部と嵌合可能とされた嵌合部が設けられており、
前記開閉栓により前記下箱体貫通孔が封止された前記液肥槽に前記液肥が貯留され、前記栽培槽に前記培地が充填された前記下箱体の前記嵌合部と、前記上枠体の嵌合段部において、前記上枠体と前記下箱体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記係止片により封止された前記液肥槽から、前記仕切り壁の前記液肥供給部を通じて、前記栽培槽へ前記液肥が供給可能とされていることを特徴とする。
【0014】
(2)前記(1)の植物栽培装置において、前記上枠体および前記下箱体に加えて、前記下箱体の栽培槽の底板を欠いた形状の中間枠体を備え、
該中間枠体の上面部には前記上枠体の嵌合段部と嵌合可能とされた嵌合部が設けられるとともに、下面部には前記下箱体の嵌合部と嵌合可能とされた嵌合段部が設けられており、
前記開閉栓により前記貫通孔が封止された前記液肥槽に液肥が貯留され、前記栽培槽に培地が充填された前記下箱体の前記嵌合部と、前記中間枠体の嵌合段部において、前記中間枠体と前記下箱体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記開閉栓により貫通孔が封止された前記液肥槽に液肥が貯留され、前記栽培槽に培地が充填された前記中間枠体の前記嵌合部と、前記上枠体の嵌合段部において、前記中間枠体と前記上枠体とが上下方向に連結積載可能とされ、
前記係止片により封止された前記液肥槽から、前記仕切り壁の前記液肥供給部を通じて、前記栽培槽へ前記液肥が供給可能とされていることが好ましく考慮される。
【0015】
(3)前記(1)または(2)の植物栽培装置では、前記上枠体において、長手方向の一対の枠板に、その厚み方向に上枠体貫通孔が設けられており、この上枠体貫通孔に液肥供給用の配管が挿通されていることが好ましく考慮される。
【0016】
(4)また、前記下箱体貫通孔に水位計測装置が挿通されていることが好ましく考慮される。
【0017】
(5)さらに、前記中間枠体貫通孔に水位計測装置が挿通されていることが好ましく考慮される。
【0018】
(6)また、前記下箱体貫通孔に連結パイプが挿通されており、該連結パイプを介して水平方向に別の下箱体が連結可能とされていることが好ましく考慮される。
【0019】
(7)さらに、前記中間枠体貫通孔に連結パイプが挿通されており、該連結パイプを介して水平方向に別の中間枠体が連結可能とされていることが好ましく考慮される。
【0020】
(8)また、前記植物が根菜類であることが好ましく考慮される。
【0021】
(9)以下の工程を含むことを特徴とする前記(1)の植物栽培装置を用いた植物栽培方法。
<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体の液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記上枠体の枠板で囲まれた栽培槽に、培地を充填し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【0022】
(10)以下の工程を含むことを特徴とする前記(2)の植物栽培装置を用いた植物栽培方法。
<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体の液肥槽を封止するように、前記中間体の底板を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記中間枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記中間枠体の液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<4>前記中間枠体の液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記中間枠体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<5>前記上枠体の枠板で囲まれた栽培槽に、培地を充填し、前記下箱体および中間枠体の前記仕切り壁上面に設けられた液肥供給部を通じて、液肥槽に貯留された液肥を上枠体、中間枠体および下箱体の栽培槽に充填された培地に供給し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【0023】
(11)前記(9)または(10)の植物栽培方法では、前記植物が、根菜類であることが好ましく考慮される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の植物栽培装置および植物栽培方法によれば、簡易な構造でありながら、作業高さおよび土壌深さを変更可能であり、家庭用として保守が容易かつ低コストであり、植物の栽培管理も容易であって、作業者の膝や腰への肉体的負担を軽減することができ、しかも葉物野菜のみならず従来のプランターでは栽培が難しかった根菜類等も簡便に栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態を示す一部切欠斜視図である。
【
図3】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、上枠体および下箱体の栽培槽に設けられたスリットに仕切り板を挿通し、前記栽培槽を区切って使用する態様を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図1のA-A断面における断面図に液肥及び培地を充填した状態を示した図である。
【
図5】(a)は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態における上枠体を示す概略平面図である。(b)は、(a)のB-B断面図である。
【
図6】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態における下箱体を示す概略平面図である。
【
図7】(a)は、
図6のC-C断面図である。(b)は、
図6のD-D断面図である。(c)は、
図6のE-E断面図である。
【
図8】(a)は、
図3に示した本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、上枠体および下箱体の栽培槽に設けられたスリットに仕切り板を挿通するとともに、液肥及び培地を充填した状態を模式的に示した平面図である。(b)は、(a)のB’-B’断面図である。
【
図9】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、下箱体の短手方向の側壁であって栽培槽の外壁に相当する部分に、側壁貫通孔を穿設し、該貫通孔に温水を循環可能なヒートパイプを挿通する態様を示した概略平面図である。
【
図10】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、液肥供給部として吸水体を備える態様のA-A断面図に液肥及び培地を充填した状態を示した図である。
【
図11】本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、下箱体の液肥槽に液肥を充填するとともに、植物Pの周囲に円状に吸水体を配置した状態を模式的に示した概略平面図である。
【
図12】本発明の植物栽培装置の第二の実施形態を示す一部切欠斜視図である。
【
図14】
図12のF-F断面における断面図に液肥及び培地を充填するとともに、液肥供給部として吸水体を併用して植物を栽培している状態を示した図である。
【
図15】本発明の植物栽培装置の第二の実施形態における中間枠体を示す平面図である。
【
図16】(a)は、
図15のG-G断面図である。(b)は、
図15のH-H断面図である。(c)は、
図15のI-I断面図である。
【
図17】(a)は、本発明の植物栽培装置の第二の実施形態の水平方向における連結状態を示す一部切欠斜視図である。(b)は、(a)のJ-J断面における概略断面図である。
【
図18】本発明の植物栽培装置の第二の実施形態を連結状態で用いた植物栽培施設の概略断面図に液肥及び培地を充填するとともに、液肥供給部として吸水体を併用して植物を栽培している状態を示した図である。
【
図19】本発明の植物栽培装置を用いた場合の栽培槽中の培地の体積含水率測定試験の結果を示したグラフである。
【
図20】本発明の植物栽培装置を用いて栽培した大根を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面に沿ってさらに詳しく説明する。
【0027】
図1は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態を概略的に示した一部切欠斜視図である。
図2は、
図1の分解斜視図である。 植物栽培装置1は、上枠体2と、下箱体3とを備え、上枠体2は、発泡樹脂製の四辺の枠板21、22と、この枠板21、22で囲まれた内部空間として栽培槽23を構成し、長手方向の枠板21の底部近傍においては、栽培槽23側の一面から、枠板21の全長に亘って係止片24が設けられているとともに、四辺の枠板21、22の下面部に嵌合段部25が形成されている。また、上枠体2においては、
図1、2に示したように、栽培槽23の対向する内側面にスリット26が形成されている。このスリット26には、
図3に示したように、栽培槽23の上方より仕切り板27を挿通し、栽培槽23の空間を適宜区切って使用可能とされている。
【0028】
一方、下箱体3は、上面を欠いた発泡樹脂製の箱体であって、底面とともに四辺の側壁31、35を有し、この側壁31、35に囲まれた内部空間では、長手方向の側壁31と略平行に立設された仕切り壁32により、植物の生育に必須の水分と肥料である無機成分および有機成分を含む液肥4を貯留可能な液肥槽33と、培地5を充填可能な栽培槽34に間仕切られている。液肥槽33の底部近傍には、下箱体3の短手方向の側壁35の底部近傍に、液肥槽33と連通する下箱体貫通孔36と、該下箱体貫通孔36を開閉自在とする開閉栓37が設けられ、仕切り壁32の上面部には液肥供給部38が設けられるとともに、下箱体3の上面部に、隣接する上枠体2の嵌合段部25と嵌合可能とされた嵌合部39が設けられている。また、下箱体3においては、
図2に示したように、栽培槽34の対向する内側面にスリット32aが形成されている。このスリット32aには、
図3に示したように、栽培槽34の上方より仕切り板34bを挿通し、栽培槽34の空間を適宜区切って使用可能とされている。
【0029】
この植物栽培装置1では、開閉栓37により下箱体貫通孔36が封止された液肥槽33に液肥4が貯留され、
図4に示したように、栽培槽34に培地5が充填された下箱体3の嵌合部39と、上枠体2の嵌合段部25において、上枠体2と下箱体3とが上下方向に連結積載可能とされている。なお、
図4は、
図1のA-A断面における断面図に液肥及び培地を充填した状態を示した図である。
【0030】
嵌合段部25および嵌合部39については、それぞれ、上枠体2の下面部および下箱体3の上面部の端縁に設けても良いし、側壁21、22、31、35の厚み方向略中央部に設けてもよい。
【0031】
また、植物栽培装置1において、栽培槽34への液肥4の供給は、
図4に示したように、上枠体2の係止片24により封止された下箱体3の液肥槽33から、仕切り壁32の液肥供給部38を通じて、供給可能とされている。すなわち、下箱体3の液肥槽33は、仕切り壁32の上面部に設けられた液肥供給部38のみを送液用の開口部とする閉鎖空間となり、液肥供給部38を通じて栽培槽34中の培地5に液肥4を供給することができる。また、培地5に供給された液肥4は、培地5の毛管現象や浸透によって吸水されるので、液肥供給部38と隣接しておらず、かつ液肥4と直接接触していない培地5にまで水分を供給することができる。そのため、液肥4が栽培槽34中の培地5全体に拡散していく。
【0032】
図5(a)は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態における上枠体を示す概略平面図である。
図5(b)は、
図5(a)のB-B断面図である。
【0033】
上枠体2の寸法については、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、高さ20cm程度であることが例示される。
【0034】
また、上枠体2の栽培槽23の寸法についても、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、深さ18cm~20cm程度であることが例示される。
【0035】
上枠体2の係止片24の寸法については、下箱体3の液肥槽33を封止するとともに、仕切り壁32の液肥供給部38も覆うことができれば、特に制限されることはない。例えば、幅10cm~15cm程度であることが例示される。
【0036】
また、図示しないが、上枠体2において、長手方向の一対の枠板21に、その厚み方向に上枠体貫通孔が設けられており、この上枠体貫通孔に液肥供給用の配管が挿通されていることが好ましく考慮される。発芽間もない植物では、根の長さが短く、下箱体3の栽培槽34まで根が達さないケースもある。この場合、上枠体2の栽培槽23に充填された培地5が植物の生育に必要な水分を保持していれば、植物の発芽・生育が進行する。そのため、上枠体2の長手方向の一対の枠板21に対し、その厚み方向に上枠体貫通孔を設け、該貫通孔に挿入配置された液肥供給用の配管を通じて、上枠体2の栽培槽23に充填された培地5に直接液肥4を供給することが例示される。
上枠体2において、栽培槽23の対向する内側面に形成されたスリット26の全長は、上枠体2の強度低下を招かず、かつ仕切り板27を保持することができれば、特段限定されることはない。例えば、
図1から3に示したように、長手方向の側壁21の上面部から、栽培槽23の底部近傍、すなわち係止片24の上面部まで形成されていることが例示される。
【0037】
また、スリット26の幅(側壁21の長手方向における幅)および深さ(側壁21の厚み方向における深さ)は、スリット26の全長の場合と同様に、上枠体2の強度低下を招かず、かつ仕切り板27を保持することができれば、特段限定されることはない。例えば、幅5~7mm、深さ5~7mmの範囲とすることが例示される。
【0038】
このようなスリット26は、あらかじめ上枠体2の金型に突条を形成しておくことにより、上枠体2の成形と同時に形成することが好ましく考慮される。もちろん、スリット26が設けられていない上枠体2を成形した後に、切削加工や電熱線による熱溶融によってスリット26を形成してもよい。
【0039】
仕切り板27は、栽培槽23に充填された培地5の土留めとしての機能と、この仕切り板27によって間仕切られた栽培槽23内の複数の領域間での、肥料成分の浸透、拡散とを両立し得る構造を備えていることが好ましく考慮される。そのため、仕切り板27としては、例えば、複数の貫通孔が設けられたパンチングボード等が例示される。また、仕切り板27の材質は、上記のとおり、培地5の土留めとしての機能を有するとともに、仕切り板27によって間仕切られた栽培槽23複数の領域間での、水分や肥料成分の移行が可能である限り、特段限定されることはない。例えば、木質板や、アクリル板等のプラスチック樹脂製のボード、板状に成形した発泡樹脂、金属板等が例示される。
【0040】
また、仕切り板27の厚みや寸法については、スリット26の幅や全長および深さに応じて適宜設計変更することができ、例えば、7mm程度であることが例示される。
【0041】
上枠体2、下箱体3およびこれらの接合体である植物栽培装置1には、発泡樹脂成形体を採用している。発泡樹脂成形体は、高い断熱性、保温性を備えているため、液肥槽33内の液肥4の水温を一定に保温することができる。このため、植物栽培装置1は、春先や晩秋などの低温期や、寒冷地における屋外での植物栽培を安定的、かつ容易にすることができる。また、発泡樹脂成形体の高い断熱性、保温性により、植物栽培装置1は、真夏などの高温期における屋外での植物栽培を安定的、かつ容易にすることができる。
【0042】
発泡樹脂の種類については特に限定されることはないが、軽量で、成形性、安定性が良好なもの、例えば、発泡ポリスチレン樹脂等が例示される。
【0043】
また、上枠体2と下箱体3の成形方法についても従来用いられる各種方法を適用可能である。例えば、注型成形、押出し成形、射出成形等が例示される。
【0044】
上枠体2、下箱体3およびこれらの接合体である植物栽培装置1を構成する発泡樹脂成形体は、一般的に用いられる発泡樹脂製の箱と同様に白色であってもよいし、各種の染料や顔料等を用いて様々な色に着色されていてもよい。さらに、上枠体2、下箱体3およびこれらの接合体である植物栽培装置1の表面に、塗料や樹脂フィルム等を塗布することにより、発泡樹脂成形体の外観や触感を変更することも可能である。このように、着色や塗布などの表面加工を施すことにより、圃場やビニールハウス等の農地に限らず、家庭内や都市部における屋外環境においても、周囲の景観と馴染み、環境と調和がとれた植物栽培装置1を実現可能である。
【0045】
図6は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態における下箱体を示す概略平面図である。
図7(a)は、
図6のC-C断面図である。
図7(b)は、
図6のD-D断面図である。
図7(c)は、
図6のE-E断面図である。
【0046】
下箱体3の寸法については、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、高さ20cm程度であることが例示される。
【0047】
下箱体3の液肥槽33の寸法は、植物の生育に十分な液肥を貯留できる限り、特に制限されることはない。例えば、液肥槽33の深さとしては、10cmから18cmの範囲を例示することができる。
【0048】
また、下箱体3の栽培槽34の寸法は、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、深さ18cm~20cm程度であることが例示される。 さらにまた、栽培槽34の対向する内側面に形成されたスリット32aの全長は、下箱体3の強度低下を招かず、かつ仕切り板34bを保持することができれば、特段限定されることはない。例えば、
図1から3に示したように、長手方向の側壁31と、この側壁31と略平行に立設された仕切り壁32の上面部から、栽培槽34の内底、すなわち底板34aの上面部近傍まで形成されていることが例示される。
【0049】
あるいは、後述するように、仕切り板34bによって間仕切られた栽培槽34の複数の領域間において、肥料成分や水分の相互移行を可能とする観点から、栽培槽34の底部近傍においては栽培槽34が間仕切られないように、底板34a近傍の側壁31および仕切り壁32にはスリット32aを形成しない態様も好ましく例示される。このような態様においては、仕切り板34bの下端が、栽培槽34の内底、すなわち底板34aの上面部と接することがない。
【0050】
また、スリット32aの幅(側壁31および仕切り壁32の長手方向における幅)および深さ(側壁31および仕切り壁32の厚み方向における深さ)は、スリット32aの全長の場合と同様に、下箱体3の強度低下を招かず、かつ仕切り板34bを保持することができれば、特段限定されることはない。例えば、幅5~7mm、深さ5~7mmの範囲とすることが例示される。
【0051】
このようなスリット32aは、あらかじめ下箱体3の金型に突条を形成しておくことにより、下箱体3の成形と同時に形成することが好ましく考慮される。もちろん、スリット32aが設けられていない下箱体3を成形した後に、切削加工や電熱線による熱溶融によってスリット32aを形成してもよい。
【0052】
仕切り板34bは、栽培槽34に充填された培地5の土留めとしての機能と、この仕切り板34bによって間仕切られた栽培槽34の複数の領域間で、肥料成分の浸透、拡散とを両立し得る構造を備えていることが好ましく考慮される。そのため、仕切り板34bとしては、例えば、複数の貫通孔が設けられたパンチングボード等が例示される。また、仕切り板34bの材質は、上記のとおり、培地5の土留めとしての機能を有するとともに、仕切り板34bによって間仕切られた栽培槽34の複数の領域間で、水分や肥料成分の移行が可能である限り、特段限定されることはない。例えば、木質板や、アクリル板等のプラスチック樹脂製のボード、板状に成形した発泡樹脂、金属板等が例示される。
【0053】
また、仕切り板34bの厚みや寸法については、スリット32aの幅や全長および深さに応じて適宜設計変更することができ、例えば、7mm程度であることが例示される。
【0054】
また、下箱体3には、
図7(b)(c)に示したように、下箱体3の短手方向の側壁35の底部近傍に、液肥槽33を貫通する下箱体貫通孔36と、該下箱体貫通孔36を開閉自在とする開閉栓37が設けられており、通常、この貫通孔36は、開閉栓37により栓止されている。また、下箱体貫通孔36において、開閉栓37を取り外し、下箱体貫通孔36と液肥槽33とを連通するように、液肥供給管を兼ねた水位計測装置6が挿通されていることが好ましく考慮される。下箱体3の短手方向の側壁35の外側面の側から、下箱体貫通孔36に水位計測装置6を挿通して装着することにより、水位計測装置6の指示する水位に基づいて、液肥4の補充や、栽培する植物に応じた液肥4の水位の調節が可能となる。
【0055】
開閉栓37としては、十分な対候性、密閉性を備えている限り、特に限定されないが、例えば、シリコン栓やプラスチック製の栓等が例示される。
【0056】
液肥供給部38は、
図2から4、
図6および
図7(a)(c)に示したように、仕切り壁32の上面部に設けられた溝状の構造であり、その断面形状は、凹溝であっても良いし、V溝や図示したように半円形の丸溝であってもよい。液肥供給部38の寸法については、植物の生育に必要な量の液肥4を供給可能であれば、特に制限されることはない。
【0057】
植物栽培装置1では、植物に供給される水分は、水で最適な濃度に希釈調製された液肥4のみとすることが好ましい。すなわち、液肥4は、植物の生育に最適な無機物および有機物濃度に調製されているので、作業者の農作業への習熟度に依存することなく、農作業の初心者であっても安定した植物栽培が可能となる。
【0058】
液肥4としては、植物の水耕栽培に通常用いられているものであれば特に制限されることはない。例えば、ハイポネックス原液(株式会社ハイポネックスジャパン製)等が例示される。このような市販の液肥原液を適宜希釈して用いる他、作業者自ら配合、調製した液肥を用いることも考慮される。
また、液肥4を攪拌したり、エアレーションを行うことにより、植物の根圏への酸素供給を増加させることができ、植物の生育が促進可能となる。液肥4の攪拌や、エアレーションは従来公知の方法により行うことが可能であるが、例えば観賞魚飼育用のエアーポンプを用い、該ポンプに接続されたエアー供給用のチューブやホースの一方の端部を液肥槽33に貯留された液肥4中に投入する方法などが例示される。
【0059】
下箱体3においては、長手方向の側壁31の内側面に、液肥槽33の上面部と同じ高さとなるように、あらかじめ水位の基準線を形成すること等によって、液肥量の目安を明示することが可能である。
【0060】
植物栽培装置1では、上枠体2の栽培槽23および下箱体3の栽培槽34に培地5を充填することで、植物を栽培することができる。栽培槽23、34に充填された培地5に、植物の種子を直接播種したり、ビニールハウスや恒温室で出芽、生育させた植物の苗を移植することができる。植物種子の播種および苗の移植は、植物栽培装置1の設置直後、すなわち、下箱体3の液肥槽33に液肥4を貯留し、栽培槽34に培地5を充填した直後から行うことができるが、培地5に十分な液肥4を保持させる観点から、例えば、植物栽培装置1の設置後、10日目以降に行うことが好ましく考慮される。
【0061】
種子の播種方法は、栽培する植物に応じて適宜選択することができる。例えば、培地表面に直播する方法、培地表面から1mm~3cm程度の深さにまき穴を設け、種子を播種し、該種子上に培地5を被せて埋設する方法等が例示される。
【0062】
また移植時の苗の高さについても、栽培する植物に応じて適宜選択することができる。
【0063】
その後は、液肥量の調節や温度、光量等の植物の生育に必要な各種の環境要件を整えることで、播種または移植した植物が発芽し、成長する。
【0064】
このように、本発明の植物栽培装置1を用いることで、非常に簡便な方法によって、農作業の初心者であっても安定した植物栽培を行うことが可能となる。
【0065】
植物栽培装置1で栽培可能な植物としては、例えば、葉菜類、果菜類に加え、根菜類等が例示される。
【0066】
従来の植物栽培装置、特に、水耕栽培装置では、ほとんどの場合、培地として土壌系の農業資材が用いられていなかった。このような従来の水耕栽培装置では、可食部である根、塊根や地下茎の発育に培地からの圧力等の物理的刺激が必須であると考えられる根菜類の栽培は、困難であった。
【0067】
一方、本発明の植物栽培装置1では、上枠体2および下箱体3の栽培槽23、33に充填された培地中で発芽または移植された植物は、適度な水分を保持した培地5中に根を伸長する。培地5中に伸長した根には、培地5からの圧力等の物理的刺激が加わる。このような圧力等の物理的刺激が植物の根に加わることで、植物の根は土耕(土壌)栽培、すなわち自然環境下の土壌中に近い状態で伸長する。そのため、植物栽培装置1では、従来の植物栽培装置、特に水耕栽培装置においても栽培可能であった葉菜類、果菜類に加え、栽培の難しかった根菜類の栽培も可能となる。なお、根菜類を栽培する際には、培地5の深さを十分に確保する必要がある。
【0068】
培地5の充填時の深さとしては、例えば上枠体2および下箱体3の1ユニットあたり5~20cmの範囲内が例示される。培地5の充填時の深さが、上記範囲内であれば、種子の発芽率が高く、根腐れが抑制され、植物の生育が旺盛となる。
【0069】
培地5としては、例えば、有機配合土、粒状に加工された人工培地や砂、等が例示される。例えば、培地5としてJAS(日本農林規格)の有機栽培の条件を満たす有機配合土を用いた場合、国が認める有機野菜に準じる、安全性が高く付加価値の高い野菜等の収穫物を得ることができる。また、EM菌等の有用微生物群を土壌改良剤として添加することも好ましく考慮される。
【0070】
従来の植物栽培装置では、植物の根が伸長するにつれて、根圏に充分な酸素が行き渡らないことや、根圏に過剰な水分が滞留することから根腐れを起こしてしまう問題があった。
【0071】
一方、本発明の植物栽培装置1では、培地5として、粒状に加工された人工培地を用いた場合、空気が入り込んだ空隙が土中に多数形成されるため、根圏に十分な酸素を供給することができ、また根腐れも抑制され、植物の生育が旺盛となり好ましい。
【0072】
また、培地5としては、例えば、カビや害虫の繁殖を抑制可能な抗菌性を備えた素材、保水性と高い蒸散能力を両立し得る多孔質素材、培地5と接触した液肥4中に植物の生育に必要な微量元素を溶出することが可能なミネラル含有素材など各種の機能性備えた粒状素材を用いることが好ましい。このような培地5としては、特に、多孔質セラミックスを粒状に加工したものを好適に利用することができる。多孔質セラミックスは、微細な孔部分に液肥4の成分を保持することができる。しかも、徐放性を有しているため、一度に高濃度の肥料成分が植物の根に供給されることがなく、植物の生育に適した環境を長期にわたって維持することができる。
【0073】
多孔質セラミックスとしては、例えば、軽石、火山灰、ゼオライト、炭酸カルシウムなどの天然に存在するものはもちろんのこと、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素あるいはこれらの1種以上の混合焼成体などの合成品、および上記の天然あるいは合成品のセラミックスに、木炭やサンゴカルシウムなどの成分を結合剤とともに添加して焼成することによって得られたものなどが例示される。
【0074】
このような粒状の多孔質セラミックスは、もちろん単独で使用することが可能であり、培地5として好適に使用することができるその他のものと2種類以上併用したものを使用することも可能である。
【0075】
また、培地5は、使用する粒状の土、砂、腐葉土、多孔質セラミックス等の粒径や配合によって、植物の植生に応じた根域の湿度を調整することができ、植物にとって最適な環境を作ることができる。例えば、乾燥地植物である朝鮮人参は、根周りの湿度が50%~60%程度であることが最適とされており、培地5の粒子間の空隙を多くして根周りの湿度を下げることが好ましい。一方、差し木等の苗床は、根周りの環境が湿潤な環境であるとよいとされており、培地5の粒子間の空隙を少なくし、保水を高める配合とすることが好ましい。このように根域環境をコントロールすることで乾燥地植物等の特殊な植物の栽培も可能である。
【0076】
さらにまた、培地5の粒径や配合を制御することにより、液肥槽33から液肥供給部38を介して栽培槽34に充填された培地5へ供給される液肥4の蒸散による気化熱で培地5の潜熱を奪う作用が働く。培地5の粒径を大きくすると、培地5内部の空隙が多く、より蒸散が活発となり根域の温度が低下する。一方、培地5の粒径を小さくしたり、土、砂、腐葉土等を多く配合すると蒸散は少なくなり、温度降下も減少する。このような原理を利用して根域の温度調整も可能となる。
【0077】
培地5の粒径としては、例えば、1mm以上5mm以下、好ましくは1mm以上3mm以下の範囲が例示される。
【0078】
図8(a)は、
図3に示した本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、上枠体2および下箱体3の栽培槽23、34に設けられたスリット26、32aに仕切り板27、34bを挿通するとともに、液肥4及び培地5を充填した状態を模式的に示した平面図である。
図8(b)は、(a)のB’-B’断面図である。 この態様においては、下箱体3の栽培槽34の対向する内側面に形成されたスリット32aに、栽培槽34の上方より仕切り板34bを挿通するとともに、上枠体2の栽培槽23の対向する内側面に形成されたスリット26に、栽培槽23の上方より仕切り板27が挿通され、栽培槽23、34が複数の領域に間仕切られた状態で使用されている。なお、仕切り板34bの下端は、
図8(b)に示したとおり、栽培槽34の底板34aとは当接しておらず、仕切り板34bによって間仕切られた栽培槽34の複数の領域間において、肥料成分や水分の相互移行を可能とするために、栽培槽34の底部近傍においては、栽培槽34が間仕切られないように設計されている。
【0079】
図8(a)(b)においては、栽培槽23、34は仕切り板26、34bにより4つの領域に区切られ、図中左端の領域を除く3つの領域には培地5が充填されており、図中左端の領域には堆肥5aが充填されている。栽培槽23、34が間仕切られた複数の領域は、2つ以上の複数の領域であれば特に限定されることはないが、培地5が充填された領域と堆肥5aが充填された領域との比率が、3:1程度であることが特に好ましい。その場合、培地5と堆肥5aとの境界にのみ、仕切り板26、34bが挿通されることとなる。
【0080】
堆肥5aは、市販品や、あらかじめ植物栽培装置1の外部で製造したものを、栽培槽23、34に充填してもよいし、仕切り板26、34bにより間仕切られた栽培槽23、34の一領域に野菜くずや牛糞、鶏糞などを投入し、植物栽培装置1の内部で堆肥を発酵、熟成させてもよい。
【0081】
また、堆肥5aの充填量については、
図8(b)に示したように、下箱体3の栽培槽34の深さの1/2から1/3程度にとどめることが好ましい。上記の充填量であれば、植物栽培装置1の内部で堆肥を発酵、熟成させる場合に、十分に発酵、熟成させることができ、しかも植物栽培装置1の設置場所の周囲に堆肥特有の臭気を拡散してしまうおそれもほとんどない。また、培地5が充填された領域に十分な量の肥料成分を徐々に放出することができる。
【0082】
図9は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、下箱体3の短手方向の側壁35であって、栽培槽34の外壁に相当する部分に、側壁貫通孔35aを穿設し、該貫通孔35aに温水を循環可能なヒートパイプHを挿通する態様を示した概略平面図である。
【0083】
図9に示したように、下箱体3にヒートパイプHを挿通し、温水を供給するための温水ポンプHpを用いて、該ヒートパイプHの内空に温水を送液、循環させることにより、栽培槽34に充填した培地5を加温し、根圏における温度を上昇させることができる。根圏の温度を上昇させることで、冬季間の植物栽培が可能となるほか、寒さに弱い温暖な地方が原産の植物の栽培も容易となる。
【0084】
また、
図8(a)(b)に示した栽培槽34の一部の領域に堆肥5aを充填する態様において、
図9と同様に、ヒートパイプHを設けると、堆肥5aの温度を上昇させることができ、堆肥中の有機物の分解や、堆肥の熟成を促すことができる。
側壁貫通孔35aの穿設位置は、液肥槽33を貫通しない限り、特段限定されることはなく、側壁35の高さ方向および幅方向の任意の位置であってよい。このような側壁穿設孔35aは、あらかじめ下箱体3の金型に略円柱状の凸部を形成しておくことにより、下箱体3の成形と同時に形成することが好ましく考慮される。もちろん、側壁貫通孔35aが設けられていない下箱体3を成形した後に、切削加工や電熱線による熱溶融によって側壁貫通孔35aを形成してもよい。あらかじめ側壁貫通孔35aが形成された下箱体3においては、ヒートパイプHを設けない場合、下箱体貫通孔36とこれに対応する開閉栓37と同様に、シリコン栓などで側壁貫通孔35aを封止しておくことが考慮される。
【0085】
なお、
図9中には、下箱体3にヒートパイプHを設けた態様が図示されるのみであるが、上枠体2の短手方向の枠板22に、枠板貫通孔を穿設し、該貫通孔に温水を循環可能なヒートパイプを挿通する態様も当然考慮される。
【0086】
図10は、本発明の植物栽培装置の第一の実施形態において、液肥供給部38として、吸水体38aを備える場合のA-A断面図に液肥及び培地を充填した状態を示した図である。溝状の液肥供給部38のみでも、培地5への液肥4の供給は行うことができるものの、培地5の充填量が増えた場合には、吸水体38aを併用することが好ましい。
【0087】
吸水体38aとしては、例えば、吸水シートまたは吸水糸状体等が例示され、シート状または繊維状の基材に親水性樹脂を被覆したもの等が例示される。吸水体38aに用いる親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂等が例示される。基材としては従来の農業現場で使用されているプラスチック類を好ましく用いることができる。例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が例示される。
【0088】
吸水体38aを使用する態様では、従来の植物栽培装置とは異なり、培地5や吸水体38aによる毛管現象や培地(土壌)粒子間の浸透によって液肥4を培地5に供給しているため、ポンプ等の機器を必要とすることなく、根圏における水分、空気層が植物の生育にとって好適な自然に近い状態に保たれる。また、植物への水分供給が過多とはなりにくい。そのため、本発明の植物栽培装置1では、従来の植物栽培装置においても栽培可能であった葉物菜類、果菜類に加え、乾燥地植物等のように培地5中の水分が少ない方が生育にとって好ましい植物の栽培が可能である。乾燥地植物としては、例えば、パセリ、朝鮮人参等が例示される。
【0089】
また、吸水体38aは、
図10に示したように、液肥槽33から栽培槽34へと直線状に配置してもよいし、
図11に示したように、栽培槽34において植物Pの根部や地下茎の周囲を円状に包囲するように配置してもよい。液肥供給の効率を考慮すると、円状に吸水体38aを配置することが好ましい。これにより、吸水体38aを液肥槽33から栽培槽34へと直線状に配置した場合と比較して、培地5への水分拡散が効率良く行われる。
【0090】
吸水体38aの厚みや長さについては、植物の生育に必要な液肥4を供給可能であれば、特に制限されることはない。例えば、吸水体38aの長さとしては、20cmから70cmの範囲が例示される。
【0091】
図12は、本発明の植物栽培装置の第二の実施形態を示す一部切欠斜視図である。
図13は、
図12の一部切欠分解斜視図である。
図14は、
図12のF-F断面における断面図に液肥及び培地を充填するとともに、液肥供給部として吸水体を併用して植物を栽培している状態を示した図である。
図15は、本発明の植物栽培装置の第二の実施形態における中間枠体を示す平面図である。
図16(a)は、
図15のG-G断面図である。
図16(b)は、
図15のH-H断面図である。
図16(c)は、
図15のI-I断面図である。
【0092】
この実施形態において、
図1から
図11に示した実施形態と共通する部位には、同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0093】
本発明の第二の実施形態として、
図12から
図16に示すように、上枠体2と下箱体3との間に、中間枠体8が設けられた植物栽培装置1aが例示される。
中間枠体8は、下箱体3の栽培槽34の底板34aを欠いた形状の発泡樹脂成形体である。中間枠体8の上面部には上枠体2の嵌合段部25と嵌合可能とされた嵌合部81aが設けられるとともに、下面部には下箱体3の嵌合部39と嵌合可能とされた嵌合段部81bが設けられている。これら、嵌合部81aおよび嵌合段部81bについては、それぞれ、中間枠体8の上面部および下面部の端縁に設けても良いし、側壁の厚み方向略中央部に設けてもよい。
【0094】
中間枠体8では、下箱体3と同様に、その内部空間が仕切り壁82により液肥槽83と栽培槽84に間仕切られている。また、中間枠体8においては、
図12および
図13に示したように、栽培槽84の対向する内側面にスリット82aが形成されている。このスリット82aには、第一の実施形態と同様に、栽培槽84の上方より仕切り板を挿通し、栽培槽84の空間を適宜間仕切って使用可能とされている。さらにまた、短手方向の側壁85の底部近傍には、液肥槽83と連通する中間枠体貫通孔86が設けられており、通常、貫通孔86は、栓87により栓止されている。
【0095】
また、仕切り壁82の上面部には、溝状の液肥供給部88が設けられている。
【0096】
このような構成を具備する中間枠体8は、嵌合段部81bにおいて、開閉栓37により貫通孔36が封止された液肥槽33に液肥4が貯留され、栽培槽34に培地5が充填された下箱体3と上下方向に連結積載可能とされている。
【0097】
また、開閉栓87により貫通孔86が栓止された液肥槽83に液肥4が貯留され、栽培槽84に培地5が充填された中間枠体8の嵌合部81aと、上枠体2の嵌合段部25において、上枠体2と中間枠体8とが上下方向に連結積載可能とされている。
【0098】
そして、係止片89により封止された液肥槽83から、仕切り壁82の液肥供給部88を通じて、栽培槽84へ液肥4が供給可能とされている。液肥槽83に貯留された液肥4中には、下箱体3の液肥槽33と同様に、観賞魚飼育用のエアーポンプに接続されたエアー供給用のチューブやホースの一方の端部を投入し、液肥4を攪拌したり、エアレーションを行うことにより、植物の根圏への酸素供給を増加させることができ、植物の生育が促進可能となる。
【0099】
液肥供給部88については、第一の実施形態と同様に、吸水体88aを備えた態様も好ましく考慮される。吸水体88aは、第一の実施形態における吸水体38aと同一材料であってもよいし、別異の材料を用いてもよい。
【0100】
中間枠体8の寸法については、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、高さ20cm程度であることが例示される。また、中間枠体8の栽培槽84の寸法については、植物を栽培可能であれば、特に制限されることはないが、例えば、深さ18cm~20cm程度であることが例示される。
【0101】
本実施形態において、中間枠体8は、少なくとも1つ具備していればよい。例えば、上枠体2、中間枠体8および下箱体3の高さが、いずれも20cmである場合、上枠体2、中間枠体8、下箱体3を積載、連結することで形成された植物栽培装置1aは、その全高が60cmとなり、作業者が屈むことなく、立位のまま作業を行うことが可能である。そのため、作業者の膝や腰への負担を軽減することができるとともに、根菜類のように根部の長さが長い植物の栽培も容易に行うことができる。作業者の身長や、栽培する植物の根部の深さに応じて、適宜中間枠体8を増設することが可能である。例えば、植物栽培装置1aが、中間枠体8を2つ具備している場合、上枠体2、中間枠体8および下箱体3を積載、連結することで形成された植物栽培装置1aは、その全高が80cmとなり、中間枠体8が1つの場合と比較して、作業者がさらに楽な姿勢で作業できるようになる。
【0102】
本発明の植物栽培装置1aでは、
図17(a)(b)および
図18に示すように、複数の下箱体3を短手方向の側壁35が互いに対向するよう配置するとともに、複数の中間枠体8を短手方向の側壁85が互いに対向するように配置し、下箱体貫通孔36と液肥槽33、中間枠体貫通孔86と液肥槽83とを連通するように、連結パイプ7を挿通することで、これら複数の下箱体3および中間枠体8を水平方向に連結することができる。この時、
図17(b)の断面図に示したように隣接する複数の植物栽培装置1の下箱体3および中間枠体8は、連結パイプ7を介して互いに連通しており、液肥4が、隣接する植物栽培装置1aの液肥槽33、83間を相互に移動可能となる。複数の下箱体3および複数の中間枠体8、すなわち複数の植物栽培装置1aを連結させることにより、大規模な植物栽培施設1bを構築、運用することが可能である。
図17(a)(b)および
図18では、中間枠体8を備える植物栽培装置1aを用いた植物栽培施設1bを図示しているが、もちろん、中間枠体8を備えていない植物栽培装置1を用いた植物栽培施設1cを構築、運用することも可能である。
【0103】
連結パイプ7としては、例えば通常の配管に用いられる塩ビパイプ等が例示される。また連結パイプの長さについては、液肥4の送液が可能であれば、特に制限されることなく、例えば、隣接する下箱体3の短手方向の側壁35の厚さ2枚分をやや上回る程度の長さであることが例示される。また、下箱体の長手方向全長と等しい長さや、長手方向全長を上回る長さであることも例示される。
【0104】
このように、複数の植物栽培装置1、1aを連結させることにより、広い面積の圃場やビニールハウス内、また植物工場と呼ばれる屋内型の植物生産設備において、産業用の大型植物栽培装置あるいは植物栽培施設1b、1cとして大規模な植物栽培を実現できる。さらにまた、このような植物栽培装置1、1aを利用した植物生産施設1b、1cは、乾燥帯や砂漠化が進行している地域など、水利用に制限がある地域において、大規模な灌漑施設等の設置を必要とせず、必要最低限の水で植物栽培を実現できる。
【0105】
また、植物栽培施設1b、1cは、
図14に示したように、地面Gより高所に作業者が溶液を補給するための液肥調合槽9と、植物栽培装置1aの水位を常に一定に保つための水位調整槽10を備え、液肥調合槽9と水位調整槽10とは、液肥送液管によって連通されていることが好ましく考慮される。
【0106】
液肥調合槽9は、支持脚9aによって支持され、地面Gよりも高所に設置されている。液肥調合槽9の下部、より好ましくは底部には、液肥調合槽9と水位調整槽10とを連通する液肥送液管11が設けられており、液肥調合槽9から液肥送液管11を介して水位調整槽10へと、重力にしたがって液肥4が送液される。このため、植物栽培施設1b、1cにおいては、ポンプ等の動力源を必要としない。また、液肥送液管11の途中にはストップバルブ12が設けられており、必要に応じて液肥送液管11を介した液肥4の送液を遮断することが可能である。また、液肥調合槽9への水と希釈前の液肥を供給する際には、作業者が、作業台13上にのぼり、液肥調合槽9の蓋9bを取り外して水と希釈前の液肥を投入することが例示される。
【0107】
水位調整槽10は、その一部分が地中に埋設させることが例示される。このような態様においては、水位調整槽10と植物栽培装置1aの液肥槽33、83における液肥4の液面が、常に等しくなるように調整することが可能である。すなわち、水位調整槽10は、上流側に液肥調合槽9と連通する液肥送液管11が挿通されており、液肥送液管11の開口部には、ボールタップ14が設けられている。また、水位調整槽10は、その下流側であって、液肥送液管11が挿通されている位置よりも低い位置に、植物栽培装置1aと連通する連結パイプ7が挿通されている。ボールタップ14は、水位調整槽10および植物栽培装置1aの液肥4の液面が所定の高さを下回ると、液肥送液管11の開口部を開放し、液肥調合槽10からの液肥4の流入を可能とする。一方、水位調整槽9と植物栽培装置1aの液肥4の液面が、所定の高さに達すると、水位調整槽9内の液肥4によってボールタップ14が持ち上げられ、液肥送液管11の開口部を塞ぐ。このため、ポンプ等の動力を一切用いることなく、水位調整槽9と植物栽培装置1aの液肥4の液面が常に等しくなるように調整することが可能である。
【0108】
また、本発明の植物栽培装置1、1aは、装置側面に支柱固定部を設け、これに支柱組を立設支持し、ビニールカバー等の樹脂フィルムで覆うことで、温度の変化および風や雨を防御・緩和可能なビニールハウス仕様を構成することが可能である。さらには、支柱組にLED照明器具などの光源を懸架してもよい。これにより、光量不足の屋内での植物栽培も可能となる。
【0109】
このような特徴から、本発明の植物栽培装置1、1aは家庭において従来、ポット型、プランター型の植物栽培装置では栽培が難しかった根菜類などを簡便に栽培できるのみならず、産業としての農業現場においても根菜類などを簡便に栽培可能とする植物栽培装置である。また、本発明の植物栽培装置1、1aによれば、土壌表面の高さが、作業者の腰の高さと近いため、屈む必要がほとんどなく、作業者の足腰への負担が大幅に軽減される。
【0110】
なお、本発明の植物栽培装置は、以上のような実施形態によって限定されるものではない。上枠体2、下箱体3、および中間枠体8の各構成の大きさや形状などの細部について様々な態様が可能である。さらに、栽培のための液肥4の化学組成や温度、光量などの管理等については、従来と同様、同等のものとして考慮されてよい。本発明の装置の適用範囲は広い。
【0111】
次に、本発明の植物栽培装置を用いた植物栽培方法を説明する。
【0112】
本発明の植物栽培方法は、前記のとおりの植物栽培装置を用いることを特徴としており、少なくとも以下の工程を含んでいる。<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体の液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記上枠体の枠板で囲まれた栽培槽に、培地を充填し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【0113】
工程<1>として、地面または床面に下箱体3を設置し、液肥槽33に液肥4を供給し、栽培槽34に培地5を充填する。
【0114】
下箱体3の設置場所は、屋外であっても屋内であってもよい。また、屋外に設けたビニールハウス等の施設の内部に設置してもよい。
【0115】
液肥槽33に注水する液肥4としては、市販の水耕栽培用の液肥を利用することが可能である。液肥槽33には、下箱体3と上枠体2を積載、連結した際に、下箱体3の仕切り壁32上面部に設けられた液肥供給部38を介して液肥4が栽培槽34に到達するよう、十分な量の液肥4を貯留しておくことが望ましい。例えば、液肥量は、下箱体3の仕切り壁32の上面部と同じ高さまで貯留することが例示される。また、下箱体3の長手方向の側壁31の内側面に、液肥槽33の上面部と同じ高さとなるように、あらかじめ水位の基準線を形成すること等によって、液肥量の目安を明示することが可能である。このような基準線の設けられた下箱体3を用いることによって、農作業の初心者であっても液肥量を適切に管理することが可能となる。
【0116】
また、下箱体貫通孔36において、開閉栓37を取り外し、下箱体貫通孔36と液肥槽33とを連通するように、液肥供給管を兼ねた水位計測装置6が挿通されていることが好ましく考慮される。下箱体貫通孔36に下箱体3の短手方向の側壁35側から水位計測装置6を挿通して装着することにより、水位計測装置6の指示する水位に基づいて、液肥4の補充や栽培する植物に応じた液肥4の水位の調節が可能となる。
【0117】
工程<2>として、下箱体3の液肥槽33を封止するように、上枠体2の係止片24を載置し、下箱体3の上面部に設けられた嵌合部39と、上枠体2の下面部に設けられた嵌合段部25とを嵌合させて上下方向に連結する。
【0118】
これにより、栽培槽34への液肥4の供給は、上枠体2の係止片24により封止された下箱体3の液肥槽33から、仕切り壁32の液肥供給部38を通じて、供給可能とされている。すなわち、下箱体3の液肥槽33は、仕切り壁32の上面部に設けられた液肥供給部38のみを送液用の開口部とする閉鎖空間となり、液肥供給部38を通じて栽培槽34中の培地5に液肥4を供給することができる。また、培地5に供給された液肥4は、培地5の毛管現象や浸透によって吸水されるので、液肥供給部38と隣接しておらず液肥4と直接接触していない培地5にまで水分を供給することができる。そのため、液肥4が栽培槽34中の培地5全体に拡散していく。
【0119】
また、溝状の液肥供給部38のみでも、培地5への液肥4の供給は行うことができるものの、培地5の充填量が増えた場合には、吸水体38aを併用することが好ましい。
【0120】
工程<3>として、上枠体2の枠板21、22で囲まれた栽培槽23に、培地5を充填し、植物Pの種子を播種または植物Pの苗を移植する。
【0121】
栽培槽23、34に充填された培地5に、植物の種子を直接播種したり、ビニールハウスや恒温室で出芽、生育させた植物の苗を移植することができる。植物種子の播種および苗の移植は、植物栽培装置1の設置直後から行うことができるが、培地5に十分な液肥4を保持させる観点から、例えば、植物栽培装置1の設置後、すなわち、下箱体3の液肥槽33に液肥4を貯留し、栽培槽34に培地5を充填した後、10日目以降に行うことが好ましく考慮される。
【0122】
種子の播種方法は、栽培する植物に応じて適宜選択することができる。例えば、培地表面に直播する方法、培地表面から1mm~3cm程度の深さにまき穴を設け、種子を播種し、該種子上に培地5を被せて埋設する方法等が例示される。
【0123】
また移植時の苗の高さについても、栽培する植物に応じて適宜選択することができる。
【0124】
その後は、液肥量の調節や温度、光量等の植物の生育に必要な各種の環境要件を整えることで、播種または移植した植物が発芽し、成長する。
【0125】
このように、本発明の植物栽培方法によれば、農作業の初心者であっても非常に簡便に安定した植物栽培を行うことが可能となる。また、本発明の植物栽培方法によれば、土壌表面の高さが、作業者の腰の高さと近いため、屈む必要がほとんどなく、作業者の足腰への負担が大幅に軽減される。
【0126】
また、本発明の植物栽培方法の別の方法は、上記の植物栽培方法と同様、植物栽培装置を用いることを特徴としており、少なくとも以下の工程を含んでいる。
<1>地面または床面に前記下箱体を設置し、前記液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<2>前記下箱体の液肥槽を封止するように、前記中間体の底板を載置し、前記下箱体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記中間枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<3>前記中間枠体の液肥槽に液肥を供給し、前記栽培槽に培地を充填する工程;
<4>前記中間枠体の液肥槽を封止するように、前記上枠体の係止片を載置し、前記中間枠体の上面部に設けられた前記嵌合部と、前記上枠体の下面部に設けられた前記嵌合段部とを嵌合させて上下方向に連結する工程;
<5>前記上枠体の枠板で囲まれた栽培槽に、培地を充填し、前記下箱体および中間枠体の前記仕切り壁上面に設けられた液肥供給部を介して、液肥槽に貯留された液肥を上枠体、中間枠体および下箱体の栽培槽に充填された培地に供給し、前記植物の種子を播種または前記植物の苗を移植する工程。
【0127】
工程<1>は、先に詳述した植物栽培方法の工程<1>と共通するため、説明を省略する。
【0128】
工程<2>として、下箱体3の液肥槽33を封止するように、中間枠体8の液肥槽83の底板83aを載置し、下箱体3の上面部に設けられた嵌合部39と、中間枠体8の下面部に設けられた嵌合段部81bとを嵌合させて、下箱体3と中間枠体8とを上下方向に連結する。液肥4の供給方法については、先に詳述した植物栽培方法の工程<2>と共通するため、説明を省略する。
【0129】
工程<3>として、中間枠体8の液肥槽83に液肥4を供給し、栽培槽84に培地5を充填する。
【0130】
工程<4>として、中間枠体8の液肥槽83を封止するように、上枠体2の係止片24を載置し、中間枠体8の上面部に設けられた嵌合部81aと、上枠体2の下面部に設けられた嵌合段部25とを嵌合させて、中間枠体8と上枠体2とを上下方向に連結する。工程<4>の詳細については、先に詳述した植物栽培方法の工程<2>と共通するため、説明を省略する。
【0131】
工程<5>として、上枠体2の枠板21、22で囲まれた内部空間としての栽培槽23に、培地5を充填し、下箱体3および中間枠体8の仕切り壁32、82の上面に設けられた液肥供給部38、88を通じて、液肥槽33、83に貯留された液肥4を上枠体2、中間枠体8および下箱体3の栽培槽23、84、34に充填された培地5に供給する。そして、培地5に、毛管現象によって液肥4が行き渡ったところで、植物Pの種子を播種または植物Pの苗を移植する。
【0132】
植物の種子を播種または前記植物の苗を移植した後は、液肥量の調節や温度、光量等の植物の生育に必要な各種の環境要件を整えることで、播種した植物が発芽し、成長する。
【0133】
このような植物栽培方法を適用可能な植物としては、例えば、葉菜類、果菜類に加え、根菜類等が例示される。
【0134】
以上のように、非常に簡便な方法によって、農作業の初心者であっても安定した植物栽培を行うことが可能となる。
【0135】
さらに、本発明の植物栽培方法は、液肥4を、液肥槽33に挿通した水位計測装置6の指示する水位に基づいて水位調整することができる。
【0136】
水位計測装置6の指示する水位に基づいて水位調整することにより、適切な液肥4の追加時期を容易に判断することが可能であり、また、液肥4の水位を低めに設定することで、培地5の体積含水率を低下させて、乾燥地植物等のように培地5中の水分が少ない方が生育にとって適した植物の栽培が容易となる。
【0137】
液肥4の追加方法としては、例えば、第一の実施形態においては、下箱体貫通孔36と液肥槽33を連通するように挿通された連結パイプ7を介して、液肥4を追加する方法が例示される。また、第二の実施形態においては、例えば、上記下箱体3に加えて中間枠体貫通孔と液肥槽を連通するように挿通された連結パイプ7を介して、液肥4を追加することができる。
【0138】
また、溝状の液肥供給部38、88のみでも、培地5への液肥4の供給は行うことができるものの、培地5の充填量が増えた場合には、吸水体38a、88aを併用することが好ましい。
【0139】
本発明の植物栽培方法では、下箱体3の少なくとも一部を地中に埋設して使用する方法が例示される。例えば、植物栽培装置1、1aを設置する場所の地面を掘削して形成した穴の底部を平坦にして防水シートを敷設し、該防水シート上に下箱体3を載置することが考慮される。その際、下箱体3に直接土が接触しないように、下箱体3の底部および側面を前記防水シートで包むようにして地中に埋設して使用することが好ましい。
【0140】
植物栽培装置1、1aは、その材質が保温性の高い合成発泡樹脂製であるので、液肥槽33内の液肥4の水温を一定に保温する効果が高い。そのため、春先や晩秋などの低温期における屋外での植物栽培を安定的、かつ容易にすることができる。また、砂漠地帯のように地面の温度が極めて高温になる地域においても、液肥の温度上昇を抑制し、植物に対する高温ストレスを低減することが可能となる。
【0141】
以下に実施例を示すが、本発明の植物栽培装置および植物栽培方法は、上記のとおりの実施形態によって、何ら限定されるものではない。栽培のための液肥の化学組成や温度、光量などの管理等については、従来と同様、同等のものとして考慮されてよい。本発明の植物栽培装置および植物栽培方法の適用範囲は広い。
【実施例】
【0142】
(培地の体積含水率測定試験)
上枠体、中間枠体1つ、下箱体からなる3段構造の植物栽培装置をビニールハウス内に設置し、ハイポネックス原液を500倍に希釈し、中間枠体および下箱体の液肥槽に供給した。 上枠体、中間枠体および下箱体の栽培槽に、培地として平均粒径4mmの市販の培地を充填し、中間枠体と下枠体においては、吸水体として長さ65cmの市販の水やりテープ(基材:PVA樹脂製スポンジ、芯材:ポリエステル樹脂)を設置し、該水やりテープの一方の端部が液肥槽の底部に達し、他方の端部が仕切り壁の液肥供給部を介して、仕切り壁と対向する栽培槽側の長手方向の側壁との中間部分に直径15cmの円を描くように設置した。なお、中間枠体および下枠体のそれぞれの栽培槽に充填された培地の表面とほぼ同一高さとなるように設置した。
【0143】
また、上枠体、中間枠体および下箱体の栽培槽には、含水率の測定を目的として、水分センサー(WD-3-WET-5Y、ARP社製)およびデータロガー(WDR-1、ARP社製)を設置した。上枠体におけるセンサー設置位置は、中間枠体の水やりテープの表面より10cm上とした。中間枠体におけるセンサー設置位置は、上枠体のセンサー設置位置の23cm下であり、下箱体の水やりテープと同一深さとした。下箱体におけるセンサー設置位置は、中間枠体のセンサー設置位置の25cm下とした。この培地の体積含水率測定試験においては、植物栽培装置の設置後、すなわち、下箱体の液肥槽に液肥を貯留し、栽培槽に培地を充填した日を液肥供給開始日(液肥供給開始後0日)とし、液肥供給開始後9日目から72日目までの培地の体積含水率(%)を測定した結果をグラフにまとめた。結果を
図19に示す。
【0144】
図19に示したように、上枠体および中間枠体においては、液肥供給開始から10日を過ぎた時点で、培地の体積含水率が10%を超え、植物の生育に適した水分が供給されることが確認できた。培地の体積含水率15%~22%弱の範囲で頭打ちとなり、水分過剰となることはなかった。
【0145】
一方、下箱体においては、液肥供給開始から45日目までは培地の体積含水率が5%程度であった、54日目以降、培地の体積含水率が10%を超えることが確認された。下箱体では、中間枠体部分からの水分が時間の経過とともに徐々に下方に下がっていったことが考えられる。
【0146】
(根菜類の栽培試験)
上枠体、中間枠体1つ、下箱体からなる3段構造の植物栽培装置をビニールハウス内に設置し、ハイポネックス原液を500倍に希釈し、中間枠体および下箱体の液肥槽に供給した。また、希釈した液肥は、上枠体に挿通した液肥供給パイプを介し、後述の上枠体の栽培槽に充填された培地にも供給した。
【0147】
上枠体、中間枠体および下箱体の栽培槽に、培地として平均粒径4mmの市販の培地を充填し、深さ2cm程度のまき穴をつけ、根菜類として市販の大根(品種名:サラダ大根、(株)トーホク)の種子を、まき穴1つあたり4~5粒直播した。まき穴同士の間隔は、25cm程度とした。播種後、4~5日程度でサラダ大根の種子が発芽し、大根が成長するにつれて、適宜間引きをおこなった。約3ヶ月間栽培した後、根の直径が7cmを超えていることを確認し、大根を収穫した。収穫した大根を
図20に示す。なお、栽培期間中、液肥槽および液肥供給パイプを介して供給される液肥はその都度補充した。また、栽培期間中のビニールハウス内の最低気温は、5.6℃~17.8℃、最高気温は36.0℃~41.3℃であった。
【0148】
収穫したサラダ大根は、いわゆる「首」の部分から先端の「しっぽ」の部分までの合計長さが70cmであり、該「しっぽ」を除いた可食部の長さは51cmであった。また、「しっぽ」を除いた可食部のうち、上部の胚軸部分の長さは26cmであり、真の根の部分の長さは25cmであった。
【0149】
このように、本発明の植物栽培装置を用いることで、屋外の圃場で栽培した場合に匹敵する大きさの根菜類を簡単にかつ安定して栽培可能であることを確認した。
【符号の説明】
【0150】
1、1a 植物栽培装置
1b、1c 植物栽培施設
2 上枠体
21、22 枠板
23 栽培槽
24 係止片
25 嵌合段部
26 スリット
27 仕切り板
3 下箱体
31 長手方向の側壁
32 仕切り壁
32a スリット
33 液肥槽
34 栽培槽
34a 底板
34b 仕切り板
35 短手方向の側壁
35a 側壁貫通孔
36 下箱体貫通孔
37 開閉栓
38 液肥供給部
38a 吸水体
39 嵌合部
4 液肥
5 培地
5a 堆肥
6 水位計測装置
7 連結パイプ
8 中間枠体
81 長手方向の側壁
81a 嵌合部
81b 嵌合段部
82 仕切り壁
83 液肥槽
83a 底板
84 栽培槽
85 短手方向の側壁
86 中間枠体貫通孔
87 開閉栓
88 液肥供給部
88a 吸水体
9 液肥調合槽
10 水位調整槽
11 液肥送液管
12 ストップバルブ
13 作業台
14 ボールタップ
H ヒートパイプ
Hp 温水ポンプ
P 植物
G 地面