IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メナード化粧品株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】皮膚外用剤又は内用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240314BHJP
   A61K 36/718 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240314BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240314BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/718
A61P17/00
A61P39/06
A61P43/00 107
A61Q19/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017209186
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019081719
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀場 大生
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩章
(72)【発明者】
【氏名】深田 紘介
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
【審判官】木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-5237(JP,A)
【文献】特開2011-74022(JP,A)
【文献】特開2013-79242(JP,A)
【文献】特開2006-45087(JP,A)
【文献】特開2019-52145(JP,A)
【文献】FRAGRANCE JOURNAL、1994年2月15日、Vol.22、No.2、pp.38-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
A61K36/00
A61P17/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80%(V/V)エタノール水溶液で抽出したオウレンの抽出物を含有する角化細胞増殖促進剤であって、これに用いるオウレンとして、オウレンを常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出した後、ろ紙No.5C(日本産業規格 JIS)で濾過し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製したとき、その溶液のガードナー色数が7-から9-の色相を示すオウレンを用いることを特徴とする角化細胞増殖促進剤。
【請求項2】
80%(V/V)エタノール水溶液で抽出したオウレンの抽出物を含有する角化細胞増殖促進剤であって、これに用いるオウレンとして、オウレンを常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出した後、ろ紙No.5C(日本産業規格 JIS)で濾過し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製したとき、その溶液のガードナー色数が7-から9-の色相を示す、日本産のオウレン(Coptis japonica Makino)を用いることを特徴とする角化細胞増殖促進剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素消去作用及び細胞増殖作用に優れた新規な外用剤又は内用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は生体の最外層に位置し、紫外線等の影響により活性酸素が発生しやすい臓器であり、絶えずその酸素ストレスに曝されている。一方、皮膚細胞内には活性酸素消去酵素が存在しており、その能力を超える活性酸素が発生しないかぎり活性酸素の傷害から皮膚細胞を防衛している。ところが、皮膚細胞内の活性酸素消去酵素の活性は加齢とともに低下することが知られており、活性酸素による傷害がその防御反応を凌駕したとき、皮膚は酸化され、細胞機能が劣化して老化してゆくと考えられる。また、皮膚以外の臓器においても、その活性酸素消去能を超える活性酸素に曝されたとき、機能低下が起こり、老化したり、ガンや心筋梗塞など様々な生活習慣病が発症したりすると考えられる。そこで、活性酸素による傷害からの防衛を目的として活性酸素消去剤や抗酸化剤が検討され、SODやカタラーゼ等の活性酸素消去酵素、SOD様活性物質などの活性酸素消去剤や抗酸化剤を配合した食品、化粧品、医薬部外品及び医薬品等が開発されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
加齢とともに表皮角化細胞の増殖・分裂能は低下し、表皮層自体は薄くなる(非特許文献1)。生体因子であるEpidermal Growth Factor(EGF/上皮細胞成長因子)や女性ホルモン(エストロゲン)は、表皮角化細胞の増殖に働きかけるが、加齢と共にその分泌は低下する。このような加齢による角化細胞代謝機能の低下は、表皮のターンオーバー速度を遅らせ、皮膚の老化の原因となる。また、角層表面から剥がれ落ちる角層細胞が滞留することで、表皮内メラニンの排泄がスムーズに行われなくなり、色素沈着や肌のくすみの原因となる。さらに表皮の創傷治癒が遅くなることなども知られている。これらの現象の進行を防止あるいは改善するために、角化細胞の増殖を促進させる成分の探索や、多くの皮膚外用剤の提案がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-118630
【文献】特開平9-208484
【文献】特開2013-79242
【非特許文献】
【0005】
【文献】Varani J et al., J Invest Dermatol ,Vol.3,pp 57-60,1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗酸化効果に優れ、且つ角化細胞増殖効果に優れた新規な皮膚外用剤又は内用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、この問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明のオウレンの抽出物に優れた抗酸化効果、および角化細胞増殖効果を発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)~(3)からなる。
【0009】
(1)オウレンの抽出物を含有する皮膚外用剤であって、これに用いるオウレンとして、オウレンを常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製したとき、その溶液のガードナー色数が7-から9-の色相を示すオウレンを用いることを特徴とする皮膚外用剤。
(2)オウレンの抽出物を含有する抗酸化剤であって、これに用いるオウレンとして、オウレンを常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製したとき、その溶液のガードナー色数が7-から9-の色相を示すオウレンを用いることを特徴とする抗酸化剤。
(3)オウレンの抽出物を含有する細胞増殖促進剤であって、これに用いるオウレンとして、オウレンを常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製したとき、その溶液のガードナー色数が7-から9-の色相を示すオウレンを用いることを特徴とする細胞増殖促進剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオウレンの抽出物は、優れた抗酸化効果、細胞増殖効果を有しており、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品の分野において貢献できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に述べる。
【0012】
本発明で用いるオウレンとは、キンポウゲ科のオウレン(学名:Coptis japonica Makino)またはその他同属植物(学名:C.chinensis、C.deltoidea、C.teetaなど)の根茎のことである。オウレンは古くから、胃出血、胃潰瘍、下痢などの様々な疾患に対する治療薬として東洋医学で広く用いられてきた。オウレンは、日本産や中国産などを用いることができ、基原植物としては、キクバオウレン、セリバオウレン、コセリバオウレンなどが挙げられる。また、本発明で用いるオウレンは、根茎を、常圧にて98~100℃の水によって1時間抽出した抽出固形物の0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったとき、ガードナー色数が7-から9-、好ましくは7から8+、より好ましくは7+から8の色相であるオウレンを用いることができる。
【0013】
ガードナー色数とは、日本工業規格に規定されている規格の一つであり、日本工業規格 JIS K 0071-2 化学製品の色試験方法-第2部:ガードナー色数に基づき、測定できる。具体的には、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、塩化鉄(III)、塩化コバルト(II)及び塩酸を用いて調製したガードナー色数標準液と試料の透過色を比較して、1~18の範囲の色数によって表される。試料をガードナー・ホルト試料管に入れ、測定用器具にセットし、試料と標準色を比較し、試料に最も近似したガードナー標準色番号をもって表示する。もし試料が二つの標準の間に位置するならば、最も近くの標準より濃いまたは薄いかで「+」または「-」とする。
【0014】
本発明に用いるガードナー色数試験法のより詳しい方法を説明する。例えば、根茎を10mm角以下に粉砕し、精製水を加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、ろ紙(例えば、アドバンテック東洋株式会社製、ろ紙No.5C)で濾過し、その濾液を濃縮し、固形分濃度が0.3重量%水溶液となるように調製してガードナー試験を行なうことができる。別の方法としては、前記の濾液を濃縮し、凍結乾燥した抽出固形物を0.3重量%になるように精製水に溶解しても良い。
【0015】
従来の一般的なオウレンは、ガードナー色数が9+~12+であり、本発明で用いるオウレンとは異なるものである。ガードナー色数が高過ぎると、効果が低くなり、澱が発生し易くなることで、皮膚外用剤に用いる際の安定性悪化に影響することがある。また、ガードナー色数が低過ぎると、有効成分が減少してしまい、効果が低くなることがある。
【0016】
本発明のオウレンの抽出物とは、本発明で用いるオウレンの根茎より抽出したものである。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出や冷蔵抽出したものであっても良い。常圧でも加圧でもよく、温度や圧力は適宜採用できる。さらに、根茎をそのまま抽出してもよいし、乾燥してから抽出してもよい。また、抽出方法はガードナー試験を行なうための抽出固形物を調製する方法と同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0017】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。
【0018】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈及び濾過処理、活性炭等による脱色、脱臭処理等をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0019】
本発明の外用剤又は内用剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分を含有することもできる。
【0020】
本発明の剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、マッサージクリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤等を含む)等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる上記抽出物の含有量は、外用の場合、全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。さらに、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えて含有した場合、効果の増強は認められにくく不経済である。一方、内用の場合、投与量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人1人当たりの1日の量としては、5mg以上が好ましく、10mg~5gがより好ましい。さらに、100mg~1gが最も好ましい。
【0022】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す含有量の部とは重量部を、%とは重量%を示す。また、以下に用いるオウレンは乾燥物を用いた。
【実施例1】
【0023】
入手先の異なるオウレン(入手先A~E)について、それぞれのガードナー色数を測定した。
【0024】
本発明のオウレン(入手先A)のガードナー色数
入手先Aのオウレンの根茎3gを10mm角以下に粉砕し、精製水60mLを加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。この熱水抽出物を、精製水に再溶解した0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったときのガードナー色数は、8-の色相であった。
【0025】
従来のオウレン(入手先B)のガードナー色数
入手先Bのオウレンの根茎3gを10mm角以下に粉砕し、精製水60mLを加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。この熱水抽出物を、精製水に再溶解した0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったときのガードナー色数は、11+の色相であった。
【0026】
従来のオウレン(入手先C)のガードナー色数
入手先Cのオウレンの根茎3gを10mm角以下に粉砕し、精製水60mLを加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。この熱水抽出物を、精製水に再溶解した0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったときのガードナー色数は、12-の色相であった。
【0027】
従来のオウレン(入手先D)のガードナー色数
入手先Dのオウレンの根茎3gを10mm角以下に粉砕し、精製水60mLを加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。この熱水抽出物を、精製水に再溶解した0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったときのガードナー色数は、9+の色相であった。
【0028】
従来のオウレン(入手先E)のガードナー色数
入手先Eのオウレンの根茎3gを10mm角以下に粉砕し、精製水60mLを加え、常圧にて98~100℃で1時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。この熱水抽出物を、精製水に再溶解した0.3重量%水溶液に対して、ガードナー色数試験法における色数試験を行ったときのガードナー色数は、10-の色相であった。
【0029】
これらの試験結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
【実施例2】
【0031】
製造例1 本発明のオウレンの熱水抽出物
本発明のオウレン(入手先A)の根茎10gに、精製水200mLを加え、98~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して本発明のオウレンの熱水抽出物を1.5g得た。
【0032】
比較製造例1 従来のオウレンの熱水抽出物
製造例1において、本発明のオウレン(入手先A)を従来のオウレン(入手先B)に置き換えて得られた熱水抽出物を従来のオウレンの熱水抽出物とした。
【0033】
製造例2 本発明のオウレンの50%エタノール抽出物
本発明のオウレン(入手先A)の根茎10gに、50%(V/V)エタノール水溶液200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、本発明のオウレンの50%エタノール抽出物を1.7g得た。
【0034】
比較製造例2 従来のオウレンの50%エタノール抽出物
製造例2において、本発明のオウレン(入手先A)を従来のオウレン(入手先B)に置き換えて得られた50%エタノール抽出物を従来のオウレンの50%エタノール抽出物とした。
【0035】
製造例3 本発明のオウレンの80%エタノール抽出物
本発明のオウレン(入手先A)の根茎10gに、80%(V/V)エタノール水溶液200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、本発明のオウレンの80%エタノール抽出物を1.7g得た。
【0036】
比較製造例3 従来のオウレンの80%エタノール抽出物
製造例3において、本発明のオウレン(入手先A)を従来のオウレン(入手先B)に置き換えて得られた80%エタノール抽出物を従来のオウレンの80%エタノール抽出物とした。
【0037】
製造例4 本発明のオウレンのエタノール抽出物
本発明のオウレン(入手先A)の根茎10gに、エタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、本発明のオウレンのエタノール抽出物を0.2g得た。
【0038】
比較製造例4 従来のオウレンのエタノール抽出物
製造例4において、本発明のオウレン(入手先A)を従来のオウレン(入手先B)に置き換えて得られたエタノール抽出物を従来のオウレンのエタノール抽出物とした。
【0039】
製造例5 本発明のオウレンの1,3-ブチレングリコール抽出物
本発明のオウレン(入手先A)の根茎25gに、1,3-ブチレングリコール100mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、本発明のオウレンの1,3-ブチレングリコール抽出物を80g得た。
【実施例3】
【0040】
処方例1 化粧水
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0041】
比較処方例1 従来の化粧水
処方例1において、本発明のオウレンの熱水抽出物(製造例1)を従来のオウレンの熱水抽出物(比較製造例1)に置き換えたものを従来の化粧水とした。
【0042】
処方例2 クリーム
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンの50%エタノール抽出物(製造例2) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0043】
処方例3 乳液
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンの80%エタノール抽出物(製造例3) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0044】
処方例4 ゲル剤
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンのエタノール抽出物(製造例4) 1.0
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3-ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~5と、成分6~11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0045】
処方例5 パック
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンのエタノール抽出物(製造例4) 1.0
2.本発明のオウレンの1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例5) 5.0
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~11を均一に溶解し製品とする。
【0046】
処方例6 ファンデーション
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10~13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14~17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この油相に水相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0047】
処方例7 浴用剤
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンのエタノール抽出物(製造例4) 1.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を均一に混合し製品とする。
【0048】
処方例8 軟膏
処方 含有量(部)
1.本発明のオウレンの熱水抽出物(製造例1) 1.0
2.本発明のオウレンの1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例5) 5.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3~6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7~9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0049】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【実施例4】
【0050】
実験例1 活性酸素消去作用
フリーラジカル捕捉除去作用の評価を行った。陽性対照としてはアスコルビン酸を用いた。フリーラジカルのモデルとしては、安定なフリーラジカルであるα、α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(以下DPPHとする)を用い、試料と一定の割合で一定時間反応させ、減少するラジカルの量を波長517nmの吸光度の減少量から測定した。
【0051】
フリーラジカル捕捉除去作用の測定方法
各試料を、最終濃度0.1mg/mL(アスコルビン酸は0.02mg/mL)となるように精製水0.3mLに加えた試料液に、1.0M酢酸緩衝液(pH5.5)0.1mL、無水エタノール0.4mL及び0.5mMDPPH無水エタノール溶液0.2mLを加えて反応液とした。また、油溶性の試料の場合は、最終濃度0.1mg/mLとなるように無水エタノール0.4mLに試料を加えた試料液に、1.0M酢酸緩衝液(pH5.5)0.1mL、精製水0.3mL及び0.5mMDPPH無水エタノール溶液0.2mLを加えて反応液とした。その後、37℃で30分間反応させ、水を対照として波長517nmの吸光度(A)を測定した。また、ブランクとして試料の代わりに精製水を用いて吸光度(B)を測定した。フリーラジカル捕捉除去率は、以下に示す式より算出した。
フリーラジカル捕捉除去率(%)=(1-A/B)×100
【0052】
これらの試験結果を表2に示した。
【0053】
【表2】
【0054】
その結果、本発明のオウレンの抽出物(製造例1、2、4)は、従来のオウレンの抽出物(比較製造例1、2、4)と比較して優れたフリーラジカル捕捉除去作用を有していることが認められた。なお、表1に示した従来のオウレン(入手先B~E)を用いた各抽出物についても、従来のオウレンの抽出物(比較製造例1、2、4)と同等の効果であった。
【0055】
実験例2 角化細胞増殖促進試験
角化細胞を96wellプレートに1wellあたり2×10個播種し、各試料(最終濃度0.001μg/mL)を添加した0.5%FBSを含むDMEM培地にて、37℃、5%CO条件下で5日間培養した。細胞数の測定は、染色法により行った。すなわち、培養終了後培地を除き、メタノールを用いて10分間細胞を固定した。続いて、0.1%メチレンブルーを加え、1時間細胞の染色を行った。乾燥させた後、0.1N HClを各wellに100μLずつ加えてよく攪拌させ、マイクロプレートリーダーを用いて650nmの吸光度を測定した。試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールに対する試料添加時の細胞数から試料の細胞増殖促進効果を評価した。
【0056】
これらの試験結果を表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
その結果、本発明のオウレンの80%エタノール抽出物(製造例3)に、角化細胞増殖促進効果が認められたが、従来のオウレンの80%エタノール抽出物(比較製造例3)には角化細胞増殖促進効果が認められなかった。なお、従来のオウレン(入手先B~E)を用いた各抽出物についても、従来のオウレンの抽出物(比較製造例3)と同様に効果は認められなかった。
【0059】
実験例3 経時安定性試験
処方例1の化粧水および比較処方例1の化粧水を、40℃条件下にて6か月間静置して経時的に観察を行ったところ、処方例1の化粧水では沈殿物の発生が認められなかったが、比較処方例1では、6か月経過時に沈殿物の発生が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のことから、本発明のオウレンの抽出物は、優れた活性酸素消去作用及び細胞増殖促進作用を有し、これを含有する内用剤又は外用剤は、活性酸素による様々な生活習慣病(癌や心筋梗塞など)や、活性酸素及び細胞増殖の遅延による皮膚の老化(色素沈着、肌のくすみ、創傷治癒の遅延)、の予防及び治療に有効である。また、本発明のオウレンの抽出物を含有した皮膚外用剤は、安定性にも優れていた。よって、本発明のオウレンの抽出物は、皮膚の老化防止といった美容分野だけでなく、医療分野にも利用でき、化粧品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。