(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-13
(45)【発行日】2024-03-22
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
F17C 7/04 20060101AFI20240314BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20240314BHJP
【FI】
F17C7/04
F24F6/00 A
(21)【出願番号】P 2020073622
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】石松 卓也
(72)【発明者】
【氏名】峰原 亨明
(72)【発明者】
【氏名】深井 健太
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340265(JP,A)
【文献】特表2020-510797(JP,A)
【文献】実開昭60-180012(JP,U)
【文献】特開2013-115208(JP,A)
【文献】特開平10-317144(JP,A)
【文献】特開2001-313252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 7/04
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体容器と、
前記液体容器に貯留された前記液体を加熱する液体用ヒータと、
前記液体容器に貯留された前記液体の液面高さを所定高さに常時維持する液面高さ維持機構と、を備え、
前記液体は、超純水、純水、水道水、又は有機溶媒であり、
前記液体容器は、前記液体を流入させるための流入口と、前記液体用ヒータの加熱により前記液体から気化した処理用ガスに対するキャリアガスを流入させるためのキャリアガス入口と、前記処理用ガスと前記キャリアガスとの混合ガスを前記液体容器の外部に流出させるための流出口と、を有し、
前記流入口は、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも下方に設けられ、
前記キャリアガス入口及び前記流出口は、前記所定高さに対応する位置よりも上方に設けられ、
前記液面高さ維持機構は、前記流入口から前記液体容器の内部に前記液体を常時流入させる液体供給部と、前記液体容器に貯留された前記液体の液面高さが前記所定高さを越えないように前記液体を排出する液体排出部と、を有
し、前記液面高さ維持機構が前記液体の液面高さが前記所定高さを越えないように動作しつつ、前記混合ガスは、供給対象空間又は供給対象物に供給される、ガス供給装置。
【請求項2】
前記液体排出部は、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置で前記液体容器の内部に開口する排出管を有する、請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記液体用ヒータは、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも下方において前記液体容器の内部に設けられる、請求項1又は2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも上方において前記液体容器の内部に設けられるガス用ヒータをさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造プロセス等に利用されるガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは種々の処理でガスが利用される。例えば成膜処理では、一般に材料ガスとキャリアガスとの混合ガスが利用される。また、異物の洗浄及び除去処理でも材料ガスとキャリアガスとの混合ガスが利用されることがある。
【0003】
ガスを供給する装置としては従来から種々のものが提案されており、例えば特許文献1は成膜処理で利用される混合ガスの供給装置を開示し、特許文献2は除去処理で利用される混合ガスの供給装置を開示する。
【0004】
またクリーンルームでは内部空間の温度の一定化とともに湿度の一定化が望まれる場合がある。このような場合に、ガスとしての水蒸気を生成するガス供給装置が空気調和装置とともに用いられることがある。このような構成では、空調された空気に所望の量の水蒸気を混合させてクリーンルームに供給することにより、クリーンルームの湿度を制御できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-9210号公報
【文献】特開2013-145887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体製造プロセス用のガス供給装置では、供給するガスの供給量を所望の量に精度良く制御することが強く望まれる場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、液体から気化させるガスの供給量の制御精度を向上でき、これにより、例えば2種以上のガスを混合させて混合ガスを生成する際のガス濃度(例えば湿度)の制御精度を向上できるガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態にかかるガス供給装置は、液体を貯留する液体容器と、前記液体容器に貯留された前記液体を加熱する液体用ヒータと、前記液体容器に貯留された前記液体の液面高さを所定高さに常時維持する液面高さ維持機構と、を備え、前記液体用ヒータの加熱により前記液体から気化した処理用ガスを前記液体容器の外部に供給するガス供給装置、である。
【0009】
前記液体容器は、前記液体を流入させるための流入口を有し、前記流入口は、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも下方に設けられてもよい。
【0010】
前記液面高さ維持機構は、前記液体容器の内部に前記液体を常時流入させる液体供給部と、前記液体容器に貯留された前記液体の液面高さが前記所定高さを越えないように前記液体を排出する液体排出部と、を有してもよい。
【0011】
前記液体排出部は、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置で前記液体容器の内部に開口する排出管を有してもよい。
【0012】
前記液体容器は、前記処理用ガスに対するキャリアガスを流入させるためのキャリアガス入口と、前記処理用ガスと前記キャリアガスとの混合ガスを前記液体容器の外部に流出させるための流出口と、を有してもよい。
【0013】
前記液体用ヒータは、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも下方において前記液体容器の内部に設けられてもよい。
【0014】
また実施の形態にかかるガス供給装置は、前記液体容器における前記所定高さに対応する位置よりも上方において前記液体容器の内部に設けられるガス用ヒータをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体から気化させるガスの供給量の制御精度を向上でき、これにより、例えば2種以上のガスを混合させて混合ガスを生成する際のガス濃度(例えば湿度)の制御精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかるガス供給装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態にかかるガス供給装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施の形態について説明する。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1は第1の実施の形態にかかるガス供給装置1の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示すガス供給装置1は、液体Wを貯留する液体容器としてのタンク10と、タンク10に貯留された液体Wを加熱する液体用ヒータ20と、タンク10に貯留された液体Wの液面高さWaを所定高さHに常時維持する液面高さ維持機構30と、を備える。
【0020】
ガス供給装置1では、液体用ヒータ20の加熱により液体Wから気化した処理用ガスがタンク10の外部に流出し、タンク10に接続された流出管50を介して供給対象空間又は供給対象物T側に供給される。本実施の形態におけるガス供給装置1は、上記処理用ガスに対するキャリアガスを貯留するガス貯留部40を備えており、ガス貯留部40からタンク10の内部にキャリアガスが供給される。すなわち、上記処理用ガスは、詳しくはキャリアガスとの混合ガスの状態でタンク10の外部に流出し、流出管50を介して供給対象空間又は供給対象物T側に供給される。また
図1における符号60は、ガス供給装置1の各部の動作を制御するコントローラ60を示す。
【0021】
タンク10は、液体Wを流入させるための流入口11と、上記キャリアガスを流入させるためのキャリアガス入口12と、上記混合ガスをタンク10の外部に流出させるための流出口13と、を有する。
【0022】
流入口11は、タンク10における上記所定高さHに対応する位置よりも下方に設けられ、詳しくは図示の例ではタンク10の底壁で開口している。流入口11は、液面高さ維持機構30が備える後述の液体供給部31から液体Wを受け入れる。なお、流入口11の形成位置は図示の例に限られるものではない。
【0023】
キャリアガス入口12は、タンク10における上記所定高さHに対応する位置よりも上方に設けられ、詳しくは図示の例ではタンク10の側壁で開口している。キャリアガス入口12はキャリアガス配管41を介してガス貯留部40に接続し、ガス貯留部40からのキャリアガスをキャリアガス配管41を介して受け入れる。なお、キャリアガス入口12の形成位置は図示の例に限られるものではない。
【0024】
流出口13は、タンク10における上記所定高さHに対応する位置よりも上方に設けられ、詳しくは図示の例ではタンク10の側壁で開口している。流出口13には上述した流出管50が接続されている。なお、流出口13の形成位置は図示の例に限られるものではない。
【0025】
タンク10は気密空間を形成しており、図示の例では、底壁と、底壁から上方に立ち上がる側壁と、側壁を閉塞する頂壁とを有するが、その形状も特に限られるものではない。なお、タンク10にキャリアガスを導入せず、液体Wから気化した処理用ガスを例えば上方の空間に供給(放出)する場合には、タンク10に頂壁が形成されなくもよいし、または頂壁に開口が形成されてもよい。
【0026】
タンク10は液体Wとして超純水を貯留する。タンク10が貯留する液体Wは超純水に限られるものではなく、純水、水道水等でもよいし、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶媒や、その他の液体でもよい。
【0027】
液体用ヒータ20は、タンク10の上記所定高さHに対応する位置よりも下方においてタンク10の内部に設けられている。すなわち、液体用ヒータ20は液体W内に配置される浸漬タイプのヒータである。
【0028】
液体用ヒータ20は加熱部分がステンレス等の電熱ヒータでもよいが、液体Wから気化した処理用ガス内の異物が問題となり得る場合には、液体用ヒータ20として、加熱部分を石英カバーで覆う石英ヒータが用いられてもよい。
【0029】
また、本実施の形態におけるガス供給装置1は混合ガスを加熱するためのガス用ヒータ25を更に備えている。ガス用ヒータ25は、タンク10における上記所定高さHに対応する位置よりも上方においてタンク10の内部に設けられている。このようなガス用ヒータ25が設けられることで、混合ガスの温度を調節することが可能となる。
【0030】
液面高さ維持機構30は、上述した液体供給部31と、液体排出部32とを有している。液体供給部31はタンク10の内部に液体Wを常時流入させるようになっており、液体排出部32はタンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが上記所定高さHを越えないように液体Wを排出するようになっている。
【0031】
液体供給部31は、タンク10の内部に供給するための液体W、すなわち超純水を貯留する液体貯留部31Aと、液体貯留部31Aとタンク10の流入口11とを接続する液体流路31Bと、液体流路31B上に設けられた液体流量調節弁31Cと、を有する。
【0032】
本実施の形態では、ガス供給装置1の運転時に、液体貯留部31Aが液体流量調節弁31Cに向けて一定の流量の液体Wを送る。また、液体流量調節弁31Cは一定の開度で開く。これにより、液体供給部31は、タンク10の内部に一定の流量で液体Wを常時流入させるようになっている。液体貯留部31Aは例えば内部に備えるポンプの駆動により、液体流量調節弁31Cに向けて液体Wを送るが、このような態様に代えて、液体流路31B上に設けたポンプにより液体Wを通流させてもよい。液体供給部31からの液体Wの通流及び液体流量調節弁31Cの開閉及び開度調節は、コントローラ60によって制御されることになる。なお、液体流量調節弁31Cに代えて開閉弁が用いられてもよい。
【0033】
一方で、液体排出部32は、図示の例ではタンク10の側壁に形成された排出口14に接続された排出管32Aと、排出管32Aに設けられたドレインタンク32Bと、排出管32Aにおいてドレインタンク32Bよりも下流側に設けられた排出流量調節弁32Cと、を有する。本実施の形態における排出管32Aは、タンク10の側壁における上記所定高さHに対応する位置でタンク10の内部に開口している。これにより、タンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが所定高さHに達した際に、液体Wが自動的に排出管32Aに排出され、液面高さWaが所定高さHに常時維持される。
図示の例の排出管32Aは、逆U字管部32A1を有する。この場合、排出管32Aのタンク10側の開口が液体Wに浸された後、液体Wがさらに増加した際に、液体Wが逆U字管部32A1に次第に入り込んでいき、その後、逆U字管部32A1の上端を越えて排出される。この場合、排出管32Aのタンク10側の開口の上端又はタンク10の排出口14の上端が、所定高さHの位置に対応する。この構成では、排出管32Aのタンク10側の開口が液体Wに浸された状態で、タンク10内の液体Wを順次排出できるため、排出管32Aへのガスの流入を抑制できる。なお、排出管32Aは逆U字管部32A1を有していなくてもよい。また、排出管32Aは、タンク10を貫通するように設けられてもよく、この場合、排出管32Aの開口は、タンク10の内部で開口する。
【0034】
ドレインタンク32Bは、タンク10から排出管32Aを介して排出された液体Wを一時的に貯留することができる。排出流量調節弁32Cは、ドレインタンク32B内の液体Wの貯留及び排出を切り換えるとともに、排出される液体Wの流量調節を行うために設けられている。排出流量調節弁32Cはコントローラ60によって開度を制御され、ドレインタンク32B内の液体Wの排出流量を調節できる。このような構成では、排出流量調節弁32Cの開度の調節によって液体Wを緩やかに、好ましくは一定流量で排出することが可能となり、これにより、液体Wを急激に排出した場合に生じ得る、排出管32Aへのガスの流入を抑制できる。排出管32Aへのガスの流入の抑制は、液体Wから生じるガスの供給量の制御精度及び混合ガスのガス濃度(本例では湿度)の制御制度を向上させ得る。なお、排出流量調節弁32Cの代わりにオリフィスを用いた場合においても、液体Wを緩やかに排出することができる。
また、液体排出部32は、排出流量調節弁32Cに加えて開閉弁をさらに備えてもよい。
【0035】
ガス貯留部40は、キャリアガスとして窒素ガス(N2ガス)を貯留する。ただし、ガス貯留部40が貯留するキャリアガスは窒素ガスに限られるものではなく、例えばアンモニアガス(NH3ガス)やアルゴンガス(Arガス)等の希ガスであってもよい。
【0036】
ガス貯留部40とタンク10とを接続するキャリアガス配管41上には、キャリアガス流量調節弁42と、キャリアガス流量センサ43とが設けられる。キャリアガス流量調節弁42は、キャリアガス流量センサ43が検出するガス流量に基づくコントローラ60の制御によって、タンク10に所望の流量でキャリアガスを供給する。
【0037】
流出管50には、混合ガス流量調節弁51と、その下流側に配置される混合ガス開閉弁52と、これら混合ガス流量調節弁51と混合ガス開閉弁52との間に配置される混合ガス流量センサ53と、混合ガス流量調節弁51の上流側に配置される温度センサ54及び湿度センサ55と、を有している。これら各弁51、52及び各センサ53~55は、コントローラ60に電気的に接続されている。
【0038】
混合ガスを供給対象空間又は供給対象物T側に供給する場合、混合ガス開閉弁52はコントローラ60によって閉状態から開状態に切り換えられ、混合ガスを供給しない場合には閉状態となる。
【0039】
混合ガス流量センサ53は、流出管50を通流する混合ガスの流量を検出し、その検出結果をコントローラ60に送る。混合ガス流量調節弁51は、混合ガス流量センサ53が検出する流量が目標の流量になるようにその開度をコントローラ60によって制御される。
【0040】
また、温度センサ54は、流出管50を通流する混合ガスの温度を検出し、その検出結果をコントローラ60に送る。湿度センサ55は、流出管50を通流する混合ガスの湿度を検出し、その検出結果をコントローラ60に送る。
【0041】
コントローラ60は、温度センサ54が検出する混合ガスの温度及び湿度センサ55が検出する混合ガスの湿度に基づいて液体用ヒータ20及びガス用ヒータ25を制御し、これにより、混合ガスの温度及び湿度を目標の値に調節することが可能となる。
【0042】
コントローラ60は、CPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成されてもよく、この場合、記憶されたプログラムに従って各部の動作を制御してもよい。コントローラ60は、上述した各弁(31C,32C,42,51,52)の開閉や、ヒータ(20、25)の加熱量の調節等を行う。
【0043】
次に本実施の形態にかかるガス供給装置1の作用を説明する。
【0044】
混合ガスを供給対象空間又は供給対象物T側に供給する場合、まず、液体流量調節弁31Cが開かれ、タンク10に液体Wが貯留される。そしてタンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが所定高さHに達した際、液体Wは排出管32Aに排出される。これにより、液面高さWaが所定高さHに常時維持される。また、液体用ヒータ20は液体Wの液面高さWaが所定高さHに達した際又は達する前において加熱を開始し、これにより、タンク10内において超純水が気化し、超純水から処理用ガスとしての水蒸気が生成される。
【0045】
また本実施の形態では、超純水から処理用ガスとしての水蒸気が生成される適宜のタイミングで、キャリアガス流量調節弁42、混合ガス流量調節弁51及び混合ガス開閉弁52が開かれる。これ以降、超純水から気化した水蒸気とキャリアガスとの混合ガスが、流出管50を介して供給対象空間又は供給対象物T側に供給される。コントローラ60は、温度センサ54が検出する混合ガスの温度及び湿度センサ55が検出する混合ガスの湿度に基づいて液体用ヒータ20及びガス用ヒータ25を制御し、これにより、混合ガスの温度及び湿度は、次第に目標の値に調節されていく。
【0046】
上述のように混合ガスを供給する際、本実施の形態におけるガス供給装置1は液面高さ維持機構30を備えることで、タンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが所定高さHに常時維持される。この場合、常時、概ね一定の量でタンク10に貯留された液体Wから処理用ガスが気化するため、液体Wから気化する処理用ガスも一定の供給量で供給され易くなる。
【0047】
詳しくは、本実施の形態とは異なり、タンク10内の液体Wの液面高さが所定量だけ低くなった際にまとめて液体Wを補充するような態様である場合には、液体Wの温度分布が大きくなり処理用ガスである水蒸気の気化量(つまり供給量)が変化することで、処理用ガスの供給量及び温度、並びに混合ガスの濃度(本例では湿度)の制御精度が低下し得る。これに対して、本実施の形態では液体Wの液面高さWaが所定高さHに常時維持されることで、処理用ガスである水蒸気の気化量(つまり供給量)が安定する。その結果、処理用ガスの供給量及び温度、並びに供給対象空間又は供給対象物T側に供給される混合ガスの濃度の制御精度を向上できる。さらに、本実施の形態では、液体Wの液面高さWaが所定高さHに常時維持されることで、タンク10内に供給される液体Wが常時流動していることになり、液体Wの停滞によるバクテリアの発生等の液体Wの劣化が抑制され、異物が供給対象空間又は供給対象物T側に供給されることも抑制できる。
【0048】
したがって、以上に説明した本実施の形態におけるガス供給装置1によれば、液体から気化させるガスの供給量の制御精度を向上でき、これにより、例えば2種以上のガスを混合させて混合ガスを生成する際のガス濃度(例えば湿度)の制御精度を向上できる。
【0049】
また、本実施の形態ではタンク10に液体Wを流入させるための流入口11が、タンク10における上記所定高さHに対応する位置よりも下方に設けられる。これにより、タンク10に供給される液体Wは、貯留された液体W中でタンク10の内部に供給されるため、液体W供給時の液体Wの跳ねが抑制され、その結果、気化しないままの液体Wが供給対象空間又は供給対象物T側に供給される虞を効果的に低減できる。
【0050】
また、液面高さ維持機構30は、タンク10の内部に液体Wを常時流入させる液体供給部31と、タンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが所定高さHを越えないように液体Wを排出する液体排出部32と、を有し、液体排出部32は、タンク10における所定高さHに対応する位置でタンク10の内部に開口する排出管32Aを有する。これにより、タンク10に貯留された液体Wの液面高さWaが所定高さHに達した際に、液体Wが自動的に排出管32Aに排出される。本実施の形態では、このような機械的な構造で液面高さ維持機構30を構成し得るため、ガス供給装置1の製造コスト、耐久性及び信頼性を向上できる。
【0051】
また、液体用ヒータ20は、タンク10における所定高さHに対応する位置よりも下方においてタンク10の内部に設けられるため、効率的に液体Wから処理用ガスを生成でき、液体用ヒータ20の占有スペースも抑制できる。
【0052】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態にかかるガス供給装置2について
図2を参照しつつ説明する。
図2はガス供給装置2の概略構成を示す図である。本実施の形態における構成のうちの第1の実施の形態と同一のものには同一の符号を付し、説明は省略する。
【0053】
本実施の形態では液面高さ維持機構30の構成が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態における液面高さ維持機構30は、液体供給部31と、液体排出部32とを有する。このうちの液体供給部31は、第1の実施の形態と同じ構成を有するが、液体排出部32が第1の実施の形態と異なる。
【0054】
液体排出部32は、排出管32Aがタンク10の底壁に接続される点及びドレインタンク32Bを備えない点で第1の実施の形態と異なる。コントローラ60は、液面高さWaが所定高さHに常時維持されるように排出流量調節弁32Cの開度を調節して液体Wの排出流量を調節する。なお、排出流量調節弁32Cの代わりにオリフィスを用いてもよい。
【0055】
このような第2の実施の形態にかかるガス供給装置2においても第1の実施の形態と同様の効果が得られる。とりわけ簡易な構成で排出管32Aへのガスの流入を抑制できるため、製造効率が良い。
【0056】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。例えば、ガス供給装置1は、キャリアガスをタンク10の内部に導入しない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,2…ガス供給装置、10…タンク、11…流入口、12…キャリアガス入口、13…流出口、14…排出口、20…液体用ヒータ、25…ガス用ヒータ、30…液面高さ維持機構、31…液体供給部、31A…液体貯留部、31B…液体流路、31C…液体流量調節弁、32…液体排出部、32A…排出管、32A1…逆U字管部、32B…ドレインタンク、32C…排出流量調節弁、33…液面レベルセンサ、40…ガス貯留部、41…キャリアガス配管、42…キャリアガス流量調節弁、43…キャリアガス流量センサ、50…流出管、51…混合ガス流量調節弁、52…混合ガス開閉弁、53…混合ガス流量センサ、60…コントローラ、T…供給対象空間又は供給対象物、W…液体、Wa…液面高さ、H…所定高さ